説明

コネクタ

【課題】接触安定性を増したカードコネクタを提供する。
【解決手段】ICカード6の外部端子7と接続されるコネクタ端子11の接触端子部を、ICカード6の挿入方向に沿って2箇所配置するとともに、一方の接触端子部13は、ICカード6の挿入方向と直交する方向に沿ってICカード6の外部端子7と線接触するように構成し、他方の接触端子部12は、ICカード6の外部端子7と点接触するように構成する。これら接触形態の異なる2種類の接触端子部によって外部端子7と接続させることにより、ICカード6の外部端子7に付着した異物等による接触不良の影響を軽減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカード等のカード状電子機器が挿入されたときに該カード状電子機器の外部端子と接触して電気的接続を行うコネクタに関し、特に接触端子部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードコネクタは、携帯電話機、デジタルカメラ等の小型電子機器に備えられ、種々のデータを記憶するSIMカード、マルチメディアカード、メモリーカード等のICカードを装着して、ICカードと電子機器間でデータの入出力を行うことにより小型電子機器の機能拡張等を行う手段として用いられている。
【0003】
図1は、本発明が適用されるカードコネクタの一例を示す斜視図であり、図7は、図1のカードコネクタにおける従来例を示すa−a’線に沿う断面図である。また、図8、図9は、従来例のカードコネクタにICカードが挿入されるときの状態を示す断面図である。
【0004】
カードコネクタ1は、金属あるいは樹脂材からなる上ケース2と樹脂材である下ケース3とが上下に組み合わせて構成され、その一端にカード挿入口9が設けられている。下ケース3には、カード挿入口9から挿入されたICカード6の外部端子7との電気的接続を行う接触端子部5、およびカードコネクタ1が電子機器基板に取り付けられたときに基板に設けられた接続端子と半田付けされる半田付け端子部10が一体に形成された導電性と弾性を有するコネクタ端子4が圧入により組み込み保持されている。
【0005】
このカードコネクタ1にカード挿入口9からICカード6が挿入されると、この導電性と弾性を有するコネクタ端子4が、ICカード6の下面で押し付けられることにより下方向に湾曲され、ICカード6が完全に挿入されたとき、ICカード6の外部端子7とコネクタ端子4の接触端子部5が圧接されて、カードコネクタ1とICカード6が電気的に接続される。
【0006】
その際、ICカード6の外部端子7に絶縁異物8が付着していると、図9に示すように、接触端子部5とICカード6の外部端子7の接触界面に絶縁異物8が介在して接触不良を発生させる問題があった。また、このような場合、一度、ICカード6を抜き取り、ICカード6の外部端子7を拭くなどして、絶縁異物8を外部端子7から取り除いてから再度、ICカード6をコネクタ1のカード挿入口9から挿入しなければならず、操作が煩雑となる。
【0007】
このような問題を解決する手段として、特許文献1には、導電性を有する弾性材によって形成された接触子を備え、ICカードの外部端子に圧接される接触部がこの接触子の先端部を屈曲させるように形成されたカードコネクタにおいて、前記接触子に接触部を複数並設し、接触子をICカードの外部端子に複数個所で接触させることにより、導通不良を起こし難くする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−122982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の発明によれば、カードコネクタの接触子は、ICカードの外部端子と複数個所で接触しているので、導通不良を起こし難くなるが、特許文献1に記載の発明では、カードコネクタの接触子に設けられている複数の接触部は全て同じ構成の接触部として形成されているので、例えば、外部端子上に比較的広範囲に絶縁性の異物が付着されている場合、これら複数の接触部がこの異物から同じ影響を受けて全ての接触部で動通不良を起こす虞がある。
【0010】
本発明の目的は、上述した課題を解決することが可能な、挿入されたカード状電子機器の外部端子と接触して電気的接続を行うコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のコネクタは、被接続体挿入口と、導電性を有する弾性材からなり先端部側に前記被接続体挿入口から挿入された被接続体により押圧されて該被接続体の外部端子と接触して電気的接続を行う接触端子部が設けられたコネクタ端子とを備えたコネクタにおいて、前記コネクタ端子には、前記外部端子と点接触するように構成された第1の接触端子部および前記被接続体挿入方向と直交する方向に沿って前記外部端子と線接触するように構成された第2の接触端子部を含む複数の前記接触端子部が、前記被接続体挿入方向に沿って配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、コネクタの1端子あたりの接触端子部を被接続体挿入方向に沿って複数配置するとともに、該複数の接触端子部の一部は、前記被接続体挿入方向と直交する方向に沿って被接続体の外部端子と線接触するように構成された接触端子部として形成し、また、該複数の接触端子部の内の一部は、前記外部端子と点接触するように構成された接触端子部として形成することにより、接触形態の異なる2種類の接触端子部による接続構成としているので、被接続体の外部端子に付着した異物による接触不良の影響を軽減することができる。
【0013】
また、2種類の接触端子部のうち、一方は、被接続体挿入方向と直交する方向に沿って被接続体の外部端子と線接触するように構成しているので、被接続体の外部端子に付着した異物を被接続体の外部端子表面から掃き出す効果が得られ、他方は、被接続体の外部端子と点接触するように構成しているので、線接触よりは接触面積が少なくなり、異物の影響を受けにくくすることで、より接触安定性を増したカードコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明が適用されるカードコネクタの一例を示す外観斜視図である。
【図2】図1のa−a’線に沿う本発明の実施形態を示すカードコネクタの断面図である。
【図3】本実施形態のカードコネクタにICカードが挿入されるときの状態を示す図である。
【図4】本実施形態のカードコネクタにICカードが挿入されるときの状態を示す図である。
【図5】図4のA−A’線に沿ったICカードの外部端子7と第1の接触端子部12の接触状態を示す断面図である。
【図6】図4のB−B’線に沿ったICカードの外部端子7と第2の接触端子部13の接触状態を示す断面図である。
【図7】従来のカードコネクタの断面図である。
【図8】従来のカードコネクタにICカードが挿入されるときの状態を説明するための図である。
【図9】従来のカードコネクタにICカードが挿入されるときの状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明が適用されるカードコネクタの一例を示す外観斜視図であり、図2は、図1のa−a’線に沿う本発明の実施形態を示すカードコネクタの断面図である。また、図3、図4は、本実施形態のカードコネクタにICカードが挿入されるときの状態を示している。
【0016】
本実施形態のコネクタ1も、樹脂材あるいは金属からなる上ケース2と樹脂材である下ケース3とを上下に組み合わせて構成されている。下ケース3は、基板からの電気接続する為の半田付け端子部10とICカード6の挿入方向と同一直線上にICカード6との電気的接続を行う第1の接触端子部12及び第2の接触端子部13を備えた導電性を有する弾性材であるコネクタ端子11を圧入により組み込み保持された構造になっている。
【0017】
また図5及び図6は、図4のA−A’線、B−B’線にそれぞれ沿ったICカード6の外部端子7と第1の接触端子部12及び第2の接触端子部13との間の接触状態を示す断面図である。
【0018】
本実施形態におけるコネクタ端子11の第1の接触端子部12は、ICカード6の外部端子7との接触界面が点接触となるように、その頂点で外部端子7と点接触する半球面状(断面円弧状の形状14)に形成された構造となっている。
【0019】
一方、コネクタ端子11の第2の接触端子部13は、ICカード6の外部端子7との接触界面がコネクタ端子11の横幅に亘って線接触されるように、その一辺(横幅)が外部端子7と線接触する断面矩形状15に形成された構造になっている。
【0020】
このように、本実施形態のコネクタ端子11は、その先端部側に設けられてICカード6の外部端子7と接触して電気的接続される接触端子部を、その頂点で外部端子7と点接触する半球面状に形成された第1の接触端子部12と、コネクタ端子11の横幅に亘って外部端子7と線接触する断面矩形状に形成された第2の接触端子部13とを、ICカード6の挿入方向に沿って併設した2接点構造を有している。
【0021】
従って、ICカード6がカード挿入口9から挿入される際、最初にICカードの外部端子7と接触する第2の接触端子部13を、コネクタ端子の横幅に亘って線接触させる形態とすることによって、第2の接触端子部13により埃等の絶縁異物8を外部端子7外へ掃き出すように作用させることができ、一方、第1の接触端子部12は、点接触となるように形成されているので、接触面積が少なくなり、異物の影響を受けにくくすることができる。
【0022】
次に、本実施形態の動作について、図2〜図6を参照して説明する。
【0023】
図2に示すカードコネクタ1のカード挿入口9からICカード6が挿入される途中段階では、図3に示すように、点接触形態に構成された第1の接触端子部12がICカード6の外部端子7と接触するより先に、線接触形態に構成された第2の接触端子部13がICカード6の外部端子7と接触することになる。従って、ICカード6の外部端子7に埃等の絶縁異物8が付着していた場合、まず先に第2の接触端子部13に触れることになる。
【0024】
絶縁異物8が第2の接触端子部13に接触した状態から、さらにICカード6を挿入すると、線接触形態に構成された第2の接触端子部13が絶縁異物8を外部端子7面から掃き出すように作用し、最終的には、図4に示すカード装着状態となり、第1の接触端子部12とICカード6の外部端子7との接触界面には、絶縁異物8が介在しない接触となる。
【0025】
本実施形態では、ICカード6の外部端子7と接続されるコネクタ端子11の接触端子部を、ICカード6の挿入方向に沿って2箇所配置するとともに、一方の接触端子部13は、ICカード6の挿入方向と直交する方向に沿ってICカード6の外部端子7と線接触するように構成し、他方の接触端子部12は、ICカード6の外部端子7と点接触するように構成しているので、接触形態の異なる2種類の接触端子部により外部端子7と接続されるため、ICカード6の外部端子7に付着した異物8等による接触不良の影響を軽減することができる。
【0026】
また、一方の接触端子部13は、ICカード6の挿入方向と直交する方向に沿ってICカード6の外部端子7と線接触するように構成しているので、ICカード6の外部端子7に付着した異物8を外部端子7の表面から掃き出す効果が得られ、他方の接触端子部12は、ICカード6の外部端子7と点接触するように構成しているので、線接触よりは接触面積が少なくなり、異物8の影響を受けにくくすることで、より接触安定性を増すことができる。
【0027】
また本実施形態のコネクタ端子11は、その先端部がカード挿入口9の奥側に位置するように配置され、ICカード6挿入時にICカード6の外部端子と最後に接触する接触端子部12は、ICカード6挿入時にICカード6の外部端子と最初に接触する接触端子部13よりも、先端部に近い位置に形成されているためその接触圧力を最も大きくすることができるとともに、最初に接触する接触端子部13により異物8が取り除かれた状態において接触可能であるので、接触安定性を一層増すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
上記実施形態では、1コネクタ端子あたりの接触端子部を2個配置した場合を示しているが、1コネクタ端子に配置される接触端子部をN(Nは2以上の整数)個とし、その一部は、ICカード6の挿入方向と直交する方向に沿って外部端子7と線接触するように構成された接触端子部として形成し、残りは、外部端子7と点接触するように構成された接触端子部として形成することにより、同様の効果が得られる。
【0029】
また、本実施形態のカードコネクタは、携帯電話機、デジタルカメラ、パーソナルコンピュ−タ等の、カードコネクタを備えている各種電子機器に対して活用することができる。
【0030】
また上記実施形態ではカードコネクタについて説明したが、本実施例と同様な弾性材料を用いた圧接による接続構成を有するコネクタであれば、本発明を適用することにより同様な効果が得られる。よって、本発明は、カードコネクタのみに限らず本実施例と同様な弾性材料を用いた圧接による接続構成を有するコネクタ全般に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 コネクタ
2 上ケース
3 下ケース
4 コネクタ端子
5 接触端子部
6 ICカード
7 ICカードの外部端子
8 埃等の絶縁異物
9 カード挿入口
10 半田付け端子部
11 コネクタ端子
12 第1の接触端子部
13 第2の接触端子部
14 第1の接触端子部12の断面形状
15 第2の接触端子部13の断面形状


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接続体挿入口と、導電性を有する弾性材からなり先端部側に前記被接続体挿入口から挿入された被接続体により押圧されて該被接続体の外部端子と接触して電気的接続を行う接触端子部が設けられたコネクタ端子とを備えたコネクタにおいて、
前記コネクタ端子には、前記外部端子と点接触するように構成された第1の接触端子部および前記被接続体挿入方向と直交する方向に沿って前記外部端子と線接触するように構成された第2の接触端子部を含む複数の前記接触端子部が、前記被接続体挿入方向に沿って配置されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記被接続体挿入時に該被接続体の外部端子と最初に接触する前記接触端子部は前記第2の接触端子部によって形成され、前記被接続体の外部端子と最後に接触する前記接触端子部は前記第1の接触端子部によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第1の接触端子部は、その頂点において前記外部端子と接触する半球面状に形成されており、前記第2の接触端子部の前記被接続体挿入方向と直交する断面形状は、その一辺が前記外部端子と接触する矩形状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記コネクタ端子は、その先端部が前記被接続体挿入口の奥側に位置するように配置され、前記被接続体挿入時に該被接続体の外部端子と最後に接触する前記接触端子部は、前記被接続体挿入時に該被接続体の外部端子と最初に接触する前記接触端子部よりも、先端部に近い位置に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記被接続体は、ICカードであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコネクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−250977(P2010−250977A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96402(P2009−96402)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】