説明

コネクタ

【課題】外側に突出する被係止部を備える薄板状の接続対象物が不意に引き抜かれるのを、被係止部や固定金具を破損させることなく、確実に防止できるコネクタを提供する。
【解決手段】薄板状で少なくともいずれかの側縁部に外側に向かって突出する被係止部81を有する接続対象物80が挿入及び脱出可能で回路基板CBと対向するインシュレータ20と、インシュレータの側壁22に形成した、被係止部が係脱可能な係合凹部23と、側壁に形成した、係合凹部側の面が該側壁によって覆われた挿入用凹部33と、インシュレータに支持したコンタクト40、50と、挿入用凹部に嵌合する補強部62を有し、かつ回路基板に半田付けされる固定金具60と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FPCやFFC等の薄板状の接続対象物を接続するためのコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は薄板状の接続対象物(FPCやFFC等)を接続可能なコネクタの従来例である。
このコネクタは、接続対象物を挿脱可能でかつ回路基板上に載置したインシュレータと、インシュレータに並べて固定し、かつ回路基板と電気的に導通する複数の金属製のコンタクトと、インシュレータに回転可能に支持した板状の樹脂製部材であるアクチュエータと、一部を回路基板に半田付けした状態でインシュレータの両側部に支持した左右一対の固定金具と、を具備している。
インシュレータの両側部を構成する側壁の上面には凹部が形成してあり、該凹部の前面には係止面が形成してある。左右の固定金具は、左右の側壁の外側面に接触する状態でインシュレータに支持してある。固定金具には上記凹部と左右方向に並ぶ溝部が形成してあり、この溝部の前面は上記係止面と左右方向に並ぶ(連続する)板厚面となっている。
【0003】
特許文献1の接続対象物(平型導体)はその左右両側部に、外側に向かって突出する被係止部を有している。アクチュエータがインシュレータの長手方向に対して略直交するアンロック位置に位置する状態で接続対象物をインシュレータに挿入すると、接続対象物の左右の被係止部が左右の凹部と溝部に対して上方から係合する。
この状態でアクチュエータを接続対象物の脱出方向側のロック位置まで回転させると、アクチュエータによって接続対象物とコンタクトの接触圧力が高まり、接続対象物とコンタクトが導通する。
さらに接続対象物に対して脱出方向の力が不意に掛かった際には、接続対象物の左右の被係止部が左右の係止面(凹部)と板厚面(溝部)の双方に係合するので、接続対象物のインシュレータからの意図しない脱落を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開第4215265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし上記コネクタには以下の欠点がある。
即ち、接続対象物に対して意図しない脱出方向の力が掛かった際に、左右の被係止部が左右の固定金具の板厚面(溝部)に強い力で集中的に接触するので、被係止部が切断したり破損するおそれがある。
さらに固定金具のインシュレータに対する組付精度や、インシュレータ及び固定金具の成形精度が少しでも落ちると、インシュレータの係止面と固定金具の板厚面の間に位置ズレ(段差)が生じるため、インシュレータ(係止面)と固定金具(板厚面)による接続対象物(被係止部)の保持力(抜け防止力)を安定させるのが難しい。
また固定金具の外側面が露出している(インシュレータによる抑えがない)ため、接続対象物を自身が位置する平面上で回転させることにより被係止部から固定金具に力が掛かると、固定金具が外側に曲がるおそれがある。
さらに固定金具の溝部側(凹部側)の面が露出しているため、リフローによって回路基板と固定金具を半田付けするときに、半田が固定金具を伝って板厚面まで這い上がるおそれがある。この場合は這い上がった半田によって凹部(の一部)が塞がれ、接続対象物の被係止部を固定金具の溝部に嵌合できなくなるので、接続対象物のインシュレータからの意図しない脱落を防止できなくなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、外側に突出する被係止部を備える薄板状の接続対象物が不意に引き抜かれるのを、被係止部や固定金具を破損させることなく、確実に防止できるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコネクタは、薄板状で少なくともいずれかの側縁部に外側に向かって突出する被係止部を有する接続対象物が挿入及び脱出可能で、厚み方向の一方の面が回路基板と対向するインシュレータと、該インシュレータの側壁に形成した、上記被係止部が上記厚み方向の他方側から係脱可能な係合凹部と、上記側壁の上記一方側の面に形成した、上記係合凹部より接続対象物の脱出方向側に位置し、かつ上記係合凹部側の面が該側壁によって覆われた挿入用凹部と、上記インシュレータに支持した、該インシュレータに挿入した上記接続対象物と接触し、かつ上記回路基板と導通するコンタクトと、上記一方の面側から上記挿入用凹部に嵌合する補強部を有し、かつ上記回路基板に半田付けされる固定金具と、を備えることを特徴としている。
【0008】
上記挿入用凹部を、上記側壁における上記接続対象物の脱出方向側の端面において開口させ、上記補強部を上記開口を通して上記端面から突出させてもよい。
この場合はさらに、上記端面の上記他方側の端部に、上記接続対象物の挿入方向に向かうにつれて該他方側に向かう傾斜面を形成してもよい。
【0009】
上記接続対象物の挿脱方向に対して略直交するアンロック位置と上記挿入方向と脱出方向のいずれかに倒れて上記接続対象物と上記コンタクトの接触圧力を高めるロック位置との間を回転可能として上記インシュレータに支持し、かつ、上記ロック位置に位置するときに上記係合凹部を上記厚み方向の他方側から塞ぐアクチュエータを備えてもよい。
このように構成すれば、アクチュエータをロック位置側に回転させることにより、接続対象物とコンタクトの接触圧力を高めることができる。しかもロック位置まで回転させると、アクチュエータが係合凹部を上記厚み方向の他方側から塞ぐので、接続対象物の被係止部が係合凹部から該他方側に抜け出すのをより確実に防止できるようになる。
【0010】
上記固定金具に、上記係合凹部内に延出する案内片を形成してもよい。
さらに上記案内片に、上記厚み方向の他方側から上記係合凹部と対向し、かつ上記脱出方向側に向かうにつれて上記厚み方向の他方側に延びる湾曲面を形成してもよい。
このように構成すれば、接続対象物をインシュレータに挿入したときに、接続対象物の被係止部が案内片(湾曲面)に接触すると、被係止部は案内片によって係合凹部側に移動案内されるので、被係止部を係合凹部に嵌合させ易くなる。
【0011】
上記アクチュエータに、上記ロック位置に位置したときに、上記厚み方向の他方側から上記係合凹部と対向する抜止部を形成してもよい。
さらに上記係合凹部の内面に、該係合凹部に係合した上記被係止部より上記厚み方向の他方側に位置する抑え突起を突設してもよい。
このように構成すれば、接続対象物の被係止部が係合凹部から上記厚み方向の他方側に抜け出すのをより確実に防止できるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、インシュレータの側壁の挿入用凹部に固定金具の補強部を嵌合しているので、側壁の係合凹部より接続対象物の脱出方向側に位置する部分の機械的強度は高い。従って、接続対象物に対して意図しない脱出方向の力が掛かった場合には、側壁の当該部分によって接続対象物のインシュレータからの脱落(被係止部の係合凹部から抜け)を確実に防止できる。
しかも補強部の係合凹部側の部分が側壁(インシュレータ)によって覆われている(露出しない)ので、接続対象物に対して意図しない脱出方向の力が掛かっても、接続対象物(被係止部)が切断したり破損するおそれはない。
また接続対象物の被係止部が接触するのは、固定金具のインシュレータに対する組立精度が影響しない側壁(係合凹部の内面)だけであり、固定金具(補強部)には接触しないので、(側壁による)接続対象物(被係止部)の保持力(抜け防止力)を安定させ易い。さらに被係止部が補強部に接触しないので、補強部(固定金具)が曲がるおそれがない。
さらに補強部の係合凹部側の部分が側壁(インシュレータ)によって覆われている(露出しない)ので、リフローによって回路基板と固定金具を半田付けするときに、半田が固定金具を伝って這い上がっても、這い上がった半田が係合部内に位置することはない。従って、這い上がった半田によって接続対象物の被係止部を係合凹部に嵌合できなくなることはない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態のコネクタの前斜め上方から見た分解斜視図である。
【図2】コネクタの後斜め下方から見た分解斜視図である。
【図3】アクチュエータがアンロック位置に位置するコネクタとFPCの前斜め上方から見た斜視図である。
【図4】アクチュエータがアンロック位置に位置するコネクタにFPCを挿入したときの前斜め上方から見た斜視図である。
【図5】FPCをコネクタに挿入しアクチュエータをロック位置に位置させたときのコネクタとFPCの前斜め上方から見た斜視図である。
【図6】図3のVI−VI矢線に沿う断面図である。
【図7】アクチュエータがロック位置に位置するときのコネクタの正面図である。
【図8】図7のVIII−VIII矢線に沿う断面図である。
【図9】図7のIX−IX矢線に沿う断面図である。
【図10】図7のX−X矢線に沿う断面図である。
【図11】図7のXI−XI矢線に沿う断面図である。
【図12】変形例の図3と同様の斜視図である。
【図13】コネクタの右端部の拡大平面図である。
【図14】図12のXIV部の拡大図である。
【図15】アクチュエータがアンロック位置に位置するコネクタの右側面図である。
【図16】FPCをインシュレータに挿入する際にFPCの被係止部が固定金具の突出部に衝突したときの図12のXIV−XIV矢線に沿う断面図である。
【図17】図9と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明中の前後、左右、及び上下の方向は、図中の矢印の方向を基準としている。
本実施形態のコネクタ10は、大きな構成要素としてインシュレータ20、第1コンタクト40、第2コンタクト50、固定金具60、及び、アクチュエータ70を具備している。
インシュレータ20は絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂材料を射出成形したものである。インシュレータ20の上面の前部にはFPC80とほぼ同幅のFPC挿入溝21が凹設してある。インシュレータ20の前部の左右両側部にはFPC挿入溝21の左右両側に位置する一対の側壁22が形成してある。左右の側壁22の中央部の上面には下方に向かって凹んだ係合凹部23が凹設してあり、側壁22の前端部(係合凹部23の直前に位置する部分)は係合突部24を構成している。さらにFPC挿入溝21の底面(上面)の左右両側部近傍には、左右の側壁22から内側に離間した支持突部25が上向きに突設してあり、支持突部25の上面の後部は水平面からなる支持平面26となっている。インシュレータ20には計17本の前後方向に延びる第1コンタクト挿入溝28が形成してある。各第1コンタクト挿入溝28の後部はインシュレータ20の後部(FPC挿入溝21が形成していない部分)に形成してあり、各第1コンタクト挿入溝28の前部はFPC挿入溝21の底面に形成してある。またインシュレータ20には、隣合う第1コンタクト挿入溝28の間に位置する計16本の前後方向に延びる第2コンタクト挿入溝29が形成してある。各第2コンタクト挿入溝29の後部はインシュレータ20の後部を前後方向に貫通しており、各第2コンタクト挿入溝29の前部はFPC挿入溝21の底面に形成してある。図11に示すようにインシュレータ20の後部には、各第2コンタクト挿入溝29の後部空間を上下に分離する中間板部30が形成してある。またインシュレータ20の後部の上面の左右両側部には下方に向かって延びる上部孔31が凹設してある。
インシュレータ20の下面の左右両側縁近傍には、前後方向に延びる金具固定溝32が上向きに凹設してある。図示するように金具固定溝32の前端部は、上方に向かって延び、かつ係合突部24の前面において開口する挿入用凹部33となっている。また金具固定溝32の後端近傍部は、上方に向かって延びて左右の上部孔31とそれぞれ連通する係止孔34となっている。さらに金具固定溝32の長手方向の中央部には、左右の側壁22と支持突部25の間において開口する中間開口部35が形成してある。
【0015】
計17本の第1コンタクト40と計16本の第2コンタクト50は、ばね弾性を備えた銅合金(例えばリン青銅、ベリリウム銅、チタン銅)やコルソン系銅合金の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図示形状に成形加工したものであり、表面にニッケルメッキで下地を形成した後に、金メッキを施している。
図10等に示すように第1コンタクト40は、後端部を構成する上下方向に延びる基片41と、基片41の下端から前方に延びる固定片42と、基片41の上端から前方に延びる上下方向に弾性変形可能な押さえアーム44と、固定片42と押さえアーム44の間に位置しかつ基片41から前方に延びる上下方向に弾性変形可能な接触アーム46と、を具備している。固定片42の前端部には下向きに突出するテール部43が形成してあり、押さえアーム44の下面の前端近傍には支持凹部45が凹設してある。また接触アーム46の前端部には上向きに突出する接触突部47が形成してある。さらに基片41の上端面には係合突起48が上向きに突設してある。
各第1コンタクト40はインシュレータ20の各第1コンタクト挿入溝28に対して前方から挿入してある。図10に示すように各第1コンタクト40を第1コンタクト挿入溝28に挿入すると、固定片42の下面が対応する第1コンタクト挿入溝28の底面に接触し、テール部43がインシュレータ20の底部の前端部に前方から係止する。さらに基片41が第1コンタクト挿入溝28の後部内に位置し、各係合突起48が第1コンタクト挿入溝28の後部の天井面に食い込む。そのため第1コンタクト40を第1コンタクト挿入溝28に取り付けると、テール部43と係合突起48によって第1コンタクト40の第1コンタクト挿入溝28に対する前後動が規制される。また押さえアーム44の前部がFPC挿入溝21内に位置し、テール部43の下面がインシュレータ20の下面より下方に位置する。
【0016】
図11等に示すように第2コンタクト50は、後端部を構成する上下方向に延びる基片51と、基片51の下端から前方に延びる接触アーム52と、基片51の上端から前方に延びる押さえアーム54と、を具備している。接触アーム52の前端部には上向きに突出する接触突部53が形成してあり、接触アーム52の基端近傍の上面には係合突起55が上向きに突設してある。また基片51の下端部には共に下方に向かって突出するテール部56と後方係止部57が設けてある。
各第2コンタクト50はインシュレータ20の後方から各第2コンタクト挿入溝29に挿入してある。図11に示すように各第2コンタクト50を第2コンタクト挿入溝29に挿入すると、接触アーム52の下面の後部が対応する第2コンタクト挿入溝29の底面に接触し、後方係止部57がインシュレータ20の底部の後端部に後方から係止する。接触アーム52の後部は第2コンタクト挿入溝29の底面に接触しているので上下方向に弾性変形不能であるが、接触アーム52の前部は第2コンタクト挿入溝29の底面から上方に離間しているので上下方向に弾性変形可能である。また接触突部53は第1コンタクト40の接触突部47より前方に位置する(図10、図11参照)。さらに基片51が第2コンタクト挿入溝29の後部内に位置し、係合突起55が中間板部30の下面に下方から食い込む。そのため第2コンタクト50を第2コンタクト挿入溝29に取り付けると、後方係止部57と係合突起55によって第2コンタクト50の第2コンタクト挿入溝29に対する前後動が規制される。また押さえアーム54の前部がFPC挿入溝21内に位置し、テール部56の下面がインシュレータ20の下面より下方に位置して、テール部43の下面と同じ高さに位置する。
【0017】
左右一対の固定金具60は金属板のプレス成形品であり、前後方向に延びる基片部61と、基片部61の前端から上方に延びる補強部62と、基片部61の後端から上方に延びる抜止突部63と、基片部61の中間部から上方に延びる中間突部65と、を具備している。抜止突部63の後面には係止突起64が突設してある。また中間突部65の上面は水平面からなる上端支持面66となっており、中間突部65の前部には前側に向かうにつれて上方に向かって湾曲しながら延び、その前面が湾曲面68を構成する案内片67が突設してある。また基片部61の下面の前部にはテール部69が下向きに突設してある。
各固定金具60はインシュレータ20の左右の金具固定溝32に対して下方から圧入してある。固定金具60を金具固定溝32に圧入すると、補強部62が挿入用凹部33に圧入される。さらに抜止突部63が係止孔34に圧入してその上部が中間板部30内に位置し、かつ係止突起64が係止孔34の後面に食い込むので、固定金具60のインシュレータ20に対する前後動及び下方への移動が規制される。また中間突部65が中間開口部35を上方に貫通し、案内片67(湾曲面68)が係合凹部23内(案内片67の上部は係合部23の直上)に位置する。さらにテール部69の下面がインシュレータ20の下面より下方に位置して、テール部43及びテール部56の下面と同じ高さに位置する。
【0018】
左右方向に延びる板状部材である回転式のアクチュエータ70は、耐熱性の合成樹脂材料を金属製の成形型を利用して射出成形したものである。左右両側面の下端部には左方と右方に向かってそれぞれ延び、かつ互いに同軸をなす回転支持軸71が突設してある。アクチュエータ70の下端部近傍には、アクチュエータ70を板厚方向に貫通する計17個のアーム挿通用貫通孔72が左右方向に並べて形成してあり、各アーム挿通用貫通孔72の直下には各アーム挿通用貫通孔72の下端を塞ぐ被係止軸73が形成してある。アクチュエータ70の裏面(図1、図2では後面)の下端部近傍には、隣り合うアーム挿通用貫通孔72の間に位置する計16個のアーム逃げ用凹部74が凹設してある。また隣り合うアーム挿通用貫通孔72の間に位置する部分の下端部には計16個のカム部75が設けてあり、アクチュエータ70の表面(図1、図2では前面)の下部は偏平なロック保持面76となっている。さらにアクチュエータ70の左右両側面の上端部には左方と右方に向かってそれぞれ延びるロックストッパ(抜止部)77が突設してあり、左右の回転支持軸71とロックストッパ77の間には金具逃げ用凹部78がそれぞれ形成してある。またアクチュエータ70の表面の左右両側部には、左右一対の偏平なロックストッパ面79が形成してある。
アクチュエータ70は、図1、図2に示すようにインシュレータ20に対して略直交させた状態で前方からFPC挿入溝21内に挿入し、各アーム挿通用貫通孔72に対応する第1コンタクト40の押さえアーム44を挿入して被係止軸73に支持凹部45を係合すると共に(図10参照)、各アーム逃げ用凹部74に対応する第2コンタクト50の押さえアーム54の先端部を挿入し(図11参照)、かつ左右の回転支持軸71を左右の固定金具60の上端支持面66に載せることにより、インシュレータ20及び固定金具60に対して左右の回転支持軸71回りに回転可能に取り付けてある。このようにしてアクチュエータ70をインシュレータ20に取り付けると、各被係止軸73が第1コンタクト40の支持凹部45に係合し、かつ左右の回転支持軸71がインシュレータ20の後部と固定金具60の案内片67の間に位置するので(図6、図9参照)、アクチュエータ70のインシュレータ20及び固定金具60に対する前後動は所定範囲に制限される。また左右の回転支持軸71と上端支持面66によってアクチュエータ70のインシュレータ20及び固定金具60に対する下方への相対移動が規制され、かつ各被係止軸73の上部と支持凹部45の天井面によってアクチュエータ70のインシュレータ20及び固定金具60に対する上方への相対移動が規制されている。そのためアクチュエータ70がインシュレータ20及び固定金具60に対して不意に前方に抜け出すことはない。
アクチュエータ70はインシュレータ20に対して略直交しインシュレータ20の裏面がインシュレータ20の後部に接触するアンロック位置(図3、図4、図6に示す位置)と、略水平なロック位置(図5、図7、図9〜図11に示す位置)との間を回転可能である。
【0019】
以上構成のコネクタ10を回路基板CB(図6、図9〜図11の仮想線参照)の上面(回路形成面)に実装するには、コネクタ10の上方に位置する吸引手段(図示略)によってインシュレータ20の後部上面(中間板部30が形成されていない部分)を吸着し、該吸引手段を移動させることにより各第1コンタクト40のテール部43及び各第2コンタクト50のテール部56を回路基板CB上の所定量の半田ペーストを塗布した回路パターン(図示略)に載せ、左右の固定金具60のテール部69を回路基板CB上の所定量の半田ペーストを塗布した接地パターン(図示略)に載せる。そして、リフロー炉において各半田ペーストを加熱溶融し、各テール部43、テール部56を上記回路パターンに半田付けし、各テール部69を上記接地パターンに半田付けする。
【0020】
接続対象物であるFPC(Flexible Printed Circuit)80は弾性変形可能な薄板状の長尺物であり、その厚みはアクチュエータ70がアンロック位置に位置するときのカム部75と接触突部47の上下間隔及びカム部75と接触突部53の上下間隔より小さい。FPC80は複数の薄膜材を互いに接着して構成した積層構造であり、FPC80の下面には共にFPC80の延長方向に沿って直線的に延びる計17本の第1回路パターン(図示略)と、隣合う第1回路パターンの間に位置し、かつ、その両端部が第1回路パターンの端部より後退した計16本の第2回路パターンとが形成してあり、第1回路パターン及び第2回路パターンの両端部を除く部分の下面は絶縁カバー層によって覆ってある。さらにFPC80の長手方向の少なくとも一方の端部の左右両側部には外側に向かって突出する一対の被係止部81が一体的に設けてある。
【0021】
回路基板CBと一体化したコネクタ10のアクチュエータ70が図3、図4、図6に示すアンロック位置に位置するとき、インシュレータ20のFPC挿入溝21に対してFPC80の端部を前方から挿入可能である。このときカム部75と接触突部47の上下間隔及びカム部75と接触突部53の上下間隔はFPC80の厚みより大きくなっているので、FPC80の端部は各第1コンタクト40の押さえアーム44と接触アーム46(接触突部47)の間、及び、押さえアーム54と接触アーム52(接触突部53)の間に対して円滑に挿入される。さらにFPC80の被係止部81の後端面が案内片67の湾曲面68に接触すると、被係止部81は湾曲面68によって係合凹部23側に移動案内されるので、左右の被係止部81は対応する係合凹部23に対して上方から円滑に嵌合する(図4を参照)。
この状態でアクチュエータ70を前方に回転させると、アクチュエータ70の各カム部75によってFPC80の上面が下方に押圧されるので、各第1コンタクト40の接触突部47とFPC80の上記第1回路パターンが確実に接触し、さらに各第2コンタクト50の接触突部53と上記第2回路パターンが確実に接触する。そしてアクチュエータ70が図5、図7、図9〜図11に示すロック位置まで回転すると、金具逃げ用凹部78が固定金具60の中間突部65(及び案内片67)を避けながら、ロックストッパ77が係合突部24の上面に接触すると共にロックストッパ面79の下部(ロック位置に位置するときは後部)が支持突部25の支持平面26に接触し、左右のロックストッパ面79の上部(ロック位置に位置するときは前部)が左右の係合凹部23の上面を塞ぎ、さらにロック保持面76がFPC80の端部の上面に当接するので、各接触突部47と上記第1回路パターンの接触及び各接触突部53と上記第2回路パターンの接触が維持され、かつFPC80がロック位置に保持される。従って各第1コンタクト40と各第2コンタクト50を介して回路基板CBとFPC80が電気的に導通する。また、ロックストッパ77の後面は、係合突部24の後面より後ろ側に位置する(図9参照)。
また、ロックストッパ77と係合突部24の上面は面同士で接触するため(若しくは隙間をもって対向させてもよい)、アクチュエータ70を過剰に回転させてもアクチュエータ70が破損しにくく、且つ補強部62の保護にも有効である。
【0022】
このロック状態において例えばFPC80に対して前向きの外力が不意に掛かると、左右の被係止部81が対応する係合凹部23の前面(係合突部24の後面)に係合する。コネクタ10の係合突部24の内部には固定金具60の補強部62が位置しているので、当該部分の機械的強度は高い。従ってFPC80がインシュレータ20から脱落する(被係止部81が係合凹部23から抜け出す)のを確実に防止できる。
しかも補強部62の後面が係合突部24(インシュレータ20)によって覆われている(露出しない)ので、この種の外力が掛かったときに被係止部81が金属製の補強部62に強い力で接触することはない。そのためFPC80(被係止部81)が切断したり破損するおそれはない。
またFPC80の被係止部81が接触するのは係合凹部23の前面(係合突部24の後面)だけであり、補強部62には接触しないので、係合凹部23の前面(係合突部24の後面)を所定位置及び所定形状となるように成形すれば(被係止部81の)所望の保持力(抜け防止力)が得られ、かつFPC80を確実に所望の位置で抜止めできる。そのため接続対象物の被係止部をインシュレータと固定金具の双方に係合させる従来技術に比べてFPC80(被係止部81)の保持力(抜け防止力)を安定させ易い。
さらに被係止部81が補強部62に接触しないので、FPC80に対して外力が掛かったときに補強部62(固定金具60)が曲がるおそれがない。
さらに補強部62の後部が係合突部24(インシュレータ20)によって覆われている(露出しない)ので、リフローによって回路基板CBと固定金具60を半田付けするときに、半田が固定金具60を伝って這い上がっても、這い上がった半田が係合凹部23内に位置することはない。従って、這い上がった半田によってFPC80の被係止部81が係合凹部23に嵌合できなくなることはない。
しかもアクチュエータ70がロック位置まで回転したときにアクチュエータ70(ロックストッパ面79)が係合凹部23の上面を塞ぎ、さらにロックストッパ77の後面が係合突部24の後面より後方に位置するので、FPC80に対して前向きの外力が掛かったときにFPC80の被係止部81が係合凹部23から上方に抜け出すのを確実に防止できる。
【0023】
なおアクチュエータ70をアンロック位置まで回転させて、左右の被係止部81を対応する係合凹部23から上方に脱出させた上でFPC80を前方に移動させれば、FPC80の端部をインシュレータ20から取り出すことができる。
【0024】
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形を施しながら実施可能である。
例えば図12〜図17に示す変形例の態様で実施してもよい。
このコネクタ10’の基本構成はコネクタ10と同じであるが、FPC挿入溝20’及び固定金具60’の形状がFPC挿入溝20及び固定金具60とは若干異なる(上部孔31の形状がコネクタ10のものとは異なるが機能は同じである)。
FPC挿入溝20’の係合突部24’の前端面の上縁部には、前方から後方に向かうにつれて上方に向かって延びる傾斜面24aが形成してある。また図13に示すように左右の側壁22とFPC挿入溝20’の本体部20a(左右の側壁22の間に位置する部分)の前縁部との間に形成される角部は、平面視で前後方向に対して約45°の角度で傾斜する傾斜接続部22aとなっている。
固定金具60’の補強部62’の上端部には、前方に向かった後に上方に向かって延びる突出部62aが一体的に突設してある。そのため固定金具60’を金具固定溝32に取り付けると、図示するように突出部62aが係合突部24’の前端面から前方に突出する。
アクチュエータ70がアンロック位置に位置するときにFPC挿入溝20’のFPC挿入溝21に対してFPC80の端部を前方から挿入しようとしたときに、FPC80の左右の被係止部81が左右の係合突部24’の上面より低い位置を通ると、図16に示すように被係止部81が突出部62aに衝突する(係合突部24’に衝突しない)。しかし金属製である突出部62a(固定金具60’)の機械的強度は高いので、仮に被係止部81が激しく衝突しても突出部62a(固定金具60’)が変形することはなく、そのため係合突部24’が変形したり損傷することはない。
さらに係合突部24’に傾斜面24aを形成してあるので、係合突部24‘の上面側が突出部62aに対してより後退しているので、被係止部81を突出部62aに確実に当接させることができる(係合突部24’を確実に保護できる)。
また、仮にFPC挿入溝21に対してFPC80を挿入するときに被係止部81が係合突部24’の傾斜面24aに衝突しても、被係止部81は傾斜面24aに沿って後方に円滑にスライドする。しかもFPC挿入溝20に傾斜接続部22aを形成しているので、左右の側壁22と本体部20aの前縁部との間に形成される角部が平面視で直角をなしている上記実施形態のFPC挿入溝20に比べてFPC挿入溝20’(本体部20aと側壁22の接続部)の機械的強度が高くなっている。そのため被係止部81が係合突部24’の傾斜面24aに衝突しても、係合突部24’が変形したり損傷するおそれは小さい。
なお図15に仮想線で示したように、突出部62aの下端部を補強部62’の下端部と同じ位置まで延ばしてもよい。このように構成すればFPC挿入溝21に対してFPC80の端部を前方から挿入した場合に左右の被係止部81が左右の係合突部24’の上面より低い位置を通ったときに、被係止部81が確実に突出部62aに衝突する(係合突部24’に衝突しない)ので、係合突部24’の変形や損傷をより確実に防止できる。
【0025】
また係合凹部23の内面(前面又は後面)に、係合凹部23に係合した被係止部81の上方に位置する抑え突起(図示略)を突設してもよい。このように構成すれば、FPC80の被係止部81が係合凹部23から抜け出すのをより確実に防止できるようになる。
またFPC80が一方の側縁部にのみ被係止部81を有する場合は、インシュレータ20の左右の側壁22の一方にのみ係合凹部23を形成してもよい。
さらにすべての第2コンタクト挿入溝29を第1コンタクト挿入溝28に変更した上で、すべての第2コンタクト50を第1コンタクト40により構成してもよい。
またアクチュエータ70の代わりに、前後方向に対して略直交する(上側に回転する)アンロック位置と、後方に倒れて略水平となるロック位置との間を回転可能なアクチュエータ(図示略)をインシュレータ20(及び固定金具60)に支持してもよい。
さらに自由状態における押さえアーム44と接触突部47の上下間隔、及び、押さえアーム54と接触突部53の上下間隔をFPC80の厚みより小さくした上で、コネクタ10からアクチュエータ70を省略してもよい。
また、薄板状の接続対象物はFPC以外のケーブル、例えばフレキシブルフラットケーブル(FFC)であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
10 10’ コネクタ
20 20’ インシュレータ
20a インシュレータの本体部
21 FPC挿入溝
22 側壁
22a 傾斜接続部
23 係合凹部
24 係合突部
24a 傾斜面
25 支持突部
26 支持平面
28 第1コンタクト挿入溝
29 第2コンタクト挿入溝
30 中間板部
31 上部孔
32 金具固定溝
33 挿入用凹部
34 係止孔
35 中間開口部
40 第1コンタクト
41 基片
42 固定片
43 テール部
44 押さえアーム
45 支持凹部
46 接触アーム
47 接触突部
48 係合突起
50 第2コンタクト
51 基片
52 接触アーム
53 接触突部
54 押さえアーム
55 係合突起
56 テール部
57 後方係止部
60 60’ 固定金具
61 基片部
62 62’ 補強部
62a 突出部
63 抜止突部
64 係止突起
65 中間突部
66 上端支持面
67 案内片
68 湾曲面
69 テール部
70 回転式アクチュエータ
71 回転支持軸
72 アーム挿通用貫通孔
73 被係止軸
74 アーム逃げ用凹部
75 カム部
76 ロック保持面
77 ロックストッパ(抜止部)
78 金具逃げ用凹部
79 ロックストッパ面
80 FPC(接続対象物)
81 被係止部
CB 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状で少なくともいずれかの側縁部に外側に向かって突出する被係止部を有する接続対象物が挿入及び脱出可能で、厚み方向の一方の面が回路基板と対向するインシュレータと、
該インシュレータの側壁に形成した、上記被係止部が上記厚み方向の他方側から係脱可能な係合凹部と、
上記側壁の上記一方側の面に形成した、上記係合凹部より接続対象物の脱出方向側に位置し、かつ上記係合凹部側の面が該側壁によって覆われた挿入用凹部と、
上記インシュレータに支持した、該インシュレータに挿入した上記接続対象物と接触し、かつ上記回路基板と導通するコンタクトと、
上記一方の面側から上記挿入用凹部に嵌合する補強部を有し、かつ上記回路基板に半田付けされる固定金具と、
を備えることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタにおいて、
上記挿入用凹部を、上記側壁における上記接続対象物の脱出方向側の端面において開口させ、
上記補強部を上記開口を通して上記端面から突出させたコネクタ。
【請求項3】
請求項2記載のコネクタにおいて、
上記端面の上記他方側の端部に、上記接続対象物の挿入方向に向かうにつれて該他方側に向かう傾斜面を形成したコネクタ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載のコネクタにおいて、
上記接続対象物の挿脱方向に対して略直交するアンロック位置と上記挿入方向と脱出方向のいずれかに倒れて上記接続対象物と上記コンタクトの接触圧力を高めるロック位置との間を回転可能として上記インシュレータに支持し、かつ、上記ロック位置に位置するときに上記係合凹部を上記厚み方向の他方側から塞ぐアクチュエータを備えるコネクタ。
【請求項5】
請求項4記載のコネクタにおいて、
上記固定金具に、上記係合凹部内に延出する案内片を形成したコネクタ。
【請求項6】
請求項5記載のコネクタにおいて、
上記案内片に、上記厚み方向の他方側から上記係合凹部と対向し、かつ上記脱出方向側に向かうにつれて上記厚み方向の他方側に延びる湾曲面を形成したコネクタ。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項記載のコネクタにおいて、
上記アクチュエータに、上記ロック位置に位置したときに、上記厚み方向の他方側から上記係合凹部と対向する抜止部を形成したコネクタ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載のコネクタにおいて、
上記係合凹部の内面に、該係合凹部に係合した上記被係止部より上記厚み方向の他方側に位置する抑え突起を突設したコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−182109(P2012−182109A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152593(P2011−152593)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000128407)京セラコネクタプロダクツ株式会社 (77)
【Fターム(参考)】