説明

コネクタ

【課題】ロックアームを弾性撓みさせたままで嵌合作業を行った場合においても、良好な作業フィーリングが得られるようにする。
【解決手段】両ハウジング10,30の嵌合過程では、ロックアーム36が、ロック部16の誘導面17上を摺接することにより両ハウジング10,30の嵌合方向と交差するロック解除方向へ弾性撓みする。誘導面17は、第2ハウジング30への嵌合方向における前端側の領域に配された第1誘導面17Aと、第2ハウジング30への嵌合方向において第1誘導面17Aよりも後方の領域に配され、両ハウジング10,30の嵌合方向に対する傾斜角度が第1誘導面17Aよりも大きい急勾配領域22を有する第2誘導面17Bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロック部を有する第1ハウジングと、第1ハウジングと嵌合可能であって弾性撓み可能なロックアームを有する第2ハウジングとを備え、両ハウジングの嵌合過程では、ロックアームがロック部との干渉によって弾性撓みするようになっており、両ハウジングが正規の嵌合状態に至ると、ロックアームが弾性復帰してロック部と係止することにより、両ハウジングが嵌合状態にロックされるようになっているコネクタが開示されている。
【0003】
ロック部には、両ハウジングの嵌合方向に対して傾斜した誘導面が形成されており、両ハウジングの嵌合過程では、ロックアームが誘導面上を摺接することによって弾性撓みするようになっている。また、両ハウジングのロックを解除する際には、ロックアームに形成した操作部を押し操作することにより、ロックアームを弾性撓みさせてロック部から解離させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−130324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
両ハウジングを嵌合する際に、作業者が、第2ハウジングを摘んだときに操作部を誤って押してロックアームを弾性撓みさせてしまい、そのままの状態で嵌合作業を開始してしまうことがある。この場合、ロック解除を目的として意図的に操作部を押し操作したのではないので、ロックアームの弾性撓み量はロック解除に必要な撓み量よりも小さく、嵌合の途中でロックアームが誘導面の途中に当接することになる。
【0006】
そして、ロックアームは、誘導面に摺接しながら弾性撓み量を増した後に、弾性復帰するのであるが、この誘導面に摺接する間におけるロックアームの弾性撓み量は、ロックアームを弾性撓みさせずに正規に嵌合を開始した場合の弾性撓み量に比べて小さいため、ロックアームの弾性撓みに起因する嵌合抵抗の変動(増大の仕方)も小さい。このロックアームの弾性撓みに起因する嵌合抵抗の変動は、作業者が嵌合の進み具合を感じ取るための手段であり、嵌合抵抗の変動が大きい程、嵌合の進み具合を感じ取り易く、作業フィーリングが良好となる。
【0007】
従って、特許文献1に記載されたコネクタは、ロックアームを弾性撓みさせたままで嵌合作業を行った場合に、嵌合抵抗の変動が小さくなるので、作業フィーリングが良くないという問題が生じることになる。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ロックアームを弾性撓みさせたままで嵌合作業を行った場合においても、良好な作業フィーリングが得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、ロック部を有する第1ハウジングと、前記第1ハウジングと嵌合可能な第2ハウジングと、前記第2ハウジングに設けられ、前記第1ハウジングとの嵌合方向と交差する方向への弾性撓みを可能とされたロックアームとを備え、前記ロック部には、前記両ハウジングの嵌合方向に対して傾斜した誘導面が形成され、前記両ハウジングの嵌合過程では、前記ロックアームが、前記誘導面上を摺接することにより前記両ハウジングの嵌合方向と交差するロック解除方向へ弾性撓みし、前記両ハウジングが正規の嵌合状態に至ると、前記ロックアームがロック位置へ弾性復帰して前記ロック部と係止することにより、前記両ハウジングが嵌合状態にロックされ、前記両ハウジングのロックを解除する際には、前記ロックアームに形成した操作部を押し操作することにより、前記ロックアームをロック解除方向へ弾性撓みさせて前記ロック部から解離させるようになっているコネクタにおいて、前記誘導面は、前記第2ハウジングへの嵌合方向における前端側の領域に配された第1誘導面と、前記第2ハウジングへの嵌合方向において前記第1誘導面よりも後方の領域に配され、前記両ハウジングの嵌合方向に対する傾斜角度が前記第1誘導面よりも大きい急勾配領域を有する第2誘導面とを備えて構成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
操作部が押し操作されてロックアームが弾性撓みしている状態で嵌合を行った場合、ロックアームは、第1誘導面には接触せずに第2誘導面に当接することになる。第2誘導面は、両ハウジングの嵌合方向に対する傾斜角度が比較的大きいので、ロックアームが第2誘導面に当接することによって嵌合抵抗が急激に大きくなるとともに、第2誘導面上をロックアームが摺接する過程でも、嵌合抵抗が急激に大きくなる。この嵌合抵抗の急激な変動により、作業者は嵌合の進み具合を明確に感じ取ることができるので、ロックアームを弾性撓みさせたままで嵌合作業を行った場合でも、良好な作業フィーリングを得ることができる。
【0010】
また、ロックアームが弾性撓みしていない状態で両ハウジングを嵌合した場合は、ロックアームは、第1誘導面に摺接し、その後、第2誘導面に摺接して、弾性撓み量を増大させていく。この場合も、ロックアームが第2誘導面上を摺接する過程で、嵌合抵抗が急激に大きくなるので、良好な作業フィーリングが得られる。
【0011】
尚、本発明においては、ロック部の外面のうち嵌合時に第2ハウジングと対向する正面側の面であって、両ハウジングの嵌合方向に対して斜めをなす面を誘導面として定義し、両ハウジングの嵌合過程においてロックアームが直接接触しない領域も誘導面に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態1において第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合途中の状態をあらわす断面図
【図2】第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合途中であって、図1に示す状態から嵌合が進んだ状態をあらわす断面図
【図3】第1ハウジングと第2ハウジングの嵌合が完了した状態をあらわす断面図
【図4】図1の部分拡大図
【図5】図2の部分拡大図
【図6】第1ハウジングの正面図
【図7】第1ハウジングの平面図
【図8】第2ハウジングの正面図
【図9】第2ハウジングの平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図9を参照して説明する。図1〜3に示すように、本実施形態のコネクタは、第1ハウジング10と、第1ハウジング10との嵌合可能な第2ハウジング30とを備えて構成されている。
【0014】
図1〜3,6,7に示すように、第1ハウジング10は、端子保持部11と、端子保持部11の前端(図1〜3における右側の端部)の外周から角筒状に延出したフード部12とを備えて構成されている。端子保持部11には、複数の雄端子金具13が保持され、雄端子金具13の先端のタブ14が、端子保持部11から前方へ突出してフード部12により包囲されている。
【0015】
フード部12は4つの板状部で構成され、そのうちの上板部15の上面(外面)は、両ハウジング10,30の嵌合方向(以下、嵌合方向という)と平行な平面であり、この上板部15には、その上面から上方(フード部12の外方)へ突出した形態のロック部16が一体に形成されている。ロック部16の正面(図1〜5における右側の面であって、両ハウジング10,30の嵌合時に第2ハウジング30と対向する面)は、両ハウジング10,30の嵌合過程において後述するロックアーム36をロック解除方向へ弾性撓みさせるための誘導面17となっている。また、ロック部16の背面(図1〜5における左側の面であって、正面とは反対側の面)は、嵌合方向に対して略直角なロック面18となっている。ロック部16の上面19は、嵌合方向と平行な平面となっている。
【0016】
図4,5に拡大して示すように、誘導面17は、第1誘導面17Aと第2誘導面17Bとによって構成されている。第1誘導面17Aは、誘導面17のうち第2ハウジング30への嵌合方向(図4,5における右方)における前端側の領域に形成された平面であり、嵌合方向に対する第1誘導面17Aのなす傾斜角度αは、本実施形態では概ね30°である。上下方向(上板部15からのロック部16の突出方向であって、嵌合方向と直角な方向)における第1誘導面17Aの形成範囲は、ロック部16の全高さ領域のほぼ1/2である。この第1誘導面17Aの前端は、フード部12の上板部15に対して鈍角状に連なっている。
【0017】
第2誘導面17Bは、第2ハウジング30への嵌合方向において第1誘導面17Aよりも後方の領域に配され、第2誘導面17Bの前端は第1誘導面17Aの後端に直接連なり、第2誘導面17Bの後端は、ロック部16の上面19に直接連なっている。この第2誘導面17Bは、嵌合方向に対する傾斜角度が第1誘導面17Aよりも大きい急勾配領域22を有している。第2誘導面17Bは、急斜面20と弧状面21とによって構成されている。
【0018】
急斜面20は、嵌合方向に対する傾斜角度が第1誘導面17Aよりも大きい平面からなり、急斜面20の傾斜角度βは、本実施形態では、概ね60°となっている。急斜面20の前端は、第1誘導面17Aの後端に対して鈍角状に連なっており、誘導面17のうち第1誘導面17Aと急斜面20とが形成されている領域は凹んだ形態となっている。上下方向における急斜面20の形成範囲は、第2誘導面17Bの全高さ領域のほぼ1/2となっている。
【0019】
弧状面21は、急勾配曲面21Aと緩勾配曲面21Bとによって構成されている。急勾配曲面21Aは、弧状面21のうち、急勾配曲面21Aに接する接線(図示省略)の嵌合方向に対する傾斜角度が第1誘導面17Aの傾斜角度αよりも大きい領域である。急勾配曲面21Aの曲率は、急勾配曲面21Aの全領域に亘って一定であり、急勾配曲面21Aの前端は、急斜面20に対して接線状(滑らか)に連なっている。
【0020】
一方、緩勾配曲面21Bは、弧状面21のうち、緩勾配曲面21Bに接する接線(図示省略)の嵌合方向に対する傾斜角度が第1誘導面17Aの傾斜角度αよりも小さい領域である。緩勾配曲面21Bの曲率は、緩勾配曲面21Bの全領域に亘って一定であり、緩勾配曲面21Bと急勾配曲面21Aは同じ曲率である。緩勾配曲面21Bの前端は、急勾配曲面21Aの後端に対して接線状(滑らか)に連なっており、緩勾配曲面21Bの後端は、ロック部16の上面19に対して接線状(滑らか)に連なっている。
【0021】
上記のように、第2誘導面17Bのうち急斜面20と急勾配曲面21Aとを含む領域は、嵌合方向に対する傾斜角度が第1誘導面17Aよりも大きい急勾配領域22となっている。そして、両ハウジング10,30の嵌合過程では、第2誘導面17Bにおけるロックアーム36の摺接領域は、急勾配領域22のみとなっている。
【0022】
尚、本実施形態においては、ロック部16の外面のうち嵌合時に第2ハウジング30と対向する正面側の面であって、嵌合方向に対して斜めをなす面を誘導面17として定義し、両ハウジング10,30の嵌合過程においてロックアーム36が直接接触しない領域も誘導面17に含まれる。
【0023】
図1〜3,8,9に示すように、第2ハウジング30は、ブロック状をなす端子収容部31と、端子収容部31の外周に連なって前方(図1〜3における左方)へ片持ち状に延出するとともに端子収容部31を全周に亘って包囲する筒状嵌合部32とを備えて構成されている。両ハウジング10,30の嵌合の際には、端子収容部31がフード部12内に進入するようになっている。端子収容部31内には複数の雌端子金具33が収容され、端子収容部31の前面には、両ハウジング10,30が嵌合したときに、タブ14を端子収容部31内に進入させて雌端子金具33と接続させるための進入口が開口している。端子収容部31と筒状嵌合部32との間には、前方へ開放された形態であって、両ハウジング10,30の嵌合時にはフード部12を進入させるための嵌合空間35が形成されている。
【0024】
嵌合空間35のうち端子収容部31の上面及び筒状嵌合部32の上壁部に臨む上部空間内には、ロックアーム36が収容されている。ロックアーム36は、端子収容部31の上面(外面)から上方へ突出した形態の支持部37と、支持部37の上端(突出端部)から前方へ片持ち状に延出した形態のアーム部38と、支持部37の上端から後方へ片持ち状に延出した形態の操作部39とを一体に形成して構成されている。ロックアーム36は、常には、ロックアーム36自体の剛性によって図1,3,4に示すロック位置に保持されているが、図2,5に示すように、支持部37の上端を支点としてロック解除方向へシーソー状に弾性撓みし得るようになっている。
【0025】
ロックアーム36がロック位置に保持されているときのアーム部38の延出方向と操作部39の延出方向は、いずれも嵌合方向と概ね平行な方向であり、アーム部38と操作部39は一直線状に連なっている。また、ロックアーム36がロック解除方向に弾性撓みした状態では、アーム部38と操作部39が嵌合方向に対して斜め姿勢となり、アーム部38の前端部が上方(嵌合方向と交差する方向であって、端子収容部31から離間する方向)へ変位するとともに、操作部39が下方へ変位する。
【0026】
ロックアーム36のアーム部38には、上下方向に貫通する係止孔40が形成されている。アーム部38のうち係止孔40よりも前方の部分、つまりフード部12の前端部は、摺接部41となっている。摺接部41の後面(即ち、係止孔40の前側の内面)は、嵌合方向と略直角な係止面42となっている。図4,5に拡大して示すように、摺接部41の正面(両ハウジング10,30の嵌合時に第1ハウジング10及び誘導面17と対向する面)のうち上側(ロック解除時の変位方向)の領域は、嵌合方向と略直角な対向面43となっている。摺接部41の正面のうち下側の領域は、嵌合方向に対して傾斜した平面からなる摺接斜面44となっている。摺接斜面44とアーム部38(摺接部41)の下面とは、鈍角をなしているとともに、摺接曲面45を介して滑らかに連なっている。また、摺接斜面44と対向面43は、円弧面46を介して滑らか(接線状)に連なっている。
【0027】
図4に示すように、ロックアーム36がロック位置にある状態において嵌合方向に対する摺接斜面44の傾斜角度γは、本実施形態では、概ね35°となっている。この摺接斜面44の傾斜角度γは、第1誘導面17Aの傾斜角度αよりも大きく、第2誘導面17Bの急斜面20の傾斜角度β(つまり、急勾配領域22における最大傾斜角度)よりも小さい。また、ロックアーム36がロック位置にある状態で、上下方向における摺接斜面44の形成範囲は、第1誘導面17Aの形成範囲よりも大きい。したがって、図4に示すように、アーム部38の下面がフード部12の上板部15の上面に当接又は接近して対向している状態では、摺接斜面44の上端は、第1誘導面17Aの上端よりも高く、急斜面20と対応する高さに位置する。
【0028】
次に、本実施形態の作用を説明する。両ハウジング10,30の嵌合過程においてフード部12が嵌合空間35内に進入すると、図1,4に示すように、摺接曲面45又は摺接斜面44の下端部が第1誘導面17Aの前端(下端)に当接する。このとき、摺接斜面44は、第1誘導面17Aと第2誘導面17Bには接触せず、両誘導面17A,Bとの間に隙間を空けている。また、対向面43と円弧面46は、第2誘導面17Bとの間に隙間を空けている。
【0029】
この状態から嵌合が進むと、摺接曲面45が第1誘導面17A上を摺接し、これに伴ってロックアーム36がロック解除方向へ弾性撓みする。このとき、嵌合方向に対する第1誘導面17Aの傾斜角度αは比較的小さいので、第1誘導面17Aと摺接曲面45との接触に起因する嵌合抵抗は比較的小さい。この間、円弧面46が第2誘導面17Bに接近していくとともに、嵌合方向に対する摺接斜面44の傾斜角度γが次第に大きくなっていく。
【0030】
そして、嵌合が進んで摺接曲面45が第1誘導面17Aの途中まで達すると、摺接斜面44が急勾配曲面21Aに当接する状態となる。これ以降は、嵌合が進むのに伴い、図5に示すように、摺接曲面45が第1誘導面17Aから離間して、摺接斜面44が急勾配曲面21A上を摺接し、この摺接に伴って、ロックアーム36が更にロック解除方向へ弾性撓みする。この急勾配曲面21Aの傾斜角度は第1誘導面17Aの傾斜角度αよりも大きいので、誘導面17上におけるロックアーム36の摺接領域が第1誘導面17Aから急勾配領域22へ移行するときに、摺接斜面44と急勾配曲面21Aとの摺接に起因する嵌合抵抗が急激に増大する。また、ロックアーム36の弾性撓みの変化量も、急激に大きくなるので、ロックアーム36の弾性復元力に起因する嵌合抵抗も、急激に大きくなる。これらの嵌合抵抗の急激な増大(変動)は、作業者にとって、嵌合の進む具合を感覚的に知るための好材料である。
【0031】
そして、摺接斜面44が急勾配曲面21Aを通過した後は、摺接曲面45が急勾配曲面21A上を摺接する状態となる。摺接曲面45は、急勾配曲面21Aを通過した後、緩勾配曲面21B上を摺接する状態となる。これ以降は、ロックアーム36の摺接部41が、緩勾配曲面21B上とロック部16の上面19上を順に摺接するのであるが、嵌合方向に対する緩勾配曲面21Bの傾斜角度は比較的小さく(つまり、第1誘導面17Aの傾斜角度αよりも小さく)、ロック部16の上面19は嵌合方向と平行なので、ロックアーム36の摺接に起因する嵌合抵抗は小さい。また、緩勾配曲面21Bとロック部16の上面19を摺接する間、ロックアーム36の弾性撓み量は殆ど変動しないので、ロックアーム36の弾性撓み量の増大に起因して嵌合抵抗が増大することもない。したがって、両ハウジング10,30の嵌合が一気に進み、両ハウジング10,30は正規の嵌合状態へ確実に至ることとなる。
【0032】
そして、両ハウジング10,30が正規の嵌合状態に到達すると、図3に示すように、摺接部41がロック部16を通過し終わるので、ロックアーム36がロック位置へ弾性復帰し、係止孔40がロック部16に嵌合して、ロック面18と係止面42とが接近して対向し、係止可能な状態となる。このロック部16とロックアーム36との係止作用により、両ハウジング10,30が正規の嵌合状態にロックされる。
【0033】
嵌合状態にロックされている両ハウジング10,30を離脱する際には、操作部39の上面を押し操作してロックアーム36をロック解除方向へ弾性撓みさせ、係止孔40をロック部16よりも上方へ持ち上げる。これにより、ロック部16とロックアーム36とのロック状態が解除されるので、あとは、このロック解除状態を保持したままで、両ハウジング10,30を引っ張って離脱させればよい。
【0034】
上記では、作業者がロックアーム36に触れずに、つまりロックアーム36がロック位置に保持されているままで、両ハウジング10,30の嵌合を行った場合について説明したが、両ハウジング10,30を嵌合する際に、作業者が、第2ハウジング30を摘んだときに操作部39を誤って押してロックアーム36をロック解除方向へ弾性撓みさせてしまい、そのままの状態で嵌合作業を開始してしまうことがある。この場合、ロック解除を目的として意図的に操作部39を押し操作したのではないので、ロックアーム36の弾性撓み量はロック解除に必要な撓み量よりも小さく、図2,5に示すように、嵌合の途中でロックアーム36が誘導面17の途中に当接することになる。
【0035】
即ち、ロックアーム36の摺接斜面44が、第1誘導面17Aには接触せず、第2誘導面17Bの急勾配曲面21Aに当接することになるのである。換言すると、この急勾配曲面21Aが、誘導面17においてロックアーム36が最初に当接する領域となる。摺接斜面44が急勾配曲面21Aに当接するまでの間、ロックアーム36の弾性撓み量は変動しないので、ロックアーム36の弾性撓み量の変動(急激な増大)に起因する嵌合抵抗の増大も、作業者には感じられない。
【0036】
そして、摺接斜面44が急勾配曲面21Aに当接すると、一気に嵌合抵抗が増大する。つまり、急勾配曲面21Aは、嵌合方向に対する傾斜角度が比較的大きいので、摺接斜面44が急勾配曲面21Aに当接した瞬間に嵌合抵抗が急に大きくなるとともに、摺接斜面44が急勾配曲面21A上を摺接することに起因する嵌合抵抗も急激に大きくなる。さらに、摺接斜面44と急勾配曲面21Aの摺接に伴って、ロックアーム36の弾性撓み量も急激に増大するので、この弾性撓み量の増大に起因して嵌合抵抗も急激に増大する。
【0037】
そして、これらの嵌合抵抗の急激な増大により、作業者は嵌合の進み具合(つまり、ロックアーム36がロック部16に当接したこと)を明確に感じ取ることができる。このように、本実施形態によれば、ロックアーム36を弾性撓みさせたままで嵌合作業を行った場合でも、良好な作業フィーリングを得ることができる。
【0038】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、第1誘導面を平面状とし、両ハウジングの嵌合方向に対する第1誘導面の傾斜角度を、第1誘導面の全領域に亘って一定の角度としたが、第1誘導面の傾斜角度は、全領域に亘って一定の角度でなくてもよい。この場合、第1誘導面の全領域又は一部の領域を曲面状とすることができる。
(2)上記実施形態では、第2誘導面の弧状面の曲率を、全領域に亘って一定としたが、弧状面は、ロックアームの摺接方向(前後方向)において曲率が変化するような形態であってもよい。
(3)上記実施形態では、第2誘導面の一部のみを弧状面とし、この弧状面においては、両ハウジングの嵌合方向に対する傾斜角度が、ロックアームの摺接過程で徐々に変化するようにしたが、第2誘導面の全領域を弧状面としてもよく、第2誘導面の全領域を傾斜角度が一定の平面状としてもよい。第2誘導面の全領域を弧状面とする場合、その弧状面の曲率は、第2誘導面の全領域に亘って一定であってもよく、一定でなくてもよい。
(4)上記実施形態では、第1誘導面と第1ハウジングの外面(上壁部の上面)とが鈍角状に連なる形態としたが、第1誘導面と第1ハウジングの外面を曲面によって滑らかに繋いでもよい。
(5)上記実施形態では、誘導面が、両ハウジングの嵌合方向において第1誘導面と第2誘導面とを連続させた形態となっているが、誘導面は、第1誘導面と第2誘導面を、両ハウジングの嵌合方向と平行な面を介して前後に分断した形態としてもよい。
(6)上記実施形態では、両ハウジングの嵌合過程で、ロックアームが第2誘導面のうちの弧状面のみに摺接するようにしたが、ロックアームが急斜面と弧状面の両方の面に摺接するようにしてもよい。
(7)上記実施形態では、ロック部を第1ハウジングの外面側へ突出する形態としたが、ロック部は、第1ハウジングを構成する板状部から内面側へ突出する形態としてもよい。
(8)上記実施形態では、ロック部を突起状としたが、これに替えて、第1ハウジングを構成する板状部の一部を板厚方向に貫通するように切欠し、板状部のうち切欠せずに残した部分をロック部としてもよい。この場合、ロック部は、板状部の板厚の範囲内に収まる形態となる。
(9)上記実施形態では、ロックアームは、ロック部に接触するアーム部を、支持部から第1ハウジング側へ片持ち状に延出させるとともに、操作部を、支持部から第1ハウジングとは反対側へ片持ち状に延出させる形態とすることで、シーソー状に弾性撓み(傾動変位)するようにしたが、ロックアームは、ロック部に接触するアーム部を、支持部から第1ハウジングとは反対側へ片持ち状に延出させ、そのアーム部の延出端部に操作部を形成した形態であってもよい。
(10)上記実施形態では、両ハウジングの嵌合方向に対する第1誘導面の傾斜角度を概ね30°としたが、第1誘導面の傾斜角度は、30°より大きい角度であってもよく、30°より小さい角度であってもよい。
(11)上記実施形態では、両ハウジングの嵌合方向に対する第2誘導面の急傾斜面の傾斜角度を概ね60°としたが、急傾斜面の傾斜角度は、60°より大きい角度であってもよく、60°より小さい角度であってもよい。
(12)上記実施形態では、両ハウジングの嵌合方向に対する摺接斜面の傾斜角度を概ね35°としたが、摺接斜面の傾斜角度は、35°より大きい角度であってもよく、35°より小さい角度であってもよい。
(13)上記実施形態では、ロックアームの摺接斜面とアーム部(摺接部)の下面とが、摺接曲面を介して滑らかに連なる形態としたが、摺接斜面とアーム部の下面は、鈍角状に連なる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10…第1ハウジング
16…ロック部
17…誘導面
17A…第1誘導面
17B…第2誘導面
22…急勾配領域
30…第2ハウジング
36…ロックアーム
39…操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロック部を有する第1ハウジングと、
前記第1ハウジングと嵌合可能な第2ハウジングと、
前記第2ハウジングに設けられ、前記第1ハウジングとの嵌合方向と交差する方向への弾性撓みを可能とされたロックアームとを備え、
前記ロック部には、前記両ハウジングの嵌合方向に対して傾斜した誘導面が形成され、
前記両ハウジングの嵌合過程では、前記ロックアームが、前記誘導面上を摺接することにより前記両ハウジングの嵌合方向と交差するロック解除方向へ弾性撓みし、
前記両ハウジングが正規の嵌合状態に至ると、前記ロックアームがロック位置へ弾性復帰して前記ロック部と係止することにより、前記両ハウジングが嵌合状態にロックされ、
前記両ハウジングのロックを解除する際には、前記ロックアームに形成した操作部を押し操作することにより、前記ロックアームをロック解除方向へ弾性撓みさせて前記ロック部から解離させるようになっているコネクタにおいて、
前記誘導面は、
前記第2ハウジングへの嵌合方向における前端側の領域に配された第1誘導面と、
前記第2ハウジングへの嵌合方向において前記第1誘導面よりも後方の領域に配され、前記両ハウジングの嵌合方向に対する傾斜角度が前記第1誘導面よりも大きい急勾配領域を有する第2誘導面とを備えて構成されていることを特徴とするコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−54186(P2012−54186A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197649(P2010−197649)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】