説明

コネクタ端子の製造方法及びコネクタ端子

【課題】 後メッキ処理を施す場合と比べて、製造コストを抑えることができるコネクタ端子の製造方法及びコネクタ端子を得る。
【解決手段】 上段ターミナル22は、嵌合部24と、基板取付部26とを備える。このような上段ターミナル22を製造する際には、予め全周面にメッキ処理が施され嵌合部24の素になる第1線材と、予め全周面にメッキ処理が施され基板取付部26の素になる第2線材とが使用される。第1線材の端部と第2線材の端部とを互いに重ね合わせて例えばレーザ溶接処理等の処理を施すことで、第1線材と第2線材とが接合され、第1線材から嵌合部24が形成されると共に第2線材から基板取付部26が形成される。この結果、上段ターミナル22の表層が第1線材の周面のメッキ層と第2線材の周面のメッキ層とによって構成される。このため、後メッキ処理を不要にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付けによって基板に接続されるコネクタ端子の製造方法及びコネクタ端子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子装置や電子回路の基板上には、例えば表面実装コネクタ(所謂、SMTコネクタ)がはんだ付けによって実装されている。
【0003】
この種のコネクタは、例えば略矩形箱状に形成されたコネクタハウジングと、コネクタハウジングの側方に設けられた取付孔に挿入されて取り付けられた複数のコネクタ端子(ターミナル)とを備えている。複数のコネクタ端子は、それぞれメッキ処理が施されており、それぞれ下方(基板側)に折曲げられると共に先端部が基板上面にはんだ付けによって固定された構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、前述の如き複数のコネクタ端子は、板材から打ち抜かれて製作される。この複数のコネクタ端子を製作する際には、まず、非メッキ処理状態の板材(条材)を、プレス加工によって打ち抜き、櫛状(連鎖状)に繋がったワークを形成する。このプレス加工後(板材打ち抜き後)のワークは、全周囲(板材表面部分及び打ち抜き切断面部分共に)未だに非メッキ状態である。さらにその後に、所謂後メッキ処理によって、全周囲(板材表面部分及び打ち抜き切断面部分共に)メッキを施す。またさらに、メッキが錫メッキである場合には、ウィスカーの発生を抑えるための特別な処理を施す。以上によって処理された各ワークは、表面実装されるコネクタに応じて曲げ加工されてコネクタ端子として使用される。
【0005】
このように、従来の製造方法によれば、各コネクタ端子の全周囲に亘って確実にメッキを施すことができる。
【0006】
しかしながら、前述の如き従来の製造方法では、プレス加工後(板材打ち抜き後)の櫛状に繋がった複雑な形状のワークに所謂後メッキ処理によってワークの全周囲にメッキ層を形成するため、メッキ層の膜厚が後メッキ部分によってばらつき、全体としてメッキ層の膜厚を均一にすることが困難である。メッキ層の膜厚が不揃いであると、例えばコネクタ端子と当該コネクタ端子に対応する雌ターミナルとの挿抜力が上がり、本コネクタと当該コネクタに対応する雌コネクタとの嵌め合い作業の観点から好ましくない。
【0007】
またそして、このような後メッキ処理は、先メッキ処理と比べて、処理コストが非常に高くつく、という問題がある。この場合、先メッキ処理の施された板材からワークを打ち抜いてコネクタ端子を製作することが考えられるが、切断面部分は当然ながら非メッキ状態であり、この部分にメッキ層が必要とされるとき(例えば、この切断面部分がはんだ付けされる部位であるとき)には、後メッキ処理を省くことができない。このため、後メッキ処理を行うことで生じる処理コストの問題は根本的には解決されず、メッキ処理のコスト、ひいてはコネクタ端子の製造コストを抑えるための対策が望まれていた。
【0008】
またそして、後メッキ処理として錫メッキ処理がワークに施されるときには、ウィスカーの発生を抑えるための特別な処理をメッキ層に施すことが不可欠となるため、さらに処理コストが高くつく、という問題も生じていた。
【特許文献1】特開2001−110491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、後メッキ処理を施す場合と比べて、製造コストを抑えることができるコネクタ端子の製造方法及びコネクタ端子を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明に係るコネクタ端子の製造方法は、基板上に実装されたコネクタハウジングに取り付けられ、相手側コネクタの接続端子と嵌合する嵌合部と、前記基板に接続される基板取付部と、を備えたコネクタ端子の製造方法において、それぞれ予め全周面にメッキ処理の施された第1線材と第2線材とを、それぞれ互いの端部を重ね合わせて接合し、前記第1線材から前記嵌合部を形成すると共に前記第2線材から前記基板取付部を形成した、ことを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明に係るコネクタ端子の製造方法では、それぞれ予め全周面にメッキ処理の施された第1線材と第2線材とが、それぞれ互いの端部を重ね合わせて、例えば溶接処理等の処理が施されることで接合される。
【0012】
次いで、例えば第2線材に曲げ加工を施して、第1線材からコネクタ端子の嵌合部が形成されると共に第2線材からコネクタ端子の基板取付部が形成される。
【0013】
このようにして製造されたコネクタ端子では、その表層が第1線材の周面のメッキ層と第2線材の周面のメッキ層とによって構成されるため、後メッキ処理を不要にできる。
【0014】
従って、請求項1記載のコネクタ端子の製造方法は、後メッキ処理を施す場合と比べて、メッキ処理のコスト、ひいてはコネクタ端子の製造コストを抑えることができる。
【0015】
また、本コネクタ端子の製造方法では、例えば、板状の条材にプレス加工を施して、プレス加工後(板材打ち抜き後)の櫛状に繋がった複雑な形状のワークを形成する作業が不要となり、2本の線材を接合するという簡単な加工でコネクタ端子を製造できる。このため、複雑な形状のワークを形成する場合に比べて、材料歩留りが向上する。
【0016】
また、本コネクタ端子の製造方法によって製造されたコネクタ端子のメッキ層は、予め第1線材及び第2線材の各全周面に形成されたメッキ層で構成されるので、メッキ厚のバラツキが少ない。従って、製品精度の高いコネクタ端子を製造できる。
【0017】
請求項2に記載の発明に係るコネクタ端子の製造方法は、請求項1記載の発明において、前記第2線材として、前記第1線材の太さよりも細い線材を使用する、ことを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載の発明に係るコネクタ端子の製造方法によれば、第2線材の太さが第1線材の太さよりも細いため、コネクタ端子の基板取付部の太さは、嵌合部の太さよりも細くなる。
【0019】
このようなコネクタ端子は、例えば、基板に実装されたコネクタハウジングの側方に、基板に垂直な方向に2段に取り付けられる。この場合には、第1線材から形成された嵌合部と第2線材から形成された基板取付部とが基板面に平行な面上で互いに隣り合うようにコネクタ端子がコネクタハウジングに取り付けられ、しかもこの隣り合う方向に沿った嵌合部と基板取付部との位置が一方の段のコネクタ端子と他方の段のコネクタ端子とで互いに逆になるようにそれぞれの段のコネクタ端子がコネクタハウジングに取り付けられる。
【0020】
ここで、前述の如く基板取付部の太さは嵌合部の太さよりも細いため、一方の段のコネクタ端子の基板取付部と、他方の段の基板取付部とを、互いに干渉し合うことなく基板に取り付けることができる。
【0021】
請求項3に記載の発明に係るコネクタ端子は、基板上に実装されたコネクタハウジングに取り付けられ、相手側コネクタの接続端子と嵌合する嵌合部と、前記基板に接続される基板取付部と、を備えたコネクタ端子において、前記嵌合部は、予め全周面にメッキ処理の施された第1線材から形成され、前記基板取付部は、予め全周面にメッキ処理の施された第2線材から形成され、端部が前記第1線材の端部に重ね合わせて接合された、ことを特徴とする。
【0022】
請求項3に記載の発明に係るコネクタ端子によれば、基板上に実装されたコネクタハウジングに取り付けられて使用される。コネクタ端子は、嵌合部と基板取付部とを備えており、嵌合部が相手側コネクタの接続端子と嵌合すると共に、基板取付部が基板に接続される。
【0023】
このようなコネクタ端子を製造する際には、予め全周面にメッキ処理の施された第1線材と、予め全周面にメッキ処理の施された第2線材とが使用される。第1線材の端部と第2線材の端部とは互いに重ね合わせて例えば溶接処理等の処理が施されることで接合され、第1線材から嵌合部が形成されると共に第2線材から基板取付部が形成される。
【0024】
このようにして製造されたコネクタ端子では、その表層が第1線材の周面のメッキ層と第2線材の周面のメッキ層とによって構成されるため、後メッキ処理を不要にできる。
【0025】
従って、請求項3記載のコネクタ端子は、後メッキ処理を施す場合と比べて、メッキ処理のコスト、ひいてはコネクタ端子の製造コストを抑えることができる。
【0026】
また、本コネクタ端子を製造する際には、例えば、板状の条材にプレス加工を施して、プレス加工後(板材打ち抜き後)の櫛状に繋がった複雑な形状のワークを形成する作業が不要となり、2本の線材を接合するという簡単な加工でコネクタ端子を製造できる。このため、複雑な形状のワークを形成する場合に比べて、材料歩留りが向上する。
【0027】
また、本コネクタ端子のメッキ層は、予め第1線材及び第2線材の各全周面に形成されたメッキ層で構成されるので、メッキ厚のバラツキが少ない。従って、本コネクタ端子は、製品精度を向上させることができる。
【0028】
請求項4に記載の発明に係るコネクタ端子は、請求項3記載の発明において、前記基板取付部の太さは、前記嵌合部の太さよりも細い、ことを特徴とする。
【0029】
請求項4に記載の発明に係るコネクタ端子では、例えば、第2線材の太さを第1線材の太さよりも細いものとすることで、コネクタ端子の基板取付部の太さが、嵌合部の太さよりも細くなる。
【0030】
このようなコネクタ端子は、例えば、基板に実装されたコネクタハウジングの側方に、基板に垂直な方向に2段に取り付けられる。この場合には、第1線材から形成された嵌合部と第2線材から形成された基板取付部とが基板面に平行な面上で互いに隣り合うようにコネクタ端子がコネクタハウジングに取り付けられ、しかもこの隣り合う方向に沿った嵌合部と基板取付部との位置が一方の段のコネクタ端子と他方の段のコネクタ端子とで互いに逆になるようにそれぞれの段のコネクタ端子がコネクタハウジングに取り付けられる。
【0031】
ここで、前述の如く基板取付部の太さは嵌合部の太さよりも細いため、一方の段のコネクタ端子の基板取付部と、他方の段の基板取付部とを、互いに干渉し合うことなく基板に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明した如く本発明に係るコネクタ端子の製造方法及びコネクタ端子は、後メッキ処理を施す場合と比べて、製造コストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の実施の形態に係る表面実装コネクタ(以下、SMTコネクタともいう)10に適用されるコネクタ端子としての上段ターミナル22及び下段ターミナル28について、図1乃至図6に基づいて説明する。なお、説明の都合上、図1乃至図6において矢印Aにて示す方向を前方、矢印Aと直交する矢印Bにて示す方向を右側方、矢印A及び矢印Bの双方と直交する矢印Cにて示す方向を上方ということとする。
【0034】
図1には、SMTコネクタ10と、このSMTコネクタ10が実装される基板(例えばスクリーン印刷等によってランドが印刷されたプリント基板)12との概略が、側断面図にて示されている。
【0035】
SMTコネクタ10は、コネクタハウジングとしてのコネクタ本体14を備えている。コネクタ本体14は、例えば略矩形箱状に形成されており、基板12上に実装された状態でこの基板12に対して立設される背壁16を有している。この背壁16には、左右方向に沿って並列して配置された複数の上段ターミナル取付孔18と、左右方向に沿って並列して配置された複数の下段ターミナル取付孔20とが形成されている(図2参照)。図1及び図2に示されるように、上段ターミナル取付孔18は、それぞれ下段ターミナル取付孔20の直上(ただし、背壁16の左右方向中央部を除く)に形成されている。上段ターミナル取付孔18は上段ターミナル22に対応した形状に形成されており、下段ターミナル取付孔20は下段ターミナル28に対応した形状に形成されている(図2参照)。
【0036】
また、SMTコネクタ10は、左右方向に沿って並列して配置された複数の上段ターミナル22と、左右方向に沿って並列して配置された複数の下段ターミナル28とを備えている。図1及び図2に示されるように、上段ターミナル22は、それぞれ下段ターミナル28の直上(基板12に垂直な上下方向。ただし、背壁16の左右方向中央部を除く)に配置されている。
【0037】
上段ターミナル22は、コネクタ本体14の背壁16に設けられた上段ターミナル取付孔18に係合される嵌合部24を備えている(図1乃至図3参照)。嵌合部24は、断面が四角形(例えば、正方形)とされしかも予め全周面にメッキ処理(例えば、錫メッキ処理)が施された第1線材24A(例えば、0.50メッキ線材。図4及び図5参照)から形成されており、その基端部が前述の上段ターミナル取付孔18に取り付けられている。
【0038】
このような嵌合部24の左側方には、基板取付部26が密着又は圧着して接合されている(図1乃至図3参照)。基板取付部26は、断面が四角形(例えば、正方形)とされしかも予め全周面にメッキ処理(例えば、錫メッキ処理)が施された第2線材26A(例えば、0.30メッキ線材。図4及び図5参照)から形成されている。この第2線材26Aは、嵌合部24の素になる第1線材24Aの太さt1よりも細い(太さt2)線材とされている。この基板取付部26の基端部(嵌合部24側の端部)は基板12面に平行な面上で嵌合部24の基端部の左側方に重ね合わされた状態で接合されており(すなわち、基板取付部26は、嵌合部24に対して左側にオフセットされており)、嵌合部24と共に上段ターミナル取付孔18に係合されて取り付けられている。さらに、基板取付部26は、途中で下方(基板12側)に屈曲している。
【0039】
基板取付部26の先端部(嵌合部24とは反対側の端部)は、基板12上面に沿うように屈曲して形成されている。この基板取付部26の先端部は、はんだ付けにて基板12に固定(基板12上に実装)されている(図1参照。なお、基板取付部26の先端部に対応して基板12上に設けられたはんだフィレットについては図示省略)。
【0040】
一方、下段ターミナル28は、コネクタ本体14の背壁16に設けられた下段ターミナル取付孔20に係合される嵌合部30を備えている(図1乃至図3参照)。基板取付部32は、予め全周面にメッキ処理が施された線材であって前述の上段ターミナル22の嵌合部24の素になる線材と同一の第1線材24Aから成っており、その基端部が前述の下段ターミナル取付孔20に取り付けられている。
【0041】
このような嵌合部30の右側方には、基板取付部32が密着又は圧着して接合されている(図1及び図2参照)。基板取付部32は、予め全周面にメッキ処理が施された線材であって前述の上段ターミナル22の基板取付部26の素になる線材と同一の第2線材26Aから成っており、従って、この第2線材26Aは、嵌合部30の素になる線材24Aの太さt1よりも細い(太さt2)線材とされている。この基板取付部32の基端部(嵌合部30側の端部)は基板12面に平行な面上で嵌合部30の基端部の右側方に重ね合わされた状態で接合されており(すなわち、基板取付部32は、嵌合部30に対して右側にオフセットされており)、嵌合部30と共に下段ターミナル取付孔20に係合されて取り付けられている。さらに、基板取付部32は、途中で下方(基板12側)に屈曲している。
【0042】
基板取付部32の先端部(嵌合部30とは反対側の端部)は、基板取付部32が基板12上面に沿うように屈曲して形成されている。この基板取付部32の先端部は、はんだ付けにて基板12に固定(基板12上に実装)されている(図1参照。なお、基板取付部32の先端部に対応して基板12上に設けられたはんだフィレットについては図示省略)。
【0043】
このような基板取付部26及び基板取付部32は、基板12上に実装された状態では、左右方向に(矢印B方向に沿って)基板取付部26と基板取付部32とが交互に離間して(すなわち、互いに干渉しないで)一直線上に並んでいる(図2参照)。すなわち、上段ターミナル22と下段ターミナル28とが左右方向の同位置でコネクタ本体14に上下2段に取り付けられていても、上段ターミナル22の基板取付部26と下段ターミナル28の基板取付部32とが干渉せずに、基板12に左右方向に沿って一直線上に取り付けられている。
【0044】
以上説明したように上段ターミナル22及び下段ターミナル28は、それぞれ背壁16を貫通してコネクタ本体14の後方に突出し基板12に実装されている。このように、SMTコネクタ10は、雄型コネクタとされており、外部端子である雌型コネクタに接続されるようになっている。この接続状態では、雄型ターミナルである上段ターミナル22及び下段ターミナル28は、これらの嵌合部24及び嵌合部30がそれぞれ外部端子に設けられた雌型ターミナル(相手側端子)の嵌合部に嵌合して導通状態で接続されるようになっている。
【0045】
次に、本発明の実施の形態の作用について説明する。
【0046】
以下、説明の都合上、上段ターミナル22を例に取り、その製造手順について説明する。
【0047】
まず、図4に示されるように、それぞれ予め全周面にメッキ処理の施された第1線材24Aと第2線材26Aとが、それぞれ互いの端部(第1線材24Aの基端部25及び第2線材26Aの基端部27)を重ね合わせて(すなわち、密着又は圧着させて)並べられる。この場合において、第1線材24Aの底面(図4において、矢印C方向に互いに対向する一対の面のうち矢印Cの基端部側に位置する面)と、第2線材26Aの底面(図4において、矢印C方向に互いに対向する一対の面のうち矢印Cの基端部側に位置する面)とが同一平面上に位置するように、第1線材24Aと第2線材26Aとが隣り合わせに並べられる。
【0048】
次いで、図5に示されるように、第1線材24Aの基端部25と、第2線材26Aの基端部27との隣り合った部分(ここでは、互いに密着又は圧着した部分)に、例えばレーザ溶接処理等の溶接処理が施されることで、この隣り合った部分が接合される。
【0049】
次いで、このようにして接合された第1線材24Aと第2線材26Aとは、互いに接合された状態のままで、コネクタ本体14の上段ターミナル取付孔18に第1線材24Aの先端部(第2線材26Aとは反対側の端部)側から圧入される。
【0050】
次いで、この圧入処理によって第1線材24Aの基端部25と第2線材26Aの基端部27とが共に上段ターミナル取付孔18に係合されると、第1線材24Aと第2線材26Aとの圧入処理が完了し、第1線材24Aと第2線材26Aとが上段ターミナル取付孔18、すなわちコネクタ本体14に取り付けられる。この結果、第1線材24Aは、嵌合部24とされる。
【0051】
次いで、コネクタ本体14の外部(後方)に突出している第2線材26Aのうち基端部27側(嵌合部24側)が下方(基板12側)に曲げ加工されると共に、先端部側(嵌合部24とは反対側)が基板12の上面に沿うように曲げ加工される。この結果、第2線材26Aは、基板取付部26とされる。
【0052】
以上のようにして、上段ターミナル22が製造される。
【0053】
ここで、前述の如く製造された上段ターミナル22では、その表層が第1線材24Aの周面のメッキ層と第2線材26Aの周面のメッキ層とによって構成されるため、後メッキ処理を不要にできる。
【0054】
従って、本実施の形態の上段ターミナル22の製造方法は、後メッキ処理を施す上段ターミナルの製造方法と比べて、メッキ処理のコスト、ひいては上段ターミナル22の製造コストを抑えることができる。
【0055】
また、本上段ターミナル22の製造方法では、例えば、板状の条材にプレス加工を施し、プレス加工後(板材打ち抜き後)の櫛状に繋がった複雑な形状のワークを形成する作業が不要となり、2本の線材(第1線材24A及び第2線材26A)を接合するという簡単な加工で上段ターミナル22を製造できる。このため、複雑な形状のワークを形成する上段ターミナルの製造方法に比べて、材料歩留りが向上する。
【0056】
また、本上段ターミナル22の製造方法によって製造された上段ターミナル22のメッキ層は、予め第1線材24A及び第2線材26Aの各全周面に形成されたメッキ層で構成されるので、メッキ厚のバラツキが少ない。従って、製品精度の高い上段ターミナル22を製造できる。
【0057】
以上、上段ターミナル22の製造方法について説明したが、下段ターミナル28の製造方法については、嵌合部30の素になる第1線材24A(嵌合部24の素になる第1線材24Aと同一)に対して基板取付部32の素になる第2線材26A(基板取付部26の素になる第2線材26Aと同一)を重ね合わせる位置が、前述の上段ターミナル22を製造する際と比べて左右正反対である点を除いて他は同様であるため、その説明を省略する。
【0058】
また、本実施の形態では、上段ターミナル22の基板取付部26の素になると共に下段ターミナル28の基板取付部32の素になる第2線材26Aの太さt2が、上段ターミナル22の嵌合部24の素になると共に下段ターミナル28の嵌合部30の素になる第1線材24Aの太さt1よりも細いため、上段ターミナル22の嵌合部24の太さは、基板取付部26の太さよりも細くなる。このため、上段ターミナル22と下段ターミナル28とが左右方向の同位置でコネクタ本体14に上下2段に取り付けられていても、上段ターミナル22の基板取付部26と、下段ターミナル28の基板取付部32とを、互いに干渉し合うことなく基板12に取り付けることができる。このため、基板取付部26と基板取付部32との干渉を避けるために、基板取付部26の基板12への取付位置を基板取付部32の基板12への取付位置よりも後方にずらして(基板取付部26の基板12への取付位置と基板取付部32の基板12への取付位置とを前後方向に離間させて)基板取付部26及び基板取付部32を基板12に固定する必要がなく、基板取付部26及び基板取付部32を基板12に取り付けるための領域、ひいてはSMTコネクタ10を基板12に取り付けるための領域(基板12上での面積)を小さくできて、好適である。
【0059】
なお、本実施の形態では、上段ターミナル22及び下段ターミナル28の製造過程において、第1線材24Aの基端部25と第2線材26Aの基端部27とを接合する際に、例えばレーザ溶接処理等の溶接処理を施したが、本発明は、これに限らない。例えば、図6(この図では、上段ターミナル22の製造過程における第1線材24Aと第2線材26Aとを図示)に示されるように、第1線材24Aの基端部25と第2線材26Aの基端部27とを接合する際、第1線材24Aの基端部25と第2線材26Aの基端部27との周囲に、帯状の締結部材(例えば、薄肉の金属プレート)34を曲げ加工により巻き付けることで(第1線材24Aの基端部25と第2線材26Aの基端部27とが互いに密着又は圧着している部分を除く)第1線材24Aの基端部25と第2線材26Aの基端部27とをかしめ、これにより、第1線材24Aの基端部25と第2線材26Aの基端部27とを接合してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態に係る表面実装コネクタが基板上に実装された状態を示す側断面図である。
【図2】表面実装コネクタの後面図である。
【図3】図1の側断面図においてコネクタ端子の接合部分付近を拡大した拡大図である。
【図4】コネクタ端子の製造工程における斜視図であり、第1線材の基端部に第2線材の基端部を重ねた状態を示す図である。
【図5】コネクタ端子の製造工程において、第1線材の基端部と第2線材の基端部との接合例を示す上面図である。
【図6】第1線材の基端部と第2線材の基端部との他の接合例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0061】
10 表面実装コネクタ
12 基板
14 コネクタ本体(コネクタハウジング)
22 上段ターミナル(コネクタ端子)
24 嵌合部
24A 線材(第1線材)
25 基端部(第1線材の端部)
26 基板取付部
26A 線材(第2線材)
27 基端部(第2線材の端部)
28 下段ターミナル(コネクタ端子)
30 嵌合部
32 基板取付部
t1 太さ(第1線材の太さ)
t2 太さ(第2線材の太さ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に実装されたコネクタハウジングに取り付けられ、相手側コネクタの接続端子と嵌合する嵌合部と、前記基板に接続される基板取付部と、を備えたコネクタ端子の製造方法において、
それぞれ予め全周面にメッキ処理の施された第1線材と第2線材とを、それぞれ互いの端部を重ね合わせて接合し、
前記第1線材から前記嵌合部を形成すると共に前記第2線材から前記基板取付部を形成した、
ことを特徴とするコネクタ端子の製造方法。
【請求項2】
前記第2線材として、前記第1線材の太さよりも細い線材を使用する、
ことを特徴とする請求項1記載のコネクタ端子の製造方法。
【請求項3】
基板上に実装されたコネクタハウジングに取り付けられ、相手側コネクタの接続端子と嵌合する嵌合部と、前記基板に接続される基板取付部と、を備えたコネクタ端子において、
前記嵌合部は、予め全周面にメッキ処理の施された第1線材から形成され、
前記基板取付部は、予め全周面にメッキ処理の施された第2線材から形成され、端部が前記第1線材の端部に重ね合わせて接合された、
ことを特徴とするコネクタ端子。
【請求項4】
前記基板取付部の太さは、前記嵌合部の太さよりも細い、
ことを特徴とする請求項3記載のコネクタ端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−202617(P2006−202617A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13348(P2005−13348)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】