説明

コロイド状二酸化ケイ素を含んでなる医薬組成物

【課題】小児および高齢者の患者への投与のために、水のような摂取液中に急速に分散するマクロライド含有製剤を提供する分散可能な錠剤の形態のマクロライド固体分散体組成物を提供する。錠剤製造工程中に、より低い圧縮力を用いることにより、より急速に崩壊する錠剤が製造され得ることが知られているが、これは一般に、劣った力学的特性を有する錠剤をもたらす。特に、弱く圧縮した錠剤は不十分な硬度を示し、望まれるよりも前に崩れたり、欠けたりまたは崩壊しやすい。
【解決手段】したがって本発明は、マクロライド固体分散体、崩壊剤およびコロイド状二酸化ケイ素を含む医薬組成物であって、1〜5重量%のコロイド状二酸化ケイ素を含んでなる医薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体分散体中にマクロライド、例えばラパマイシンまたはそれらの誘導体またはアスコマイシンを含んでなる新規経口投与用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で使用される“マクロライド”なる用語は、大環状ラクトン、例えば12員またはそれより大きいラクトン環を有する化合物を意味する。特に興味深いのは、“ラクタムマクロライド”、すなわち、ラクトン(エステル)結合に加えて大環(macrocycle)中にラクタム(アミド)結合を有する大環状化合物、例えばラパマイシン、アスコマイシンおよびFK506、ならびにその数多くの誘導体およびアナログのようなストレプトマイセス属の微生物により産生されるラクタムマクロライドである。このようなラクタムマクロライドは、興味深い薬学的特性、特に、免疫抑制性および抗炎症特性を有することが示されている。
【0003】
ラパマイシンは、ストレプトマイセス・ヒグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)により産生される免疫抑制性ラクタムマクロライドである。ラパマイシンの構造は、Kesseler, H., et al.;1993; Helv. Chim. Acta;76: 117により示される。例えば、McAlpine, J.B., et al., J. Antibiotics (1991) 44: 688;Schreiber, S.L., et al., J. Am. Chem. Soc. (1991) 113: 7433;米国特許第3929992号参照。ラパマイシンは非常に強力な免疫抑制剤であり、また抗腫瘍および抗真菌活性を有することが示されている。しかしながら、この医薬としての利用性は、その非常に低いそして変動しやすいバイオアベイラビリティーのために制限される。さらに、ラパマイシンは水性媒体、例えば水に極めて不溶性であり、このためガレヌス組成物への製剤化は困難である。ラパマイシンの多くの誘導体が既知である。一定の16−O−置換ラパマイシン誘導体がWO 94/02136において開示され、引用によりその内容を本明細書の一部とする。40−O−置換ラパマイシン誘導体は、例えば、米国特許第5258389号およびWO 94/09010(O−アリールおよびO−アルキルラパマイシン誘導体);WO 92/05179(カルボン酸エステル)、米国特許第5118677号(アミドエステル)、米国特許第5118678号(カルバメート)、米国特許第5100883号(フッ素化エステル)、米国特許第5151413号(アセタール)、米国特許第5120842号(シリルエーテル)、WO 93/11130(メチレンラパマイシンおよび誘導体)、WO 94/02136(メトキシ誘導体)、WO 94/02385およびWO 95/14023(アルケニル誘導体)に記載され、引用によりこれらのすべての内容を本明細書の一部とする。32−O−ジヒドロまたは置換ラパマイシン誘導体は、例えば米国特許第5256790号に記載され、これを引用により本明細書の一部とする。
【0004】
さらなるラパマイシン誘導体はPCT出願EP96/02441に記載されており、例えば32−デオキソラパマイシンは実施例1に記載され、そして16−ペンタ−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロラパマイシンは実施例2および3に記載されている。PCT出願EP96/02441の内容を、引用により本明細書の一部とする。
【0005】
ラパマイシンおよびその構造的に関連する誘導体を、まとめて“ラパマイシンおよびラパマイシン誘導体”と呼ぶ。
【0006】
FK506およびアスコマイシンが最も良く知られているメンバーであるアスコマイシンクラスは、ラクタムマクロライドの他のクラスを構成し、その多くが強い免疫抑制および抗炎症活性を有する。FK506はストレプトマイセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)No.9993により産生されるラクタムマクロライド免疫抑制剤である。FK506の構造は、メルクインデックス(Merck Index)、第11版(1989)の補遺(Appendix)にアイテムA5として記載されている。アスコマイシンは、例えば米国特許第3,244,592号に記載されている。アスコマイシンおよびFK506の多くの誘導体が合成されており、これにはEP427680に記載された33−エピ−クロロ−33−デスオキシ−アスコマイシンのようなハロゲン化誘導体が含まれる。アスコマイシン、FK506ならびにその構造類似アナログおよび誘導体を、まとめて“アスコマイシンおよびアスコマイシン誘導体”と呼ぶ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ヒトに経口投与した場合、固体のラパマイシンまたはラパマイシン誘導体は、血流に有意な程度で吸収され得ない。PCT出願WO 97/03654(引用により、この内容を本明細書の一部とする。)は、マクロライド、例えばラパマイシン、アスコマイシンまたはそれらの誘導体、および担体媒体を含んでなる固体分散体の形態の医薬組成物を記載している。これらの組成物は、改善されたバイオアベイラビリティーの医薬物質を提供し、投与が簡便であり、そして安定である。
【0008】
しかしながら、一定のグループの患者にとって、固体の錠剤形態の医薬の経口投与は望ましくないかまたは実用的でない。特に、小児および高齢者の患者は、かかる錠剤を簡便に嚥下できない。これらの患者のために、典型的には、患者による使用の前に、摂取液(ingestible liquid)中に最初に分散し得る錠剤を提供することがさらに好ましい。
【0009】
小児および高齢者の患者への投与のために、水のような摂取液中に急速に分散する錠剤を提供することが極めて望ましい。先行技術のマクロライド製剤が抱える問題は、それらが必ずしも水溶液中に急速に分散しないために、患者への投与の前に十分に分散した液体製剤を調製することが不便で時間がかかることである。分散可能な錠剤(dispersible tablet)の形態のマクロライド固体分散体組成物の製剤化における1つの特に困難な点は、固体分散体組成物において使用される大量の担体であり、これは錠剤製剤において結合剤として作用する。
【0010】
錠剤製造工程中に、より低い圧縮力を用いることにより、より急速に崩壊する錠剤が製造され得ることが知られている。しかしながら、これは一般に、劣った力学的特性を有する錠剤をもたらす。特に、弱く圧縮した錠剤は不十分な硬度を示し、望まれるよりも前に(すなわち、パッケージング、輸送、貯蔵、または使用のための摂取液への錠剤の添加の前の任意の時間に)崩れたり(crumble)、欠けたり(chip)または崩壊しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、先行技術の組成物の問題を軽減する医薬組成物を提供することを目的とする。したがって、本発明は、マクロライド固体分散体、崩壊剤およびコロイド状二酸化ケイ素を含む医薬組成物であって、1〜5重量%のコロイド状二酸化ケイ素を含んでなる医薬組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、マクロライド固体分散体を含んでなる特に急速に分散する組成物が崩壊を促進するためのコロイド状二酸化ケイ素を用いることにより提供され得るという驚くべき発見に基づく。コロイド状二酸化ケイ素は、医薬組成物中の主に滑沢剤または流動調節剤(flow-regulating agent)として先行技術から知られている。かかる目的で使用される場合、二酸化ケイ素は、典型的には、組成物の約0.5重量%で含まれる。本発明にしたがって、1〜5重量%のコロイド状二酸化ケイ素の含有(inclusion)は、別の崩壊剤と組み合わせられた場合、水溶液中のマクロライド固体分散体の崩壊を促進するのに特に有効であることが見出された。
【0013】
さらに、本発明の組成物は、組成物の崩壊特性を制限することなく、例えば保存中、操作中、パッケージング中などにおいて、高い安定性および物理的完全性(physical integrity)を示す。適当な量でのコロイド状二酸化ケイ素の含有は、さらに有利である。なぜなら、それは、錠剤へと圧縮された場合に、強化された力学的特性を有する組成物をもたらすからである。特に、本発明の組成物から形成された錠剤は、力学的安定性と、水溶液中での急速な崩壊との驚くべき組合せを有する。所定のレベルの硬度のために、二酸化ケイ素の含有は、より速い崩壊速度を有する錠剤をもたらす。代わって、所定の崩壊速度のために、本発明の二酸化ケイ素含有錠剤は、二酸化ケイ素を含有しない錠剤よりも堅い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の組成物は、1またはそれ以上の崩壊剤を含んでなる。崩壊剤の例には、架橋ポリビニルピロリドン、例えばISPからクロスポビドン(Crospovidone)(登録商標)またはポリプラスドン(polyplasdone)(登録商標)(Handbook of Excipients, p. 143-144)として商業的に入手可能なもの;Generichemから入手可能なデンプングリコール酸ナトリウム;およびクロスカルメロースナトリウム、例えばFMC CorporationからAc−di−sol(登録商標)として商業的に入手可能なものが含まれる。好ましくは、崩壊剤は架橋ポリビニルピロリドンを含んでなる。
【0015】
クロスポビドン(登録商標)は、約50重量%、例えば10〜30重量%、さらに好ましくは約20重量%の量(すべての重量は組成物の総重量に基づく)で、本発明の組成物中に含まれる。
【0016】
本発明の組成物は、上で定義した崩壊剤に加えて、1〜5重量%のコロイド状二酸化ケイ素を含んでなる。コロイド状二酸化ケイ素は、アエロジル(Aerosil)(登録商標)として商業的に入手され得る。コロイド状二酸化ケイ素は、本発明の組成物中に、組成物の総重量の1〜5%の量で、好ましくは組成物の総重量の2〜5%の量で含まれる。さらに好ましくは、該組成物は、組成物の総重量に基づいて2〜4%、そしていっそうさらに好ましくは2.5〜3.5%のコロイド状二酸化ケイ素を含んでなる。最も好ましくは、該組成物は、約3重量%のコロイド状二酸化ケイ素を含んでなる。
【0017】
好ましくは、コロイド状二酸化ケイ素および架橋ポリビニルピロリドンの混合物が、例えば1:1(例えば1:3から)から1:50(例えば1:10から)の比で使用され得る。
【0018】
本発明の固体分散体において使用されるマクロライドは、ラパマイシンまたはそれらの任意の誘導体、例えばO−置換誘導体{ここで、ラパマイシンのシクロヘキシル環上のヒドロキシル基は、−OR(Rは、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、アシルアミノアルキルまたはアミノアルキルである。)により置換されている;例えば、WO 94/09010において記載されたもの、例えば40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、40−O−(3−ヒドロキシプロピル)−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−ラパマイシン、および40−O−(2−アセトアミノエチル)−ラパマイシン}であり得る。該ラパマイシン誘導体は、26−または28−置換誘導体であり得る。該ラパマイシン誘導体は、上記の誘導体のエピマー、特に40、28または26位が置換された誘導体のエピマーであり得、そして例えばWO 95/14023および99/15530において記載されたように、例えばABT578のように所望によりさらに水素化されていてもよいか、あるいは例えばWO 98/02441およびWO 01/14387において開示されたようなラパログ(rapalog)、例えばAP23573であってもよい。
【0019】
本発明において使用するのに好適なラパマイシン誘導体には、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル ラパマイシン、32−デオキソラパマイシンおよび16−ペンタ−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロラパマイシンが含まれる。さらに好適な化合物は、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル ラパマイシンである。
【0020】
本明細書において使用されるラパマイシン誘導体のナンバリングは、PCT出願WO 96/13273(引用により本明細書の一部とする。)の第4頁の式A(Formula A)として開示されている構造を意味する。
【0021】
アスコマイシンクラスの化合物の例は、上記のもの、例えばFK−506、アスコマイシンおよび他の天然化合物(naturally occurring compound)、またはそれらの合成アナログである。
【0022】
アスコマイシンクラスの好適な化合物は、EP 427 680、実施例66aにおいて開示されており、33−エピ−クロロ−33−デスオキシ−アスコマイシンとしても知られている。他の好適な化合物はEP 465 426、およびEP 569 337(実施例71)において開示されている。33−エピ−クロロ−33−デスオキシ−アスコマイシンが特に好適である。
【0023】
マクロライド(例えば、ラパマイシンもしくはそれらの誘導体、例えば40−O−(2−ヒドロキシエチル) ラパマイシン、またはアスコマイシン、例えば33−エピ−クロロ−33−デスオキシ−アスコマイシンもしくはFK−506)は、好ましくは、組成物の総重量に基づいて約0.01〜約30重量%、さらに好ましくは0.1〜20重量%の量で組成物中に存在する。特にラパマイシン誘導体、例えば40−O−(2−ヒドロキシ)エチル ラパマイシンは、0.1重量%の量で組成物中に存在し得る。
【0024】
本発明において使用されるマクロライドは、固体分散体の形成の前には結晶またはアモルファスの形態であり得る。したがって、本発明の利点は、マクロライドが結晶である必要がないことである。かくして、マクロライドは、例えば溶媒と組み合わせて直接的に使用され得、そして前もって単離される必要はない。本発明の別の利点は、固体分散体の溶出速度が単なる混合物内の結晶性マクロライドまたはアモルファス性マクロライドに関して見出される溶出速度よりも大きいことである。
【0025】
固体分散体の製造のための担体媒体は、好ましくは担体、例えば水溶性ポリマー、例えば単一または混合物の下記のポリマーが使用され得る:
【0026】
− ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)。良好な結果が、低い見掛け粘度、例えば2重量%水溶液で20℃にて測定して100cps以下、例えば50cps以下、好ましくは20cps以下を有するHPMC、例えば3cpsのHPMCを用いて得られ得る。HPMCは周知であり、そして、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients、pub. Pharmaceutical Society of Great Britain and American Pharmaceutical Association, 1994, pp. 229-232において記載されている。その内容を、引用により本明細書の一部とする。HPMC(HPMC 3cpsを含む)は、Shinetsu社からファーマコート(Pharmacoat)(登録商標)603の名で商業的に入手可能である;
【0027】
− ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、例えばHPMCP HP50またはHPMCP HP55として商業的に入手可能なもの;
【0028】
− ポリビニルピロリドン(PVP)、例えばPVP K30またはPVP K12。PVPは、例えばポビドン(Povidone)(登録商標)(Handbook of Pharmaceutical Excipients, p. 392-399)としてBASF社から商業的に入手可能である。約8,000〜約50,000ダルトンの平均分子量を有するPVP、例えばPVP K30が好ましい;
【0029】
− ポリ(メタ)アクリレート、例えば胃液に耐性でありそして腸液に溶解性であるコポリマー、例えばメタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸およびアクリル酸エステル、例えばRohm Pharma GmbHからオイドラギット(Eudragit)(登録商標)として知られそして商業的に入手可能なものからなる群から選択されるモノマーから形成されたコポリマー。とりわけ好適なポリマーは、メタクリル酸およびメタクリル酸低級アルキルエステルからなる群から選択されるモノマーから形成された1:1または1:2コポリマー、例えばメタクリル酸およびメタクリル酸メチルから形成された1:1または1:2コポリマーである。1:1コポリマーはオイドラギット(登録商標)Lとして、1:2コポリマーはオイドラギット(登録商標)Sとして入手可能である。特に好適なポリマーは、オイドラギット(登録商標)L 100−55として入手可能なメタクリル酸およびアクリル酸エチルエステルの1:1コポリマーである;
【0030】
− ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)またはそれらの誘導体。HPC誘導体の例としては、水性媒体、例えば水中で低い動粘性係数、例えば25℃にて2%水溶液中で測定される約400cps以下、例えば150cps以下を有するものが挙げられる。好適なHPC誘導体は、低い置換度を有し、そして約200,000ダルトン以下、例えば50,000〜150,000ダルトンの平均分子量を有する。商品として入手可能なHPCの例としては、Aqualon社のクルーセル(Klucel)(登録商標)LF、クルーセル(登録商標)EFおよびクルーセル(登録商標) JF;ならびにNippon Soda Ltdのニッソ(Nisso)(登録商標)HPC−Lが挙げられる;
【0031】
− ポリエチレングリコール(PEG)。例として、1000〜9000ダルトン、例えば約1800〜7000の平均分子量を有するPEG、例えばPEG 2000、PEG 4000、またはPEG 6000(Handbook of Pharmaceutical Excipients, p. 355-361)が挙げられる;
【0032】
− 飽和ポリグリコール化グリセライド(saturated polyglycolised glyceride)、例えばGattefosse社からゲルシル(Gelucire)(登録商標)、例えばゲルシル(登録商標) 44/14、53/10、50/13、42/12、または35/10として入手可能なもの;あるいは
【0033】
− シクロデキストリン、例えばβ−シクロデキストリンまたはα−シクロデキストリン。適当なβ−シクロデキストリンの例としては、メチル−β−シクロデキストリン;ジメチル−β−シクロデキストリン;ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン;グリコシル−β−シクロデキストリン;マルトシル−β−シクロデキストリン;スルホ−β−シクロデキストリン;β−シクロデキストリンのスルホ−アルキルエーテル、例えばスルホ−C1〜4−アルキルエーテルが挙げられる。α−シクロデキストリンの例としては、グルコシル−α−シクロデキストリンおよびマルトシル−α−シクロデキストリンが挙げられる。
【0034】
固体分散体の担体媒体は、例えば、固体分散体の総重量に基づいて0.1〜99.99重量%、例えば0.1〜99.9重量%、例えば1〜95重量%、例えば5〜95重量%、例えば10〜90重量%の量で存在する。
【0035】
本発明の1つの実施態様において、固体分散体は、2重量%のラパマイシンまたはそれらの誘導体、例えば40−O−(2−ヒドロキシ)エチル ラパマイシン、および80重量%のHPMC 3cpsを含んでなる。
【0036】
固体分散体の製造のための担体媒体は、さらに、水溶性または水不溶性の糖または他の許容される担体または充填剤、例えばサッカロース、ラクトース、アミロース、デキストロース、マンニトール、イノシトールなど、好ましくはラクトース;もしくは微結晶性セルロース、例えばFMC Corporationからアビセル(Avicel)(登録商標)、ファーマセル(Pharmacel)(登録商標)、エムコセル(Emcocell)(登録商標)、およびバイバプール(Vivapur)(登録商標)として入手可能なもの(Handbook of Pharmaceutical Excipients, p. 84-87)のうちの1つまたはこれらの組合せを含み得る。好ましくは、ラクトースが使用され得る。
【0037】
存在する場合には、充填剤は、一般に固体分散体の総重量に基づいて約50重量%まで、例えば約0.01〜約50重量%、例えば約0.5〜約40重量%、好ましくは約5〜約35重量%、特に約20重量%の量で存在し得る。
【0038】
担体媒体は、さらに、1またはそれ以上の界面活性剤、例えば非イオン性、イオン性または両性界面活性剤を含んでいてもよい。適当な界面活性剤の例としては:
− ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン コポリマーおよびブロックコポリマー、例えばプルロニック(Pluronic)(登録商標)またはポロキサマー(Poloxamer)(登録商標)として商業的に入手可能なもの、例えばH. Fiedler, "Lexikon der Hilfsstoffe fur Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete", Editio Cantor Verlag Aulendorf, Aulendorf, 第4改訂および増補版 (1996)において記載されたもの。その内容を、引用により本明細書の一部とする。好適なポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーは、BASF社から商品として入手可能なポロキサマー(登録商標)188である;
【0039】
− ソルラン(Solulan)(登録商標)として商業的に入手可能なエトキシル化コレステリン、例えばAmerchol社のソルラン(登録商標)C24;
【0040】
− ビタミン誘導体、例えばビタミンE誘導体、Eastman社から入手可能なトコフェロールポリエチレングリコールスクシネート(TPGS);
【0041】
− ドデシル硫酸ナトリウムまたはラウリル硫酸ナトリウム;
【0042】
− 胆汁酸またはその塩、例えばコール酸、グリコール酸またはそれらの塩、例えばコール酸ナトリウム;あるいは
【0043】
− レシチン、例えば大豆リン脂質、例えばLipoidからリポイド(Lipoid)(登録商標)S75として商業的に入手可能なもの;または卵リン脂質、例えばNattermannからホスホリポン(Phospholipon)(登録商標)90として商業的に入手可能なもの。
【0044】
存在する場合には、界面活性剤(複数も可)は、一般に、固体分散体の総重量に基づいて約0.01〜約30重量%、例えば1〜20重量%、例えば1〜15重量%の量で存在し得る。出願人は、界面活性剤フリーの固体分散体を用いて良好な結果を得た。
【0045】
別の実施態様において、固体分散体の製造のための担体媒体は、例えば固体分散体組成物の総重量に基づいて、約5重量%まで、例えば約0.05〜5重量%、例えば0.05〜1重量%、特に約0.2%の量で、さらなる添加剤または成分、例えば抗酸化剤および/または安定化剤を含み得る。抗酸化剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、DL−α−トコフェロール、没食子酸プロピル、パルミチン酸アスコルビル、およびフマル酸が挙げられる。好ましくは、ブチル化ヒドロキシトルエンが使用され得る。マロン酸が適当な安定化剤であり得る。
【0046】
40−O−(2−ヒドロキシ)エチル ラパマイシンは、とりわけ、例えば5:1から20:1の比で、安定化剤、例えばブチル化ヒドロキシトルエンと混合され得る。
【0047】
担体媒体は、さらに、抗菌剤、酵素阻害剤、および保存剤を含み得る。
【0048】
別の態様において、本発明は、マクロライド含有医薬組成物の製造方法であって、マクロライド固体分散体を製造すること、ならびにマクロライド固体分散体を崩壊剤およびコロイド状二酸化ケイ素と混合して医薬組成物を形成させることを含んでなる方法に関する。
【0049】
上記の方法において、マクロライド固体分散体が最初に製造される。本明細書において使用される「固体分散体」なる用語は、マクロライドがアモルファスまたは実質的にアモルファスの形態であり、そして担体媒体中に分散している調製物を意味する。例えば、固体分散体は、担体媒体とのマクロライドの共沈澱物(co-precipitate)または共沸混合物(co-evaporate)であり得る。固体分散体は、投与可能な製剤へのさらなる加工に適している組成物であり得る。
【0050】
A. 1つの実施態様において、固体分散体は、溶媒または溶媒混合物中でマクロライドおよび担体媒体(例えば水溶性ポリマー、充填剤および抗酸化剤を含んでなる)を溶解または懸濁させることにより得られ得る。溶媒は、単一溶媒または混合溶媒であり得、そして溶媒中での担体媒体とのマクロライドの溶解および懸濁の順番を変えてもよい。固体分散体の製造において用いるのに適した溶媒は、有機溶媒、例えばアルコール、例えばメタノール、エタノール、またはイソプロパノール;エステル、例えば酢酸エチル;エーテル、例えばジエチルエーテル;ケトン、例えばアセトン;またはハロゲン化炭化水素、例えばジクロロエタンであり得る。好ましくは、約1:10から約10:1、例えば1:5から5:1のエタノール:アセトンの重量比を有するエタノール/アセトンの混合物が使用され得る。典型的には、マクロライドおよび担体媒体は、1:0.1から1:20の溶媒の重量比で存在する。溶媒を蒸発させ、そしてマクロライドを担体媒体で共沈澱させる。
【0051】
B. 別の実施態様において、固体分散体は溶解物を形成するために担体媒体を溶解させ、そして所望により本明細書に記載の溶媒または溶媒混合物中で、溶解物をマクロライドと合わせることにより(例えば撹拌することにより)製造され得る。得られる混合物を充填剤、例えばラクトースまたはマンニトールで造粒し得る。
【0052】
C. 別の実施態様において、固体分散体は上記の溶媒または溶媒混合物中でマクロライドおよび担体媒体を溶解または懸濁させ、そして得られる溶液/懸濁液を充填剤、例えばラクトースで造粒することにより製造され得る。
【0053】
D. 固体分散体は、例えば、Theory and Practice of Industrial Pharmacy, Lachmann et al., 1986において記載されたスプレー乾燥技術により製造され得る。上記の溶媒または溶媒混合物中のマクロライドおよび担体媒体の溶解/懸濁を、例えば20〜80℃に維持されたチャンバーにノズル経由で分散させ、そして例えば3barの圧力でスプレーする。溶媒をノズル経由で蒸発させ、そして微細分散粒子を回収する。
【0054】
E. さらなる実施態様において、固体分散体は、流動床中で充填剤、例えばラクトース、もしくは微結晶セルロースまたはそれらの混合物に、上記の溶媒または溶媒混合物中のマクロライドおよび担体媒体の溶液/分散液をスプレー造粒することにより製造され得る。
【0055】
本発明にしたがって、上記のマクロライド含有固体分散体は、さらに、分散可能な錠剤の形態の医薬組成物にさらに加工される。分散可能な錠剤は、好ましくは、3分もしくはそれ以下の崩壊時間を有する。
【0056】
本発明の別の態様において、上記の固体分散体組成物は、例えばサシェット(sachet)またはゼラチンカプセル中に充填され得る急速崩壊粉末または顆粒にさらに加工されてもよい。
【0057】
上記の方法AからBの各々の得られる残渣は、ふるいにかけられ、そして粒子、例えば約0.9mm未満、例えば約0.8mm未満、例えば約350ミクロン未満の平均粒子サイズを有する粒子へと粉砕され得る。好ましくは、粒子サイズは少なくとも約5ミクロン、例えば約200〜300ミクロンである。
【0058】
(粉砕された)固体分散体を、コロイド状二酸化ケイ素、1またはそれ以上の崩壊剤、例えばクロスポビドン(Crospovidone)(登録商標)、および他の賦形剤、例えば充填剤、例えばラクトースと合わせ、そして混合し、ふるいにかけ、そして滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムと合わせ、混合し、そして例えば圧縮して分散可能な錠剤を得るか、あるいはサシェットまたはゼラチンカプセルに充填してもよい。
【0059】
本発明の組成物は、さらに、1またはそれ以上の滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムを含み得る。ステアリン酸マグネシウムは、組成物の総重量に基づいて、0.5〜2重量%、好ましくは約0.5%の量で含まれ得る。
【0060】
特に好適な実施態様において、医薬組成物はさらに滑沢剤および充填剤を含んでなる。
【0061】
組成物の総重量に基づいて、例えば約2.5または5重量%の量で、本発明の組成物中に1またはそれ以上の甘味剤または香料を含むことは有利であり得る。
【0062】
本発明の別の実施態様において、水溶性または水不溶性の糖または他の許容される充填剤、例えばサッカロース、ラクトース、または微結晶性セルロース(例えば、FMC Corporationからアビセル(登録商標)として入手可能なもの)は、本発明の組成物に含まれ得る。好ましくはラクトース、特に無水ラクトースが、例えば組成物の総重量に基づいて約90重量%まで、例えば20〜80重量%、好ましくは約50〜約72重量%の量で使用され得る。
【0063】
本発明の急速崩壊組成物は、任意の慣用的形態で、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤または散剤の形態、例えばサシェットで投与され得る。好ましくは、該製剤は、錠剤の形態である。本明細書の後記において錠剤への特異的言及で本発明の組成物を記載するが、他の種類の投与形態が製造されてもよく、そしてそれらは本発明の範囲内に包含される。
【0064】
錠剤は、任意の適当な装置または手順を用いて本発明の組成物から製造され得る。典型的には、組成物を圧縮するために打錠機(tablet press)が使用される。さまざまな量の組成物が、異なる重量の錠剤を製造するために圧縮され得る。好適な実施態様において、50〜500mgの組成物が、個々の錠剤へと圧縮される。さらに好ましくは、約100mgまたは約250mgの重量を有する錠剤が製造される。
【0065】
得られる錠剤の硬度および崩壊時間を変えるために、本組成物を圧縮するために使用する力を変動し得る。より高い圧縮力の使用は、より長い崩壊時間を有するより堅い錠剤をもたらす。分散可能な錠剤に関して、崩壊時間は、錠剤が使用の前に水性溶液中で簡便に分散できるぐらい十分に短いことが重要である。したがって、所望の崩壊時間を達成するために、適当な圧縮力を選択することが必要である。
【0066】
しかしながら、錠剤が十分な機械的強度を有することも重要である。所定の圧縮力のために、得られる錠剤は先行技術の錠剤よりも水性溶液中でより速く崩壊するので、本組成物は有利である。それでも、本発明の錠剤は、十分な硬度を保持している。先行技術製剤を用いて十分に短い崩壊時間を有する分散可能な錠剤を達成するためには、非常に低い圧縮力が用いることが必要であろう。これは、不十分な硬度および力学的特性を有する錠剤をもたらすであろう。
【0067】
圧縮力を選択する場合に、錠剤の重量を考慮することも重要である。より小さい錠剤では、必要とされる硬度はより小さく、そしてより小さい圧縮力が典型的には使用される。当業者は、特定のサイズの錠剤に望まれる崩壊時間を達成するために、適当な圧縮力を選択することができる。
【0068】
1つの態様において、本発明の分散可能な錠剤は、水のような水性溶液中で急速崩壊を示す高い多孔性を有する。急速分散性は、標準的な試験において観察され得る。崩壊時間は、好ましくは、欧州薬局方(European Pharmacopoeia)4、191頁、2.9.1 (2002)と組み合わせて欧州薬局方4.1、2435頁、(2002)において記載された分散可能な錠剤のための標準的試験にしたがって測定される。この試験は、15〜25℃の水中での錠剤の崩壊時間を試験するものである。
【0069】
分散は視覚的に観察され得る。ふるい上に残留物が残っていない場合、または残留物が存在するが、それは明らかに固く(palpably firm)、非湿潤性コアを有さない軟質の物質からなり、またはコーティング(錠剤)の断片のみ、もしくは殻(カプセル剤)の断片のみがふるい上に残留している場合は、崩壊が達成されたと見なされる。
【0070】
上記の試験にしたがって測定された場合、本発明の錠剤は、好ましくは、3分またはそれ以下の崩壊時間を有する。さらに好ましくは、崩壊時間は2分またはそれ以下であり、いっそうさらに好ましくは崩壊時間は90秒またはそれ以下であり、そして最も好ましくは崩壊時間は30〜65秒である。
【0071】
本発明の錠剤の硬度、または圧壊に対する抵抗性は、標準的試験により測定され得る。錠剤の硬度は、好ましくは、欧州薬局方4、201頁、2.9.8 (2002)にて特定された標準的試験にしたがって測定される。クレーマー(Kraemer)(登録商標)3S錠剤試験デバイスのようなデバイスが使用され得る。この試験により、錠剤の圧壊に対する抵抗性(これは、圧壊による破壊に必要とされる力により測定される。)が測定される。
【0072】
本発明の錠剤の硬度は、錠剤の重量および直径ならびに圧縮力にしたがって変動する。200〜300mgの錠剤、例えば約9mmの直径を有する250mgの錠剤に関して、その硬度は好ましくは35〜80Nである。かかる硬度を達成するためには、8〜11kNの圧縮力が好ましくは適用される。50〜150mgの錠剤、例えば約7mmの直径を有する100mgの錠剤に関して、その硬度は好ましくは25〜60Nであり、そして7〜9kNの圧縮力を適用することにより達成され得る。他の錠剤の重量および直径に関して、好適な硬度は変動する。
【0073】
かくして、本発明の有利な特性は、かかる組成物から製造される錠剤の硬度および崩壊時間により証明され得る。したがって、好適な実施態様において、本発明は、上で定義した医薬組成物であって、9mmのダイおよび標準的フラットパンチでの8〜11kNの圧縮力を用いて圧縮した場合に、250mgの該組成物が35〜80Nの硬度を有する錠剤を形成する医薬組成物に関する。好ましくは、該組成物は、Fette(登録商標)PT 2080 ロータリー型打錠機のような打錠機を用いて圧縮される。硬度は、上記の標準的手順により、例えばクレーマー(Kraemer)(登録商標)3S錠剤試験デバイスを用いて測定される。9mmのダイおよび標準的フラットパンチで9.5kNの圧縮力を用いて圧縮された場合に、250mgの組成物が40〜66Nの硬度を有する錠剤を形成するような医薬組成物がさらに好適である。かかる方法で組成物から形成される錠剤の崩壊時間は、上で特定した試験を用いて測定した場合に、好ましくは、3分またはそれ以下、さらに好ましくは90秒またはそれ以下である。
【0074】
別の実施態様において、本発明は、上で定義した医薬組成物であって、7mmのダイおよび標準的フラットパンチで7〜9kNの圧縮力を用いて圧縮した場合に、100mgの組成物が25〜60Nの硬度を有する錠剤を形成する医薬組成物に関する。さらに好ましくは、医薬組成物は、7mmのダイおよび標準的フラットパンチで8.3kNの圧縮力を用いて圧縮した場合に、100mgの組成物が29〜53Nの硬度を有する錠剤を形成するものである。かかる方法で組成物から形成される錠剤の崩壊時間は、好ましくは、先行するパラグラフにおいて与えられたものである。
【0075】
本発明の上の記載は、かかる組成物から製造され得る特定の錠剤の性質に関して医薬組成物を定義する。しかしながら、それによって、本発明がかかる重量、直径もしくは硬度を有する錠剤、またはかかる圧縮力の使用に関係する製造方法のみに限定されるわけではないことは明らかである。上で議論したように、これらの値は、異なるタイプの錠剤によって変動し得る。上の定義は、むしろ、本発明の医薬組成物に固有の有利な特性を明らかにするために与えられたものであって、このことは、それらが錠剤へと製剤化された場合に、それらが良好な硬度と組み合わされた急速な崩壊時間を与えることを意味する。
【0076】
上に記載された圧縮方法により得られる錠剤は、形が変動し得、そして例えば球形、卵形、長方形(oblong)、円筒形、平坦または湾曲、あるいは任意の他の適当な形態であり得、そしてまた治療剤の濃度に依存するサイズで変動し得る。
【0077】
本発明の好適な実施態様において、上記の圧縮方法により得られる錠剤は、円形でかつ平らである。錠剤のエッジを、面取りするか、または丸めてもよい。
【0078】
本発明の組成物は、患者、例えば子供に、急速崩壊組成物、例えば分散可能な錠剤の形態で投与され得る。該組成物は、液体、例えば水のような水性媒体とともに投与され得る。該製剤、例えば錠剤のような単位投与形態または用量に、例えばスプーン上で液体を加えると、該組成物は急速に崩壊して例えば3分以内に、好ましくは90秒以内に、さらに好ましくは30〜65秒で分散液を形成し、かくして簡便な投与が可能となる。子供への投与に関して、甘味剤または他の添加剤を、不快な味をマスクし、そして該分散液をより口に合うものにするために、錠剤が分散している水性媒体に加えてもよい。
【0079】
必要な場合には、急速崩壊組成物の形態の本発明の組成物は、好ましくは、単位投与形態で、例えば分散可能な錠剤、カプセル剤、顆粒剤または散剤として、好ましくは分散可能な錠剤として混ぜ合わされる。組成物が単位投与形態である場合、ラパマイシンまたはそれらの誘導体を含んでなる個々の単位投与形態は、適当には、0.05mg〜10mgの医薬物質、さらに好ましくは0.1〜5mg;例えば0.1または0.25mgの医薬物質を含有する。かかる錠剤は、治療の特定の目的、治療の段階などに依存して、1日1〜5回の投与に適している。
【0080】
本発明の組成物が単位投与形態、例えばアスコマイシンを含んでなる分散可能な錠剤である場合、個々の単位投与形態は、適当には、1mg〜50mgの医薬物質、さらに好ましくは10〜25mg;例えば10、15、20または25mgの医薬物質を含有する。かかる錠剤は、治療の特定の目的、治療の段階などに依存して、1日1〜5回の投与に適している。
【0081】
本発明の組成物は、標準的安定性試験により示されるような良好な安定特性を示し得、例えば1、2または3年まで、およびそれより長い貯蔵期間安定性を有し得る。
【0082】
上記の方法A〜Eのいずれかにより得られる粒子または顆粒は、例えば腸溶コーティングを用いて被覆され得る。適当なコーティングは、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;ポリメタクリル酸ポリマー、例えばオイドラギット(登録商標)L、S;またはヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネートを含み得る。
【0083】
上記の圧縮方法により得られる錠剤は、さらに着色されてもよく、そして該錠剤は、特有の外観を与え、そして即座に認識できるように印を付けられてもよい。染料の使用は、その外観の強調、ならびに該化合物の同定を提供することができる。薬学的使用に適した染料には、典型的には、カロチノイド、酸化鉄、およびクロロフィルが含まれる。好ましくは、本発明の錠剤は、コードを用いて印を付けられる。
【0084】
使用され得る手順は、当分野において既知であり、例えば、L. Lachman et al. The Theory and Practice of Industrial Pharmacy, 3rd Ed, 1986, H. Sucker et al, Pharmazeutische Technologie, Thieme, 1991, Hagers Handbuch der pharmazeutischen Praxis, 4th Ed. (Springer Verlag, 1971) およびRemington's Pharmaceutical Sciences, 13th Ed., (Mack Publ., Co., 1970) またはそれらの後続版において記載されている。
【0085】
本発明の組成物は、マクロライド、例えばラパマイシンまたはアスコマイシンと同じ適応症に有用である。ラパマイシンまたはラパマイシン誘導体を含んでなる本発明の医薬組成物は、特に下記のものに有用である:
a)例えば心臓、肺、心肺同時、肝臓、腎臓、腸、膵臓、インスリン産生細胞、皮膚または角膜移植のための、細胞、組織または器官異種または同種移植拒絶の処置または予防。該医薬組成物は、また、宿主対移植片病、例えば骨髄移植後に時々起きる疾患の予防に適用される;
【0086】
b)自己免疫疾患および炎症状態、特に関節炎[例えば、リウマチ様関節炎、慢性進行性関節炎(arthritis chronic progrediente)および変形性関節炎]およびリウマチ性疾患のような自己免疫的要素を含む病因を有する炎症状態の処置または予防。本発明の化合物が使用され得る特定の自己免疫疾患として、自己免疫性血液障害(例えば、溶血性貧血、再生不良性貧血、真正赤血球性貧血および突発性血小板減少症を含む)、全身性エリテマトーデス、多発性軟骨炎、強皮症(sclerodoma)、ウェグナー肉芽腫症、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、乾癬、スティーブン−ジョンソン症候群、突発性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む)、内分泌性眼疾患、グレーブス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、若年性糖尿病(I型糖尿病)、ブドウ膜炎(前部および後部)、乾性角結膜炎および春季カタル、間質性肺線維症、乾癬性関節炎、糸球体腎炎(ネフローゼ症候群を伴うものおよび伴わないもの、例えば突発性腎炎症候群または微小変化ネフロパシーを含む)および若年性皮膚筋炎;
【0087】
c)喘息の処置または予防
d)慢性移植片拒絶または再狭窄の処置または予防;
e)癌、過増殖皮膚障害などの処置;
f)感染症、例えば真菌感染症の処置;
g)とりわけステロイドの作用の増強における、炎症の処置または予防;
が挙げられる。
【0088】
アスコマイシンまたはアスコマイシン誘導体を含んでなる本発明の医薬組成物は、特に、例えば、炎症性および過増殖皮膚疾患の処置、ならびに免疫介在性疾患の皮膚病変の処置において有用である。さらに特に、本発明の組成物は、炎症状態および免疫抑制を必要とする状態の予防および処置、例えば
a)
− 器官または組織移植、例えば心臓、腎臓、肝臓、骨髄および皮膚の拒絶、
− 宿主対移植片病、例えば骨髄移植後のもの、
− リウマチ様関節炎、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、I型糖尿病、およびブドウ膜炎のような自己免疫疾患、
− 免疫介在性疾患の皮膚病変
の予防または処置;
【0089】
b)炎症性および過増殖性皮膚疾患、例えば乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎およびさらなる湿疹様皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔蘚、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、血管性浮腫、血管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症、エリテマトーデス、および座瘡の処置;ならびに
【0090】
c)円形脱毛症
において使用するための抗炎症剤および免疫抑制剤および抗増殖剤として有用である。
【0091】
さらなる態様において、本発明は、例えば上記の疾患または障害の1つの処置または予防において、免疫抑制剤として使用するための医薬の製造のための、上で定義した組成物の使用を提供する。
【0092】
かくして、別の態様において、本発明は、マクロライドで処置可能な障害を患う対象の処置方法であって、かかる処置を必要とする対象に本発明の医薬組成物の治療有効量を投与することを含んでなる方法を提供する。
【0093】
別の態様において、本発明は、かかる治療を必要とする対象に本発明の医薬組成物を投与する方法であって、(i)該組成物を水と接触させること、および(ii)得られる分散液を摂取することを含んでなる方法を提供する。
【0094】
本発明の分散可能な錠剤を、摂取の前に、例えば20〜50mlの水中にて撹拌で分散させてもよい。
【0095】
投与されるべき組成物の正確な量は、いくつかのファクター、例えば処置の望まれる期間およびマクロライドの放出速度に依存する。
【0096】
本発明の組成物は、例えば標準的バイオアベイラビリティー試験において得られたバイオアベイラビリティーの一貫性およびレベルに関して、経口的に投与された場合に特に有利な特性を示す。これらの試験は、動物、例えばラットまたはイヌ、あるいは健常ボランティアにおいて行われる。
【0097】
薬物動態学的パラメーター、例えば吸収および血液レベルは、また、驚くべきことに、より予測可能になり、そして一貫性のない吸収をもたらす投与における問題が排除または低減化され得る。さらに、該組成物は、界面活性物質(tenside material)、例えば胃腸管内に存在する胆汁酸塩で有効である。
【0098】
該医薬組成物の有用性は、例えば、活性剤の等価な血液濃度を与える活性剤用量の既知適応症での標準的臨床試験において、例えば哺乳動物、例えば子供(例えば12歳以下そして例えば少なくとも3歳)または高齢者において、および標準的動物モデルにおいて、0.01mg〜5mg/kg(体重)/日、例えば0.5〜5mg/kg(体重)/日の範囲のラパマイシンまたはそれらの誘導体の用量を用いて;あるいは、例えば成人(75才)に1mg〜1000mg、例えば2.5〜1000mg、好ましくは10〜250mg/日の範囲のアスコマイシンの用量を用いておよび標準的動物モデルにおいて観察され得る。該組成物により提供される医薬物質のバイオアベイラビリティーの増加は、標準的動物試験において、および臨床試験において観察され得る。
【0099】
下記は、例示のみのための、本発明の医薬組成物の記載である。
【実施例】
【0100】
実施例1
固体分散体の製造
次の成分を含有する2%固体分散体(SD)組成物が製造される:
【表1】

【0101】
該組成物は、(i)40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンおよびブチル化ヒドロキシトルエンを混合すること、(ii)エタノール/アセトン混合液に(i)で得られた混合物を溶かすこと、(iii)HPMCおよびラクトースを添加すること、(iv)ステップ(iii)において得られた混合物を均一に分散させること、ならびに(v)蒸発により溶媒を除去することにより製造される。得られた残渣を乾燥し、ふるいにかけ、そして粉砕する。
【0102】
医薬組成物の製造
下記の成分を含有する(上記の固体分散体を含有する)医薬組成物が製造される(重量部表記):
【表2】

【0103】
該組成物は、(i)固体分散体(SD)、ラクトース、クロスポビドン(登録商標)およびアエロジル(登録商標)を混ぜ合わせること、(ii)ふるい(0.8mm)にかけ、そして混ぜ合わせること、(iii)ふるい(0.8mm)にかけたステアリン酸マグネシウムを添加し、そして混ぜ合わせることにより製造される。
【0104】
分散可能な錠剤の製造
分散可能な錠剤は、ステップ(iii)において得られた混合物を打錠することにより得られる。250mgの医薬組成物を、9mmのダイおよび標準的フラットパンチで10.5kNの圧縮力を用いるFette(登録商標)PT 2080ロータリー型打錠機により圧縮する。次いで、得られた錠剤の硬度を、Kraemer 3S錠剤試験デバイスを用いて、該錠剤を破砕するのに必要な力を測定することにより評価する。これらの条件下で製造された錠剤の硬度は、35〜79Nであった。かかる錠剤の崩壊時間は、0.4〜1.4分(24〜84秒)であった。
【0105】
実施例2
医薬組成物を上記の通り製造した。分散可能な錠剤を、Fette(登録商標)PT2080ロータリー型打錠機で、7mmのダイおよび標準的フラットパンチにて7.5kNの圧縮力を用いて100mgの医薬製剤を圧縮することにより製造した。これらの条件下で製造された錠剤の硬度は、25〜79Nであった。かかる錠剤の崩壊時間は、1.1〜1.7分(66〜102秒)であった。
【0106】
上の例は、0.01〜5mg/kg(体重)/日の用量にて、1日に1〜5単位用量の投与で、移植拒絶の予防に、または自己免疫疾患の処置に有用な組成物および錠剤を例示している。
【0107】
これらの例は、特に40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンに関して記載されている。しかしながら、さらなる例において、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンが別のマクロライドに置換されること以外は、実施例1および2において記載した方法が繰り返される。当該別のマクロライドは、任意の上記のラパマイシン誘導体またはアスコマイシン誘導体、例えばFK−506または33−エピ−クロロ−33−デスオキシ−アスコマイシンであり得る。かかる別のマクロライドを含んでなる錠剤は、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン含有錠について上記したのと同様の硬度および崩壊時間を有し、そしてまた、免疫抑制剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクロライド固体分散体、崩壊剤およびコロイド状二酸化ケイ素を含む医薬組成物であって、1〜5重量%のコロイド状二酸化ケイ素を含んでなる医薬組成物。
【請求項2】
9mmのダイおよび標準的フラットパンチで8〜11kNの力を用いて圧縮した場合に、250mgの組成物が35〜80Nの硬度および3分以下の崩壊時間を有する錠剤を形成する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
組成物が分散可能な錠剤の形態である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
錠剤が90秒もしくはそれ未満の崩壊時間を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
マクロライドがラパマイシン、アスコマイシンまたはそれらの誘導体である、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
ラパマイシンの誘導体が40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンである、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
免疫抑制剤として使用するための医薬の製造のための、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項8】
治療を必要とする対象に請求項1〜7のいずれかに記載の医薬組成物を投与する方法であって、(i)組成物を水溶液と接触させること、(ii)組成物を水溶液中に分散させて分散混合物を形成させること、および(iii)分散混合物を摂取することを含んでなる方法。
【請求項9】
コロイド状二酸化ケイ素がマクロライド固体分散体および崩壊剤をさらに含んでなる医薬組成物中に含まれ、そしてコロイド状二酸化ケイ素が水性溶液中での該医薬組成物の崩壊速度を増加させるために使用されている、共崩壊剤としてのコロイド状二酸化ケイ素の使用。
【請求項10】
マクロライド含有分散可能な錠剤の製造方法であって、マクロライド固体分散体を調製すること、マクロライド固体分散体を崩壊剤およびコロイド状二酸化ケイ素と混合して医薬組成物を形成させること、ならびに該医薬組成物を圧縮して分散可能な錠剤を形成させることを含んでなる方法。

【公開番号】特開2009−102341(P2009−102341A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309431(P2008−309431)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【分割の表示】特願2003−532038(P2003−532038)の分割
【原出願日】平成14年9月27日(2002.9.27)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】