説明

コネクタ付き蓋の接続構造

【課題】 コネクタ端子の嵌合作業を容易にして、しかも、シール性を確保することができるコネクタ付き蓋の接続構造を提供する。
【解決手段】 カバー10の頂壁10aにガイドピン21が設けられて、蓋2の底壁2aにガイドピン受け部22が設けられている。ガイドピン21には、弾性変形可能な係合凸部23が一体に形成されており、ガイドピン受け部22に形成された係合凹部24に嵌まり込んで係合するようになされている。この係合によって、ガイドピン(21)とガイドピン受け部(22)との軸方向の位置決めおよび抜け止めが果たされて、この係合時に蓋2の周壁2bの頂部とカバー10の頂壁10aとによってシール部材17が弾性変形させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタが設けられた蓋にコネクタが設けられたカバーを取り付ける際などに使用されるコネクタ付き蓋の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタ同士を接続するための接続構造は、特許文献1などに開示されており、また、モータを収容するケースを閉鎖するコネクタ付きの蓋にコネクタ付きのカバーを取り付ける構造として、図4に示すようなものが知られている。
【0003】
図4において、底壁を有する円筒状をなしケース(1)を閉鎖する蓋(2)にコネクタ(41)が設けられて、このコネクタ(41)付きの蓋に、頂壁を有する円筒状をなしコネクタ(42)が設けられたカバーが取り付けられている。
【0004】
蓋(2)のコネクタ(41)は、略円柱状のコネクタハウジング部(43)およびコネクタハウジング部(43)に設けられた端子挿入部(44)を有しており、カバー(40)のコネクタ(42)は、カバー(40)に一体成形された略円柱状のコネクタハウジング部(45)およびコネクタハウジング部(45)に突出状に設けられた端子(46)を有している。
【0005】
蓋(2)とカバー(40)とは、蓋(2)の外周面とカバー(40)の内周面とがちょうど嵌まり合う程度の嵌め合いとされており、カバー(40)の内周面に形成された環状溝(40a)に、Oリング(47)が嵌め入れられるとともに、カバー(40)の外周側から締付けバンド(48)が締め付けられることで、蓋(2)とカバー(40)との間のシール性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−84290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、モータを収容するケースを閉鎖するコネクタ付きの蓋にコネクタ付きのカバーを取り付ける場合、見えづらい場所での手作業となることがあり、コネクタ端子の接続が確実に行われないことがある。
【0008】
すなわち、図4に示した従来のものでは、カバー(40)を蓋(2)に取り付ける際、蓋(2)とカバー(40)との嵌め合い(インロー部)によって位置決めされ、その後に、コネクタハウジング部(43)(45)同士の嵌合およびコネクタ端子(46)と端子挿入部(44)との嵌合がこの順で行われる。この場合、カバー(40)に一体成形されたコネクタハウジング部(45)とコネクタ端子(46)との位置精度については、製造時に比較的大きなばらつきが生じるため、コネクタ端子(46)の端子挿入部(44)への嵌合がうまく行えないという問題があった。蓋(2)とカバー(40)との嵌め合いをゆるくすれば、この問題は小さくできるが、この場合には、Oリング(47)によるシール性が低下することから、コネクタ端子(46)の嵌合作業を容易にして、しかも、シール性を確保することが課題となっている。
【0009】
この発明の目的は、コネクタ端子の嵌合作業を容易にして、しかも、シール性を確保することができるコネクタ付き蓋の接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明によるコネクタ付き蓋の接続構造は、底壁を有する円筒状をなしケースを閉鎖する蓋に、コネクタハウジング部および端子挿入部を有するコネクタが設けられており、このコネクタ付きの蓋に、頂壁を有しかつ蓋より大径の円筒状をなし、コネクタハウジング部およびコネクタ端子を有するコネクタが設けられたカバーを取り付けるための接続構造であって、カバーの周壁の内周面と蓋の周壁の外周面との間に、所定量以上の間隙が形成されるとともに、蓋の周壁の頂部とカバーの頂壁との間に、弾性を有するシール部材が介在され、カバーの頂壁および蓋の底壁のいずれか一方の対向面にガイドピンが、同他方の対向面にガイドピン受け部が設けられて、ガイドピンおよびガイドピン受け部のいずれか一方に係合凸部が、同他方に係合凹部が設けられており、カバーが蓋に取り付けられる際に、ガイドピンとガイドピン受け部との嵌合、コネクタハウジング部同士の嵌合およびコネクタ端子と端子挿入部との嵌合がこの順で行われるようになされているとともに、係合凸部と係合凹部との係合によってガイドピンとガイドピン受け部との抜け止めが果たされて、この係合時に蓋の周壁の頂部とカバーの頂壁とによってシール部材が弾性変形させられるようになされていることを特徴とするものである。
【0011】
従来のものでは、カバーの周壁の内周面と蓋の周壁の外周面との間には、ほとんど隙間がなく、これらの嵌め合い(インロー部)が位置決め(芯合わせ)のためのガイド機能を有しているものとされていたのに対し、この発明においては、カバーの周壁の内周面と蓋の周壁の外周面との間に所定量以上の間隙が形成されることで、両者間の芯ずれが許容されており、カバーを蓋に取り付ける際に、カバーを所要量径方向に移動させることができる。そして、カバーの周壁の内周面と蓋の周壁の外周面との間の嵌め合いに代わるものとして、ガイドピンとガイドピン受け部との嵌合が採用されており、この嵌合とコネクタハウジング部同士の嵌合とによって位置決めされた状態で、コネクタ端子の端子挿入部への嵌合が行われるようになっている。カバーを蓋に取り付けていく際には、ガイドピンとガイドピン受け部との嵌合がコネクタハウジング部同士の嵌合よりも先に行われ、この段階では、コネクタハウジング部同士を嵌合させるために、カバーをある程度動かすことができ、これにより、コネクタハウジング部同士の嵌合が確実に行われ、これに続くコネクタ端子の嵌合作業が容易なものとなる。
【0012】
蓋およびカバーは、例えば、合成樹脂製とされて、コネクタとガイドピンまたはガイドピン受け部とが一体成形されたものとされる。
【0013】
ガイドピンは、円柱状または先端にいくに連れて細くなる円錐台状とされ、ガイドピン受け部は、円柱体にガイドピン形状に対応する有底の孔が設けられたものとされる。
【0014】
ガイドピンおよびガイドピン受け部には、さらに、いずれか一方に係合凸部が、同他方に係合凹部が設けられ、係合凸部と係合凹部との係合によって、ガイドピンとガイドピン受け部との軸方向の位置決めおよび抜け止めが果たされる。係合凸部および係合凹部は、蓋およびカバーに一体成形されたガイドピンまたはガイドピン受け部に一体に形成される。その形状は、係合凸部が例えば複数の爪または突起、係合凹部が複数の凹所または環状の溝などとされるが、これに限定されるものではない。
【0015】
シール性を確保するための構成としては、カバーの周壁の内周面と蓋の周壁の外周面との嵌め合いとOリングとを利用するのではなく、蓋の周壁の頂部とカバーの頂壁との間に介在された弾性を有するシール部材によって行われる。シール部材は、例えば、蓋の周壁の頂部に接着剤によって固定されるが、カバーの頂壁の下面に接着剤で固定されるようにしてもよい。ここで、シール部材によるシール機能を確実なものにするため、係合凸部と係合凹部との係合によって軸方向の位置決めがなされたときに、蓋の周壁の頂部とカバーの頂壁とによってシール部材が弾性変形させられるようになされる。言い換えると、係合凸部および係合凹部は、シール部材の弾性変形無しでは係合させることができない寸法とされる。具体的には、係合凸部と係合凹部とが係合したときの蓋の周壁の頂部とカバーの頂壁との距離に比べて、シール部材のフリー時の厚み(蓋の周壁とカバーの頂壁とに挟まれる部分の厚みで、蓋の周壁の頂部外周部分に被せられる部分を除いた部分の厚み)が大きくなされる。このようにすることで、シール性の確保とコネクタ端子の嵌合作業の容易さとが背反することがなくなり、コネクタ端子の嵌合作業を阻害することなく、シール性を確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明のコネクタ付き蓋の接続構造によると、カバーを蓋に取り付けていく際には、ガイドピンとガイドピン受け部との嵌合がコネクタハウジング部同士の嵌合よりも先に行われ、コネクタハウジング部同士を嵌合させるために、カバーをある程度動かすことができるので、コネクタハウジング部同士の嵌合が確実に行われ、これに続くコネクタ端子の嵌合作業が容易なものとなる。そして、蓋の周壁の頂部とカバーの頂壁との間に弾性を有するシール部材が介在されていることにより、コネクタ端子の嵌合作業を阻害することなく、シール性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、この発明のコネクタ付き蓋の接続構造の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】図2は、図1のコネクタ付き蓋の接続構造の接続前の状態を示す断面図である。
【図3】図3は、この発明のコネクタ付き蓋の接続構造の変形例を示す要部の拡大断面図である。
【図4】図4は、従来のコネクタ付き蓋の接続構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1および図2は、この発明によるコネクタ付き蓋の接続構造の第1実施形態を示している。
【0020】
この発明によるコネクタ付き蓋の接続構造は、底壁(2a)を有する円筒状をなし円筒状ケース(1)を閉鎖するコネクタ(11)付きの合成樹脂製蓋(2)と、頂壁(10a)を有する円筒状をなしコネクタ(11)付きの蓋(2)に取り付けられるコネクタ(12)付きの合成樹脂製カバー(10)と、蓋(2)とカバー(10)との間をシールする環状のシール部材(17)とを備えている。
【0021】
ケース(1)内には、例えばモータなどの電動機械が配置され、その電源やセンサ用の配線が蓋(2)のコネクタ(11)に接続され、カバー(10)のコネクタ(12)を外部接続用として、ケース(1)外に取り出される。
【0022】
蓋(2)に設けられているコネクタ(11)は、蓋(2)に一体成形された略円柱状のコネクタハウジング部(13)およびコネクタハウジング部(13)に設けられた端子挿入部(14)を有しており、カバー(10)に設けられたコネクタ(12)は、カバー(10)に一体成形された略円柱状のコネクタハウジング部(15)およびコネクタハウジング部(15)に設けられたコネクタ端子(16)を有している。コネクタ端子(16)は、その先端部がコネクタハウジング部(15)から突出しており、端子挿入部(14)は、コネクタ端子(16)の先端部が嵌め入れ可能な凹状に形成されている。
【0023】
カバー(10)の周壁(10b)の内周面と蓋(2)の周壁(2b)の外周面との間には、所定量以上の間隙(G)が形成されており、蓋(2)にカバー(10)を取り付ける際、蓋(2)に対してカバー(10)を径方向任意の方向にずらすことができる。
【0024】
カバー(10)の頂壁(10a)の蓋(2)の底壁(2a)に対向する面には、円柱状ガイドピン(21)が設けられており、蓋(2)の底壁(2a)のカバー(10)の頂壁(10a)に対向する面には、ガイドピン(21)がちょうど嵌め合わされる円柱状有底孔が形成されたガイドピン受け部(22)が設けられている。
【0025】
カバー(10)に設けられているコネクタハウジング部(15)は、蓋(2)に設けられているコネクタハウジング部(13)よりも小径とされて、カバー側のコネクタハウジング部(15)の先端部が蓋側のコネクタハウジング部(13)に設けられた凹部に嵌め入れられるようになされている。
【0026】
ガイドピン(21)には、さらに、弾性変形可能な係合凸部(23)が一体に形成されており、ガイドピン受け部(22)に形成された係合凹部(24)に嵌まり込んで係合するようになされている。この係合によって、ガイドピン(21)とガイドピン受け部(22)との軸方向の位置決めおよび抜け止めが果たされている。係合凸部(23)および係合凹部(24)の形状は、限定されないが、図1に示すように、係合凸部(23)を空洞部を有する突起とすると、係合凸部(23)が弾性変形しやすく、ガイドピン(21)のガイドピン受け部(22)への挿入および必要に応じての抜き出しが容易なものとなる。
【0027】
シール部材(17)は、蓋(2)の周壁(2b)の頂部に接着剤により固定されており、蓋(2)の周壁(2b)の頂部を嵌め入れるための凹溝(17b)がシール部材(17)に形成されている。シール部材(17)のフリー時の厚み(蓋(2)の周壁(2b)とカバー(10)の頂壁(10a)とに挟まれる部分の厚みで、蓋(2)の周壁(2b)の頂部外周部分に被せられる部分を除いた部分の厚み)は、係合凸部(23)と係合凹部(24)とが係合したときの蓋(2)の周壁(2b)の頂部とカバー(10)の頂壁(10a)との距離に比べて、大きくなされている。
【0028】
カバー(10)を蓋(2)に取り付ける前の状態では、図2に示すように、ガイドピン(21)先端とガイドピン受け部(22)先端との距離をA、カバー側のコネクタハウジング部(15)先端と蓋側のコネクタハウジング部(13)先端との距離をB、コネクタ端子(16)先端と端子挿入部(14)先端との距離をCとして、A<B<Cとされている。また、係合凸部(23)と係合凹部(24)とがちょうど係合するのに移動する距離Dと、カバー(10)の頂壁(10b)とシール部材(17)との距離Eとを比べると、E<Dとされている。
【0029】
したがって、カバー(10)を蓋(2)に取り付ける作業を行うと、最初に、ガイドピン(21)の先端部がガイドピン受け部(22)内に挿入されることで、第1の位置決めがなされ、次いで、カバー側のコネクタハウジング部(15)と蓋側のコネクタハウジング部(13)とが嵌まり合うことで、第2の位置決めがなされる。これにより、カバー(10)のコネクタ端子(16)が蓋(2)の端子挿入部(14)に確実に嵌まり合う位置決めが行われ、カバー(10)をさらに押すことで、コネクタ端子(16)が端子挿入部(14)にきっちりと挿入された状態で、カバー(10)が蓋(2)に取り付けられる。
【0030】
軸方向の位置決めは、ガイドピン(21)の係合凸部(23)とガイドピン受け部(22)の係合凹部(24)との係合によって果たされる。この状態において、カバー(10)と蓋(2)との間の間隙(G)は、シールされる必要があり、このシールは、E<Dとされていることから、図1に示す状態において、弾性を有するシール部材(17)が蓋(2)の周壁(2b)の頂部とカバー(10)の頂壁(10a)とによって挟持されて弾性変形させられることで達成される。こうして、カバー(10)の内周面と蓋(2)の外周面との間の間隙(G)のシール性が、蓋(2)とカバー(10)との嵌め合い(インロー部)およびOリングを使用せずに、蓋(2)とカバー(10)との芯ずれを許容して確保され、防水性に優れたものとなっている。
【0031】
なお、シール部材(17)が当接させられるカバー(10)の頂壁(10a)には、図3に示すように、シール部材(17)の幅よりも広い幅の環状溝(31)をシール受け面として設けておくことで、蓋(2)とカバー(10)との芯ずれを許容したシール性をより確実なものとすることができる。
【符号の説明】
【0032】
(1) ケース
(2) 蓋
(2a) 底壁
(2b) 周壁
(10) カバー
(10a) 頂壁
(10b) 周壁
(11) 蓋側のコネクタ
(12) カバー側のコネクタ
(13) 蓋側のコネクタハウジング部
(14) 端子挿入部
(15) カバー側のコネクタハウジング部
(16) コネクタ端子
(17) シール部材
(21) ガイドピン
(22) ガイドピン受け部
(23) 係合凸部
(24) 係合凹部
(G) 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁を有する円筒状をなしケースを閉鎖する蓋に、コネクタハウジング部および端子挿入部を有するコネクタが設けられており、このコネクタ付きの蓋に、頂壁を有しかつ蓋より大径の円筒状をなし、コネクタハウジング部およびコネクタ端子を有するコネクタが設けられたカバーを取り付けるための接続構造であって、
カバーの周壁の内周面と蓋の周壁の外周面との間に、所定量以上の間隙が形成されるとともに、蓋の周壁の頂部とカバーの頂壁との間に、弾性を有するシール部材が介在され、カバーの頂壁および蓋の底壁のいずれか一方の対向面にガイドピンが、同他方の対向面にガイドピン受け部が設けられて、ガイドピンおよびガイドピン受け部のいずれか一方に係合凸部が、同他方に係合凹部が設けられており、
カバーが蓋に取り付けられる際に、ガイドピンとガイドピン受け部との嵌合、コネクタハウジング部同士の嵌合およびコネクタ端子と端子挿入部との嵌合がこの順で行われるようになされているとともに、係合凸部と係合凹部との係合によってガイドピンとガイドピン受け部との抜け止めが果たされて、この係合時に蓋の周壁の頂部とカバーの頂壁とによってシール部材が弾性変形させられるようになされていることを特徴とするコネクタ付き蓋の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−232013(P2010−232013A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78301(P2009−78301)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】