説明

コネクタおよび該コネクタに使用されるコンタクト

【課題】高信頼性のコネクタを提供する。
【解決手段】複数のコンタクト(13)を有するコネクタ(10)において、該コネクタは該コンタクトを収納するための複数の貫通孔(12)を有するインシュレータを含み、該貫通孔内には2個のコンタクトが配置されるコネクタである。
インシュレータ(11)内のコンタクトが収まる貫通孔(12)にコンタクト(13)を2個収めることにより、万一1コンタクト(13)の一方が故障した場合でも、同じライン内で信号伝送が継続して使用できる。また通常の使用に対してもコンタクトの接触部(14)の面積が多く取れることから電流容量も大きくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の回路基板を有する電子機器に用いられ、回路基板と他の回路基板とを電気的に接続するコネクタに関するものであり、特に、該コネクタに使用されるコンタクトの配列および構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高性能化、複雑化に伴い、多数の電気配線を相互接続するため、多数のコンタクト部を有するコネクタが開発されてきた。係るコネクタにおいて、例えば、人工衛星等に使用されるコネクタは、打上げ後の補修や交換が極めて困難であり、搭載される電子機器共々高い信頼性が要求される。
【0003】
高信頼性を必要とされる電子機器に使用される電気コネクタについては、電気コネクタを使用して伝送される信号について、1つの信号経路において障害が出た場合の保護として、同じ信号を別の数極に振り分けて保証する方法を採用することも可能である。しかし1信号に対して別の数極に振り分ける構造は、使用するコネクタの極数が大きくなり価格も増加する。またかかる冗長性をもたせる方法は配線および回路自体を複雑にするため、全ての搭載機器に採用することは現実的でない。
【0004】
コネクタにおける不具合の発生要因としては、コンタクト部における接触不良が大きな割合を占める。接触不良は、例えばコンタクト部材自体の弾性的疲労や、相対する電極表面の汚染や損傷に起因することが多い。このため、図7に示すように、1つ信号を伝送する1つの金属弾性部材71からなるコンタクト70において、相手方電極72に接触するコンタクト70の先端部を2つに分けて2本の弾性接触アーム73を形成し2点接触させることにより、接触不良の発生に対応する方法が用いられている。しかし1つのコンタクトにおいてコンタクト先端を2つに分けて2点接触とする場合でも、基は1つのコンタクトであり、コンタクトの接触部以外に問題が出る場合には対処できない。また、図7に示すような構造では、均一なそして十分な接触圧力を確保することが困難な場合が生じていた。
【0005】
他の方式として、図8に分解図で示すようなシリコンゴムコネクタ75が使用されていた。シリコンゴムコネクタ75においては、図8の(1)および(4)に示す上下2枚の配線基板76、77の間の信号伝達部材78として、図8の(2)に示す導電シート79用いる。導電シート79は、絶縁性シリコンゴムからなるシート状部材中に、導電性繊維81または導電性ゴム、あるいは金属微粒子を高密度に配向させることによって形成されている。なお、図8の(3)に示すフレーム83は、内部壁84を有し、信号伝達部材78の位置合わせ、およびシリコンゴムコネクタ75としての構造的補強のために、信号伝達部材78の周囲に配置されている。図8の(5)に上面図、そして図8の(6)に図8の(5)X−X’における断面図に示すように、導電性繊維81は上下方向に延伸しているので、上下方向にのみ電流が流れる。このため上下2枚の配線基板76、77とそれらの中間に配置された導電シート79による積層状態において、対応するコンタクト85、86同士のみを確実に導通させることができる。
【0006】
かかるシリコンゴムコネクタにおいて、特に人口衛星に使用される場合のような高度の信頼性を必要とする場合は、導電性繊維81として特に金線を埋め込んで対応していた。ここのため、高価な金線入りシリコンゴムコネクタでは1度使用した後には使用出来ない等、別の問題が存在していた。
【0007】
また、シリコンゴムコネクタは、強い荷重を掛けた後の再使用が不可であったり、伝送する信号の周波数を上げて転送速度をあげることが細すぎる金線では困難であった。
【特許文献1】特開2002−190335
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、配線および回路自体を複雑にすることなく、均一なそして十分な接触圧力を確保することが容易であり、且つ高価な金属材料を使用する必要のないコネクタおよびこのコネクタに使用されるコンタクトを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
人工衛星等の非常に高い信頼性が必要な機器に使用される電子機器において、信号を伝送するコネクタに障害が発生すると、機器全体に影響を与えかねない。
【0010】
このため、コネクタを形成するインシュレータに、狭ピッチで各一対のコンタクトをそれぞれ収納する複数の貫通孔を形成し、複数のコンタクトのうち各一対のコンタクトをインシュレータに形成され幅の狭い貫通孔に収納する。そして各コンタクトの両端部に形成された一対の電気接触部を、相対する2つの配線基板の対応する接触ランドに位置合わせして接触させる。このために、各コンタクトが収納されるインシュレータの各貫通孔にコンタクト係止部を設け、弾性金属部材からなるコンタクトに形成された係止部と適合させるように配置する。
【0011】
即ち、この明細書の実施形態に係るコネクタは、複数のコンタクトを有するコネクタにおいて、前記コネクタは前記コンタクトを収納するための複数の貫通孔を有するインシュレータを含み、前記貫通孔内にはそれぞれ2個のコンタクトが配置されるコネクタを含む。
【0012】
さらに、前記複数のコンタクトは上端および下端に電気接触部を有するコネクタを含み、
前記複数の貫通孔の開口部が前記インシュレータ表面において直線状に配置されているコネクタを含み、
前記2個のコンタクトは前記貫通孔内において互いに並行して配置されているコネクタを含み、
前記貫通孔の内部壁には前記コンタクトを固定するための係止部が形成されているコネクタを含む。
【0013】
この明細書の実施の形態に係るコンタクトは、2個1組で使用されるコンタクトであって、それぞれその両端に、電子装置に使用される相対する2つの配線基板上の対応する電極部とそれぞれ電気的に接触する、一対の接触部が形成された弾性部材を有するコンタクトを含む。
【0014】
さらに、前記コンタクトは垂直方向に延在する柱状部と、前記柱状部の中央部から上下方向に前記一対の接触部まで蛇行して延在する帯状部を有するコンタクトを含み、
前記柱状部には前記コンタクトを収容するインシュレータの内部壁に係止するための複数の係止部が形成されているコンタクトを含み、
前記帯状部は横方向に延在するU字形状部および縦方向に延在するU字形状部を有するコンタクトを含む。
【0015】
またこの明細書の実施の形態に係る電子機器は、積層された複数の配線基板を有し、前記配線基板は互いにコネクタによって電気的に接続されており、前記コネクタは複数のコンタクトを収納するための複数の貫通孔を有するインシュレータを含み、前記複数の貫通孔内にはそれぞれ一対のコンタクトが配置されて成る電子機器を含む。
【発明の効果】
【0016】
このように、インシュレータの各貫通孔に、適切に適合するように工夫されたコンタクトをそれぞれ2個備えることにより、接触の保証用信号を別の1極分増やすことなく信頼性の高い信号処理ができ、コネクタの小型化に伴う、機器の小型化が可能となる。
【0017】
本発明においては金属コンタクトを用いる事により、繰り返しの抜去後の再使用を可能とする。また金属コンタクトを使用する事で、高い信号周波数での使用も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1および図2に本発明にかかるコネクタ10の実施の形態の一例を示す。図1は本発明の一実施形態にかかるコネクタの斜視図である。図2は図1の斜視図に示すコネクタの平面図(1)、立面図(2)そして側面図(3)である。
【0019】
例えば、プラスチック等の合成樹脂材料で形成されたコネクタハウジングとしてのインシュレータ11には、インシュレータ11を上下に貫通する複数の貫通孔12が一列に形成されており、複数の貫通孔12の開口部24は、インシュレータ表面において直線状に配置されている。各貫通孔には弾性を有する導電性部材からなる一対のコンタクト13が互いに並行するように挿入され固定されている。コンタクト13の上部には電気接触部14が形成され、上部配線基板15(図3参照)の対応する電極部16、即ち接触ランド、と電気的に接触する。
【0020】
インシュレータ11の左右双方の端部には、インシュレータ11の上方に突出する大径の第1ボス17が形成されている。第1ボス17はインシュレータ11と上部配線基板15との位置合わせに使用される。またインシュレータ11の左右双方の端部にはインシュレータ11の下方に突出する小径の第2ボス18が形成されている。第2ボス18は下部配線基板20との位置合わせに使用される。大径の第1ボス17には、その上部に配置される他のインシュレータ(図示せず)の下部から突出する小径ボスが挿入されう小径ボス収納孔21が形成されている。複数枚の配線基板を複数のコネクタ10を介して積層する場合には、下方に配置されたコネクタの第1ボス17の小径ボス収納孔21に、上方に配置された他のコネクタ小径の第2ボス18を挿入することにより、互いの位置合わせを行うことができる。なお配線基板には、表面に配線の形成された基板、多層の配線が形成された基板、半導体部品等の回路部品を含む基板、さらには表示装置やスイッチ装置等の電子モジュールを含む基板とすることが可能である。
【0021】
一般に、インシュレータ11の周囲には、インシュレータ11を機械的に補強し、且つ保護するために、インシュレータ11を囲む内部壁を有するフレーム(図示せず。図8のフレーム83参照)が配置される。インシュレータ11は、インシュレータ11の両端部に形成された複数のばね19によってフレームの内部壁と弾性的に接触させ固定させることができる。
【0022】
図3にコネクタ10と上部配線基板15および下部配線基板20との接続状態を示す。図3は、例えば複数の配線基板および複数のコネクタを有する実施形態に係る実装部品のうちの一部分を示すものと理解できる。図3には2枚の配線基板のみが示されているが、実際には複数のコネクタ10を介して多数の(例えば10枚の)配線基板を積層して使用することもできる。
【0023】
上部配線基板15の上面に並んで配置されている電極部23は、上部配線基板15の上部に配置されるコネクタ(図示されていない)の接触部と接触するための電極である。上部配線基板15および下部配線基板20にはボス挿入孔22形成され、コネクタ10と配線基板15、20との位置合わせに使用される。
【0024】
図4に、下部配線基板29と、金属弾性部材を用いて形成された一対のコンタクト13との接触状態を示す。図4ではインシュレータ11および他のコンタクト対を取り除いた状態が示されている。図4においては、一対のコンタクトは同一形状のコンタクトを互いに逆向きに配置した状態で使用している例が示されている。なお、本発明は一対のコンタクトに関し、同一形状のコンタクトの使用に限定されるものではない。
【0025】
また、一対のコンタクトは、互いに並行して鉛直に配置されている。コンタクト13の下方の一対の接触部14は、下部配線基板29の表面に形成された同一の電極部16と弾性的に接触している。このため、一方のコンタクト13に何らかの障害が発生しても、他方のコンタクトにより正常な信号伝送を行うことが可能となる。なお、電極部16との接触を良好に保つためには、コンタクト13の接触面14は破断面ではなく圧延加工面により形成されるのが望ましい。
【0026】
図5にこの実施形態において使用したコンタクト13の一例を示す。かかる形状は薄板金属板の打ち抜きにより、またはリソグラフィ処理により形成される。接触面14は紙面後方に、例えば図4に示すように、略U字形に折り曲げて形成される。かかる構造は基板15の表面に形成された電極部に対する接触面14の接触面積を大ききすることを可能とする。かかる構造を採用することにより、接触面14の表面を破断面ではなく圧延加工面により形成することが可能となる。
【0027】
なお、本発明におけるコンタクトは図5に示す形状に限定されるものではない。少なくとも、対向する2枚の配線基板に形成された対応する電極部(接触ランド)とそれぞれ電気的に接触する、少なくとも2つの接触面を有する、弾性部材からなるコンタクトであれば良い。
【0028】
図5に示す実施形態のコンタクト13の、垂直方向に延在する柱状部27には、インシュレータ11の内部壁にコンタクト13を係止するための鈎状の係止部25および凸部状の係止部26が形成されており、インシュレータ11の内部壁に確実に固定することができる。また柱状部27の中央部からは上下方向に上下の各接触部14に蛇行して延在する帯状部28を有する。帯状部28は横方向に延在するU字形状部30および縦方向に延在するU字形状部31を有する。かかる蛇行部分を有することにより配線基板の電極部16との間柔軟で確実な接触が可能となる。
【0029】
図6に図2のY−Y’における断面を示す。インシュレータ11に形成された貫通孔12の内部と、貫通孔12内に挿入され固定されたコンタクト13が示されている。インシュレータ11の内部壁35の上部にはコンタクト13の鉤状の係止部25を係止し、コンタクト13の下方への移動を制限する係止部を構成する溝部36が形成されている。また貫通孔12内にはコンタクト13の凸部状の係止部26と互いに組み合わされる凸部38を有する係止部40が形成されている。
【0030】
一対のコンタクト13は、貫通孔12内の部分的な隔壁41によって互いに一定の間隔で分離して配置されている。なお、上記実施の形態においては貫通孔12には2個のコンタクトを含む事例について示したが、例えば3個のコンタクトを含むように形成することも可能である。
【0031】
本発明においては、それぞれ2個のコンタクトをインシュレータの複数の貫通孔の相対する位置に配置するため、インシュレータとの係止部を接触部と離れた位置に配することができ、その離れた位置から伸びた接触部のバネ性を有する部分と垂直に曲げられた接触部を有することができる。かかる構造によりコンタクトは相対する位置に配置されても接触部は同じ線上に2列に並べることができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、必要に応じて種々の変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明にかかるコネクタの実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明にかかる図1に示すコネクタの平面図、立面図そして側面図である。
【図3】本発明にかかるコネクタと上部配線基板および下部配線基板との接続状態を示す図である。
【図4】下部配線基板と、金属弾性部材を用いて形成された本発明にかかる一対のコンタクトとの接触状態を示す図である。
【図5】本発明にかかるコンタクトの一例を示す図である。
【図6】インシュレータとそこに形成された貫通孔内に配置された本発明にかかるコンタクトの配置状態を示す断面図である。
【図7】2本の弾性接触アームを形成して2点接触させる従来技術によるコンタクトを示す図である。
【図8】従来技術によるシリコンゴムコネクタの分解図である。
【符号の説明】
【0034】
10… コネクタ 、 11… インシュレータ 、 12… 貫通孔 、 13… コンタクト 、 14… 接触部 、 15… 上部配線基板 、 16… 電極部(接触ランド) 、 17… 第1ボス 、 18… 第2ボス 、 19… ばね 、 20… 下部配線基板 、 21… 小径ボス収納孔 、 22… ボス挿入孔 、 23… 電極部 、 24… 開口部 、 25… 係止部 、 26… 係止部 、 27… 柱状部 、 28… 帯状部 、 30… 横方向U字形状部 、 31… 縦方向U字形状部 、 35… 内部壁 、 36… 溝部 、 38… 凸部 、 40… 係止部 、 41… 隔壁 、 70… コンタクト 、 71… 金属弾性部材 、 72… 相手方電極 、 73… 弾性接触アーム 、 75… シリコンゴムコネクタ 、 76… 配線基板 、 77… 配線基板 、 78… 信号伝達部材 、 79… 導電シート 、 81… 導電性繊維 、 83… フレーム、 84… 内部壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンタクトを有するコネクタにおいて、前記コネクタは前記コンタクトを収納するための複数の貫通孔を有するインシュレータを含み、前記貫通孔内にはそれぞれ2個のコンタクトが配置されるコネクタ。
【請求項2】
前記複数のコンタクトは上端および下端に電気接触部を有する請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記複数の貫通孔の開口部が前記インシュレータ表面において直線状に配置されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記2個のコンタクトは前記貫通孔内において互いに並行して配置されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記貫通孔の内部壁には前記コンタクトを固定するための係止部が形成されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項6】
2個1組で使用されるコンタクトであって、それぞれその両端に、電子装置に使用される相対する2つの配線基板上の対応する電極部とそれぞれ電気的に接触する、一対の接触部が形成された弾性部材を有するコンタクト。
【請求項7】
前記コンタクトは垂直方向に延在する柱状部と、前記柱状部の中央部から上下方向に前記一対の接触部まで蛇行して延在する帯状部を有する請求項6記載のコンタクト。
【請求項8】
前記柱状部には前記コンタクトを収容するインシュレータの内部壁に係止するための複数の係止部が形成されている請求項6記載のコンタクト。
【請求項9】
前記帯状部は横方向に延在するU字形状部および縦方向に延在するU字形状部を有する請求項6記載のコンタクト。
【請求項10】
積層された複数の配線基板を有し、前記配線基板は互いにコネクタによって電気的に接続されており、前記コネクタは複数のコンタクトを収納するための複数の貫通孔を有するインシュレータを含み、前記複数の貫通孔内にはそれぞれ一対のコンタクトが配置されて成る電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−66029(P2008−66029A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240277(P2006−240277)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(596029797)アイティーティー・マニュファクチャリング・エンタープライジズ・インコーポレーテッド (34)
【出願人】(301072650)NEC東芝スペースシステム株式会社 (62)
【Fターム(参考)】