コンクリート柱状体の補強方法
【課題】加熱硬化型フレキシブル筋を用いて作業性の良いコンクリート柱状体の補強方法を提供する。
【解決手段】コンクリート柱状体の補強方法は、(A)コンクリート造の柱状体11aと、そこから連続する壁部12aとを有する被補強体10に埋設され、柱状体から壁部へ延びる差し筋14を避けて、柱状体と壁部の接合部近傍に壁部を貫通する孔16を設ける工程と、(B)多数本の強化繊維を有する連続繊維束と、その長手方向に延び、連続繊維束を束ね或いは囲包して配置された可撓性の外層部材と、その内側に設ける通電により発熱する導電繊維と、連続繊維束及び外層部材に含浸された半硬化或いは未硬化状の樹脂とを有する通電加熱硬化型フレキシブル筋1を、孔を通して柱状体の長手方向の所定箇所に所定回数巻回する工程と、(C)通電加熱硬化型フレキシブル筋の導電繊維に通電して発熱させ、前記の含浸された樹脂を加熱硬化する工程とを有する。
【解決手段】コンクリート柱状体の補強方法は、(A)コンクリート造の柱状体11aと、そこから連続する壁部12aとを有する被補強体10に埋設され、柱状体から壁部へ延びる差し筋14を避けて、柱状体と壁部の接合部近傍に壁部を貫通する孔16を設ける工程と、(B)多数本の強化繊維を有する連続繊維束と、その長手方向に延び、連続繊維束を束ね或いは囲包して配置された可撓性の外層部材と、その内側に設ける通電により発熱する導電繊維と、連続繊維束及び外層部材に含浸された半硬化或いは未硬化状の樹脂とを有する通電加熱硬化型フレキシブル筋1を、孔を通して柱状体の長手方向の所定箇所に所定回数巻回する工程と、(C)通電加熱硬化型フレキシブル筋の導電繊維に通電して発熱させ、前記の含浸された樹脂を加熱硬化する工程とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電加熱硬化型フレキシブル筋を使用した例えば建築物の壁付き柱などとされるコンクリート柱状体の補強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば建築物の耐震性強化の点から、新たに建造されるコンクリート構造物は勿論、既設のコンクリート構造物についても耐震性向上を目的とした補強が要望されている。
【0003】
従来、コンクリート構造物の耐震補強として、コンクリート柱状体を補強することが考えられている。例えば、橋脚、地下鉄の中柱、建築物の柱などの柱状体、特に鉄筋コンクリート(RC)或いは鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)にて建造されたコンクリート柱を補強する方法としては、コンクリート柱の周囲に鉄筋コンクリート(RC)を巻き立てる方法、鋼板を貼り付ける方法がある。又、比較的最近では、コンクリート柱に強化繊維シートを巻き付け、その繊維に含浸した樹脂を硬化して、繊維強化樹脂複合材料に形成することにより補強をなす方法が知られている。
【0004】
しかしながら、鉄筋コンクリート(RC)を巻き立てる方法は、重量が増加する、新たに断面積が増加する、現場にてコンクリート打設を行うために養生期間が長く、工期が長いなどの問題がある。鋼板を貼り付ける方法は、貼り付けた鋼板を互いに溶接するか或いはボルト締めにて接合する作業が必要であり、又、鋼板の重量が重く、作業性が悪いなどの問題がある。
【0005】
これに対して、強化繊維シートを巻き付ける方法は、軽量且つ作業性が良く、施工時間を短縮できコスト的に優位であるなどの利点を有することから、近年施工例が増加しつつある。補強するコンクリート柱状体が独立柱である場合、上述の強化繊維シートを巻き付ける方法により、比較的簡易に、しかも高強度にて柱状体を補強することができる。
【0006】
しかし、柱が壁付き柱である場合には、コンクリート柱の周囲から延設された壁、より詳しくは、コンクリート柱から袖壁へと延在する差し筋のために、強化繊維シートの端部同士を強固に固着して、無端状態の連続繊維による強力な補強効果を得ることが非常に困難である。
【0007】
強化繊維シートをコンクリート柱に1周巻き付けずに、強化繊維シートの端部を柱の表面で自由端のままで終わらせるように貼着することもできるが、この方法では柱に加わる変形に対して、端部同士を固着して無端状態の連続繊維とする場合のような、繊維強化樹脂複合体材料シートの高い強度による補強効果を十分に発揮させることができない。
【0008】
従って、施工が簡単でコスト的にも優位であり、例えば上述の壁付き柱のように補強部材を巻き付けることが困難であるコンクリート構造物を補強する場合にも作業性が良く作業時間の短縮が可能であり、且つ高強度であるコンクリート構造物の補強方法が要求される。
【0009】
一方、特許文献1は、多数本の強化繊維を有する補強繊維束と、この補強繊維束の長手方向に沿って延在し、この補強繊維束を束ね或は囲包して配置された可撓性の外層部材とを有する構造とされる強化繊維補強筋を開示する。又、特許文献2は、多数本の強化繊維を有する補強繊維束と、この補強繊維束の長手方向に沿って延在し、十分な空隙を有した態様で補強繊維束を囲包して配置された可撓性の環状被覆部材と、を有する構造とされる強化繊維補強筋を開示する。
【0010】
これらの強化繊維補強筋においては、現場にて補強繊維束に樹脂が含浸されるか、或いは予め強化繊維束に樹脂が含浸されて未硬化又は半硬化状態とされるので、可撓性に優れており、現場にて任意の形状に変形することができる。又変形した後は、元の形状に戻ることはなく、変形した形態を保持することができるので作業性が良好である。
【0011】
上記特許文献1には、上記強化繊維束又は外層部材として、電気伝導性を有する材料を用い、所定の位置に取り付け後、通電して発熱させ、含浸された樹脂を硬化させ得ることが示されている。又、上記特許文献2には、所定本数の強化繊維を収束したストランド(強化繊維束)を複数本束ねて構成される補強繊維束の、好ましくは略中心位置に導電繊維、例えばヒータ線が配置される構成とされ、ヒータ線の両端に電源を接続し、電源からヒータ線に給電することによりヒータ線を発熱させ、補強筋内の樹脂を迅速に加熱硬化し得ることが示されている。
【0012】
これら従来技術においては、強化繊維補強筋は、主としてコンクリート補強筋として、コンクリート構造物を新たに建設する場合に、コンクリートを打設する前の鉄筋構造体に帯鉄筋などとして組み込んで使用されている。
【特許文献1】特開平11−124957号公報
【特許文献2】特開平11−70596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者は、このような通電により硬化する通電加熱硬化型フレキシブル筋を使用すれば、既設のコンクリート柱、特に、壁付き柱の補強が極めて迅速に且つ効率良く施工し得ることを見出した。本発明は、斯かる本発明者の新規な知見に基づきなされたものである。
【0014】
つまり、本発明の目的は、軽量、高強度、しかも施工現場での変形が容易であり、補強部材の巻回が困難な壁付き柱などとされる被補強体への適用も容易である通電加熱硬化型フレキシブル筋を使用した極めて作業性の良いコンクリート柱状体の補強方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的は本発明に係るコンクリート柱状体の補強方法にて達成される。要約すれば、本発明は、(A)コンクリートによって形成された柱状体と、前記柱状体の周面から延設された少なくとも1つの壁部と、を有する被補強体に埋設された、前記柱状体から前記壁部へと延在する差し筋を避けて、前記柱状体と前記壁部の接合部近傍に前記壁部を貫通する孔を設ける工程と、(B)多数本の強化繊維を有する連続繊維束と、前記連続繊維束の長手方向に沿って延在し、前記連続繊維束を束ね或いは囲包して配置された可撓性の外層部材と、前記外層部材の内側に設けられる通電により発熱する導電繊維と、前記連続繊維束及び前記外層部材に含浸された半硬化状態或いは未硬化状態の樹脂と、を有する通電加熱硬化型フレキシブル筋を、前記孔を通して前記柱状体の長手方向の所定箇所に所定回数巻回する工程と、(C)前記通電加熱硬化型フレキシブル筋の前記導電繊維に電源より給電して発熱させ、前記連続繊維束及び前記外層部材に含浸された樹脂を加熱硬化する工程と、を有することを特徴とするコンクリート柱状体の補強方法である。
【0016】
本発明の一実施態様によると、前記工程(A)の前に前記柱状体から前記壁部へと延在する差し筋の所在を探査する。前記差し筋が鉄筋である場合には、該差し筋を電磁波を利用して探査することができる。
【0017】
ここで、少なくとも前記柱状体に化粧モルタルなどの被覆体が覆設されている場合には、前記(A)工程の前、又は前記(A)工程の後且つ前記(B)工程の前に、少なくとも前記通電加熱硬化型フレキシブル筋を巻回する箇所の前記柱状体に覆設された被覆体を除去し、前記柱状体の表面を露出させてから補強することも可能である。
【0018】
又、前記柱状体の断面形状が矩形などの隅角部を有する形状である場合には、前記柱状体の少なくとも前記通電加熱硬化型フレキシブル筋を巻回する箇所の隅角部を湾曲状に加工することができる。又、本発明の他の実施態様によると、前記通電加熱硬化型フレキシブル筋を巻回する箇所の前記柱状体の表面に樹脂系パテ材を擦り付けることができる。
【0019】
本発明において、前記通電加熱硬化型フレキシブル筋の前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維を含む無機繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維を含む有機繊維、又はチタン繊維、ステンレススチール繊維、鉄繊維を含む金属繊維を単独で、又は複数種を混合して使用することができる。
【0020】
本発明において、一実施態様によると、前記通電加熱硬化型フレキシブル筋の前記外層部材は、前記連続繊維束を構成する強化繊維と同質か或いは異質の繊維で作製された編組体とすることができる。他の実施態様によると、前記外層部材は、前記連続繊維束を構成する強化繊維と同質か或いは異質の繊維で作製されたテープ或いは紐とすることができる。又、好ましくは、前記外層部材を構成する繊維は、ガラス繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維を含む絶縁性繊維を単独で、又は複数種を混合して使用する。
【0021】
本発明において、一実施態様によると、前記通電加熱硬化型フレキシブル筋の前記導電繊維としてニクロム線、タングステン線、ニッケル線を含む通電により発熱する金属線を単独で、又は複数種を混合して使用し、前記連続繊維束内に配置することができる。又、他の実施態様によると、前記強化繊維として炭素繊維、チタン繊維、鉄繊維を含む通電により発熱する繊維を単独で、又は複数種を混合して使用し、前記導電繊維の全部又は一部を兼ねることができる。
【0022】
本発明において、前記樹脂は、加熱硬化型のエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、MMA樹脂又はウレタン系樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、軽量、高強度、しかも施工現場での変形が容易であり、補強部材の巻回が困難な壁付き柱などとされる被補強体への適用も容易である通電加熱硬化型フレキシブル筋を使用して、極めて作業性の良いコンクリート柱の補強が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係るコンクリート柱状体の補強方法を図面に則して更に詳しく説明する。
【0025】
実施例1
通電加熱硬化型フレキシブル筋
先ず、本発明に使用される通電加熱硬化型フレキシブル筋(以下、単に「フレキシブル筋」と呼ぶ。)について説明する。
【0026】
図1(A)、(B)及び図2に、フレキシブル筋の一実施例を示す。本実施例にてフレキシブル筋1は、多数本の強化繊維fを有する連続繊維束2と、この連続繊維束2を束ねて、或いは、囲包して配置された可撓性の外層部材3と、外層部材3の内側に配置される導電繊維4と、を有している。
【0027】
連続繊維束2は、好ましくは、多数本の強化繊維fを一方向に引き揃えて配列して作製される。強化繊維fを編んで連続繊維束2を作製することも可能ではあるが、この場合には、繊維が重なっている部分で強度低下を引き起こす。これに対して、強化繊維fを平行に配列した場合には、繊維が重なる部分がなく、本来の強化繊維fの繊維強度を発揮することができる。
【0028】
つまり、本実施例では、所定本数の強化繊維fを平行に或いは緩く撚りを掛けて収束して作製されるストランド(強化繊維束)を更に平行に或いは緩く撚りを掛けて複数本束ねることによって作製される。
【0029】
強化繊維fとしては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維を含む無機繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維を含む有機繊維、又はチタン繊維、ステンレススチール繊維、鉄繊維を含む金属繊維を単独で、又は複数種を混合して使用することができる。連続繊維束2の所望の物性、例えば、破断延び、弾性率に応じて、単独又は複数種類混合して用いる強化繊維fを選択すればよい。
【0030】
通常、炭素繊維が好適に使用され、PAN系、ピッチ系、その他、いずれのタイプの炭素繊維であっても構わない。好ましくは、強度が100Kgf/mm2(≒980N/mm2)以上、又弾性率が10Tonf/mm2(≒98,000N/mm2)以上とされる高強度、高弾性のものを使用する。
【0031】
又、強化繊維fとしてアラミド繊維などの有機繊維を使用する場合、強度が100Kgf/mm2(980N/mm2)以上、弾性率が2Tonf/mm2(19,600N/mm2)以上とされる。
【0032】
本発明のフレキシブル筋1は、用途に応じて種々の寸法とすることができるが、詳しくは後述するようにコンクリート柱に巻回して補強するのに使用する場合、外径として約2〜50mmとすることが好ましい。例えば、強化繊維fとして炭素繊維を使用する場合、炭素繊維のフィラメント本数は、24,000〜20,000,000本程度とされる。
【0033】
可撓性の外層部材3は、前記連続繊維束2を構成する強化繊維と同質か或いは異質の強化繊維で作製される。詳しくは後述するように、コンクリート柱状体の補強において、コンクリート或いはモルタルとの定着性が良好であることから、好ましくは図1(A)、(B)に示すように、連続繊維束2の強化繊維fと同質或いは異質の繊維f’で作製された編組体3Aとされる。但し、これに限定されるものではない。これにより、連続繊維束2は外層部材3にて被覆され、この外層部材3にて緩く拘束された状態とされる。
【0034】
別法として、外層部材3は、図3(A)に示すように、同質或いは異質の強化繊維を平行に配列して或いは編成して形成された幅広の、或いは図3(B)に示すように幅狭若しくは紐状のテープ3Bとすることができる。又、これらテープ3Bなどを互いに離間して一方向に、或いは図3(C)に示すように、互いに交差するように両方向に巻き付けることによって連続繊維束2を束ねることも可能である。
【0035】
このように、可撓性の外層部材3は連続繊維束2を構成する強化繊維fと同質或いは異質の繊維f’にて構成し得るが、詳しくは後述するような通電加熱時の短絡防止の観点から、外層部材3は絶縁性であることが好ましく、繊維f’としては、好ましくはガラス繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維を含む絶縁繊維を単独で、又は複数種混合して使用する。通常、ガラス繊維が好適に使用される。又、繊維f’の繊度は、好ましくは20〜10,000g/km程度とされる。
【0036】
外層部材3の内側、好ましくは連続繊維束2内の断面略中心位置には、導電繊維4がフレキシブル筋の長手方向に沿って配置される。導電繊維4は、後述するように、施工時に通電によりフレキシブル筋1を加熱し硬化させる際の電気の流れ道となる。従って、導電繊維4は、通電した時に発熱する電気抵抗を有するものであり、例えばニクロム線、タングステン線、ニッケル線などの金属線が使用可能である。
【0037】
強化繊維fとして炭素繊維など、つまり、強化繊維自体が電気伝導性を有しており、通電により発熱し得る繊維を用いる場合、連続繊維束自体を導電繊維4として使用することができる。この場合、連続繊維束2内に特別に設ける導電繊維4の量は比較的少なくするか、或いは省くことができる。
【0038】
連続繊維束2を構成する強化繊維fとしてアラミド繊維などの絶縁性繊維を用いる場合は、導電繊維4を複数本挿入するなどして通電発熱性能を高めることが好ましい。
【0039】
例えば、強化繊維fとして炭素繊維を用いて、外径5mm(フィラメント本数が24,000本の炭素繊維束が9本:216,000フィラメント)程度の連続繊維束2を形成する場合、連続繊維束2内に特別に設ける導電繊維4として、例えば線径0.2mmのニクロム線などの抵抗線を0〜1本程度挿入することが好ましい。又、例えば強化繊維fとしてアラミド繊維を用いて、外径10mm(7100デニールのアラミド繊維60本)程度の連続繊維束2を形成する場合、導電繊維4として、例えば線径0.2mmのニクロム線などの抵抗線を3〜5本程度挿入することが好ましい。当然、所望の通電、加熱特性に応じて、導電繊維4の材料、及び線径、本数などの条件は適宜変更可能である。
【0040】
本実施例によれば、フレキシブル筋1には、予め樹脂が含浸され、半硬化状態或いは未硬化状態のプリプレグとして施工現場に提供される。そして、施工現場にてこの樹脂を加熱硬化してFRP(繊維強化樹脂)化する。
【0041】
本実施例では、詳しくは後述するように、先ずフレキシブル筋1のプリプレグの作製に際して連続繊維束2に樹脂を含浸させ、この連続繊維束2に付着した樹脂が、繊維f’を連続繊維束2の周りにブレーディングする際、或いはフレキシブル筋1を加熱硬化させる際に外層部材3に含浸する。
【0042】
フレキシブル筋1に含浸させる樹脂としては、加熱硬化型のエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、MMA樹脂、ウレタン樹脂などのラジカル反応系樹脂を好適に使用し得る。含浸作業性などの点から通常1〜1,000ポアズ(P)とされるのが好ましい。
【0043】
例えば、加熱硬化型のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA系液状エポキシ樹脂(エピコート−828/油化シェルエポキシ(株)製)、ジシアンジアミド(アデカハードナーEH−3842/旭電化工業(株)製)、ジクロルメチルウレア(DCMU)(DCMU−99/保土谷化学工業(株)製)の混合剤を好適に使用することができる。又、加熱硬化型の不飽和ポリエステル樹脂としては、リゴラック158BQT(昭和高分子(株)製)、過酸化物(硬化剤)(パーブチルZ/日本油脂(株)製)、酸化マグネシウム若しくはイソシアネート増粘剤の混合剤を好適に用いることができる。
【0044】
フレキシブル筋1に含浸される樹脂の量としては、連続繊維束2及び外層部材3の量(体積)をVF、連続繊維束2及び外層部材3に含浸された樹脂の量(体積)をVRとし、VT=VF+VRとしたときに、樹脂充填率(%)、即ち、(VR÷VT)×100が20〜90%となるように選定するのが好ましい。樹脂充填率が20%より少ないと、強化繊維と強化繊維の間で応力の伝達ができなくなり、結果として全体の引張強度が低下するといった問題があり、又、90%より大きいと、繊維の量が相対的に少なくなり、全体の引張強度が高くならないだけでなく、物理的に樹脂を含浸できないといった問題が発生する。従って、好ましくは、この樹脂充填率は30〜60%とされる。
【0045】
フレキシブル筋1を製造した後に、連続繊維束2、更には外層部材3に含浸された樹脂は完全に硬化されることなはなく、半硬化状態或いは未硬化状態、即ち、プリプレグ状態に維持される。従って、本発明のフレキシブル筋1は、施工現場において硬化前には可撓性に優れている。
【0046】
フレキシブル筋1のプリプレグは、外層部材3の内側、即ち、連続繊維束2の好ましくは断面略中央に配置された導電繊維4、或いは連続繊維2が導電繊維4を兼ね得る場合には連続繊維束2に通電して加熱することによって、連続繊維束2、更には外層部材3に含浸された加熱硬化型樹脂を硬化させてFRPを形成する。
【0047】
つまり、例えば図4に示すように、施工現場にて導電繊維4の両端に電源5を接続して、電源5から導電繊維4に給電することにより導電繊維4を発熱させ、連続繊維束2、更には外層部材3に含浸された樹脂を迅速に加熱硬化させる。上述のように、連続繊維束2が導電繊維4を兼ね得る場合、連続繊維束自体に通電して連続繊維束2、更には外層部材3に含浸された樹脂を加熱硬化することが可能である。
【0048】
フレキシブル筋1のプリプレグは、例えば100m単位程度のロール状として施工現場に運搬され、施工現場にて必要長さを切り取り、詳しくは後述するように被補強コンクリート柱状体の必要箇所に必要回数巻回して配置した後に、通電加熱を行い硬化させてFRP筋化する。
【0049】
このように、フレキシブル筋1は可撓性に富み、極めて作業性に優れ、又運搬容易性にも優れている。
【0050】
又、フレキシブル筋1の連続繊維束2の周りに配置する外層部材3を編組体3Aとすることによって、詳しくは後述するように被補強コンクリート柱状体にフレキシブル筋1を巻回して固定した後に打設するコンクリート、モルタルなどとの定着性が良好である。
【0051】
更に、外層部材3を絶縁性の繊維f’により構成することによって、通電時の短絡を防止することができる。
【0052】
通電加熱硬化型フレキシブル筋の製造例
次に、フレキシブル筋1のプリプレグの製造方法の一例を説明する。ここでは、連続繊維束2内に導電繊維4を特別に設ける場合について説明する。
【0053】
図5は、本発明に係るフレキシブル筋1のプリプレグの製造装置100の一例の概略構成を示しており、大別して、連続繊維供給部110、樹脂供給部120、導電繊維供給部130、ブレーディング部140、及び巻き取り部150を備えている。
【0054】
例えば炭素繊維とされる、連続繊維束2を構成する強化繊維fは、連続繊維供給部110が備えた複数のリール111から繰り出される。リール111から繰り出された強化繊維fは、一方向に引き揃えて平行に或いは緩く撚りを掛けて、所定の連続繊維束2とされる。上述のように、連続繊維束2は、先ず所定本数の強化繊維fを平行に或いは緩く撚りを掛けて収束してストランドを作製し、このストランドを更に平行に或いは緩く撚りを掛けて複数本束ねることによって作製することができる。こうして収束された連続繊維束2は、支持ローラ、転向ローラなどのローラ群を介して樹脂供給部120まで搬送される。
【0055】
樹脂供給部120では、樹脂供給装置121によって連続繊維束2に加熱硬化型の樹脂が供給される。樹脂供給装置121は、上述のような所定の含浸量が得られるように、所定の割合で連続繊維束2に樹脂を供給する。つまり、本実施例では、更に下流で連続繊維束2の周りに繊維f’によるブレーディングを行う際或いはフレキシブル筋1を加熱硬化させる際に外層部材3にも樹脂が含浸されて上述のような含浸量が得られるように、樹脂供給装置121は連続繊維束2に比較的多めの樹脂を供給できるよう構成することが好ましい。
【0056】
樹脂供給装置121としては、樹脂を収容した樹脂槽から塗布ローラによって連続繊維束2に樹脂を供給するロールコート形式を用いることができる。或いは、上述のように連続繊維束2には比較的多めの樹脂を付けるために、樹脂を収容した樹脂槽中に樹脂未含浸の連続繊維束2を浸漬することによって樹脂を供給する、ディッピング形式とすることもできる。こうして、連続繊維2に樹脂が供給(ロールコート或いはディッピング)されると、樹脂は連続繊維束2中に含浸される。
【0057】
樹脂が含浸された連続繊維束2は、更に支持或いは転向ローラ群によって導電繊維供給部130に至り、ここで連続繊維束2の断面略中心部に、例えばニクロム線などの抵抗線とされる導電繊維4が挿入される。
【0058】
導電繊維4は、連続繊維束2の中、好ましくは断面略中央に導電繊維4を挿入する。
【0059】
導電繊維4が挿入された後、連続繊維束2の周囲には、ブレーディング部140が備えたブレーディング装置141により、例えばガラス繊維とされる繊維f’がブレーディングされ、連続繊維束2を束ね或いは囲包するように外層部材3が形成される。
【0060】
外層部材3がブレーディングされたフレキシブル筋1は、巻き取り部150が備えた、例えば紙管などとされる巻き取りロール151に巻き取られる。上述のように、フレキシブル筋1は、例えば100m単位程度のロール状とされる。
【0061】
連続繊維束2の強化繊維fとして、通電により発熱し導電繊維4の機能を兼ねる繊維を使用して、外層部材3の内側に特別に導電繊維4を設けない場合は、導電繊維供給部130は省略することができる。
【0062】
その後、巻き取られたフレキシブル筋1は室温で養生され、含浸樹脂の増粘を待ってプリプレグ化され、フレキシブル筋1のプリプレグとなる。
【0063】
上述のように、外層部材3には特別に樹脂を含浸させることはしないが、好ましくは、連続繊維束2に付着している樹脂がブレーディングの時或いはフレキシブル筋1の加熱硬化の時に含浸し、フレキシブル筋1を加熱硬化させる際にFRP化される。
【0064】
以上、本発明に従うフレキシブル筋1は、連続繊維束2、更には外層部材3に含浸された樹脂は施工現場にて導電繊維4に通電して加熱するまで完全に硬化されることはなく、半硬化状態或いは未硬化状態に維持される。従って、フレキシブル筋1は、施工現場にて可撓性に優れており、任意の形状に変形することができ、又、変形した後は自然に元の形状に戻ることはなく、変形した形態を保持し、極めて良好な作業性を与える。
【0065】
コンクリート柱状体の補強例
次に、フレキシブル筋1を使用してコンクリート柱を補強する方法の一実施例を説明する。本実施例では、フレキシブル筋1は、壁付き柱の耐震補強に適用される。
【0066】
フレキシブル筋1は、適当な単位(例えば100m)のロール状で施工現場に搬送され、施工現場にて必要長さに切り取り、補強を必要とする箇所に配筋した後、通電加熱を行い硬化させてFRP筋化する。
【0067】
フレキシブル筋1を用いてコンクリートにて形成された柱状体(コンクリート柱状体)を補強するには、コンクリート柱状体の長手方向に所定間隔にて、フレキシブル筋1を所定回数巻き付け、これを通電加熱によって硬化させる。更に、フレキシブル筋1が硬化した後に、コンクリートやモルタルの打設を行うことができる。
【0068】
図6(A)、(B)は、本発明の補強方法を適用する壁付き柱10を示しており、断面矩形の柱部11の周面、本実施例では柱部11の相対する2つの周面からは、この柱部11を挟んで同一平面上に連なる袖壁12、12が延設されている。壁付き柱10の柱部11及び袖壁12、12は、それぞれ鉄筋コンクリートにて形成された、コンクリート柱(柱状体)11a、及び、このコンクリート柱11aより延設された少なくとも1つの壁部としての2つのコンクリート壁12a、12aに、化粧モルタル13を覆設して形成されている。
【0069】
コンクリート柱11a及びコンクリート壁12a、12aには鉄筋が埋設されており、コンクリート柱11aからコンクリート壁12a、12aへと鉄筋による差し筋14が延在して埋設されている。通常、差し筋14はコンクリート柱11aを貫通して、コンクリート柱11aの周面の相対する2つの周面から延設される両コンクリート壁12a、12aへと延在する。又、差し筋14は、通常、コンクリート柱11aの長手方向に所定の間隔dで埋設されている。
【0070】
図6(A)、(B)に示す壁付き柱10を補強する場合、フレキシブル筋1を巻き付ける箇所近傍のみ、或いは柱部11の全面の化粧モルタル13をハツリ取って除去し、コンクリート柱11aを露出させる。本実施例では、フレキシブル筋1を巻き付ける箇所の化粧モルタル13を除去する。
【0071】
本実施例のように、コンクリート柱11aの断面形状が矩形である場合、図7(A)、(B)に示すように、化粧モルタルをハツリ取ることによって露出したコンクリート柱11aの隅角部(コーナー部)15を湾曲状に加工する(R加工)。これによって、フレキシブル筋1の屈曲或いは応力集中による強度低下を最小限にとどめるようにする。R加工は、コーナー部15をコンクリート鉋などの適当な手段によって湾曲状に削り取るか、或いはコンクリート柱11aのコーナー部15の面取りを行った後に、予めR加工した鋼製のパネルなどの保護部材(図示せず)を、ボルトや接着材などの適当な手段により取り付けることも可能である。当然、コンクリート柱11aの断面形状が円形、長円形或いは楕円形など、隅角部を有しない形状である場合、上記R加工の工程は必要ない。
【0072】
又、コンクリート柱11a、コンクリート壁12a、12aに埋設されている差し筋14の所在を探査し、適当な手段により印を設けることができる。通常、差し筋が鉄筋であれば、例えば差し筋部分を電磁波を利用して探査することができる。
【0073】
次いで、図8(A)、(B)に示すように、探査された差し筋14を避けてフレキシブル筋1を通す貫通孔16を設ける。貫通孔は、コンクリート柱11aの長手方向のフレキシブル筋1を巻回する所定箇所において、袖壁12、即ち、コンクリート柱11aとコンクリート壁12a、12aの接合部近傍を削孔して設ける。
【0074】
コンクリート柱11aの長手方向におてフレキシブル筋1を巻回する箇所は、フレキシブル筋1の構成(例えば、強化繊維の種類や量)、要求される補強強度に応じて適宜選定できるが、通常、コンクリート柱11aの長手方向に所定間隔Dにて複数箇所に巻回する。従って、通常、貫通孔16はこの箇所に対応して、コンクリート柱11aの長手方向に沿って複数箇所に設ける。
【0075】
その後、図9(A)、(B)に示すように、上述のようにして設けた貫通孔14を通して、所定の長さに切断されたフレキシブル筋1をコンクリート柱11aに必要回数巻き付ける。フレキシブル筋1は、限定するものではないが、例えば手作業によってコンクリート柱11aに巻き付けることができる。
【0076】
フレキシブル筋1をコンクリート柱11aに巻き付ける回数は、フレキシブル筋1の構成(例えば、強化繊維の種類や量)、要求される補強強度に応じて適宜選定すればよい。
【0077】
又、好ましくは、フレキシブル筋1を巻き付ける位置のコンクリート柱11aの表面に、平滑性を確保する目的で樹脂系パテ材を擦り付け、その後、このパテが硬化する前にフレキシブル筋1を巻き付ける。樹脂系パテ材としては、FE−B/日鉄コンポジット(株)製を好適に用いることができる。
【0078】
フレキシブル筋1をコンクリート柱11aに巻き付けた後に、フレキシブル筋1の両端において、導電繊維4、或いは連続繊維束2が通電により発熱する繊維によって構成される場合には連続繊維束2に電源5を接続して通電することによって加熱し、フレキシブル筋1の連続繊維束2、更には外層部材3に含浸された樹脂を加熱硬化させ、FRP筋化する。
【0079】
通常、電源5から5〜100V、0.1〜20A(直流)の通電を行い、導電繊維4、或いは連続繊維束2を80〜180℃程度に加熱する。勿論、通電条件は、例えばフレキシブル筋1に含浸された樹脂、或いは要求される硬化時間、放熱条件などによって変更することができる。
【0080】
コンクリート柱11aに巻回したフレキシブル筋1は、図9に示すように、その両端部から所定の長さ(定着長L)だけコンクリート柱11aの軸線方向に重ね、通電加熱硬化させることによって定着(接着)させる。
【0081】
こうしてフレキシブル筋1を硬化させた後に、コンクリートの打設やモルタル仕上げを行い、壁付き柱10の断面復旧を行い、耐震補強(剪断補強)、補修工事を完了する。例えば、本実施例では、図10(A)、(B)に示すように、ポリマーセメントモルタル(例えば、電気化学工業(株)製 RIS332)17を用いて、貫通孔16の充填、柱部11の増厚を行う。
【0082】
上述のように、連続繊維束2の周りに配置する外層部材3を編組体3Aにより構成することにより、フレキシブル筋1の硬化後に打設するモルタル、コンクリートとの定着性を向上することができる。
【0083】
又、外層部材3を絶縁繊維にて構成することによって、フレキシブル筋1を通電加熱硬化させる際の短絡を防止することができる。
【0084】
本実施例の方法に使用するフレキシブル筋1の一例を示せば、次の通りである。
【0085】
A.連続繊維
材質:PAN系炭素繊維約24,000本からなる繊維束(ストランド)を20本一方向に平行に配列して補強繊維束を形成した
炭素繊維の引張強度:490Kgf/mm2(≒4802N/mm2)
弾性率 :23.5Tonf/mm2(≒230N/mm2)
B.外層部材
材質:ポリエステル繊維を組紐状に連続繊維束の周りに製織した
C. 導電繊維
材質:線径0.2mmのニクロム線
本数:1本
D.樹脂
種類:加熱硬化型エポキシ樹脂
ビスフェノールA系液状エポキシ樹脂(エピコート−828/油化シェルエポキシ(株)製)/ジシアンジアミド(アデカハードナーEH−3842/旭電化工業(株)製)/ジクロルメチルウレア(DCMU)(DCMU−99/保土谷化学工業(株)製)
充填率:60%
【0086】
例えば、このフレキシブル筋1(外径7mm)を、50cm×50cmのコンクリート柱に3周巻回する場合、フレキシブル筋1の導電繊維4の両端に電源5から20Vの直流電圧を印加して、これを150℃程度に加熱し、含浸された樹脂を硬化させる。この条件にて加熱硬化時間は約30分である。
【0087】
このようにして補強した壁付き柱に対して試験を行ったが、作業性、補強強度において極めて良好な結果を得ることができた。
【0088】
以上、本発明によれば、フレキシブル筋1は可撓性に優れ、しかも細長形状であるので、例えば壁付き柱の耐震補強を行うような場合にも、袖壁自体を完全に柱部周りから撤去する必要なく、差し筋を避けてコンクリート柱に巻回することが可能であり、極めて作業性良くコンクリート柱状体の補強(耐震補強、剪断補強)工事を行うことができる。
【0089】
尚、本発明の方法を適用し得る壁付き柱としては、上記実施例にて挙げた形態に限らず、例えば図11(a)に示すように、コンクリート柱11aから延設されたコンクリート壁12a、12aとコンクリート柱11aの1面が同一平面となるように形成された壁付き柱、図11(b)に示すように、コンクリート柱11aの1面から、例えばコンクリート柱11aの他の1面と同一平面状となるようにコンクリート壁12aが延設された壁付き柱、或いは11(c)に示すように断面が円形であるか、その他長円形、楕円形など断面が矩形形状ではないコンクリート柱11aの周面から、例えばコンクリート柱11aを介して同一平面状に延設された2つのコンクリート壁12aを有する壁付き柱など、各種の形態の壁付き柱が挙げられる。当然、柱部から延設される壁部は、柱部を挟んで同一平面状に形成されている必要はなく、柱部から任意の角度にて壁部が延設されている場合にも本発明は適用できる。
【0090】
又、柱状体は、所謂、柱に限定されるものではなく、コンクリートにて作製された梁であってもよい。特に本発明によれば、梁から延在する差し筋が埋設された壁部を伴った梁を、上述の実施例における壁付き柱の場合と同様に極めて作業性良く補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明に使用する通電加熱硬化型フレキシブル筋の一実施例の斜視図である。
【図2】図1に示す通電加熱硬化型フレキシブル筋の横断面図である。
【図3】本発明に使用する通電加熱硬化型フレキシブル筋の他の実施例の斜視図である。
【図4】本発明に係る通電加熱硬化型フレキシブル筋を硬化させる方法を説明するための通電加熱硬化型フレキシブル筋の縦断面図である。
【図5】本発明に使用する通電加熱硬化型フレキシブル筋の製造装置の一実施例の概略構成図である。
【図6】本発明のコンクリート柱状体の補強方法を適用し得る壁付き柱の一例を示す(a)断面図、(b)斜視図である。
【図7】図6の壁付き柱の化粧モルタルの一部をハツリ取った様子を示す(a)断面図、(b)斜視図である。
【図8】図6の壁付き柱に貫通孔を設けた様子を示す(a)断面図、(b)斜視図である。
【図9】図6の壁付き柱に本発明に係る通電加熱硬化型フレキシブル筋を巻回した様子を示す(a)断面図、(b)斜視図である。
【図10】図6の壁付き柱の柱部を増厚した様子を示す(a)断面図、(b)斜視図である。
【図11】本発明のコンクリート柱状体の補強方法を適用し得る壁付き柱の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0092】
1 通電加熱硬化型フレキシブル筋(フレキシブル筋)
2 連続繊維束
3 外層部材
4 導電繊維
10 壁付き柱
11 柱部
11a コンクリート柱(柱状体)
12 袖壁(壁部)
12a コンクリート壁(壁部)
13 化粧モルタル
14 差し筋
16 貫通孔
100 加熱硬化型フレキシブル筋プリプレグの製造装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電加熱硬化型フレキシブル筋を使用した例えば建築物の壁付き柱などとされるコンクリート柱状体の補強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば建築物の耐震性強化の点から、新たに建造されるコンクリート構造物は勿論、既設のコンクリート構造物についても耐震性向上を目的とした補強が要望されている。
【0003】
従来、コンクリート構造物の耐震補強として、コンクリート柱状体を補強することが考えられている。例えば、橋脚、地下鉄の中柱、建築物の柱などの柱状体、特に鉄筋コンクリート(RC)或いは鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)にて建造されたコンクリート柱を補強する方法としては、コンクリート柱の周囲に鉄筋コンクリート(RC)を巻き立てる方法、鋼板を貼り付ける方法がある。又、比較的最近では、コンクリート柱に強化繊維シートを巻き付け、その繊維に含浸した樹脂を硬化して、繊維強化樹脂複合材料に形成することにより補強をなす方法が知られている。
【0004】
しかしながら、鉄筋コンクリート(RC)を巻き立てる方法は、重量が増加する、新たに断面積が増加する、現場にてコンクリート打設を行うために養生期間が長く、工期が長いなどの問題がある。鋼板を貼り付ける方法は、貼り付けた鋼板を互いに溶接するか或いはボルト締めにて接合する作業が必要であり、又、鋼板の重量が重く、作業性が悪いなどの問題がある。
【0005】
これに対して、強化繊維シートを巻き付ける方法は、軽量且つ作業性が良く、施工時間を短縮できコスト的に優位であるなどの利点を有することから、近年施工例が増加しつつある。補強するコンクリート柱状体が独立柱である場合、上述の強化繊維シートを巻き付ける方法により、比較的簡易に、しかも高強度にて柱状体を補強することができる。
【0006】
しかし、柱が壁付き柱である場合には、コンクリート柱の周囲から延設された壁、より詳しくは、コンクリート柱から袖壁へと延在する差し筋のために、強化繊維シートの端部同士を強固に固着して、無端状態の連続繊維による強力な補強効果を得ることが非常に困難である。
【0007】
強化繊維シートをコンクリート柱に1周巻き付けずに、強化繊維シートの端部を柱の表面で自由端のままで終わらせるように貼着することもできるが、この方法では柱に加わる変形に対して、端部同士を固着して無端状態の連続繊維とする場合のような、繊維強化樹脂複合体材料シートの高い強度による補強効果を十分に発揮させることができない。
【0008】
従って、施工が簡単でコスト的にも優位であり、例えば上述の壁付き柱のように補強部材を巻き付けることが困難であるコンクリート構造物を補強する場合にも作業性が良く作業時間の短縮が可能であり、且つ高強度であるコンクリート構造物の補強方法が要求される。
【0009】
一方、特許文献1は、多数本の強化繊維を有する補強繊維束と、この補強繊維束の長手方向に沿って延在し、この補強繊維束を束ね或は囲包して配置された可撓性の外層部材とを有する構造とされる強化繊維補強筋を開示する。又、特許文献2は、多数本の強化繊維を有する補強繊維束と、この補強繊維束の長手方向に沿って延在し、十分な空隙を有した態様で補強繊維束を囲包して配置された可撓性の環状被覆部材と、を有する構造とされる強化繊維補強筋を開示する。
【0010】
これらの強化繊維補強筋においては、現場にて補強繊維束に樹脂が含浸されるか、或いは予め強化繊維束に樹脂が含浸されて未硬化又は半硬化状態とされるので、可撓性に優れており、現場にて任意の形状に変形することができる。又変形した後は、元の形状に戻ることはなく、変形した形態を保持することができるので作業性が良好である。
【0011】
上記特許文献1には、上記強化繊維束又は外層部材として、電気伝導性を有する材料を用い、所定の位置に取り付け後、通電して発熱させ、含浸された樹脂を硬化させ得ることが示されている。又、上記特許文献2には、所定本数の強化繊維を収束したストランド(強化繊維束)を複数本束ねて構成される補強繊維束の、好ましくは略中心位置に導電繊維、例えばヒータ線が配置される構成とされ、ヒータ線の両端に電源を接続し、電源からヒータ線に給電することによりヒータ線を発熱させ、補強筋内の樹脂を迅速に加熱硬化し得ることが示されている。
【0012】
これら従来技術においては、強化繊維補強筋は、主としてコンクリート補強筋として、コンクリート構造物を新たに建設する場合に、コンクリートを打設する前の鉄筋構造体に帯鉄筋などとして組み込んで使用されている。
【特許文献1】特開平11−124957号公報
【特許文献2】特開平11−70596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者は、このような通電により硬化する通電加熱硬化型フレキシブル筋を使用すれば、既設のコンクリート柱、特に、壁付き柱の補強が極めて迅速に且つ効率良く施工し得ることを見出した。本発明は、斯かる本発明者の新規な知見に基づきなされたものである。
【0014】
つまり、本発明の目的は、軽量、高強度、しかも施工現場での変形が容易であり、補強部材の巻回が困難な壁付き柱などとされる被補強体への適用も容易である通電加熱硬化型フレキシブル筋を使用した極めて作業性の良いコンクリート柱状体の補強方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的は本発明に係るコンクリート柱状体の補強方法にて達成される。要約すれば、本発明は、(A)コンクリートによって形成された柱状体と、前記柱状体の周面から延設された少なくとも1つの壁部と、を有する被補強体に埋設された、前記柱状体から前記壁部へと延在する差し筋を避けて、前記柱状体と前記壁部の接合部近傍に前記壁部を貫通する孔を設ける工程と、(B)多数本の強化繊維を有する連続繊維束と、前記連続繊維束の長手方向に沿って延在し、前記連続繊維束を束ね或いは囲包して配置された可撓性の外層部材と、前記外層部材の内側に設けられる通電により発熱する導電繊維と、前記連続繊維束及び前記外層部材に含浸された半硬化状態或いは未硬化状態の樹脂と、を有する通電加熱硬化型フレキシブル筋を、前記孔を通して前記柱状体の長手方向の所定箇所に所定回数巻回する工程と、(C)前記通電加熱硬化型フレキシブル筋の前記導電繊維に電源より給電して発熱させ、前記連続繊維束及び前記外層部材に含浸された樹脂を加熱硬化する工程と、を有することを特徴とするコンクリート柱状体の補強方法である。
【0016】
本発明の一実施態様によると、前記工程(A)の前に前記柱状体から前記壁部へと延在する差し筋の所在を探査する。前記差し筋が鉄筋である場合には、該差し筋を電磁波を利用して探査することができる。
【0017】
ここで、少なくとも前記柱状体に化粧モルタルなどの被覆体が覆設されている場合には、前記(A)工程の前、又は前記(A)工程の後且つ前記(B)工程の前に、少なくとも前記通電加熱硬化型フレキシブル筋を巻回する箇所の前記柱状体に覆設された被覆体を除去し、前記柱状体の表面を露出させてから補強することも可能である。
【0018】
又、前記柱状体の断面形状が矩形などの隅角部を有する形状である場合には、前記柱状体の少なくとも前記通電加熱硬化型フレキシブル筋を巻回する箇所の隅角部を湾曲状に加工することができる。又、本発明の他の実施態様によると、前記通電加熱硬化型フレキシブル筋を巻回する箇所の前記柱状体の表面に樹脂系パテ材を擦り付けることができる。
【0019】
本発明において、前記通電加熱硬化型フレキシブル筋の前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維を含む無機繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維を含む有機繊維、又はチタン繊維、ステンレススチール繊維、鉄繊維を含む金属繊維を単独で、又は複数種を混合して使用することができる。
【0020】
本発明において、一実施態様によると、前記通電加熱硬化型フレキシブル筋の前記外層部材は、前記連続繊維束を構成する強化繊維と同質か或いは異質の繊維で作製された編組体とすることができる。他の実施態様によると、前記外層部材は、前記連続繊維束を構成する強化繊維と同質か或いは異質の繊維で作製されたテープ或いは紐とすることができる。又、好ましくは、前記外層部材を構成する繊維は、ガラス繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維を含む絶縁性繊維を単独で、又は複数種を混合して使用する。
【0021】
本発明において、一実施態様によると、前記通電加熱硬化型フレキシブル筋の前記導電繊維としてニクロム線、タングステン線、ニッケル線を含む通電により発熱する金属線を単独で、又は複数種を混合して使用し、前記連続繊維束内に配置することができる。又、他の実施態様によると、前記強化繊維として炭素繊維、チタン繊維、鉄繊維を含む通電により発熱する繊維を単独で、又は複数種を混合して使用し、前記導電繊維の全部又は一部を兼ねることができる。
【0022】
本発明において、前記樹脂は、加熱硬化型のエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、MMA樹脂又はウレタン系樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、軽量、高強度、しかも施工現場での変形が容易であり、補強部材の巻回が困難な壁付き柱などとされる被補強体への適用も容易である通電加熱硬化型フレキシブル筋を使用して、極めて作業性の良いコンクリート柱の補強が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係るコンクリート柱状体の補強方法を図面に則して更に詳しく説明する。
【0025】
実施例1
通電加熱硬化型フレキシブル筋
先ず、本発明に使用される通電加熱硬化型フレキシブル筋(以下、単に「フレキシブル筋」と呼ぶ。)について説明する。
【0026】
図1(A)、(B)及び図2に、フレキシブル筋の一実施例を示す。本実施例にてフレキシブル筋1は、多数本の強化繊維fを有する連続繊維束2と、この連続繊維束2を束ねて、或いは、囲包して配置された可撓性の外層部材3と、外層部材3の内側に配置される導電繊維4と、を有している。
【0027】
連続繊維束2は、好ましくは、多数本の強化繊維fを一方向に引き揃えて配列して作製される。強化繊維fを編んで連続繊維束2を作製することも可能ではあるが、この場合には、繊維が重なっている部分で強度低下を引き起こす。これに対して、強化繊維fを平行に配列した場合には、繊維が重なる部分がなく、本来の強化繊維fの繊維強度を発揮することができる。
【0028】
つまり、本実施例では、所定本数の強化繊維fを平行に或いは緩く撚りを掛けて収束して作製されるストランド(強化繊維束)を更に平行に或いは緩く撚りを掛けて複数本束ねることによって作製される。
【0029】
強化繊維fとしては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維を含む無機繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維を含む有機繊維、又はチタン繊維、ステンレススチール繊維、鉄繊維を含む金属繊維を単独で、又は複数種を混合して使用することができる。連続繊維束2の所望の物性、例えば、破断延び、弾性率に応じて、単独又は複数種類混合して用いる強化繊維fを選択すればよい。
【0030】
通常、炭素繊維が好適に使用され、PAN系、ピッチ系、その他、いずれのタイプの炭素繊維であっても構わない。好ましくは、強度が100Kgf/mm2(≒980N/mm2)以上、又弾性率が10Tonf/mm2(≒98,000N/mm2)以上とされる高強度、高弾性のものを使用する。
【0031】
又、強化繊維fとしてアラミド繊維などの有機繊維を使用する場合、強度が100Kgf/mm2(980N/mm2)以上、弾性率が2Tonf/mm2(19,600N/mm2)以上とされる。
【0032】
本発明のフレキシブル筋1は、用途に応じて種々の寸法とすることができるが、詳しくは後述するようにコンクリート柱に巻回して補強するのに使用する場合、外径として約2〜50mmとすることが好ましい。例えば、強化繊維fとして炭素繊維を使用する場合、炭素繊維のフィラメント本数は、24,000〜20,000,000本程度とされる。
【0033】
可撓性の外層部材3は、前記連続繊維束2を構成する強化繊維と同質か或いは異質の強化繊維で作製される。詳しくは後述するように、コンクリート柱状体の補強において、コンクリート或いはモルタルとの定着性が良好であることから、好ましくは図1(A)、(B)に示すように、連続繊維束2の強化繊維fと同質或いは異質の繊維f’で作製された編組体3Aとされる。但し、これに限定されるものではない。これにより、連続繊維束2は外層部材3にて被覆され、この外層部材3にて緩く拘束された状態とされる。
【0034】
別法として、外層部材3は、図3(A)に示すように、同質或いは異質の強化繊維を平行に配列して或いは編成して形成された幅広の、或いは図3(B)に示すように幅狭若しくは紐状のテープ3Bとすることができる。又、これらテープ3Bなどを互いに離間して一方向に、或いは図3(C)に示すように、互いに交差するように両方向に巻き付けることによって連続繊維束2を束ねることも可能である。
【0035】
このように、可撓性の外層部材3は連続繊維束2を構成する強化繊維fと同質或いは異質の繊維f’にて構成し得るが、詳しくは後述するような通電加熱時の短絡防止の観点から、外層部材3は絶縁性であることが好ましく、繊維f’としては、好ましくはガラス繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維を含む絶縁繊維を単独で、又は複数種混合して使用する。通常、ガラス繊維が好適に使用される。又、繊維f’の繊度は、好ましくは20〜10,000g/km程度とされる。
【0036】
外層部材3の内側、好ましくは連続繊維束2内の断面略中心位置には、導電繊維4がフレキシブル筋の長手方向に沿って配置される。導電繊維4は、後述するように、施工時に通電によりフレキシブル筋1を加熱し硬化させる際の電気の流れ道となる。従って、導電繊維4は、通電した時に発熱する電気抵抗を有するものであり、例えばニクロム線、タングステン線、ニッケル線などの金属線が使用可能である。
【0037】
強化繊維fとして炭素繊維など、つまり、強化繊維自体が電気伝導性を有しており、通電により発熱し得る繊維を用いる場合、連続繊維束自体を導電繊維4として使用することができる。この場合、連続繊維束2内に特別に設ける導電繊維4の量は比較的少なくするか、或いは省くことができる。
【0038】
連続繊維束2を構成する強化繊維fとしてアラミド繊維などの絶縁性繊維を用いる場合は、導電繊維4を複数本挿入するなどして通電発熱性能を高めることが好ましい。
【0039】
例えば、強化繊維fとして炭素繊維を用いて、外径5mm(フィラメント本数が24,000本の炭素繊維束が9本:216,000フィラメント)程度の連続繊維束2を形成する場合、連続繊維束2内に特別に設ける導電繊維4として、例えば線径0.2mmのニクロム線などの抵抗線を0〜1本程度挿入することが好ましい。又、例えば強化繊維fとしてアラミド繊維を用いて、外径10mm(7100デニールのアラミド繊維60本)程度の連続繊維束2を形成する場合、導電繊維4として、例えば線径0.2mmのニクロム線などの抵抗線を3〜5本程度挿入することが好ましい。当然、所望の通電、加熱特性に応じて、導電繊維4の材料、及び線径、本数などの条件は適宜変更可能である。
【0040】
本実施例によれば、フレキシブル筋1には、予め樹脂が含浸され、半硬化状態或いは未硬化状態のプリプレグとして施工現場に提供される。そして、施工現場にてこの樹脂を加熱硬化してFRP(繊維強化樹脂)化する。
【0041】
本実施例では、詳しくは後述するように、先ずフレキシブル筋1のプリプレグの作製に際して連続繊維束2に樹脂を含浸させ、この連続繊維束2に付着した樹脂が、繊維f’を連続繊維束2の周りにブレーディングする際、或いはフレキシブル筋1を加熱硬化させる際に外層部材3に含浸する。
【0042】
フレキシブル筋1に含浸させる樹脂としては、加熱硬化型のエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、MMA樹脂、ウレタン樹脂などのラジカル反応系樹脂を好適に使用し得る。含浸作業性などの点から通常1〜1,000ポアズ(P)とされるのが好ましい。
【0043】
例えば、加熱硬化型のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA系液状エポキシ樹脂(エピコート−828/油化シェルエポキシ(株)製)、ジシアンジアミド(アデカハードナーEH−3842/旭電化工業(株)製)、ジクロルメチルウレア(DCMU)(DCMU−99/保土谷化学工業(株)製)の混合剤を好適に使用することができる。又、加熱硬化型の不飽和ポリエステル樹脂としては、リゴラック158BQT(昭和高分子(株)製)、過酸化物(硬化剤)(パーブチルZ/日本油脂(株)製)、酸化マグネシウム若しくはイソシアネート増粘剤の混合剤を好適に用いることができる。
【0044】
フレキシブル筋1に含浸される樹脂の量としては、連続繊維束2及び外層部材3の量(体積)をVF、連続繊維束2及び外層部材3に含浸された樹脂の量(体積)をVRとし、VT=VF+VRとしたときに、樹脂充填率(%)、即ち、(VR÷VT)×100が20〜90%となるように選定するのが好ましい。樹脂充填率が20%より少ないと、強化繊維と強化繊維の間で応力の伝達ができなくなり、結果として全体の引張強度が低下するといった問題があり、又、90%より大きいと、繊維の量が相対的に少なくなり、全体の引張強度が高くならないだけでなく、物理的に樹脂を含浸できないといった問題が発生する。従って、好ましくは、この樹脂充填率は30〜60%とされる。
【0045】
フレキシブル筋1を製造した後に、連続繊維束2、更には外層部材3に含浸された樹脂は完全に硬化されることなはなく、半硬化状態或いは未硬化状態、即ち、プリプレグ状態に維持される。従って、本発明のフレキシブル筋1は、施工現場において硬化前には可撓性に優れている。
【0046】
フレキシブル筋1のプリプレグは、外層部材3の内側、即ち、連続繊維束2の好ましくは断面略中央に配置された導電繊維4、或いは連続繊維2が導電繊維4を兼ね得る場合には連続繊維束2に通電して加熱することによって、連続繊維束2、更には外層部材3に含浸された加熱硬化型樹脂を硬化させてFRPを形成する。
【0047】
つまり、例えば図4に示すように、施工現場にて導電繊維4の両端に電源5を接続して、電源5から導電繊維4に給電することにより導電繊維4を発熱させ、連続繊維束2、更には外層部材3に含浸された樹脂を迅速に加熱硬化させる。上述のように、連続繊維束2が導電繊維4を兼ね得る場合、連続繊維束自体に通電して連続繊維束2、更には外層部材3に含浸された樹脂を加熱硬化することが可能である。
【0048】
フレキシブル筋1のプリプレグは、例えば100m単位程度のロール状として施工現場に運搬され、施工現場にて必要長さを切り取り、詳しくは後述するように被補強コンクリート柱状体の必要箇所に必要回数巻回して配置した後に、通電加熱を行い硬化させてFRP筋化する。
【0049】
このように、フレキシブル筋1は可撓性に富み、極めて作業性に優れ、又運搬容易性にも優れている。
【0050】
又、フレキシブル筋1の連続繊維束2の周りに配置する外層部材3を編組体3Aとすることによって、詳しくは後述するように被補強コンクリート柱状体にフレキシブル筋1を巻回して固定した後に打設するコンクリート、モルタルなどとの定着性が良好である。
【0051】
更に、外層部材3を絶縁性の繊維f’により構成することによって、通電時の短絡を防止することができる。
【0052】
通電加熱硬化型フレキシブル筋の製造例
次に、フレキシブル筋1のプリプレグの製造方法の一例を説明する。ここでは、連続繊維束2内に導電繊維4を特別に設ける場合について説明する。
【0053】
図5は、本発明に係るフレキシブル筋1のプリプレグの製造装置100の一例の概略構成を示しており、大別して、連続繊維供給部110、樹脂供給部120、導電繊維供給部130、ブレーディング部140、及び巻き取り部150を備えている。
【0054】
例えば炭素繊維とされる、連続繊維束2を構成する強化繊維fは、連続繊維供給部110が備えた複数のリール111から繰り出される。リール111から繰り出された強化繊維fは、一方向に引き揃えて平行に或いは緩く撚りを掛けて、所定の連続繊維束2とされる。上述のように、連続繊維束2は、先ず所定本数の強化繊維fを平行に或いは緩く撚りを掛けて収束してストランドを作製し、このストランドを更に平行に或いは緩く撚りを掛けて複数本束ねることによって作製することができる。こうして収束された連続繊維束2は、支持ローラ、転向ローラなどのローラ群を介して樹脂供給部120まで搬送される。
【0055】
樹脂供給部120では、樹脂供給装置121によって連続繊維束2に加熱硬化型の樹脂が供給される。樹脂供給装置121は、上述のような所定の含浸量が得られるように、所定の割合で連続繊維束2に樹脂を供給する。つまり、本実施例では、更に下流で連続繊維束2の周りに繊維f’によるブレーディングを行う際或いはフレキシブル筋1を加熱硬化させる際に外層部材3にも樹脂が含浸されて上述のような含浸量が得られるように、樹脂供給装置121は連続繊維束2に比較的多めの樹脂を供給できるよう構成することが好ましい。
【0056】
樹脂供給装置121としては、樹脂を収容した樹脂槽から塗布ローラによって連続繊維束2に樹脂を供給するロールコート形式を用いることができる。或いは、上述のように連続繊維束2には比較的多めの樹脂を付けるために、樹脂を収容した樹脂槽中に樹脂未含浸の連続繊維束2を浸漬することによって樹脂を供給する、ディッピング形式とすることもできる。こうして、連続繊維2に樹脂が供給(ロールコート或いはディッピング)されると、樹脂は連続繊維束2中に含浸される。
【0057】
樹脂が含浸された連続繊維束2は、更に支持或いは転向ローラ群によって導電繊維供給部130に至り、ここで連続繊維束2の断面略中心部に、例えばニクロム線などの抵抗線とされる導電繊維4が挿入される。
【0058】
導電繊維4は、連続繊維束2の中、好ましくは断面略中央に導電繊維4を挿入する。
【0059】
導電繊維4が挿入された後、連続繊維束2の周囲には、ブレーディング部140が備えたブレーディング装置141により、例えばガラス繊維とされる繊維f’がブレーディングされ、連続繊維束2を束ね或いは囲包するように外層部材3が形成される。
【0060】
外層部材3がブレーディングされたフレキシブル筋1は、巻き取り部150が備えた、例えば紙管などとされる巻き取りロール151に巻き取られる。上述のように、フレキシブル筋1は、例えば100m単位程度のロール状とされる。
【0061】
連続繊維束2の強化繊維fとして、通電により発熱し導電繊維4の機能を兼ねる繊維を使用して、外層部材3の内側に特別に導電繊維4を設けない場合は、導電繊維供給部130は省略することができる。
【0062】
その後、巻き取られたフレキシブル筋1は室温で養生され、含浸樹脂の増粘を待ってプリプレグ化され、フレキシブル筋1のプリプレグとなる。
【0063】
上述のように、外層部材3には特別に樹脂を含浸させることはしないが、好ましくは、連続繊維束2に付着している樹脂がブレーディングの時或いはフレキシブル筋1の加熱硬化の時に含浸し、フレキシブル筋1を加熱硬化させる際にFRP化される。
【0064】
以上、本発明に従うフレキシブル筋1は、連続繊維束2、更には外層部材3に含浸された樹脂は施工現場にて導電繊維4に通電して加熱するまで完全に硬化されることはなく、半硬化状態或いは未硬化状態に維持される。従って、フレキシブル筋1は、施工現場にて可撓性に優れており、任意の形状に変形することができ、又、変形した後は自然に元の形状に戻ることはなく、変形した形態を保持し、極めて良好な作業性を与える。
【0065】
コンクリート柱状体の補強例
次に、フレキシブル筋1を使用してコンクリート柱を補強する方法の一実施例を説明する。本実施例では、フレキシブル筋1は、壁付き柱の耐震補強に適用される。
【0066】
フレキシブル筋1は、適当な単位(例えば100m)のロール状で施工現場に搬送され、施工現場にて必要長さに切り取り、補強を必要とする箇所に配筋した後、通電加熱を行い硬化させてFRP筋化する。
【0067】
フレキシブル筋1を用いてコンクリートにて形成された柱状体(コンクリート柱状体)を補強するには、コンクリート柱状体の長手方向に所定間隔にて、フレキシブル筋1を所定回数巻き付け、これを通電加熱によって硬化させる。更に、フレキシブル筋1が硬化した後に、コンクリートやモルタルの打設を行うことができる。
【0068】
図6(A)、(B)は、本発明の補強方法を適用する壁付き柱10を示しており、断面矩形の柱部11の周面、本実施例では柱部11の相対する2つの周面からは、この柱部11を挟んで同一平面上に連なる袖壁12、12が延設されている。壁付き柱10の柱部11及び袖壁12、12は、それぞれ鉄筋コンクリートにて形成された、コンクリート柱(柱状体)11a、及び、このコンクリート柱11aより延設された少なくとも1つの壁部としての2つのコンクリート壁12a、12aに、化粧モルタル13を覆設して形成されている。
【0069】
コンクリート柱11a及びコンクリート壁12a、12aには鉄筋が埋設されており、コンクリート柱11aからコンクリート壁12a、12aへと鉄筋による差し筋14が延在して埋設されている。通常、差し筋14はコンクリート柱11aを貫通して、コンクリート柱11aの周面の相対する2つの周面から延設される両コンクリート壁12a、12aへと延在する。又、差し筋14は、通常、コンクリート柱11aの長手方向に所定の間隔dで埋設されている。
【0070】
図6(A)、(B)に示す壁付き柱10を補強する場合、フレキシブル筋1を巻き付ける箇所近傍のみ、或いは柱部11の全面の化粧モルタル13をハツリ取って除去し、コンクリート柱11aを露出させる。本実施例では、フレキシブル筋1を巻き付ける箇所の化粧モルタル13を除去する。
【0071】
本実施例のように、コンクリート柱11aの断面形状が矩形である場合、図7(A)、(B)に示すように、化粧モルタルをハツリ取ることによって露出したコンクリート柱11aの隅角部(コーナー部)15を湾曲状に加工する(R加工)。これによって、フレキシブル筋1の屈曲或いは応力集中による強度低下を最小限にとどめるようにする。R加工は、コーナー部15をコンクリート鉋などの適当な手段によって湾曲状に削り取るか、或いはコンクリート柱11aのコーナー部15の面取りを行った後に、予めR加工した鋼製のパネルなどの保護部材(図示せず)を、ボルトや接着材などの適当な手段により取り付けることも可能である。当然、コンクリート柱11aの断面形状が円形、長円形或いは楕円形など、隅角部を有しない形状である場合、上記R加工の工程は必要ない。
【0072】
又、コンクリート柱11a、コンクリート壁12a、12aに埋設されている差し筋14の所在を探査し、適当な手段により印を設けることができる。通常、差し筋が鉄筋であれば、例えば差し筋部分を電磁波を利用して探査することができる。
【0073】
次いで、図8(A)、(B)に示すように、探査された差し筋14を避けてフレキシブル筋1を通す貫通孔16を設ける。貫通孔は、コンクリート柱11aの長手方向のフレキシブル筋1を巻回する所定箇所において、袖壁12、即ち、コンクリート柱11aとコンクリート壁12a、12aの接合部近傍を削孔して設ける。
【0074】
コンクリート柱11aの長手方向におてフレキシブル筋1を巻回する箇所は、フレキシブル筋1の構成(例えば、強化繊維の種類や量)、要求される補強強度に応じて適宜選定できるが、通常、コンクリート柱11aの長手方向に所定間隔Dにて複数箇所に巻回する。従って、通常、貫通孔16はこの箇所に対応して、コンクリート柱11aの長手方向に沿って複数箇所に設ける。
【0075】
その後、図9(A)、(B)に示すように、上述のようにして設けた貫通孔14を通して、所定の長さに切断されたフレキシブル筋1をコンクリート柱11aに必要回数巻き付ける。フレキシブル筋1は、限定するものではないが、例えば手作業によってコンクリート柱11aに巻き付けることができる。
【0076】
フレキシブル筋1をコンクリート柱11aに巻き付ける回数は、フレキシブル筋1の構成(例えば、強化繊維の種類や量)、要求される補強強度に応じて適宜選定すればよい。
【0077】
又、好ましくは、フレキシブル筋1を巻き付ける位置のコンクリート柱11aの表面に、平滑性を確保する目的で樹脂系パテ材を擦り付け、その後、このパテが硬化する前にフレキシブル筋1を巻き付ける。樹脂系パテ材としては、FE−B/日鉄コンポジット(株)製を好適に用いることができる。
【0078】
フレキシブル筋1をコンクリート柱11aに巻き付けた後に、フレキシブル筋1の両端において、導電繊維4、或いは連続繊維束2が通電により発熱する繊維によって構成される場合には連続繊維束2に電源5を接続して通電することによって加熱し、フレキシブル筋1の連続繊維束2、更には外層部材3に含浸された樹脂を加熱硬化させ、FRP筋化する。
【0079】
通常、電源5から5〜100V、0.1〜20A(直流)の通電を行い、導電繊維4、或いは連続繊維束2を80〜180℃程度に加熱する。勿論、通電条件は、例えばフレキシブル筋1に含浸された樹脂、或いは要求される硬化時間、放熱条件などによって変更することができる。
【0080】
コンクリート柱11aに巻回したフレキシブル筋1は、図9に示すように、その両端部から所定の長さ(定着長L)だけコンクリート柱11aの軸線方向に重ね、通電加熱硬化させることによって定着(接着)させる。
【0081】
こうしてフレキシブル筋1を硬化させた後に、コンクリートの打設やモルタル仕上げを行い、壁付き柱10の断面復旧を行い、耐震補強(剪断補強)、補修工事を完了する。例えば、本実施例では、図10(A)、(B)に示すように、ポリマーセメントモルタル(例えば、電気化学工業(株)製 RIS332)17を用いて、貫通孔16の充填、柱部11の増厚を行う。
【0082】
上述のように、連続繊維束2の周りに配置する外層部材3を編組体3Aにより構成することにより、フレキシブル筋1の硬化後に打設するモルタル、コンクリートとの定着性を向上することができる。
【0083】
又、外層部材3を絶縁繊維にて構成することによって、フレキシブル筋1を通電加熱硬化させる際の短絡を防止することができる。
【0084】
本実施例の方法に使用するフレキシブル筋1の一例を示せば、次の通りである。
【0085】
A.連続繊維
材質:PAN系炭素繊維約24,000本からなる繊維束(ストランド)を20本一方向に平行に配列して補強繊維束を形成した
炭素繊維の引張強度:490Kgf/mm2(≒4802N/mm2)
弾性率 :23.5Tonf/mm2(≒230N/mm2)
B.外層部材
材質:ポリエステル繊維を組紐状に連続繊維束の周りに製織した
C. 導電繊維
材質:線径0.2mmのニクロム線
本数:1本
D.樹脂
種類:加熱硬化型エポキシ樹脂
ビスフェノールA系液状エポキシ樹脂(エピコート−828/油化シェルエポキシ(株)製)/ジシアンジアミド(アデカハードナーEH−3842/旭電化工業(株)製)/ジクロルメチルウレア(DCMU)(DCMU−99/保土谷化学工業(株)製)
充填率:60%
【0086】
例えば、このフレキシブル筋1(外径7mm)を、50cm×50cmのコンクリート柱に3周巻回する場合、フレキシブル筋1の導電繊維4の両端に電源5から20Vの直流電圧を印加して、これを150℃程度に加熱し、含浸された樹脂を硬化させる。この条件にて加熱硬化時間は約30分である。
【0087】
このようにして補強した壁付き柱に対して試験を行ったが、作業性、補強強度において極めて良好な結果を得ることができた。
【0088】
以上、本発明によれば、フレキシブル筋1は可撓性に優れ、しかも細長形状であるので、例えば壁付き柱の耐震補強を行うような場合にも、袖壁自体を完全に柱部周りから撤去する必要なく、差し筋を避けてコンクリート柱に巻回することが可能であり、極めて作業性良くコンクリート柱状体の補強(耐震補強、剪断補強)工事を行うことができる。
【0089】
尚、本発明の方法を適用し得る壁付き柱としては、上記実施例にて挙げた形態に限らず、例えば図11(a)に示すように、コンクリート柱11aから延設されたコンクリート壁12a、12aとコンクリート柱11aの1面が同一平面となるように形成された壁付き柱、図11(b)に示すように、コンクリート柱11aの1面から、例えばコンクリート柱11aの他の1面と同一平面状となるようにコンクリート壁12aが延設された壁付き柱、或いは11(c)に示すように断面が円形であるか、その他長円形、楕円形など断面が矩形形状ではないコンクリート柱11aの周面から、例えばコンクリート柱11aを介して同一平面状に延設された2つのコンクリート壁12aを有する壁付き柱など、各種の形態の壁付き柱が挙げられる。当然、柱部から延設される壁部は、柱部を挟んで同一平面状に形成されている必要はなく、柱部から任意の角度にて壁部が延設されている場合にも本発明は適用できる。
【0090】
又、柱状体は、所謂、柱に限定されるものではなく、コンクリートにて作製された梁であってもよい。特に本発明によれば、梁から延在する差し筋が埋設された壁部を伴った梁を、上述の実施例における壁付き柱の場合と同様に極めて作業性良く補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明に使用する通電加熱硬化型フレキシブル筋の一実施例の斜視図である。
【図2】図1に示す通電加熱硬化型フレキシブル筋の横断面図である。
【図3】本発明に使用する通電加熱硬化型フレキシブル筋の他の実施例の斜視図である。
【図4】本発明に係る通電加熱硬化型フレキシブル筋を硬化させる方法を説明するための通電加熱硬化型フレキシブル筋の縦断面図である。
【図5】本発明に使用する通電加熱硬化型フレキシブル筋の製造装置の一実施例の概略構成図である。
【図6】本発明のコンクリート柱状体の補強方法を適用し得る壁付き柱の一例を示す(a)断面図、(b)斜視図である。
【図7】図6の壁付き柱の化粧モルタルの一部をハツリ取った様子を示す(a)断面図、(b)斜視図である。
【図8】図6の壁付き柱に貫通孔を設けた様子を示す(a)断面図、(b)斜視図である。
【図9】図6の壁付き柱に本発明に係る通電加熱硬化型フレキシブル筋を巻回した様子を示す(a)断面図、(b)斜視図である。
【図10】図6の壁付き柱の柱部を増厚した様子を示す(a)断面図、(b)斜視図である。
【図11】本発明のコンクリート柱状体の補強方法を適用し得る壁付き柱の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0092】
1 通電加熱硬化型フレキシブル筋(フレキシブル筋)
2 連続繊維束
3 外層部材
4 導電繊維
10 壁付き柱
11 柱部
11a コンクリート柱(柱状体)
12 袖壁(壁部)
12a コンクリート壁(壁部)
13 化粧モルタル
14 差し筋
16 貫通孔
100 加熱硬化型フレキシブル筋プリプレグの製造装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)コンクリートによって形成された柱状体と、前記柱状体の周面から延設された少なくとも1つの壁部と、を有する被補強体に埋設された、前記柱状体から前記壁部へと延在する差し筋を避けて、前記柱状体と前記壁部の接合部近傍に前記壁部を貫通する孔を設ける工程と、
(B)多数本の強化繊維を有する連続繊維束と、前記連続繊維束の長手方向に沿って延在し、前記連続繊維束を束ね或いは囲包して配置された可撓性の外層部材と、前記外層部材の内側に設けられる通電により発熱する導電繊維と、前記連続繊維束及び前記外層部材に含浸された半硬化状態或いは未硬化状態の樹脂と、を有する通電加熱硬化型フレキシブル筋を、前記孔を通して前記柱状体の長手方向の所定箇所に所定回数巻回する工程と、
(C)前記通電加熱硬化型フレキシブル筋の前記導電繊維に電源より給電して発熱させ、前記連続繊維束及び前記外層部材に含浸された樹脂を加熱硬化する工程と、
を有することを特徴とするコンクリート柱状体の補強方法。
【請求項2】
前記柱状体の少なくとも前記通電加熱硬化型フレキシブル筋を巻回する箇所の隅角部を湾曲状に加工する請求項1のコンクリート柱状体の補強方法。
【請求項3】
前記通電加熱硬化型フレキシブル筋を巻回する箇所の前記柱状体の表面に樹脂系パテ材を擦り付ける請求項1又は2のコンクリート柱状体の補強方法。
【請求項4】
前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維を含む無機繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維を含む有機繊維、又はチタン繊維、ステンレススチール繊維、鉄繊維を含む金属繊維を単独で、又は複数種を混合して使用する請求項1〜3のいずれかの項に記載のコンクリート柱状体の補強方法。
【請求項5】
前記外層部材は、前記連続繊維束を構成する強化繊維と同質か或いは異質の繊維で作製された編組体とされる請求項1〜4のいずれかの項に記載のコンクリート柱状体の補強方法。
【請求項6】
前記外層部材は、前記連続繊維束を構成する強化繊維と同質か或いは異質の繊維で作製されたテープ或いは紐とされる請求項1〜5のいずれかの項に記載のコンクリート柱状体の補強方法。
【請求項7】
前記外層部材を構成する繊維は、ガラス繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維を含む絶縁性繊維を単独で、又は複数種を混合して使用する請求項5又は6のコンクリート柱状体の補強方法。
【請求項8】
前記導電繊維としてニクロム線、タングステン線、ニッケル線を含む通電により発熱する金属線を単独で、又は複数種を混合して使用し、前記連続繊維束内に配置する請求項1〜7のいずれかの項に記載のコンクリート柱状体の補強方法。
【請求項9】
前記強化繊維として炭素繊維、チタン繊維、鉄繊維を含む通電により発熱する繊維を単独で、又は複数種を混合して使用し、前記導電繊維の全部又は一部を兼ねる請求項1〜8のいずれかの項に記載のコンクリート柱状体の補強方法。
【請求項10】
前記樹脂は、加熱硬化型のエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、MMA樹脂又はウレタン系樹脂である請求項1〜9のいずれかの項に記載のコンクリート柱状体の補強方法。
【請求項1】
(A)コンクリートによって形成された柱状体と、前記柱状体の周面から延設された少なくとも1つの壁部と、を有する被補強体に埋設された、前記柱状体から前記壁部へと延在する差し筋を避けて、前記柱状体と前記壁部の接合部近傍に前記壁部を貫通する孔を設ける工程と、
(B)多数本の強化繊維を有する連続繊維束と、前記連続繊維束の長手方向に沿って延在し、前記連続繊維束を束ね或いは囲包して配置された可撓性の外層部材と、前記外層部材の内側に設けられる通電により発熱する導電繊維と、前記連続繊維束及び前記外層部材に含浸された半硬化状態或いは未硬化状態の樹脂と、を有する通電加熱硬化型フレキシブル筋を、前記孔を通して前記柱状体の長手方向の所定箇所に所定回数巻回する工程と、
(C)前記通電加熱硬化型フレキシブル筋の前記導電繊維に電源より給電して発熱させ、前記連続繊維束及び前記外層部材に含浸された樹脂を加熱硬化する工程と、
を有することを特徴とするコンクリート柱状体の補強方法。
【請求項2】
前記柱状体の少なくとも前記通電加熱硬化型フレキシブル筋を巻回する箇所の隅角部を湾曲状に加工する請求項1のコンクリート柱状体の補強方法。
【請求項3】
前記通電加熱硬化型フレキシブル筋を巻回する箇所の前記柱状体の表面に樹脂系パテ材を擦り付ける請求項1又は2のコンクリート柱状体の補強方法。
【請求項4】
前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維を含む無機繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維を含む有機繊維、又はチタン繊維、ステンレススチール繊維、鉄繊維を含む金属繊維を単独で、又は複数種を混合して使用する請求項1〜3のいずれかの項に記載のコンクリート柱状体の補強方法。
【請求項5】
前記外層部材は、前記連続繊維束を構成する強化繊維と同質か或いは異質の繊維で作製された編組体とされる請求項1〜4のいずれかの項に記載のコンクリート柱状体の補強方法。
【請求項6】
前記外層部材は、前記連続繊維束を構成する強化繊維と同質か或いは異質の繊維で作製されたテープ或いは紐とされる請求項1〜5のいずれかの項に記載のコンクリート柱状体の補強方法。
【請求項7】
前記外層部材を構成する繊維は、ガラス繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維を含む絶縁性繊維を単独で、又は複数種を混合して使用する請求項5又は6のコンクリート柱状体の補強方法。
【請求項8】
前記導電繊維としてニクロム線、タングステン線、ニッケル線を含む通電により発熱する金属線を単独で、又は複数種を混合して使用し、前記連続繊維束内に配置する請求項1〜7のいずれかの項に記載のコンクリート柱状体の補強方法。
【請求項9】
前記強化繊維として炭素繊維、チタン繊維、鉄繊維を含む通電により発熱する繊維を単独で、又は複数種を混合して使用し、前記導電繊維の全部又は一部を兼ねる請求項1〜8のいずれかの項に記載のコンクリート柱状体の補強方法。
【請求項10】
前記樹脂は、加熱硬化型のエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、MMA樹脂又はウレタン系樹脂である請求項1〜9のいずれかの項に記載のコンクリート柱状体の補強方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−2411(P2006−2411A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178945(P2004−178945)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(599104369)日鉄コンポジット株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(599104369)日鉄コンポジット株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
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