説明

コモンモードノイズフィルタ

【課題】本発明は、広い周波数帯域のコモンモードノイズの除去ができることを目的とするものである。
【解決手段】本発明のコモンモードノイズフィルタは、積層方向に隣り合う第1のコイル導体11と第3のコイル導体13とで磁気結合する第1のフィルタ部15を構成し、かつ積層方向に隣り合う第2のコイル導体12と第4のコイル導体14とで磁気結合する第2のフィルタ部16を構成するようにし、さらに、第1のフィルタ部15の周波数特性と第2のフィルタ部16の周波数特性を異なるようにし、第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16の結合係数を−0.5〜+0.5としているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器に使用されるコモンモードノイズフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のコモンモードノイズフィルタは、図12に示すように、非磁性体層1a〜1cと、この非磁性体層1a〜1cの上下に形成された複数の磁性体層2と、非磁性体層1a〜1c、磁性体層2を積層して形成された積層体3と、前記非磁性体層1a〜1cに形成されたスパイラル状の第1のコイル4、第2のコイル5とを備え、第1のコイル4の巻き方向と第2のコイル5の巻き方向が上面視にて互いに同一とした構成となっていた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−60514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、携帯電話などへのUSBなどの様々なデジタルインターフェイスが搭載され、そのノイズ対策が望まれている。そして、例えば、携帯電話では800MHz帯〜2GHz帯近傍、USB2.0では480MHz帯と960MHz帯のそれぞれ広い周波数帯域に対してコモンモードノイズ低減が望まれている。
【0006】
しかしながら、上記した従来のコモンモードノイズフィルタにおいては、その構成素子であるインダクタの浮遊容量による自己共振により高周波領域においてコモンモードインピーダンスが低下し、広い周波数帯域でのコモンモード減衰量の確保ができないという課題を有していた。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、広い周波数帯域のコモンモードノイズの除去が可能なコモンモードノイズフィルタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0009】
本発明の請求項1に記載の発明は、積層体と、この積層体の内部に形成された第1〜第4のコイル導体とを備え、前記第1のコイル導体の一端部と前記第2のコイル導体の一端部とを接続し、かつ前記第3のコイル導体の一端部と前記第4のコイル導体の一端部とを接続するとともに、積層方向に隣り合う前記第1のコイル導体と前記第3のコイル導体とで磁気結合する第1のフィルタ部を構成し、かつ積層方向に隣り合う前記第2のコイル導体と前記第4のコイル導体とで磁気結合する第2のフィルタ部を構成するようにし、さらに、前記第1のフィルタ部の周波数特性と前記第2のフィルタ部の周波数特性を異なるようにし、前記第1のフィルタ部と第2のフィルタ部の結合係数を−0.5〜+0.5としたもので、この構成によれば、第1、第2のフィルタ部間の磁気結合が弱い状態で直列接続されているため、コモンモード減衰特性において異なる2つの周波数帯で減衰極を作ることができ、これにより、広い周波数帯域でのコモンモードノイズの除去ができるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明のコモンモードノイズフィルタは、積層方向に隣り合う第1のコイル導体と第3のコイル導体とで磁気結合する第1のフィルタ部を構成し、かつ積層方向に隣り合う第2のコイル導体と第4のコイル導体とで磁気結合する第2のフィルタ部を構成するようにし、さらに、第1のフィルタ部の周波数特性と第2のフィルタ部の周波数特性を異なるようにし、第1のフィルタ部と第2のフィルタ部の結合係数を−0.5〜+0.5としているため、第1、第2のコモンモードフィルタ部間の磁気結合が弱い状態で直列接続でき、これにより、コモンモード減衰特性において異なる2つの周波数帯で減衰極を作ることができるため、広い周波数帯域のコモンモードノイズの除去ができるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【図2】同コモンモードノイズフィルタの斜視図
【図3】同コモンモードノイズフィルタの他の例の分解斜視図
【図4】同コモンモードノイズフィルタの内部接続図
【図5】同コモンモードノイズフィルタと従来のコモンモードノイズフィルタのコモンモード減衰特性を比較した図
【図6】2つのフィルタ部の結合係数がほとんど0とみなせる場合のコモンモード減衰特性を示す図
【図7】2つのフィルタ部の結合係数が+0.5の場合のコモンモード減衰特性を示す図
【図8】2つのフィルタ部の結合係数が+0.6の場合のコモンモード減衰特性を示す図
【図9】2つのフィルタ部の結合係数が+0.9の場合のコモンモード減衰特性を示す図
【図10】2つのフィルタ部の結合係数が−0.5の場合のコモンモード減衰特性を示す図
【図11】2つのフィルタ部の結合係数が−0.9の場合のコモンモード減衰特性を示す図
【図12】従来のコモンモードノイズフィルタの分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタの分解斜視図、図2は同コモンモードノイズフィルタの斜視図である。
【0014】
本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタは、図1、図2に示すように、積層体10と、この積層体10の内部に形成された第1〜第4のコイル導体11〜14とを備え、前記第1のコイル導体11の一端部11aと前記第2のコイル導体12の一端部12aとを接続し、かつ前記第3のコイル導体13の一端部13aと前記第4のコイル導体14の一端部14aとを接続している。そして、積層方向に隣り合う前記第1のコイル導体11と前記第3のコイル導体13とで磁気結合する第1のフィルタ部15を構成し、かつ積層方向に隣り合う前記第2のコイル導体12と前記第4のコイル導体14とで磁気結合する第2のフィルタ部16を構成するようにし、さらに、前記第1のフィルタ部15の周波数特性と前記第2のフィルタ部16の周波数特性を異なるようにし、前記第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16の結合係数を−0.5〜+0.5としたものである。
【0015】
上記構成において、前記第1〜第4のコイル導体11〜14は、それぞれ銀等の導電材料を渦巻状にめっきすることにより形成されている。また、第1のコイル導体11と第2のコイル導体12は、第1の絶縁体層17aの上面に形成され、第3のコイル導体13と第4のコイル導体14は、第2の絶縁体層17bの上面にそれぞれ形成されている。そして、第1のコイル導体11および第3のコイル導体13と、第2のコイル導体12および第4のコイル導体14とが積層方向に対向し隣り合うようにする。
【0016】
また、第1のコイル導体11の他端部11bと第2のコイル導体12の他端部12bはそれぞれ、第3の絶縁体層17cの上面に設けられた第1の引出導体18、第2の引出導体19と、第1の絶縁体層17aに形成されたビア電極20a、20bを介して接続される。
【0017】
さらに、第3のコイル導体13の他端部13bと第4のコイル導体14の他端部14bはそれぞれ、第4の絶縁体層17dの上面に設けられた第3の引出導体21、第4の引出導体22と、第4の絶縁体層17dに形成されたビア電極20c、20dを介して接続される。
【0018】
なお、第3の絶縁体層17cの下面、および第3の引出導体21、第4の引出導体22の上面に、所定枚数の第5の絶縁体層17eが設けられている。
【0019】
前記第1〜第4の絶縁体層17a〜17dは、下から第3の絶縁体層17c、第1の絶縁体層17a、第2の絶縁体層17b、第4の絶縁体層17dの順に積層され、また、第1の絶縁体層17a、第2の絶縁体層17b、第4の絶縁体層17d、第5の絶縁体層17eは、Ni−Cu−Znフェライト等の磁性材料によりシート状に構成され、第3の絶縁体層17cは、Cu−Znフェライト等の非磁性材料によりシート状に構成されている。なお、第1〜第5の絶縁体層17a〜17eの枚数は、図1に示された枚数に限定されるものではない。
【0020】
そして、第1〜第4の引出導体18、19、21、22は、それぞれ積層体10の両端面に設けられた第1〜第4の外部電極23a〜23dに接続されている。この第1〜第4の外部電極23a〜23dは、積層体10の端面に銀を印刷することにより形成され、またこれらの表面にめっきによってニッケルめっき層を形成するとともに、このニッケルめっき層の表面にめっきによってすずやはんだ等の低融点金属めっき層を形成する。なお、第1、第3の外部電極23a、23cを同一面に、第2、第4の外部電極23b、23dを他の同一面に設ける。
【0021】
また、前記ビア電極20a〜20dは、第1の絶縁体層17a、第4の絶縁体層17dの所定の箇所に、レーザで孔あけ加工をし、この孔に銀を充填して形成する。
【0022】
ここで、第1のコイル導体11と第3のコイル導体13とは上面視にて略重なっており、これにより、互いに磁気結合するように構成され、この第1のコイル導体11と第3のコイル導体13とで第1のフィルタ部15が形成される。同様に、第2のコイル導体12と第4のコイル導体14とは上面視にて略重なっており、これにより、互いに磁気結合するように構成され、この第2のコイル導体12と第4のコイル導体14とで第2のフィルタ部16が形成される。なお、図1では、第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16とが互いに横方向になるように配置しているが、積層方向になるように配置してもよい。
【0023】
さらに、上面視にて第1のコイル導体11、第3のコイル導体13と、第2のコイル導体12、第4のコイル導体14とはコイル導体の巻き方向が逆になっている。このとき、第1、第3の外部電極23a、23cからコモンモード電流が進入してきたとき、第1のフィルタ部15で発生した磁束と第2のフィルタ部16で発生した磁束が強め合うため、結合係数kがプラスとなる。一方、図3に示すように、上面視にて、すべての第1のコイル導体11〜第4のコイル導体14でコイル導体の巻き方向を同じとし、第1のフィルタ部15で発生した磁束と第2のフィルタ部16で発生した磁束が打ち消し合うようにした場合は、結合係数kがマイナスとなる。
【0024】
図1に示した本発明のコモンモードノイズフィルタは、図4に示すように、第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16とが直列に接続された構成になっている。
【0025】
さらに、第1のフィルタ部15の巻数を、第2のフィルタ部16の巻数より少なくし、これにより、第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16の周波数特性を異なるようにしている。なお、巻数を変える他に、線間距離を変えたり、上面視したときの最外周で囲まれた面積を変えたりすることによっても、周波数特性を異なるようにすることができる。そして、図1に示すコモンモードノイズフィルタでは、第1のフィルタ部15の巻数を、第2のフィルタ部16の巻数より少なくしていることから、第1のフィルタ部15の共振周波数は第2のフィルタ部16の共振周波数より高くなっている。すなわち、第1のフィルタ部15に対応する減衰極は第2のフィルタ部16に対応する減衰極より高周波側となる。
【0026】
そして、コモンモード電流が印加されたときの第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16との結合係数が−0.5〜+0.5となっている。ここで、結合係数kは、第1のフィルタ部15のコモンモードでの自己インダクタンスをL1、第2のフィルタ部16のコモンモードでの自己インダクタンスをL2、両者のコモンモードでの相互インダクタンスをMとしたとき、k2=M2/(L1×L2)で表される。したがって、第1のフィルタ部15、第2のフィルタ部16の巻数や線間距離、第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16の位置関係を調整すること等によって、結合係数を所定の値にすることができる。
【0027】
図5は、本発明のコモンモードノイズフィルタと従来のコモンモードノイズフィルタの減衰特性を比較した図である。
【0028】
図5から明らかなように、本発明のコモンモードノイズフィルタは、異なる2つの周波数帯で減衰極を作り、これにより、広い周波数帯域のコモンモードノイズを除去できることが分かる。ここで、異なる2つの周波数帯で減衰極ができるのは、第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16の周波数特性が異なることからそれぞれのフィルタ部の周波数特性に対応する周波数で減衰極となり、かつ第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16の間の磁気結合が弱いためである。したがって、第1〜第4のコイル導体11〜14の巻き数を同じにする等により、2つのフィルタ部の周波数特性を同じにすると、同じ周波数帯で減衰極を作ってしまい、広い周波数帯域のコモンモードノイズを除去できない。
【0029】
図6は第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16の結合係数kがほぼゼロの場合、図7は結合係数kが+0.5の場合、図8は結合係数kが+0.6の場合、図9は結合係数kが+0.9の場合のコモンモード減衰特性を示しており、第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16の間の磁気結合がコモンモード減衰量の周波数特性に及ぼす影響について以下説明していく。
【0030】
ここで、図6に示された第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16の結合係数kがほぼゼロの状態とは、ほとんど磁気結合がなく、それぞれのフィルタ部の磁気構造が、第1のフィルタ部15単体と第2のフィルタ部16単体の場合とみなせる場合であり、この場合での高周波側の減衰極は、図1における第1のフィルタ部15に対応する減衰極で、低周波側の減衰極は、図1における第2のフィルタ部16に対応する減衰極となる。なお、図6では比較のため、第1のフィルタ部15のみ、第2のフィルタ部16のみのコモンモード減衰特性も示す。また、図7〜図9においても比較のために第1のフィルタ部15のみ、第2のフィルタ部16のみのコモンモード減衰特性も示す。
【0031】
図6〜図9から明らかなように、結合係数が大きくなればなるほど、第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16との間で互いに強め合う磁気結合構造が形成されるため、低周波側からコモンモードインピーダンスが大きくなってコモンモード減衰が大きく共振周波数も下がり、結合係数が+0.9では、低周波側の減衰極が支配的となる。
【0032】
このとき、図8に示すように結合係数kが+0.6の場合は、高周波側の減衰極において、結合係数kがほぼ0のときのコモンモード減衰量に比べて高周波側のコモンモード減衰量が小さくなるとともに、2つの減衰極の間において第1のフィルタ部15と共振点周波数を越えた第2のフィルタ部16とで直列共振状態が発生するため、コモンモードインピーダンス低下に伴うコモンモード減衰量の劣化量が大きくなり、これにより、コモンモード減衰量が10dBより小さくなり、広い周波数帯域でのコモンモード減衰量を確保できず、コモンモードノイズを除去することができない。この結果、結合係数kは+0.5以下にする必要がある。
【0033】
そして、結合係数kが+0.9になると、低周波側の減衰極が支配的となるため、広い周波数帯域のコモンモードノイズを除去できなくなる。これは、第1、第2のフィルタ部15、16との間の強め合う磁気結合状態では、結合係数が1に近づくほど強磁気結合状態となり、磁気構造としては、等価的に第1、第2のフィルタ部15、16が1つのフィルタ部とみなせる状態に近づき、低周波側で大きなコモンモードインピーダンスをもち、そのコモンモード減衰極は単極化するようになるためである。そして、図9から明らかなように、このような強結合状態では、高周波側のコモンモード減衰量を確保できないため、広い周波数帯域でのコモンモード減衰量を確保することができない。このため、第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16との間の結合係数kは+0.5以下にする必要がある。
【0034】
また、図6〜図9では結合係数kがプラスの場合を示したが、結合係数kがマイナスの場合を、図10、図11に示す。図10は第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16の結合係数kが−0.5の場合、図11は結合係数kが−0.9の場合を示し、ここでも比較のため、第1のフィルタ部15のみ、第2のフィルタ部16のみのコモンモード減衰特性も示す。
【0035】
図10、図11から明らかなように、第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16の間の磁気結合が互いに弱め合う場合、コモンモードに対してインダクタ成分が減少するため、低周波領域においてコモンモードインピーダンスが低くなり、これに伴いコモンモード減衰量も減少する。高周波領域においては、コモンモードインピーダンスが周波数に比例して高くなるためコモンモード減衰量を確保でき、共振周波数も高周波側へシフトしていく。結合係数kを小さくするにつれて、高周波側の減衰極が支配的になるが、これは第1、第2のフィルタ部15、16の間の弱め合う磁気結合状態では、結合係数が−1に近づくほど、磁気構造として、等価的に第1、第2のフィルタ部15、16が強く相殺し合った1つのコモンモードフィルタ部とみなせる状態に近づくため、低周波側ではコモンモードインピーダンスは極めて小さく、高周波側でそのコモンモード減衰極は単極化するようになる。このような第1のフィルタ15と第2のフィルタ部16が強く相殺する磁気結合状態では、低周波側のコモンモード減衰量を確保できないため、広い周波数帯域でのコモンモード減衰量を確保することができない。このため、第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16との間の結合係数kは、−0.5以上にする必要がある。
【0036】
以上のことから、異なる周波数特性をもつ2つのフィルタ部15、16を直列接続し、その結合係数kを−0.5≦k≦+0.5として相互にゆるく磁気結合させることで、コモンモード減衰量の周波数特性において2つの減衰極を有し広い周波数帯域でのコモンモード減衰量を確保し、コモンモードノイズを除去できる。
【0037】
上記したように本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタにおいては、積層方向に隣り合う第1のコイル導体11と第3のコイル導体13とで磁気結合する第1のフィルタ部15を構成し、かつ積層方向に隣り合う第2のコイル導体12と第4のコイル導体14とで磁気結合する第2のフィルタ部16を構成するようにし、さらに、第1のフィルタ部15の周波数特性と第2のフィルタ部16の周波数特性を異なるようにし、第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16の結合係数を−0.5〜+0.5としているため、2つのフィルタ部が互いに弱い結合で接続でき、これにより、コモンモード減衰特性において異なる2つの周波数帯で減衰極を作ることができるため、広い周波数帯域のコモンモードノイズの除去ができるという効果が得られるものである。
【0038】
すなわち、第1のフィルタ部15の周波数特性と第2のフィルタ部16の周波数特性を異なるようにすることで、コモンモード減衰特性において異なる2つの周波数帯で減衰極を作り、さらに、第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16とを弱く結合させることにより、2つのフィルタ部が等価的に1つのコモンモードフィルタとなるような磁気構造になって減衰極の単極化になるのを防ぐとともに、第1のフィルタ部15と第2のフィルタ部16のコイル導体の巻く方向を変える等により、結合係数を強め合うプラス側、弱め合うマイナス側に調整することで2つの減衰極の周波数及び減衰量を調整でき、この結果、広い周波数帯域のコモンモードノイズの除去ができる。
【0039】
また、電子機器により2つの周波数帯で減衰させる必要がある場合は、2つのフィルタ部にそれぞれ対応する減衰極の周波数が、当該周波数となるように調整すれば、部品を2つ使用せずに済むため、電子機器の小型化を実現できる。
【0040】
なお、上記した本発明の一実施の形態においては、フィルタ部を2つ直列接続したものについて説明したが、3つ以上のフィルタ部を直列接続するようにしてもよい。この場合も、各フィルタ部の周波数特性が異なるようにし、互いの結合係数も−0.5〜+0.5とする。
【0041】
さらに、第1〜第4のコイル導体11〜14それぞれにフェライト材料等による磁芯を設け、フィルタ部の結合係数調整を実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係るコモンモードノイズフィルタは、広い周波数帯域のコモンモードノイズの除去ができるという効果を有するものであり、特にデジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器のノイズ対策として使用されるコモンモードノイズフィルタ等において有用となるものである。
【符号の説明】
【0043】
10 積層体
11 第1のコイル導体
11a 第1のコイル導体の一端部
12 第2のコイル導体
12a 第2のコイル導体の一端部
13 第3のコイル導体
13a 第3のコイル導体の一端部
14 第4のコイル導体
14a 第4のコイル導体の一端部
15 第1のフィルタ部
16 第2のフィルタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体と、この積層体の内部に形成された第1〜第4のコイル導体とを備え、前記第1のコイル導体の一端部と前記第2のコイル導体の一端部とを接続し、かつ前記第3のコイル導体の一端部と前記第4のコイル導体の一端部とを接続するとともに、積層方向に隣り合う前記第1のコイル導体と前記第3のコイル導体とで磁気結合する第1のフィルタ部を構成し、かつ積層方向に隣り合う前記第2のコイル導体と前記第4のコイル導体とで磁気結合する第2のフィルタ部を構成するようにし、さらに、前記第1のフィルタ部の周波数特性と前記第2のフィルタ部の周波数特性を異なるようにし、前記第1のフィルタ部と第2のフィルタ部の結合係数を−0.5〜+0.5としたコモンモードノイズフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−195332(P2012−195332A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56130(P2011−56130)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】