説明

コネクタ

【課題】プラグコンタクトを引き抜く際に高い引き抜き力を要するコネクタを得る。
【解決手段】プラグ湾曲部12bをリセプタクル湾曲部22dから引き抜くときに、プラグ係合段部Pとリセプタクル係合段部Rとが互いに係合する。プラグコンタクト12のプラグ係合段部Pにおいて、底面32qと下側面32pとのなす傾斜角度が鈍角である。リセプタクルコンタクト22のリセプタクル係合段部Rにおいて、底面42qと上側面42rとのなす傾斜角度が直角である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向する2枚の基板を電気的に接続するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、対向する2枚の回路基板を電気的に接続するコネクタ(基板対基板接続コネクタ)であって、嵌合溝部を有するソケットハウジングと、嵌合溝部に沿って屈曲したソケットコンタクトを有するソケットと、嵌合溝部に嵌合する嵌合凸部を有するヘッダハウジングと、嵌合凸部に沿って屈曲したヘッダコンタクトを有するヘッダとを備えたコネクタが開示されている。この種のコネクタでは、ソケットの嵌合溝部にヘッダの嵌合凸部を嵌挿することにより、ソケットコンタクトとヘッダコンタクトとが接触し、これらの間で電気的な接続が可能となる。
【0003】
特許文献1に開示されたコネクタでは、ソケットコンタクトとヘッダコンタクトとの接触部分において、それぞれのコンタクトに傾斜段部が形成されており、ヘッダコンタクトのソケットコンタクトへの嵌合時に、傾斜段部同士が係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−270085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、ソケットコンタクトの傾斜段部とヘッダコンタクトの傾斜段部との対向面が、それぞれ、コンタクト同士が抜け出せる方向(嵌合方向)に傾斜している(特許文献1 図8)。したがって、ヘッダコンタクトをソケットコンタクトから低い引き抜き力で引き抜くことができると考えられる。よって、ヘッダコンタクトがソケットコンタクトから簡易に外れやすい。
【0006】
そこで、本発明は、一方のコネクタの他方のコネクタからの嵌合解除時に、高い引き抜き力を必要とするコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコネクタは、第1ハウジングと、前記第1ハウジングに固定された帯状導電部材である第1コンタクトとを有する第1コネクタと、第2ハウジングと、前記第2ハウジングに固定された帯状導電部材である第2コンタクトとを有する第2コネクタとを備えたコネクタである。前記第1コンタクトは、その長手方向の位置が互いに異なる複数個所で屈曲することで形成された、前記第2コネクタに向かって突出するように湾曲した第1湾曲部を有していると共に、前記第2コンタクトは、その長手方向の位置が互いに異なる複数個所で屈曲することで形成された、前記第1コネクタに向かって開口するように湾曲した第2湾曲部を有し、前記第1湾曲部はその内側から前記第1ハウジングによって支持されており、前記第1湾曲部が前記第2湾曲部に嵌合することによって、前記第1コンタクトと前記第2コンタクトとの電気的接続が達成される。前記第1湾曲部には、前記第2湾曲部への嵌合方向と直交し且つ互いに反対方向を向いた2つの外側面が設けられており、前記2つの外側面の一方及び他方が、それぞれ、互いに反対方向を向くように前記第2湾曲部に設けられた前記嵌合方向と直交する2つの内側面の一方及び他方と、前記第1湾曲部の前記第2湾曲部への嵌合動作時に接触し、前記第1湾曲部の前記一方の前記外側面、及び、前記嵌合動作時にこれと接触する前記第2湾曲部の前記一方の前記内側面のそれぞれに、前記第1湾曲部と前記第2湾曲部との係合を図るための係合段部が形成されており、一方の前記係合段部において底面と側面のなす傾斜角度が直角であり、他方の前記係合段部において底面と側面のなす傾斜角度が鈍角である。
【0008】
本発明によると、第1湾曲部と第2湾曲部との接触部において、傾斜角度が直角である係合段部と傾斜角度が鈍角である係合段部とを組み合わせた係合とすることにより、第1湾曲部の第2湾曲部からの嵌合解除時に、両方の係合段部の変形を抑制しつつ、第1湾曲部の引き抜きに高い引き抜き力を必要とすることができる。
【0009】
また、本発明において、前記第2湾曲部が、その頂部において外側から前記第2ハウジングによって支持されていることが好ましい。これによると、第2コンタクトが基板にハンダ接合されたとき、第2湾曲部の頂部と基板とが第2ハウジングによって絶縁状態となることから、配線パターンの設計の自由度を高めることができる。また、第1湾曲部の第2湾曲部への嵌合動作時に、第2湾曲部の頂部の変形を抑止することができる。
【0010】
さらに、本発明において、前記第2ハウジングは、前記第2コンタクトの厚み方向への移動を、前記第2湾曲部に隣接して設けられた前記嵌合方向に延在する部分において規制している。これによると、第2コンタクトの安定保持を図ることができる。
【0011】
加えて、本発明において、前記第1湾曲部の前記他方の前記外側面、及び、前記嵌合動作時にこれと接触する前記第2湾曲部の前記他方の前記内側面は、少なくとも前記嵌合時に互いに接触する部分が共に凹凸のない平坦面となるように形成されている。これによると、第1湾曲部の他方の外側面と第2湾曲部の他方の内側面との接触可能な部分が嵌合方向に長くなることから、有効嵌合長を長くすることができる。また、上記構成により、第1湾曲部の第2湾曲部への嵌合の際に、第1湾曲部の他方の外側面と第2湾曲部の他方の内側面とがそれらの接触する部分において係合しないことから、第1湾曲部の第2湾曲部からの嵌合解除時に、第2コンタクトが嵌合方向へ移動することを抑制することができる。
【0012】
また、本発明において、嵌合動作時に、前記第1湾曲部の前記他方の前記外側面と前記第2湾曲部の前記他方の前記内側面とが、前記第1湾曲部の前記一方の前記外側面と前記第2湾曲部の前記一方の前記内側面とに先駆けて接触する。これによると、第1湾曲部の他方の外側面と第2湾曲部の他方の内側面との接触部分が変位してから、第1湾曲部の一方の外側面と第2湾曲部の一方の内側面とが係合することから、低い挿入力により、第1湾曲部を第2湾曲部へ嵌合させることができる。したがって、第1湾曲部の第2湾曲部への嵌合動作時において低い挿入力を実現することができるとともに、第1湾曲部の第2湾曲部からの嵌合解除動作時において高い引き抜き力を実現することができるため、低い挿入力と高い引き抜き力とを両立させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコネクタによると、第1湾曲部の第2湾曲部への嵌合動作時に第1湾曲部と第2湾曲部とが接触する接触部において、傾斜角度が直角である係合段部と傾斜角度が鈍角である係合段部とを組み合わせた係合にすることにより、第1湾曲部の第2湾曲部からの嵌合解除時に、両方の係合段部の変形を抑制しつつ、第1湾曲部の引き抜きに高い引き抜き力を必要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係るコネクタの外観斜視図であり、(a)は、プラグコネクタのリセプタクルコネクタへの嵌合時を示しており、(b)プラグコネクタのリセプタクルコネクタへの嵌合解除時を示している。
【図2】(a)は図1に示すプラグコネクタの外観斜視図であり、(b)は、図2(a)に示すIIB‐IIB断面図である。
【図3】(a)は図1に示すリセプタクルコネクタの外観斜視図であり、(b)は、図3(a)に示すIIIB‐IIIB断面図である。
【図4】(a)〜(c)は、プラグコネクタのリセプタクルコネクタへの嵌合動作時及び嵌合解除時を順に示す図であり、(b)は、図1のIVB‐IVB断面図である。
【図5】(a)は、図1に示すリセプタクルハウジングの平面図であり、(b)は、図1に示すリセプタクルハウジングの側面図である。
【図6】図1に示すリセプタクルコネクタの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1(a)は、 プラグコネクタ(第1コネクタ)10をリセプタクルコネクタ(第2コネクタ)20へ嵌合させたときを示しており、図1(b)は、プラグコネクタ(第1コネクタ)10をリセプタクルコネクタ(第2コネクタ)20へ嵌合させる前を示している。図1に示すように、コネクタ100は、プラグコネクタ(第1コネクタ)10と、リセプタクルコネクタ(第2コネクタ)20とを備えている。
【0017】
(プラグコネクタ)
図2(a)に示すように、プラグコネクタ(第1コネクタ)10は、プラグハウジング(第1ハウジング)11と、プラグハウジング11に固定された複数のプラグコンタクト(第1コンタクト)12とを有している。複数のプラグコンタクト12は、所定のピッチで配列されている。
【0018】
プラグハウジング11は、絶縁性の樹脂からなるものであって、その周縁に沿って形成された略矩形状の環状の環状壁15と、環状壁15の内部に形成された底壁16とを有している。環状壁15は、底壁16の右端及び左端のそれぞれから立設した側壁15a,15bと、底壁16の前端から立設した前壁15cと、底壁16の後端から立設した後壁15dとを有している。そして、環状壁15及び底壁16により、環状壁15の内方に凹部17が形成されている。側壁15a,15bには、その側面に沿って、略U字状の溝18が複数形成されている。複数の溝18は、側壁15a,15bの長手方向に沿って、所定の間隔で配列されている。
【0019】
図2(b)に示すように、プラグコンタクト12は、所定の厚みを有する金属の帯状導電部材であって、その長手方向に互いに異なる3箇所で屈曲することにより形成されている。プラグコンタクト12は、図示しない回路基板にハンダ接合されるプラグ端子部12aと、プラグ端子部12aの一端に接続された略逆U字状のプラグ湾曲部(第1湾曲部)12bとを有している。
【0020】
プラグコンタクト12をプラグハウジング11に装着するときは、プラグコンタクト12(プラグ湾曲部12b)をプラグハウジング11の溝18に嵌め、圧入する。プラグコンタクト12がプラグハウジング11に固定されているとき、図2(b)に示すように、プラグ湾曲部12bは側壁15a,15bにより内側から支持されている。
【0021】
(リセプタクルコネクタ)
図3(a)に示すように、リセプタクルコネクタ(第2コネクタ)20は、リセプタクルハウジング(第2ハウジング)21と、リセプタクルハウジング21に固定された複数のリセプタクルコンタクト(第2コンタクト)22とを有している。複数のリセプタクルコンタクト22は、プラグコンタクト12と略同じ所定のピッチで配列されている。
【0022】
リセプタクルハウジング21は、絶縁性の樹脂からなるものであって、その周縁に沿って形成された略矩形状の環状の環状壁25と、環状壁25の内部に形成された底壁26と、環状壁25の内部に形成された凸部27を有している。環状壁25は、底壁26の右端及び左端のそれぞれから立設した側壁25a,25bと、底壁26の前端から立設した前壁25cと、底壁26の後端から立設した後壁25dとを有している。凸部27は、環状壁25の内方に形成された凹部28の中に設けられているとともに、環状壁25から所定の間隔だけ離れた位置に設けられている。側壁25a,25bには、その側面に沿って、略U字状の溝29が複数形成されている。複数の溝29は、側壁25a,25bの長手方向に沿って、所定の間隔で配列されている。
【0023】
図3(b)に示すように、リセプタクルコンタクト22は、所定の厚みを有する金属の帯状導電部材であって、その長手方向に互いに異なる6箇所で屈曲することにより形成されている。リセプタクルコンタクト22は、図示しない回路基板にハンダ接合されるリセプタクル端子部22aと、リセプタクル端子部22aの一端から上方へ延びた保持部22bと、保持部22bの一端から水平方向に延びた接続部22cと、接続部22cの一端から下方に延在し、その後、緩やかに水平方向へ屈曲した後、上方へ立ち上がって形成されたリセプタクル湾曲部22d(第2湾曲部)とを有している。保持部22bの溝29の配列方向に向いた側面には、リセプタクルコンタクト22の幅方向に張り出した突起部25e(図3(a),図6の拡大図参照)が設けられている。リセプタクルコンタクト22をリセプタクルハウジング21に装着したとき、突起部25eは、リセプタクルハウジング21の側壁25a,25bに保持される。
【0024】
リセプタクルコンタクト22をリセプタクルハウジング21に装着するときは、リセプタクルコンタクト22を溝29に嵌め、圧入する。
【0025】
次に、図4を参照しつつ、プラグコネクタ10のリセプタクルコネクタ20への嵌合時及び嵌合解除時について説明する。
【0026】
図4(a)には、プラグコネクタ10をリセプタクルコネクタ20へ挿入する時(嵌合動作時)の状態が示されている。図4(b)には、プラグコネクタがリセプタクルコネクタへ嵌合した時(嵌合時)の状態が示されている。図4(c)には、プラグコネクタをリセプタクルコネクタから引き抜く時(嵌合解除動作時)の状態が示されている。
【0027】
図4(a)〜(c)に示すように、プラグ湾曲部12bは、リセプタクルコネクタ20に向かって突出するように湾曲しているとともに、その内側からプラグハウジングの側壁15a,15bにより支持されている。リセプタクル湾曲部22dは、プラグコネクタ10に向かって開口するように湾曲している。
【0028】
プラグ湾曲部12bは、頂部31と、頂部31を挟んで互いに反対側に位置する2つの側部32,33とを有している。2つの側部32,33は、嵌合方向と直交する方向に対向している。また、リセプタクル湾曲部22dは、頂部41と、頂部41を挟んで互いに反対側に位置する2つの側部42,43と、側部43の先端から略くの字状に屈曲した屈曲部44とを有している。2つの側部42,43は、嵌合方向と直交する方向に対向している。
【0029】
図4(a),(b)に示すように、プラグ湾曲部12bのリセプタクル湾曲部22dへの嵌合動作時に、プラグ湾曲部12bの側部33の外側面33aと、リセプタクル湾曲部22dの屈曲部44の内側面44aとが接触するとともに、プラグ湾曲部12bの側部32の外側面32aと、リセプタクル湾曲部22dの側部42の内側面42aとが接触する。また、上記嵌合動作時には、プラグ湾曲部12bの側部33の外側面33aが、リセプタクル湾曲部22dの側部43の内側面43aとも接触する。したがって、プラグ湾曲部12bのリセプタクル湾曲部22dへの嵌合動作時に、プラグ湾曲部12bとリセプタクル湾曲部22dとは、2箇所で接触する。外側面32a,33aは、嵌合方向と直交し且つ互いに反対方向を向いている。また、同様に、内側面42a,44aは、嵌合方向と直交し且つ互いに反対方向を向いている。
【0030】
次に、プラグ湾曲部12bをリセプタクル湾曲部22dに嵌合する時に(嵌合動作時に)、プラグ湾曲部12bとリセプタクル湾曲部22dとが接触する2箇所の接触部分について説明する。
【0031】
まず、2箇所の接触部分のうちの一方の接触部分及びその周辺(図4(b)に示すS1)について説明する。ここでは、説明の都合上、図4(c)の拡大図を参照しながら説明する。
【0032】
外側面32aには、側部32の長手方向に延びた凹部32bが形成されている。凹部32bは、外側面32aに、プラグコンタクト12の厚み方向に圧潰加工を施すことにより形成されたものである。また、内側面42aには、側部42の長手方向に延びた凹部42bが形成されている。凹部42bは、内側面42aに、リセプタクルコンタクト22の厚み方向に圧潰加工を施すことにより形成されたものである。
【0033】
図4(c)に示すように、本実施形態では、プラグ湾曲部12bのリセプタクル湾曲部22dからの嵌合解除時に、凹部32bの下端と、凹部42bの上端とが係合することにより、プラグ湾曲部12bとリセプタクル湾曲部22dとが係合する。そこで、以下においては、プラグ湾曲部12bの凹部32bの下端をプラグ係合段部Pと示し、リセプタクル湾曲部22dの凹部42bの上端をリセプタクル係合段部Rと示す。
【0034】
プラグ係合段部Pにおいて、凹部32bの底面32qと下側面32pとのなす傾斜角度が鈍角である。また、リセプタクル係合段部Rにおいて、凹部42bの底面42qと上側面42rとのなす傾斜角度が直角である。
【0035】
プラグ係合段部Pとリセプタクル係合段部Rとが係合することによって、プラグ湾曲部12bのリセプタクル湾曲部22dからの嵌合が解除されにくくなる。なお、プラグ係合段部Pにおいて、凹部32bの底面32qと下側面32pとのなす傾斜角度が直角である場合は、プラグ係合段部Pの傾斜角度とリセプタクル係合段部Rの傾斜角度とのいずれもが直角であるため、プラグ湾曲部12bのリセプタクル湾曲部22dからの嵌合解除時に、プラグ係合段部Pとリセプタクル係合段部Rとが削れて変形しやすい。本実施形態では、プラグ係合段部Pの傾斜角度が鈍角であり且つリセプタクル係合段部Rの傾斜角度が直角であるため、プラグ係合段部Pとリセプタクル係合段部Rとが確実に係合しつつ、プラグ係合段部Pが傾斜していることからプラグ係合段部P及びリセプタクル係合段部Rが変形しにくい。また、プラグ係合段部Pとリセプタクル係合段部Rとが係合しているとき、プラグ湾曲部12bとリセプタクル湾曲部22dとが接触していることから、プラグ湾曲部12bとリセプタクル湾曲部22dとの導通が可能となる。
【0036】
次に、2箇所の接触部のうちの他方の接触部分及びその周辺(図4(b)に示すS2)について説明する。ここでは、図4(b)を参照しながら説明する。
【0037】
図4(b)に示すように、外側面33aと、内側面43aと、内側面44aとは、それぞれ、凹凸のない平坦面となっている。したがって、嵌合動作時において、外側面33aの全面が、内側面43a及び内側面44aの少なくとも一方と接触可能となっている。外側面33aと、内側面43a及び内側面44aの少なくとも一方とが接触することにより、プラグ湾曲部12bとリセプタクル湾曲部22dとの導通が可能となる。
【0038】
本実施形態では、図4(a),(b)に示すように、プラグコネクタ10をリセプタクルコネクタ20に嵌合するときに、プラグ湾曲部12bの外側面33aと、リセプタクル湾曲部22dの内側面44aとが接触し、屈曲部44が変位した後、プラグ湾曲部12bの外側面32aと、リセプタクル湾曲部22dの内側面42aとが接触する。言い換えると、プラグ湾曲部12bのリセプタクル湾曲部22dへの嵌合動作時に、プラグ湾曲部12bの外側面32aと、リセプタクル湾曲部22dの内側面42aとの接触に先駆けて、プラグ湾曲部12bの外側面33aと、リセプタクル湾曲部22dの内側面44aとが接触し、屈曲部44が変位する。
【0039】
続いて、図3〜6を参照しつつ、リセプタクルコネクタ20の構造について説明する。
【0040】
図3(b)に示すように、リセプタクルハウジング21の底壁26は、側壁25a,25bのそれぞれに連接しており、且つ、凸部27へ向けてリセプタクル湾曲部22dの頂部41が配置される位置まで延びている。したがって、リセプタクルコンタクト22をリセプタクルハウジング21に装着したとき、頂部41の下方に底壁26が存在するため、リセプタクル湾曲部22dが、頂部41において、外側(図3(b)の下側)から底壁26によって支持される。よって、リセプタクルコネクタ20を図示しない基板へハンダ接合したら、基板とリセプタクルコンタクト22の頂部41との間に、底壁26が介在するため、頂部41と基板との間が絶縁状態となる。
【0041】
また、図3(a),(b)に示すように、側壁25a,25bの外側面には、複数の保持壁50a,50bが設けられている。保持壁50a,50bは、矩形状であって、側壁25a,25bの溝29が形成されていない部分に、側壁25a,25bの高さ方向(嵌合方向)に沿って設けられている。図3(a)に示すように、保持壁50a,50bの幅は、隣り合う2つの溝29の間隔より大きい。したがって、溝29の保持部22bが嵌められる入口が狭くなっている。(図5,6参照)。
【0042】
図5は、リセプタクルハウジング21を示しており、図6は、リセプタクルハウジング21にリセプタクルコンタクト22を装着したときを示している。図5(a)に示すように、保持壁50a,50bにより、溝29の保持部22bが嵌められる入口29aが、溝29の他の部分の幅より狭くなっている。また、図6(拡大図)に示すように、隣り合う2つの保持壁50aの間隔及び隣り合う2つの保持壁50bの間隔は、いずれも、保持部22bの幅(リセプタクルコンタクト22の長手方向に直交する長さ)と2つの突起部25eの突出長さとの合計の長さより小さい。したがって、突起部25eの後方(図5において、突起部25eの上方)には、突起部25eに隣接して保持壁50bが存在することから、突起部25e及び保持部22bが後方から保持壁50bにより支持される。よって、保持部22bがリセプタクルコンタクト22の厚み方向(図6において、上方)へ移動することが規制される。
【0043】
また、図5(b)に示すように、保持壁50bは、リセプタクルハウジング21の高さ方向(嵌合方向)に延在している。なお、図示されていないが、同様に、保持壁50aも、リセプタクルハウジング21の高さ方向(嵌合方向)に延在している。
【0044】
なお、プラグコンタクト12には、上述したように、それぞれ、凹部32bを形成するために、圧潰加工が施されている。圧潰加工は、帯状導電部材を屈曲する前に、一直線状となった帯状導電部材に施される。そして、圧潰加工により凹部32bが形成された一直線状の帯状導電部材を、その長手方向に互いに異なる複数個所で屈曲させることにより、プラグコンタクト12が得られる。また、同様に、リセプタクルコンタクト22を形成する際も、帯状導電部材を屈曲する前の一直線状となった帯状導電部材に圧潰加工を施し、その後、一直線状の帯状導電部材を、その長手方向に互いに異なる複数個所で屈曲形成することにより、リセプタクルコンタクト22が得られる。
【0045】
以上に述べたように、本実施の形態のコネクタによると以下の効果を奏する。プラグ湾曲部12bのリセプタクル湾曲部22dへの嵌合解除時に、傾斜角度が鈍角であるプラグ係合段部Pと、傾斜角度が直角であるリセプタクル係合段部Qとが係合するため、第1湾曲部の第2湾曲部からの嵌合解除時に、プラグ係合段部P及びリセプタクル係合段部Qの変形を抑制しつつ、プラグ湾曲部12bの引き抜きに高い引き抜き力を要することができる。
【0046】
また、リセプタクル湾曲部22dが、その頂部41において外側から底壁26によって支持されている。これにより、リセプタクルコンタクト22が基板にハンダ接合されたとき、リセプタクル湾曲部22dの頂部41と基板とが底壁26によって絶縁状態となることから、配線パターンの設計の自由度を高めることができる。また、プラグ湾曲部12bのリセプタクル湾曲部22dへの嵌合動作時に、リセプタクル湾曲部22dの頂部41の変形を抑止することができる。
【0047】
さらに、保持壁50a,50bが、リセプタクルコンタクト22の突起部25eの後方に設けられているため、保持部22b及び突起部25eが保持壁50a,50bにより後方から保持される。したがって、保持部22bが、リセプタクルコンタクト22の厚み方向へ移動することが規制される。よって、リセプタクルコンタクト22の安定保持を図ることができる。
【0048】
加えて、プラグ湾曲部12bのリセプタクル湾曲部22dへの嵌合動作時に接触する、外側面33aと、内側面43a,44aとは、共に凹凸のない平坦面となるように形成されていることから、有効嵌合長を長くすることができる。また、外側面33aと、内側面43a,44aとが係合しないことから、プラグ湾曲部12bのリセプタクル湾曲部22dへの嵌合解除時(引き抜き時)に、リセプタクルコンタクト22が嵌合方向へ移動することを抑制することができる。
【0049】
また、プラグ湾曲部12bのリセプタクル湾曲部22dへの嵌合動作時(挿入時)に、プラグ湾曲部12bの外側面32aと、リセプタクル湾曲部22dの内側面42aとの接触に先駆けて、プラグ湾曲部12bの外側面33aと、リセプタクル湾曲部22dの内側面44aとが接触することから、屈曲部44が変位してから、外側面32aと内側面42aとが接触する。したがって、低い挿入力により、プラグ湾曲部12bをリセプタクル湾曲部22dへ嵌合させることができる。よって、プラグ湾曲部12bのリセプタクル湾曲部22dへの嵌合動作時において低い挿入力を実現できるとともに、プラグ湾曲部12bのリセプタクル湾曲部22dからの嵌合解除時において高い引き抜き力を実現することができるため、低い挿入力と高い引き抜き力とを両立させることができる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、本実施形態では、プラグ係合段部Pとリセプタクル係合段部Rにおいて、プラグ係合段部Pの底面32qと下側面32pとのなす傾斜角度が鈍角であり、且つ、リセプタクル係合段部Rの底面42qと上側面42rとのなす傾斜角度が直角であるが、プラグ係合段部Pの底面32qと下側面32pとのなす傾斜角度が直角であり、且つ、リセプタクル係合段部Rの底面42qと上側面42rとのなす傾斜角度が鈍角であってもよい。上記構成によっても、本願と同様な効果が得られる。
【0051】
また、本実施形態では、リセプタクルハウジング21が、保持壁50a,50bを有しているが、保持壁50a,50bを有していなくてもよい。さらに、リセプタクルハウジング21の底壁26が、凸部27に向かって、リセプタクルコネクタ20の頂部41が存在する位置まで延びていなくてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、プラグ湾曲部12bの側部33の外側面33aと、リセプタクル湾曲部22dの屈曲部44の内側面44a及び側部43の内側面43aとは、共に凹凸のない平坦面であるが、プラグ湾曲部12bのリセプタクル湾曲部22dへの嵌合動作時に、少なくともそれらが互いに接触する部分において、共に凹凸のない平坦面となるように形成されていれば、互いに接触されない部分は平坦面でなくてもよい。さらに、本実施形態では、プラグ湾曲部12bの外側面33aと、リセプタクル湾曲部22dの内側面43a,44aとは、共に凹凸のない平坦面であるが、外側面33a及び内側面43a,44aの少なくとも一方に凹部が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 プラグコネクタ
11 プラグハウジング
12 プラグコンタクト
20 リセプタクルコネクタ
21 リセプタクルハウジング
22 リセプタクルコンタクト
12b プラグ湾曲部
22d リセプタクル湾曲部
15a,15b,25a,25b 側壁
32a,33a 外側面
42a,43a,44a 内側面
P プラグ係合段部
R リセプタクル係合段部
32q,42q 底面
32p 下側面
42r 上側面
31,41 頂部
22b 保持部
25e 突起部
50a,50b 保持壁
100 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハウジングと、前記第1ハウジングに固定された帯状導電部材である第1コンタクトとを有する第1コネクタと、
第2ハウジングと、前記第2ハウジングに固定された帯状導電部材である第2コンタクトとを有する第2コネクタとを備えたコネクタであって、
前記第1コンタクトは、その長手方向の位置が互いに異なる複数個所で屈曲することで形成された、前記第2コネクタに向かって突出するように湾曲した第1湾曲部を有していると共に、前記第2コンタクトは、その長手方向の位置が互いに異なる複数個所で屈曲することで形成された、前記第1コネクタに向かって開口するように湾曲した第2湾曲部を有し、前記第1湾曲部はその内側から前記第1ハウジングによって支持されており、
前記第1湾曲部が前記第2湾曲部に嵌合することによって、前記第1コンタクトと前記第2コンタクトとの電気的接続が達成され、
前記第1湾曲部には、前記第2湾曲部への嵌合方向と直交し且つ互いに反対方向を向いた2つの外側面が設けられており、前記2つの外側面の一方及び他方が、それぞれ、互いに反対方向を向くように前記第2湾曲部に設けられた前記嵌合方向と直交する2つの内側面の一方及び他方と、前記第1湾曲部の前記第2湾曲部への嵌合動作時に接触し、
前記第1湾曲部の前記一方の前記外側面、及び、前記嵌合動作時にこれと接触する前記第2湾曲部の前記一方の前記内側面のそれぞれに、前記第1湾曲部と前記第2湾曲部との係合を図るための係合段部が形成されており、
一方の前記係合段部において底面と側面のなす傾斜角度が直角であり、他方の前記係合段部において底面と側面のなす傾斜角度が鈍角であることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記第2湾曲部が、その頂部において外側から前記第2ハウジングによって支持されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第2ハウジングは、前記第2コンタクトの厚み方向への移動を、前記第2湾曲部に隣接して設けられた前記嵌合方向に延在する部分において規制していることを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第1湾曲部の前記他方の前記外側面、及び、前記嵌合動作時にこれと接触する前記第2湾曲部の前記他方の前記内側面は、少なくとも前記嵌合時に互いに接触する部分が共に凹凸のない平坦面となるように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記嵌合動作時に、前記第1湾曲部の前記他方の前記外側面と前記第2湾曲部の前記他方の前記内側面とが、前記第1湾曲部の前記一方の前記外側面と前記第2湾曲部の前記一方の前記内側面とに先駆けて接触することを特徴とする請求項4に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−18781(P2012−18781A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154438(P2010−154438)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】