説明

コロナ放電処理装置、コロナ放電処理方法、及び当該方法を用いて製造される床用化粧材

【課題】木質系基板を有する床用化粧材に、確実にコロナ放電処理を行うことが可能なコロナ放電処理装置、コロナ放電処理方法、及びこの方法を用いて製造される床用化粧材を提供する。
【解決手段】本発明に係るコロナ放電処理装置は、木質系基板及び化粧層を有する床用化粧材にコロナ放電処理を行う装置であって、床用化粧材の搬送方向に沿って所定間隔をおいて配置され、床用化粧材を基板側及び化粧層側から押圧しつつ搬送する一対のロールを有する複数のロール体と、隣接する前記ロール体の間に配置され、床用化粧材を基板側及び化粧層側から挟むように対向配置されたコロナ放電電極及びカウンター電極を有する少なくとも一つのコロナ放電ユニットと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系基板及び化粧層がこの順で積層され、前記化粧層側から少なくとも前記バッカー層が露出するように形成された凹部を有する床用化粧材にコロナ放電処理を行うコロナ放電処理装置、コロナ放電処理方法、及びこの方法を用いて製造される床用化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シート材からなる化粧シートは、壁材など種々の用途に用いられている。このような化粧シートは、樹脂フィルムからなる基材の表面に塗料が塗布されることで製造されるのであるが、塗料の塗布に先立って、基材表面にコロナ放電処理を施すという方法が採られており、これによって、塗料の密着性を向上していた(例えば特許文献1)。
【0003】
ところで、近年では、上記のような化粧シートを床材に適用することが多くなっており、木質系基板に、上述した化粧シートが化粧層として貼り付けられ、床用化粧材が用いられている。このような床用化粧材においては、化粧層の貼り付け後に、デザインとしての溝や面取り部などの凹部が形成されることが多いため、この部分に塗料を塗布してデザイン性を高めるといったことが検討されている。そのため、化粧シートの製造と同様に、凹部への塗料の塗布に先立って、コロナ放電処理を施すことが考えられる。
【特許文献1】特開2007−9162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、化粧シートはロールから連続的に繰り出されるのに対し、床用化粧材は枚葉で搬送されるのが一般的であること、及び床用化粧材には木質系基板が用いられていることから、化粧シートに対するコロナ放電処理を、床用化粧材に単純に適用することは難しく、不具合が生じることが考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、木質系基板を有する床用化粧材に、確実にコロナ放電処理を行うことが可能なコロナ放電処理装置、コロナ放電処理方法、及びこの方法を用いて製造される床用化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、木質系基板、バッカー層、及び化粧層がこの順で積層され、前記化粧層側から少なくとも前記バッカー層が露出するように形成された凹部を有する床用化粧材にコロナ放電処理を行う装置であって、前記床用化粧材の搬送方向に沿って所定間隔をおいて配置され、前記床用化粧材を基板側及び化粧層側から押圧しつつ搬送する一対のロールを有する複数のロール体と、隣接する前記ロール体の間に配置され、前記床用化粧材を基板側及び化粧層側から挟むように対向配置されたコロナ放電電極及びカウンター電極を有する少なくとも一つのコロナ放電ユニットと、を備えている。
【0007】
本発明が対象とする床用化粧材は、枚葉で製造され、また木質系基材を用いているため、製造工程中に反りが生じるおそれがある。そこで、本発明では、複数のロール体を搬送方向に沿って配置し、各ロール体によって床用化粧材を押圧しつつ搬送している。そのため、床用化粧材の反りを矯正しながらの搬送が可能となる。これにより、化粧用床材の反りによるコロナ放電ユニットとの接触が防止される。また、ロール体によって搬送方向の上流側及び下流側で床用化粧材が押さえ付けられているため、ロール体の間では、床用化粧材がフラットな状態となっている。そして、コロナ放電ユニットは、隣接するロール体の間に配置され、フラット状態の床用化粧材に対向しているため、床用化粧材に対して確実に、コロナ放電処理を行うことができる。
【0008】
上記装置においては、ロール体を次のように構成することができる。すなわち、ロール体において、コロナ放電電極側に配置されたロールの回転軸を固定するとともに、カウンター電極側に配置されたロールの回転軸を弾性的に上下動可能に構成することができる。この構成によれば、コロナ放電電極側に配置されたロールの回転軸が固定されているため、床用化粧材のコロナ放電電極側への反りを確実に防止することができる。そのため、搬送中の床用化粧材が、コロナ放電電極へ接触するのを確実に防止することができる。
【0009】
また、床用化粧材は、木質系基板を用いているため、厚み方向への反りに加え、幅方向へのねじれが生じるおそれもあり、このような変形があると、搬送中に床用化粧材が蛇行するおそれがある。そこで、床用化粧材を幅方向から挟み、搬送方向への進行をガイドするガイド部材をさらに設けることが好ましい。こうすることで、搬送中の床用化粧材が幅方向へ蛇行するのが防止され、コロナ放電処理を安定的に行うことができる。
【0010】
コロナ放電ユニットは、種々の構成をとることができるが、ワイヤー電極、ボール電極など公知の構造を用いることができる。例えば、各コロナ放電電極をワイヤー電極で構成する場合には、少なくとも1本のワイヤー電極を用い、床用化粧材の幅方向に延びるように配置することが好ましい。これにより、広い面積に対して効率的にコロナ放電処理を行うことができる。
【0011】
また、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、木質系基板、バッカー層、及び化粧層がこの順で積層され、前記化粧層側から少なくとも前記バッカー層が露出するように形成された凹部を有する床用化粧材にコロナ放電処理を施す方法であって、上下一対のロールを有するロール体を所定間隔をおいて複数配置し、これらロール体によって前記床用化粧材を押圧しつつ搬送するステップと、隣接する前記ロール体の間において、前記床用化粧材の化粧層側にコロナ放電処理を施すステップと、を備えている。
【0012】
また、本発明に係る床用化粧材は、上記問題を解決するためになされたものであり、上述したコロナ放電処理方法に次いで、前記化粧層側に塗料を塗布することで製造されたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、木質系基板を有する床用化粧材に、確実にコロナ放電処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るコロナ放電処理装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係るコロナ放電処理装置の側面断面図であり、図2は図1のA−A線断面図である。
【0015】
図1に示すように、このコロナ放電処理装置は、図の右側から左側へ向けて床用化粧材を搬送し、その途中でコロナ放電処理を行うための装置である。床用化粧材の搬送経路には、上流から下流に向けて、上下一対のロールを有するロール体が8組配置されており、床用化粧材Yは各ロール体のロール間を通過しながら下流側へ搬送される。以下、これらのロール体を、上流側から第1〜第8ロール体11〜18と称することとする。また、第3〜第7ロール体13〜17の間には、床用化粧材Yにコロナ放電処理を行う4個のコロナ放電ユニット、つまり上流から第1〜第4コロナ放電ユニット21〜24が配置されている。
【0016】
まず、ロール体について説明する。各ロール体11〜18を構成する全てのロール、つまり上側ロール111〜181及び下側ロール112〜182は、表面がステンレス等の金属で形成されている。最上流に配置されている第1ロール体11は、他のロールよりも径が大きく、これによって、元々反りが有る床用化粧材に対しても押圧力を付与することができる。その他の第2〜第8ロール体12〜18は同じ径を有している。例えば、第1ロール体11のロール径は200〜400mm,その他のロール体12〜18のロール径は80〜200mmとすることができる。また、各ロール体11〜18において、上側ロール111〜181の軸受けには、複数のプーリを介して第1ベルト3が巻回されており、この装置筐体の上部に配置された第1モータ4によってこのベルト3が移動するようになっている。したがって、第1モータ4が駆動するとベルト3が移動し、これによって全ての上側ロール111〜181が同時に回転する。同様に、下側ロール112〜182の軸受けにも、複数のプーリを介して第2ベルト5が巻回されており、この装置下部に配置された第2モータ6によって第2ベルト5が移動されると、全ての下側ロール112〜182が同時に回転するようになっている。すなわち、全てのロールは回転駆動し、床用化粧材Yに接触して下流側へ搬送するようになっている。
【0017】
上側ロール111〜181と下側ロール112〜182との隙間は、搬送する床用化粧材Yの厚さよりもやや小さくなっている。例えば、床用化粧材Yの厚みを12mmとすると、両ロールの隙間を11.8mmとすることができる。また、上側ロール111〜181の軸受けは固定される一方、下側ロール112〜182の軸受けには、サスペンションが設けられている。そのため、下側ロール112〜182は上下動可能になっており、床用化粧材Yの押圧および凹凸の吸収が可能となる。このとき、下側ロール112〜182から床用化粧材Yに作用する圧力は、例えば、1N〜50N/cmにすることができる。
【0018】
図2に示すように、床用化粧材Yの搬送経路において、その幅方向の両端には、ガイド部材7が配置されている。このガイド部材7は、搬送方向Xに沿って棒状に延びる一対のガイド片71からなる。両ガイド片71の間隔Tは、床用化粧材Yの幅よりもやや広くなっており、例えば、床用化粧材Yの幅が303mmであるとすると、ガイド片71間の幅Tは330〜340mmにすることができる。これによって床用化粧材Yの搬送方向への進行をガイドし、蛇行を防止する。
【0019】
次に、コロナ放電ユニット21〜24について説明する。図3は、コロナ放電ユニットの斜視図である。なお、同図は、第1コロナ放電ユニット21を示しているが、その他のユニットも同一構成である。各コロナ放電ユニット21〜24は、搬送方向Xに沿って、第3〜第7ロール体13〜17の間にそれぞれ配置されており、床用化粧材Yを挟んで、その上方に配置されるコロナ放電電極211〜241と、下方に配置されるカウンター電極212〜242とで構成されている。コロナ放電電極211〜241は、平行に並ぶ2つのワイヤー電極W,W備えており、各ワイヤー電極W,Wは、下に凸のコ字状に形成され、床用化粧材Yの幅方向に延びるように配置されている。一方、カウンター電極212〜242は、矩形状に形成され、両ワイヤー電極W,Wの直下に配置されている。いずれの電極も床用化粧材Yからは、所定距離だけ離れて配置されている。また、コロナ放電ユニット21〜24を挟んで配置されるロール体は、所定距離をおいて配置される必要がある。これは、ロールの表面が金属で形成されているため、放電が床用化粧材Yに向かわず、ロールに向かうのを防止するためである。例えば、ロールの径が100mmである場合、隣接するロールの中心間の距離Dは300mmにすることが好ましい(図2参照)。なお、コロナ放電ユニット21〜24からは、オゾンが発生するため、図示を省略するが、オゾンを回収するユニットも設けることが好ましい。
【0020】
続いて、本実施形態で対象とする床用化粧材の一例について説明する。図4は床用化粧材の断面図、図5は図4の要部断面図である。図4に示すように、この床用化粧材Yは、化粧シート(化粧層)A、バッカー層(合成樹脂層)B、及び木質系基板Cをこの順でラミネートしたものである。化粧シートAは、公知のものを使用することができ、例えば、特開2006−283345号公報、特開2004−17590号公報に記載のものを使用することができる。ここで具体的な一例を挙げると、化粧シートAは、例えば、厚さが約100〜200μmで、基本色が着色されたポリオレフィンフィルム上にべた印刷部を介して印刷層(模様)が形成され、さらにこの印刷層上にポリオレフィンフィルム及び接着剤を介してEB硬化型樹脂からなる保護層が形成されている。また、この保護層の表面には、エンボス加工がなされている。バッカー層Bは、厚さが約100〜400μmであり、ポリプロピレン樹脂で形成されている。このように、バッカー層Bは、厚みが大きくて硬いため、床材としての耐衝撃性を向上する。また、この木質系基板Cは、接着剤を介してバッカー層Bに固定されており、例えば、厚さが3〜15mmの木質繊維板、合板等で構成されている。こうして形成された床用化粧材は、ロールで準備されるのではなく、枚葉で上述した装置に搬入される。
【0021】
また、図5に示すように、床用化粧材Yの表面には、デザイン性を向上するため、複数の溝が形成されている。なお、図5では説明のために1つのみ示している。この溝Vは、化粧シートAからV字形の断面を有するように切り取られることで、形成されている。そして、溝Vの最深部は、木質系基板Bまで達しており、溝Vの壁面からは、化粧シートA、バッカー層B、及び木質系基板Bが露出している。また、その深さは、例えば、0.5〜1.0mmである。このように形成された床用化粧材Yの溝Vには、次に説明するように、塗料により着色がなされる。
【0022】
続いて、上記コロナ放電処理装置を用いた床用化粧材への着色方法について図6〜図8を参照しつつ説明する。図6は、着色までの工程を示すフローチャートであり、図7は着色工程の概略構成図であり、図8は着色工程における床用化粧材の断面図である。
【0023】
図6に示すように、溝Vに着色を行うまでには、まず、図4及び図5に示すような床用化粧材を製造しておく(S1)。すなわち、複数の溝Vが既に形成されているものを準備する。続いて、床用化粧材Yに付着する木屑の除去を行う。これは、床用化粧材Yが木質系基板Bを用いているため、木屑が発生することがあり、この木屑がワイヤー電極Wに付着すると、コロナ放電処理にバラツキが生じることが起こり得るからである。そこで、木屑除去工程では、床用化粧材Yの上面及び下面の両方で木屑の除去を行う(S2)。床用化粧材Yの上面は、公知のロール洗浄機、ブラシ、及び集塵機を用いて木屑の除去が行われる。一方、下面は、上面で用いた装置に加え、公知のサンディング機及び集塵機を用いることが好ましい。これは、床用化粧材Yの下面では、木質系基板Bが露出しており、木屑が発生しやすいからである。なお、上述した全ての装置を用いず、そのうちのいくつかを組み合わせて用いることもできる。
【0024】
こうして木屑が除去された床用化粧材Yを、化粧シートA側が上向きになるように、コロナ放電処理装置内に挿入する。床用化粧材Yは、第1ロール体11で大きい圧力が加えられつつ、下流側へ搬入される。そして、各ロール体12〜18で上下から押圧されながら、反りが矯正されていくとともに、矯正されてフラットになった面に、コロナ放電ユニットにより、コロナ放電処理が施される(S3)。これにより、化粧シートA側に形成された溝Vから露出する床用化粧材Yの断面が活性化される。
【0025】
続いて、コロナ放電処理がなされた床用化粧材を着色装置に進入させ、溝の着色を行う(S4)。図7に示すように、この装置は、塗料を塗布する塗布ユニット81と、その下流側に配置され、塗布された塗料を掻き取る掻き取りユニット82とを備えている。塗布ユニット81は、上下一対のロール811,812を備え、上側ロール811には、塗料の塗布ロール813が当接し、塗料が上側ロール811に塗布される。ロール表面の材質は、例えばスポンジで形成することができる。また、ロールは床用化粧材Yを掻き取りユニット82側に搬送できるように順方向に回転する。一方、掻き取りユニット82は、表面がゴムなどで形成された上下一対のロール821,822を備え、上側ロール821にドクターブレード823が当接している。また、このロール821,822は塗布ユニット81のロール811,812とは逆方向に回転し、塗料を掻き取りやすくしている。
【0026】
そして、図8(a)に示すような床用化粧材を上記着色装置に進入させると、図8(b)に示すように、床用化粧材Yには、塗布ユニット81によって溝Vを含めた化粧シート全体に塗料Pが塗布される。このとき、溝Vから露出するバッカー層Bには、コロナ放電処理が行われているため、バッカー層Bがオレフィン系樹脂で形成されていても、塗料が密着する。次に、掻き取りユニット82により、塗料が掻き取られる。すなわち、上側ロール821によって化粧シートA表面に塗布された塗料が掻き取られる。すなわち、化粧シートA表面の塗料は、図8(c)に示すように、溝Vに入り込んだ塗料Pを除いて掻き取られ、床用化粧材Yには、溝Vにのみ着色が行われる。以上の工程により、溝Vへの着色が完了する。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、次の効果を得ることができる。すなわち、ここで対象とする床用化粧材Yは、枚葉で製造され、また木質系基材を用いているため、製造工程中に反りが生じるおそれがある。そこで、本実施形態では、複数のロール体11〜18を搬送方向に沿って配置し、各ロール体11〜18の回転によって床用化粧材Yを押圧しつつ搬送している。そのため、床用化粧材Yの反りを矯正しながらの搬送が可能となる。また、対象となる床用化粧材Yの長さはロール体11〜18の間隔Dより大きいため、ロール体11〜18によって搬送方向の上流側及び下流側で床用化粧材Yが押さえ付けられて矯正される。こうして、ロール体11〜18の間では、床用化粧材Yがフラットな状態となるため、コロナ放電ユニット21〜24は、隣接するロール体11〜18の間に配置され、フラット状態の床用化粧材に対向しているため、床用化粧材に対してコロナ放電処理を確実に行うことができる。
【0028】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、ロール体、コロナ放電ユニットの数は、上述したものに限定されず、対象となる床用化粧材の大きさによって適宜決定すればよい。また、上記実施形態では、コロナ放電ユニットにおいてワイヤー電極を用いるが、ボール電極を用いることもでき、床用化粧材の所望の部分にコロナ放電処理をできるのであれば、特には限定されない。
【0029】
また、対象となる床用化粧材は、上述したもの以外に、例えば、バッカー層をPET樹脂等、オレフィン系樹脂以外のものにすることもでき、或いは、バッカー層を設けていない床用化粧材に対しても、上記コロナ放電処理装置を適用することができる。この場合、コロナ放電処理を施せば、化粧シートに塗料を塗布する際に、密着性を向上することができる。
【0030】
(実施例)
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0031】
ここでは、実施例として床用化粧材を以下の手順で作製した。
(1)合板(12mm厚×945mm×1840mm)からなる木質系基板の表面に、中央理科工業製接着剤(BA-10/BA-11B)を、約9g/尺角にて塗布した。
(2)上記合板に対して、フロアシート(0.4mm厚)をラミネータ機にてラミネートした。このフロアシートは、上述した化粧シートとバッカー層を重ね合わせたものであり、このバッカー層は、ポリプロピレン樹脂で形成されている。
【0032】
ここでの化粧シートの作成例を挙げると、以下の通りである。すなわち、両面コロナ放電処理を施した60μm厚さの着色ポリプロピレン系フィルムの一方の面にグラビア印刷法でウレタン/硝化綿系プライマー層(固形分として2g/m2)を形成し、他方の面に2液硬化型ウレタン系印刷インキでベタ柄印刷層とこのベタ柄印刷層上に木目柄の絵柄印刷層をグラビア印刷法で形成した。そのグラビア印刷の後、絵柄印刷層面全面に2液硬化型ウレタン系樹脂からなる接着剤層(固形分として2g/m2)を形成した。そして、この接着剤層面に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤とを添加したポリプロピレン系熱可塑性エラストマーを、Tダイ押出機で加熱溶融押出しして、80μm厚さの透明樹脂層を形成した。次いで、透明樹脂層面に木目導管柄のエンボス版で凹陥模様を設けると共に、透明樹脂層面全面に、アクリル/ウレタンブロッ共重合体を主剤とし、硬化剤としてイソシアネートを添加した2液硬化型ウレタン系樹脂を塗布して透明プライマー層(固形分として1g/m2)を形成した。さらに、透明プライマー層面全面に、ウレタンアクリレート系電離放射線硬化型樹脂を塗布すると共に電子線〔加速電圧:175KeV、照射量:5Mrad〕を照射して透明な表面保護層(固形分として15g/m2)を形成した化粧層となる化粧シートを作製した。
(3)(2)で作製した板材に対し、コールドプレス機にて、約30N/cmで、30分間プレスした後、3日間養生して床用化粧材の基材とした。
(4)この床用化粧材をギャングソー機にて、313mm幅×1840mm長さに小割り加工し、さらにテノーナー機にて、フロア加工(サネ加工、V字溝加工及び面取り加工)を行う。最終的な床用化粧材の大きさは、303mm×1818mmとなった。
(5)こうして製造された床用化粧材に対して、上記実施形態で示したコロナ放電処理装置によりコロナ放電処理を行った。その条件は、以下の通りである。
・電極方式:ワイヤー電極
・電極間距離(各コロナ放電電極のワイヤー電極の水平距離):5mm
・電力設定:1800W
・電圧設定:33kV
・床用化粧材の送り速度:60m/min
・ロール体数:8個
・ロール体の間隔:300mm
・ロール径:100mm(最上流のロール径:300mm)
・ロールの圧力: 5N/cm
(6)コロナ放電処理された床用化粧材に対し、上記実施形態で示した着色装置で、昭和インク工業株式会社製塗料(W−SF)を着色した。
【0033】
一方、上記工程で、コロナ放電処理のみを行わずに作製した床用化粧材を比較例とした。
【0034】
こうして作製された実施例及び比較例に係る床用化粧材に対し、塗料の剥離実験を行った。ここでは、溝及び面取り加工したC面にニチバン製セロテープ(登録商標)を貼り付け、上方に急激にはがした際の塗料密着性を評価した。その結果、実施例では、塗料の剥離はなかったが、比較例では、シート全面で塗料の剥離があった。
【0035】
また、床用化粧板の反りに関しても、最大矢高20mm程度のもののコロナ処理を行ったが、反り程度が小さく矯正され、電極との接触なしに、コロナ放電処理が可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るコロナ放電処理装置の一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】コロナ放電ユニットの斜視図である。
【図4】床用化粧材の断面図である。
【図5】床用化粧材の要部断面図である。
【図6】床用化粧材の製造工程を示すフローチャートである。
【図7】着色装置の概略を示す側面図である。
【図8】床用化粧材への着色の様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
11〜18 ロール体
21〜24 コロナ放電ユニット
211〜241 コロナ放電電極
221〜242 カウンター電極
7 ガイド部材
Y 床用化粧材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系基板及び化粧層を有する床用化粧材にコロナ放電処理を行う装置であって、
前記床用化粧材の搬送方向に沿って所定間隔をおいて配置され、前記床用化粧材を基板側及び化粧層側から押圧しつつ搬送する一対のロールを有する複数のロール体と、
隣接する前記ロール体の間に配置され、前記床用化粧材を基板側及び化粧層側から挟むように対向配置されたコロナ放電電極及びカウンター電極を有する少なくとも一つのコロナ放電ユニットと、
を備えている、コロナ放電処理装置。
【請求項2】
前記ロール体において、前記コロナ放電電極側に配置されたロールは、回転軸が固定される一方、前記カウンター電極側に配置されたロールは、回転軸が弾性的に上下動可能に構成されている、請求項1に記載のコロナ放電処理装置。
【請求項3】
前記床用化粧材を幅方向から挟み、搬送方向への進行をガイドするガイド部材をさらに備えている、請求項1または2に記載のコロナ放電処理装置。
【請求項4】
前記各コロナ放電電極は、少なくとも1本のワイヤー電極によって構成されており、
当該ワイヤー電極は、前記床用化粧材の幅方向に延びている、請求項1から3のいずれかに記載のコロナ放電処理装置。
【請求項5】
木質系基板及び化粧層を有する床用化粧材にコロナ放電処理を行う装置であって、
上下一対のロールを有するロール体を所定間隔をおいて複数配置し、これらロール体によって前記床用化粧材を押圧しつつ搬送するステップと、
隣接する前記ロール体の間において、前記床用化粧材の化粧層側にコロナ放電処理を施すステップと、を備えている、コロナ放電処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載のコロナ放電処理方法に次いで、前記化粧層側に塗料を塗布することで製造された床用化粧材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−26696(P2009−26696A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191077(P2007−191077)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】