コンクリート打継面の構造、この構造の施工方法、せん断耐力評価方法および設計方法
【課題】高いせん断剛性を確保することができるコンクリート打継面の構造、この構造の施工方法、せん断耐力評価方法および設計方法を提供する。
【解決手段】既存コンクリート10とこれに打ち継がれる新設コンクリート12との間の打継面の構造100であって、既存コンクリート表面10aに設けられる逆錐形状の凹部14と、この凹部14を介して一端16aを既存コンクリート10に埋め込み、他端16bを新設コンクリート12に埋め込んだアンカー筋16とからなる。
【解決手段】既存コンクリート10とこれに打ち継がれる新設コンクリート12との間の打継面の構造100であって、既存コンクリート表面10aに設けられる逆錐形状の凹部14と、この凹部14を介して一端16aを既存コンクリート10に埋め込み、他端16bを新設コンクリート12に埋め込んだアンカー筋16とからなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存コンクリートとこれに打ち継がれる新設コンクリートの間のコンクリート打継面の構造、この構造の施工方法、せん断耐力評価方法および設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耐震改修工事等において、既存コンクリートとこれに打ち継がれる後打ちの新設コンクリートの一体性を確保するために、新設コンクリートの打設前に打継面処理をすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。一般的な打継面処理としては、図12に示すように、あと施工アンカー筋等1を既存コンクリート2に埋設施工することが挙げられる。打継面のせん断剛性やせん断耐力は、アンカー筋のダボ効果や摩擦力等によって発揮される。
【0003】
また、この他の打継面の構造として、図13に示すように、打設直後のコンクリート2の表面に図示しない空気袋等によって凹部3を形成して、この凹部3の底部から突出部材4を突出させる構造が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。また、図14に示すように、既存コンクリート2の表面に設けた凹部5に、環状凸部6を有する定着部材7やアンカーボルト8を配置した構造が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−263956号公報
【特許文献2】特開平7−180352号公報
【特許文献3】特開平7−180353号公報
【特許文献4】特開2010−59717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の図12等の従来の打継面において、一旦せん断すべりが発生すると、あと施工アンカー筋等のダボ効果によってこのすべりはある程度抑制されるものの、見かけのせん断剛性が確保しにくいという構造上の問題があった。この見かけのせん断剛性はすべり量で規定されるが、打継面の固着力(付着力)については制御が難しいことから設計的には考慮しないのが通常であり、この見かけのせん断剛性の定量的評価が難しいという側面もあった。
【0006】
また、コンクリート間の一体性を確保するために、既存コンクリートの打継面をチッピング等により目荒らしするのが一般的であるが、このチッピング等の衝撃により既存コンクリートにひび割れが発生して強度低下を起こしたり、施工中に固体振動音や騒音が発生するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高いせん断剛性を確保することができるコンクリート打継面の構造、この構造の施工方法、せん断耐力評価方法および設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係るコンクリート打継面の構造は、既存コンクリートとこれに打ち継がれる新設コンクリートとの間の打継面の構造であって、既存コンクリート表面に設けた逆錐形状の凹部と、この凹部を介して一端を既存コンクリートに埋め込み、他端を新設コンクリートに埋め込んだアンカー筋とからなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係るコンクリート打継面の構造の施工方法は、上述した請求項1に記載のコンクリート打継面の構造を施工する方法であって、先端に穿孔用の切削刃を有するとともに外周に円錐台形状の切削刃を有するドリルで既存コンクリート表面を穿孔することにより、アンカー筋を埋め込むための孔と逆錐形状の凹部とを同時に形成することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係るコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法は、上述した請求項1に記載のコンクリート打継面の構造のせん断耐力を評価する方法であって、打継面の構造が新設コンクリート側に想定した想定破壊面でせん断破壊すると仮定した場合のせん断耐力を、新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さに応じて求める第一ステップと、打継面の構造が支圧破壊すると仮定した場合のせん断耐力を、打継面における力の釣り合い式に基づいて最小二乗法で求める第二ステップとを有し、第一ステップおよび第二ステップにより求められたせん断耐力のうちいずれか小さい方のせん断耐力を求めることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に係るコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法は、上述した請求項1に記載のコンクリート打継面の構造のせん断耐力を評価する方法であって、以下の関係式によりせん断耐力を求めることを特徴とする。
Qu/Qst=β1・[β2+β3・Q+β4・Q2]
ただし、Q=γ1+γ2・σB’+γ3・d0’+γ4・dp’+γ5・α
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
β1〜β4:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
γ1〜γ5:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
Qst:凹部の影響を無視したせん断耐力
Qu:せん断耐力
【0012】
また、本発明の請求項5に係るコンクリート打継面の構造の設計方法は、上述した請求項1に記載のコンクリート打継面の構造を設計する方法であって、打継面の構造のせん断耐力を請求項3または4に記載の方法により求め、この求めたせん断耐力に基づいて新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さを設計することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6に係るコンクリート打継面の構造の設計方法は、上述した請求項1に記載のコンクリート打継面の構造を設計する方法であって、以下の関係式により新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さおよび径、凹部の寸法、新設コンクリートの強度を設計することを特徴とする。
hst’=δ1・[δ2+δ3・σB’+δ4・d0’+δ5・dp’+δ6・α]
ただし、hst’:新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さと径の比
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
δ1〜δ6:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るコンクリート打継面の構造によれば、既存コンクリートとこれに打ち継がれる新設コンクリートとの間の打継面の構造であって、既存コンクリート表面に設けた逆錐形状の凹部と、この凹部を介して一端を既存コンクリートに埋め込み、他端を新設コンクリートに埋め込んだアンカー筋とからなるので、凹部への新設コンクリートの打設を確実に行える上に、打継面のせん断力を効率的に伝達でき、高いせん断剛性を確保することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係るコンクリート打継面の構造の施工方法によれば、先端に穿孔用の切削刃を有するとともに外周に円錐台形状の切削刃を有するドリルで既存コンクリート表面を穿孔することにより、アンカー筋を埋め込むための孔と逆錐形状の凹部とを同時に形成するので、少ない工程で簡単に穿孔作業を行えるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係るコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法によれば、打継面の構造が新設コンクリート側に想定した想定破壊面でせん断破壊すると仮定した場合のせん断耐力を、新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さに応じて求める第一ステップと、打継面の構造が支圧破壊すると仮定した場合のせん断耐力を、打継面における力の釣り合い式に基づいて最小二乗法で求める第二ステップとを有し、第一ステップおよび第二ステップにより求められたせん断耐力のうちいずれか小さい方のせん断耐力を求めるので、この打継面の構造のせん断耐力を評価することができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る他のコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法によれば、以下の関係式によりせん断耐力を求める。
Qu/Qst=β1・[β2+β3・Q+β4・Q2]
ただし、Q=γ1+γ2・σB’+γ3・d0’+γ4・dp’+γ5・α
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
β1〜β4:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
γ1〜γ5:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
Qst:凹部の影響を無視したせん断耐力
Qu:せん断耐力
この関係式を利用することで、打継面の構造のせん断耐力を簡便かつ迅速に得ることができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係るコンクリート打継面の構造の設計方法によれば、打継面の構造のせん断耐力を請求項3または4に記載の方法により求め、この求めたせん断耐力に基づいて新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さを設計するので、この打継面の構造のアンカー筋の長さを設計することができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係る他のコンクリート打継面の構造の設計方法によれば、以下の関係式により新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さおよび径、凹部の寸法、新設コンクリートの強度を設計する。
hst’=δ1・[δ2+δ3・σB’+δ4・d0’+δ5・dp’+δ6・α]
ただし、hst’:新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さと径の比
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
δ1〜δ6:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
この関係式を利用することで、打継面の構造諸元を簡便かつ迅速に設計することができるという効果を奏する。また、この関係式に様々な値を代入することで複数の設計案を比較検討することもできる。このため、打継面の構造諸元の最適化設計を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明に係るコンクリート打継面の構造の実施例を示す側断面図である。
【図2】図2は、本発明に係るコンクリート打継面の構造の実施例を示す平断面図である。
【図3】図3は、打継面における作用力の状態を示す図である。
【図4】図4は、本発明に係るコンクリート打継面の構造の施工方法の実施例を示す図である。
【図5】図5は、打継面における作用反力および寸法を示す図である。
【図6】図6は、凹部(シアコッタ)内の支圧応力作用領域を示す図である。
【図7】図7は、せん断耐力とアンカー筋の埋め込み長さの関係図(ケース1)である。
【図8】図8は、せん断耐力とアンカー筋の埋め込み長さの関係図(ケース2)である。
【図9】図9は、せん断耐力とアンカー筋の埋め込み長さの関係図(ケース3)である。
【図10】図10は、せん断耐力とアンカー筋の埋め込み長さの関係図(ケース4)である。
【図11】図11は、アンカー筋の埋め込み長さおよびせん断耐力の評価式の精度を検証した図である。
【図12】図12は、従来のコンクリート打継面の構造を例示する断面図である。
【図13】図13は、従来のコンクリート打継面の構造を例示する断面図である。
【図14】図14は、従来のコンクリート打継面の構造を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係るコンクリート打継面の構造、この構造の施工方法、せん断耐力評価方法および設計方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
[コンクリート打継面の構造]
まず、本発明に係るコンクリート打継面の構造の実施の形態について図1〜図3を参照しながら説明する。
【0023】
図1および図2に示すように、本発明に係るコンクリート打継面の構造100は、既存コンクリート10とこれに打ち継がれる新設コンクリート12との間の打継面の構造であって、既存コンクリート表面10a(以下、打継面ということがある。)に設けた逆錐形状の凹部14と、この凹部14を介して下端16aを既存コンクリート10に埋め込み、上端16bを新設コンクリート12に埋め込んだあと施工アンカー筋16とからなる。
【0024】
凹部14は、底面14aとテーパー面14bとを有しており、底面14aに穿孔した孔にアンカー筋16が埋め込まれる。テーパー面14bのテーパー角度αは、30〜60°程度の傾斜角とすることができる。このように、シアキーとなる凹部14を逆錐形状に形成することで、後打ちの新設コンクリートの材料が充填され易くなり、その打設を確実に行うことができ、また、打継面のせん断伝達を効率的に行うことができる。
【0025】
アンカー筋16の上端16b側には、ナット18のような定着金物を装着することができる。この定着金物の装着位置は、打継面10aよりも高い位置(新設コンクリート12側)にする。こうすることで、図3に示すように、打継面10aに作用するせん断力による支圧力Pの鉛直成分Pvをアンカー筋16に負担させ易くする。
【0026】
この打継面の構造100においては、凹部14とアンカー筋16とによってせん断すべりがほとんど発生しないことから、打継面10aにおけるせん断剛性(初期剛性)は、母材(コンクリート)のせん断剛性とほぼ同程度となる。
【0027】
このように、本発明のコンクリート打継面の構造100によれば、凹部14への新設コンクリートの打設を確実に行える上に、打継面10aのせん断力を効率的に伝達でき、高いせん断剛性を確保することができる。
【0028】
なお、この打継面10aにおけるせん断耐力は、後打ちの新設コンクリート12が凹部14に入り込んで形成されるコーン状のシアキーの支配面積、深さ、アンカー筋16の引抜耐力等によって、従来の設計方法で評価することが可能である。
【0029】
[施工方法]
次に、本発明に係るコンクリート打継面の構造の施工方法の実施の形態について図4を参照しながら説明する。
【0030】
図4(a)、(b)に示すように、本発明のコンクリート打継面の構造の施工方法は、先端に穿孔用の切削刃20aを有するとともに外周に円錐台形状の切削刃20bを有するドリル20で既存コンクリート表面10aを穿孔する。これにより、図4(c)に示すように、既存コンクリート10に、アンカー筋を埋め込むための孔22と逆錐形状の凹部14とを同時に形成する。なお、既存コンクリート表面10a(打継面)においては、目荒らし等の面処理を行う必要はない。
【0031】
続いて、この孔22にアンカー筋を挿入配置し、このアンカー筋と既存コンクリート10との間の隙間に接着剤を充填する。なお、アンカー筋の上端側にはナット等の定着金物を装着しておく。最後に、既設コンクリート表面10a上に新設コンクリート12を打設する。以上の施工手順により、図1に示すような打継面の構造100が得られる。
【0032】
このため、本発明の施工方法によれば、円錐台形状の切削刃20bを有するドリル20を用いて逆錐形状の凹部14を形成することができるので、凹部14を単独で形成するといった余計な工程が生じない。したがって、少ない工程で簡単に穿孔作業を行える。
【0033】
なお、このように凹部14と孔22を同時穿孔する代わりに、孔22の穿孔を先行実施して、凹部14の穿孔については、この孔22の穿孔完了後に別途実施するようにしても構わない。
【0034】
上記のコンクリート打継面の構造および施工方法の実施の形態においては、打継面10aが水平面である場合について説明したが、水平面のほか、既存コンクリート10と新設コンクリート12との境界面であれば鉛直面であってもよいし、水平に対して傾斜した面であっても構わない。
【0035】
[せん断耐力評価方法]
次に、本発明に係るコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法の実施の形態について説明する。
【0036】
本発明のコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法は、第一ステップと第二ステップとからなる。
第一ステップは、打継面の構造が新設コンクリート側に想定した想定破壊面でせん断破壊すると仮定した場合のせん断耐力Qu(後述のqu1)を、新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さhstに応じて求めるものである。
【0037】
第二ステップは、打継面の構造が支圧破壊すると仮定した場合のせん断耐力Qu(後述のqu2)を、打継面における力の釣り合い式に基づいて最小二乗法で求めるものである。
【0038】
そして、第一ステップおよび第二ステップで求めたせん断耐力qu1、qu2のうちいずれか小さい方のせん断耐力を求める。これにより、この打継面の構造のせん断耐力を評価することができる。
【0039】
以下に、このせん断耐力評価方法の手順について、図5および図6を参照しながらより具体的に説明する。
図5は、打継面における作用反力および寸法を示した図であり、図6は、凹部(シアコッタ)内の支圧応力作用領域を示した図である。
【0040】
図5中の寸法等を表す記号については、それぞれ以下を示している。
d0:凹部の底面の直径
dp:凹部の深さ
de:Rbの作用位置(アンカー筋中心からの水平距離)
【0041】
hst:アンカーの突出長(新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さ)
dst:アンカー筋の径
Qu:せん断伝達力(Min(qu1,qu2))
qu1:想定破壊面で破壊する場合のせん断耐力
qu2:支圧破壊する場合の耐力
Min(d0/2,hst/2):Raの作用位置(アンカー筋中心からの水平距離)
e:Quの作用位置(想定破壊面からの鉛直距離)
【0042】
本実施例では、このせん断耐力評価にあたり、以下のような仮定を行っている。
すなわち、摩擦はテーパー面のみに考慮し、新設コンクリートの破壊等による耐力qu1は想定破壊面の耐力を累加するものとする。支圧等による耐力qu2は力の釣り合いの式に基づき最小二乗法で求める。また、剛性については、高耐力となるものにおいて高剛性が確保できるものと仮定する。
【0043】
(鉛直方向の力の釣り合い)
図5および図6において、鉛直方向の力の釣り合い式は次式(1)のようになる。
−T+Ra+Rb・cosα−Sb・sinα=0 ・・・(1)
ここに、T:凹部の底面に作用する支圧力
Ra:凹部の底面の反力
Rb:テーパ面の支圧反力
Sb:テーパ面の摩擦力
α:テーパー角度
【0044】
(モーメントの釣り合い)
また、モーメントの釣り合い式は次式(2)のようになる。
−qs・(e+dp)+Ra・Min(d0/2,hst/2)
+Rb・{de・cosα−(e+dp/2)・sinα}
−Sb・{de・sinα+(e+dp/2)・cosα}=0 ・・・(2)
ここに、qsはせん断力である。
また、Minは、引数のいずれか小さい方の値をとる演算子である。例えば、Min(x,y)はx、yのいずれか小さい方の値をとる。
【0045】
(各構成式と強度との関係式)
上記の式(1)および式(2)により、以下の式(3)〜式(5)が得られる。
T=Ra+Rb・cosα−Sb・sinα≦Ast・σy
≡(π・dst2/4)・σy ・・・(3)
【0046】
qs={Min(d0/2,hst/2)/(e+dp)}・Ra
+[{de・cosα−(e+dp/2)・sinα}/(e+dp)]・Rb
−[{de・sinα+(e+dp/2)・cosα}/(e+dp)]・Sb
≦0.5Ast・√(σB・Ec)
≡0.5(π・dst2/4)・√(σB・Ec) ・・・(4)
ここで、上記の式(4)の不等号の右辺0.5Ast・√(σB・Ec)は、凹部の影響を無視したせん断耐力(後述のQst)である。
【0047】
Sb≦μ・Rb+S0, Rb≦αp・σB・S ・・・(5)
ただし、μ:摩擦係数(=0.4)
αp:支圧強度係数(=2.0)
S:凹部(シアコッタ)支圧有効面積
S0:付着力
Ast:アンカー筋の断面積
σy:アンカー筋引張降伏強度
σB:既存コンクリートの圧縮強度
Ec:既存コンクリートの弾性係数
また、 S=(π/4)・dp・(d0+dp・tanα)/cosα ,
de=(8/3π)・(d0/2+dp・tanα)
【0048】
(せん断伝達耐力評価式)
せん断伝達耐力Quを評価する式は、次式(6)のようになる。
Qu=Min(qu1,qu2) ・・・(6)
ここで、qu1については、アンカー筋の埋め込み長さhstの値で場合分けして算定する。
(i)hst≦dpの場合
qu1=Ac・τc
【0049】
(ii)dp<hst≦dp+4・dpの場合
qu1=Ac・τc+{0.5(π・dst2/4)・√(σB・Ec)}
・{(hst−dp)/(4・dst)}
【0050】
(iii)hst>dp+4・dpの場合
qu1=Ac・τc+0.5Ast・√(σB・Ec)
ただし、Ac=(π/4)・(d0+2・dp・tanα)2
Ac:想定破壊面における断面積
τc:新設コンクリートのせん断強度
【0051】
また、qu2=qs+Rb・sinα+Sb・cosα
【0052】
(支圧等によるせん断耐力評価方法)
次に、上記の式(3)〜(5)の条件より、次式(7)で表す目的関数Gの各要素が0以下となるように反力ベクトルRを最小二乗法により求める。
G(R)=B・R−f ・・・(7)
ここで、
B=(B1 B2 B3)
R=(Ra Rb Sb)T
f=(Ast・σy 0.5Ast・√(σB・Ec) S0 αp・σB・S)T
【0053】
上記の行列要素B1、B2、B3については、以下に示すとおりである。
B1=(1 qs1 0 0)T
B2=(cosα qs2 −μ 1)T
B3=(−sinα qs3 0 0)T
ただし、
qs1=Min(d0/2,hst/2)/(e+dp)
qs2={de・cosα−(e+dp/2)・sinα}/(e+dp)
qs3=−[{de・sinα+(e+dp/2)・cosα}/(e+dp)]
【0054】
上記の式(7)より、次式(8)で示される残差の二乗総和Δを最小とする最適ベクトルRoptを求め、各条件を満足する解を最終解Ransとする。
Δ=G(R)T・G(R)=[B・R−f]T・[B・R−f] ・・・(8)
∴ Ropt=[BTB]−1BT・f ・・・(9)
上記の式(9)によって得られる最終解Ransに基づいて、式(3)および式(4)より、T、qsを求めることができる。これにより、アンカー筋の埋め込み長さhstおよびテーパー角度αに応じてせん断耐力qu1、qu2、Quを算定することができる。
【0055】
図7〜図10に、上記の演算で求めたせん断耐力とアンカー筋の埋め込み長さの関係図を例示する。これらの図はいずれも、e=10mm、d0=100mm、dp=10mm、dst=φ19mm、σy=235N/mm2として計算を行ったものであり、既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比は各図で変えている。また、各図においては、αが30°、45°、60°の場合を示しており、実線付のプロットはqu1を、破線付のプロットはqu2を示している。Quはqu1とqu2のいずれか小さいほうの値をとる。また併せて凹部の影響を無視したせん断耐力として0.5Ast・√min(σB・Ec)を破線で示してある。
【0056】
ここで、図7のケース1は、既存コンクリート圧縮強度13.5N/mm2、新設コンクリート圧縮強度24N/mm2の場合である。
図8のケース2は、既存コンクリート圧縮強度13.5N/mm2、新設コンクリート圧縮強度30N/mm2の場合である。
図9のケース3は、既存コンクリート圧縮強度13.5N/mm2、新設コンクリート圧縮強度36N/mm2の場合である。
図10のケース4は、既存コンクリート圧縮強度30N/mm2、新設コンクリート圧縮強度30N/mm2の場合である。
【0057】
また、本発明のコンクリート打継面の構造100のせん断耐力は、上記の実施の形態によるほか、以下の関係式(10)によっても求めることができる。この関係式(10)に、凹部の寸法、アンカー筋の径、コンクリートの強度等を入力すれば、コンクリート打継面の構造100のせん断耐力Quを簡便かつ迅速に得ることができる。
Qu/Qst=β1・[β2+β3・Q+β4・Q2] ・・・(10)
ただし、Q=γ1+γ2・σB’+γ3・d0’+γ4・dp’+γ5・α
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
β1〜β4:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
γ1〜γ5:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
Qst:凹部の影響を無視したせん断耐力
Qu:せん断耐力
【0058】
ここで、σB’=σB0/σB1
(ただし、σB0:既存コンクリート強度、σB1:新設コンクリート強度)
d0’=d0/dst
dp’=dp/dst
Qstの値としては、Qst=0.5(π・dst2/4)・√(σB・Ecを用いることができる。
【0059】
また、σy=295N/mm2、e=10mmの条件で計算する場合には、係数β1〜β4、γ1〜γ5は、β1=0.9、β2=1.74、β3=−1.54、β4=0.89、γ1=1.33、γ2=−0.31、γ3=0.08、γ4=0.60、γ5=−0.009の値を用いることができる。
【0060】
この場合、せん断強度を高めるためには、(1)σB1を大きくすること、(2)dpを大きくすること、(3)d0を大きくすること、(4)αを小さくすることがこの順序で効果的である。
【0061】
なお、上記の関係式(10)は、図11に示すプロットの近似式(図中の破線の式Y=0.9・X)として得たものである(相関係数R2=0.892)。各プロットは上記の式(1)〜式(9)の算出過程に基づき以下の条件のもと求めている。このことから、β1〜β4、γ1〜γ5については、上記の数値のほか、計算条件によって異なる近似式が得られた場合にはその係数値を用いることができる。
【0062】
(プロットの計算条件)
σB0:13.5、18、21N/mm2
σB1:24、30、36N/mm2
d0:φ75、φ100、φ125mm
dp:5、10、20mm
dst:φ19、φ22mm
α:75、45、30°
【0063】
[設計方法]
次に、本発明に係るコンクリート打継面の構造の設計方法の実施の形態について説明する。
【0064】
本発明のコンクリート打継面の構造の設計方法は、打継面の構造のせん断耐力を上記のせん断耐力評価方法により求め、この求めたせん断耐力に基づいて新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さを設計するものである。
【0065】
この設計方法は、コンピュータによる設計装置として実現することも可能である。すなわち、この設計装置を、せん断耐力評価手段と設計手段とにより構成する。これら各手段はコンピュータを利用して演算処理を行う。せん断耐力評価手段は、打継面の構造のせん断耐力を上記のせん断耐力評価方法により求める処理を行う。設計手段は、このせん断耐力評価手段で求めたせん断耐力に基づいて新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さを設計する処理を行う。
【0066】
この設計装置によれば、打継面の構造諸元(凹部の寸法、アンカー筋の径等)を入力して、新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さなどの他の構造諸元を求めることができる。
【0067】
例えば、せん断耐力評価手段が図7のような関係図を作成し、設計手段がこの図から0.5Ast・√min(σB・Ec)を超える最小のアンカー筋の埋め込み長さhstを読み取るようにしてもよい。この図7においては、α=30°の場合、hst=45mm程度以上に設計すればよいことが判る。
【0068】
また、本発明のコンクリート打継面の構造100の設計方法においては、上記の実施の形態によるほか、以下の関係式(11)によっても、新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さおよび径、凹部の寸法、新設コンクリートの強度を設計することができる。
hst’=δ1・[δ2+δ3・σB’+δ4・d0’+δ5・dp’+δ6・α]
・・・(11)
ただし、hst’:新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さと径の比
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
δ1〜δ6:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
【0069】
ここで、hst’=hst/dst
σB’=σB0/σB1
(ただし、σB0:既存コンクリート強度、σB1:新設コンクリート強度)
d0’=d0/dst
dp’=dp/dst
【0070】
また、σy=295N/mm2、e=10mmの条件で計算する場合には、係数δ1〜δ6については、δ1=1.1、δ2=1.42、δ3=2.77、δ4=−0.24、δ5=0.46、δ6=0.009の値を用いることができる。
【0071】
この場合、アンカー筋の埋め込み長さを短くするには、(1)σB1を大きくすること、(2)dpを小さくすること、(3)d0を大きくすること、(4)αを小さくすることがこの順序で効果的である。
【0072】
なお、上記の関係式(11)は、図11に示すプロットの近似式(図中の実線の式Y=1.1・X)として得たものである(相関係数R2=0.936)。各プロットは上記の式(1)〜式(9)の算出過程に基づき上述の条件のもと求めている。このことから、δ1〜δ6については、上記の数値のほか、計算条件によって異なる近似式が得られた場合にはその係数値を用いることができる。
【0073】
上記の関係式(11)を利用することで、打継面の構造諸元を簡便かつ迅速に設計することができる。また、この関係式に様々な値を代入することで複数の設計案を比較検討することもできる。このため、打継面の構造諸元の最適化設計を容易に行うことができる。
【0074】
以上説明したように、本発明に係るコンクリート打継面の構造によれば、既存コンクリートとこれに打ち継がれる新設コンクリートとの間の打継面の構造であって、既存コンクリート表面に設けた逆錐形状の凹部と、この凹部を介して一端を既存コンクリートに埋め込み、他端を新設コンクリートに埋め込んだアンカー筋とからなるので、凹部への新設コンクリートの打設を確実に行える上に、打継面のせん断力を効率的に伝達でき、高いせん断剛性を確保することができる。
【0075】
また、本発明に係るコンクリート打継面の構造の施工方法によれば、先端に穿孔用の切削刃を有するとともに外周に円錐台形状の切削刃を有するドリルで既存コンクリート表面を穿孔することにより、アンカー筋を埋め込むための孔と逆錐形状の凹部とを同時に形成するので、少ない工程で簡単に穿孔作業を行える。
【0076】
また、本発明に係るコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法によれば、打継面の構造が新設コンクリート側に想定した想定破壊面でせん断破壊すると仮定した場合のせん断耐力を、新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さに応じて求める第一ステップと、打継面の構造が支圧破壊すると仮定した場合のせん断耐力を、打継面における力の釣り合い式に基づいて最小二乗法で求める第二ステップとを有し、第一ステップおよび第二ステップにより求められたせん断耐力のうちいずれか小さい方のせん断耐力を求めるので、この打継面の構造のせん断耐力を評価することができる。
【0077】
また、本発明に係る他のコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法によれば、以下の関係式によりせん断耐力を求める。
Qu/Qst=β1・[β2+β3・Q+β4・Q2]
ただし、Q=γ1+γ2・σB’+γ3・d0’+γ4・dp’+γ5・α
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
β1〜β4:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
γ1〜γ5:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
Qst:凹部の影響を無視したせん断耐力
Qu:せん断耐力
この関係式を利用することで、打継面の構造のせん断耐力を簡便かつ迅速に得ることができる。
【0078】
また、本発明に係るコンクリート打継面の構造の設計方法によれば、打継面の構造のせん断耐力を請求項3または4に記載の方法により求め、この求めたせん断耐力に基づいて新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さを設計するので、この打継面の構造のアンカー筋の長さを設計することができる。
【0079】
また、本発明に係る他のコンクリート打継面の構造の設計方法によれば、以下の関係式により新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さおよび径、凹部の寸法、新設コンクリートの強度を設計する。
hst’=δ1・[δ2+δ3・σB’+δ4・d0’+δ5・dp’+δ6・α]
ただし、hst’:新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さと径の比
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
δ1〜δ6:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
この関係式を利用することで、打継面の構造諸元を簡便かつ迅速に設計することができる。また、この関係式に様々な値を代入することで複数の設計案を比較検討することもできる。このため、打継面の構造諸元の最適化設計を容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明に係るコンクリート打継面の構造、この構造の施工方法、せん断耐力評価方法および設計方法は、耐震改修工事等において、既存コンクリートと後打ちの新設コンクリートの一体性を確保するのに有用であり、特に、高いせん断剛性を確保するのに適している。
【符号の説明】
【0081】
10 既存コンクリート
12 新設コンクリート
14 凹部
14a 底面
14b テーパー面
16 アンカー筋
16a 下端(一端)
16b 上端(他端)
18 ナット
20 ドリル
20a 穿孔用の切削刃
20b 円錐台形状の切削刃
22 孔
α テーパー角度
10a 打継面(既存コンクリート表面)
100 コンクリート打継面の構造
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存コンクリートとこれに打ち継がれる新設コンクリートの間のコンクリート打継面の構造、この構造の施工方法、せん断耐力評価方法および設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耐震改修工事等において、既存コンクリートとこれに打ち継がれる後打ちの新設コンクリートの一体性を確保するために、新設コンクリートの打設前に打継面処理をすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。一般的な打継面処理としては、図12に示すように、あと施工アンカー筋等1を既存コンクリート2に埋設施工することが挙げられる。打継面のせん断剛性やせん断耐力は、アンカー筋のダボ効果や摩擦力等によって発揮される。
【0003】
また、この他の打継面の構造として、図13に示すように、打設直後のコンクリート2の表面に図示しない空気袋等によって凹部3を形成して、この凹部3の底部から突出部材4を突出させる構造が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。また、図14に示すように、既存コンクリート2の表面に設けた凹部5に、環状凸部6を有する定着部材7やアンカーボルト8を配置した構造が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−263956号公報
【特許文献2】特開平7−180352号公報
【特許文献3】特開平7−180353号公報
【特許文献4】特開2010−59717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の図12等の従来の打継面において、一旦せん断すべりが発生すると、あと施工アンカー筋等のダボ効果によってこのすべりはある程度抑制されるものの、見かけのせん断剛性が確保しにくいという構造上の問題があった。この見かけのせん断剛性はすべり量で規定されるが、打継面の固着力(付着力)については制御が難しいことから設計的には考慮しないのが通常であり、この見かけのせん断剛性の定量的評価が難しいという側面もあった。
【0006】
また、コンクリート間の一体性を確保するために、既存コンクリートの打継面をチッピング等により目荒らしするのが一般的であるが、このチッピング等の衝撃により既存コンクリートにひび割れが発生して強度低下を起こしたり、施工中に固体振動音や騒音が発生するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高いせん断剛性を確保することができるコンクリート打継面の構造、この構造の施工方法、せん断耐力評価方法および設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係るコンクリート打継面の構造は、既存コンクリートとこれに打ち継がれる新設コンクリートとの間の打継面の構造であって、既存コンクリート表面に設けた逆錐形状の凹部と、この凹部を介して一端を既存コンクリートに埋め込み、他端を新設コンクリートに埋め込んだアンカー筋とからなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係るコンクリート打継面の構造の施工方法は、上述した請求項1に記載のコンクリート打継面の構造を施工する方法であって、先端に穿孔用の切削刃を有するとともに外周に円錐台形状の切削刃を有するドリルで既存コンクリート表面を穿孔することにより、アンカー筋を埋め込むための孔と逆錐形状の凹部とを同時に形成することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係るコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法は、上述した請求項1に記載のコンクリート打継面の構造のせん断耐力を評価する方法であって、打継面の構造が新設コンクリート側に想定した想定破壊面でせん断破壊すると仮定した場合のせん断耐力を、新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さに応じて求める第一ステップと、打継面の構造が支圧破壊すると仮定した場合のせん断耐力を、打継面における力の釣り合い式に基づいて最小二乗法で求める第二ステップとを有し、第一ステップおよび第二ステップにより求められたせん断耐力のうちいずれか小さい方のせん断耐力を求めることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に係るコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法は、上述した請求項1に記載のコンクリート打継面の構造のせん断耐力を評価する方法であって、以下の関係式によりせん断耐力を求めることを特徴とする。
Qu/Qst=β1・[β2+β3・Q+β4・Q2]
ただし、Q=γ1+γ2・σB’+γ3・d0’+γ4・dp’+γ5・α
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
β1〜β4:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
γ1〜γ5:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
Qst:凹部の影響を無視したせん断耐力
Qu:せん断耐力
【0012】
また、本発明の請求項5に係るコンクリート打継面の構造の設計方法は、上述した請求項1に記載のコンクリート打継面の構造を設計する方法であって、打継面の構造のせん断耐力を請求項3または4に記載の方法により求め、この求めたせん断耐力に基づいて新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さを設計することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6に係るコンクリート打継面の構造の設計方法は、上述した請求項1に記載のコンクリート打継面の構造を設計する方法であって、以下の関係式により新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さおよび径、凹部の寸法、新設コンクリートの強度を設計することを特徴とする。
hst’=δ1・[δ2+δ3・σB’+δ4・d0’+δ5・dp’+δ6・α]
ただし、hst’:新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さと径の比
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
δ1〜δ6:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るコンクリート打継面の構造によれば、既存コンクリートとこれに打ち継がれる新設コンクリートとの間の打継面の構造であって、既存コンクリート表面に設けた逆錐形状の凹部と、この凹部を介して一端を既存コンクリートに埋め込み、他端を新設コンクリートに埋め込んだアンカー筋とからなるので、凹部への新設コンクリートの打設を確実に行える上に、打継面のせん断力を効率的に伝達でき、高いせん断剛性を確保することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係るコンクリート打継面の構造の施工方法によれば、先端に穿孔用の切削刃を有するとともに外周に円錐台形状の切削刃を有するドリルで既存コンクリート表面を穿孔することにより、アンカー筋を埋め込むための孔と逆錐形状の凹部とを同時に形成するので、少ない工程で簡単に穿孔作業を行えるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係るコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法によれば、打継面の構造が新設コンクリート側に想定した想定破壊面でせん断破壊すると仮定した場合のせん断耐力を、新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さに応じて求める第一ステップと、打継面の構造が支圧破壊すると仮定した場合のせん断耐力を、打継面における力の釣り合い式に基づいて最小二乗法で求める第二ステップとを有し、第一ステップおよび第二ステップにより求められたせん断耐力のうちいずれか小さい方のせん断耐力を求めるので、この打継面の構造のせん断耐力を評価することができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る他のコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法によれば、以下の関係式によりせん断耐力を求める。
Qu/Qst=β1・[β2+β3・Q+β4・Q2]
ただし、Q=γ1+γ2・σB’+γ3・d0’+γ4・dp’+γ5・α
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
β1〜β4:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
γ1〜γ5:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
Qst:凹部の影響を無視したせん断耐力
Qu:せん断耐力
この関係式を利用することで、打継面の構造のせん断耐力を簡便かつ迅速に得ることができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係るコンクリート打継面の構造の設計方法によれば、打継面の構造のせん断耐力を請求項3または4に記載の方法により求め、この求めたせん断耐力に基づいて新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さを設計するので、この打継面の構造のアンカー筋の長さを設計することができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係る他のコンクリート打継面の構造の設計方法によれば、以下の関係式により新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さおよび径、凹部の寸法、新設コンクリートの強度を設計する。
hst’=δ1・[δ2+δ3・σB’+δ4・d0’+δ5・dp’+δ6・α]
ただし、hst’:新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さと径の比
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
δ1〜δ6:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
この関係式を利用することで、打継面の構造諸元を簡便かつ迅速に設計することができるという効果を奏する。また、この関係式に様々な値を代入することで複数の設計案を比較検討することもできる。このため、打継面の構造諸元の最適化設計を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明に係るコンクリート打継面の構造の実施例を示す側断面図である。
【図2】図2は、本発明に係るコンクリート打継面の構造の実施例を示す平断面図である。
【図3】図3は、打継面における作用力の状態を示す図である。
【図4】図4は、本発明に係るコンクリート打継面の構造の施工方法の実施例を示す図である。
【図5】図5は、打継面における作用反力および寸法を示す図である。
【図6】図6は、凹部(シアコッタ)内の支圧応力作用領域を示す図である。
【図7】図7は、せん断耐力とアンカー筋の埋め込み長さの関係図(ケース1)である。
【図8】図8は、せん断耐力とアンカー筋の埋め込み長さの関係図(ケース2)である。
【図9】図9は、せん断耐力とアンカー筋の埋め込み長さの関係図(ケース3)である。
【図10】図10は、せん断耐力とアンカー筋の埋め込み長さの関係図(ケース4)である。
【図11】図11は、アンカー筋の埋め込み長さおよびせん断耐力の評価式の精度を検証した図である。
【図12】図12は、従来のコンクリート打継面の構造を例示する断面図である。
【図13】図13は、従来のコンクリート打継面の構造を例示する断面図である。
【図14】図14は、従来のコンクリート打継面の構造を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係るコンクリート打継面の構造、この構造の施工方法、せん断耐力評価方法および設計方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
[コンクリート打継面の構造]
まず、本発明に係るコンクリート打継面の構造の実施の形態について図1〜図3を参照しながら説明する。
【0023】
図1および図2に示すように、本発明に係るコンクリート打継面の構造100は、既存コンクリート10とこれに打ち継がれる新設コンクリート12との間の打継面の構造であって、既存コンクリート表面10a(以下、打継面ということがある。)に設けた逆錐形状の凹部14と、この凹部14を介して下端16aを既存コンクリート10に埋め込み、上端16bを新設コンクリート12に埋め込んだあと施工アンカー筋16とからなる。
【0024】
凹部14は、底面14aとテーパー面14bとを有しており、底面14aに穿孔した孔にアンカー筋16が埋め込まれる。テーパー面14bのテーパー角度αは、30〜60°程度の傾斜角とすることができる。このように、シアキーとなる凹部14を逆錐形状に形成することで、後打ちの新設コンクリートの材料が充填され易くなり、その打設を確実に行うことができ、また、打継面のせん断伝達を効率的に行うことができる。
【0025】
アンカー筋16の上端16b側には、ナット18のような定着金物を装着することができる。この定着金物の装着位置は、打継面10aよりも高い位置(新設コンクリート12側)にする。こうすることで、図3に示すように、打継面10aに作用するせん断力による支圧力Pの鉛直成分Pvをアンカー筋16に負担させ易くする。
【0026】
この打継面の構造100においては、凹部14とアンカー筋16とによってせん断すべりがほとんど発生しないことから、打継面10aにおけるせん断剛性(初期剛性)は、母材(コンクリート)のせん断剛性とほぼ同程度となる。
【0027】
このように、本発明のコンクリート打継面の構造100によれば、凹部14への新設コンクリートの打設を確実に行える上に、打継面10aのせん断力を効率的に伝達でき、高いせん断剛性を確保することができる。
【0028】
なお、この打継面10aにおけるせん断耐力は、後打ちの新設コンクリート12が凹部14に入り込んで形成されるコーン状のシアキーの支配面積、深さ、アンカー筋16の引抜耐力等によって、従来の設計方法で評価することが可能である。
【0029】
[施工方法]
次に、本発明に係るコンクリート打継面の構造の施工方法の実施の形態について図4を参照しながら説明する。
【0030】
図4(a)、(b)に示すように、本発明のコンクリート打継面の構造の施工方法は、先端に穿孔用の切削刃20aを有するとともに外周に円錐台形状の切削刃20bを有するドリル20で既存コンクリート表面10aを穿孔する。これにより、図4(c)に示すように、既存コンクリート10に、アンカー筋を埋め込むための孔22と逆錐形状の凹部14とを同時に形成する。なお、既存コンクリート表面10a(打継面)においては、目荒らし等の面処理を行う必要はない。
【0031】
続いて、この孔22にアンカー筋を挿入配置し、このアンカー筋と既存コンクリート10との間の隙間に接着剤を充填する。なお、アンカー筋の上端側にはナット等の定着金物を装着しておく。最後に、既設コンクリート表面10a上に新設コンクリート12を打設する。以上の施工手順により、図1に示すような打継面の構造100が得られる。
【0032】
このため、本発明の施工方法によれば、円錐台形状の切削刃20bを有するドリル20を用いて逆錐形状の凹部14を形成することができるので、凹部14を単独で形成するといった余計な工程が生じない。したがって、少ない工程で簡単に穿孔作業を行える。
【0033】
なお、このように凹部14と孔22を同時穿孔する代わりに、孔22の穿孔を先行実施して、凹部14の穿孔については、この孔22の穿孔完了後に別途実施するようにしても構わない。
【0034】
上記のコンクリート打継面の構造および施工方法の実施の形態においては、打継面10aが水平面である場合について説明したが、水平面のほか、既存コンクリート10と新設コンクリート12との境界面であれば鉛直面であってもよいし、水平に対して傾斜した面であっても構わない。
【0035】
[せん断耐力評価方法]
次に、本発明に係るコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法の実施の形態について説明する。
【0036】
本発明のコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法は、第一ステップと第二ステップとからなる。
第一ステップは、打継面の構造が新設コンクリート側に想定した想定破壊面でせん断破壊すると仮定した場合のせん断耐力Qu(後述のqu1)を、新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さhstに応じて求めるものである。
【0037】
第二ステップは、打継面の構造が支圧破壊すると仮定した場合のせん断耐力Qu(後述のqu2)を、打継面における力の釣り合い式に基づいて最小二乗法で求めるものである。
【0038】
そして、第一ステップおよび第二ステップで求めたせん断耐力qu1、qu2のうちいずれか小さい方のせん断耐力を求める。これにより、この打継面の構造のせん断耐力を評価することができる。
【0039】
以下に、このせん断耐力評価方法の手順について、図5および図6を参照しながらより具体的に説明する。
図5は、打継面における作用反力および寸法を示した図であり、図6は、凹部(シアコッタ)内の支圧応力作用領域を示した図である。
【0040】
図5中の寸法等を表す記号については、それぞれ以下を示している。
d0:凹部の底面の直径
dp:凹部の深さ
de:Rbの作用位置(アンカー筋中心からの水平距離)
【0041】
hst:アンカーの突出長(新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さ)
dst:アンカー筋の径
Qu:せん断伝達力(Min(qu1,qu2))
qu1:想定破壊面で破壊する場合のせん断耐力
qu2:支圧破壊する場合の耐力
Min(d0/2,hst/2):Raの作用位置(アンカー筋中心からの水平距離)
e:Quの作用位置(想定破壊面からの鉛直距離)
【0042】
本実施例では、このせん断耐力評価にあたり、以下のような仮定を行っている。
すなわち、摩擦はテーパー面のみに考慮し、新設コンクリートの破壊等による耐力qu1は想定破壊面の耐力を累加するものとする。支圧等による耐力qu2は力の釣り合いの式に基づき最小二乗法で求める。また、剛性については、高耐力となるものにおいて高剛性が確保できるものと仮定する。
【0043】
(鉛直方向の力の釣り合い)
図5および図6において、鉛直方向の力の釣り合い式は次式(1)のようになる。
−T+Ra+Rb・cosα−Sb・sinα=0 ・・・(1)
ここに、T:凹部の底面に作用する支圧力
Ra:凹部の底面の反力
Rb:テーパ面の支圧反力
Sb:テーパ面の摩擦力
α:テーパー角度
【0044】
(モーメントの釣り合い)
また、モーメントの釣り合い式は次式(2)のようになる。
−qs・(e+dp)+Ra・Min(d0/2,hst/2)
+Rb・{de・cosα−(e+dp/2)・sinα}
−Sb・{de・sinα+(e+dp/2)・cosα}=0 ・・・(2)
ここに、qsはせん断力である。
また、Minは、引数のいずれか小さい方の値をとる演算子である。例えば、Min(x,y)はx、yのいずれか小さい方の値をとる。
【0045】
(各構成式と強度との関係式)
上記の式(1)および式(2)により、以下の式(3)〜式(5)が得られる。
T=Ra+Rb・cosα−Sb・sinα≦Ast・σy
≡(π・dst2/4)・σy ・・・(3)
【0046】
qs={Min(d0/2,hst/2)/(e+dp)}・Ra
+[{de・cosα−(e+dp/2)・sinα}/(e+dp)]・Rb
−[{de・sinα+(e+dp/2)・cosα}/(e+dp)]・Sb
≦0.5Ast・√(σB・Ec)
≡0.5(π・dst2/4)・√(σB・Ec) ・・・(4)
ここで、上記の式(4)の不等号の右辺0.5Ast・√(σB・Ec)は、凹部の影響を無視したせん断耐力(後述のQst)である。
【0047】
Sb≦μ・Rb+S0, Rb≦αp・σB・S ・・・(5)
ただし、μ:摩擦係数(=0.4)
αp:支圧強度係数(=2.0)
S:凹部(シアコッタ)支圧有効面積
S0:付着力
Ast:アンカー筋の断面積
σy:アンカー筋引張降伏強度
σB:既存コンクリートの圧縮強度
Ec:既存コンクリートの弾性係数
また、 S=(π/4)・dp・(d0+dp・tanα)/cosα ,
de=(8/3π)・(d0/2+dp・tanα)
【0048】
(せん断伝達耐力評価式)
せん断伝達耐力Quを評価する式は、次式(6)のようになる。
Qu=Min(qu1,qu2) ・・・(6)
ここで、qu1については、アンカー筋の埋め込み長さhstの値で場合分けして算定する。
(i)hst≦dpの場合
qu1=Ac・τc
【0049】
(ii)dp<hst≦dp+4・dpの場合
qu1=Ac・τc+{0.5(π・dst2/4)・√(σB・Ec)}
・{(hst−dp)/(4・dst)}
【0050】
(iii)hst>dp+4・dpの場合
qu1=Ac・τc+0.5Ast・√(σB・Ec)
ただし、Ac=(π/4)・(d0+2・dp・tanα)2
Ac:想定破壊面における断面積
τc:新設コンクリートのせん断強度
【0051】
また、qu2=qs+Rb・sinα+Sb・cosα
【0052】
(支圧等によるせん断耐力評価方法)
次に、上記の式(3)〜(5)の条件より、次式(7)で表す目的関数Gの各要素が0以下となるように反力ベクトルRを最小二乗法により求める。
G(R)=B・R−f ・・・(7)
ここで、
B=(B1 B2 B3)
R=(Ra Rb Sb)T
f=(Ast・σy 0.5Ast・√(σB・Ec) S0 αp・σB・S)T
【0053】
上記の行列要素B1、B2、B3については、以下に示すとおりである。
B1=(1 qs1 0 0)T
B2=(cosα qs2 −μ 1)T
B3=(−sinα qs3 0 0)T
ただし、
qs1=Min(d0/2,hst/2)/(e+dp)
qs2={de・cosα−(e+dp/2)・sinα}/(e+dp)
qs3=−[{de・sinα+(e+dp/2)・cosα}/(e+dp)]
【0054】
上記の式(7)より、次式(8)で示される残差の二乗総和Δを最小とする最適ベクトルRoptを求め、各条件を満足する解を最終解Ransとする。
Δ=G(R)T・G(R)=[B・R−f]T・[B・R−f] ・・・(8)
∴ Ropt=[BTB]−1BT・f ・・・(9)
上記の式(9)によって得られる最終解Ransに基づいて、式(3)および式(4)より、T、qsを求めることができる。これにより、アンカー筋の埋め込み長さhstおよびテーパー角度αに応じてせん断耐力qu1、qu2、Quを算定することができる。
【0055】
図7〜図10に、上記の演算で求めたせん断耐力とアンカー筋の埋め込み長さの関係図を例示する。これらの図はいずれも、e=10mm、d0=100mm、dp=10mm、dst=φ19mm、σy=235N/mm2として計算を行ったものであり、既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比は各図で変えている。また、各図においては、αが30°、45°、60°の場合を示しており、実線付のプロットはqu1を、破線付のプロットはqu2を示している。Quはqu1とqu2のいずれか小さいほうの値をとる。また併せて凹部の影響を無視したせん断耐力として0.5Ast・√min(σB・Ec)を破線で示してある。
【0056】
ここで、図7のケース1は、既存コンクリート圧縮強度13.5N/mm2、新設コンクリート圧縮強度24N/mm2の場合である。
図8のケース2は、既存コンクリート圧縮強度13.5N/mm2、新設コンクリート圧縮強度30N/mm2の場合である。
図9のケース3は、既存コンクリート圧縮強度13.5N/mm2、新設コンクリート圧縮強度36N/mm2の場合である。
図10のケース4は、既存コンクリート圧縮強度30N/mm2、新設コンクリート圧縮強度30N/mm2の場合である。
【0057】
また、本発明のコンクリート打継面の構造100のせん断耐力は、上記の実施の形態によるほか、以下の関係式(10)によっても求めることができる。この関係式(10)に、凹部の寸法、アンカー筋の径、コンクリートの強度等を入力すれば、コンクリート打継面の構造100のせん断耐力Quを簡便かつ迅速に得ることができる。
Qu/Qst=β1・[β2+β3・Q+β4・Q2] ・・・(10)
ただし、Q=γ1+γ2・σB’+γ3・d0’+γ4・dp’+γ5・α
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
β1〜β4:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
γ1〜γ5:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
Qst:凹部の影響を無視したせん断耐力
Qu:せん断耐力
【0058】
ここで、σB’=σB0/σB1
(ただし、σB0:既存コンクリート強度、σB1:新設コンクリート強度)
d0’=d0/dst
dp’=dp/dst
Qstの値としては、Qst=0.5(π・dst2/4)・√(σB・Ecを用いることができる。
【0059】
また、σy=295N/mm2、e=10mmの条件で計算する場合には、係数β1〜β4、γ1〜γ5は、β1=0.9、β2=1.74、β3=−1.54、β4=0.89、γ1=1.33、γ2=−0.31、γ3=0.08、γ4=0.60、γ5=−0.009の値を用いることができる。
【0060】
この場合、せん断強度を高めるためには、(1)σB1を大きくすること、(2)dpを大きくすること、(3)d0を大きくすること、(4)αを小さくすることがこの順序で効果的である。
【0061】
なお、上記の関係式(10)は、図11に示すプロットの近似式(図中の破線の式Y=0.9・X)として得たものである(相関係数R2=0.892)。各プロットは上記の式(1)〜式(9)の算出過程に基づき以下の条件のもと求めている。このことから、β1〜β4、γ1〜γ5については、上記の数値のほか、計算条件によって異なる近似式が得られた場合にはその係数値を用いることができる。
【0062】
(プロットの計算条件)
σB0:13.5、18、21N/mm2
σB1:24、30、36N/mm2
d0:φ75、φ100、φ125mm
dp:5、10、20mm
dst:φ19、φ22mm
α:75、45、30°
【0063】
[設計方法]
次に、本発明に係るコンクリート打継面の構造の設計方法の実施の形態について説明する。
【0064】
本発明のコンクリート打継面の構造の設計方法は、打継面の構造のせん断耐力を上記のせん断耐力評価方法により求め、この求めたせん断耐力に基づいて新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さを設計するものである。
【0065】
この設計方法は、コンピュータによる設計装置として実現することも可能である。すなわち、この設計装置を、せん断耐力評価手段と設計手段とにより構成する。これら各手段はコンピュータを利用して演算処理を行う。せん断耐力評価手段は、打継面の構造のせん断耐力を上記のせん断耐力評価方法により求める処理を行う。設計手段は、このせん断耐力評価手段で求めたせん断耐力に基づいて新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さを設計する処理を行う。
【0066】
この設計装置によれば、打継面の構造諸元(凹部の寸法、アンカー筋の径等)を入力して、新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さなどの他の構造諸元を求めることができる。
【0067】
例えば、せん断耐力評価手段が図7のような関係図を作成し、設計手段がこの図から0.5Ast・√min(σB・Ec)を超える最小のアンカー筋の埋め込み長さhstを読み取るようにしてもよい。この図7においては、α=30°の場合、hst=45mm程度以上に設計すればよいことが判る。
【0068】
また、本発明のコンクリート打継面の構造100の設計方法においては、上記の実施の形態によるほか、以下の関係式(11)によっても、新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さおよび径、凹部の寸法、新設コンクリートの強度を設計することができる。
hst’=δ1・[δ2+δ3・σB’+δ4・d0’+δ5・dp’+δ6・α]
・・・(11)
ただし、hst’:新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さと径の比
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
δ1〜δ6:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
【0069】
ここで、hst’=hst/dst
σB’=σB0/σB1
(ただし、σB0:既存コンクリート強度、σB1:新設コンクリート強度)
d0’=d0/dst
dp’=dp/dst
【0070】
また、σy=295N/mm2、e=10mmの条件で計算する場合には、係数δ1〜δ6については、δ1=1.1、δ2=1.42、δ3=2.77、δ4=−0.24、δ5=0.46、δ6=0.009の値を用いることができる。
【0071】
この場合、アンカー筋の埋め込み長さを短くするには、(1)σB1を大きくすること、(2)dpを小さくすること、(3)d0を大きくすること、(4)αを小さくすることがこの順序で効果的である。
【0072】
なお、上記の関係式(11)は、図11に示すプロットの近似式(図中の実線の式Y=1.1・X)として得たものである(相関係数R2=0.936)。各プロットは上記の式(1)〜式(9)の算出過程に基づき上述の条件のもと求めている。このことから、δ1〜δ6については、上記の数値のほか、計算条件によって異なる近似式が得られた場合にはその係数値を用いることができる。
【0073】
上記の関係式(11)を利用することで、打継面の構造諸元を簡便かつ迅速に設計することができる。また、この関係式に様々な値を代入することで複数の設計案を比較検討することもできる。このため、打継面の構造諸元の最適化設計を容易に行うことができる。
【0074】
以上説明したように、本発明に係るコンクリート打継面の構造によれば、既存コンクリートとこれに打ち継がれる新設コンクリートとの間の打継面の構造であって、既存コンクリート表面に設けた逆錐形状の凹部と、この凹部を介して一端を既存コンクリートに埋め込み、他端を新設コンクリートに埋め込んだアンカー筋とからなるので、凹部への新設コンクリートの打設を確実に行える上に、打継面のせん断力を効率的に伝達でき、高いせん断剛性を確保することができる。
【0075】
また、本発明に係るコンクリート打継面の構造の施工方法によれば、先端に穿孔用の切削刃を有するとともに外周に円錐台形状の切削刃を有するドリルで既存コンクリート表面を穿孔することにより、アンカー筋を埋め込むための孔と逆錐形状の凹部とを同時に形成するので、少ない工程で簡単に穿孔作業を行える。
【0076】
また、本発明に係るコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法によれば、打継面の構造が新設コンクリート側に想定した想定破壊面でせん断破壊すると仮定した場合のせん断耐力を、新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さに応じて求める第一ステップと、打継面の構造が支圧破壊すると仮定した場合のせん断耐力を、打継面における力の釣り合い式に基づいて最小二乗法で求める第二ステップとを有し、第一ステップおよび第二ステップにより求められたせん断耐力のうちいずれか小さい方のせん断耐力を求めるので、この打継面の構造のせん断耐力を評価することができる。
【0077】
また、本発明に係る他のコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法によれば、以下の関係式によりせん断耐力を求める。
Qu/Qst=β1・[β2+β3・Q+β4・Q2]
ただし、Q=γ1+γ2・σB’+γ3・d0’+γ4・dp’+γ5・α
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
β1〜β4:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
γ1〜γ5:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
Qst:凹部の影響を無視したせん断耐力
Qu:せん断耐力
この関係式を利用することで、打継面の構造のせん断耐力を簡便かつ迅速に得ることができる。
【0078】
また、本発明に係るコンクリート打継面の構造の設計方法によれば、打継面の構造のせん断耐力を請求項3または4に記載の方法により求め、この求めたせん断耐力に基づいて新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さを設計するので、この打継面の構造のアンカー筋の長さを設計することができる。
【0079】
また、本発明に係る他のコンクリート打継面の構造の設計方法によれば、以下の関係式により新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さおよび径、凹部の寸法、新設コンクリートの強度を設計する。
hst’=δ1・[δ2+δ3・σB’+δ4・d0’+δ5・dp’+δ6・α]
ただし、hst’:新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さと径の比
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
δ1〜δ6:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
この関係式を利用することで、打継面の構造諸元を簡便かつ迅速に設計することができる。また、この関係式に様々な値を代入することで複数の設計案を比較検討することもできる。このため、打継面の構造諸元の最適化設計を容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明に係るコンクリート打継面の構造、この構造の施工方法、せん断耐力評価方法および設計方法は、耐震改修工事等において、既存コンクリートと後打ちの新設コンクリートの一体性を確保するのに有用であり、特に、高いせん断剛性を確保するのに適している。
【符号の説明】
【0081】
10 既存コンクリート
12 新設コンクリート
14 凹部
14a 底面
14b テーパー面
16 アンカー筋
16a 下端(一端)
16b 上端(他端)
18 ナット
20 ドリル
20a 穿孔用の切削刃
20b 円錐台形状の切削刃
22 孔
α テーパー角度
10a 打継面(既存コンクリート表面)
100 コンクリート打継面の構造
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存コンクリートとこれに打ち継がれる新設コンクリートとの間の打継面の構造であって、既存コンクリート表面に設けた逆錐形状の凹部と、この凹部を介して一端を既存コンクリートに埋め込み、他端を新設コンクリートに埋め込んだアンカー筋とからなることを特徴とするコンクリート打継面の構造。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリート打継面の構造を施工する方法であって、
先端に穿孔用の切削刃を有するとともに外周に円錐台形状の切削刃を有するドリルで既存コンクリート表面を穿孔することにより、アンカー筋を埋め込むための孔と逆錐形状の凹部とを同時に形成することを特徴とするコンクリート打継面の構造の施工方法。
【請求項3】
請求項1に記載のコンクリート打継面の構造のせん断耐力を評価する方法であって、
打継面の構造が新設コンクリート側に想定した想定破壊面でせん断破壊すると仮定した場合のせん断耐力を、新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さに応じて求める第一ステップと、
打継面の構造が支圧破壊すると仮定した場合のせん断耐力を、打継面における力の釣り合い式に基づいて最小二乗法で求める第二ステップとを有し、
第一ステップおよび第二ステップにより求められたせん断耐力のうちいずれか小さい方のせん断耐力を求めることを特徴とするコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法。
【請求項4】
請求項1に記載のコンクリート打継面の構造のせん断耐力を評価する方法であって、以下の関係式によりせん断耐力を求めることを特徴とするコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法。
Qu/Qst=β1・[β2+β3・Q+β4・Q2]
ただし、Q=γ1+γ2・σB’+γ3・d0’+γ4・dp’+γ5・α
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
β1〜β4:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
γ1〜γ5:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
Qst:凹部の影響を無視したせん断耐力
Qu:せん断耐力
【請求項5】
請求項1に記載のコンクリート打継面の構造を設計する方法であって、
打継面の構造のせん断耐力を請求項3または4に記載の方法により求め、この求めたせん断耐力に基づいて新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さを設計することを特徴とするコンクリート打継面の構造の設計方法。
【請求項6】
請求項1に記載のコンクリート打継面の構造を設計する方法であって、
以下の関係式により新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さおよび径、凹部の寸法、新設コンクリートの強度を設計することを特徴とするコンクリート打継面の構造の設計方法。
hst’=δ1・[δ2+δ3・σB’+δ4・d0’+δ5・dp’+δ6・α]
ただし、hst’:新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さと径の比
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
δ1〜δ6:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
【請求項1】
既存コンクリートとこれに打ち継がれる新設コンクリートとの間の打継面の構造であって、既存コンクリート表面に設けた逆錐形状の凹部と、この凹部を介して一端を既存コンクリートに埋め込み、他端を新設コンクリートに埋め込んだアンカー筋とからなることを特徴とするコンクリート打継面の構造。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリート打継面の構造を施工する方法であって、
先端に穿孔用の切削刃を有するとともに外周に円錐台形状の切削刃を有するドリルで既存コンクリート表面を穿孔することにより、アンカー筋を埋め込むための孔と逆錐形状の凹部とを同時に形成することを特徴とするコンクリート打継面の構造の施工方法。
【請求項3】
請求項1に記載のコンクリート打継面の構造のせん断耐力を評価する方法であって、
打継面の構造が新設コンクリート側に想定した想定破壊面でせん断破壊すると仮定した場合のせん断耐力を、新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さに応じて求める第一ステップと、
打継面の構造が支圧破壊すると仮定した場合のせん断耐力を、打継面における力の釣り合い式に基づいて最小二乗法で求める第二ステップとを有し、
第一ステップおよび第二ステップにより求められたせん断耐力のうちいずれか小さい方のせん断耐力を求めることを特徴とするコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法。
【請求項4】
請求項1に記載のコンクリート打継面の構造のせん断耐力を評価する方法であって、以下の関係式によりせん断耐力を求めることを特徴とするコンクリート打継面の構造のせん断耐力評価方法。
Qu/Qst=β1・[β2+β3・Q+β4・Q2]
ただし、Q=γ1+γ2・σB’+γ3・d0’+γ4・dp’+γ5・α
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
β1〜β4:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
γ1〜γ5:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
Qst:凹部の影響を無視したせん断耐力
Qu:せん断耐力
【請求項5】
請求項1に記載のコンクリート打継面の構造を設計する方法であって、
打継面の構造のせん断耐力を請求項3または4に記載の方法により求め、この求めたせん断耐力に基づいて新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さを設計することを特徴とするコンクリート打継面の構造の設計方法。
【請求項6】
請求項1に記載のコンクリート打継面の構造を設計する方法であって、
以下の関係式により新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さおよび径、凹部の寸法、新設コンクリートの強度を設計することを特徴とするコンクリート打継面の構造の設計方法。
hst’=δ1・[δ2+δ3・σB’+δ4・d0’+δ5・dp’+δ6・α]
ただし、hst’:新設コンクリートへのアンカー筋の埋め込み長さと径の比
σB’:既存コンクリートと新設コンクリートの圧縮強度比
d0’:凹部の底面の径とアンカー筋の径の比
dp’:凹部の深さとアンカー筋の径の比
α:凹部のテーパー角
δ1〜δ6:打継面における力の釣り合い式に基づいて決定される係数
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−202134(P2012−202134A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68254(P2011−68254)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
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