説明

コンクリートの調製方法

【課題】コンクリートの調製に未燃カーボンを高濃度で含有するフライアッシュを用いる場合であっても、1)所要の流動性を得るための高性能減水剤乃至高性能AE減水剤の使用量の増大を抑え、2)流動性の経時的な低下(スランプロス)を防止し、3)所要の連行空気量を得るためのAE剤の使用量の増大を抑えて、4)得られる硬化体に凍結融解作用に対する強い抵抗性を与え、5)得られる硬化体に充分な強度を与えるという以上の1)〜5)の機能を同時に有するコンクリートを調製することができる方法を提供する。
【解決手段】未燃カーボンを高濃度で含有するフライアッシュを用いてコンクリートを調製するに際し、特定のグラフト共重合体及び/又はその塩と、特定の有機アミンエチレンオキサイド付加物と、特定の有機リン酸エステルとを所定割合で含有することとなる特定の混和剤を、セメント100質量部当たり0.1〜3質量部の割合で用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリートの調製方法に関し、特に未燃カーボンを高濃度で含有するフライアッシュを用いるコンクリートの調製方法に関する。近年、フライアッシュの発生量、なかでも石炭火力発電所において石炭灰として発生するフライアッシュの発生量が増加している。石炭火力発電所において発生するかかるフライアッシュは未燃カーボンを高濃度で含有しており、しかもそれが発生する発電所によって未燃カーボンの濃度のバラツキが大きいという特性を有する。本発明は、石炭火力発電所において発生するフライアッシュのような未燃カーボンを高濃度で含有するフライアッシュを用いるコンクリートの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
未燃カーボンを高濃度で含有するフライアッシュを用いてコンクリートを調製すると、1)所要の流動性を得るための高性能減水剤乃至高性能AE減水剤の使用量が増大し、コストアップになる、2)流動性の経時的な低下(スランプロス)が大きくなる、3)所要の連行空気量を得るためのAE剤の使用量が増大し、コストアップになる、4)得られる硬化体の凍結融解作用に対する抵抗性が低下する、5)得られる硬化体の強度が低下する等、様々な支障を生じる。
【0003】
かかる様々な支障を改善するため、フライアッシュを用いてコンクリートを調製するとき、混和剤として、空気連行剤を用いる方法(例えば特許文献1〜2参照)、石炭灰用分散剤を用いる方法(例えば特許文献3〜5参照)、打ち肌面改良剤を用いる方法(例えば特許文献6〜7参照)等が知られている。ところが、これらの従来法には、これらを単独で行なう場合はいうまでもなく、これらを併用して行なう場合でも、フライアッシュとして未燃カーボンを高濃度で含有するものを用いると、依然として前記したような様々な支障を生じるという問題がある。
【特許文献1】特開平1−157442号公報
【特許文献2】特開平8−295545号公報
【特許文献3】特開平11−157903号公報
【特許文献4】特開平2001−213648号公報
【特許文献5】特開平2003−267763号公報
【特許文献6】特開平5−132347号公報
【特許文献7】特開2002−234763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、コンクリートの調製に未燃カーボンを高濃度で含有するフライアッシュを用いる場合であっても、1)所要の流動性を得るための高性能減水剤乃至高性能AE減水剤の使用量の増大を抑え、2)流動性の経時的な低下(スランプロス)を防止し、3)所要の連行空気量を得るためのAE剤の使用量の増大を抑えて、4)得られる硬化体に凍結融解作用に対する強い抵抗性を与え、5)得られる硬化体に充分な強度を与えるという以上の1)〜5)の機能を同時に有するコンクリートを調製する方法を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
しかして本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、未燃カーボンを高濃度で含有するフライアッシュを用いてコンクリートを調製するときは、特定の3成分を所定割合で含有することとなる混和剤をセメントに対し所定量となるよう用いることが正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、未燃カーボンを高濃度で含有するフライアッシュを用いてコンクリートを調製するに際し、下記のA成分を50〜98質量%、下記のB成分を1〜45質量%及び下記のC成分を0.1〜5質量%の割合で含有することとなり、且つこれらの3成分を合計で100質量%となるよう含有することとなる混和剤を、セメント100質量部当たり0.1〜3質量部の割合となるよう用いることを特徴とするコンクリートの調製方法に係る。
【0007】
A成分:1)下記の第1工程及び第2工程を経て得られるグラフト共重合体、2)更に下記の第3工程を経て得られるグラフト共重合体の塩、以上の1)及び2)から選ばれる一つ又は二つ以上。
【0008】
第1工程:無水マレイン酸と下記の化1で示される単量体とを合計で95モル%以上含有し且つ無水マレイン酸/該単量体=50/50〜65/35(モル比)の割合で含有するラジカル重合性単量体混合物を溶剤の非存在下でラジカル重合して、質量平均分子量5000〜70000の共重合体を得る工程。
【0009】
第2工程:第1工程で得た共重合体100質量部当たり、下記の化2で示されるポリエーテル化合物を0.05〜5.0質量部の割合でグラフト反応して、グラフト共重合体を得る工程。
【0010】
第3工程:第2工程で得たグラフト共重合体を、アルカリ金属水酸化物で部分中和又は完全中和処理して、グラフト共重合体の塩を得る工程。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
化1及び化2において、
:メチル基又はアセチル基
:炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基
:分子中に1〜150個のオキシエチレン単位のみ又は合計2〜150個のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とで構成された(ポリ)オキシアルキレン基を有する(ポリ)アルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基
:分子中に合計23〜70個のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とで構成され且つ該オキシエチレン単位と該オキシプロピレン単位とがブロック状に結合したポリオキシアルキレン基を有するポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基
【0014】
B成分:下記の化3で示される有機アミンエチレンオキサイド付加物


【0015】
【化3】

【0016】
化3において、
:炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基
n,m:1〜15の整数
【0017】
C成分:下記の化4で示される有機リン酸エステル
【0018】
【化4】

【0019】
化4において、
:炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基
,M:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミン
【0020】
本発明に係るコンクリートの調製方法(以下単に本発明の方法という)では、詳しくは後述するように、セメント、未燃カーボンを高濃度で含有するフライアッシュ、細骨材、粗骨材及び水の他に、特定の混和剤を用いてコンクリートを調製する。本発明で用いる混和剤は、結果として、A成分、B成分及びC成分の3成分で構成されることとなるものである。
【0021】
本発明の方法で用いる混和剤のA成分は、1)第1工程及び第2工程を経て得られる
グラフト共重合体、2)更に第3工程を経て得られるグラフト共重合体の塩、以上の1)及び2)から選ばれる一つ又は二つ以上である。したがってA成分には、1)グラフト共重合体から選ばれる一つ又は二つ以上、2)グラフト共重合体の塩から選ばれる一つ又は二つ以上、3)これらの混合物が含まれる。
【0022】
第1工程は、ラジカル重合性単量体混合物を溶剤の非存在下でラジカル重合して共重合体を得る工程である。ラジカル重合性単量体混合物としては、無水マレイン酸と化1で示される単量体とを合計で95モル%以上含有し且つ無水マレイン酸/該単量体=50/50〜65/35(モル比)の割合、好ましくは52/48〜62/38(モル比)の割合で含有するものを用いる。
【0023】
化1で示される単量体において、化1中のAとしては、1)分子中にオキシエチレン単位のみで構成された(ポリ)オキシエチレン基を有する(ポリ)エチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基、2)分子中にオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とで構成された(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン基を有する(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールから全ての水酸基を除いた残基が挙げられ、2)の場合、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位との結合様式は、ランダム結合、ブロック結合のいずれでもよいが、1)の場合が好ましい。またAを構成するオキシアルキレン単位の繰り返し数は1〜150とするが、10〜90とするのが好ましい。
【0024】
以上説明した化1で示される単量体の具体例としては、1)α−アリル−ω−メチル−(ポリ)オキシエチレン、2)α−アリル−ω−メチル−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、3)α−アリル−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン、4)α−アリル−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン等が挙げられる。
【0025】
第1工程で用いるラジカル重合性単量体混合物は、無水マレイン酸と化1で示される単量体とを合計で95モル%以上含有するものであり、言い換えれば、他のラジカル重合性単量体を5モル%以下の範囲内で含有することができるものである。かかる他のラジカル重合性単量体としては、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸塩、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸メチルエステル、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸塩等が挙げられる。
【0026】
第1工程では、以上説明したラジカル重合性単量体混合物にラジカル開始剤を加えてラジカル重合させ、質量平均分子量5000〜70000、好ましくは10000〜50000の共重合体を得る。本発明において、質量平均分子量は、GPC法によるプルラン換算の質量平均分子量を意味する。前記のラジカル重合は、例えばラジカル重合性単量体混合物を反応缶に仕込み、窒素雰囲気下にてラジカル開始剤を加え、60〜90℃で5〜10時間ラジカル重合反応させる方法である。ラジカル重合反応を制御して所望の共重合体を得るためには、ラジカル開始剤やラジカル連鎖移動剤の種類及び使用量、重合温度、重合時間等を適宜選択する。ラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、クメンハイドロパーオキサイド等の非水系開始剤等が挙げられる。
【0027】
第2工程は、第1工程で得た共重合体に、化2で示されるポリエーテル化合物をグラフト反応してグラフト共重合体を得る工程である。
【0028】
化2で示されるポリエーテル化合物において、化2中のRとしては、1)オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソアクタデシル基、ドゥオデシル基等の炭素数8〜20の飽和脂肪族炭化水素基、2)デセニル基、テトラデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基等の炭素数8〜20の不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられるが、なかでも炭素数10〜20の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数12〜18の不飽和脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0029】
化2で示されるポリエーテル化合物において、化2中のAは、分子中にオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とで構成され且つ該オキシエチレン単位と該オキシプロピレン単位とがブロック状に結合したポリオキシアルキレン基を有するポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である。Aを構成するオキシエチレン単位及びオキシプロピレン単位の繰り返し数は合計で23〜70とするが、25〜60とするのが好ましい。以上説明した化2で示されるポリエーテル化合物は、炭素数8〜20の脂肪族アルコール1モルに対してエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを合計で23〜70モルの割合でブロック状に付加反応させる公知の方法で合成できる。
【0030】
第2工程では、第1工程で得た共重合体100質量部当たり、以上説明したような化2で示されるポリエーテル化合物を0.05〜5質量部の割合、好ましくは0.2〜4質量部の割合でグラフト反応してグラフト共重合体を得る。かかるグラフト反応には、公知の方法を適用できる。例えば、第1工程で得た共重合体と、化2で示されるポリエーテル化合物と、塩基性触媒とを反応缶に仕込み、窒素雰囲気とした後、100℃で4〜6時間グラフト反応させ、グラフト共重合体を得ることができる。ここで、塩基性触媒としては、酸無水物とアルコールとの開環エステル反応に用いる公知のものを使用できるが、なかでもアミン触媒が好ましく、低級アルキルアミンがより好ましい。
【0031】
第3工程は、第2工程で得たグラフト共重合体を、塩基性化合物で部分中和又は完全中和処理して、グラフト共重合体の塩を得る工程である。かかる塩基性化合物としては、1)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、2)水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、3)アンモニア、トリエタノールアミン等のアミン類が挙げられるが、アルカリ金属水酸化物が好ましい。
【0032】
本発明の方法で用いる混和剤のB成分は、化3で示される有機アミンエチレンオキサイド付加物である。化3で示される有機アミンエチレンオキサイド付加物は、炭素数8〜20の一級アルキル又はアルケニルアミン1モルに対し、エチレンオキサイドを2〜30モル、好ましくは4〜12モルの割合で付加することにより得られる。
【0033】
本発明の方法で用いる混和剤のC成分は、化4で示される有機リン酸エステルである。化4で示される有機リン酸エステルは炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基、好ましくは炭素数10〜16の脂肪族炭化水素基を有する有機リン酸エステルである。かかる有機リン酸エステルには、化4中のM及びMが水素原子である場合の有機リン酸モノエステル、該有機リン酸モノエステルのアルカリ金属塩、該有機リン酸モノエステルのアルカリ土類金属塩、該有機リン酸モノエステルのアンモニウム塩、該有機リン酸モノエステルの有機アミン塩が含まれるが、C成分の有機リン酸エステルとしては、前記のような有機リン酸モノエステルのアルカリ金属塩が好ましい。
【0034】
化4で示される有機リン酸エステルは公知の方法で合成できる。例えば、炭素数8〜20の高級アルコールに無水リン酸を反応させた後、有機溶媒を用いて再結晶することにより、化4中のM及びMが水素である場合の有機リン酸モノエステルを合成でき、またこの有機リン酸モノエステルをアルカリ金属水酸化物で中和することにより、有機リン酸モノエステルアルカリ金属塩を合成できる。
【0035】
本発明の方法で用いる混和剤は、以上説明したようなA成分を50〜98質量%、好ましくは62〜89質量%、B成分を1〜45質量%、好ましくは10〜35質量%及びC成分を0.1〜5質量%、好ましくは0.3〜3質量%含有することとなり、且つこれらの3成分を合計で100質量%となるよう含有することとなるものである。各成分の含有割合がこれらの範囲から外れることになると、そのような混和剤を用いて調製したコンクリートは前記した所期の多機能を同時に備えるのが難しくなる。
【0036】
本発明の方法では、セメント、未燃カーボンを高濃度で含有するフライアッシュ、細骨材、粗骨材、水及び以上説明したような混和剤を練り混ぜ、コンクリートを調製するが、この際に混和剤は、セメント100質量部当たり、0.1〜3質量部、好ましくは0.15〜2質量部の割合となるよう用いる。混和剤の使用量がこれより少ないと、調製したコンクリートは流動性が悪く、また前記した所期の多機能を同時に備えるのが難しくなる。逆に混和剤の使用量をこれより多くしても、それに見合うだけの効果が得られない。
【0037】
混和剤を添加する方法は特に制限されない。混和剤として、各成分の所定量を予め混合しておいたものを用いてもよいし、又は各成分の所定量を別々に用いてもよい。通常は、セメント、未燃カーボンを高濃度で含有するフライアッシュ、細骨材及び粗骨材をミキサーで空練りする一方で、別に各成分の所定量を予め混合しておいた混和剤を練り混ぜ水で希釈し、しかる後に双方を練り混ぜる方法が好ましい。
【0038】
本発明の方法において、セメントとしては、普通セメント、早強セメント、中庸熱セメント、耐硫酸塩セメント等の各種ポルトランドセメントが挙げられるが、普通セメントが好ましい。またセメントの使用量は特に制限されないが、その単位量が200〜400kg/mとなるよう用いるのが初期強度を充分に確保するうえで好ましい。
【0039】
本発明の方法において、フライアッシュとしては、未燃カーボンを高濃度で含有するもの、例えば前記したような石炭火力発電所から発生する石炭灰を用いる。特に未燃カーボンを8〜25質量%の高濃度で含有するフライアッシュを用いてコンクリートを調製する場合に本発明の効果が顕著に発揮される。かかるフライアッシュの使用量は特に制限されないが、その単位量が30〜200kg/mとなるように、なかでも40〜100kg/mとなるように用いるのが、初期強度を充分に確保するうえで好ましい。
【0040】
本発明の方法において、細骨材としては、川砂、山砂、海砂、砕砂等が挙げられ、また粗骨材としては、川砂利、砕石、軽量骨材等が挙げられる。
【0041】
本発明の方法において、得られる硬化体に凍結融解作用に対する強い抵抗性を発揮させるためには、調製するコンクリートはその連行空気量を3〜6容量%にしたAEコンクリートとするのが好ましい。かかる連行空気量の調製は、前記したA成分、B成分及びC成分のうちで、連行空気量に影響の大きいC成分の含有割合を調節することによって調製することができる。
【0042】
本発明の方法では、以上説明したように、セメント、未燃カーボンを高濃度で含有するフライアッシュ、細骨材、粗骨材、水及び混和剤を練り混ぜてコンクリートを調製するが、この際、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて前記した混和剤以外に、凝結促進剤、凝結遅延剤、防水剤、防腐剤、防錆剤等の他の添加剤を併用することができる。
【発明の効果】
【0043】
以上説明した本発明の方法によると、未燃カーボンを高濃度で含有するフライアッシュを用いる場合であっても、1)所要の流動性を得るための高性能減水剤乃至高性能AE減水剤の使用量の増大を抑え、2)流動性の経時的な低下(スランプロス)を防止し、3)所要の連行空気量を得るためのAE剤の使用量の増大を抑えて、4)得られる硬化体に凍結融解作用に対する強い抵抗性を与え、5)得られる硬化体に充分な強度を与えるという以上の1)〜5)の機能を同時に有するコンクリートを調製することができるという効果がある。
【0044】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【実施例】
【0045】
試験区分1(混和剤の調製に用いる各成分の合成)
・A成分として用いるグラフト共重合体(a−1)の合成
無水マレイン酸120g(1.2モル)及びα−アリル−ω−メチル−ポリ(n=33)オキシエチレン1524g(1.0モル)を反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換した。反応系の温度を温水浴にて70℃に保ち、アゾビスイソブチロニトリル3gを投入して、ラジカル重合反応を開始した。更にアゾビスイソブチロニトリル5gを分割投入し、ラジカル重合反応を4時間継続して反応を完結した。得られた共重合体を分析したところ、原料換算で、無水マレイン酸/α−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレン(n=33)=55/45(モル比)の割合で有する、質量平均分子量26000の共重合体であった。次いで、この共重合体100gと、オレイルアルコール1モルに対してエチレンオキサイド6モル及びプロピレンオキサイド43モルの割合でブロック状に付加したα−オレイル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレン(n=6)ポリオキシプロピレン(m=43)2.8gと、触媒としてトリブチルアミン2gとを反応容器に仕込み、雰囲気を窒素置換した。反応系の温度を攪拌しながら90℃に保ち、4時間グラフト反応を続け、グラフト共重合体(a−1)を得た。
【0046】
・A成分として用いるグラフト共重合体(a−2)〜(a−4)及び(r−1)〜(r−5)の合成
グラフト共重合体(a−1)の合成と同様にして、グラフト共重合体(a−2)〜(a−4)及び(r−1)〜(r−5)を合成した。
【0047】
・A成分として用いるグラフト共重合体の塩(a−5)の合成
前記のグラフト共重合体(a−1)の40%水溶液250gを反応容器に仕込み、攪拌しながら30%水酸化ナトリウム水溶液10gを徐々に加えて、部分中和処理を行ない、グラフト共重合体の部分中和塩(a−5)を得た。グラフト共重合体の部分中和塩(a−5)の中和度は50%であった。
【0048】
・グラフト共重合体の塩(a−6)の合成
前記のグラフト共重合体(a−3)の40%水溶液250gを反応容器に仕込み、攪拌しながら30%水酸化ナトリウム水溶液43gを徐々に加えて、完全中和処理を行ない、グラフト共重合体の塩(a−6)を得た。以上で合成した各グラフト共重合体等の内容を表1にまとめて示した。
【0049】
【表1】

【0050】
表1において、
*1:第1工程で得た共重合体100部に対してグラフト反応させた化2で示されるポリエーテル化合物等の部
*2:水酸化ナトリウム
d−1:α−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレン(n=33)
d−2:α−アリル−ω−メチル−ポリオキシエチレン(n=70)
d−3:α−アリル−ω−アセチル−ポリオキシエチレン(n=10)
d−4:α−アリル−ω−アセチル−ポリオキシエチレン(n=50)
e−1:スチレン
f−1:α−オレイル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレン(n=6)−ポリオキシプロピレン(m=43)
f−2:α−ラウリル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレン(n=3)−ポリオキシプロピレン(m=32)
dr−1:α−アリル−ω−アセチル−ポリオキシエチレン(n=160)
fr−1:α−ラウリル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレン(n=15)
fr−2:α−オレイル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレン(n=50)
【0051】
試験区分2(混和剤の調製)
・混和剤(P−1)の調製
A成分として試験区分1で合成したグラフト共重合体(a−1)75部、B成分としてラウリルアミンエチレンオキサイド付加物(b−1)23部及びC成分としてオクチルリン酸モノエステルカリウム塩(c−1)2部を混合して混和剤(P−1)を調製した。
【0052】
混和剤(P−1)〜(P−12)及び(R−1)〜(R−14)の調製
混和剤(P−1)と同様にして、混和剤(P−1)〜(P−12)及び(R−1)〜(R−14)を調製した。以上で調製した各混和剤の内容を表2にまとめて示した。
























【0053】
【表2】

【0054】
表2において、
P−1〜P−12:実施例で用いる混和剤
R−1〜R−14:比較例で用いる混和剤
a−1〜a−6,r−1〜r−5:試験区分1で合成したグラフト共重合体等
b−1:ラウリルアミンのエチレンオキサイド(4モル)付加物
b−2:ラウリルアミンのエチレンオキサイド(8モル)付加物
b−3:ステアリルアミンのエチレンオキサイド(12モル)付加物
c−1:オクチルリン酸モノエステルのカリウム塩
c−2:テトラデシルリン酸モノエステルのナトリウム塩
c−3:ドデシルリン酸モノエステルのナトリウム塩
*3:ロジン塩系AE剤(竹本油脂社製の商品名AE300)
*4:ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(竹本油脂社製の商品名チューポールHP−8)
*5:ナフタレンスルホン酸系高性能減水剤(竹本油脂社製の商品名ポールファイン510AN)
【0055】
試験区分3(未燃カーボンを高濃度で含有するフライアッシュを用いたコンクリートの調製及び評価)
・実施例1〜15及び比較例1〜16
表3に記載した配合条件で、50Lのパン型強制練りミキサーに普通ポルトランドセメント(密度=3.16、ブレーン値3300)、フライアッシュ(中国電力水島火力発電所産、密度=2.12g/cm、ブレーン値3650、未燃カーボン量12.5%)、細骨材(大井川水系砂、密度=2.58g/cm)及び粗骨材(岡崎産砕石、密度=2.68g/cm)を順次投入して15秒間空練りした。次いで、目標スランプが18±1cm、目標空気量が4〜5%の範囲となるよう、試験区分2で調製した混和剤を水と共に投入して練り混ぜ、各例のコンクリートを調製した。混和剤の使用量と共に、各例で調製したコンクリートの内容を表4にまとめて示した。
【0056】
【表3】

【0057】
表3において、
*6:粉体はセメントとフライアッシュの合計量
【0058】
・調製したコンクリートの物性評価
各例で調製したコンクリートについて、空気量、スランプ、スランプ残存率を下記のように求め、結果を表4にまとめて示した。また各例で調製したコンクリートの硬化体について、圧縮強度及び凍結融解抵抗性指数を下記のように求め、結果を表5にまとめて示した。
【0059】
空気量:練り混ぜ直後のコンクリート及び更に90分間静置後のコンクリートについて、JIS−A1128に準拠して測定した。
スランプ:空気量の測定と同時に、JIS−A1101に準拠して測定した。
スランプ残存率:(90分間静置後のスランプ/練り混ぜ直後のスランプ)×100で求めた。
・凍結融解耐久性指数:各例のコンクリートについて、JIS−A1129の付属書2に準拠して測定した値を用い、ASTM−C666−75の耐久性指数で計算した数値を示した。この数値は、最大値が100で、100に近いほど、凍結融解に対する抵抗性が優れていることを示す。
・圧縮強度:各例のコンクリートについて、JIS−A1108に準拠し、材齢7日と材齢28日で測定した。











【0060】
【表4】

【0061】
表4において、
*7:セメント100部に対する混和剤の使用部










【0062】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
未燃カーボンを高濃度で含有するフライアッシュを用いてコンクリートを調製するに際し、下記のA成分を50〜98質量%、下記のB成分を1〜45質量%及び下記のC成分を0.1〜5質量%の割合で含有することとなり、且つこれらの3成分を合計で100質量%となるよう含有することとなる混和剤を、セメント100質量部当たり0.1〜3質量部の割合となるよう用いることを特徴とするコンクリートの調製方法。
A成分:1)下記の第1工程及び第2工程を経て得られるグラフト共重合体、2)更に下記の第3工程を経て得られるグラフト共重合体の塩、以上の1)及び2)から選ばれる一つ又は二つ以上。
第1工程:無水マレイン酸と下記の化1で示される単量体とを合計で95モル%以上含有し且つ無水マレイン酸/該単量体=50/50〜65/35(モル比)の割合で含有するラジカル重合性単量体混合物を溶剤の非存在下でラジカル重合して、質量平均分子量5000〜70000の共重合体を得る工程。
第2工程:第1工程で得た共重合体100質量部当たり、下記の化2で示されるポリエーテル化合物を0.05〜5質量部の割合でグラフト反応して、グラフト共重合体を得る工程。
第3工程:第2工程で得たグラフト共重合体を、塩基性化合物で部分中和又は完全中和処理して、グラフト共重合体の塩を得る工程。
【化1】

【化2】

(化1及び化2において、
:メチル基又はアセチル基
:炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基
:分子中に1〜150個のオキシエチレン単位のみ又は合計2〜150個のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とで構成された(ポリ)オキシアルキレン基を有する(ポリ)アルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基
:分子中に合計23〜70個のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とで構成され且つ該オキシエチレン単位と該オキシプロピレン単位とがブロック状に結合したポリオキシアルキレン基を有するポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基)
B成分:下記の化3で示される有機アミンエチレンオキサイド付加物
【化3】

(化3において、
:炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基
n,m:1〜15の整数)
C成分:下記の化4で示される有機リン酸エステル
【化4】

(化4において、
:炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基
,M:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミン)
【請求項2】
未燃カーボンを8〜25質量%含有するフライアッシュを用いる請求項1記載のコンクリートの調製方法。
【請求項3】
フライアッシュをその単位量が30〜200kg/mとなるよう用いる請求項1又は2記載のコンクリートの調製方法。
【請求項4】
化1で示される単量体が、化1中のAが分子中に合計10〜90個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するポリエチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合のものである請求項1〜3のいずれか一つの項記載のコンクリートの調製方法。
【請求項5】
化2で示されるポリエーテル化合物が、化2中のRが炭素数10〜20の脂肪族炭化水素基であり、またAが分子中に合計25〜60個のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とで構成されたポリオキシアルキレン基を有するポリアルキレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合のものである請求項1〜4のいずれか一つの項記載のコンクリートの調製方法。
【請求項6】
化3で示される有機アミンエチレンオキサイド付加物が、化3中のn及びmが4≦n+m≦12を満足する整数である場合のものである請求項1〜5のいずれか一つの項記載のコンクリートの調製方法。
【請求項7】
化4で示される有機リン酸エステルが、化4中のRが炭素数10〜16の脂肪族炭化水素基であり、またM及びMがアルカリ金属である場合のものである請求項1〜6のいずれか一つの項記載のコンクリートの調製方法。
【請求項8】
連行空気量が3〜6容量%となるよう空気量を調製したAEコンクリートである請求項1〜7のいずれか一つの項記載のコンクリートの調製方法。

【公開番号】特開2008−7382(P2008−7382A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180993(P2006−180993)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000150110)株式会社竹中土木 (101)
【出願人】(000210654)竹本油脂株式会社 (138)
【Fターム(参考)】