説明

コンクリート構造物端面の防水用組成物及び該組成物を用いたコンクリート構造物端面の防水工法、並びに該工法を施工して得られる防水水密構造

【課題】長期に亘って優れた防水性能を有する防水水密構造を低コストで形成可能な、コンクリート構造物端面の防水用組成物及び該組成物を用いたコンクリート構造物端面の防水工法、並びに該工法を施工して得られる防水水密構造を提供。
【解決手段】ポリブタジエンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールからなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオールおよびジイソシアネートを主成分とする発泡ポリウレタン用配合物と、発泡剤とを含んでなる、コンクリート製あるいは鋼製構造物の端面の防水用組成物。これら構造物の端面に、この防水用組成物を塗布発泡させて該端面を被覆するコンクリート製あるいは鋼製構造物の端面の防水工法。この防水用組成物をコンクリート製橋梁の継目遊間、該橋梁と道路端部との継目遊間に、充填し現場発泡させた防水水密構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物端面の防水用組成物及び該組成物を用いたコンクリート構造物端面の防水工法、並びに該工法を施工して得られる防水水密構造に関する。
さらに詳しくは、本発明は、主にコンクリート製の道路橋用の補修材であって、現場注入施工型の発泡性目地材である上記防水用組成物並びにそのセットに関する。また本発明は、該目地材あるいはそのセットを用いて、コンクリート製あるいは鋼製橋梁同士の橋桁端面遊間や、橋梁の橋桁端面と接続道路の橋台パラペット部との遊間を充填密封して、極めて伸縮性に優れ、コンクリート構造物端面に対する防水性と、コンクリート構造物端面/端面間すなわち遊間の止水性に優れた防水水密構造を形成したり、緩衝目地を形成したりする防水工法に関する。また本発明は、該工法を施工して得られる防水水密構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、冬季に道路、線路、橋梁(特に道路橋)等の凍結防止等のために、塩化ナトリウムや塩化カルシウム等の凍結防止剤がしばしば散布されている。また海岸縁を通る道路や線路、橋梁は潮風に晒されている。
【0003】
しかしながら、橋梁のうちで鋼製橋のみならず道路コンクリート橋においても、特にその桁端では、このような凍結防止剤の散布や潮風の影響を強く受けて凍害、塩害等が発生し、劣化することがあった。
【0004】
このように劣化した道路コンクリート橋などの補修工事、例えば、その桁端防水工事は、樹脂エマルジョン、繊維質(場合によっては亜硝酸リチウムのような防錆剤も含むことがある。)を含むポリマーセメントの吹付けにより実施されている(例えば、非特許文献1)。
【0005】
また、実験的にはウレタンエラストマーのような柔軟性の高い現場注入型の高分子材料系の防水材を使用することも考え得る。
しかし、一般に橋桁端面遊間の巾は20〜50mm程度と狭く設計されており、しかもその高さは1〜2m程度もあるため、ポリマーセメントの吹付けには長いシャフトの付いたノズルを使用するもののその作業は極め煩雑で、直接視認しにくい橋桁端面の入組んだ内奥部などの吹付状況までは十分把握管理できないことが多い。また、コテ等による塗布工法も、コテを持った作業者が当該狭隘部に直接入り込んで作業できず、上記と同様の問題点を有する。
【0006】
道路コンクリート橋や鋼製橋の桁端防水の必要性は、通常の凍害、塩害の防止の観点からだけでなく、橋桁継目遊間に防水工事を施工しても、長期間維持でき難いことも挙げられる。桁端遊び間距離などは、橋梁が気温の変化で伸縮することにより変化し、また通行する車両の発生する振動等により頻繁に変化する。その結果、橋桁継目遊間に防水工事として、継目遊間の上部に位置する部位を道路面の埋設伸縮継手舗装材で構成し、かつその下部に位置する部位を軟質ポリブタジェンや軟質ウレタン樹脂等の柔軟性に富む、充填型の目地材で構成したとしても、防水層の防水性能は、このような伸縮や振動を強く受ける、いわゆる可動部では車両走行による持ち込み土砂(走行車両のタイヤや車体に付着し、車載された土砂が路面継目に落下すること)の影響やタイヤ圧力等の影響により長期間十分に維持できないことも大きな原因となっている。
【0007】
つまり、寒冷地の融雪剤散布区間の道路橋等では、水に溶解したNaCl、KCl等の塩分がこの防水性能の低下により橋桁端面を伝い橋脚台座に達し、塩化物イオンの浸透拡散による内部鉄筋の腐食膨張によるコンクリート剥離やアルカリ骨材反応を引起こし橋桁端面および橋脚台座コンクリートとその内部の鉄筋を劣化腐食させる原因となり始めている。
【0008】
この問題を解決するためには橋桁端面の防水のみならず床版コンクリートや橋脚台座コンクリートの劣化も同時に防止する必要があり、また性能的に如何に優れていても現在の工法のコスト以上になると実際上実施が極めて難しくなる。
【0009】
本発明はこれらの諸問題を解決するためになされたもので、以下に述べるように、特にコンクリート製構造物の端面や、該構造物相互の間隙や、該構造物と接続される道路と、該構造物との間隙などに施工することにより、長期に亘って優れた防水性能を有する防水水密構造を低コストで形成可能な、コンクリート構造物端面の防水用組成物及び該組成物を用いたコンクリート構造物端面の防水工法、並びに該工法を施工して得られる防水水密構造が実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【非特許文献1】藤原博ら共著、「(塩害を受けたコンクリート桁端狭隘部の補修工法)、橋梁と基礎」(株)建設図書、2004年12月号、p33〜39。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、橋梁に代表されるコンクリート製あるいは鋼製構造物、特にコンクリート製構造物の端面(イ)や、該構造物相互の間隙(ロ)や、該構造物と接続される道路と、該構造物との間隙(ハ)などに施工することにより、長期に亘って優れた防水性能及び止水性能を有する防水水密構造を低コストで形成可能な防水用組成物を提供することを目的としている。
【0011】
本発明は、該組成物を用いて、コンクリート構造物端面や、該構造物相互の間隙や、該構造物と接続される道路と、該構造物との間隙などに簡単に低コストで、長期に亘って優れた防水性能及び止水性能を有する防水水密構造を形成することができる防水工法を提供することを目的としている。
【0012】
また、本発明は、該工法を施工して得られる、上記性能を具備した防水水密構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る防水用組成物は、
(A)ポリブタジエンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールからなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオール(a)およびジイソシアネート(b)を主成分とする発泡ポリウレタン用配合物と、
(B)発泡剤と
を含んでなる、コンクリート製あるいは鋼製構造物の端面の防水用のものである。
【0014】
本発明では、上記発泡剤(B)が水であることが好ましい。
本発明では、上記防水用組成物は、さらに、粘度調整剤(C)を含有することが好ましい。
【0015】
本発明では、上記粘度調整剤(C)が可塑剤であることが好ましい。
本発明では、上記粘度調整剤(C)がジオクチルフタレート(DOP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジヘプチルフタレート
(DHP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)、ジオクチルセバケート(DOS)からなる群から選ばれた少なくとも1種の可塑剤であることが好ましい。
【0016】
本発明では、上記防水用組成物は、さらに、分散剤(D)を含有することが好ましい。
また、上記分散剤(D)が、アニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが望ましい。
【0017】
さらに、上記分散剤(D)が、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム、脂肪族二塩基酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸ナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも1種のアニオン界面活性剤であることが望ましい。
【0018】
本発明に係る上記防水用組成物は、さらに、ウレタン反応触媒(E)を含有することが好ましい。
本発明においては、上記ポリオール(a)が、ポリブタジエンポリオールであることが好ましい。
【0019】
本発明においては、上記ジイソシアネート(b)が、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、または
MDIとグリコール(またはポリエーテルグリコール)とが反応してなるプレポリマーであって、該プレポリマーの末端基が何れもイソシアネート基であるものと、MDIとの希釈物であることが好ましい。
【0020】
本発明においては、上記コンクリート製あるいは鋼製構造物が橋梁であることが好ましい。また該橋梁は、コンクリート製の橋梁であることがより好ましく、さらには橋梁の橋桁端面であることが特に望ましい。
【0021】
本発明に係る防水水密構造は、
橋梁などのコンクリート製あるいは鋼製構造物と、該構造物と所定距離離間して接続される道路との継目遊間(イ)、あるいは所定距離離間して接続される複数の上記構造物同士の継目遊間(ロ)等の継目遊間に形成される防水水密構造であって、
これら継目遊間の上部(すなわち路面に近接した部位)を除く部位、すなわち継目遊間の略中央部から下部にかけた部位に、上記の何れかに記載の防水用組成物を充填し発泡してなる発泡ポリウレタン層が形成され、該継目遊間の前記上部に耐圧防水層が形成されていることを特徴としている。本発明では、上記発泡ポリウレタン層と耐圧防水層とは少なくとも互いに対向する面の一部が接合されていることが好ましく、さらには対向面の全面が接合されていることが好ましい。
【0022】
本発明に係る上記防水水密構造の好適な第1の態様では、
上記耐圧防水層は、発泡ポリウレタン層を形成している発泡ポリウレタンよりも硬質で低発泡倍率〜無発泡の、好ましくは無発泡のポリウレタンにて形成され、かつ、発泡ポリウレタン層と耐圧防水層は連続して一体に形成されていることが好ましい。
【0023】
本発明に係る上記防水水密構造の好適な第2の態様では、上記耐圧防水層は、発泡ポリウレタン層を形成している発泡ポリウレタンよりも硬質で低発泡倍率〜無発泡の、好ましくは無発泡のポリウレタンにて形成され、かつ、発泡ポリウレタン層と耐圧防水層は別体に構成され、これら2層は接着剤による接着(i)あるいは、熱融着(ii)、発泡ポリウレタ
ン層の上面への耐圧防水用部材の注入硬化(iii)等により、その接合面の全面あるいは一
部が連結・接合されていることが好ましく、特にその全面が全く剥離しないように(iii)
等により堅固に接合されていることが最も好ましい。
【0024】
本発明に係る上記防水水密構造の好適な態様では、上記構造物の端部側面および端部底面にも、上記の防水用組成物を塗布または充填し、発泡してなる発泡ポリウレタン層が形成されていることが好ましい。
【0025】
本発明に係る防水水密構造は、上記構造物の端部外周面(通常、上面を除くことが多い
。)、すなわち通常、継目遊間を画成する面であることの多い端部前面、端部側面および
端部底面に、上記の防水用組成物を塗布または充填し、発泡してなる発泡ポリウレタン層が形成されていることが好ましい。
【0026】
本発明に係る防水工法は、コンクリート製あるいは鋼製構造物の端面の防水工法であって、
コンクリート製あるいは鋼製構造物の端面に、上記の何れかに記載の防水用組成物を塗布発泡させて該端面を被覆することを特徴としている。
【0027】
本発明では、上記コンクリート製あるいは鋼製構造物の端面を、高圧ウォータージェット(高圧洗浄水)で洗浄処理(好ましくは洗浄・表面はつり処理)した後に、上記の何れかに記載の防水用組成物を塗布発泡して該端面を被覆することが好ましい。上記洗浄表面はつり処理機としては、高圧洗浄水を噴出可能なように相対する2穴のノズルを有し、しかも処理面の効率的なはつり処理が可能なように高速回転するヘッドを有するものが作業効率等の点で望ましい。
【0028】
本発明では、上記コンクリート製あるいは鋼製構造物の端面に、プライマーを塗布した後、上記の何れかに記載の防水用組成物を塗布発泡させて該端面を被覆することが好ましい。
【0029】
本発明では、コンクリート製あるいは鋼製構造物の端面を、高圧ウォータージェットで洗浄処理(好ましくは洗浄・表面はつり処理)し、次いでこの処理済み面にプライマーを塗布した後に、上記の何れかに記載の防水用組成物を塗布発泡させて該端面を被覆することがより好ましい。
【0030】
本発明に係る上記防水工法では、上記プライマーが水性プライマーであることが好ましい。
本発明に係る上記防水工法では、
上記コンクリート製あるいは鋼製構造物が河川、道路、鉄道等を跨ぐように設置されている橋梁、好ましくはコンクリート製橋梁であり、
上記防水工法の施工部位が、該構造物の端面(橋桁端面)と、これと接続される道路あるいは鉄路の端部との継目遊間(イ)、あるいは複数の上記構造物同士の継目遊間(ロ)であり、かつ、
上記防水工法が、これら継目遊間(桁端面遊間)に充填され、あるいは構造物の端面、あるいはこれら構造物と接続される道路あるいは鉄路の端部に塗布された上記防水用組成物を現場発泡させてなるポリウレタン発泡体にて該継目遊間を充填密封し、あるいは構造物の端面を被覆して防水水密構造を形成させるものであることが好ましい。
【0031】
本発明に係る上記防水工法では、
橋梁などのコンクリート製あるいは鋼製構造物と、該構造物と所定距離離間して接続される道路との継目遊間(イ)、あるいは所定距離離間して接続される複数の上記構造物同士の継目遊間(ロ)等に、防水水密構造を形成するに際して、
これら継目遊間の上部にゴム、ウレタン樹脂、塩化ビニール樹脂等の軟質素材よりなる
チューブ等を配設し、次いで、予め該ゴムチューブ内に気体を充填して該ゴムチューブを膨張させてこれら継目遊間の上部を密閉した状態で、チューブより下方の継目遊間(すわなち継目遊間の上部を除く部位)に上記の何れかに記載の防水用組成物を充填し発泡して発泡ポリウレタン層を形成した後、
該ゴムチューブ内の気体を低減除去して該チューブを除去し、次いで、
該ゴムチューブが除去された継目遊間の上部に耐圧防水用部材を注入して耐圧防水層を形成することを特徴としている。
【0032】
本発明に係るコンクリート製あるいは鋼製構造物の端面の防水用組成物セットは、主剤成分(X、第1液)と硬化剤成分(Y、第2液)との2液セットであり、
主剤成分(X)として、
前記防水用組成物中に含まれる発泡ポリウレタン用配合物(A)中のポリオール成分である、ポリブタジエンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールからなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオール(a)、および前記防水用組成物中に含まれる発泡剤(B)を含み、そして必要により、さらに
粘度調整剤(C)、分散剤(D)、ウレタン反応触媒(E)のうちの何れか1種又は2種以上を含み、
硬化剤成分(Y)として、ジイソシアネート(b)を含むことを特徴としている。
【0033】
本発明の防水工法においては、上記構造物の端部側面および端部底面にも、上記の何れかに記載の防水用組成物を塗布または充填し、発泡してなる発泡ポリウレタン層が形成されていることが好ましい。
【0034】
本発明では、上記何れの工法においても、また何れの防水水密構造においても、構造物の基材表面は、プライマー処理されていることが好ましい。また発泡ポリウレタン層の上には、無発泡ポリウレタン層が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、橋梁に代表されるコンクリート製あるいは鋼製構造物、特にコンクリート製構造物の端面や、該構造物相互の間隙や、該構造物と接続される道路と、該構造物との間隙などに施工することにより、長期に亘って優れた防水性能及び止水性能を有する防水水密構造を低コストで形成可能な防水用組成物を提供することができる。
【0036】
本発明によれば、該組成物を用いて、コンクリート構造物端面や、該構造物相互の間隙や、該構造物と接続される道路と、該構造物との間隙などに簡単かつ低コストで、長期に亘って優れた防水性能及び止水性能を有する防水水密構造を形成することができる防水工法を提供することができる。
【0037】
また、本発明によれば、上記性能を具備した防水水密構造を提供することができる。
とくに、本発明の防水工法を、コンクリート製あるいは鋼製構造物の端面(橋桁端面)と、これと接続される道路あるいは鉄路の端部との継目遊間に施工し、またこれら構造物同士の継目遊間に施工する場合には、該継目遊間に発泡型充填材を充填して現場発泡させ軟質の発泡ポリウレタン層を形成させることにより、これらの橋桁端面相互の遊間(継目遊間)などを充填密封して、防水水密構造を形成させることができるため、防水用組成物を1回、1箇所の継目遊間に充填するだけでこの継目遊間に面した複数(通常2つ)の橋
桁端面を同時に防水施工することができ、効率的であり、また、外部から視認困難であるような複雑な形状の継目遊間であっても、防水用組成物を該継目遊間に充填して現場発泡させているため、橋桁端面と発泡ポリウレタン層との間に隙間が生じにくく、緊密かつ堅固にこれらを接合でき、防水性能及び止水性能の高い防水水密構造を形成できるという利
点を有している。
【0038】
その結果、桁端相互の継目遊間を充填密封して得られる本発明の水密構造では、継目遊間を介した橋脚台座への漏水を防止でき、コンクリート桁への塩水、雨水等の“伝わり水”による塩害、アルカリ骨材反応などを防止でき、橋脚台座コンクリートとその内部の鉄筋の劣化腐食を防止する機能まで付与することができる。つまり、本発明の防水工法を施工すれば、上記のような1つ(1回)の防水工事で種々の効果が得られるため、例えば、橋
脚台座コンクリートの防水工事は省くことができるなど、従来法によれば幾つもの工事を行うことに匹敵し、施工コストを著しく低減できるという利点を有している。
【0039】
また、本発明の防水工法で用いられる、防水のための充填材は発泡タイプであるため、所望の防水性能及び止水性能等が発揮される範囲で、発泡倍率を上げれば上げるほど材料コストは低減できる。例えば、2倍発泡にすれば無発泡に比べ材料費は単純に1/2となり、5倍発泡にすれば1/5となる。このように本発明の防水工法によれば、材料面からも、従来の工法よりも低コスト化を図ることは理論的にも、また実際上も可能である。
【0040】
また、本発明では、継目遊間に充填される材料として(ポリウレタン製の)発泡体を選択しているので、伸縮性が著しく改善され、夏冬や夜昼の温度変化による橋桁の伸縮に伴う継目遊間の縮小・拡大に対して一層容易に追従し変形(圧縮伸張)することができる。しかも、夏場の橋桁の膨張に伴う継目遊間の縮小に対して発泡充填剤層(発泡ポリウレタン層)は殆ど反力を発生しないために橋桁が不安定になることは全く無い。
【0041】
なお、発泡タイプの充填密封材である発泡ポリウレタンは、軟質であり、継目遊間の変形等に良好に追随し、止水性を発揮できるが、独立気泡率を80%以上にはできるものの100%にはできないため、従来の無発泡充填密封剤を単独で用いる場合に比して、本発明のように発泡タイプの充填密封材である発泡ポリウレタンを単独で用いる場合には、止水性能が低下することがあり、このような場合には、硬質で低発泡倍率〜無発泡の、好ましくは無発泡のポリウレタンなどにて所望の厚さ(例:50〜200mm(厚)、好ましくは75〜100mm(厚))の耐圧防水層を少なくとも発泡ポリウレタン層の上面に密着するように形成することにより、無発泡充填剤を単独で用いる場合と同様の良好な止水性能を確保することが望ましい。
【0042】
例えば、高速道路のように積載荷重が10〜25トン程度の大型車両が100km/hr以上の速度で路面を通過した場合、継目遊間に形成された埋設ジョイント部に対しては12kg/cm2の圧力が加わるとされており、橋梁コンクリート面と発泡充填材層(発
泡ポリウレタン層)と間の接着力、及び発泡ポリウレタン層の止水性能は、この圧力に耐えて十分に確保されることが必要であるが、特に発泡ポリウレタン層の上面に耐圧防水層を形成する本発明の防水工法あるいは、本発明の防水水密構造では、このような要件を十分に満たしている。
【0043】
本発明では、上記何れの工法あるいは防水水密構造においても、プライマー処理すると、コンクリート構造物端面への発泡ポリウレタン層、無発泡ポリウレタン層の接着性が顕著に向上するだけでなく、コンクリート構造物端面の防水性能やコンクリート構造物端面/端面継目遊間に充填される発泡ポリウレタン層及び無発泡ポリウレタン層の止水性能が顕著に向上するため好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明に係る、コンクリート構造物端面の防水用組成物及び該組成物を用いたコンクリート構造物端面の防水工法、並びに該工法を施工して得られる防水水密構造等について、添付図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0045】
先ずはじめに、本発明に係る、コンクリート製あるいは鋼製構造物端面の防水用組成物、特に好適にはコンクリート構造物端面に塗布等の形態で用いられる防水用組成物について説明するが、このような防水用組成物が用いられる部位について概説する。
【0046】
図1は、本発明に係る防水水密構造100を、コンクリート製橋梁同士の継目遊間に形成した第1の態様を示す模式側面図である。
図2は、本発明に係る防水水密構造100Aを、コンクリート製橋梁端面と道路の端部との継目遊間に形成した第2の態様を示す模式側面図である。
【0047】
図1及び図2中、付番14:発泡ポリウレタン層、付番16:耐圧防水層を示す。なお、付番10:コンクリート製橋梁、付番12:道路のコンクリート製端部、をそれぞれ示す。
【0048】
本発明の防水用組成物は、図1に付番31で示す橋桁遊間に充填発泡させて防水水密構造の伸縮追随性(伸縮追従性)と止水性を高め、また、図2に示す橋梁10の端部、特に
図3中で濃い斜線にて示す、桁端10Xの外周面(すなわち側面10A、正面10B、及
び底部10C)に塗布発泡させてその防水性(桁端防水性)を高めた発泡ポリウレタン層
14や、桁端遊間の止水性に優れた耐圧防水層16を形成する際の防水材原料として好ましく用いられる。
【0049】
<防水用組成物>
本発明に係る防水用組成物(発泡型充填材)は、ポリウレタン用配合物(A)と、発泡剤(B)とを含む。(なお、この防水用組成物は、本発明では後述するような主剤成分(X)と硬化剤(Y)との2液型として使用されることが望ましい。)
そのうちで、ポリウレタン用配合物(A)は、ポリオール(a)とジイソシアネート(b)とを「主成分」(主剤あるいは主剤成分とは別異)として含み、液状時の粘度調整剤(C)として可塑剤などを含む。また、発泡剤(B)は、水と、水を有機高分子樹脂に分散させるための分散剤(D)との混合物と、ウレタン反応触媒(E)とを含む。
【0050】
これら成分の配合比は、ポリウレタン用配合物(A)と、発泡剤(B)とは、所望の発泡倍率(例:1.5〜6倍、好ましくは2〜3倍)の発泡ポリウレタン層が、常温下で2
〜10分間、好ましくは5〜6分間程度でゲル化形成されるように、実験的に予め求めておくことが望ましく、ポリウレタン用配合物(A)と、発泡剤(B)の配合比は、例えば、(A)100重量部[or(A)中の成分:ポリオール、ジイソシアネート合計100重量部]に対して、(B)[or(B)中の成分:水、界面活性剤の合計]0.5〜10重量部となる量で用いられる。
【0051】
なお、ポリウレタン用配合物(A)中には、ポリオール(a)とジイソシアネート(b)とは、(B)を配合したときに(発泡剤成分(B)には多量のOH基が含まれ反応に深く関
与する。)、含まれるOH基とNCO基とが理論的には当量比となるように、通常ポリオ
ール(a)100重量部に対し、ジイソシアネート(b)40〜130重量部程度の量で用いられる。またこれら(a)と(b)とは「主成分」(主剤とは別異)として、合計((a)+(b))で、通常60〜80重量%程度となる量で含まれることが多い。
【0052】
なお、上記配合量につき付言すると、本発明では、組成中に(a)+(b)が30重量%程度以上あれば硬化には支障ないので成分(C)は最大60%程度までは使用できるとしている。しかし、性能的には60重量%以上含まれることが望ましいので通常は60〜80重量%の量で使用している。
【0053】
なお、本発明の防止用組成物は、実使用前の保存、運搬時に硬化反応が進行しないように、硬化反応に直接関連した成分を分離し、好ましくは2液系(two package type)として調製され、運搬、取扱われ、現場で2液を混合して実使用される。この際に、ジイソシアネート(b)硬化剤が含まれた成分に対して、これと反応硬化するポリオール(a)が含まれた成分の意味で「主剤」なる語を用いる。「主剤」は、本発明の防止用組成物の硬化メカニズムに着目し、その取扱性等を考慮した2液系組成物セットのうちのポリオールが含まれ、イソシアネートが含まれていない1つの成分(1液)を指す。
【0054】
これに対して、上記「主成分」なる語は、本発明の防止用組成物中の主要な成分である、ポリオールとジイソシアネートを含む成分の意味で、あるいは発泡剤(B)以外の成分の意味で用いられる。
【0055】
要するに、本発明では「主成分」なる語は、「主剤」なる語とは別異の概念である。
またポリウレタン用配合物(A)が液状である時には、粘度調整剤(C)としての可塑剤は、ポリウレタン用配合物(A)中に5〜60重量%程度の量で含まれていることが多い。
【0056】
発泡剤(B)中に、水は5〜80重量%、分散剤(D)は20〜95重量%、必要により用いられるウレタン化反応触媒(E)は5〜50重量%程度の量でそれぞれ含まれていることが多い。
【0057】
発泡型充填材はこれらの成分や配合物を施工現場で計量し混合するのではなく、あらかじめ適性組成比率を実験で求めておき、本発明の防水用組成物中の硬化物形成に直接関係するポリオール(a)とジイソシアネート(b)とが別包装となるように、主剤(X)=「
ポリウレタン用配合物(A)中のポリオール(a)+発泡剤(B)+粘度調整剤(C)」を含みジイソシアネート(b)を含まないものと、硬化剤(Y)=「ポリウレタン用配合物
(A)中のジイソシアネート(b)」を含み、ポリオール(a)を含まないもの、との“2液”にパック化したものを現場に持ち運んで、現場でこれら2液の各成分(すなわち主剤Xと硬化剤Y)を一緒にして混合攪拌して使用することが望ましい。2液を混合することによりウレタン反応が開始し、反応により炭酸ガスが発生することによって設定された発泡倍率の発泡体を生成し、発泡ポリウレタン層の形成などに用いられる。
【0058】
(主成分のポリウレタン用配合物(A))
まず、ポリウレタン用配合物(A)に含まれる主成分について説明する。
<ポリオール((a))>
ポリオールとしては、ポリヒドロキシ化合物が広く使用でき、例えば、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオールなど、特開平10−195167号公報の[0015]等に記載の、炭化水素系の水酸基当量の大きいポリオール類;
ポリオキシプロピレンエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンエーテルなどのポリエーテルポリオール類;
フタル酸、アジピン酸、ダイマー酸、二量化リノレイン酸、マレイン酸、天然脂肪酸のような分子内にカルボキシル基を二つ以上有する有機酸と、
エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ポリカーボネート等の分子内にヒドロキシル基を二つ以上有するアルコールと、
の縮合反応により形成されるポリエステルポリオール類;
ヒマシ油誘導体類、トール油誘導体類、その他ヒドロキシ化合物類が挙げられる。これらのポリオール類は1種または2種以上組合わせて用いることができる。
【0059】
これらのポリオール類のうちでは、ポリブタジエンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールからなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオール(a)が好ましく、特に、ポリブタジェンジオールが疎水性、耐水性に優れた防水水密構造を形成できるため最も望ましい。
<ジイソシアネート(硬化剤(b))>
ジイソシアネートとしては、MDI(メチレンジフェニルジソシアネート)、TDI(トリレンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、TDI、IPDI(イソフォロンジイソシアネー)、NBDI(ノルボナンジイソシアネート )やこれらの多量体およびグリコールやポリエーテルグリコールのプレポリマーそしてこれらの混合物、またはMDIのMDIとグリコールおよびポリエーテルグリコールの末端イソシアネートのプレポリマーとの希釈物等が挙げられる。
【0060】
本発明では、これらのジイソシアネート(b)を1種または2種以上組合わせて用いることができる。
本発明では、これらのジイソシアネート(b)のうちで、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、または、
「MDIとグリコール(またはポリエーテルグリコール)とが反応してなるプレポリマーであって、該プレポリマーの末端基が何れもイソシアネート基であるものを希釈剤として用いた、MDIの希釈物」が特に好ましい。
(なお、これら「主成分」のうち、ジイソシアネート(b)は、2液型として本発明の防水用組成物が用いられる際には、ポリオール(a)と反応硬化しないように、通常、ポリオール(a)が含まれた主剤成分Xとは別体に、すなわち「硬化剤Y」に分包されて取扱われる。)
<粘度調整剤(C)>
発泡ポリウレタン用配合物(A)と発泡剤(B)とを含んでなる防水用組成物がもし高粘度液体であると、このような高粘度液体を発泡させても均一な発泡体が得られず発泡倍率も低くなり、発泡がバラつくため、本発明の防水用組成物に粘度調整剤(C)を配合して発泡安定性を確保することが望ましい。
【0061】
粘度調整剤としては、従来より公知の可塑剤などを広く使用できるが、本発明では、例えば、DOP(ジオクチルフタレート)、DIDP(ジイソデシルフタレート)、DINP(ジイソノニルフタレート)、DHP(ジヘプチルフタレート)、BBP(ブチルベンジルフタレート)、DOA(ジオクチルアジペート)、DIDA(ジイソデシルアジペート)、DOS(ジオクチルセバケート)のように沸点、引火点が200℃以上〜260℃以下の可塑剤が望ましい。その他に、これらの粘度調整剤(可塑剤)が属する芳香族または脂肪族二塩基酸エステル類や燐酸エステル類、脂肪酸エステルとその誘導体類、エポキシエステル類等が使用できる。本発明ではこれらの粘度調整剤を1種または2種以上組合
わせて用いてもよい。
(発泡剤(B))
ウレタンフォームの発泡法としては一般にフレオン発泡法、水発泡法、機械発泡法が用いられ、本発明では、発明の目的および環境対策から水発泡法が最も望ましい。
【0062】
従って、発泡剤としては、通常、水と、水をポリオールなどの有機高分子に分散させるための分散剤(D)とを含み、さらに必要によりウレタン化反応触媒(E)などを含むものが好ましく、通常、これら成分の混合物として用いられる。
【0063】
分散剤(D)としては、アニオン系またはノニオン系界面活性剤が最も効果的であるが、その他低分子量アルコキシシラン、燐酸エステル等が使用できる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム、脂肪族二塩基酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルス
ルフォン酸ナトリウム、ポリカルボン酸またはそのナトリウム塩が挙げられる。
【0064】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオイレルエーテル、ポリオキシエチレンアネキルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、グリセロールモノステアレート、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0065】
これら界面活性剤は、1種又は2種以上組合わせて用いられる。
<ウレタン反応触媒(E)>
ウレタンの発泡体を形成する際には、好ましくはウレタン反応触媒が用いられる。このような触媒を用いると、ウレタン発泡反応により一旦発泡したセルが収縮しないようにすばやく固定化することができ、また、短時間に水と反応して多量の炭酸ガスを発生させることができる。
【0066】
ウレタン反応触媒としては、アルキル酸エステル金属塩や塩基性化合物が挙げられ、例えばジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫マレート、オクチル酸鉛、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などが1種又は2種以上使用できる。
【0067】
発泡剤(B)中のこれら成分の含有量は特に限定されないが、発泡剤(B)中には、例えば、水は5〜80重量%、分散剤(D)は20〜95重量%、必要により用いられるウレタン化反応触媒(E)は5〜50重量%程度の量でそれぞれ含まれていることが多い。<防水用組成物を用いたコンクリート構造物端面同士の防水工法の施工>
(橋桁遊間止水工法の施工)
次に、上記発泡型充填材である本発明の防水用組成物を用いた、コンクリート構造物端面同士の防水工法の施工例について、図面を参照して説明する。
【0068】
本発明の好ましい一態様では、図1に示すように、コンクリート構造物が橋梁10である。該橋梁10は、基本的には、下部構造である橋脚32と、上部構造である橋桁11及び路盤19から構成されており、上部構造の橋桁11及び路盤19は一体化物となっている。
【0069】
図1の橋梁同士10、10は、所定距離(例:20〜60mm程度)離間して配設されており、それら橋梁の橋桁同士11,11の継目遊間31の中央部31Bから下部31Cにかけて、充填発泡層(発泡ポリウレタン層)14が形成され、発泡ポリウレタン層14の上側すなわち継目遊間の上部31Aには、耐圧防水層(止水層)16が形成され、かつ発泡ポリウレタン層14と耐圧防水層16とが密着接合した構造の防水水密構造100が形成されている。
橋桁端面の洗浄と劣化部位の除去
このような防水水密構造を橋桁同士の継目遊間31に施工するには、新設橋梁においては必要ないが既にある程度の(長い)期間供用されている橋梁では桁遊間の汚れ、コンクリートの劣化が生じていることがあるため通常、始めに高圧洗浄水を目的物に噴射してコンクリート構造物の劣化面や劣化構造を有する部分の洗浄除去を行う「ウオータージェッ
ト(高圧洗浄水)工法」により、桁端面の劣化部位を洗浄除去し、場合により鉄筋などの芯材を露出させる。
【0070】
この際用いられる高圧洗浄装置としては、例えば、洗浄水の噴射圧力100〜200MPa(圧力1000-2000kg/cm2)、水量10〜50L/分で被処理面の表面洗浄処理能を有す
るものを好適に使用することができ、これにより、本発明では、特に、洗浄作業の効率化と高精度化を図ることができる。
強制乾燥と防錆処理
本発明では、次いで、(露出鉄筋を含めて)この洗浄済みの端面12Aを熱風等により強制乾燥させ、その後で、もし強制乾燥面に露出鉄筋がある場合にはその鉄筋に防錆処理を施すことが望ましい。
プライマー処理
次いで、必要により塗布された防錆処理材を乾燥させた後、桁端全面12Aに、接着性を改善させるためのコンクリート用プライマー(例:水溶性エポキシプライマー)を塗布含浸させる。この塗布に際しては、長い柄のついたローラーまたは刷毛、ポールガンを具備した高圧エアレススプレー、長首ガンエアースプレーなどが用いられる。
【0071】
上記溶剤希釈型のコンクリートプライマーしては、好適には、湿気硬化型のMDIプレポリマータイプのプライマー[中国塗料社製、商品名「アルカリシーラーMDF」]、水溶性の速乾型エポキシプライマー[中国塗料社製、商品名「PBFプライマー」]等が挙げ
られ、強制乾燥された桁端洗浄面(好ましくは桁端洗浄はつり処理面)に水分が比較的多く残存する場合には、水溶性の速乾型エポキシプライマー「PBFプライマー」が好適であ
り、比較的気温が低い(例:外気温≦5℃)場合には水分蒸発が乏しくなるため、溶剤型プライマーが好ましい。なお、そのプライマー処理層の厚みは特に限定されないが、例えば、乾燥膜厚で10〜30μm(厚)となるように塗布すればよい。
作業部位の養生
プライマーを乾燥させた後、防水水密構造形成予定部である橋桁同士11,11の継目遊間31、特に発泡ポリウレタン層14形成予定部である付番31B〜31Cの周囲に充填用型枠の取付けまたはシール作業を行う。
【0072】
この際には、通常、板材の片面をクラフトテープまたは剥型剤の様な剥離材を用い剥型可能な処理をした後、両面テープを貼付けたウレタンフォームによる隙間テープのような変形可能な漏れ止め材を介して付番31B〜31Cの周囲に取り付け充填用型枠とすることが望ましい。
【0073】
シール作業で代用する場合は、リボン状の発泡ポリエチレン製のバックアップ材(図示せず)を、発泡ポリウレタン層14形成予定部が継目遊間31に画成されるように、継目遊間31の所定位置に差込み、そのバックアップ材上に硬質発泡ウレタンフォームを吹付け、内部に充填される発泡型充填材である発泡ポリウレタン層14形成用の防水用組成物が発泡硬化する前に漏れ出ないようにする。
発泡型充填材(防水用組成物)の注入
硬質発泡ウレタンフォームが硬化し所定の強度が得られたら、発泡ポリウレタン層14形成予定部への発泡型充填材(防水用組成物)の注入を行う。
【0074】
発泡型充填材としては、前述した主剤、硬化剤の2液パックタイプが作業効率や作業の品質管理等の点で好ましい。
すなわち、本発明では、発泡型充填材を、現場で、配合成分や量比を計量して調製することなく、予め調製された2液タイプのパックを準備し、現場に持参してそれらの内容物を現場で攪拌混合して使用することが好ましい。
【0075】
この際には、2液タイプのパックを、例えばポリエチレン製バケツのような容器に移し、小型の電動攪拌機で90秒間程度、室温下に攪拌混合すればよい。
防水用組成物を構成する2液((X)と(Y))が接触し、{特に、硬化反応に関与する、ポリウレタン用配合剤成分中のポリオール(a)とジイソシアネート(b)が接触し、}数分経過後、具体的には、防水用組成物を構成する配合成分を室温下で混合後、数分経過(例:約3分程経過)すると、通常激しく発泡を開始し、約5〜6分で流動性がほとんどなくなるように、その配合組成や成分などを予め設定しておき、混合後数分以内(例:4分以内)に注入作業を終えるように作業手順を組むことが望ましい。
【0076】
本発明では、防水用組成物の注入は複数回に分けて行うことが好ましい。このように防水用組成物の注入を複数回に分け、少し時間を空けて注入すると、生成した発泡ポリウレタン層14内部に不均一な空洞が生ぜず、しかも部位によらず一様な発泡倍率となり、橋梁端部面10A〜10D、特に10Bに、層14を形成している発泡ポリウレタンが堅固に被着し、橋梁端部10Xの外周面の防水性、橋梁端部同士の継目遊間31の止水性等に優れた防水水密構造が形成されるため好ましい。
【0077】
例えば、図4に示すように、橋桁の高さが1mの場合には、ホース65Aによる1回めの防水用組成物注入量は発泡後の高さが橋桁の高さの半分(500mm)以下になるようにし、2回目はホース65Aよりも上方に突出したホース65B等により、少なくとも2回以上注入操作を行って所定量の防水用組成物の注入操作を終了するようにすることが望ましい。
【0078】
このように防水用組成物を複数回に分けて注入したのち、常温では10分程度でゲル化するように反応性を高く設定した防水用組成物を用いると、発泡ポリウレタン層のゲル化は常温下で10分前後、低温下(例:5℃)でも24時間経過後には生ずるため、前記充填用型枠やポリエチレン製バックアップ材の除去および該バックアップ材の表面に吹付けた硬質発泡ウレタンフォームの除去が可能となる。なお、後述する耐圧防水層16用の無発泡ポリウレタンのゲル化速度も、発泡ポリウレタン層14用の防水用組成物と同様であり、バックアップ材等の除去可能になる時期は、発泡ポリウレタン層14の場合と同様に設定できる。
【0079】
また、本発明では、防水用組成物の注入に際しては、空隙上部12Aを密封可能に各種ゴムやウレタン樹脂、塩化ビニール樹脂等の軟質素材よりなるホース70をその内部エアーを抜くか常圧状態で予め所望の位置(深さ)に配設し、次いで、該軟質ホース70内に気体を適宜量充填して、耐圧防水層(止水層)16下端に達する位置(深さ)まで膨張させて、空隙上部12Aを密封し、空隙上部12Aに該ホースを固定しておくことが特に好ましい。
【0080】
本発明では、桁上面から下方に向けて測った空隙部の深さが少なくとも25mm〜125mmまでの空隙となり、耐圧防水層(止水層)16予定部が残る(=画成される)ように、発泡ポリウレタン層14形成用の防水用組成物の合計注入量を適宜加減することが望ましいが、上記のように、ゴムホース70を予めセットしておけば、その調整は極めて容易となる。
【0081】
なお、撤去時の対策として軟質ホース70の外周面には、発泡ポリウレタン、無発泡ポリウレタンなどが付着しないように、シリコーン系等の剥離剤やグリス等の油類などを塗布しておいてもよい。
【0082】
なお、防水用組成物としては、該組成物形成用の配合成分である主剤(X)=「ポリウ
レタン用配合物(A)中の(a)+発泡剤(B)+粘度調整剤(C)」と、硬化剤(Y)=
「ポリウレタン用配合物(A)中の(b)」との2液を混合後、常温下では7〜9分程度でゲル化し、約20〜30分程度経過すると発泡は完全に終了し半硬化状態に達し、また、上記2液混合後約60分程度経過すると発泡反応物を押さえつけて一旦変形させても、押さえつけている力を解放すると、元の形状に速やかに復元可能な程度の強度になるように、上記配合成分((A)と(B)、あるいは(X)と(Y))の量比や組成などを設定することが作業性、得られる物性等の点で好ましい。なお、2液混合された防水用組成物の完全硬化には、通常、常温下で12時間程度を要することが多い。
耐圧防水用部材の注入
次いで、本発明では、空隙上部12Aを密封可能に配設されていたホース70の内部のエアーを抜き、ホース70を除去し、高さ25〜125mm程度の残余の継目遊間31Aに、耐圧防水層16用部材を注入する。
【0083】
発泡ポリウレタン層14形成後のホース70の撤去容易化対策としては、ホース70内にロープ(図示せず。)をその両端が到達するように挿通配置させ、ホース70の一方の端部(イ)とロープの一方端とをホース内部で予め結束,接合等の方法で結合しておく。次
いで、ホース70内のエアーを抜いた後に、ホース70の他端部(ロ)(ロープと結束されていない反対側端部)を切除し、ホース70内のロープを引き抜く。すると、ロープと結合されているホースの先端(イ)は、ホースの内側に引き込まれて、ホース70外周面と発泡ポリウレタン層14とはピーリング剥離するためホース70は容易に撤去可能となる。
【0084】
耐圧防水層16用の充填材は、発泡剤含量の少ない低発泡型〜発泡剤不含の無発泡型、好ましくは発泡剤不含の無発泡型の耐圧防水用部材であり、硬化して弾力性のあるエラストマーとなる。
【0085】
この耐圧防水層16用の充填材は、発泡ポリウレタン層14形成用の発泡型充填材と同様に、主剤、硬化剤の2液にパック化したものが施工性などの点で望ましい。この2液タイプの充填材を、例えば市販のポリエチレンバケツなどの適当な材質の容器に入れ、電動攪拌機で数分間(例:2分間)程度攪拌混合して、上記耐圧防水層16用の空隙に注入する。耐圧防水層用の充填材は低発泡〜無発泡タイプ、好ましくは無発泡タイプであるため、反応性は穏やかに設定できゲル化するまでの作業時間に余裕を持たせることができる。なお、該耐圧防水層16用の充填材中の各成分の配合組成やその比率は、予め実験等を行い、作業性等を考慮して適宜設定すればよい。
【0086】
耐圧防水層予定部への耐圧防水層用部材の注入が終ると、本発明の防水水密構造が完成する。
上記説明では、主に、本発明に係る防水水密構造を、図1に示すような、コンクリート構造物端面同士の継目遊間31に設ける態様について説明したが、この防水水密構造は、上記部位の継目遊間にのみ適用が限定されるものではなく、図2に示すような、コンクリート製橋梁端面10Bと道路の端部12との継目遊間31に形成する場合にも、そのまま適用できる。
[実施例]
以下、本発明の防水用組成物、防水水密構造、防水工法について、実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は係る実施例により何ら限定されるものではない。
<実施例に用いた発泡型充填材(防水用組成物)及び耐圧防水層用部材>
本発明の実施例に用いた発泡型充填材(防水用組成物)は、3倍発泡タイプであり、その組成を表1に示す。
【0087】
また、本発明の実施例に用いた耐圧防水層用部材の組成は表1に示す通りである。
上記発泡型充填材は、2液タイプであり、主剤成分(X)としては、表1中の成分のうちで、ポリブタジエンジオール60重量部と、可塑剤37.5重量部、発泡剤2重量部と
、反応触媒0.5重量部とが含まれている。
【0088】
硬化剤成分(Y)としては、イソシアネートプレポリマー35重量部が含まれている(主剤成分(X)+硬化剤成分(Y)=135重量部)。
本発明の防水用組成物では、これら主剤成分と硬化剤成分との2液成分に分包されているが、本発明の防水用組成物を構成する主剤成分(X)と、硬化剤成分(Y)とを常温下で1.5分間、攪拌装置(日立工機(株)製、型番:UM15)にて混合して、実施例に
用いた発泡型充填材(止水用組成物)を得た。
【0089】
また、本発明で用いられる耐圧防水層用部材は、2液タイプであり、主剤成分(X’)としては、表1中の成分のうちで、ポリブタジエンジオール60重量部と、可塑剤39.9重量部、発泡剤0重量部(発泡剤含まず)と、反応触媒0.1重量部とが含まれている。
【0090】
硬化剤成分(Y’)としては、イソシアネートプレポリマー20重量部が含まれている(X‘+Y’=120重量部)。
本発明では、耐圧防水層用部材は、これら主剤成分と硬化剤成分との2液成分に分包されているが、この耐圧防水層用部材(耐圧防水層用組成物)を構成する主剤成分(X’)と、硬化剤成分(Y’)とを常温下で1.5分間、攪拌装置(日立工機(株)製、型番:
UM15)にて混合して、耐圧防水層用部材を得た。
【0091】
【表1】

【0092】
<注釈>
※−1. 重量平均分子量2200〜3400で2官能の末端第一級水酸基を有するポリブタジエンジオール。
※−2. ジオクチルセバケート。
※−3. 重量平均分子量1300〜2000で2官能の末端第一級水酸基を有するポリオキシプロピレンエチレンエーテル系界面活性剤と精製水の混合液。
※−4. ジブチル錫ジラウレートとトリエチレンジアミンの混合物。
※−5. TDIをグリコールおよびポリエーテルグリコールで鎖延長した末端イソシアネートのプレポリマーのMDI希釈物でNCO%が10〜15重量%のジイソシアネート。
【実施例1】
【0093】
表2に示すように、表1に示す本発明の発泡型充填材(防水用組成物)を用いて、表2
の注釈に示すコンクリート接着性試験、止水性試験、バネ定数(N/mm)、耐久性試験、橋脚部への効果の有無、コスト比較を求めた。
【0094】
結果を表2にまとめて示す。
実施例1では、表1の発泡型充填材層14のみを、橋桁端面遊間と同様のコンクリート
モルタル間に形成しただけであり、プライマー層や耐圧防水層は形成されておらず、コスト的には優れるが止水性とコンクリート接着性には余裕が無いことが分かる。
[実施例2〜3]
実施例2〜3は、コンクリート面に、溶剤希釈型のコンクリートプライマー(実施例2)または水溶性のコンクリートプライマー(実施例3)を塗布し燥させたのち、プライマー相互間に発泡充填層を形成したもので、コンクリート製の円筒内に充填硬化させた耐圧試験体においては、コンクリート面と発泡充填層間の接着力が向上し水が円筒端部まで伝って行けないために止水性能が向上していることが分かる。
[実施例4]
実施例4のコンクリート製の円筒内にて充填硬化させた耐圧試験体においてはコンクリート製円筒の内面に、水溶性のコンクリートプライマーを塗布し乾燥させたのち、発泡充填層(図6では、紙面に向かって左右方向に長い斜線部分)を形成し、更にその上面(図6
では、紙面に向かって斜線部分の左側)に耐圧防水層(止水層)を形成したもので、充填層
のバネ定数は少し大きくなるが、優れた止水性能を示し、大型車両から発生される走行圧に十分対応できることが分かる。
[比較例1]
なお、比較例1は本発明に類似した工法が過去に無かったため防錆モルタルの吹付けによる防水工法を行った結果を示す。
【0095】
【表2】

【0096】
<注釈>
※−6. 湿気硬化型MDIプレポリマー(中国塗料社製の商品名「アルカリシーラーMDF」)。
※−7. 水溶性の速乾型エポキシプライマー(中国塗料社製の商品名「PBFプライマー
」)。コンクリート構造物端面の洗浄処理(好ましくは洗浄はつり処理)した素地に水分が多く残る場合に好適に使用される。
※−8. ポルトランドセメント、亜硝酸リチウム、短繊維(ガラス、パルプ等の短繊維)、SBR(スチレンブタジェンゴム)ラテックスエマルジョンからなる吹付け型モルタル。
※−9. 図5に示す試験片を作成し、30mm巾でコンクリートモルタル間に注入接着させ、引張試験機(島津製作所(株)製、型番:AGS−1000A)により10mm/minの速度で引張った時の最大伸び率。
※−10.図6に模式的に示すような止水性試験装置にて、外径が216mmで、内径150mm、長さ1000mmのコンクリート製円筒の内周面に高さ(図6では、紙面に向
かって左右の幅方向)が800mmの防水層(斜線部分)と、止水層(耐圧防水層(図6では、紙面に向かって防水層の左側)を、実施例あるいは比較例に示す構成で形成させ、止水層側から防水層に向かって(紙面に向かって、左から右方向に)、水圧テストポンプを用
いて水圧をかけた際に、水が防水層を透過するための最低圧力。
※−11. JIS−K−6385に準拠し、100×100×25mmの試験体に静的圧縮引張り材料試験機(島津製作所(株)製、型番:AGS−1000A)を用い、バネ
定数計算のための変位が8〜16mmとなる荷重に設定し、圧縮速度10mm/minとし、2回の予備圧縮を含む3回の圧縮試験を繰り返し3回目の圧縮曲線の荷重と変位の関係から求める。
※−12. 30mm巾でコンクリートモルタル間に注入接着させ、1Hzの正弦波荷重により7±5mmの変位を与え、10000回の繰返し疲労を行った時の状態観察。
※−13. 橋桁端面遊間からの漏水を防止し、橋脚への水の供給を停止させる効果の有無。
※−14. 吹付型の比較例1のコストを100とした時の各実施例の指数。
(本発明の効果)
本発明の桁端防水工法は、所定距離離間して接続される橋桁の継目遊間や、橋桁と道路端部との継目遊間などに、発泡型充填材層(発泡ポリウレタン層)のみを形成する場合は1回の充填作業を行うだけで(また、発泡ポリウレタン層の上に耐圧防水層も形成する場合は2回の充填作業を行なうだけで)、向かい合った橋桁端面の両面を同時に防水施工することができるし、更に大きな付帯効果として桁端遊間を充填密封して得られる水密構造により橋の生命線とも言える桁本体および橋脚台座コンクリートの劣化をも防止できる。つまり、一つの工事で三つの利得が得られる極めて優れた工法であるにもかかわらず、用いられる充填材は発泡タイプであるため、性能が許す限り発泡倍率を上げれば上げるほど材料コストは低減するから、その経済的効果は明白である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図1は、本発明に係る防水水密構造を、コンクリート製橋梁同士の継目遊間に形成した第1の態様を示す模式図である。図1(A)は、その模式側面図であり、図1(B)は、図1(A)に示す防水水密構造のX−X線断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る防水水密構造を、コンクリート製橋梁端面と道路の端部である橋台パラペット部との継目遊間に形成した第2の態様を示す要部模式側面図である。
【図3】図3は、図2に示す防水水密構造のY−Y線断面図である。
【図4】図4は、本発明に係る防水水密構造を、コンクリート製橋梁同士の継目遊間に形成する際の模式説明図である。図4(A)は、コンクリート製橋梁同士の継目遊間の模式正面図であり、図4(B)は、図4(A)に示すZ−Z線断面図である。
【図5】図5は、コンクリートの接着性(%)を測定する試験の説明図である。この図では、2個の直方体(断面:40cm×40cm)形状のコンクリートモルタルの端面間に、実施例1〜4、比較例1の構成の防水層(高さ:30mm、断面:40cm×40cm)を形成して、上記2個のコンクリートモルタルを互いに離間させるように10mm/分の速度で引張ったときの、防水層の最大伸び率を測定する試験の説明図である。
【図6】図6は、止水性試験装置の要部を切り欠いて示す模式的な断面図である。この止水性試験装置は、紙面に向かって止水層側(左)から防水層(右側の斜線部)に向かって水圧をかけた際に、水が防水層を透過するための最低圧力(Kg/cm2)を測定するものである。
【符号の説明】
【0098】
10:コンクリート製橋梁、
10A:コンクリート製橋梁の端部側面、
10B:コンクリート製橋梁の端部正面(前面)、
10C:コンクリート製橋梁の端部底面、
10D:コンクリート製橋梁の端部路面(上面)、
10X:コンクリート製橋梁の端部(桁端)、
11:橋桁、
12:道路のコンクリート製端部、
12A:道路の端部正面(前面)、
14:発泡ポリウレタン層、
14A:第1の発泡ポリウレタン層(325mm(厚))、
14B:第2の発泡ポリウレタン層(500mm(厚))、
16:耐圧防水層(止水層)(75mm(厚))、
18:支持台、
19:アスファルト舗装部(路盤)、
31:継目遊間、
31A:継目遊間上部、
31B:継目遊間中央部、
31C:継目遊間下部、
32:橋脚、
65A、65B:ホース、
70:ゴムホース、
100、100A:防水水密構造。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリブタジエンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールからなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオール(a)およびジイソシアネート(b)を主成分とする発泡ポリウレタン用配合物と、
(B)発泡剤と
を含んでなる、コンクリート製あるいは鋼製構造物の端面の防水用組成物。
【請求項2】
発泡剤が水である請求項1に記載のコンクリート製あるいは鋼製構造物の端面の防水用組成物。
【請求項3】
さらに、粘度調整剤(C)を含有する請求項1に記載のコンクリート製あるいは鋼製構造物の端面の防水用組成物。
【請求項4】
粘度調整剤(C)が可塑剤である請求項3に記載のコンクリート製あるいは鋼製構造物の端面の防水用組成物。
【請求項5】
粘度調整剤(C)がジオクチルフタレート(DOP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)、ジオクチルセバケート(DOS)からなる群から選ばれた少なくとも1種の可塑剤である請求項4に記載のコンクリート製あるいは鋼製構造物の端面の防水用組成物。
【請求項6】
さらに、分散剤(D)を含有する請求項1に記載のコンクリート製あるいは鋼製構造物の端面の防水用組成物。
【請求項7】
分散剤(D)が、アニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤からなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項6に記載のコンクリート製あるいは鋼製構造物の端面の防水用組成物。
【請求項8】
分散剤(D)が、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム、脂肪族二塩基酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸ナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも1種のアニオン界面活性剤である請求項6または7に記載のコンクリート製あるいは鋼製構造物の端面の防水用組成物。
【請求項9】
さらに、ウレタン反応触媒(E)を含有する請求項1〜8の何れかに記載のコンクリート製あるいは鋼製構造物の端面の防水用組成物。
【請求項10】
ポリオール(a)が、ポリブタジエンポリオールである請求項1〜9の何れかに記載のコンクリート製あるいは鋼製構造物の端面の防水用組成物。
【請求項11】
ジイソシアネート(b)が、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、または、
MDIとグリコール(またはポリエーテルグリコール)とが反応してなるプレポリマーであって、該プレポリマーの末端基が何れもイソシアネート基であるものを希釈剤として用いた、MDIの希釈物である請求項1〜10の何れかに記載のコンクリート製あるいは鋼製構造物の端面の防水用組成物。
【請求項12】
上記コンクリート製あるいは鋼製構造物が、コンクリート製の橋梁である請求項1〜1
1の何れかに記載のコンクリート製あるいは鋼製構造物の端面の防水用組成物。
【請求項13】
橋梁などのコンクリート製あるいは鋼製構造物と、該構造物と所定距離離間して接続される道路との継目遊間(イ)、あるいは所定距離離間して接続される複数の上記構造物同士の継目遊間(ロ)等の継目遊間に形成される防水水密構造であって、
これら継目遊間の上部を除く部位に上記請求項1〜11の何れかに記載の防水用組成物を塗布または充填し発泡してなる発泡ポリウレタン層が形成され、該継目遊間の前記上部に耐圧防水層が形成されていることを特徴とする、コンクリート製あるいは鋼製構造物と道路との継目遊間あるいはこれら構造物同士の継目遊間の防水水密構造。
【請求項14】
上記耐圧防水層は、発泡ポリウレタン層を形成している発泡ポリウレタンよりも硬質で低発泡倍率〜無発泡のポリウレタンにて形成され、かつ、発泡ポリウレタン層と耐圧防水層は連続して一体に形成されていることを特徴とする請求項13に記載の防水水密構造。
【請求項15】
上記耐圧防水層は、発泡ポリウレタン層を形成している発泡ポリウレタンよりも硬質で低発泡倍率〜無発泡のポリウレタンにて形成され、かつ、発泡ポリウレタン層と耐圧防水層は別体に構成され、これら2層は接着剤による接着(i)あるいは、熱融着(ii)、発泡ポ
リウレタン層の上面への耐圧防水用部材の注入硬化(iii)等により、その接合面の全面あ
るいは一部が連結・接合されていることを特徴とする請求項13に記載の防水水密構造。
【請求項16】
上記構造物の端部側面および端部底面にも、上記請求項1〜12の何れかに記載の防水用組成物を塗布または充填し、発泡してなる発泡ポリウレタン層が形成されていることを特徴とする請求項13〜15の何れかに記載の防水水密構造。
【請求項17】
コンクリート製あるいは鋼製構造物の端面に、請求項1〜12の何れかに記載の防水用組成物を塗布発泡させて該端面を被覆することを特徴とするコンクリート製あるいは鋼製構造物の端面の防水工法。
【請求項18】
コンクリート製あるいは鋼製構造物の端面を、高圧ウォータージェットで洗浄した後に、請求項1〜12の何れかに記載の防水用組成物を塗布発泡して該端面を被覆する請求項17に記載の防水工法。
【請求項19】
コンクリート製あるいは鋼製構造物の端面に、プライマーを塗布した後、請求項1〜12の何れかに記載の防水用組成物を塗布発泡させて該端面を被覆する請求項17〜18の何れかに記載の防水工法。
【請求項20】
コンクリート製あるいは鋼製構造物の端面を、高圧ウォータージェットで洗浄し、プライマーを塗布した後に、請求項1〜12の何れかに記載の防水用組成物を塗布発泡させて該端面を被覆することを特徴とする請求項17〜19の何れかに記載の防水工法。
【請求項21】
上記プライマーが、水性プライマーであることを特徴とする、請求項19〜20の何れかに記載の防水工法。
【請求項22】
上記コンクリート製あるいは鋼製構造物が河川、道路、鉄道等を跨ぐように設置されている橋梁であり、
上記防水工法の施工部位が、該構造物の端面と、これと接続される道路あるいは鉄路の端部との継目遊間(イ)、あるいは複数の上記構造物同士の継目遊間(ロ)であり、かつ、
上記防水工法が、これら継目遊間に充填され、あるいは構造物の端面、あるいはこれら構造物と接続される道路あるいは鉄路の端部に塗布された上記防水用組成物を現場発泡させてなるポリウレタン発泡体にて該継目遊間を充填密封し、あるいは構造物の端面を被覆
して防水水密構造を形成させるものである、請求項17〜21の何れかに記載の防水工法。
【請求項23】
橋梁などのコンクリート製あるいは鋼製構造物と、該構造物と所定距離離間して接続される道路との継目遊間(イ)、あるいは所定距離離間して接続される複数の上記構造物同士の継目遊間(ロ)等に、防水水密構造を形成するに際して、
これら継目遊間の上部にゴム、ウレタン樹脂、塩化ビニール樹脂等の軟質素材よりなる軟質チューブを配設し、次いで、予め該チューブ内に気体を充填して該チューブを膨張させてこれら継目遊間の上部を密閉した状態で、チューブより下方の継目遊間に上記請求項1〜12の何れかに記載の防水用組成物を充填し発泡して発泡ポリウレタン層を形成した後、
該チューブ内の気体を低減除去して該チューブを除去し、次いで、
該チューブが除去された継目遊間の上部に耐圧防水用部材を注入して耐圧防水層を形成することを特徴とする、コンクリート製あるいは鋼製構造物と道路との継目遊間あるいはこれら構造物同士の継目遊間の防水工法。
【請求項24】
上記構造物の端部側面および端部底面にも、上記請求項1〜12の何れかに記載の防水用組成物を塗布または充填し、発泡してなる発泡ポリウレタン層が形成されていることを特徴とする請求項17〜23の何れかに記載の防水工法。
【請求項25】
(X)ポリブタジエンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールからなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオール(a)、および発泡剤(B)を含み、そして必要により、さらに
粘度調整剤(C)、分散剤(D)、ウレタン反応触媒(E)のうちの何れか1種又は2種以上を含む主剤成分と、
(Y)ジイソシアネート(b)を含む硬化剤成分とからなる、コンクリート製あるいは鋼製構造物の端面の防水用組成物セット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−298970(P2006−298970A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118471(P2005−118471)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(591135082)日本道路公団 (8)
【出願人】(593093858)株式会社オーデックス (11)
【出願人】(390033628)中国塗料株式会社 (57)
【Fターム(参考)】