説明

コンテンツ配信制御装置、その方法、ユーザ端末及びプログラム

【課題】 ユーザによるピア同士の通信への協力によって、コンテンツ配信に関する効率的な制御を実現する。
【解決手段】 本発明は、コンテンツ配信システムのリソースの現状態の情報を収集し、基準となる閾値と共に現状態記憶手段に格納し、コンテンツ配信システムに対して、運用者が与える制約条件に基づいて、該コンテンツ配信システムの理想状態を設定し、該理想状態のパラメータを理想状態記憶手段に格納し、現状態記憶手段と理想状態記憶手段に格納された各ユーザ端末及びコンンテンツ配信システムの状況に関する情報を比較し、該コンテンツ配信システムの運用上の理想状態に近づくように、各ユーザの行動を制御するためのインセンティブを算出し、インセンティブと、対象となるコンテンツのアップロードを可能にするためのインタフェースを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツ配信システムの通信品質を向上させるためのコンテンツ配信制御装置、その方法、ユーザ端末及びプログラムに係り、特に、コンテンツ配信システムを利用するユーザに対して適切なインセンティブを配分することによって、コンテンツ配信の通信品質を効率的に向上させるためのコンテンツ配信制御装置、その方法、ユーザ端末及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超高精細映像等のリッチコンテンツがネットワークで流通するようになり、コンテンツの効率的な配信に必要となる技術が検討、開発されてきた。従来のCDN(Content Delivery Network)と呼ばれる手法では、コンテンツの複製を地理的に分散して保持し、クライアントからの要求に対しては最も近くの複製をダウンロードするよう指示する技術であり、この手法によって、コンテンツ配信源にかかる負荷を軽減することができるばかりでなく、ダウンロード先を戦略的に選択することによってダウンロードに要する時間や、無駄なトラヒックを軽減することで効率化ができるというメリットがあった。
【0003】
しかしながら一般にCDNはISP(Internet Service Provider)が運用するものではないため、ISP内でのネットワークトポロジや負荷バランスの変化に対し、より柔軟できめ細かい制御ができないという柔軟性の問題がある。例えばあるネットワークが広い地域をカバーしている場合、一般にCDN業者が設置するキャッシュサーバはすべての地域をカバーするわけではないので、配信元サーバとクライアントの距離が長い場合がある。同様にCDNの提供者は一般にISP内でのネットワークリソース状況を直接的に把握する手段をもたないため、混雑している回線や、できればなるべく利用したくない回線を経由しなければいけないケースも存在する。
【0004】
またCDNは全世界にまたがるロケーションにサーバを設置するモデルのため、メディアサイズと流通量が増大するにつれてコスト高となり、またスケーラビリティにかけるという問題がある。
【0005】
ネットワークを流通するコンテンツのサイズは年々巨大になっているため、上記であげた、柔軟性とスケーラビリティの問題がますます重要になってきている。
【0006】
上記問題を回避するため、ピア・ツー・ピア技術を用いたコンテンツ配信技術が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。すなわち、コンテンツ配信源としてユーザ端末を利用する方法である。同文献ではピア・ツー・ピア技術の弱点であった、各ピア同士の通信トラヒックがネットワークトポロジを無視した形で行われるために、不要な交流トラヒックが増大するという課題を、中央制御によって管理・制御することによって解決する手段を提供している。
【0007】
さらに柔軟できめ細かい制御が可能であり、信頼性の高いコンテンツ配信を実現するために、キャッシュサーバとユーザ端末の双方をコンテンツ配信源として利用し、両者を適切に協調させるシステムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−113460号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】H. Xie and Y. R. Yang, "`P4P: Provider Portal for Applications, "'SIGCOMM 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の従来技術は、ユーザのリソースを活用し、ユーザ端末、すなわちピア同士の通信を活用することによって効率的なコンテンツ配信を実現するものであるが、本来サービスを享受するだけのユーザが積極的にピア同士の転送に協力するとは限らないという問題があった。
【0011】
本発明は上記の課題を鑑みてなされたものであり、ユーザによるピア同士の通信への協力によって、コンテンツ配信に関する効率的な制御を実現するために、ユーザの協力を促す適切なインセンティブを配分するためのコンテンツ配信制御装置、その方法、ユーザ端末及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明は、ネットワーク上でユーザ同士のピア・ツー・ピア技術を用いたコンテンツ配信を制御するコンテンツ配信制御装置であって、
前記ネットワーク、及び該ネットワーク上に存在する各ユーザ端末及び各コンテンツ配信用オリジンサーバからなるコンテンツ配信システムのリソースの現状態の情報を収集し、基準となる閾値と共に現状態記憶手段に格納する現状態把握部と、
前記コンテンツ配信システムに対して、運用者が与える制約条件に基づいて、該コンテンツ配信システムの理想状態を設定し、該理想状態のパラメータを理想状態記憶手段に格納する理想状態設定手段と、
前記現状態記憶手段と前記理想状態記憶手段に格納された各ユーザ端末及び前記コンテンツ配信システムの状況に関する情報を比較し、該コンテンツ配信システムの運用上の理想状態に近づくように、各ユーザの行動を制御するためのインセンティブを算出するインセンティブ配分計算手段と、
ユーザ端末に対して、前記インセンティブ配分算出手段で算出されたインセンティブと、対象となるコンテンツのアップロードを可能にするためのインタフェースを提供するコンテンツ取得条件提示部と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、コンテンツ配信に関するネットワークやコンテンツ配信サーバというコンテンツ配信システムの効率的な運用に向け、ユーザによるコンテンツのダウンロードや他のユーザ向けのアップロードを適切に制御するために、前記コンテンツ配信システムを利用するユーザに対して、前記コンテンツ配信システムの運用者が意図するコンテンツのダウンロードやアップロード等の行動の制御に適応したインセンティブを算出し、配分することにより、各ユーザがインセンティブに応じた振る舞いをすることによって、前記コンテンツ配信システムの制御が可能となり、運営の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態におけるコンテンツ配信制御装置を有するシステム構成図。
【図2】本発明の一実施の形態における現状態記憶部の構成例。
【図3】本発明の一実施の形態における理想状態記憶部の構成例。
【図4】本発明の一実施の形態におけるサーバからの配信に伴うネットワーク負荷の例。
【図5】本発明の一実施の形態におけるユーザからの配信に伴うネットワーク負荷の例。
【図6】本発明の一実施の形態におけるあるユーザXに対するコンテンツ取得条件の決定例(疑似コード)。
【図7】本発明の一実施の形態におけるユーザへのコンテンツ取得条件提示の例(価格値下げのケース)。
【図8】本発明の一実施の形態におけるユーザ端末の構成図。
【図9】本発明の一実施の形態におけるユーザ端末アップロードのアクセス検証の流れを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面と共に、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態におけるコンテンツ配信制御装置を有するシステム構成図である。
【0017】
同図に示すシステムは、ネットワーク20にユーザ端末10、コンテンツ配信用オリジンサーバ(以下、「配信サーバ」と記す)30、コンテンツ配信制御装置100が接続された構成である。
【0018】
コンテンツ配信制御装置100は、現状態把握部110、現状態記憶部120、理想状態設定部130、理想状態記憶部140、インセンティブ配分算出部150、コンテンツ取得条件提示部160を有する。
【0019】
現状態把握部110では配信サーバの負荷やネットワーク、あるいはシステムの負荷といったシステム状態、あるいは各ユーザの現状態(ユーザ状態)の情報を収集し、現状態記憶部120に記録する。現状態把握部110は、現在のネットワークの状況とネットワークにおける現在のコンテンツの配置状況を正確に把握する。ここで、「ユーザの現状態」とは、ユーザ端末10が、どのコンテンツを保持し、アップロードができる状況にあるか、何本のアップロードが可能であるか、ユーザ側システムの負荷はどの程度か、回線容量はどの程度か、現在の回線使用率はどの程度か、過去から現在までにどのようなインセンティブが有効であったかといったシステムに参加するユーザに関する情報を蓄積したものであり、任意の組み合わせで利用することができる。
【0020】
図2は、本発明の一実施の形態における現状態記憶部の構成例を示す。
【0021】
同図に示す例では、現状態記憶部120は、サーバリソースの現状態を格納する領域、ネットワークリソースの現状態を格納する領域、ユーザソースの現状態を格納する領域を有する。また、現状態記憶部120には、上記の情報以外に、インセンティブ配分算出部150においてコンテンツ取得条件を算出する際に判定に用いる基準となる値を記憶する。基準となる値としては、コンテンツ取得人数の多少を判断する基準値、配信サーバの負荷の閾値、ネットワークリンクの負荷の閾値等がある。
【0022】
理想状態設定部130は、理想状態、例えば、リンク負荷が最小化された状態を実現するためには、配信サーバ30に保持されているコンテンツの種類、つまり、ユーザがアクセス要求可能なコンテンツの種類を把握し、どの種類のコンテンツをどのユーザが保持しておくべきかを求める。単純には、アクセス要求される可能性の高いコンテンツはユーザ端末10に保持させておき、アクセス要求があった際には、配信サーバ30ではなくユーザ端末10からダウンロードさせる。また、ユーザ端末10が保持できるコンテンツの数には現実的には制限があるため、近隣のユーザ端末で同じ種類のコンテンツを重複して保持するのは効率が悪い。このように、コンテンツのアクセス要求率とユーザ間の重複度を加味し、リンク負荷を最小化するようなユーザのコンテンツ保有状態が、理想状態の1つである。
【0023】
ここで、近隣のユーザ端末とは、同一サブネット内、同一ルータ内、同一ゲートウェイ内、あるいはルータ/ゲートウェイで接続された隣接するネットワーク内、ホップ数の少ないネットワーク内等がある。
【0024】
上記の「理想状態」は理想状態設定部130に入力され、理想状態記憶部140に蓄積される。
【0025】
図3は、本発明の一実施の形態における理想状態記憶部の構成例を示す。
【0026】
同図に示す理想状態記憶部140は、サーバリソースの理想状態格納する領域とネットワークリソースの理想状態格納する領域を有する。
【0027】
上記の図2,3に示した現状態記憶部120と理想状態記憶部140において、サーバリソースは、サーバ自身の負荷及び利用ネットワーク帯域に関して適当な上限値を満たしていることが理想状態となる。現状態は、実際の負荷を示す。
【0028】
同様に、ネットワークリソースは、ネットワークを構成するリンクの負荷となる。これも理想状態においては満たすべき上限値を示し、現状態は実際の利用帯域を示す。
【0029】
現状態記憶部120のユーザリソースの現状態は、ユーザ端末10からコンテンツ配信制御装置100に通信を行う際に伝達する情報を元に構成したものである。
【0030】
インセンティブ配分算出部150は、現状態記憶部120と理想状態記憶部140に格納されている現状態と理想状態を比較することによって適切なインセンティブ配分を算出し、その結果をユーザ毎にコンテンツ取得条件として提示する。インセンティブ配分算出部150は、理想状態ではユーザ端末10に保持されるべきであるが、現状態では保持されていないコンテンツを割り出す。さらに、そのコンテンツが仮にユーザ端末10に保持されたとしたときのリンク負荷に対する影響の大きさを予測し、その予測値でコンテンツを格付けする。格付けの高いコンテンツほどより大きなインセンティブが配分される。
【0031】
ここで、「インセンティブ」とは具体的には、コンテンツ取得条件で与えられる。値下げを例に挙げると、格付けの高いコンテンツほど高いインセンティブとなる有利な取得条件として、より低い価格を設定し、これを提示することで、ユーザがそのコンテンツをアクセス要求する可能性を高くする。これを複数のコンテンツに渡って行なうことで、状態を徐々に理想状態に近づけることが可能になる。
【0032】
なお、上記ではリンク負荷の最小化を一つの例としているが、今回対象としている負荷はリンク負荷およびサーバ負荷の両方であり、それぞれの負荷が最小化するのが理想状態となる。
【0033】
また、コンテンツ配信制御装置100は、図示しないが、ユーザが過去に取得し、自らの端末10に蓄積しているコンテンツについて、他のユーザ向けにアップロードを可能とするためのインタフェースを提供する機能を有する。ここで、「インタフェース」とは、後述する例にあるように、「Click here」のように、ユーザがクリックすることで、リンク先となるアドレスに移行できる機能を指す。また、指示されたユーザが他のユーザ向けにアップロードしたことを把握する機能を有する。この場合は、アップロードしたユーザ端末10からアップロードしたコンテンツ、アップロード日時、アップロード先のユーザ端末等の情報を取得して、記憶手段に格納しておくものとする。
【0034】
以下に、コンテンツ配信制御装置100の一連の動作を説明する。
【0035】
例えば、配信サーバ30の負荷が一時的に高くなり、新たな要求に対して十分なレスポンスが出来ない状況が生じたものとする。このシステム負荷の情報は現状態把握部110によって収集され、現状態記憶部120に蓄積される。
【0036】
インセンティブ配分算出部150では、この情報ならびにシステム運用者が理想状態設定部130に設定し、理想状態記憶部140に記録した理想状態とを比較する。その理想状態とは、配信サーバ30ならびにネットワークリンクの負荷をある一定以下に抑制することにより、サービスの品質を維持することであるとする。
【0037】
このとき、インセンティブ配分算出部150では、配信サーバ30ならびにネットワークリンクの負荷を下げるために、既に他のユーザが取得済みであり、他のユーザに対してアップロード可能なコンテンツに対して有利なコンテンツ取得条件を与える。すなわち、既にアップロードを実施することを自己申告しているユーザ端末10の集合が保持しているコンテンツのリストを作成し、当該コンテンツを保持しているユーザ端末10Yの近隣のユーザ端末10X(例えば同じローカルドメインに属する)に対しては、当該コンテンツの取得に必要な条件をユーザにとって有利な方向に変更し、具体的なインセンティブであるコンテンツ取得条件として提示する。
【0038】
例えば、コンテンツ取得条件は、コンテンツの対価を下げることである。このとき、特にこれまでに貢献が大きかったユーザに対して優先的に有利なコンテンツ取得条件を提示したり、現在のユーザ側リソースの負荷が低いため高い貢献が期待できると判断したユーザに対して、優先的に有利なコンテンツ取得得条件を提示したりすることができる。コンテンツ取得条件の具体的な例としては、上記のコンテンツ代金の他に、コンテンツ取得可能日、コンテンツ利用可能期間、コンテンツ品質等があり、これらの条件を任意の数及び任意に組み合わせて利用することができる。
【0039】
このときのシステムの様子を図4及び図5に示す。
【0040】
図4は配信サーバ30からのコンテンツ取得であり、当該配信サーバ30及びサーバを収容するネットワークに負荷が集中している例を示す。一方、図5はインセンティブをユーザ端末10Xに提示した結果、他の近隣ユーザ端末10Yが既に取得したコンテンツにユーザを誘導することができ、結果として配信サーバ30への負荷集中や当該配信サーバ30を収容するネットワーク負荷が軽減できる様子を示している。
【0041】
この一連の流れを擬似コードとして表現したものが図6である。
【0042】
1行目はあるユーザ端末Xに対する取得条件を計算すること、ならびに対価としての値下げ料を"alpha","beta"としたことを示す。"beta"は上記で例示した高負荷時に近隣ユーザのキャッシュから取得することによる貢献料金を示し、"alpha"は前述していないが、例えば近隣に該コンテンツを取得しているユーザが誰もいないときに、将来キャッシュとして利用できることを期待して稀少価値として付与するインセンティブである。
【0043】
2〜5行目は現状態記憶部120より収集する情報であり、それぞれユーザ端末10Xが属するローカルドメインD(例えばあるサブネットワークなど)、ユーザ端末10から配信サーバ30に至る経路上の回線負荷集合Wl、配信サーバ30の負荷Ws、ユーザ端末10Xの過去の貢献値(例えば総アップロード量など)である。
【0044】
6〜15行目はすべてのコンテンツYに対して同じ処理を実行する。
【0045】
7行目ではあるコンテンツYを保持し、かつそれをアップロード可能な端末集合を取得する。この結果、ローカルドメインD内にアップロード可能な端末がない場合についての動作を9行目で示している。すなわち、前述の希少価値があるケースであり、この場合そのコンテンツYをユーザ端末10Xのユーザに対して"alpha"だけ値下げを行う。
【0046】
近隣にアップロード可能な端末が存在する場合の動作が11〜13行目である。ここでは更なる条件として、前記の負荷WlあるいはWsのいずれかが閾値を越えており、かつユーザ端末10Xの過去貢献量Cが閾値をこえる場合に限って12行目の処理を実施する。すなわち、その該ユーザ端末10XのユーザXに対してはコンテンツYの価格を"beta"値下げする。
【0047】
このようにして得られたユーザ毎のコンテンツ取得条件は時間的に変動するものであり、例えばウェブ画面などを通じて図7のような形式でユーザXに提示される。前記の値下げを実施することを決定したコンテンツに対しては限定サービスとして、期間を限定した上で(トークン情報を付与)、値下げを実施する。特に他端末Yからのアップロードが可能なコンテンツに対しては図7における "click here"のリンク先をアップロード可能端末Yのアドレス、ポート番号、後述するトークン情報、ならびにコンテンツハッシュ値を用いることによって構成する。アップロード可能端末が複数存在する場合はランダムに選択するか、ユーザ端末の状況をみて負荷の低い端末を優先するか、あるいは複数端末から並列にダウンロードさせる方式も可能である。例えばアップロード可能な端末が2つある場合、ファイルを前半と後半に分け、それぞれを2端末からアップロードする。一般にN端末存在する場合にはファイルをN分割することで対応可能である。
【0048】
次に、ユーザ端末10について説明する。
【0049】
図8は、本発明の一実施の形態におけるユーザ端末の構成を示す。
【0050】
ユーザ端末10は、通信部11、アクセス検証・アップロード部12、ユーザ設定部13、端末・コンテンツ情報管理部14、ダウンロードコンテンツ蓄積部15から構成される。
【0051】
通信部11は、定期的、あるいは要求に応じてユーザ端末情報(アップロードの可・不可、最大アップロード可能数、システム負荷)、保有コンテンツ、アクセス検証用情報(IPアドレス、ポート番号、コンテンツの独自ハッシュ値)を配信制御装置100に通知し、ならびに配信制御装置100から時間的に変化するトークン情報を受信する。トークン情報は後述するように、アクセス制御のために用いられる。
【0052】
アクセス検証・アップロード部12は、他ユーザ端末10Xからの要求に対し、アクセス権を検証し、アクセスが許可されたら指定のコンテンツをアップロードする。アップロード機能はユーザがONとしたときのみ有効であり、ONである場合には保有するコンテンツをアップロードすることができる。ただし、アップロードの可否を制御するためにトークン情報やハッシュ値が用いられる。このようなアクセス制御により、不正なただ乗りの問題を回避することが出来る。
【0053】
ユーザ設定部13は、アップロード機能のON/OFF、ダウンロード蓄積量、最大同時ダウンロード数などをユーザが設定するためのユーザインタフェースである。
【0054】
端末・コンテンツ情報管理部14は、前記端末状態ならびに保有コンテンツを記録・管理する。
【0055】
ダウンロードコンテンツ蓄積部15は、既にダウンロード済みのコンテンツを保持する。
【0056】
図9は、本発明の一実施の形態におけるユーザ端末アップロードのアクセス検証の流れを示している。
【0057】
(1)はじめにコンテンツ配信制御装置100より、アップロード機能をONにしているユーザ端末10Yに、ある一定の期間のみ有効なトークン情報が送られると、通信部11がこれを受信する。
【0058】
(2)ユーザ端末10Yは、端末・コンテンツ情報管理部14を参照して、通信部11を介して自身の情報(IPアドレス、ポート番号、ハッシュ値を送信)をコンテンツ配信制御装置100に通知する。
【0059】
(3)コンテンツ配信制御装置100は、別のユーザ端末10Xに対して提示するコンテンツ取得条件において、該コンテンツの取得先をURLとして、または、図7に示すように、当該URLを"Click here"に対応付けて提示する。このURLを、以下の形式で提示する。
【0060】
http://X.X.X.X:YYYY/token/hash
ここで、"X.X.X.X."は、アップロード可能なユーザ端末10YのIPアドレス、"YYY"は同ユーザ端末10Yのポート番号、"token"はトークン値、"hash"はあるコンテンツに対するハッシュ値である。図9の例では、
http://192.168.10.144:31410/c595458/eb16a1b
となる。
【0061】
(4)他ユーザ端末10Xのユーザがこのリンク(例えば、"Click here")をクリックすることにより、ユーザ端末10Xはユーザ端末10Yにファイルのダウンロードを要求する。
【0062】
(5)この時、ユーザ端末10Yのアクセス検証・アップロード部12は、コンテンツ配信制御装置100からHTTPリファラー(どのURLからリンクされていたかの情報)、ならびにポート番号、コンテンツハッシュ値、トークン情報を受信する。
【0063】
(6)ユーザ端末10Yのアクセス検証・アップロード部12は、これらのすべてが問題ないと判定されたらアクセスを許可し、ダウンロードコンテンツ蓄積部15からコンテンツを読み出して、他ユーザ端末10Xにアップロードを行う。
【0064】
なおIPアドレス、ポート番号が合わなければそもそも通信は成立しない。トークン情報はアップロード開始が有効であるのが一定の期間であることを示すものであり、一旦アップロードが始まった後は時間に関係なくその通信は有効である。アップロード開始が有効であることを一定期間に収めることにより、現状態に変化が起こった場合に対応することが可能となる。
【0065】
上記の実施の形態におけるコンテンツ配信制御装置及びユーザ端末の各構成要件の動作をプログラムとして構築し、コンテンツ配信制御装置及びユーザ端末として利用されるコンピュータにインストールして実行させる、または、ネットワークを介して流通させることが可能である。
【0066】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 ユーザ端末
11 通信部
12 アクセス検証・アップロード部
13 ユーザ設定部
14 端末・コンテンツ情報管理部
15 ダウンロードコンテンツ蓄積部
30 コンテンツ配信用オリジンサーバ
100 コンテンツ配信制御装置
110 現状態把握部
120 現状態記憶部
130 理想状態設定部
140 理想状態記憶部
150 インセンティブ配分算出部
160 コンテンツ取得条件提示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク上でユーザ同士のピア・ツー・ピア技術を用いたコンテンツ配信を制御するコンテンツ配信制御装置であって、
前記ネットワーク、及び該ネットワーク上に存在する各ユーザ端末及び各コンテンツ配信用オリジンサーバからなるコンテンツ配信システムのリソースの現状態の情報を収集し、基準となる閾値と共に現状態記憶手段に格納する現状態把握部と、
前記コンテンツ配信システムに対して、運用者が与える制約条件に基づいて、該コンテンツ配信システムの理想状態を設定し、該理想状態のパラメータを理想状態記憶手段に格納する理想状態設定手段と、
前記現状態記憶手段と前記理想状態記憶手段に格納された各ユーザ端末及び前記コンテンツ配信システムの状況に関する情報を比較し、該コンテンツ配信システムの運用上の理想状態に近づくように、各ユーザの行動を制御するためのインセンティブを算出するインセンティブ配分計算手段と、
ユーザ端末に対して、前記インセンティブ配分算出手段で算出されたインセンティブと、対象となるコンテンツのアップロードを可能にするためのインタフェースを提供するコンテンツ取得条件提示部と、
を有することを特徴とするコンテンツ配信制御装置。
【請求項2】
前記インセンティブ配分計算手段は、
前記現状態記憶手段から取得した前記コンテンツ配信システムの現状態に基づいて、ユーザにダウンロードさせることが望ましいコンテンツに優先順位を付与し、前記インセンティブとして、ユーザがダウンロードするコンテンツに対して、任意の数、任意の組み合わせのコンテンツ取得条件を与える手段を含む
請求項1記載のコンテンツ配信制御装置。
【請求項3】
前記現状態把握部は、
前記コンテンツ配信システムの現状態として、当該コンテンツ配信制御装置が管理する全ユーザ端末のコンテンツ分布状況情報を収集し、前記現状態記憶手段に格納する手段を含み、
前記インセンティブ配分計算手段は、
前記現状態記憶手段に格納されている前記コンテンツ分布状況情報を参照して、あるユーザによって、近隣のユーザが所持していない、あるいは、所持している人数が全ユーザの中で少ないコンテンツに対して、より高いインセンティブとなるコンテンツ取得条件を与える手段を含む
請求項1または2記載のコンテンツ配信制御装置。
【請求項4】
前記インセンティブ配分計算手段は、
前記現状態記憶手段から、前記コンテンツ配信システムの現状態として、前記コンテンツ配信用オリジンサーバの負荷状態情報を取得し、該負荷状態情報が該現状態記憶手段に予め設定されている閾値より高い場合は、あるユーザ端末に対し、当該ユーザに対するアップロードが可能な、当該ユーザ端末の近隣のユーザ端末が保持しているコンテンツに対してより高いインセンティブとなるコンテンツ取得条件を与える手段を含む
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンテンツ配信制御装置。
【請求項5】
前記インセンティブ配分計算手段は、
前記現状態記憶手段から、前記コンテンツ配信システムの現状態として、ネットワークリンク負荷情報を取得し、該ネットワークリンク負荷情報が該現状態記憶手段に予め設定されている閾値より高い場合は、当該ネットワークリンクを利用するユーザ端末のみを対象として、当該ユーザに対するアップロードが可能な、当該ユーザの近隣のユーザ端末が保持しているコンテンツに対してより高いインセンティブとなるコンテンツ取得条件を与える手段を含む
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコンテンツ配信制御装置。
【請求項6】
ネットワーク上でユーザ同士のピア・ツー・ピア技術を用いたコンテンツ配信を制御するコンテンツ配信制御装置とネットワークを介して接続されるユーザ端末であって、
既にダウンロード済みのコンテンツを蓄積するコンテンツ記憶手段と、
当該ユーザ端末のリソース状態、保有コンテンツ、アクセス検証用情報を含むユーザ端末の現状態に関する情報を前記コンテンツ配信制御装置に送信する現状態送信手段と、
他のユーザ端末からのダウンロード要求に対して、アクセス認証を行う認証手段と、
前記ダウンロード要求に対して認証された場合に、前記コンテンツ記憶手段に格納されているコンテンツのアップロードを行うアップロード手段と、
を有することを特徴とするユーザ端末。
【請求項7】
ネットワーク上でユーザ同士のピア・ツー・ピア技術を用いたコンテンツ配信を制御するコンテンツ配信制御方法であって、
コンテンツ配信制御装置が、前記ネットワーク、及び該ネットワーク上に存在する各ユーザ端末及び各コンテンツ配信用オリジンサーバからなるコンテンツ配信システムのリソースの現状態の情報を収集し、基準となる閾値と共に現状態記憶手段に格納する現状態把握ステップと、
コンテンツ配信制御装置が、前記コンテンツ配信システムに対して、運用者が与える制約条件に基づいて、該コンテンツ配信システムの理想状態を設定し、該理想状態のパラメータを理想状態記憶手段に格納する理想状態設定ステップと、
コンテンツ配信制御装置が、前記現状態記憶手段と前記理想状態記憶手段に格納された各ユーザ端末及び前記コンンテンツ配信システムの状況に関する情報を比較し、該コンテンツ配信システムの運用上の理想状態に近づくように、各ユーザの行動を制御するためのインセンティブを算出するインセンティブ配分計算ステップと、
コンテンツ配信制御装置が、ユーザ端末に対して、前記インセンティブ配分計算ステップで算出されたインセンティブと、他のユーザ向けにアップロードする際に用いるインタフェースを提供するインセンティブ提供ステップと、
前記ユーザ端末が、前記コンテンツ配信制御装置から前記インセンティブ、トークン情報、前記インタフェースを取得する受信ステップと、
他のユーザ端末からのダウンロード要求に対して、アクセス認証を行う認証ステップと、
前記ダウンロード要求に対して認証された場合に、前記コンテンツ記憶手段に格納されているコンテンツのアップロードを行うアップロードステップと、
を行うことを特徴とするコンテンツ配信制御方法。
【請求項8】
前記インセンティブ配分計算ステップにおいて、
前記現状態記憶手段から取得した前記コンテンツ配信システムの現状態に基づいて、ユーザにダウンロードさせることが望ましいコンテンツに優先順位を付与し、前記インセンティブとして、ユーザがダウンロードするコンテンツに対して、任意の数、任意の組み合わせのコンテンツ取得条件を与える
請求項7記載のコンテンツ配信制御方法。
【請求項9】
前記現状態把握ステップにおいて、
前記コンテンツ配信システムの現状態として、当該コンテンツ配信制御装置が管理する全ユーザ端末のコンテンツ分布状況情報、前記コンテンツ配信用オリジンサーバの負荷状態情報、ネットワークリンク負荷情報を収集し、基準となる閾値と共に前記現状態記憶手段に格納し、
前記インセンティブ配分計算ステップにおいて、
前記現状態記憶手段から、前記コンテンツ配信システムの現状態として、前記コンテンツ分布状況情報を取得して、あるユーザによって、近隣のユーザが所持していない、あるいは、所持している人数が全ユーザの中で少ないコンテンツに対して、より高いインセンティブとなるコンテンツ取得条件を与えるステップ、
または、
前記現状態記憶手段から、前記コンテンツ配信システムの現状態として、前記コンテンツ配信用オリジンサーバの負荷状態情報を取得し、該負荷状態情報が該現状態記憶手段に予め設定されている閾値より高い場合は、あるユーザ端末に対し、当該ユーザに対するアップロードが可能な、当該ユーザ端末の近隣のユーザ端末が保持しているコンテンツに対してより高いインセンティブとなるコンテンツ取得条件を与えるステップ、
または、
前記現状態記憶手段から、前記コンテンツ配信システムの現状態として、前記ネットワークリンク負荷情報を取得し、該ネットワークリンク負荷情報が前記現状態記憶手段に予め設定されている閾値より高い場合は、当該ネットワークリンクを利用するユーザ端末のみを対象として、当該ユーザに対するアップロードが可能な、当該ユーザの近隣のユーザ端末が保持しているコンテンツに対してより高いインセンティブとなるコンテンツ取得条件を与えるステップ、
のいずれかを行う
請求項8に記載のコンテンツ配信制御方法。
【請求項10】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコンテンツ配信制御装置を構成する各手段としてコンピュータを機能させるためのコンテンツ配信制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−175395(P2012−175395A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35207(P2011−35207)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】