説明

コネクタ

【課題】接触信頼性の高いコネクタを提供すること。
【解決手段】コネクタ100は、複数のコンタクト120と、Y方向(ピッチ方向)において複数のコンタクト120を列設保持する保持部材140と、保持部材140を部分的に覆うシェル160とを備えると共に、相手側コネクタと嵌合する嵌合部110を有している。コンタクト120は、+X方向(前方)に延びる接触部122と接触部122の前端124から−X方向(後方)に向かって折り返された折返し部126とを有している。接触部122は、嵌合部110の上面112において露出しており、その前端124は、嵌合部110の先端部116から露出している。保持部材140には、嵌合部110の外形を規定する板状部142が設けられており、折返し部126の後端からなる埋設部128は、板状部142内に埋設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の嵌合部を有し且つ相手側コネクタと嵌合するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、板状の嵌合部を有するコネクタであって、相手側コネクタの受容部に対して嵌合部を挿入することにより相手側コネクタと嵌合するコネクタが開示されている。嵌合部は、絶縁性樹脂からなる保持部材に複数のコンタクトを保持させることにより構成されている。各コンタクトの端部は略クランク形状を有しており、その先端は保持部材内に埋設されている。
【0003】
特許文献1のコネクタにおいては、相手側コネクタのコネクタに対する嵌合の際に、相手側コネクタの相手側コンタクトが保持部材によってコンタクトまでガイドされ、それによって相手側コンタクトとコンタクトとの接続が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−62072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のコネクタにおいては、金属からなる相手側コンタクトが絶縁性樹脂からなる保持部材にガイドされる際、保持部材が削られてしまうことがある。この際、削りかすが相手側コンタクトとコンタクトとに挟み込まれてしまうと、相手側コンタクトとコンタクトとの接触不良が生じてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、特許文献1のコネクタの欠点を除去し、接触信頼性の高いコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、第1のコネクタとして、
複数のコンタクトと、ピッチ方向において前記複数のコンタクトを列設保持する保持部材とを備えると共に、相手側コネクタと嵌合する嵌合部を有するコネクタであって、
前記嵌合部は、上面、下面及び先端部を有しており、
前記保持部材には、前記嵌合部の外形を規定する板状部が設けられており、
前記コンタクトは、前方に延びる接触部と前記接触部の前端から後方に向かって折り返された折返し部とを有しており、
前記接触部は、前記嵌合部の前記上面において露出しており、
前記接触部の前記前端は、前記嵌合部の前記先端部から露出しており、
前記折返し部の後端からなる埋設部は、前記板状部内に埋設されている
コネクタが得られる。
【0008】
また、本発明によれば、第2のコネクタとして、第1のコネクタにおいて、
前記板状部には、前記折返し部の前記埋設部以外の部位を前記嵌合部の前記下面側から少なくとも部分的に視認可能とする凹部が設けられている
コネクタが得られる。
【0009】
また、本発明によれば、第3のコネクタとして、第2のコネクタにおいて、
前記凹部は、前記折返し部の前記埋設部以外の部位のすべてを前記嵌合部の前記下面側から視認可能とするように形成されている
コネクタが得られる。
【0010】
また、本発明によれば、第4のコネクタとして、第2又は第3のコネクタにおいて、
前記凹部は、前記コンタクト毎に形成されており、
前記ピッチ方向において隣接する前記凹部間には、前記折返し部よりも下側に延びるリブが形成されている
コネクタが得られる。
【0011】
また、本発明によれば、第5のコネクタとして、第4のコネクタにおいて、
前記リブは、前記嵌合部の前記先端部の前記下面側を構成している
コネクタが得られる。
【0012】
また、本発明によれば、第6のコネクタとして、第1乃至第5のいずれかのコネクタであって、
前記保持部材を少なくとも部分的に覆うシェルを更に備えており、
前記シェルは、前記コネクタと前記相手側コネクタとの嵌合時に前記相手側コネクタの相手側シェルと接触するシェル接触部を有しており、且つ、前記シェル接触部が前記嵌合部の前記下面において露出するように前記保持部材に取り付けられており、
前記シェル接触部の下面から前記折返し部の下面までの距離は、前記シェルの厚みよりも大きい
コネクタが得られる。
【0013】
更に、本発明によれば、第1乃至第6のいずれかのコネクタであって、
前記コンタクトは、前記保持部材の形成時にモールドイン法により前記保持部材に組み込まれている
コネクタが得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コンタクトが嵌合部の先端部においても露出していることからコネクタと相手側コネクタとの嵌合時に相手側コンタクトが保持部材に接触することがない。そのため、削りかすなども発生せず、コンタクトと相手側コンタクトとの接触不良が生じることもない。
【0015】
加えて、コンタクトの折り返し部の先端(埋設部)が保持部材の板状部内に埋設されていることから、コンタクトが保持部材から外れてしまうといった恐れが低減されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態によるコネクタ(プラグコネクタ)を示す平面斜視図である。
【図2】図1のコネクタを示す底面斜視図である。
【図3】図1のコネクタを示す平面図である。
【図4】図1のコネクタをIV--IV線に沿って示す断面図である。
【図5】図1のコネクタの嵌合部の一部を拡大して示す斜視図である。
【図6】図2のコネクタの嵌合部の一部を拡大して示す斜視図である。
【図7】相手側コネクタ(レセプタクルコネクタ)を示す平面斜視図である。
【図8】図7の相手側コネクタをVIII--VIII線に沿って示す断面図である。
【図9】図1のコネクタと図7の相手側コネクタとを備えるコネクタ組立体を示す平面斜視図である。ここで、コネクタと相手側コネクタとは嵌合状態にある。
【図10】図9のコネクタ組立体をX--X線に沿って示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1、図2、図7及び図9を参照すると、本発明の実施の形態によるコネクタ100はX方向(前方)に突出した略板状の嵌合部110を有するプラグコネクタであり、相手側コネクタ200となるレセプタクルコネクタと嵌合してコネクタ組立体10を構成するものである。図4に示されるように、コネクタ100の嵌合部110は、上面112、下面114及び先端部116を有している。
【0018】
図7及び図8を参照すると、相手側コネクタ200は、金属からなる複数の相手側コンタクト220と、相手側コンタクト220を保持する絶縁体からなる相手側保持部材240と、相手側保持部材240を部分的に覆う金属からなる相手側シェル260とを備えている。この相手側コネクタ200は、受容部210を有している。図9及び図10に示されるように、相手側コネクタ200の受容部210に対してコネクタ100の嵌合部110を挿入することにより、相手側コネクタ200とコネクタ100とは嵌合し、コネクタ組立体10が構成される。
【0019】
図1乃至図4を参照すると、コネクタ100は、金属からなる複数のコンタクト120と、コンタクト120を保持する絶縁体からなる保持部材140と、保持部材140を部分的に覆う金属からなるシェル160とを備えている。このコネクタ100には、信号導体52を絶縁被覆54で被覆してなる複数の信号線(ディスクリート線)50とドレイン線60とが接続される。図4、図8及び図10から理解されるように、コネクタ100の嵌合部110が相手側コネクタ200の受容部210に受容され、コネクタ100が相手側コネクタ200に嵌合されると、コンタクト120は相手側コンタクト220に接触し、シェル160のシェル接触部162は相手側シェル260に接触する。
【0020】
図1乃至図3に示されるように、複数のコンタクト120は、Y方向(ピッチ方向)に並ぶように保持部材140に保持されている。図4に示されるように、各コンタクト120は、+X方向(前方)に延びる接触部122と、接触部122の前端124から−X方向(後方)に向かって折り返された折返し部126とを有している。接触部122は、相手側コンタクト220と接触するための部位であり、図4及び図5に示されるように、嵌合部110の上面112において露出している。特に本実施の形態による接触部122の前端124は、図4及び図6に示されるように、嵌合部110の先端部116において露出している。即ち、接触部122の前端124は、嵌合部110を前側から見た場合に(−X方向に沿ってみた場合に)、視認可能となっている。これらコンタクト120は、保持部材140の形成時にモールドイン法により保持部材140に組み込まれている。この組み込みの際、折返し部126の後端からなる埋設部128は、保持部材140に埋設されている。
【0021】
図1乃至図4を参照すると、シェル160は、保持部材140の形成時にモールドイン法により保持部材140に組み込まれるベースシェル170と、保持部材140の上面を部分的に覆うカバーシェル180とを備えている。ベースシェル170は、コネクタ100と相手側コネクタ200との嵌合時に相手側シェル260と接触するシェル接触部162を有している。このシェル接触部162は、図4及び図6に示されるように、嵌合部110の下面114において露出している。即ち、ベースシェル170は、シェル接触部162が嵌合部110の下面114において露出するように、保持部材140に組み込まれている(取り付けられている)。
【0022】
図1乃至図4に示されるように、保持部材140は、板状部142を有している。この板状部142は、嵌合部110の外形を規定している。即ち、コンタクト120の接触部122は、板状部142の上面において露出しており、接触部122の前端124は板状部142の先端部において露出している。また、折返し部126の後端である埋設部128は、板状部142に埋設されている。更に、シェル接触部162は、板状部142の下面において露出している。また、シェル接触部162の先端部164の少なくとも一部は、コンタクト120の埋設部128と同様に板状部142に埋設されている。なお、先端部164と埋設部128とは透間を介して対向するように配置されている。ここで、板状部142の厚み(Z方向のサイズ)は、シェル接触部162の下面からコンタクト120の折返し部126の下面までの距離Dがシェル160(ベースシェル170)の厚みよりも大きくなるように、決定されている。
【0023】
図5に示されるように、板状部142の上面には穴部144が形成されており、図3及び図6に示されるように、板状部142の下面には凹部146が形成されている。穴部144及び凹部146は、モールドイン法によりコンタクト120を保持部材140内に組み込む際における金型側のコンタクト120の位置決めに使用された部位の痕である。詳しくは、穴部144は、コンタクト120のピッチ(Y方向における間隔)を規定するための金型側の部位に対応している。そのため、穴部144内には、隣接するコンタクト120の側面が部分的に露出している。凹部146は、コンタクト120のZ方向(上下方向)における位置を規定するための金型側の部位に対応している。そのため、凹部146は、嵌合部110の下面114側から見た場合に、コンタクト120の折返し部126のうち、埋設部128以外の部分を視認可能としている。このように、本実施の形態においては、折返し部126の埋設部128以外の部分のすべてが凹部146を通して下側から視認可能となっているが、本発明はこれに限定されるわけではなく、例えば、コンタクト120の折返し部126が少なくとも部分的に凹部146を通して視認可能となっていればよい。
【0024】
図6を再び参照すると、凹部146は、コンタクト120毎に形成されており、Y方向(ピッチ方向)において隣接する凹部146間にはリブ148が形成されている。各リブ148は、折返し部126よりも下側に(−Z方向に)延びており、嵌合部110の先端部116の下面114側の部分を構成している。
【0025】
本実施の形態においては、接触部122の前端124が嵌合部110の先端部116において露出している。即ち、コンタクト120の前端が嵌合部110の先端部116において露出している。従って、本実施の形態によれば、コネクタ100と相手側コネクタ200との嵌合の際に、相手側コンタクト220が保持部材140に接触して保持部材140を削ってしまうことを避けることができ、削りかす等による接触不良を抑制することができる。
【0026】
また、本実施の形態によれば、リブ148が設けられていることから、凹部146が設けられている場合であっても、コネクタ100と相手側コネクタ200との嵌合時に、相手側シェル260がコンタクト120に接触してしまうことを避けることができる。特に、電源を入れたまま検査をする場合などにあっては、リブ148が相手側シェル260からコンタクト120を遠ざけていることにより、コンタクト120と相手側シェル260とが接触しショートしてしまうことを避けることができる。
【0027】
更に、本実施の形態においては、距離Dがシェル160(ベースシェル170)の厚みよりも大きくなるように設定されている。ここで、シェル接触部162の下面はコネクタ100と相手側コネクタ200との嵌合状態において相手側シェル260と接触する部位であるので、シェル接触部162の下面からコンタクト120の折返し部126の下面までの距離Dは、嵌合状態における相手側シェル260から折返し部126までの距離に等しい。この距離Dがシェル160の厚みよりも大きくとってあることから、嵌合状態において折返し部126を相手側シェル260から離すことができ、両者間の好ましくない電気的な接続を避けることができる。
【0028】
上述した実施の形態において、コネクタ100には、信号線50やドレイン線60が接続されていたが、本発明は、これに限定されるわけではない。例えば、上述した実施の形態と同様のレセプタクルコネクタに接続されるプラグコネクタであれば本発明を適用することは可能である。
【0029】
また、上述した実施の形態において、シェル160は、ベースシェル170とカバーシェル180の2つの部材からなるものであったが、単一の部材として構成してもよい。但し、コネクタ100の薄型化・低背化を達成するためには、ベースシェル170とカバーシェル180の2つの部材を用いることが好ましい。
【0030】
更に、上述した実施の形態において、相手側コネクタ200が搭載された回路基板(図示せず)のグランド部へ最短経路でグランドを落とすべく、シェル接触部162を嵌合部110に設けているが、本発明はこれに限定されるわけではない。グランドに関する要件が緩和されるケースにおいては、シェル接触部162を嵌合部110から除くこととしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
10 コネクタ組立体
50 信号線
52 信号導体
54 絶縁被覆
60 ドレイン線
100 コネクタ
110 嵌合部
112 上面
114 下面
116 先端部
120 コンタクト
122 接触部
124 前端
126 折返し部
128 埋設部
140 保持部材
142 板状部
144 穴部
146 凹部
148 リブ
160 シェル
162 シェル接触部
164 先端部
170 ベースシェル
180 カバーシェル
200 相手側コネクタ
210 受容部
220 相手側コンタクト
240 相手側保持部材
260 相手側シェル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンタクトと、ピッチ方向において前記複数のコンタクトを列設保持する保持部材とを備えると共に、相手側コネクタと嵌合する嵌合部を有するコネクタであって、
前記嵌合部は、上面、下面及び先端部を有しており、
前記保持部材には、前記嵌合部の外形を規定する板状部が設けられており、
前記コンタクトは、前方に延びる接触部と前記接触部の前端から後方に向かって折り返された折返し部とを有しており、
前記接触部は、前記嵌合部の前記上面において露出しており、
前記接触部の前記前端は、前記嵌合部の前記先端部から露出しており、
前記折返し部の後端からなる埋設部は、前記板状部内に埋設されている
コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタであって、
前記板状部には、前記折返し部の前記埋設部以外の部位を前記嵌合部の前記下面側から少なくとも部分的に視認可能とする凹部が設けられている
コネクタ。
【請求項3】
請求項2記載のコネクタであって、
前記凹部は、前記折返し部の前記埋設部以外の部位のすべてを前記嵌合部の前記下面側から視認可能とするように形成されている
コネクタ。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載のコネクタであって、
前記凹部は、前記コンタクト毎に形成されており、
前記ピッチ方向において隣接する前記凹部間には、前記折返し部よりも下側に延びるリブが形成されている
コネクタ。
【請求項5】
請求項4記載のコネクタであって、
前記リブは、前記嵌合部の前記先端部の前記下面側を構成している
コネクタ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のコネクタであって、
前記保持部材を少なくとも部分的に覆うシェルを更に備えており、
前記シェルは、前記コネクタと前記相手側コネクタとの嵌合時に前記相手側コネクタの相手側シェルと接触するシェル接触部を有しており、且つ、前記シェル接触部が前記嵌合部の前記下面において露出するように前記保持部材に取り付けられており、
前記シェル接触部の下面から前記折返し部の下面までの距離は、前記シェルの厚みよりも大きい
コネクタ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のコネクタであって、
前記コンタクトは、前記保持部材の形成時にモールドイン法により前記保持部材に組み込まれている
コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−14906(P2012−14906A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148785(P2010−148785)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】