説明

コンクリート橋の架設工法及び該工法で用いる移動作業装置

【課題】隣り合うブロック同士の鉄筋構造体における、軸方向鉄筋の位置ずれに起因する各ブロック間における軸方向鉄筋の連結強度の低下を解消しつつ、工期の短縮に寄与し得るコンクリート橋の架設工法を提供する。
【解決手段】一つブロック39の施工完成前に次ブロック43用の鉄筋構造体55の組み立てを先行して行う鉄筋先組みによるコンクリート橋7の架設工法であって、施工中の前記一つのブロック39の軸方向鉄筋の接続用端部59に、次ブロック43用の軸方向鉄筋61を直接接続し、断面方向鉄筋を前記軸方向鉄筋61に組み付けることにより、該次ブロック43用の鉄筋構造体55を当該次ブロック43の位置において組み立てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つブロックの施工完成前に次ブロック用の鉄筋構造体の組み立てを先行して行う鉄筋先組みによるコンクリート橋の架設工法及び該工法で用いる移動作業装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
片持張出し架設方式のコンクリート橋(橋梁)の架設工法における従来の施工サイクルは、図11〜図13に示すように、当該ブロックの型枠・鉄筋・PC鋼材の組み立て後に行う
(1)当該ブロックのコンクリートの打設・養生、
(2)当該ブロックのPC鋼材の緊張・移動作業装置(移動本体)の移動、
(3)次ブロックの型枠・鉄筋・PC鋼材の組み立て
の各工程からなる。そして、これらの工程を当該ブロック、次ブロック、次々ブロックと順次繰り返し実行することによってコンクリート橋の架設を行っていた。
この場合、従来は「当該ブロックのコンクリートの打設・養生(前記(1))」の完了を待って、「PC鋼材の緊張・移動本体の移動(前記(2))」を行い、その後、「次ブロックの型枠・鉄筋・PC鋼材の組み立て(前記(3))」を行っていた。
【0003】
しかし、近年、工期の短縮を図るために当該ブロックのコンクリートの打設・養生(前記(1)の工程)のときに、予め次ブロックの鉄筋の組立てを先行させる鉄筋先組みによるコンクリート橋の架設工法が行われるようになってきた(特許文献1:特開平6−185018号公報)。
そして、その特許文献1に開示されているコンクリート橋の架設工法の場合には、当該ブロックのコンクリートの打設、養生時に、先方に張り出して設けた作業足場上に鉄筋組立てヤードを設け、当該鉄筋組立てヤードにおいて次ブロックの鉄筋組立てを先行させる、或は既に先組みされている鉄筋構造体をその位置に吊り上げる等が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているコンクリート橋の架設工法の場合は、先行して実施される次ブロックの鉄筋組立ては、別途設けた専用の組立てスペース(次ブロックの位置とは別の位置)において、別個独立して行われる。このように別個独立して組み立てられた次ブロック用の鉄筋構造体が、コンクリート養生中の当該ブロックに隣接する次ブロックの位置まで移動される。そして、養生中のコンクリート端面から突出している軸方向鉄筋の接続用端部と次ブロック用の鉄筋構造体の軸方向鉄筋とが連結される。
【0005】
この場合、施工ないし組み立て時のばらつきや誤差、更に部品の寸法精度等によって前記軸方向鉄筋の接続用端部と鉄筋構造体の軸方向鉄筋との間にどうしても位置ずれが生じる。従って、それを無理やり結束して連結すると軸方向鉄筋の蛇行を招き、各軸方向鉄筋の連続性や直線性を損なわせて各ブロック間の軸方向鉄筋の連結強度を低下させる虞れがあった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、隣り合うブロック同士の鉄筋構造体における、軸方向鉄筋の位置ずれに起因する各ブロック間における軸方向鉄筋の連結強度の低下を解消しつつ、工期の短縮に寄与し得るコンクリート橋の架設工法を提供することにある。また、該工法で用いる移動作業装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の第1の態様は、一つのブロックの施工完成前に次ブロック用の鉄筋構造体の組み立てを先行して行う鉄筋先組みによるコンクリート橋の架設工法であって、施工中の前記一つのブロックの軸方向鉄筋の接続用端部に、次ブロック用の軸方向鉄筋を直接接続し、断面方向鉄筋を前記軸方向鉄筋に組み付けることにより、該次ブロック用の鉄筋構造体を当該次ブロックの位置において組み立てることを特徴とするものである。
【0008】
本態様によれば、次ブロック用の鉄筋構造体を当該次ブロックの位置において組み立てる。すなわち、次ブロック用の鉄筋構造体は、施工中の一つのブロックの軸方向鉄筋の接続用端部に、該次ブロック用の軸方向鉄筋を直接接続し、断面方向鉄筋を前記軸方向鉄筋に組み付けることにより、当該次ブロックの位置において組み立てられる。
従って、隣り合うブロック同士の鉄筋構造体における、軸方向鉄筋の位置ずれは生じない。従って、各ブロック間の軸方向鉄筋の連結強度の増強と、工期の短縮を安価な施工コストで実現することが可能になる。
【0009】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様のコンクリート橋の架設工法において、前記次ブロックの鉄筋構造体の先行組み立ては、前記一つのブロックの鉄筋構造体の組立て完了後、コンクリートの打設前に開始されることを特徴とするものである。
【0010】
本態様によれば、前記第1の態様の作用効果に加えて、早いタイミングで次ブロックの鉄筋構造体の先行組み立てに着手することができ、同時に2ブロック分の鉄筋構造体の組立てを連続して行うことができる。従って、同一の作業を連続して行うことで作業の効率化を図ることができ、以って一層の工期短縮を実現することができる。
【0011】
尚、前記特許文献1に開示されているコンクリート橋の架設工法によっても、ある程度の工期の短縮は図れるが、上述した組み立て途中の鉄筋構造体の移動の手間や鉄筋構造体の組立てスペースの確保の問題と、当該ブロックの軸方向鉄筋の接続用端部との位置ずれの問題があり、これらの問題によって生ずる作業ロスを考慮すれば、本発明の態様の方が一層の工期短縮を図ることができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、前記第1の態様のコンクリート橋の架設工法において、前記次ブロックの鉄筋構造体の先行組み立ては、前記一つのブロックの鉄筋構造体にコンクリートを打設後、該コンクリートの養生と並行して行われることを特徴とするものである。
【0013】
本態様によれば、前記第1の態様の作用効果に加えて、当該一つのブロックのコンクリートの養生(硬化)と並行して次ブロックの鉄筋構造体の先行組み立てが行われる。従って、異なる工程を並行して行うことで作業の効率化を図ることができ、一層の工期の短縮を達成することができる。すなわち、コンクリートの養生による硬化の完了を待つ待ち時間の有効利用を通じて作業の効率化を図ることができ、一層の工期の短縮を達成することができる。
また、前記第2の態様と同じ理由で前記特許文献1に開示されているコンクリート橋の架設工法よりも作業効率が良く、より一層の工期の短縮を図ることができる。
【0014】
本発明の第4の態様は、作業移動装置に吊持される作業エリア部に位置する一つブロックの鉄筋構造体にコンクリートを打設後、同じく前記作業エリア部に位置する次ブロックの位置において、前記一つのブロックの軸方向鉄筋の接続用端部を基点として前記鉄筋構造体に連続させて次ブロック用の鉄筋構造体の組み立てを開始する鉄筋先組み工程と、前記一つのブロックのコンクリートの養生後、PC鋼材を緊張させ、該一つのブロックの上流側に位置する前ブロックで荷重を支えられていた前記移動作業装置を前記一つのブロック上に、前記次ブロック用の鉄筋構造体はその位置のままで、前記作業エリアは該移動作業装置と一緒に移動させる移動工程と、前記移動工程の終了時点で、前記次ブロック用の鉄筋構造体の組み立てが完了していない場合は該組み立てを完了する工程と、を有し、組み立てが完了した前記次ブロック用の鉄筋構造体にコンクリートを打設して前記各工程を繰り返すことを特徴とするコンクリート橋の架設工法である。
【0015】
本態様によれば、前記各態様と同様に、当該一つのブロックのコンクリートの養生による硬化の完了を待つ待ち時間を利用して、次ブロックの鉄筋構造体の先行組み立てを開始でき、工期の一層の短縮を図ることができる。しかも、移動作業装置は、コンクリートの養生が終了した前記一つのブロックの上に移動する際に、前記次ブロック用の鉄筋構造体はその位置のままで、前記作業エリアを当該移動作業装置と一緒に移動させるので、作業効率が良い。
【0016】
また、前記一つのブロックのPC鋼材の緊張後は、PC鋼材の緊張作業に支障になる等という理由で組み立てができなかった次ブロックの鉄筋構造体の残りの組み立てが実行でき、次ブロックのPC鋼材の緊張に先立って行われるPC鋼材の組み立てと並行して次ブロックの鉄筋構造体の組み立てを完成させて、更に次々ブロックの鉄筋構造体の先行組み立てへと移行することが可能になる。
【0017】
前記第4の態様のコンクリート橋の架設工法において、前記移動工程で、前記一つのブロックに位置していた型枠も前記移動作業装置と一緒に移動するようにすることができる。
【0018】
このようにすれば、前記移動工程では、当該一つのブロックで使用していた型枠を解体して次ブロックに移動することになるが、前記型枠は移動作業装置と一体に移動するため、該移動作業装置を「前ブロック」上から当該「一つのブロック」上に移動させることによって、前記型枠も同時に当該ブロックから次ブロックに自動的に移動されるようになる。
【0019】
本発明の第5の態様に係るコンクリート橋の架設工法で用いる移動作業装置は、脚部より前方に1ブロック分、張り出したトラス構造部構造部を有するコンクリート橋の架設工法で用いる移動作業装置であって、前記トラス構造部構造部の上桁に支持されて前記トラス構造部構造部より前方に1ブロック分、更に張り出すように設けられたメインビームと、前記トラス構造部構造部の下桁及び前記メインビームによって支持されて、前記トラス構造部構造部より前方に1ブロック分、更に張り出すように設けられたサブビームと、前記トラス構造部構造部及びメインビームに吊り持ちされた作業エリア部と、前記サブビームに移動可能に設けられ、鉄筋構造体を保持可能な保持手段と、を備え、前記作業エリア部に位置する一つブロックの鉄筋構造体の組立て完了後、同じく前記作業エリア部に位置する次ブロックの位置において、前記一つのブロックの軸方向鉄筋の接続用端部を基点として前記鉄筋構造体に連続させて次ブロック用の鉄筋構造体の組み立てが開始される状態を実現し、前記一つのブロックのコンクリートの養生後、PC鋼材を緊張させてから、該一つのブロックの上流側に位置する前ブロックで荷重を支えられていた該移動作業装置が前記一つのブロック上に、前記作業エリアと一緒に移動すると共に、前記次ブロック用の鉄筋構造体は前記保持手段で保持され且つその位置のまま保持される状態を実現するように構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
本態様によれば、既存の移動作業装置を使用して、メインビームとサブビームを該移動作業装置のトラス構造部に取り付けるだけの簡単な構成によって、移動作業装置が前ブロックに位置している状態で該一つのブロックのコンクリートの打設・養生と次ブロックの鉄筋構造体の先行組立てとを並行して実行することが可能になる。
【0021】
更に、移動作業装置が前記一つのブロック上に、前記作業エリアと一緒に移動する際に、前記次ブロック用の鉄筋構造体は、前記保持手段で保持され且つその位置のまま保持される状態を実現するように構成されている。従って、該次ブロック用の鉄筋構造体は、そのまま前記一つのブロックの軸方向鉄筋の接続用端部に連結された状態で次ブロックの位置に留まることが可能になり、当該移動作業装置の移動後に直ちに未完成の当該次ブロック用の鉄筋構造体の組み立てを再開することができ、以って工期の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、コンクリート橋の架設工法において、隣り合うブロック同士の鉄筋構造体における、軸方向鉄筋の位置ずれは生じない。従って、各ブロック間の軸方向鉄筋の連結強度の増強と、工期の短縮を安価な施工コストで実現することが可能になる。また、コンクリートの養生(硬化)時間を有効に利用して効率的で安価なコンクリート橋の架設施工が可能になり、工期の大幅な短縮が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例に係るコンクリート橋の架設工法の施工状況の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係るコンクリート橋の架設工法における一つのブロックのコンクリート打設直後の状態を示す軸方向鉄筋の接続用端部側からの斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係るコンクリート橋の架設工法における一つのブロックのコンクリート養生中、鉄筋構造体を先行組み立てしている状態を示す軸方向鉄筋の連結側からの斜視図である。
【図4】本発明の実施例に係るコンクリート橋の架設工法における次ブロックの鉄筋先組み工程を示す側断面図である。
【図5】図4におけるV−V線断面図である。
【図6】本発明の実施例に係るコンクリート橋の架設工法における一つのブロックのPC鋼材緊張・移動作業装置の移動工程を示す側断面図である。
【図7】本発明の実施例に係るコンクリート橋の架設工法における次ブロックの鉄筋・PC鋼材組み立て完了工程を示す側断面図である。
【図8】本発明の実施例に係るコンクリート橋の架設工法における次々ブロックの鉄筋先組み工程を示す側断面図である。
【図9】本発明の実施例に係るコンクリート橋の架設工法における次ブロックのPC鋼材緊張・移動作業装置の移動工程を示す側断面図である。
【図10】本発明の実施例に係るコンクリート橋の架設工法における次々ブロックの鉄筋・PC鋼材組立て完了工程を示す側断面図である。
【図11】鉄筋先組みによらない従来例に係るコンクリート橋の架設工法における当該ブロックのコンクリート打設・養生工程を示す側断面図である。
【図12】鉄筋先組みによらない従来例に係るコンクリート橋の架設工法における当該ブロックのPC鋼材緊張・移動作業装置の移動工程を示す側断面図である。
【図13】鉄筋先組みによらない従来例に係るコンクリート橋の架設工法における次ブロックの鉄筋・PC鋼材組み立て工程を示す側断面図である。
【図14】本発明のコンクリート橋の架設工法と鉄筋先組みによらない従来工法との施工日数を図表化して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るコンクリート橋の架設工法の実施の形態について詳細に説明する。最初に本発明のコンクリート橋の架設工法を実施する際に使用される移動作業装置1の構造の概略を図1及び図5に基づいて説明する。
【0025】
本発明のコンクリート橋の架設工法は、川や海に架かるコンクリート橋の他、図1に示すように陸地に設けられる自動車道路等の高架橋3の建設に使用される。この種のコンクリート橋の架設工法では、垂直に立ち上げた橋柱5からコンクリート橋7を左右に徐々に張り出させて行く片持ち張出し架設方式のコンクリート製のコンクリート橋の架設工法が多く採用されている。そして、この架設工法において使用されるのが以下述べるコンクリート橋の移動作業装置1である。
【0026】
図示のコンクリート橋の移動作業装置1は、構築されたコンクリート橋7の上面に張出し方向に延びるように設置される脚部となるレール9と、前記レール9上を走行する移動本体11と、前記移動本体11に対して設けられるメインビーム13及びサブビーム15と、前記移動本体11とメインビーム13上の横梁2からの吊持体47、49によって支持される横梁6、10によって支持される上下の支保工17、19と、前記支保工17、19と同様に前記移動本体11とメインビーム13上の横梁2からの吊持体51によって支持される横梁4によって支持される作業エリア部21によって構成されている。
【0027】
レール9は、H形鋼やI型鋼等の形鋼材によって構成されており、一例として左右1組ずつ計2組設けられている。
移動本体11は、前記レール9上を走行する走行体23と、該走行体23上に支持されるトラス構造部25とを左右に一対ずつ備えることによって構成されている。このうち、走行体23は前記レール9に係合する一例として前後左右4基の走行輪27と、一例として張出し側の走行輪27の回動軸に動力を伝える駆動装置29とを備えることによって構成されている。
【0028】
一方、トラス構造部25は側面視平行四辺形状をした支持構造体であり、前記走行体23上に水平に架け渡される下桁31と、前記下桁31よりも前方に1ブロック分、張り出すように下桁31の上方に水平に架け渡される上桁33と、前記下桁31と上桁33とを接続する傾斜支持枠35、37とを備えることによって構成されている。
尚、前記1ブロックとは、コンクリート橋7を張出し方向に順次張り出させて行く施工単位であり、本明細書では、コンクリート打設・養生等の本施工を行っているブロックのことを「一つのブロック」39、該一つのブロック39の一つ前のブロックを「前ブロック」41、前記一つのブロック39の次のブロックを「次ブロック」43、次ブロック43の次のブロックを「次々ブロック」45としてこれらを区別する。
【0029】
メインビーム13は、前記トラス構造部25の上桁33に支持されて前記トラス構造部25より前方に1ブロック分、更に張り出すように設けられている水平支持部材である。メインビーム13も前記レール9と同様、H形鋼等の形鋼材によって構成されている。
サブビーム15は、前記トラス構造部25の下桁31及び前記メインビーム13によって支持されて、前記トラス構造部25より前方に1ブロック分、更に張り出すように設けられている水平支持部材である。サブビーム15も前記レール9と同様、H形鋼等の形鋼材によって構成されている。
【0030】
上方に設けられる支保工17は、コンクリート橋7の上面に沿うように水平に配置されており、前記移動本体11とメインビーム13上の横梁2から垂下されている吊持体47によって支持される横梁6によって支持され、少なくとも当該一つのブロック39と、次ブロック43との領域をカバーするように設けられている(図4、図5)。
下方に設けられる支保工19は、コンクリート橋7の下面の形状に沿うように幾分、傾斜姿勢で配置されており、前記移動本体11とメインビーム13上の横梁2から垂下されている吊持体49によって支持される横梁10によって支持され、上方の支保工17と同様、少なくとも当該ブロック39と次ブロック43の領域をカバーするように設けられている(図4、図5)。
【0031】
作業足場となる作業エリア部21は、前記移動本体11とメインビーム13上の横梁2から垂下されている吊持体51によって支持される横梁4によって支持され、前ブロック41、一つのブロック39及び次ブロック43の領域をカバーするように設けられている(図4、図5)。
また、前記支保工17、前記支保工19が型枠53を支持している。
また、前記サブビーム15に、前記張り出し方向に沿う方向に摺動自在に保持手段であるチェーンブロック等の支持材57が設けられている。そして、該チェーンブロック等の支持材57を介して組立て途中ないし組立て後の鉄筋構造体55が保持されている。
【0032】
[実施例]
次に、図1〜図10に基づいて、前記コンクリート橋の移動作業装置1を使用することによって実行される本発明のコンクリート橋の架設工法について具体的に説明する。
本発明のコンクリート橋の架設工法は、当該一つのブロック39の施工完成前に次ブロック43の鉄筋組み立てを先行して行う鉄筋先組みによるコンクリート橋の架設工法である。そして、図2、図3に示すように、施工中の当該一つのブロック39を構成する軸方向鉄筋61の接続用端部59に(図2)、次ブロック43の位置において、次ブロック43用の軸方向鉄筋61を直接結束しつつ(図3)、次ブロック43用の断面方向鉄筋63を前記軸方向鉄筋61に結束して、次ブロック43の鉄筋構造体55を先行して組み立てて行くことによって本発明のコンクリート橋の架設工法は実行される。
【0033】
また、本実施例では、前記次ブロック43の鉄筋構造体55の先行組み立ては、当該一つのブロック39の鉄筋構造体55の組立て完了後、コンクリートを打設し、コンクリートの養生(硬化工程)と並行して実行されるようになっている。
【0034】
次に、本実施例に係るコンクリート橋の架設工法を、図4〜図10に基づいて(1)次ブロックの鉄筋先組み工程と、(2)当該一つのブロックのPC鋼材緊張後の移動作業装置の移動工程と、(3)次ブロックの鉄筋組み立て完了工程と、(4)次々ブロックの鉄筋先組み工程と、(5)次ブロックのPC鋼材緊張後の移動作業装置の移動工程と、(6)次々ブロックの鉄筋組み立て完了工程とに分けて具体的に説明する。
【0035】
(1)次ブロックの鉄筋先組み工程(図4参照)
次ブロックの鉄筋先組み工程は、当該一つのブロック39のコンクリートの打設後、次ブロック43の位置において直接、次ブロック43の鉄筋構造体55の組立てを開始する工程である。すなわち作業移動装置1に吊持される作業エリア部21に位置する一つブロック39の鉄筋構造体55にコンクリートを打設後、同じく前記作業エリア部21に位置する次ブロック43の位置において、前記一つのブロック39の軸方向鉄筋の接続用端部59を基点として前記一つのブロック39を成す鉄筋構造体55に連続させて次ブロック43用の鉄筋構造体55の組み立てを開始する工程である。
尚、本工程に先立って、当該一つのブロック39の鉄筋構造体55、型枠53、図示しないPC鋼材の組み立てが実施されている。
【0036】
本工程では、先ずは、移動作業装置1の前記レール(脚部)9は前ブロック41上に位置しており、型枠53は当該一つのブロック39、組立て途中の鉄筋構造体55は次ブロック43にそれぞれ位置している。
鉄筋構造体55の先行組み立ては、上述したように設置場所である次ブロック43の位置において直接行い、コンクリート養生中の当該一つのブロック39のコンクリート橋7における張出し側端面8から突出している、図2に示す長、短の軸方向鉄筋の接続用端部59を利用して行う。
【0037】
具体的には、図3に示すように前記長、短の軸方向鉄筋の接続用端部59に対して結束線65を使用して次ブロック43の鉄筋構造体55用の軸方向鉄筋61を直接結束して接続し、適宜の間隔で断面方向鉄筋63を同じく結束線65を使用して前記軸方向鉄筋61に順次結束していって鉄筋構造体55を組み立てて行く。
尚、ここでの鉄筋構造体55の先行組み立ては、次工程で行なうPC鋼材の緊張作業等の支障にならない範囲で行う。
【0038】
(2)当該一つのブロックのPC鋼材緊張後の移動作業装置の移動工程(図6参照)
当該移動作業装置の移動工程は、当該一つのブロック39のコンクリートの養生・硬化後、PC鋼材を緊張させ、当該一つのブロック39に位置していた型枠53と一緒に前ブロック41上に位置していた移動作業装置1を移動させて、型枠53を次ブロック43に、レール9及び移動本体11を当該一つのブロック39上にそれぞれ位置させる工程である。
即ち、当該一つのブロック39のコンクリートの養生・硬化後は、前記型枠53を解体して次ブロック43の位置に移動でき、当該一つのブロック39のPC鋼材を図示しないジャッキ等を使用して緊張した後は、当該一つのブロック39もコンクリート橋7の一部となり、移動作業装置1の荷重に耐えられる状態になっている。
【0039】
従って、当該一つのブロック39に構築されたコンクリート橋7の上面にレール9を延ばして行き、走行体23を駆動して移動本体11を1ブロック分、進行方向に移動させることができる。そして、前記支保工17、19に支持されている型枠53が移動本体11と一体になって移動することによって上述のように次ブロック43に至る。
尚、前工程(1)で先行組み立てした組立て途中の鉄筋構造体55は、チェーンブロック等の支持材57に保持された状態で、そのままの位置に残るようになっている。
【0040】
(3)次ブロックの鉄筋組み立て完了工程(図7参照)
次ブロックの鉄筋組み立て完了工程は、前記移動本体11の移動と関係なく、次ブロック43の位置において形状が保持されていた先組みされた鉄筋に残りの鉄筋を組み立てて行き、次ブロック43の鉄筋構造体55を完成させ、並行してPC鋼材の組立てを実行する工程である。
即ち、前記一つのブロック39のPC鋼材の緊張後は、PC鋼材の緊張作業の邪魔にならないから、残りの鉄筋の組み立てを実施し、次ブロック43の鉄筋構造体55を完成させる。また、前記作業と並行してPC鋼材の組立て作業を実行し、型枠53を取り付け、当該鉄筋構造体55が配設された型枠53内への次のコンクリートの打設に備える。
【0041】
(4)次々ブロックの鉄筋先組み工程(図8参照)
次々ブロックの鉄筋先組み工程は、次ブロック43のコンクリートの打設後、次々ブロック45の位置において直接、次々ブロック45の鉄筋構造体55の組み立てを開始する工程である。
本工程の具体的構成は前記(1)の次ブロックの鉄筋先行組立て開始工程と同様である。すなわち、コンクリートを打設された状態の次ブロック43を構成する鉄筋構造体55の軸方向鉄筋の接続用端部59を基点として、該次ブロック43を成す鉄筋構造体55に連続させて次々ブロック45用の鉄筋構造体55の組み立てを開始する。
【0042】
(5)次ブロックのPC鋼材緊張後の移動作業装置の移動工程(図9参照)
次ブロックのPC鋼材緊張後の移動作業装置の移動工程は、次ブロック43のコンクリートの養生・硬化後、PC鋼材を緊張させ、次ブロック43に位置していた型枠53と一緒に前記一つのブロック39上に位置していた作業移動装置1を移動させて、型枠53を次々ブロック45に、作業移動装置1を次ブロック43上にそれぞれ位置させる工程である。
本工程の具体的構成は前記(2)の移動工程と同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0043】
(6)次々ブロックの鉄筋組み立て完了工程(図10参照)
次々ブロックの鉄筋組み立て完了工程は、前記移動本体11の移動と関係なく、次々ブロック45において形状が保持されていた先組みされた鉄筋に残りの鉄筋を組立てて行き、次々ブロック45の鉄筋構造体55を完成させ、並行してPC鋼材の組み立てを実行する工程である。
本工程の具体的構成は前記(3)の完了工程と同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0044】
以下、順次前記と同様の工程を繰り返してコンクリート橋7を1ブロックずつ伸張させて行き、隣接する他のコンクリート橋7と連結することによって一連の高架橋3の架設工事が完了する。
そして、このような構成の本実施例に係るコンクリート橋の架設工法によれば、図14に示すように、1ブロック目で8日の施工日数、2ブロック目以降で6日の施工日数でコンクリート橋の架設工事を完了することができる。
【0045】
一方、鉄筋先組みによらない従来のコンクリート橋の架設工法では、同じく図14に示すように1ブロック目で前記と同じ8日の施工日数、2ブロック目以降でも同じ8日の施工日数を要している。
従って、鉄筋先組みによらない従来のコンクリート橋の架設工法に比べて、本実施例のコンクリート橋の架設工法は、2ブロック目以降で2日ずつ工期を短縮でき、すべてのブロックを累積すれば大幅な工期の短縮が図れることになる。
【0046】
また、鉄筋先組みによる下記の特許文献1に開示されているコンクリート橋の架設工法と比較しても、仮組みした鉄筋構造体の移動の手間の問題や既設の軸方向鉄筋の接続用端部59との位置ずれの問題がない分、作業ロスが少なくなるから工期の短縮が図れ、無理のない軸方向鉄筋61の連結によって、各鉄筋構造体55間の連結強度の増強が図られる。
【0047】
〔他の実施例〕
本発明に係るコンクリート橋の架設工法は以上述べたような構成を基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0048】
例えば、前記次ブロック43の鉄筋構造体55の先行組み立てを前記一つのブロック39の鉄筋構造体55の組立て完了後、コンクリートの打設前に実行することも可能である。因みに、このようなタイミングで次ブロック43の鉄筋構造体55の先行組み立てを開始した場合には、同一の作業を連続して行うことで作業の効率化を図ることができる。
【0049】
この他、本発明を実施するに際して使用したコンクリート橋の移動作業装置1の構成は前述した構成に限らず、次ブロック43での鉄筋構造体55の先行組み立てが可能な種々の構造のコンクリート橋の移動作業装置1が採用可能である。
〔産業上の利用可能性〕
【0050】
本発明は、一つブロックの施工完成前に次ブロック用の鉄筋構造体の組み立てを先行して行う鉄筋先組みによるコンクリート橋の架設工法の施工現場等において利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0051】
1 コンクリート橋の移動作業装置 2 横梁
3 高架橋 4 横梁
5 橋柱 6 横梁
7 コンクリート橋 8 張り出し側端面
9 レール(脚部) 10 横梁
11 移動本体 13 メインビーム
15 サブビーム 17 支保工
19 支保工 21 作業エリア部
23 走行体 25 トラス構造部
27 走行輪 29 駆動装置
31 下桁 33 上桁
35 傾斜支持枠 37 傾斜支持枠
39 一つのブロック 41 前ブラック
43 次ブロック 45 次々ブロック
47 吊持体 49 吊持体
51 吊持体 53 型枠
55 鉄筋構造体 57 チェーンブロック等の支持材
59 軸方向鉄筋の接続用端部 61 軸方向鉄筋
63 断面方向鉄筋 65 結束線
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特開平6−185018号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つのブロックの施工完成前に次ブロック用の鉄筋構造体の組み立てを先行して行う鉄筋先組みによるコンクリート橋の架設工法であって、
施工中の前記一つのブロックの軸方向鉄筋の接続用端部に、次ブロック用の軸方向鉄筋を直接接続し、断面方向鉄筋を前記軸方向鉄筋に組み付けることにより、該次ブロック用の鉄筋構造体を当該次ブロックの位置において組み立てることを特徴とするコンクリート橋の架設工法。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリート橋の架設工法において、
前記次ブロックの鉄筋構造体の先行組み立ては、前記一つのブロックの鉄筋構造体の組立て完了後、コンクリートの打設前に開始されることを特徴とするコンクリート橋の架設工法。
【請求項3】
請求項1に記載のコンクリート橋の架設工法において、
前記次ブロックの鉄筋構造体の先行組み立ては、前記一つのブロックの鉄筋構造体にコンクリートを打設後、該コンクリートの養生と並行して行われることを特徴とするコンクリート橋の架設工法。
【請求項4】
作業移動装置に吊持される作業エリア部に位置する一つブロックの鉄筋構造体にコンクリートを打設後、同じく前記作業エリア部に位置する次ブロックの位置において、前記一つのブロックの軸方向鉄筋の接続用端部を基点として前記鉄筋構造体に連続させて次ブロック用の鉄筋構造体の組み立てを開始する鉄筋先組み工程と、
前記一つのブロックのコンクリートの養生後、PC鋼材を緊張させ、該一つのブロックの上流側に位置する前ブロックで荷重を支えられていた前記移動作業装置を前記一つのブロック上に、前記次ブロック用の鉄筋構造体はその位置のままで、前記作業エリアは該移動作業装置と一緒に移動させる移動工程と、
前記移動工程の終了時点で、前記次ブロック用の鉄筋構造体の組み立てが完了していない場合は該組み立てを完了する工程と、を有し、
組み立てが完了した前記次ブロック用の鉄筋構造体にコンクリートを打設して前記各工程を繰り返すことを特徴とするコンクリート橋の架設工法。
【請求項5】
脚部より前方に1ブロック分、張り出したトラス構造部を有するコンクリート橋の架設工法で用いる移動作業装置であって、
前記トラス構造部の上桁に支持されて前記トラス構造部より前方に1ブロック分、更に張り出すように設けられたメインビームと、
前記トラス構造部の下桁及び前記メインビームによって支持されて、前記トラス構造部より前方に1ブロック分、更に張り出すように設けられたサブビームと、
前記トラス構造部及びメインビームに吊り持ちされた作業エリア部と、
前記サブビームに移動可能に設けられ、鉄筋構造体を保持可能な保持手段と、を備え、
前記作業エリア部に位置する一つブロックの鉄筋構造体の組立て完了後、同じく前記作業エリア部に位置する次ブロックの位置において、前記一つのブロックの軸方向鉄筋の接続用端部を基点として前記鉄筋構造体に連続させて次ブロック用の鉄筋構造体の組み立てが開始される状態を実現し、前記一つのブロックのコンクリートの養生後、PC鋼材を緊張させてから、該一つのブロックの上流側に位置する前ブロックで荷重を支えられていた該移動作業装置が前記一つのブロック上に、前記作業エリアと一緒に移動すると共に、前記次ブロック用の鉄筋構造体は前記保持手段で保持され且つその位置のまま保持される状態を実現するように構成されていることを特徴とするコンクリート橋の架設工法で用いる移動作業装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−32841(P2011−32841A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183142(P2009−183142)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000148346)株式会社錢高組 (67)
【Fターム(参考)】