コネクタ
【課題】ロック機能の信頼性に優れたコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタAは、ホルダ30(コネクタ構成部材)に形成したロック孔32の開口領域を横切るように配され、長さ方向両端の繋ぎ部36においてロック孔32の内面に繋がった撓み可能な弾性受け部35と、ハウジング10に形成したロック突起12から弾性受け部35の長さ方向に沿ってリブ状に突出した形態であり、ハウジング10とホルダ30の組付け過程で弾性受け部35を押して湾曲変形させる係止部15と、係止部15の突出縁部16における長さ方向両端部に形成され、弾性撓みしていない弾性受け部35の長さ方向に対して斜めをなし、且つ繋ぎ部36と対向するように配される逃がし縁部18とを備える。
【解決手段】コネクタAは、ホルダ30(コネクタ構成部材)に形成したロック孔32の開口領域を横切るように配され、長さ方向両端の繋ぎ部36においてロック孔32の内面に繋がった撓み可能な弾性受け部35と、ハウジング10に形成したロック突起12から弾性受け部35の長さ方向に沿ってリブ状に突出した形態であり、ハウジング10とホルダ30の組付け過程で弾性受け部35を押して湾曲変形させる係止部15と、係止部15の突出縁部16における長さ方向両端部に形成され、弾性撓みしていない弾性受け部35の長さ方向に対して斜めをなし、且つ繋ぎ部36と対向するように配される逃がし縁部18とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の端子収容室を有するハウジングの後面と、ハウジングの後方に設けたホルダの前面との間で、一括ゴム栓を挟むように保持したコネクタが開示されている。ホルダをハウジングに組み付けた状態に保持する手段として、ハウジングの後面から後方へ突出して一括ゴム栓に貫通されたロック突起を、ホルダの前面に開口するロック孔に係止させる構造が採用されている。このように、一括ゴム栓に貫通させたロック突起をロック孔に係止させるロック構造を用いれば、一括ゴム栓の外周面を露出させた状態での組付けが可能となる。
【0003】
上記特許文献1に記載されたコネクタでは、ロック突起とロック孔が係止する過程で、ロック突起がその突出方向と交差する方向へ弾性撓みするようになっているのであるが、ロック突起を、弾性撓みさせずにロック孔に係止させるロック手段としては、図9〜12に記載する構造が考えられる。図9に示すように、ハウジング100には、その後面から突出して一括ゴム栓101を貫通するロック突起102が形成されており、ロック突起102の突出端部には、ロック突起102の突出方向と交差する方向へ突出する係止突起103が形成されている。一方、ホルダ104には、図11,12に示すように、ロック孔105内をロック突起102の突出方向と交差する方向に横切って、ロック孔105の内面に両端を支持された弾性受け部106が形成されている。
【0004】
ホルダ104をハウジング100に組み付ける過程でロック突起102がロック孔105に挿入されると、図12に示すように、弾性受け部106が係止突起103との干渉によりロック突起103から離間する方向へ弾性撓みする。そして、ホルダ104が正規の組付け状態になると、図11に示すように、弾性受け部106が弾性復帰して係止突起103に係止し、この係止作用によって、ホルダ104とハウジング100とが組付け状態にロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2002−110289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のロック構造では、弾性受け部106の両端部が、ロック孔105の内面に繋がる繋ぎ部107となっているのであるが、弾性受け部106が弾性撓みしたときには、図12に示すように、繋ぎ部107の変形量が大きい。そのため、この繋ぎ部107において、応力が集中し、不正な変形や亀裂等の破損が生じることが懸念される。繋ぎ部107に不正な変形や破損等が生じると、弾性受け部106とロック突起102との係止によるロック機能の信頼性が低下することになる。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ロック機能の信頼性に優れたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、端子収容室を有するハウジングと、前記ハウジングに組み付けられるコネクタ構成部材と、前記ハウジングと前記コネクタ構成部材のうち一方から突出するように形成されたロック突起と、前記ハウジングと前記コネクタ構成部材のうち他方に形成され、前記ロック突起の進入を可能とするロック孔と、前記ロック孔の開口領域を横切るように配され、長さ方向両端の繋ぎ部において前記ロック孔の内面に繋がった弾性撓み可能な弾性受け部と、前記ロック突起から前記弾性受け部の長さ方向に沿ってリブ状に突出した形態であり、前記ハウジングと前記コネクタ構成部材の組付け過程では、前記弾性受け部を押圧して弾性的に湾曲変形させる係止部と、前記係止部の突出縁部における長さ方向両端部に形成され、弾性撓みしていないときの前記弾性受け部の長さ方向に対して斜めをなし、且つ前記繋ぎ部と対向するように配される逃がし縁部とを備えているところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記弾性受け部の幅寸法を前記繋ぎ部において局部的に小さくする切欠部を備えているところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記切欠部は、前記弾性受け部の長さ方向に沿って延びて前記弾性受け部が弾性撓みするときに湾曲変形する2つの撓み縁部のうち、凹むように湾曲変形する側の前記撓み縁部を切り欠いた形態とされているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
係止部の突出縁部に逃がし縁部が形成されていない場合、弾性受け部の湾曲変形が最大になるときは、突出端縁の両端が弾性受け部に当接する。これに対し、突出縁部の両端部に逃がし縁部を形成すると、弾性受け部の湾曲変形が最大になるときに、逃がし縁部が弾性受け部に当接する。この逃がし縁部における弾性受け部への当接位置は、突出縁部の両端よりも中央側に寄った位置となるので、逃がし縁部における弾性受け部への左右2箇所の当接位置の間隔は、逃がし縁部が形成されていない場合の突出縁部における2箇所の当接位置(即ち、突出端縁の両端)の間隔(つまり、係止部の最大幅)よりも狭まっている。突出縁部における弾性受け部への2箇所の当接位置の間隔が狭まるほど、弾性受け部の弾性撓み量が小さくなり、弾性受け部の両端の繋ぎ部に生じる応力が低減されるので、繋ぎ部における不正な変形や破損等が防止される。したがって、弾性受け部とロック突起との係止によるロック機能の信頼性に優れている。
【0011】
<請求項2の発明>
繋ぎ部では、弾性受け部の幅寸法が局部的に小さくなっているので、弾性受け部が弾性撓みしたときに生じる応力が低減される。これにより、繋ぎ部における不正な変形や破損等が確実に防止され、ロック機能の信頼性が向上する。
【0012】
<請求項3の発明>
繋ぎ部において応力の増大に起因して生じる不正な変形や破損の形態としては、湾曲変形する2つの撓み縁部のうち凹むように湾曲変形する側の撓み縁部が、引張り荷重を受けることによって亀裂を生じることが多い。この点に鑑み、本発明では、凹むように湾曲変形する側の撓み縁部を凹ませた形態としたので、繋ぎ部における不正な変形や破損を、より効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1のコネクタの背面図
【図2】弾性受け部が弾性撓みしている状態をあらわす背面図
【図3】ホルダの背面図
【図4】コネクタの断面図
【図5】図1の部分拡大背面図
【図6】図2の部分拡大背面図
【図7】ロック孔と弾性受け部の形状をあらわす拡大背面図
【図8】ロック突起の形状をあらわす拡大背面図
【図9】従来例のコネクタの断面図
【図10】従来例のコネクタの背面図
【図11】図10の部分拡大背面図
【図12】従来例のコネクタにおいて、弾性受け部が弾性撓みしている状態をあらわす部分拡大背面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1〜図8を参照して説明する。本実施形態のコネクタAは、図4に示すように、複数の端子収容室11を有する合成樹脂製のハウジング10と、ハウジング10の後面に当接するように設けられた一括ゴム栓20と、一括ゴム栓20の後方に配されて、ハウジング10の後面との間で一括ゴム栓20を前後に挟み付けて保持する合成樹脂製のホルダ30(本発明の構成要件であるコネクタA構成部材)と、周知形態の端子金具(図示省略)とを備えて構成されている。
【0015】
ハウジング10には、その後面から後方へ突出する上下対称な一対のロック突起12が形成されている。図1,2に示すように、一括ゴム栓20には、各端子収容室11と対応するように形成された貫通形態の複数のシール孔21と、図4に示すように、ロック突起12を貫通させるための上下対称な一対の貫通孔22とが形成されている。図1〜3に示すように、ホルダ30には、各端子収容室11及びシール孔21と対応するように形成された貫通形態の複数の挿通孔31と、ロック突起12を係止させるための貫通形態の上下対称な一対のロック孔32とが形成されている。
【0016】
図4に示すように、ハウジング10と一括ゴム栓20とホルダ30を組み付けた状態では、ロック突起12がロック孔32に係止することにより、ホルダ30がハウジング10に対して組付け状態にロックされるとともに、一括ゴム栓20が組付け状態に保持される。本実施形態のコネクタAでは、一括ゴム栓20に貫通させたロック突起12をロック孔32に係止させるロック構造を採用しているので、一括ゴム栓20の外周面が、本実施形態のコネクタAの嵌合対象である相手側コネクタ(図示省略)の嵌合筒部の内周に密着するようになっている。
【0017】
次に、ロック突起12の詳細形態を説明する。尚、一対のロック突起12は上下対称な形態であるため、以下、下側に配置されたロック突起12について説明するが、上側に配置されるロック突起12については説明を省略する。
【0018】
図4に示すように、ロック突起12は、一括ゴム栓20の貫通孔22に液密状に貫通される貫通部13と、貫通部13から更に後方へ延出してロック孔32内に進入するロック部14とを備えて構成されている。図5,6,8に示すように、ロック部14の背面形状(ハウジング10から突出する方向と平行に視た形状)は、幅寸法(水平方向の寸法)が上下寸法(高さ寸法)よりも大きい横長の略方形をなしている。ロック突起12の突出端部(後端部)には、水平方向に長いリブ状に突出した形態の係止部15が形成されている。
【0019】
係止部15は、ロック部14の下面から全幅に亘って下方(ハウジング10に対するホルダ30の組付け方向と平行な方向)へ突出しており、係止部15の後面は、ロック孔32に対するロック突起12の進入方向に対して傾斜している。係止部15の前面は、ロック孔32に対するロック突起12の進入方向と略直角をなしている。係止部15の突出縁部16(下端縁)のうち、左右両端部を除いた広い範囲は、水平をなして略一直線状に延びる直線状縁部17となっている。ロック部14の下面と直線状縁部17との高低差(即ち、係止部15のうち直線状縁部17の形成されている領域の、ロック部14の下面からの突出寸法)は、直線状縁部17の全幅に亘って一定の寸法である。
【0020】
次に、ロック孔32の詳細形態を説明する。尚、一対のロック孔32は上下対称な形態であるため、以下、下側に配置されたロック孔32について説明するが、上側に配置されるロック孔32については説明を省略する。
【0021】
図5〜7に示すように、ロック孔32(の開口領域)は、ロック部14をガタ付きなく嵌入させる横長の方形をなす位置決め領域33と、位置決め領域33の下方に連通するように配置された横長の方形をなす係止領域34とを、上下に連通させた形態となっている。係止領域34の幅寸法は、位置決め領域33の幅寸法よりも大きく、係止領域34の左右両端部は、位置決め領域33よりも幅方向外側へ突出している。また、位置決め領域33の開口は、ホルダ30の前面と後面において同じ形状で同じ寸法となっている。
【0022】
ホルダ30の前面における係止領域34の開口幅は、ホルダ30の後面における係止領域34の開口幅と同じ寸法である。しかし、係止領域34の上下方向の開口範囲に関しては、ホルダ30の前面(ハウジング10に近い側の面)の方がホルダ30の後面よりも下方へ拡げられている。つまり、図4に示すように、ロック孔32の下側の内面(下面)は、前側が後側に比べて段差状に低くなっている。
【0023】
図5〜7に示すように、ロック孔32には、係止領域34を左右方向(ロック孔32に対するロック突起12の進入方向、及びロック突起12からの係止部15の突出方向との両方向に対して交差する方向)に横切るように配された細長い弾性受け部35が形成されている。弾性受け部35は、その長さ方向(幅方向)における両端部の繋ぎ部36において、係止領域34の左右両内側面に繋がっている。弾性受け部35のうち両端の繋ぎ部36を除いた部分は、変形部37となっている。つまり、繋ぎ部36と変形部37は弾性受け部35を構成している。また、変形部37の上面は、ロック孔32に対するロック突起12の進入方向と略直角をなしている。
【0024】
弾性受け部35は、変形部37が下方(ロック孔32に対するロック突起12の進入方向と交差する方向)へ湾曲するように弾性撓みし得るようになっている。弾性受け部35は、係止領域34内における前端側に配置されている。そして、図4〜7に示すように、係止領域34のうち弾性受け部35よりも下方の空間は、弾性受け部35の下方へ膨らむような湾曲変形を許容するための撓み空間38となっている。
【0025】
図5〜7に示すように、弾性受け部35の上面(位置決め領域33に臨むとともに、ロック部14と対向する面)は、弾性受け部35の全長に亘り長さ方向に沿って延びた形態であって、弾性受け部35が弾性撓みするときに凹むように湾曲変形する凹変形側撓み縁部39となっている。一方、弾性受け部35の下面は、弾性受け部35の全長に亘り長さ方向に沿って延びた形態であって、弾性受け部35が弾性撓みするときに凸状に湾曲変形する凸変形側撓み縁部40となっている。弾性受け部35が弾性撓みしていない状態において、凹変形側撓み縁部39と凸変形側撓み縁部40は、いずれも、水平で平坦な面となっている。
【0026】
一括ゴム栓20が取り付けられているハウジング10に対し、その後方からホルダ30を組み付けると、その組付け過程では、ロック部14がロック孔32内に進入、係止部15が弾性受け部35に当接する。それ以降は、ホルダ30の組付けが進むに伴い、係止部15が弾性受け部35を押圧するので、弾性受け部35が湾曲変形させられていく。このとき、下側のロック孔32では、弾性受け部35がロック部14から遠ざかる方向(下方)へ膨らむように湾曲変形していき、上側のロック孔32では弾性受け部35が上方へ膨らむように湾曲変形していく。ホルダ30の組付けが進み、図6に示すように、係止部15の突出縁部16が弾性受け部35に当接する状態になると、弾性受け部35の弾性撓み量が最大(つまり、撓み縁部の曲率半径が最小)となる。
【0027】
そして、ホルダ30が正規の組付位置に到達すると、図4に示すように、係止部15が弾性受け部35を通過するので、弾性受け部35がその弾性復元力により弾性復帰する。これにより、図4,5に示すように、弾性受け部35が、係止部15に対して前方から係止(当接、又は接近して対向)するので、この係止作用により、ホルダ30が組付け状態にロックされる。
【0028】
本実施形態のロック構造では、弾性受け部35の両端部が、ロック孔32の内面に繋がる繋ぎ部36となっているのであるが、弾性受け部35が弾性撓みしたときには、図6に示すように、変形部37も湾曲変形するが、繋ぎ部36の変形量と応力は変形部37よりも大きい。この応力集中のために、繋ぎ部36において、不正な変形や亀裂等の破損が生じることが懸念される。繋ぎ部36に不正な変形や破損等が生じると、弾性受け部35とロック突起12との係止によるロック機能の信頼性が低下するため、本実施形態では、その対策が、ロック突起12とロック孔32(弾性受け部35)に設けられている。以下、この詳細を説明する。
【0029】
ホルダ30の組付け過程で弾性受け部35の弾性撓み量が最大になるとき、係止部15は、その突出縁部16の左右両端部において弾性受け部35を押圧する。また、弾性受け部35の両端の繋ぎ部36は、係止部15の左右両端よりも幅方向外側に位置する。これらの点に着目し、係止部15の突出縁部16における左右両端部には、後方(ロック孔32に対するロック突起12の進入方向と平行な方向)から視たときに、弾性受け部35が弾性撓みしていないときの直線状縁部17(弾性受け部35の長さ方向)に対して斜めをなすとともに、繋ぎ部36と対向するように配された逃がし縁部18が、左右対称に形成されている。この逃がし縁部18は、略弧状をなしており、ロック突起12の凹変形側撓み縁部39のうち繋ぎ部36よりも中央寄りの位置に配置されている。そして、逃がし縁部18と直線状縁部17は、係止部15の突出縁部16を構成している。
【0030】
係止部15の突出縁部16に逃がし縁部18が形成されていない場合、弾性受け部35の湾曲変形が最大になるときは、突出端縁の両端が弾性受け部35に当接する。これに対し、突出縁部16の両端部に逃がし縁部18を形成すると、弾性受け部35の湾曲変形が最大になるときに、逃がし縁部18が弾性受け部35に当接する。この逃がし縁部18における弾性受け部35への当接位置は、突出縁部16の両端よりも中央側に寄った位置となるので、逃がし縁部18における弾性受け部35への左右2箇所の当接位置の間隔は、逃がし縁部18が形成されていない場合の突出縁部16における2箇所の当接位置(即ち、突出端縁の両端)の間隔(つまり、係止部15の最大幅)よりも狭まっている。突出縁部16における弾性受け部35への2箇所の当接位置の間隔が狭まるほど、弾性受け部35の弾性撓み量が小さくなり、弾性受け部35の両端の繋ぎ部36に生じる応力が低減されるので、繋ぎ部36における不正な変形や破損等が防止される。したがって、弾性受け部35とロック突起12との係止によるロック機能の信頼性に優れている。
【0031】
さらに、繋ぎ部36における応力集中を回避する手段として、弾性受け部35には、弾性受け部35の幅寸法(弾性受け部35が係止部15の押圧によって弾性撓みさせられるときの変位方向と略平行な寸法)を、繋ぎ部36において局部的に小さくする形態の切欠部41が形成されている。また、繋ぎ部36において応力の増大に起因して生じる不正な変形や破損の形態としては、湾曲変形する2つの撓み縁部39,40のうち凹むように湾曲変形する凹変形側撓み縁部39において、引張り荷重を受けることによる亀裂を生じることが多い。この点に鑑み、本実施形態の切欠部41は、弾性受け部35の長さ方向に沿って延びて弾性受け部35が弾性撓みするときに湾曲変形する2つの撓み縁部39,40のうち、凹むように湾曲変形する凹変形側撓み縁部39を切り欠いた形態としている。
【0032】
このように切欠部41を形成したことにより、繋ぎ部36では、弾性受け部35の幅寸法が局部的に小さくなるので、弾性受け部35が弾性撓みしたときに生じる応力が低減される。これにより、繋ぎ部36における不正な変形や破損等が確実に防止され、ロック機能の信頼性が向上する。しかも、切欠部41は、凹むように湾曲変形して引張り荷重を受けるために亀裂を生じることが多い凹変形側撓み縁部39を凹ませた形態としたので、繋ぎ部36における不正な変形や破損を、より効果的に防止することができる。
【0033】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、逃がし縁部を弧状としたが、逃がし縁部は直線状であってもよい。
(2)上記実施形態では、ロック突起をハウジングに形成し、ロック孔をホルダに形成したが、ロック突起をホルダに形成し、ロック孔をハウジングに形成してもよい。
(3)上記実施形態では、弾性受け部のための撓み空間がホルダの前面側のみに開放される形態としたが、撓み空間は、ホルダの前面と後面の両方に開放される形態としてもよく、ホルダの後面のみに開放される形態としてもよい。
(4)上記実施形態では、繋ぎ部の幅寸法を小さくするための切欠部を、弾性受け部の長さ方向に沿った2つの撓み縁部のうち凹むように湾曲変形する凹変形側撓み縁部のみに形成したが、切欠部は、凸状に湾曲変形する凸変形側撓み縁部のみに形成してもよく、凹変形側撓み縁部と凸変形側撓み縁部の両方に形成してもよい。
(5)上記実施形態では、切欠部は、撓み縁部を凹ませた形態であるが、切欠部は、撓み縁部を凹ませずに繋ぎ部を貫通する孔状であってもよい。
(6)上記実施形態では、繋ぎ部の幅寸法を小さくするための切欠部を形成したが、繋ぎ部に切欠部を形成せず、弾性受け部の幅寸法を全長に亘って一定としてもよい。
(7)上記実施形態では、一対のロック突起とロック孔を上下対称な形態としたが、一対のロック突起とロック孔は、非対称であってもよい。
(8)上記実施形態では、ロック突起とロック孔を一対設けたが、ロック突起とロック孔の数は、1つずつだけでもよく、3つ以上でもよい。
(9)上記実施形態では、ロック孔をホルダの後面に開口する貫通形態としたが、ロック孔は、ホルダの後面に開口しない袋小路状であってもよい。
(10)上記実施形態では、ハウジングとホルダを組付け状態にロックする場合について説明したが、本発明は、ハウジングとホルダとの組み合わせに限らず、ハウジングとホルダ以外の部材(例えば、端子金具を抜止めする機能と端子金具の挿入状態を検知する機能とを備えたリテーナや、ハウジング内の端子収容室の前端部を構成するフロント部材など)とを組み付ける場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
A…コネクタ
10…ハウジング
11…端子収容室
12…ロック突起
15…係止部
16…係止部の突出縁部
18…逃がし縁部
30…ホルダ(コネクタ構成部材)
32…ロック孔
35…弾性受け部
36…繋ぎ部
39…凹変形側撓み縁部(凹むように湾曲変形する側の撓み縁部)
40…凸変形側撓み縁部(撓み縁部)
41…切欠部
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の端子収容室を有するハウジングの後面と、ハウジングの後方に設けたホルダの前面との間で、一括ゴム栓を挟むように保持したコネクタが開示されている。ホルダをハウジングに組み付けた状態に保持する手段として、ハウジングの後面から後方へ突出して一括ゴム栓に貫通されたロック突起を、ホルダの前面に開口するロック孔に係止させる構造が採用されている。このように、一括ゴム栓に貫通させたロック突起をロック孔に係止させるロック構造を用いれば、一括ゴム栓の外周面を露出させた状態での組付けが可能となる。
【0003】
上記特許文献1に記載されたコネクタでは、ロック突起とロック孔が係止する過程で、ロック突起がその突出方向と交差する方向へ弾性撓みするようになっているのであるが、ロック突起を、弾性撓みさせずにロック孔に係止させるロック手段としては、図9〜12に記載する構造が考えられる。図9に示すように、ハウジング100には、その後面から突出して一括ゴム栓101を貫通するロック突起102が形成されており、ロック突起102の突出端部には、ロック突起102の突出方向と交差する方向へ突出する係止突起103が形成されている。一方、ホルダ104には、図11,12に示すように、ロック孔105内をロック突起102の突出方向と交差する方向に横切って、ロック孔105の内面に両端を支持された弾性受け部106が形成されている。
【0004】
ホルダ104をハウジング100に組み付ける過程でロック突起102がロック孔105に挿入されると、図12に示すように、弾性受け部106が係止突起103との干渉によりロック突起103から離間する方向へ弾性撓みする。そして、ホルダ104が正規の組付け状態になると、図11に示すように、弾性受け部106が弾性復帰して係止突起103に係止し、この係止作用によって、ホルダ104とハウジング100とが組付け状態にロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2002−110289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のロック構造では、弾性受け部106の両端部が、ロック孔105の内面に繋がる繋ぎ部107となっているのであるが、弾性受け部106が弾性撓みしたときには、図12に示すように、繋ぎ部107の変形量が大きい。そのため、この繋ぎ部107において、応力が集中し、不正な変形や亀裂等の破損が生じることが懸念される。繋ぎ部107に不正な変形や破損等が生じると、弾性受け部106とロック突起102との係止によるロック機能の信頼性が低下することになる。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ロック機能の信頼性に優れたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、端子収容室を有するハウジングと、前記ハウジングに組み付けられるコネクタ構成部材と、前記ハウジングと前記コネクタ構成部材のうち一方から突出するように形成されたロック突起と、前記ハウジングと前記コネクタ構成部材のうち他方に形成され、前記ロック突起の進入を可能とするロック孔と、前記ロック孔の開口領域を横切るように配され、長さ方向両端の繋ぎ部において前記ロック孔の内面に繋がった弾性撓み可能な弾性受け部と、前記ロック突起から前記弾性受け部の長さ方向に沿ってリブ状に突出した形態であり、前記ハウジングと前記コネクタ構成部材の組付け過程では、前記弾性受け部を押圧して弾性的に湾曲変形させる係止部と、前記係止部の突出縁部における長さ方向両端部に形成され、弾性撓みしていないときの前記弾性受け部の長さ方向に対して斜めをなし、且つ前記繋ぎ部と対向するように配される逃がし縁部とを備えているところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記弾性受け部の幅寸法を前記繋ぎ部において局部的に小さくする切欠部を備えているところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記切欠部は、前記弾性受け部の長さ方向に沿って延びて前記弾性受け部が弾性撓みするときに湾曲変形する2つの撓み縁部のうち、凹むように湾曲変形する側の前記撓み縁部を切り欠いた形態とされているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
係止部の突出縁部に逃がし縁部が形成されていない場合、弾性受け部の湾曲変形が最大になるときは、突出端縁の両端が弾性受け部に当接する。これに対し、突出縁部の両端部に逃がし縁部を形成すると、弾性受け部の湾曲変形が最大になるときに、逃がし縁部が弾性受け部に当接する。この逃がし縁部における弾性受け部への当接位置は、突出縁部の両端よりも中央側に寄った位置となるので、逃がし縁部における弾性受け部への左右2箇所の当接位置の間隔は、逃がし縁部が形成されていない場合の突出縁部における2箇所の当接位置(即ち、突出端縁の両端)の間隔(つまり、係止部の最大幅)よりも狭まっている。突出縁部における弾性受け部への2箇所の当接位置の間隔が狭まるほど、弾性受け部の弾性撓み量が小さくなり、弾性受け部の両端の繋ぎ部に生じる応力が低減されるので、繋ぎ部における不正な変形や破損等が防止される。したがって、弾性受け部とロック突起との係止によるロック機能の信頼性に優れている。
【0011】
<請求項2の発明>
繋ぎ部では、弾性受け部の幅寸法が局部的に小さくなっているので、弾性受け部が弾性撓みしたときに生じる応力が低減される。これにより、繋ぎ部における不正な変形や破損等が確実に防止され、ロック機能の信頼性が向上する。
【0012】
<請求項3の発明>
繋ぎ部において応力の増大に起因して生じる不正な変形や破損の形態としては、湾曲変形する2つの撓み縁部のうち凹むように湾曲変形する側の撓み縁部が、引張り荷重を受けることによって亀裂を生じることが多い。この点に鑑み、本発明では、凹むように湾曲変形する側の撓み縁部を凹ませた形態としたので、繋ぎ部における不正な変形や破損を、より効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1のコネクタの背面図
【図2】弾性受け部が弾性撓みしている状態をあらわす背面図
【図3】ホルダの背面図
【図4】コネクタの断面図
【図5】図1の部分拡大背面図
【図6】図2の部分拡大背面図
【図7】ロック孔と弾性受け部の形状をあらわす拡大背面図
【図8】ロック突起の形状をあらわす拡大背面図
【図9】従来例のコネクタの断面図
【図10】従来例のコネクタの背面図
【図11】図10の部分拡大背面図
【図12】従来例のコネクタにおいて、弾性受け部が弾性撓みしている状態をあらわす部分拡大背面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1〜図8を参照して説明する。本実施形態のコネクタAは、図4に示すように、複数の端子収容室11を有する合成樹脂製のハウジング10と、ハウジング10の後面に当接するように設けられた一括ゴム栓20と、一括ゴム栓20の後方に配されて、ハウジング10の後面との間で一括ゴム栓20を前後に挟み付けて保持する合成樹脂製のホルダ30(本発明の構成要件であるコネクタA構成部材)と、周知形態の端子金具(図示省略)とを備えて構成されている。
【0015】
ハウジング10には、その後面から後方へ突出する上下対称な一対のロック突起12が形成されている。図1,2に示すように、一括ゴム栓20には、各端子収容室11と対応するように形成された貫通形態の複数のシール孔21と、図4に示すように、ロック突起12を貫通させるための上下対称な一対の貫通孔22とが形成されている。図1〜3に示すように、ホルダ30には、各端子収容室11及びシール孔21と対応するように形成された貫通形態の複数の挿通孔31と、ロック突起12を係止させるための貫通形態の上下対称な一対のロック孔32とが形成されている。
【0016】
図4に示すように、ハウジング10と一括ゴム栓20とホルダ30を組み付けた状態では、ロック突起12がロック孔32に係止することにより、ホルダ30がハウジング10に対して組付け状態にロックされるとともに、一括ゴム栓20が組付け状態に保持される。本実施形態のコネクタAでは、一括ゴム栓20に貫通させたロック突起12をロック孔32に係止させるロック構造を採用しているので、一括ゴム栓20の外周面が、本実施形態のコネクタAの嵌合対象である相手側コネクタ(図示省略)の嵌合筒部の内周に密着するようになっている。
【0017】
次に、ロック突起12の詳細形態を説明する。尚、一対のロック突起12は上下対称な形態であるため、以下、下側に配置されたロック突起12について説明するが、上側に配置されるロック突起12については説明を省略する。
【0018】
図4に示すように、ロック突起12は、一括ゴム栓20の貫通孔22に液密状に貫通される貫通部13と、貫通部13から更に後方へ延出してロック孔32内に進入するロック部14とを備えて構成されている。図5,6,8に示すように、ロック部14の背面形状(ハウジング10から突出する方向と平行に視た形状)は、幅寸法(水平方向の寸法)が上下寸法(高さ寸法)よりも大きい横長の略方形をなしている。ロック突起12の突出端部(後端部)には、水平方向に長いリブ状に突出した形態の係止部15が形成されている。
【0019】
係止部15は、ロック部14の下面から全幅に亘って下方(ハウジング10に対するホルダ30の組付け方向と平行な方向)へ突出しており、係止部15の後面は、ロック孔32に対するロック突起12の進入方向に対して傾斜している。係止部15の前面は、ロック孔32に対するロック突起12の進入方向と略直角をなしている。係止部15の突出縁部16(下端縁)のうち、左右両端部を除いた広い範囲は、水平をなして略一直線状に延びる直線状縁部17となっている。ロック部14の下面と直線状縁部17との高低差(即ち、係止部15のうち直線状縁部17の形成されている領域の、ロック部14の下面からの突出寸法)は、直線状縁部17の全幅に亘って一定の寸法である。
【0020】
次に、ロック孔32の詳細形態を説明する。尚、一対のロック孔32は上下対称な形態であるため、以下、下側に配置されたロック孔32について説明するが、上側に配置されるロック孔32については説明を省略する。
【0021】
図5〜7に示すように、ロック孔32(の開口領域)は、ロック部14をガタ付きなく嵌入させる横長の方形をなす位置決め領域33と、位置決め領域33の下方に連通するように配置された横長の方形をなす係止領域34とを、上下に連通させた形態となっている。係止領域34の幅寸法は、位置決め領域33の幅寸法よりも大きく、係止領域34の左右両端部は、位置決め領域33よりも幅方向外側へ突出している。また、位置決め領域33の開口は、ホルダ30の前面と後面において同じ形状で同じ寸法となっている。
【0022】
ホルダ30の前面における係止領域34の開口幅は、ホルダ30の後面における係止領域34の開口幅と同じ寸法である。しかし、係止領域34の上下方向の開口範囲に関しては、ホルダ30の前面(ハウジング10に近い側の面)の方がホルダ30の後面よりも下方へ拡げられている。つまり、図4に示すように、ロック孔32の下側の内面(下面)は、前側が後側に比べて段差状に低くなっている。
【0023】
図5〜7に示すように、ロック孔32には、係止領域34を左右方向(ロック孔32に対するロック突起12の進入方向、及びロック突起12からの係止部15の突出方向との両方向に対して交差する方向)に横切るように配された細長い弾性受け部35が形成されている。弾性受け部35は、その長さ方向(幅方向)における両端部の繋ぎ部36において、係止領域34の左右両内側面に繋がっている。弾性受け部35のうち両端の繋ぎ部36を除いた部分は、変形部37となっている。つまり、繋ぎ部36と変形部37は弾性受け部35を構成している。また、変形部37の上面は、ロック孔32に対するロック突起12の進入方向と略直角をなしている。
【0024】
弾性受け部35は、変形部37が下方(ロック孔32に対するロック突起12の進入方向と交差する方向)へ湾曲するように弾性撓みし得るようになっている。弾性受け部35は、係止領域34内における前端側に配置されている。そして、図4〜7に示すように、係止領域34のうち弾性受け部35よりも下方の空間は、弾性受け部35の下方へ膨らむような湾曲変形を許容するための撓み空間38となっている。
【0025】
図5〜7に示すように、弾性受け部35の上面(位置決め領域33に臨むとともに、ロック部14と対向する面)は、弾性受け部35の全長に亘り長さ方向に沿って延びた形態であって、弾性受け部35が弾性撓みするときに凹むように湾曲変形する凹変形側撓み縁部39となっている。一方、弾性受け部35の下面は、弾性受け部35の全長に亘り長さ方向に沿って延びた形態であって、弾性受け部35が弾性撓みするときに凸状に湾曲変形する凸変形側撓み縁部40となっている。弾性受け部35が弾性撓みしていない状態において、凹変形側撓み縁部39と凸変形側撓み縁部40は、いずれも、水平で平坦な面となっている。
【0026】
一括ゴム栓20が取り付けられているハウジング10に対し、その後方からホルダ30を組み付けると、その組付け過程では、ロック部14がロック孔32内に進入、係止部15が弾性受け部35に当接する。それ以降は、ホルダ30の組付けが進むに伴い、係止部15が弾性受け部35を押圧するので、弾性受け部35が湾曲変形させられていく。このとき、下側のロック孔32では、弾性受け部35がロック部14から遠ざかる方向(下方)へ膨らむように湾曲変形していき、上側のロック孔32では弾性受け部35が上方へ膨らむように湾曲変形していく。ホルダ30の組付けが進み、図6に示すように、係止部15の突出縁部16が弾性受け部35に当接する状態になると、弾性受け部35の弾性撓み量が最大(つまり、撓み縁部の曲率半径が最小)となる。
【0027】
そして、ホルダ30が正規の組付位置に到達すると、図4に示すように、係止部15が弾性受け部35を通過するので、弾性受け部35がその弾性復元力により弾性復帰する。これにより、図4,5に示すように、弾性受け部35が、係止部15に対して前方から係止(当接、又は接近して対向)するので、この係止作用により、ホルダ30が組付け状態にロックされる。
【0028】
本実施形態のロック構造では、弾性受け部35の両端部が、ロック孔32の内面に繋がる繋ぎ部36となっているのであるが、弾性受け部35が弾性撓みしたときには、図6に示すように、変形部37も湾曲変形するが、繋ぎ部36の変形量と応力は変形部37よりも大きい。この応力集中のために、繋ぎ部36において、不正な変形や亀裂等の破損が生じることが懸念される。繋ぎ部36に不正な変形や破損等が生じると、弾性受け部35とロック突起12との係止によるロック機能の信頼性が低下するため、本実施形態では、その対策が、ロック突起12とロック孔32(弾性受け部35)に設けられている。以下、この詳細を説明する。
【0029】
ホルダ30の組付け過程で弾性受け部35の弾性撓み量が最大になるとき、係止部15は、その突出縁部16の左右両端部において弾性受け部35を押圧する。また、弾性受け部35の両端の繋ぎ部36は、係止部15の左右両端よりも幅方向外側に位置する。これらの点に着目し、係止部15の突出縁部16における左右両端部には、後方(ロック孔32に対するロック突起12の進入方向と平行な方向)から視たときに、弾性受け部35が弾性撓みしていないときの直線状縁部17(弾性受け部35の長さ方向)に対して斜めをなすとともに、繋ぎ部36と対向するように配された逃がし縁部18が、左右対称に形成されている。この逃がし縁部18は、略弧状をなしており、ロック突起12の凹変形側撓み縁部39のうち繋ぎ部36よりも中央寄りの位置に配置されている。そして、逃がし縁部18と直線状縁部17は、係止部15の突出縁部16を構成している。
【0030】
係止部15の突出縁部16に逃がし縁部18が形成されていない場合、弾性受け部35の湾曲変形が最大になるときは、突出端縁の両端が弾性受け部35に当接する。これに対し、突出縁部16の両端部に逃がし縁部18を形成すると、弾性受け部35の湾曲変形が最大になるときに、逃がし縁部18が弾性受け部35に当接する。この逃がし縁部18における弾性受け部35への当接位置は、突出縁部16の両端よりも中央側に寄った位置となるので、逃がし縁部18における弾性受け部35への左右2箇所の当接位置の間隔は、逃がし縁部18が形成されていない場合の突出縁部16における2箇所の当接位置(即ち、突出端縁の両端)の間隔(つまり、係止部15の最大幅)よりも狭まっている。突出縁部16における弾性受け部35への2箇所の当接位置の間隔が狭まるほど、弾性受け部35の弾性撓み量が小さくなり、弾性受け部35の両端の繋ぎ部36に生じる応力が低減されるので、繋ぎ部36における不正な変形や破損等が防止される。したがって、弾性受け部35とロック突起12との係止によるロック機能の信頼性に優れている。
【0031】
さらに、繋ぎ部36における応力集中を回避する手段として、弾性受け部35には、弾性受け部35の幅寸法(弾性受け部35が係止部15の押圧によって弾性撓みさせられるときの変位方向と略平行な寸法)を、繋ぎ部36において局部的に小さくする形態の切欠部41が形成されている。また、繋ぎ部36において応力の増大に起因して生じる不正な変形や破損の形態としては、湾曲変形する2つの撓み縁部39,40のうち凹むように湾曲変形する凹変形側撓み縁部39において、引張り荷重を受けることによる亀裂を生じることが多い。この点に鑑み、本実施形態の切欠部41は、弾性受け部35の長さ方向に沿って延びて弾性受け部35が弾性撓みするときに湾曲変形する2つの撓み縁部39,40のうち、凹むように湾曲変形する凹変形側撓み縁部39を切り欠いた形態としている。
【0032】
このように切欠部41を形成したことにより、繋ぎ部36では、弾性受け部35の幅寸法が局部的に小さくなるので、弾性受け部35が弾性撓みしたときに生じる応力が低減される。これにより、繋ぎ部36における不正な変形や破損等が確実に防止され、ロック機能の信頼性が向上する。しかも、切欠部41は、凹むように湾曲変形して引張り荷重を受けるために亀裂を生じることが多い凹変形側撓み縁部39を凹ませた形態としたので、繋ぎ部36における不正な変形や破損を、より効果的に防止することができる。
【0033】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、逃がし縁部を弧状としたが、逃がし縁部は直線状であってもよい。
(2)上記実施形態では、ロック突起をハウジングに形成し、ロック孔をホルダに形成したが、ロック突起をホルダに形成し、ロック孔をハウジングに形成してもよい。
(3)上記実施形態では、弾性受け部のための撓み空間がホルダの前面側のみに開放される形態としたが、撓み空間は、ホルダの前面と後面の両方に開放される形態としてもよく、ホルダの後面のみに開放される形態としてもよい。
(4)上記実施形態では、繋ぎ部の幅寸法を小さくするための切欠部を、弾性受け部の長さ方向に沿った2つの撓み縁部のうち凹むように湾曲変形する凹変形側撓み縁部のみに形成したが、切欠部は、凸状に湾曲変形する凸変形側撓み縁部のみに形成してもよく、凹変形側撓み縁部と凸変形側撓み縁部の両方に形成してもよい。
(5)上記実施形態では、切欠部は、撓み縁部を凹ませた形態であるが、切欠部は、撓み縁部を凹ませずに繋ぎ部を貫通する孔状であってもよい。
(6)上記実施形態では、繋ぎ部の幅寸法を小さくするための切欠部を形成したが、繋ぎ部に切欠部を形成せず、弾性受け部の幅寸法を全長に亘って一定としてもよい。
(7)上記実施形態では、一対のロック突起とロック孔を上下対称な形態としたが、一対のロック突起とロック孔は、非対称であってもよい。
(8)上記実施形態では、ロック突起とロック孔を一対設けたが、ロック突起とロック孔の数は、1つずつだけでもよく、3つ以上でもよい。
(9)上記実施形態では、ロック孔をホルダの後面に開口する貫通形態としたが、ロック孔は、ホルダの後面に開口しない袋小路状であってもよい。
(10)上記実施形態では、ハウジングとホルダを組付け状態にロックする場合について説明したが、本発明は、ハウジングとホルダとの組み合わせに限らず、ハウジングとホルダ以外の部材(例えば、端子金具を抜止めする機能と端子金具の挿入状態を検知する機能とを備えたリテーナや、ハウジング内の端子収容室の前端部を構成するフロント部材など)とを組み付ける場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
A…コネクタ
10…ハウジング
11…端子収容室
12…ロック突起
15…係止部
16…係止部の突出縁部
18…逃がし縁部
30…ホルダ(コネクタ構成部材)
32…ロック孔
35…弾性受け部
36…繋ぎ部
39…凹変形側撓み縁部(凹むように湾曲変形する側の撓み縁部)
40…凸変形側撓み縁部(撓み縁部)
41…切欠部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子収容室を有するハウジングと、
前記ハウジングに組み付けられるコネクタ構成部材と、
前記ハウジングと前記コネクタ構成部材のうち一方から突出するように形成されたロック突起と、
前記ハウジングと前記コネクタ構成部材のうち他方に形成され、前記ロック突起の進入を可能とするロック孔と、
前記ロック孔の開口領域を横切るように配され、長さ方向両端の繋ぎ部において前記ロック孔の内面に繋がった弾性撓み可能な弾性受け部と、
前記ロック突起から前記弾性受け部の長さ方向に沿ってリブ状に突出した形態であり、前記ハウジングと前記コネクタ構成部材の組付け過程では、前記弾性受け部を押圧して弾性的に湾曲変形させる係止部と、
前記係止部の突出縁部における長さ方向両端部に形成され、弾性撓みしていないときの前記弾性受け部の長さ方向に対して斜めをなし、且つ前記繋ぎ部と対向するように配される逃がし縁部とを備えていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記弾性受け部の幅寸法を前記繋ぎ部において局部的に小さくする切欠部を備えていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記切欠部は、前記弾性受け部の長さ方向に沿って延びて前記弾性受け部が弾性撓みするときに湾曲変形する2つの撓み縁部のうち、凹むように湾曲変形する側の前記撓み縁部を切り欠いた形態とされていることを特徴とする請求項2記載のコネクタ。
【請求項1】
端子収容室を有するハウジングと、
前記ハウジングに組み付けられるコネクタ構成部材と、
前記ハウジングと前記コネクタ構成部材のうち一方から突出するように形成されたロック突起と、
前記ハウジングと前記コネクタ構成部材のうち他方に形成され、前記ロック突起の進入を可能とするロック孔と、
前記ロック孔の開口領域を横切るように配され、長さ方向両端の繋ぎ部において前記ロック孔の内面に繋がった弾性撓み可能な弾性受け部と、
前記ロック突起から前記弾性受け部の長さ方向に沿ってリブ状に突出した形態であり、前記ハウジングと前記コネクタ構成部材の組付け過程では、前記弾性受け部を押圧して弾性的に湾曲変形させる係止部と、
前記係止部の突出縁部における長さ方向両端部に形成され、弾性撓みしていないときの前記弾性受け部の長さ方向に対して斜めをなし、且つ前記繋ぎ部と対向するように配される逃がし縁部とを備えていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記弾性受け部の幅寸法を前記繋ぎ部において局部的に小さくする切欠部を備えていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記切欠部は、前記弾性受け部の長さ方向に沿って延びて前記弾性受け部が弾性撓みするときに湾曲変形する2つの撓み縁部のうち、凹むように湾曲変形する側の前記撓み縁部を切り欠いた形態とされていることを特徴とする請求項2記載のコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−69592(P2013−69592A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208290(P2011−208290)
【出願日】平成23年9月24日(2011.9.24)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月24日(2011.9.24)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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