説明

コンテナ及びその製造方法

【課題】既知のコンテナ及びこれらを製造するのに用いられるプロセスの難点を改善する。
【解決手段】
本発明による圧力下の流体を熱的に調整するためのコンテナ(1)は、少なくとも1つの外プレート(3)と内プレート(4)によって境界が定められ、外プレート(3)は内プレート(4)よりも厚い。外プレート(3)と内プレート(4)が複数の箇所で互いに接合され、接合部(5)と接合部(5)との間に、熱伝達流体の循環のための空間が構成され、熱伝達流体の圧力を圧力下の流体の圧力に調整するための手段(8)が設けられる。コンテナ(1)は円筒形態であり、上記空間は、コンテナ(1)の軸線方向に延びるチャネルの形態を有する。内プレート(4)の変曲点に対する接線と、内プレート(4)の接合部(5)における外プレート(3)に対する接線との間に作られる角度が80°以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、圧力下の流体を熱的に調整するためのコンテナ、その使用、化学反応器、これを用いる重合プロセス、並びに、コンテナ及び反応器を製造する方法にある。
【背景技術】
【0002】
圧力下の流体を収容することを意図したコンテナ内で熱交換を実行する必要があるとき、通常、熱交換を制御する問題(流体の熱的な調整)、すなわち、生成された熱を除去すること、又は、必要な熱を供給することに直面する。特に、発熱反応又は吸熱反応において、反応により生成された熱を除去する問題、或いは、それに必要な熱を供給する問題に直面する。
【0003】
圧力下の流体を収容することを意図した多数のコンテナ、特に、熱交換を制御するための熱伝達流体が循環する二重壁ジャケットがコンテナの外壁の外面に固定されたコンテナが既に説明されている。この特定の例においては、熱流束は、壁の厚さ部分を貫通しなければならず、このことは、圧力下の流体と熱伝達流体との間の熱交換に対する低い熱交換係数をもたらし、重合時間の増加及び工場効率の損失という特定の重合反応の例につながる。
【0004】
二重壁ジャケットがコンテナの外壁の内面に固定された、圧力下の流体を収容することを意図した他のコンテナも説明されている。
【0005】
従って、欧州特許EP0 012 410 B1明細書は、発熱反応及び吸熱反応を実行するためのコンテナ、特に、装置の外壁の内面に固定された二重壁ジャケット内で循環する熱伝達流体を用いて熱交換を制御することによって塩化ビニルを重合するためのコンテナを説明する。二重壁ジャケットは、半円形の管形態である半分の管で構成された半管形状コイルをコンテナの壁の内面に溶接することによって形成され、コイルは、それがコンテナの壁の内面に接触する方向転換部が巻き線を形成している。この種類のコンテナは、二重壁ジャケットがコンテナの外壁に固定された従来のコンテナによる熱交換係数よりも良好な熱交換係数によって特徴付けられるが、熱交換係数は依然として低い。さらに、かかるコンテナを製造するのが複雑であり、非常に高い製造費用を生じさせる。最後に、半分の管は、コンテナの内側上に、非常に鋭い角度(切れ目)を形成するため、仏国特許FR2746488号明細書において概略的に示されるコンテナも、特に、これが重合、特に、塩化ビニルの重合に用いられる場合に目立った難点を有し、すなわち、形成されるポリマーが、コンテナの内側上の半分の管の間の領域に不利に堆積されるという事実を有する。このことは、重合サイクルは、反応器を清掃するために、より頻繁に中断されなければならないことを意味する。かかるプロセスの生産性は、かかる堆積によって大きな影響を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許EP 0012410 B1明細書
【特許文献2】FR2746488号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、新規なコンテナとこれを製造するための新規な方法を提供することにより、既知のコンテナ及びこれらを製造するのに用いられるプロセスの難点を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明は、圧力下の流体を熱的に調整するためのコンテナであって、コンテナは、その外部に面する表面の少なくとも一部分にわたって少なくとも1つの外プレートによって境界が定められ、その内部に面する表面の少なくとも一部分にわたって少なくとも1つの内プレートによって境界が定められ、外プレートは内プレートよりも厚く、外プレートと内プレートとが複数の箇所で互いに接合され、熱伝達流体の循環のための空間が接合部と接合部との間に構成され、熱伝達流体の圧力を圧力下の流体の圧力に調整するための手段を有する。
【0009】
用語「コンテナ」は、本発明の目的では、流体を受入れる又は収容するために使用する閉鎖中空容器を意味すると理解される。
【0010】
用語「流体」は、本発明の目的では、液体又は気体、液体/気体、液体/固体又は気体/固体の二相媒体、又は、液体/気体/固体の三相媒体を意味すると理解される。
【0011】
表現「圧力下の流体」は、本発明の目的では、大気圧よりも高い圧力下の流体、好ましくは、(大気圧に対して表現される)ゲージ圧2バール(20万Pa)、特に好ましくは4バール(40万Pa)の圧力下の流体を意味すると理解される。
【0012】
表現「熱伝達流体の循環のために接合部と接合部との間に構成される空間」は、本発明の目的では、熱伝達流体が循環することができる空間、即ち、容積を意味すると理解され、より一般的には、かかる空間は、二重壁ジャケット又はジャケットと呼ばれる。
【0013】
用語「プレート」は、本発明の目的では、剛性材料の単一シート、又は、互いに密に結合されたこれらのいくつかのシートを意味すると理解される。従って、本発明の意味における1つの特定のプレートの例を考慮すると、本発明の内容においては、プレートは、圧延により得られた金属シートである。
【0014】
表現「その外部の表面の少なくとも一部分にわたってコンテナを構成する外プレート」は、代表的には、コンテナの外壁を部分的に構成するプレートを示す。これは、選択的には、本発明によるコンテナの使用に必要な任意の設備の一部分を、コンテナの外部に包囲し又は前記一部分で取り囲むことができる。例えば、これは、隔離チャンバであってもよいし、又は、閉じ込めチャンバであってもよい。
【0015】
表現「その内部の表面の少なくとも一部分にわたってコンテナを構成する内プレート」は、典型的には、二重ジャケットの内壁を構成するプレートを示す。これは、コンテナの内側において、コンテナ内に収容された流体と直接接触することが有利である。
【0016】
内プレートに用いられる材料は、外プレートに接合することができ且つ低い熱抵抗を有するものであれば、任意の種類のものであってもよい。内プレートに用いられる材料は、炭素鋼、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金(例えば、INCOLOY(登録商標)、HASTELLOY(登録商標)、INCONEL(登録商標)、及びMONEL(登録商標)等の合金)、銅、タンタル、及びジルコニウム等の金属材料から選択されることが有利である。さらに、低い熱抵抗を有するポリマー材料又はそれで被覆された金属材料を選択することも可能である。
【0017】
内プレートに用いられる材料は、好ましくは、ステンレス鋼から選択される。用語「ステンレス鋼」は、特に、フェライトステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、及び、超オーステナイト系ステンレス鋼及びオーステナイト系−フェライトステンレス鋼を含むオーステナイト系ステンレス鋼を示すことを意図する。内プレートに用いられる材料は、特に好ましくは、オーステナイト系ステンレス鋼であり、最も好ましくは、超オーステナイト系ステンレス鋼である。
【0018】
外プレートに用いられる材料は、任意の種類のものであってもよい。有利には、外プレートに用いられる材料は、内プレートに用いられる材料、例えば、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、銅、タンタル、ジルコニウム、及びこれらの材料の2つ又は3つ以上で構成される材料等から選択され、さらに、前述した材料の1つで被覆された炭素鋼から選択される。
【0019】
外プレートに用いられる材料は、好ましくは、ステンレス鋼及びそれで被覆された炭素鋼から選択される。外プレートに用いられる材料は、特に好ましくは、オーステナイト系ステンレス鋼及びそれで被覆された炭素鋼から選択される。外プレートに用いられる材料は、最も特に好ましくは、超オーステナイト系ステンレス鋼及びそれで被覆された炭素鋼から選択される。
【0020】
内プレートに超オーステナイト系ステンレス鋼を用い、及び、外プレートに超オーステナイト系ステンレス鋼で被覆された炭素鋼を用いて、非常に良い結果が得られた。
【0021】
表現「複数の箇所で一緒に接合されたプレート」は、本発明の目的では、内プレート及び外プレートが複数の箇所で互いに接合され、従って、接合部において互いに直接接触しており、且つ、内プレートと外プレートとの間に接合部品がないことを意味すると理解される。接合部は、内プレート及び外プレートがこれらの接合部において互いに接触していれば、任意の方法で製造されてもよい。接合部は、特に、接着結合、溶接、蝋付け、又は任意その他の手段による任意その他の固定法によって製造される。
【0022】
接合部は、溶接接合部であることが有利であり、レーザ溶接された接合部であることが好ましい。
【0023】
溶接、好ましくはレーザ溶接は、スポット溶接又はゾーン溶接であることが有利である。
【0024】
用語「スポット溶接」は、本発明の目的では、溶接が、2つのプレートの表面上におけるある特定の箇所で局所的に行われることを意味すると理解される。従って、接合部は、特に、スポット溶接された接合部であることが好ましい。
【0025】
用語「ゾーン溶接」は、本発明の目的では、2つのプレートの表面に対する溶接領域を定めた溶接を意味すると理解される。従って、接合部は、特に、ゾーン溶接された接合部であることが好ましい。
【0026】
溶接は、ゾーン溶接であることが好ましい。
【0027】
ゾーン溶接は、各溶接領域が円形状の溶接であってもよいし、各溶接領域が1つ又は2つ以上の並列する溶接シーム(直線の溶接ライン、溶接ビードとも称する)によって構成されてもよい。
【0028】
表現「円形状の溶接」は、本発明の目的では、溶接が、2つのプレートの表面上の特定の場所において、円形の形態で生成されることを意味すると理解される。従って、接合部は、特に、円形状の溶接であることが好ましい。
【0029】
ゾーン溶接は、特に好ましくは、各溶接領域が、1つ又は2つ以上の並列する溶接シームにより構成される。従って、接合部は、溶接領域であり、各溶接領域が1つ又は2つ以上の並列する溶接シームからなることが特に最も好ましい。
【0030】
従って、溶接領域は、少なくとも0.1mm、好ましくは少なくとも0.2mm、特に好ましくは少なくとも0.3mm、特に最も好ましくは少なくとも0.5mmの幅を有する。従って、溶接領域は、最大10mmの幅、好ましくは最大8mm、非常に特に好ましくは最大2.5mmの幅を有する。
【0031】
好ましい実施形態によれば、本発明は、外壁の内面側に二重壁のジャケットを有するコンテナであって、二重壁ジャケットの内壁は、コンテナの外壁を構成する金属シートの厚さより薄い厚さの金属シートであり、この金属シートは、コンテナの外壁の内面に溶接されると共に、ジャケットを構成する自由空間を構成するように変形されるコンテナに関する。
【0032】
本発明によるコンテナにおいて、内プレートは、接合部と接合部との間で凸状であることが有利である。
【0033】
用語「凸状」は、内プレートが、熱伝達流体の循環のための空間を構成するように、接合部と接合部との間において外プレートから離れていることを意味すると理解される。
【0034】
本発明によるコンテナでは、外プレートは、変曲点をもたないことが有利である。
【0035】
好ましくは、内プレートは、接合部と接合部との間で凸状であり、外プレートは、変曲点をもたない。
【0036】
本発明によるコンテナはまた、接合部において内プレートが外プレートに接する事を特徴とすることが有利である。
【0037】
用語「接する」は、本発明の目的では、接合部において内プレートと外プレートとの間に形成される角度がゼロであることを意味すると理解される。
【0038】
本発明によるコンテナはまた、内プレートの表面が連続的であること、即ち、途切れていないことを特徴とすることが有利である。
【0039】
本発明によるコンテナでは、外プレートは内プレートよりも厚い。
【0040】
本発明によるコンテナの内プレートの厚さは、コンテナの寸法(容積及び直径)及び形状から独立していると共に、その中に存在する圧力からも独立していることが有利である。内プレートの厚さは、最大2.5mmであり、特に好ましくは、最大2mmであり、更に特に好ましくは、最大1.8mmであり、真に最も好ましくは、最大1.5mmである。厚さ最大1mm又は最大0.5mmが更に好ましい。
【0041】
コンテナの外プレートの厚さは、コンテナの寸法及び形状、並びに、その中に存在する圧力に依存することが有利である。外プレートの厚さは、少なくとも5mmであり、特に好ましくは、少なくとも6mmである。外プレートの厚さは、好ましくは、最大200mmであり、特に好ましくは、最大100mmであり、更に好ましくは、最大60mmであり、真に最も好ましくは、最大50mmである。
【0042】
本発明によるコンテナは、熱伝達流体の圧力を、圧力下の流体の圧力に調整することを意図する手段を有している。従って、二重壁ジャケットの内圧は、コンテナの内圧まで調整されることが有利である。
【0043】
用語「調整された圧力」は、本発明の目的では、熱伝達流体の圧力が圧力下の流体の圧力よりわずかに上であってもよいし、圧力下の流体の圧力と実質的に同等であってもよいし、又は圧力下の流体の圧力よりもわずかに下であってもよいことを意味することが理解される。
【0044】
用語「わずかに上」及び「わずかに下」は、熱伝達流体の圧力と圧力下の流体の圧力との間の圧力差が、2バールよりも少ないか又はこれに等しく、好ましくは、1バールより少ないか又はこれに等しいことを意味すると理解される。
【0045】
熱伝達流体の圧力は、圧力下の流体の圧力に実質的に等しいことが好ましい。表現「実質的に等しい」は、熱伝達流体の圧力が、圧力下の流体の圧力と数パーセントの範囲内で等しいことを意味すると理解される。
【0046】
熱伝達流体の圧力を圧力下の流体の圧力に調整するための任意手段が用いられる。例えば、コンテナの上方に存在する気相を熱伝達流体と直接連通させるようにすることが可能である。選択的には、少なくとも1つの平衡膜又は少なくとも1つの平衡ボトルを間に入れることにより、熱伝達流体の圧力を、圧力下の流体の圧力に調整することができる。圧力は、さらに、自動制御により調整することができる。
【0047】
圧力は、少なくとも1つの平衡膜又は少なくとも1つの平衡ボトルを間に入れることにより、コンテナの頭上に存在する気相を、熱伝達流体と直接連通させるようにすることにより調整されることが好ましい。
【0048】
特に、圧力は、少なくとも1つの平衡ボトルを介在させることによって調整されることが好ましい。平衡ボトルは、平衡膜又はピストンシステムで構成することができる。特に、圧力は、平衡膜で構成された少なくとも1つの平衡ボトルを介在させることによって調整されることが最も好ましく、特に、平衡膜を有する1つの平衡ボトルを介在させることによって調整することが真に最も好ましい。平衡膜は、金属材料で作られてもよいし、ポリマー材料で作られてもよい。平衡膜は、平らであってもよいし、蛇腹形態等の変形しやすい形態であってもよい。
【0049】
接合部と接合部との間に定められる熱伝達流体の循環のための空間は、任意の形態を有する。従って、上記空間は、垂直方向チャネル、水平方向チャネル、斜チャネル又はヘアピン形状のチャネルであってもよいし、又は、自由な形態であってよい。
【0050】
接合部と接合部との間に定められる空間は、垂直方向チャネル又は水平方向チャネルの形態を有することが好ましく、特に、垂直方向チャネルの形態であることが好ましい。
【0051】
チャネルは、最大1000mmの幅を有することが有利であり、好ましくは、最大800mm、特に好ましくは、最大700mm、更に好ましくは、最大600mm、最も好ましくは、最大500mmの幅を有する。最大200mm、特に最大100mmの幅が最も好ましい。チャネルは、少なくとも30mmの幅を有することが有利であり、好ましくは、少なくとも40mm、特に好ましくは、少なくとも50mm、最も好ましくは、少なくとも60mmの幅を有する。
【0052】
チャネルの深さ、即ち、内プレートと外プレートとの間の最長距離は、最大140mmであることが有利であり、好ましくは、最大100mm、特に好ましくは、最大60mm、更に好ましくは、最大40mm、最も好ましくは、最大25mmである。最大10mm、特に最大5mmの深さが好ましい。チャネルは、少なくとも1mmの深さを有することが有利であり、好ましくは、少なくとも2mm、特に好ましくは、少なくとも3mm、最も好ましくは、少なくとも4mmの深さを有する。
【0053】
接合部と接合部との間に定められる空間において循環することができる熱伝達流体は、任意の流体である。熱伝達流体は、溶融金属を含む液体でもよいし、又は気体であってもよい。熱伝達流体は、圧力下に置くことができる液体、例えば、湧き水、工業用水、脱塩水、塩水、グリコール水、又は熱媒油等であることが好ましい。熱伝達流体は、特に、湧き水、工業用水、又は脱塩水であることが好ましい。熱伝達流体は、脱塩水であることが最も好ましい。熱伝達流体は、特に、添加剤を含む脱塩水であることが好ましい。用語「添加剤を含む脱塩水」は、脱塩水が、例えば、腐食防止剤及び付着防止剤等の1つ又は2つ以上の抑制剤、又は凝固点を低下させることを意図するクリコールを含む脱塩水を意味すると理解される。
【0054】
本発明によるコンテナは、使用に必要な装置の任意の部品を有することが有利である。従って、本発明によるコンテナは、少なくとも1つの攪拌システムと、少なくとも1つの入口と、その内容物の移動のための少なくとも1つの出口と、選択的に、例えば、温度又は圧力プローブ等の少なくとも1つのプローブと、選択的に、少なくとも1つの安全設備と、選択的に、少なくとも1つの分析器、及び/又は、選択的に、少なくとも1つのレベル検出器とを有する。
【0055】
本発明によるコンテナは、閉じられた容積を有するものであれば、任意の形態をとることができる。従って、コンテナは、任意のベース部を有する実質的な回転円筒形態であってもよいし、任意のベース部を有する実質的な回転円錐形態であってもよいし、通常の又は任意のベース部を有する実質的なピラミッド形態であってもよいし、通常の又は任意の多角形ベース部を有する実質的な平行パイプ形態であってもよいし、球形態であってもよい。
【0056】
用語「実質的な」は、本発明の目的では、上述のコンテナのベース部が平らであってもよいし、平らでなくてもよいことを意味すると理解される。
【0057】
本発明によるコンテナは、実質的に、回転円筒形態である。この特定の例においては、ベース部は、平らであってもよいし、又は、ドーム状であってもよい。
【0058】
本発明による、実質的に回転円筒形態を有するコンテナは、その外部に面する表面の少なくとも一部にわたって少なくとも1つの外プレートによって境界が定められ、その内部に面する表面の少なくとも一部にわたって少なくとも1つの内プレートによって境界が定められることが有利である。
【0059】
第1の実施形態によれば、コンテナは、その外部に面する表面の少なくとも一部にわたって単一の外プレートによって境界が定められ、その内部に面する表面の少なくとも一部にわたって単一の内プレートによって境界が定められ、外プレートはコンテナの円筒形部分を構成することが有利である。
【0060】
第2の実施形態によれば、コンテナは、その外部に面する表面の少なくとも一部にわたって幾つかの外プレートによって境界が定められ、その内部に面する表面の少なくとも一部にわたって幾つかの内プレートによって境界が定められ、内プレートが接合された外プレートが、その端部と端部とで固定され、それにより、コンテナの円筒形部分を構成することが有利である。
【0061】
実質的な回転円筒形態であるコンテナの特定の例においては、内プレートは、内面全体にわたって外プレートに接合されていてもよいし、内面の一部分に接合されていてもよい。
【0062】
この特定の例においては、本発明によるコンテナは、コンテナを閉鎖容積にするのに必要な任意の部分を含むことが有利である。特に、コンテナは、好ましくは、円筒形部分に締結された2つのベース部を含み、これらのベース部は平らであってもよいし、又はドーム状であってもよい。
【0063】
これらのベース部の少なくとも1つは、選択的には、少なくとも1つのプレートで構成され、このプレートは、例えば、熱伝達流体の循環のための空間を定めるように上述した内プレートに複数箇所で接合された上述した外プレートである。変形例として、これらのベース部の少なくとも1つは、その外面上に、熱伝達流体が循環する二重壁ジャケットを有していてもよい。
【0064】
本発明によるコンテナ、好ましくは、実質的な回転円筒形態を有するコンテナは、内プレートが、その接合部と接合部との間で2つの曲率の変化を有するという事実によって特徴付けられることが有利である。従って、接合部と接合部との間に定められる空間が垂直方向チャネル形態を有する場合、円筒形部分の軸に対して垂直な平面において、各々の接合部と接合部との間に2つの変曲点を有することが有利である。
【0065】
接合部と接合部との間に定められる熱伝達流体の循環のための空間が垂直方向チャネルの形態を有する実質的な回転円筒形態を有するコンテナの場合、上記空間において且つコンテナの円筒形部分の軸線に対して垂直な平面において、内プレートの変曲点の1つに対する接線と、内プレートの対応する接合部における外プレートに対する接線との間に形成される角度は、80°よりも小さいか又はこれに等しいことが有利であり、好ましくは、60°よりも小さく又はこれに等しく、特に好ましくは50°よりも小さいか又はこれに等しく、更に好ましくは、45°よりも小さいか又はこれに等しく、一層好ましくは、35°よりも小さいか又はこれに等しく、最も好ましくは、30°よりも小さいかこれに等しい。
【0066】
接合部と接合部との間に定められる空間が垂直方向チャネルの形態ではない形態(例えば、水平方向チャネル)を有する、実質的な回転円筒形状を有するコンテナ又は実質的な円筒形態ではない形態のコンテナにおいては、前述の角度を定めるように考慮される平面を同様な方法により定めることができる。
【0067】
本発明は、さらに、圧力下の流体を熱的に調整するための本発明によるコンテナの使用に関する。
【0068】
本発明は、発熱反応及び吸熱反応中、熱伝達流体によって圧力下の流体を熱的に調整するための本発明によるコンテナの使用に関することが好ましい。
【0069】
本発明によるコンテナは、特に、例えば、ワイン、ミルク又はチーズの発酵容器又は化学反応器等の容器とするのがよい。本発明によるコンテナは、化学反応器であることが好ましい。
【0070】
用語「化学反応器」は、本発明の目的では、化学反応が生じるコンテナを意味すると理解される。
【0071】
従って、本発明は、さらに、本発明によるコンテナで構成される化学反応器に関する。
【0072】
本発明によるコンテナの例において、上述した特徴は、さらに、本発明による化学反応器にも適用される。
【0073】
本発明による化学反応器には、その使用に必要な機器の任意の部分が有することが有利である。従って、本発明による反応器は、少なくとも1つの攪拌システムと、反応物質を注入するための少なくとも1つの入口と、生成物を回収するための少なくとも1つの出口と、選択的に、人間による検査のための少なくとも1つのポート(「検査ポート」)と、例えば、温度及び/又は圧力を測定するための1つ又は2つ以上のプローブと、選択的に、可能性のある過圧を検出するための少なくとも1つの安全設備と、選択的に、反応器において生じている反応を停止させるための安全設備と、選択的に、少なくとも1つの安全部材(弁、大気放出板)と、選択的に、少なくとも1つの分析器と、選択的に、少なくとも1つのレベル検出器とを有することが好ましい。
【0074】
攪拌システムは、攪拌器と、選択的に、反渦装置と、選択的に、吸出管とで構成されることが有利である。
【0075】
攪拌器の例として、マリンブレードインペラ、ピッチ付きブレードタービン、二重フローブレードインペラ、ハイドロフォイルブレードインペラ、Ekato ISOJET攪拌器、粘性流体のためのかき混ぜ機(螺旋状リボンインペラ、螺旋状タービン、雌ねじ、プラネタリーアルキメデスねじ、二重螺旋又は単一螺旋アルキメデスねじを有する又は有しない単一リボン又は二重リボン攪拌器、アルキメデスねじを有する又は有しない幅広ブレード及び単一又は二重のリボンを有するプロペラ)、ディスク及びピッチ付きブレードかき混ぜ機、多方向水中かき混ぜ機、ピッチ付き、湾曲状又は凹状のフラットブレードを有するラシュトン型のディスクタービン、フラットブレードタービン(パドルを含む)、ピッチ付きブレード又は湾曲状ブレードタービン(湾曲状ブレードタービンインペラ又は後退湾曲状インペラを含む)、軸方向取り込み及び半径方向送給を有する閉じられたタービン、固定の相対物を有する又は有しない閉鎖ディスク及び湾曲状ブレードタービン、固定の相対物のシステムを有する湾曲状ブレードタービン、分散器(のこぎり歯状のタービンインペラを含む)、接線フローアンカーかき混ぜ機、接線フローバリアかき混ぜ機(ブレースインペラを含む)、ヴァンリエットタービン、ジェットミキサ、及び個々の又は共通の駆動システムを有する幾つかの移動部材の例を含むこれらのかき混ぜ機のいずれかの組み合わせを含むものが挙げられる。
【0076】
反渦装置の例として、フラットプレート型、三角形の反渦装置、スイングチューブ反渦装置、ビーバーティル反渦装置、指形状の反渦装置、凹状ブレード反渦装置、及び平坦化管反渦装置が挙げられる。
【0077】
本発明による反応器の好ましい変形態様は、重合反応器である。
【0078】
重合反応器は、それが実験反応器であるか、パイロット反応器であるか、又は工業用反応器であるかに応じて、数リットルから300m3までの間での範囲の容積を有する。
【0079】
重合反応器は、それが実験反応器又はパイロット反応器である場合、少なくとも35リットルの容積を有することが有利であり、好ましくは、少なくとも50リットルの容積を有し、特に好ましくは、少なくとも100リットルの容積を有する。重合反応器は、最大200リットルの容積を有することが有利であり、好ましくは、最大175リットルの容積を有し、特に好ましくは、最大150リットルの容積を有する。
【0080】
重合反応器は、それが工業用反応器である場合、少なくとも20m3の容積を有することが有利であり、好ましくは、少なくとも25m3の容積を有する。重合反応器は、最大300m3の容積を有することが有利であり、好ましくは、最大250m3の容積を有し、特に好ましくは、最大200m3の容積を有する。
【0081】
本発明による反応器は、前述の容積の設定において、少なくとも20m3の容積の容積を有する場合に特に有益な利点を有する。特に、本発明による反応器は、コンデンサを有しないことが可能である。本発明による反応器は、コンデンサを有しないことが好ましい。
【0082】
重合反応器は、任意のモノマーを重合するための反応器であるのがよい。重合反応器は、エチレン不飽和モノマーを重合するための反応器であることが有利である。重合反応器は、好ましくは、ハロゲン化ビニルモノマーを重合するための反応器であり、特に好ましくは、塩化ビニルを重合するための反応器であり、最も好ましくは、水性分散における塩化ビニルを重合するための反応器である。
【0083】
用語「ハロゲン化ビニルモノマー」は、本発明の目的では、同一又は異なる1つ又は2つ以上のハロゲン原子を含み且つハロゲン原子以外のヘテロ原子を含まないエチレン不飽和モノマーを意味すると理解される。
【0084】
ハロゲン化ビニルモノマーの例として、塩素を含むハロゲン化ビニルモノマー、フッ素を含むハロゲン化ビニルモノマー、臭化ビニル等のハロゲン化ビニルモノマーが挙げられる。
【0085】
塩素を含むハロゲン化ビニルモノマーの例として、塩化ビニル、塩化ビニリジン、トリクロロエチレン、クロロプレン、クロロトリフルオロエチレンが挙げられる。
【0086】
フッ素を含むハロゲン化ビニルモノマーの例として、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオリエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロフォリフルオロエチレンが挙げられる。
【0087】
表現「ハロゲン化ビニルモノマーの重合」は、上記ハロゲン化ビニルモノマーの単独重合、上記ハロゲン化ビニルモノマー同士の共重合、上記ハロゲン化ビニルモノマーと他のエチレン不飽和モノマー(例えば、オレフィン、エステル、ニトリル、アクリル及びメタクリルアミド等)との共重合、上記ハロゲン化ビニルモノマーとビニルエステル(例えば、酢酸ビニル等)との共重合を意味すると理解される。
【0088】
従って、表現「塩化ビニルの重合」は、塩化ビニルの単独重合、塩化ビニルとハロゲン化ビニルモノマーとの共重合、塩化ビニルと、エチレン不飽和モノマー(例えば、オレフィン、エステル、ニトリル、アクリル、及びメタクリルアミド等)及びビニルエステル(例えば、酢酸ビニル等)から選択された1つ又は2つ以上との共重合を意味すると理解される。塩化ビニルコポリマーは、塩化ビニルに由来するモノマー単位を少なくとも50重量%、好ましくは、少なくとも60重量%、特に好ましくは、少なくとも70重量%を含むことが有利である。
【0089】
表現「水性分散における重合」は、本発明の目的では、水性懸濁液におけるラジカル重合、水性乳濁液におけるラジカル重合、及び水性マイクロ懸濁液における重合を意味すると理解される。
【0090】
表現「水性懸濁液におけるラジカル重合」は、本発明の目的では、油溶性のラジカル開始剤及び分散剤の存在の下で、水性媒体において実行される任意のラジカル重合プロセスを意味すると理解される。
【0091】
表現「水性乳濁液におけるラジカル重合」は、本発明の目的では、水溶性のラジカル開始剤及び分散剤の存在の下で、水性媒体において実行される任意のラジカル重合プロセスを意味すると理解される。
【0092】
表現「水性マイクロ懸濁液における重合」は、「均質化水性分散における重合」とも呼ばれ、本発明の目的では、油溶性の開始剤が採用され、モノマー液滴の乳濁液が、強力な機械的かき混ぜと乳化剤の存在の下で生成される任意のラジカル重合プロセスを意味すると理解される。
【0093】
この特に好ましい変形態様によれば、重合反応器には、上述した攪拌システムと、モノマーのための入口と、水のための入口と、他の反応剤(開始剤、分散剤等)のための入口と、ポリマーを回収するための出口と、少なくとも1つの検査ポートと、1つ又は2つ以上のプローブと、可能性のある過圧を検出するための及び/又は反応を停止させるための少なくとも1つの安全設備と、少なくとも1つの安全部材と、選択的に、少なくとも1つの分析器と、選択的に、少なくとも1つのレベル検出器とを有することが有利である。
【0094】
この特に好ましい変形態様によれば、熱伝達流体は脱塩水であることが有利である。熱伝達流体は上で定義されたように、添加剤を含む脱塩水であることが好ましい。
【0095】
本発明は、さらに、重合反応中、好ましくは、エチレン不飽和モノマーの重合中、特に好ましくは、ハロゲン化モノマーの重合中、最も好ましくは、塩化ビニルの重合中、熱伝達流体によって圧力下の流体を熱的に調整するために、本発明による反応器を使用することに関することが有利である。
【0096】
本発明は、さらに、本発明による化学反応器を用いる重合プロセスに関し、特に、上述したエチレン不飽和モノマーを重合するプロセスに関する。
【0097】
重合及びハロゲン化ビニルモノマーの例において、上述した特徴は、さらに、重合反応中の本発明による反応器の使用の例、及び、本発明による重合プロセスの例においても適用される。
【0098】
エチレン不飽和モノマーを重合するための本発明による反応器の使用は、特に、本発明による反応器がコンデンサを備えていなくてもよく、好ましくは、備えていないことにより特に有益な利点を有し、かくして、例えば、泡形成等のコンデンサの使用に関連するすべての不利点がなくなる。
【0099】
本発明によるコンテナ及び反応器は、任意の方法によって得られる。コンテナ及び反応器が本発明による方法で製造された場合、良い結果が得られる。
【0100】
最後に、本発明は、本発明によるコンテナ及び反応器を製造するための方法であって、(1)一方が他方よりも厚い2つのプレートを向かい合わせて配置するステップと、
(2)溶接されない領域を残すように2つのプレートの周囲を溶接するステップと、
(3)ステップ(2)の後、2つのプレートを、循環チャネルの望ましい幾何学的形状に従って溶接するステップと、
(4)コンテナ及び反応器の望ましい形態に応じて、必要な容積を得るために、外プレートを構成する厚い方のプレートを前記容積の外側に配置し且つ内プレートを構成する薄いプレートを前記容積の内側に配置して、溶接された2つのプレートで構成された組立体、又は、溶接された2つのプレートを互いに固定した幾つかの組立体を所望の形態に形成するステップと、
(5)圧力下の流体を、周囲の溶接されていない領域から、溶接された2つのプレート間に注入して、接合部と接合部との間に熱伝達流体の循環のための空間を形成するステップと、
(6)追加しなければならない任意の装置部品を選択的に取り付けて、コンテナ及び反応器を閉じ、熱伝達流体の圧力を圧力下の流体の圧力に調整するための手段を取り付けるステップと、を有し、ステップ(6)は、ステップ(5)の完全又は部分的に前又はその後に行われる、方法に関する。
【0101】
本発明による方法において、ステップ(4)及びステップ(5)の順序は逆であってもよい。ステップ(4)は、ステップ(5)の前に行われることが好ましい。
【0102】
本発明による製造方法は、さらに、コンテナ及び反応器の使用に必要な機器の任意の部品を取り付けるステップを有し、このステップは、ステップ(1)〜(6)の完全又は部分的に、その後、又はその間に実行される。
【0103】
コンテナ/反応器が、実質的に回転円筒形態を有する特定の場合においては、本発明による製造方法は、
(1)一方が他方よりも厚い2つのプレートを向かい合わせて配置するステップと、
(2)溶接されない領域を残すように2つのプレートの周囲を溶接するステップと、
(3)ステップ(2)の後、2つのプレートを、循環チャネルの望ましい幾何学的形状に従って溶接するステップと、
(4)外プレートを構成する厚い方のプレートを円筒部外側に配置し且つ内プレートを構成する薄いプレートを円筒部の内側に配置して、溶接された2つのプレートで構成された組立体、又は、溶接された2つのプレートを互いに固定した幾つかの組立体を所望の円筒に形成するステップと、
(5)圧力下の流体を、周囲の溶接されていない領域から、溶接された2つのプレート間に注入して、接合部と接合部との間に熱伝達流体の循環のための空間を形成するステップと、
(6)形成された円筒形部を2つのベース部に固定して、コンテナを閉じ、熱伝達流体の圧力を、圧力下の流体の圧力に調整するための手段を取り付けステップと、を有し、ステップ(6)は、ステップ(5)の完全に又は部分的に前、又は、その後に行われる、方法であることが有利である。
【0104】
本発明による製造方法は、さらに、コンテナ及び反応器の使用に必要な任意の部品を取り付けるステップを含むのがよく、このステップは、ステップ(1)〜ステップ(6)のの完全に又は部分的に前、その後、又はその間に実行される。
【0105】
本発明によるコンテナ及び反応器の例において、上述した特徴は、本発明による製造方法の例にも適用される。
【0106】
本発明による製造方法によれば、2つのプレートは、ステップ(2)及びステップ(3)において、以下に述べる方法から選択された溶接方法によって溶接されることが有利である。ステップ(2)で用いられる溶接方法は、ステップ(3)で用いられる溶接方法と異なっていてもよいし、同じであってもよく、すなわち、レーザ溶接、抵抗溶接、電極溶接、耐熱電極を有する不活性ガスシールド溶接、消耗電極を有する不活性ガスシールド溶接、消耗電極を有する活性ガスシールド溶接、フラックス入りワイヤー溶接、サブマージアーク溶接、プラズマアーク溶接である。2つのプレートは、ステップ(2)及びステップ(3)において、レーザ溶接及び抵抗溶接から選択される同じ溶接方法によって溶接されることが好ましい。2つのプレートは、ステップ(2)及びステップ(3)において、レーザ溶接によって溶接されることが特に好ましい。
【0107】
接合部と接合部との間に熱伝達流体の循環のための空間を生成するために、ステップ(5)において用いられる圧力下の流体は、水であってもよいし、油圧オイル又は融解塩等の任意その他の液体であってもよい。圧力下の流体は、水又は油圧オイルであることが好ましい。圧力下の流体は、特に好ましくは、脱塩水又は油圧オイルである。圧力下の流体は、油圧オイル又は添加剤を含む脱塩水であることが最も特に好ましい。
【0108】
接合部と接合部との間の空間は、任意の形態(幾何学的形状)を有する。従って、空間は、垂直方向チャネル形態であってもよいし、水平方向チャネル形態であってもよいし、斜チャネル形態であってもよいし、ヘアピンチャネル形態であってもよいし、自由な形態であってもよい。本発明による方法によれば、ステップ(3)における溶接は、垂直方向チャネル又は水平方向チャネルを定めるように実行されることが好ましい。これらのチャネルの幅及び深さは、本発明によるコンテナの例において上述したものであることが好ましい。
【0109】
本発明による製造方法は、ステップ(1)からステップ(4)の後、内プレートの表面仕上げを保存することを可能にする。しかし、本発明による製造方法においては、内プレートの表面上で実行される処理ステップ(ステップT)は、圧力下の流体を注入するステップ(5)の前に実行される。
【0110】
この表面処理ステップは、化学研磨工程、機械研磨工程、電解研磨工程、又は亜鉛メッキ工程(亜鉛のメッキによるコーティング)で構成される。この表面処理ステップは、機械研磨工程又は電解研磨工程で構成されることが好ましい。
【0111】
本発明による製造方法は、さらに、先行するステップの後で、内プレートにおいて実行される後処理ステップ(ステップ(PT))を含むのがよい。特に、後処理ステップは、化学研磨工程、電解研磨工程、エナメル細工工程、又はエボナイトライニング工程である。この後処理ステップは、電解研磨により実行されることが好ましい。
【0112】
コンテナ及び反応器の使用に必要とされる機器の任意の部分の例において、上述した特徴は、本発明による製造方法の例にも適用される。
【0113】
本発明によるコンテナ及び反応器は、圧力下の流体と熱伝達流体との間の交換のための交換係数を大幅に改善することを可能にするという利点を有し、この交換係数は、最小値が約1200W/m2.℃であるが、最大2000W/m2.℃とすることができ、従来技術のコンテナの外壁に固定された二重壁ジャケットを有するコンテナは、通常は、約600W/m2.℃の交換係数により特徴付けられていた。
【0114】
圧力下の流体と接触する壁の熱抵抗を考慮すると、コンテナの外壁に固定された二重壁ジャケットをもつコンテナにおける4mmのステンレス鋼により被覆された25mmのカーボン鋼から製造された外部壁の熱抵抗は、0.00086m2℃/Wであるが、これは、本発明によるコンテナのようなコンテナにおける1.5mm厚さのステンレス鋼で製造された内壁では0.0001m2℃/Wの値になることに注目すべきである。
【0115】
二重壁ジャケットが、方向転換部において巻かれる半管状コイルである場合のように、二重壁ジャケットがコンテナの外壁の内面に固定された、従来技術のコンテナと比較すると、本発明のコンテナは、構造が単純であるという利点があり、従って、より低い製造費用により特徴付けられる。重合における使用という特定の例においては、重合サイクル時間を減少させることを可能にするという利点を有し、従って、生産性が向上する。塩化ビニルに用いられる場合、本発明のコンテナは、さらに、半管状コイルである二重壁ジャケットを有する従来技術の装置及び仏国特許FR2 746 488号明細書に概略的に示されるコンテナと比較すると、内プレートの連続性のおかげで、内プレートが外プレートに接合される領域にポリマー粒子が付着することを防ぐという利点を有する。このことは、重合反応器を清掃しなければならない頻度を減少させ、さらに、かかるプロセスの生産性をかなり増加させることを可能にする。
【0116】
本発明による反応器は、さらに、塩化ビニルを重合するのに用いられる場合、コンデンサを備えていなくても、同じサイズの従来技術の装置と比較すると、生産能力が増加されるという利点を有する。本発明によるコンテナ及び反応器を製造するための方法は、費用がかからず、単純で、自動化可能であるという利点を有する。これはさらに、高い再生産性によって特徴付けられる。
【0117】
本発明の特定の特徴及び詳細は、本発明によるコンテナ/反応器の好ましい実施形態を概略的に示す添付図面の以下の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明によるコンテナ/反応器の1つの特定の実施形態である、実質的に回転円筒形態を有するコンテナ/反応器、特に塩化ビニルを重合するための反応器の側面図である。
【図2】図1に示すコンテナ/反応器の軸X−Xにおける、即ち、円筒形部分の軸線に対して垂直な平面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0119】
これらの図において、同じ参照番号は同じ要素を示す。
【0120】
図1は、実質的に円筒形態のコンテナ/反応器1を示し、コンテナ/反応器1は、その外部に面する表面の少なくとも一部にわたって外プレート3によって境界が定められ、その内部に面する表面の少なくとも一部にわたって内プレート4によって境界が定められ、内プレート4は、接合部5によって外プレート3に接合され、接合部5と接合部5との間に、熱伝達流体の循環のための空間2を構成する。この空間2は、垂直方向チャネル形態を有し、箇所6から入って箇所7から出る熱伝達流体が循環する。
【0121】
異なる視点から見た図1及び図2は、接合部と接合部との間の熱伝達流体の循環のための空間2がコンテナ/反応器の内側に配置されていること、及び、外プレート3が内プレート4よりも厚い厚さを有するプレートであることを示す。
【0122】
これらの図は、さらに、内プレート4と外プレート3とが、ゾーン溶接(溶接シーム)による接合部5によって互いに接合され、接合部と接合部との間に熱伝達流体の循環のための空間を構成すること、内プレートが接合部と接合部との間で凸状であること、外プレートに変曲点がないこと、内プレートは接合部において外プレートに接すること、及び、内プレートが接合部と接合部との間に2つの変曲点を有することを示す。
【0123】
最後に、図1は、コンテナ/反応器が、熱伝達流体の圧力を圧力下の流体の圧力に調整するための手段8を有することを示す。
【符号の説明】
【0124】
1 コンテナ/反応器
2 空間
3 外プレート
4 内プレート
5 接合部
8 熱伝達流体の圧力を調整するための手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力下の流体を熱的に調整するためのコンテナであって、
コンテナは、その外部に面する表面の少なくとも一部分にわたって、少なくとも1枚の外プレートによって境界が定められ、その内部に面する表面の少なくとも一部分にわたって、少なくとも1枚の内プレートによって境界が定められ、
前記外プレートは前記内プレートより厚く、
前記外プレートと前記内プレートとが複数の箇所で互いに接合され、接合部と接合部との間に、熱伝達流体の循環のための空間が構成され、
熱伝達流体の圧力を圧力下の流体の圧力に調整するように構成された手段を有し、
前記コンテナは実質的に円筒形態であり、
前記熱伝達流体の循環のために接合部と接合部との間に構成された前記空間は、前記コンテナの軸線方向に延びるチャネルの形態を有し、
前記空間において且つ前記コンテナの円筒形部分の軸線に対して垂直な平面において、前記内プレートの変曲点の1つに対する接線と、前記内プレートの対応する接合部における前記外プレートに対する接線との間に作られる角度が80°より少ないか又はこれに等しい、コンテナ。
【請求項2】
前記接合部は、レーザ溶接された接合部である、請求項1に記載のコンテナ。
【請求項3】
前記内プレートは、前記接合部において前記外プレートに接する、請求項1又は2に記載のコンテナ。
【請求項4】
前記内プレートは、最大2.5mmの厚さを有する、請求項1〜3の何れか1項に記載のコンテナ。
【請求項5】
圧力下の流体の熱的調節のための請求項1〜4の何れか1項に記載のコンテナの使用。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のコンテナからなる化学反応器。
【請求項7】
請求項1〜4の何れか1項に記載のコンテナ又は請求項6に記載の化学反応器を製造する方法であって、
(1)一方が他方よりも厚い2つのプレートを向かい合わせて配置するステップと、
(2)溶接されない領域を残すように2つのプレートの周囲を溶接するステップと、
(3)ステップ(2)の後、2つのプレートを、コンテナの軸線方向に延びるチャネルを形成するように溶接するステップと、
(4)外プレートを構成する厚い方のプレートを前記円筒形部分の外側に配置し且つ内プレートを構成する薄いプレートを前記円筒形部分の内側に配置して、溶接された2つのプレートで構成された組立体、又は、溶接された2つのプレートを互いに固定した幾つかの組立体を所望の形態に形成するステップと、
(5)圧力下の流体を、周囲の溶接されていない領域から、溶接された2つのプレート間に注入して、接合部と接合部との間に熱伝達流体の循環のための空間を形成するステップと、
(6)上記のように形成された円筒形部分を2つのベースに固定し、コンテナ及び反応器を閉じ、熱伝達流体の圧力を圧力下の流体の圧力に調整するための手段を取り付けるステップと、を有し、ステップ(6)は、ステップ(5)の完全に又は部分的に前に、又は、その後に行われる、方法。
【請求項8】
前記ステップ(2)と前記ステップ(3)において、前記2つのプレートがレーザ溶接によって溶接される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
圧力下の流体を注入する前記ステップ(5)の前、前記内プレートの表面に表面処理を行うステップ(ステップT)を有する、請求項7又は8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−73020(P2012−73020A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257957(P2011−257957)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【分割の表示】特願2007−518605(P2007−518605)の分割
【原出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】