説明

コヒーレント光受信器及び受信方法

【課題】信号光とLO光との周波数差を補正するコヒーレント光受信器を提供することを目的とする。
【解決手段】コヒーレント光受信器の局所発振光出力部は、光路長が異なる複数の共振器が光学的に連結された多重共振器と、共振器のそれぞれに設けられ、共振器の共振波長を変化させる複数の共振器制御部と、多重共振器に光を供給する供給部と、を有する。周波数制御部は、共振器制御部に供給する電力を制御することにより、誤差を小さくするように局所発振光の周波数を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変光源の周波数を信号光に合わせて調節することができるコヒーレント光受信器、及び受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)通信システムにおいて、大容量伝送を実現するために、1チャネルあたりの伝送速度を増大させることがある。しかし、1チャネルあたりの伝送速度を10Gbps以上にすると波長分散や偏波モード分散の影響を受けて光信号の伝送距離が制限されてしまう。このため、チャネル当たりの伝送速度が40Gbps以上の光伝送システムでは、伝送距離を延ばす等の目的で、光の強度情報だけではなく位相情報も用いて信号を伝送するコヒーレント光受信器が使用されており、その重要性が増している。
コヒーレント受信器は、送信器から送られてくる信号光と受信器の波長可変光源が発振するLO(Local Oscillator)光との干渉を用いて強度と位相に信号を分離する。
【0003】
しかし、LO光と信号光との周波数差fが変動した場合、コヒーレント光受信器の出力搬送波の周波数が予定している周波数fから変動してしまい受信特性を劣化させてしまう。特に波長可変光源の一般的な波長変動量は±2.5GHzとされており、最大で5GHz程度の周波数変動が発生する可能性がある。電子回路の帯域が20GHz前後であることを考えると5GHzという変動量は大きい。このような、受信特性の劣化を起こさないために、周波数差fを適切な値に維持する機能が必要とされる。
【0004】
周波数差fを適切な値で維持するために、信号光とLO光の周波数制御が必要になるが、信号光の周波数を受信側から制御するのは難しい。そのため、波長可変光源が発振するLO光の周波数制御を行うことが求められる。このようなLO光用の光源は信号光と数GHzほど周波数をずらす必要があるため、信号光の波長帯域全体を走査できるフルバンド特性・光周波数を微調整できる周波数チューニング特性・位相雑音を低減する狭線幅特性が要求される。
【0005】
このような特徴を持つ波長可変光源として、平面光波回路を用いたリング共振器型の波長可変光源が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−196554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記波長可変光源において、LO光と信号光との周波数差fを考慮して、LO光の周波数を制御する技術については開示されていない。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、リング共振器型の波長可変光源を有するコヒーレント光受信器において、信号光とLO光の周波数差を求め、波長可変光源へフィードバックをかけることによって信号光とLO光との周波数差を補正するコヒーレント光受信器、及び受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の第1の観点に係るコヒーレント光受信器は、
局所発振光を出力する局所発振光出力部と、
前記局所発振光と、受信信号光とを合成し、合成信号光を出力する合成部と、
前記合成部が出力した前記合成信号光を電気信号に変換し、当該電気信号の同相成分の信号と直交成分の信号とを出力する光変換部と、
前記光変換部が出力した同相成分及び直交成分の信号を離散信号に変換し、出力するA/D変換部と、
前記A/D変換部が出力した同相成分及び直交成分の離散信号から、局所発振光と受信信号光との周波数差を求めるデジタル信号処理部と、
前記デジタル信号処理部が求めた周波数差と所定の値との誤差に基づいて前記局所発振光出力部から出力される局所発振光の周波数を制御する周波数制御部と、
を備え、
前記局所発振光出力部は、光路長が異なる複数の共振器が光学的に連結された多重共振器と、前記共振器のそれぞれに設けられ、前記共振器の共振波長を変化させる複数の共振器制御部と、当該多重共振器に光を供給する供給部と、を有し、
前記周波数制御部は、前記共振器制御部に供給する電力を制御することにより、前記誤差を小さくするように局所発振光の周波数を制御する
ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第2の観点に係る受信方法は、
局所発振光出力部と、合成部と、光変換部と、A/D変換部と、デジタル信号処理部と、周波数制御部と、を備える装置が行う受信方法であって、
前記局所発振光出力部が、局所発振光を出力する局所発振光出力工程と、
前記合成部が、前記局所発振光と、受信信号光とを合成し、合成信号光を出力する合成工程と、
前記光変換部が、前記合成部が出力した前記合成信号光を電気信号に変換し、当該電気信号の同相成分の信号と直交成分の信号とを出力する光変換工程と、
前記A/D変換部が、前記光変換部が出力した同相成分及び直交成分の信号を離散信号に変換し、出力するA/D変換工程と、
前記デジタル信号処理部が、前記A/D変換部が出力した同相成分及び直交成分の離散信号から、局所発振光と受信信号光との周波数差を求めるデジタル信号処理工程と、
前記周波数制御部が、前記デジタル信号処理部が求めた周波数差と所定の値との誤差に基づいて前記局所発振光出力部から出力される局所発振光の周波数を制御する周波数制御工程と、
を備え、
前記局所発振光出力部は、光路長が異なる複数の共振器が光学的に連結された多重共振器と、前記共振器のそれぞれに設けられ、前記共振器の共振波長を変化させる複数の共振器制御部と、当該多重共振器に光を供給する供給部と、を有し、
前記周波数制御部は、前記共振器制御部に供給する電力を制御することにより、前記誤差を小さくするように局所発振光の周波数を制御する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リング共振器型の波長可変光源を有するコヒーレント光受信器において、信号光とLO光との周波数差を補正するコヒーレント光受信器、及び受信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るコヒーレント光受信器の全体構成を示す図である。
【図2】波長可変光源部の構成を示す図である。
【図3】周波数FB制御部の構成を示す図である。
【図4】コヒーレント光受信器が行うLO光周波数制御処理の動作を説明するためのフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係るコヒーレント光受信器は、i)信号光とLO光との周波数差fを求め、ii)当該周波数差fと予め設定された設定値との誤差を求め、iii)波長可変光源への供給電力を調節して、当該誤差を小さくするようにLO光の周波数を制御する。
以下、図面を参照してコヒーレント光受信器1を詳細に説明する。
【0014】
本実施形態に係るコヒーレント光受信器1は、図1に示すように、波長可変光源部11と、合成部12と、光受信部13と、A/D(Analog/Digital)変換器14と、デジタル信号処理部15と、周波数FB制御部16と、から構成される。
なお、コヒーレント光受信器1の出力信号は、例えば、合成部12の出力する光信号、受光部13の出力するアナログ電気信号、A/D変換器14が出力するデジタル信号等である。
【0015】
波長可変光源部11は、光ファイバから伝送される信号光と合成するレーザ光(以下、「LO光」という)を出力する。波長可変光源11は、図2に示すように、半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)111と、リング共振器112〜114と、平面光波回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)基板115と、高反射膜116と、入出力側導波路117aと、導波路117b、117cと、反射側導波路117dと、TO(Thermo Optic)位相シフタ118a、118b、118cと、から構成される。リング共振器112〜114、入出力側導波路117a、導波路117b、117c、反射側導波路117d、及び、TO位相シフタ118a、118b、118cは、PLC基板115上に形成される。
【0016】
波長可変光源部11は、SOA111の出射面と高反射膜116との間で共振を起こすことにより、SOA111からLO光を放出する。波長可変光源11は、光ファイバにより伝送された信号光から所定の周波数だけずれたLO光を出力するとする。
【0017】
SOA111は、PLC基板の光入出力側導波路117aの終端に設けられ、発光部と、発光部が発振した光を増幅する増幅部とを備えている。
発光部は、半導体レーザ素子から構成され、発振光を、増幅部を介して、光入出力側導波路117aに出射する。以下の説明では、発振光の波長を1.55μmとする。
増幅部は、InGaAsPなどの化合物半導体材料で製作され、材料の配合によって、ゲイン領域と位相制御領域として機能する。
【0018】
ゲイン領域は1.55μm前後の波長の光を増幅するように設計されており、ゲイン領域に供給する電流を制御(増減)することにより、発光部から出射された発振光の強度を制御し、ひいては光入出力側導波路117aへの出射される発振光の強度を制御(増減)できる。
一方、位相制御領域は、発光部の発振光の波長とは異なる波長の光、例えば、1.33μm前後の波長の光を増幅するように設計されている。このため、位相制御領域に電流を注入しても、発光部の発振光は増幅されない。しかし、位相制御領域の屈折率が印加電圧により変化するため、印加電力を調整することにより、発振光の波長及び位相を制御できる。ゲイン領域でも波長を制御することは可能であるが同時に光出力も変わってしまう。したがって、ゲイン領域と位相制御領域を個別に制御することによって、光入出力側導波路の安定動作を実現する。
【0019】
リング共振器112〜114は、互いに異なる光路長を有するリング状導波路から構成され、導波路117b、117cを介して連結される。連結されたリング共振器112〜114は、多重光共振器119を形成する。リング共振器112〜114の自由スペクトル間隔(FSR:Free Spectral Range)は、光路長を変更することにより調節可能である。多重光共振器119のFSRは、リング共振器112〜114のうち任意に選択した、光路長が異なる2つのリング共振器の共振周波数の最小公倍数と一致する(バーニア効果)。あるいは、多重光共振器119のFSRは、各リング共振器112〜114の共振周波数の最小公倍数と一致するようにすることもできる。
【0020】
一方のリング共振器の共振周波数をf、他方のリング共振器との共振周波数の差をΔf、f>>Δfとすると、FSRは、次式より求まる。
FSR=f/Δf
例えば、一方のリング共振器の共振周波数を50.0GHz、他方のリング共振器の共振周波数を49.5GHzとし、f=50.0GHz、Δf=0.5GHzとすると、FSR≒5THzと求まる。すなわち、2つのリング共振器で表現される多重光共振器のフィルタ特性は5THzの周期を持つことになる。
【0021】
本実施形態のように多重光共振器119が3つのリング共振器を有する場合、多重光共振器119のフィルタ特性は2つのFSRの組み合わせで表現ことができる。例えば、リング共振器112〜114の共振周波数50.0GHz、49.5GHz、45GHzの場合、50.0GHzと49GHzの組み合わせるとFSR1=5THz、50.0GHzと45GHzの組み合わせるとFSR2=500GHzと求まる。したがって、多重共振器119は、5THz周期と500GHz周期のフィルタ特性を得ることができる。なお、49.5GHzと45GHzの組み合わせでFSR3=4.5THzのフィルタ特性を得ることもできるが、FSR3はFSR2に比べてFSR1=5THzに近いので、FSR1とFSR2の2つのFSRに縮退すると考えることができる。以下、波長可変光源部11では2つのFSRに縮退することとする。
【0022】
高反射膜116は、PLC基板の光反射側導波路117dの端に設けられ、反射側導波路117dを通って伝送される光を反射側導波路117dに反射する。
SOA111から、多重光共振器119に出射された光は、SOA111→多重光共振器119→高反射膜116→多重光共振器119→SOA111という経路で反射と干渉を繰り返し、反射膜を透過した光が、LO光として出力される。したがって、LO光の周波数は多重光共振器119の共振周波数と一致する。
【0023】
TO位相シフタ118aはリング共振器112に、TO位相シフタ118bはリング共振器113に、TO位相シフタ118cはリング共振器114に設けられる。各TO位相シフタ118a、118b、118cは、供給される電力に応じた熱を各リング共振器112、113、114に加える。この熱によってリング共振器112〜114のリング状導波路の屈折率が変化することにより、リング共振器112〜114の光路長が変化する。そして、各リング共振器の光路長が変化すると、多重光共振器119の共振周波数が変化するので、波長可変光源が発振するLO光の周波数が変化する。例えば、TO位相シフタ118a、118b、118cへの供給電力を増やすと、LO光の周波数は小さくなり、TO位相シフタ118a、118b、118cへの供給電力を減らすと、LO光の周波数は大きくなる。
TO位相シフタ118a、118b、118cは、例えば、基板上に設けられたアルミニウム膜から構成される膜状ヒータから構成される。
【0024】
合成部12は、光ファイバによって外部から伝送された信号光と、波長可変光源部11から放出されたLO光とを合成し、合成した光の同相成分(I成分)と直交成分(Q成分)とを光受信部13に出力する。合成部12は、例えば、光カプラーから構成される。
【0025】
光受信部13は、合成部12から受信したI成分の光とQ成分の光とを、それぞれ、ベースバンド電気信号に変換し、ベースバンド電気信号のI成分とQ成分とをA/D変換部14に出力する。例えば、光受信部13は、フォトダイオードから構成される。
【0026】
A/D変換部14は、光受信部13から出力されたベースバンド電気信号のI成分及びQ成分に対してサンプリング及び量子化を行い、離散デジタルベースバンド信号を生成し、当該離散デジタルベースバンド信号をデジタル信号処理部15に出力する。
【0027】
デジタル信号処理部15は、A/D変換部14から受け取った離散デジタルベースバンド信号から信号光の周波数とLO光の周波数との差(周波数差f)を求める。一般的に周波数差fが拡大するとデジタル信号処理部15で実施されるBPF処理の通過帯域と実際の搬送波の周波数とにずれが生じるためI成分とQ成分との位相関係が変化する。そこで、デジタル信号処理部15では、I成分とQ成分との位相関係の変化に基づいて周波数差fを求める。
【0028】
周波数差fは以下のように求める。
伝送された信号が四値の位相変調成分だった場合、信号のI成分、Q成分より、信号はI+j*Q(jは虚数単位)とあらわすことができる。四値の信号成分の各コンスタレーション点間の角度が360/4で90度であるため、信号成分を4乗した場合((I+j*Q))の結果は位相誤差が無ければ0度になる。しかし実際には位相誤差があるため4乗計算の答えは0〜2πの範囲になる。この計算結果を1/4にした結果が位相誤差である。この位相誤差から逆算して周波数差fを求める。
【0029】
周波数FB制御部16は、信号光とLO光との周波数差fの変化量に基づいて、TO位相シフタ118a、118b、118cに供給する電力を調節する機能を有する。周波数FB制御部16は、制御部161と、記憶部162と、電源部163と、から構成される。
【0030】
制御部161は、例えば、CPU(Central Processing Unit)から構成され、デジタル信号処理部15が求めた周波数差fと、記憶部162に予め記憶されている信号光とLO光との周波数差(以下、「設定値fd_def」という)との差(ずれ:偏差)e(=fd_def−f)を求め、差eが所定の値(以下、「許容値efal」という)より大きくなった場合、すなわち、e≧efalの場合に、この差eを小さくするように、すなわち、fd_def=fとなるように、電源部163に、TO位相シフタ118a、118b、118cに供給する電力(供給電力)Pを増加又は減少させる指示を出力する。
【0031】
具体的には、制御部161は、TO位相シフタ118a、118b、118cに供給する電力を同じ量だけ変化させる。例えば、1ch(50GHz)当たりの電力周期が4mWのTO位相シフタを用いる場合、3つのTO位相シフタに1mWずつ電力を増やすとLO光の周波数は12.5GHzだけ減少する。これにより、複数のTO位相シフタの値を個別に設定する必要がなく、一律に設定することにより、LO光の周波数を制御することができる。
【0032】
例えば、多重光共振器119が50.0GHzと49.5GHzの2つのリング共振器を有し、FSR=5THzのフィルタ特性を有するとする。すなわち、多重光共振器119は5THz間隔の透過特性を繰り返す。典型的な波長可変光源で運用する光の周波数帯は193.1THz前後であることから、多重光共振器119が形成するフィルタは38〜39回目のFSR周期で使用されることとなる。この2つのリング共振器の共振周波数が1%ほどずれていることから2つのリング共振器周波数が一致するのは5THzのFSR周期のうち1回である。また、2つのリング共振器の共振周波数が一致する波長では、透過損失が減少する。したがって、多重光共振器119はFSR周期のうち所望の波長を選択的に透過させることができる。
【0033】
上記の手法によれば、5THzの波長帯域内から50GHz間隔で所望の波長を選択することができる。この時、5THzの最大可変周波数を実現するために必要な周波数調整レンジは50GHzである。したがって、数GHzずらすたびに50GHz離れたリング共振器の共振周波数が一致するため最大50GHz周波数チューニングするだけで5THzの周波数可変幅を得ることができる。すなわち、1つのリング共振器で実施した場合の1/100の投入パワーで実現できる。なお、周波数チューニング特性に50GHz間隔のグリッド特性が生じてしまうが、実際の光通信システムで使用する周波数が50GHz毎のため、この特性は逆に都合がよい。
【0034】
記憶部162は、設定値fd_def及び許容値を記憶する。設定値fd_def及び許容値は、予めユーザが設定することができる。
【0035】
電源部163は、制御部161からの指示に従いTO位相シフタ118a、118b、118cに指定された量の電力を供給する。
【0036】
次に、コヒーレント光受信器1が行うLO光周波数制御処理について図4のフローチャートを用いて説明する。なお、以下ステップS11〜ステップS14に示す処理は常時行われているが、コヒーレント光受信器1が行うLO光周波数制御処理の理解を容易にするため、時系列に沿って説明する。
【0037】
波長可変光源11は、LO光を発振する(ステップS11)。
【0038】
合成部12は、光ファイバより伝送された信号光とLO光とを合成する(ステップS12)。
【0039】
光受信部13は、合成された光を、ベースバンド電気信号に変換し、当該電気信号の同相成分と直交成分の信号を出力する(ステップS13)。
【0040】
A/D変換器14は、光受信部13が出力した同相成分と直交成分の電気信号をサンプリング及び量子化を行い、離散デジタルベースバンド信号を出力する(ステップS14)。
【0041】
デジタル信号処理部15は、離散デジタルベースバンド信号の位相誤差を求め、当該位相誤差から信号光とLO光との周波数差fを求める(ステップS15)。
【0042】
周波数FB制御回路16の制御部161は、デジタル信号処理部15が求めた周波数差fから、記憶部162に記憶されている設定値fd_defを減算し、減算した結果eと許容値efalとを比較する(ステップS16)。減算した結果eが許容値efalより大きい場合(ステップS16;Yes)、制御部161は、求められた周波数差f−設定値fd_defの値eに基づいて、TO位相シフタ118a、118b、118cに供給する電力Pを調節する(ステップS17)。これにより、リング共振器112〜114の光路長が変化し、ステップS11において発振されるLO光の周波数が変化する。
【0043】
一方、減算した結果が許容値以下の場合(ステップS16;No)、ステップS11にもどり、同様の周波数のLO光が出力される。
【0044】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。
【0045】
例えば、多重光共振器を構成するリング共振器の数は3つに限らず、任意の個数にすることができる。
【0046】
また、全てのリング共振器にTO位相シフタを配置する必要はなく、一部のリング共振器(例えば、3つのうちの1つ又は2つ)にのみTO位相シフタを配置してもよい。
【0047】
また、全てのTO位相シフタに供給する電力を差eに従って制御する必要はなく、複数のTO位相シフタのうちの一部(例えば、3つのうちの1つ又は2つ)のTO位相シフタに供給する電力のみを制御対象としてもよい。
【0048】
また、上記実施の形態においては、周波数差fと設定値fd_defとの差(偏差)eが許容値efalより大きい時に、TO位相シフタに供給する電力Pを調整したが、許容値efalとの比較をせず、差eに基づいて供給電力Pを変更するようにしてもよい。
【0049】
また、差eとTO位相シフタに供給する電力Pの変化量ΔPとの関係は適宜設定可能である。
例えば、全TO位相シフタ118a、118b、118cに供給する電力の変化量(調整量)ΔPを、PID制御に基づいて、
ΔP=A・e+B・∫edt+C・de/dt+D
と設定してもよい。
ここで、A、B、C、Dは、それぞれ、任意の定数である。
【0050】
また、各TO位相シフタ118a、118b、118cに供給する電力Pを、例えば、次式に基づいて、周波数差fに基づいて制御することも可能である。
P=E・fd+F・∫fdt+G・df/dt+H
ここで、E、F、G、Hは、それぞれ、任意の定数である。
その他、周波数差fを目標値に収束させることができるならば、その制御手法は任意である。
【0051】
上記実施形態においては、信号光の周波数があまり変化しない例を示したが、本発明は、例えば、信号光の搬送波の周波数が切り替わる構成或いは多周波である構成にも適用可能である。例えば、信号光の搬送波の周波数がfとfとで切り替わる場合を想定する。この場合には、LO光の周波数が、例えば、(f−f)と(f−f)とに切り替えられるように、SOA111を設計し、さらに、合成部12の出力光の周波数fと設定値fd_defとの差eに応じて、LO光の周波数を微調整できるように構成すればよい。
また、信号光が複数の周波数の搬送波を含む場合も同様である。
【0052】
また、コヒーレント光受信器の構成や、使用される材料も適宜変更することができる。
【0053】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0054】
(付記1)局所発振光を出力する局所発振光出力部と、前記局所発振光と、受信信号光とを合成し、合成信号光を出力する合成部と、前記合成部が出力した前記合成信号光を電気信号に変換し、当該電気信号の同相成分の信号と直交成分の信号とを出力する光変換部と、前記光変換部が出力した同相成分及び直交成分の信号を離散信号に変換し、出力するA/D変換部と、前記A/D変換部が出力した同相成分及び直交成分の離散信号から、局所発振光と受信信号光との周波数差を求めるデジタル信号処理部と、前記デジタル信号処理部が求めた周波数差と所定の値との誤差に基づいて前記局所発振光出力部から出力される局所発振光の周波数を制御する周波数制御部と、を備え、前記局所発振光出力部は、光路長が異なる複数の共振器が光学的に連結された多重共振器と、前記共振器のそれぞれに設けられ、前記共振器の共振波長を変化させる複数の共振器制御部と、当該多重共振器に光を供給する供給部と、を有し、前記周波数制御部は、前記共振器制御部に供給する電力を制御することにより、前記誤差を小さくするように局所発振光の周波数を制御することを特徴とするコヒーレント光受信器。
【0055】
(付記2)前記周波数制御部は、前記複数の共振器制御部に供給する電力を、同量だけ増加又は減少させることを特徴とする付記1に記載のコヒーレント光受信器。
【0056】
(付記3)局所発振光出力部と、合成部と、光変換部と、A/D変換部と、デジタル信号処理部と、周波数制御部と、を備える装置が行う受信方法であって、前記局所発振光出力部が、局所発振光を出力する局所発振光出力工程と、前記合成部が、前記局所発振光と、受信信号光とを合成し、合成信号光を出力する合成工程と、前記光変換部が、前記合成部が出力した前記合成信号光を電気信号に変換し、当該電気信号の同相成分の信号と直交成分の信号とを出力する光変換工程と、前記A/D変換部が、前記光変換部が出力した同相成分及び直交成分の信号を離散信号に変換し、出力するA/D変換工程と、前記デジタル信号処理部が、前記A/D変換部が出力した同相成分及び直交成分の離散信号から、局所発振光と受信信号光との周波数差を求めるデジタル信号処理工程と、前記周波数制御部が、前記デジタル信号処理部が求めた周波数差と所定の値との誤差に基づいて前記局所発振光出力部から出力される局所発振光の周波数を制御する周波数制御工程と、を備え、前記局所発振光出力部は、光路長が異なる複数の共振器が光学的に連結された多重共振器と、前記共振器のそれぞれに設けられ、前記共振器の共振波長を変化させる複数の共振器制御部と、当該多重共振器に光を供給する供給部と、を有し、前記周波数制御部は、前記共振器制御部に供給する電力を制御することにより、前記誤差を小さくするように局所発振光の周波数を制御することを特徴とする受信方法。
【符号の説明】
【0057】
1 コヒーレント光受信器
11 波長可変光源部
111 SOA
112、113、114 リング共振器
115 PLC基板
116 高反射膜
117a レーザ入出力側導波路
117b、117c 導波路
117d レーザ反射側導波路
118a、118b、118c TO位相シフタ
119 多重光共振器
12 合成部
13 光受信部
14 A/D変換部
15 デジタル信号処理部
16 周波数FB制御部
161 制御部
162 記憶部
163 電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所発振光を出力する局所発振光出力部と、
前記局所発振光と、受信信号光とを合成し、合成信号光を出力する合成部と、
前記合成部が出力した前記合成信号光を電気信号に変換し、当該電気信号の同相成分の信号と直交成分の信号とを出力する光変換部と、
前記光変換部が出力した同相成分及び直交成分の信号を離散信号に変換し、出力するA/D変換部と、
前記A/D変換部が出力した同相成分及び直交成分の離散信号から、局所発振光と受信信号光との周波数差を求めるデジタル信号処理部と、
前記デジタル信号処理部が求めた周波数差と所定の値との誤差に基づいて前記局所発振光出力部から出力される局所発振光の周波数を制御する周波数制御部と、
を備え、
前記局所発振光出力部は、光路長が異なる複数の共振器が光学的に連結された多重共振器と、前記共振器のそれぞれに設けられ、前記共振器の共振波長を変化させる複数の共振器制御部と、当該多重共振器に光を供給する供給部と、を有し、
前記周波数制御部は、前記共振器制御部に供給する電力を制御することにより、前記誤差を小さくするように局所発振光の周波数を制御する
ことを特徴とするコヒーレント光受信器。
【請求項2】
前記周波数制御部は、前記複数の共振器制御部に供給する電力を、同量だけ増加又は減少させる
ことを特徴とする請求項1に記載のコヒーレント光受信器。
【請求項3】
局所発振光出力部と、合成部と、光変換部と、A/D変換部と、デジタル信号処理部と、周波数制御部と、を備える装置が行う受信方法であって、
前記局所発振光出力部が、局所発振光を出力する局所発振光出力工程と、
前記合成部が、前記局所発振光と、受信信号光とを合成し、合成信号光を出力する合成工程と、
前記光変換部が、前記合成部が出力した前記合成信号光を電気信号に変換し、当該電気信号の同相成分の信号と直交成分の信号とを出力する光変換工程と、
前記A/D変換部が、前記光変換部が出力した同相成分及び直交成分の信号を離散信号に変換し、出力するA/D変換工程と、
前記デジタル信号処理部が、前記A/D変換部が出力した同相成分及び直交成分の離散信号から、局所発振光と受信信号光との周波数差を求めるデジタル信号処理工程と、
前記周波数制御部が、前記デジタル信号処理部が求めた周波数差と所定の値との誤差に基づいて前記局所発振光出力部から出力される局所発振光の周波数を制御する周波数制御工程と、
を備え、
前記局所発振光出力部は、光路長が異なる複数の共振器が光学的に連結された多重共振器と、前記共振器のそれぞれに設けられ、前記共振器の共振波長を変化させる複数の共振器制御部と、当該多重共振器に光を供給する供給部と、を有し、
前記周波数制御部は、前記共振器制御部に供給する電力を制御することにより、前記誤差を小さくするように局所発振光の周波数を制御する
ことを特徴とする受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−227206(P2011−227206A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95355(P2010−95355)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】