説明

コンディショニングディスクの摩擦係数を測定する装置および方法

【課題】コンディショニングディスクの摩擦係数を容易かつ正確に測定する装置と方法を提供する。
【解決手段】この装置は、重量のある剛性材料からなるベース手段(36)と、前記ベース手段(36)上に設けられたディスク摩擦手段(39)と、前記ディスク摩擦手段(39)のディスク摩擦面に沿って前記コンディショニングディスク(52)を移動する移動手段(48)と、前記移動手段に対してコンディショニングディスク(52)を固定する固定手段(50)と、前記ディスク摩擦面に沿って前記コンディショニングディスク(52)を移動する前記移動手段(48)を駆動する駆動手段(41)と、前記移動するコンディショニングディスク(52)によって前記ディスク摩擦面に加えられる摩擦力を測定する測定手段(28)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンディショニングディスクの摩擦係数を測定する装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンディショニングディスクは、半導体ウェーハ等をポリウレタン研磨パッドで研磨するCMP工程(化学機械研磨工程)で使用されており、ポリウレタン研磨パッドの粗さを維持する機能を果たす。これらのコンディショニングディスクは、信頼性のある品質および有効性の基準に従って、いくつかの供給業者によって製造および販売されている。一般に、コンディショニングディスクの性能は、とりわけディスクの表面にあるダイヤモンド等の砥粒の総数、および、ある特定期間の使用後、または環境試験後に残る砥粒の数に基づいて評価される。砥粒の数は、CMP工程中にポリウレタンCMPパッドの表面を研磨する際の、コンディショニングディスクの有効性に関係する。この有効性を決定する別の方法としては、コンディショニングディスクの摩擦係数を測定する方法がある。摩擦係数を測定する方法では、有効な砥粒の数を調べるだけでなく、砥粒の分布、寸法、粗さ、およびコンディショニングディスクによってポリウレタンパッドを削る際のその他の要因を考慮に入れる。
【0003】
本出願人は、コンディショニングディスクにおける活性砥粒数の測定方法について、特許出願(特許文献1:特開2008−80480号公報(2008年4月10日公開))を行っている。しかし、今日まで、コンディショニングディスクの摩擦係数を高い再現性をもって決定する方法は開示されていない。
【0004】
これまで、コンディショニングディスクの摩擦係数を知りたいと望む当業者は、ある条件の下であれば、従来技術で利用可能な方法によって決定することができた。2003年公開の「Abrasive Technology TECHVIEW」に掲載された論文「Optimizing Diamond Conditioning Disks for the Tungsten CMP Process」(非特許文献1)(http://www.abrasive-tech.com/pdf/tcmptungsten.pdf)では、Mark Bubnick博士およびSohail Qamar氏により、Rodel社製「IC 1000パッド」(商品名)を使用したAbrasive Technology社の「カットレートテスタ」(商品名)を使用して、脱イオン水の存在下でコンディショニングディスクの摩擦係数を測定する方法が開示されている。しかし、この方法は、複雑な設定、および高価な材料を必要とするものであり、短時間で、または単一の向きに関してディスクの係数を決定することは困難だった。
【0005】
コンディショニングディスクの使用者は、工程の品質管理を行う観点から、コンディショニングディスクの製造者から同じ質の製品を受け取っているか否かを知る必要がある。そのような検査では、使用者が必要としているコンディショニングディスクに関する仕様を、使用者がより正確に決定できなければならない。使用者は、自身のディスクが一定の動作条件の下でいかにうまく動作しているか知りたいとも思う可能性があり、コンディショニングディスクの摩擦係数を決定する正確な方法は、その際にも使用者に有用な情報をもたらす。最後に、研究開発の観点から、そのような試験の結果は、コンディショニングディスクの製造業者に、現行のコンディショニングディスクの製造工程をどのように改善するかについてより有用な情報、または新しいCMPおよび関連する工程の開発でのより有用な情報をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−80480号公報(2008年4月10日公開)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】2003年公開の「Abrasive Technology TECHVIEW」に掲載された論文「Optimizing Diamond Conditioning Disks for the Tungsten CMP Process」(非特許文献1)(http://www.abrasive-tech.com/pdf/tcmptungsten.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、コンディショニングディスクの摩擦係数を正確かつ容易に測定することを目的とする。本発明のその他の利点は、以下の説明から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の装置は、ベース手段と、前記ベース手段上に設けられたディスク摩擦手段とを備え、ベース手段とディスク摩擦手段の両方が摩擦係数の測定のために前記コンディショニングディスクの水平移動を可能にするのに十分な長さを有し、装置はさらに、前記ディスク摩擦面に沿って前記コンディショニングディスクを移動する移動手段と、前記ディスク摩擦面に沿って前記コンディショニングディスクを移動する前記移動手段に対してコンディショニングディスクを固定する固定手段と、前記ディスク摩擦面に沿って前記コンディショニングディスクを移動する前記移動手段を駆動する駆動手段と、前記移動するコンディショニングディスクによって前記ディスク摩擦面に加えられる摩擦力を測定する測定手段とを備える。本発明の装置はさらに、コンディショニングディスクの移動速度を測定する測定手段を有していてもよい。
【0010】
また、本発明のコンディショニングディスクの摩擦係数の測定方法は、前記摩擦係数測定装置を用いる方法であって、前記移動手段により前記ディスク摩擦手段のディスク摩擦面に沿って前記コンディショニングディスクを移動する工程と、前記移動するコンディショニングディスクによって前記ディスク摩擦面に加えられる摩擦力を測定する工程とを有する。コンディショニングディスクの移動速度を、速度測定手段を使用して測定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のコンディショニングディスクの摩擦係数測定装置の正面図である。
【図2】本発明のコンディショニングディスクの摩擦係数測定装置の平面図である。
【図3】本発明のコンディショニングディスクの摩擦係数測定装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、以下の説明で用いる「前方」は、摩擦係数の測定中にコンディショニングディスクを移動させる方向を指し、「後方」は、それとは逆の方向を指す。コンディショニングディスクは一般に円盤状をなし、下面の全面に砥粒層を有し、この砥粒層の表面には多数の微細なダイヤモンド等の砥粒が分散されている。この砥粒層によってポリウレタン等からなるCMPパッドの表面を研削し、CMPパッドの表面に適度な粗面を形成してCMP工程の効率を高める効果を奏する。
【0013】
本発明の発明者は、未使用の状態または一定期間使用後のコンディショニングディスクの摩擦係数を容易かつ低コストで、高い信頼性をもって測定するために、この問題を体系的かつ長期間にわたって研究し、その結果、本発明を完成させた。
【0014】
図1〜図3は本発明の一実施形態を示している。この装置は、水平に配置された剛性を有する直方体状のベース手段36(スラブ)と、前記ベース手段36の上面全面に固定された一定厚さのシート状をなすディスク摩擦手段39とを備えている。前記ベース手段36と前記ディスク摩擦手段39の水平方向の長さは、いずれも摩擦係数の測定のために前記コンディショニングディスク52の水平移動を十分に可能にする長さを有している。装置はさらに、前記ディスク摩擦手段39のディスク摩擦面(上面)に沿ってコンディショニングディスク52を水平に移動する移動手段48と、移動の際に移動手段48に対してコンディショニングディスク52を固定する固定手段50と、前記移動手段48を駆動する駆動手段41と、前記移動するコンディショニングディスク52によって前記ディスク摩擦面に加えられる摩擦力を測定する測定手段28とを備えている。必須ではないが、この装置はさらに、コンディショニングディスク52の移動速度を測定する測定手段を有していても良い。
【0015】
本実施形態のコンディショニングディスクの摩擦係数の測定方法は、前記摩擦係数測定装置を用いた方法であって、前記移動手段48により前記ディスク摩擦面の長手方向に沿って、砥粒面を下向きにした前記コンディショニングディスク52を移動する工程と、前記移動するコンディショニングディスク52によって前記ディスク摩擦面に加えられる摩擦力を測定手段28で測定する工程とを有する。この方法によれば、CMP研磨で使用するコンディショニングディスクの摩擦係数を、コンディショニングディスクを様々な移動速度で移動しつつ、また、コンディショニングディスクに対し様々な垂直荷重を加えつつ、測定することができる。コンディショニングディスクの移動速度を測定し、データとして活用しても良い。
【0016】
この装置および方法によれば、CMPパッドの表面を粗くするために使用されるコンディショニングディスクの摩擦係数を、より効果的に測定できる。コンディショニングディスクの砥粒層は、基質となる結合相と、この結合相に分散された多数の微細なダイヤモンド等の砥粒からなり、砥粒層の摩擦係数は、前記結合相の固有の摩擦特性に加えて、個々のダイヤモンドの挙動から生じる摩擦特性からも影響を受ける。すなわち摩擦係数は結合相と砥粒のいずれか1方の要素によって決まるものではなく、互いに相互作用する2つの要素の複合系であるので、コンディショニングディスクの摩擦係数を決定するためには、摩擦相手となるディスク摩擦手段39の硬さが、CMPパッドに使用される材料(一般にはポリウレタン)と同様であることが重要である。この観点からは、ディスク摩擦手段39は、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、フッ素樹脂、プリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、酢酸セルロース、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂;およびポリウレタン、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂から選択される1種または複数種が使用できる。複数種の場合は混合物であっても異種の材質の積層体であってもよい。ディスク摩擦手段39のより好ましい材質は、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、及びアクリル樹脂から選択される1種または複数種である。さらに好ましくは、ポリカーボネートまたはポリウレタンであり、特に、平滑度の非常に高いポリカーボネートシートは、低コストで容易に入手可能であることから好ましい。ただし、本発明はそれに限定されることはない。
【0017】
実際の摩擦係数は、摩擦し合う2つの表面、すなわちコンディショニングディスクの砥粒層の表面、およびそれが接触するディスク摩擦手段39の表面の微視的特性から影響を受ける。しかし、コンディショニングディスクの性能評価においては、特に砥粒層の表面から突出した砥粒の効果が最も重要なものである。ディスク摩擦手段39として、ポリカーボネートまたはポリウレタン、あるいはその他の適切な材料の同じシートを常に一貫して使用することにより、得られる摩擦係数データの変化を比較することができる。これにより、初期状態でディスクに設置されたダイヤモンドの数、配置、または質の違いから起因する性能比較も可能であるし、より間接的には、ディスクの使用前後における砥粒磨耗による性能変化も検出することが可能となる。さらに、同じディスクをその軸線回りに一定角度が回転して測定したときにおける、摩擦係数の微妙な変化も捉えることができる。
【0018】
摩擦係数は、2つの物体の接触面に働く摩擦力を、2面を垂直に押しつける荷重で割ったものに等しい。測定時のコンディショニングディスクの移動速度および測定温度は、摩擦係数に影響を与えるため、異なるディスク間、または異なる時間での同じディスク間で比較可能な摩擦係数データが得られるように、一定に固定されなければならない。コンディショニングディスクの砥粒層面積は、同じ面積を有するディスクとの比較時には影響がないはずであるが、異なる大きさのディスクの摩擦係数を比較するときには、影響を及ぼす。この装置および方法によれば、砥粒層の状態以外の条件の大部分を固定することができ、ディスクの前方移動に抵抗する砥粒の力の関数として、摩擦力の値を得ることができる。すなわち、ディスク上の荷重が既知であり、表面積、ディスク速度、および温度などのその他の要因の影響を一定に維持することが容易であるため、CMP工程への使用前後の同一、または他のディスク同士の砥粒の影響を容易にかつ正確に、しかも高い再現性をもって比較することが可能である。
【0019】
コンディショニングディスクの製造業者および使用者は、コンディショニングディスクがどの程度粗いか、およびその延長上でそれがCMPパッドをどのように粗くすることが可能かを知る必要がある。製造業者および使用者は、ディスク間にどれだけ多くの変動があるか知る必要もある。単一のディスクがどの方向に向けてCMPパッドを横切って移動した場合にも、研削特性において一貫性があるかどうか知ることも望ましい。CMP工程中のディスクの回転により方向性の影響は最低限に抑えられるが、方向性はコンディショニングディスクの特性である。さらに、一般的に、または特定の条件の下での使用によって、どのくらい急速にコンディショニングディスクの切れ味が変化するかを定量的に知ることが好ましい。
【0020】
本発明のコンディショニングディスクの摩擦係数測定装置および方法は、多数のコンディショニングディスクに対して次々と、あるいは同一または複数のディスクについて短時間に複数回繰り返して測定を行うことができ、摩擦力またはせん断力を、ディスクをディスク摩擦面に垂直に押し当てる力で割る単純な計算によってディスクの摩擦係数を決定することができる。こうして、CMPパッドを研削する能力を直接的に評価できる摩擦係数を、迅速かつ容易に測定することによって、従来技術の限界を克服する。本発明の構造によれば、測定時の温度、コンディショニングディスクの移動速度、コンディショニングディスクに接触する表面の平坦度および材料の一貫性、荷重などの様々な要因の制御を非常に容易にする。この装置は、本質的に平坦で非常に安定した表面を有するベース手段と、その上に配置される、CMPパッドに使用されるポリウレタンの硬度特性と同じまたは近似の硬度特性を有する材料のシートと、このシートの表面に沿ってコンディショニングディスクを移動する移動手段と、およびコンディショニングディスクが移動する際にベース手段に加えられる摩擦力を測定する何らかの測定手段が置かれる。ディスクをシートに対して押しつける下向きの力は、コンディショニングディスクの質量に任意の荷重を加えた質量から計算によって知ることができる。摩擦力が得られたら、摩擦力を下向きの力で割ることにより、コンディショニングディスクの摩擦係数を算出することができる。
【0021】
以下の本発明の部品に関する全ての寸法は、直径が7.6cm(3インチ)のコンディショニングディスクを基準としたものであり、使用されるサンプルの大きさに合わせて、適宜寸法を変更することが可能である。本明細書に記載されている特定の寸法は、決して本発明を限定するものではなく、例として本発明の効果的な実施形態を説明するためのものである。
【0022】
ベース手段36としては、容易に損傷せず、精密で平坦な仕上げ研磨が容易にでき、温度の変化によって形や寸法を変えることが少なく、作動中に振動を発生または伝達することが少ない、安定性に優れ、歪みのない材質が好ましく、そうした状態を維持しやすい中実のスラブを使用することが好ましい。ベース手段36としては、特に、中実の重量のある石材、セラミック、金属、またはプラスチックの複合材料が好ましく、研磨された石のブロックがさらに好ましい。研磨されたブロック状の石材を使用する場合、石の種類は特に限定されない。研磨された表面を維持できる高い密度と構造的な一貫性を有する任意の石材を使用できるが、花崗岩、斑レイ岩、ペグマタイト、閃緑岩、玄武岩等が好ましく、花崗岩が特に好ましい。ベース手段36の寸法は、コンディショニングディスク52の砥粒面よりも十分に広い任意の幅を有することが必要であり、幅は少なくとも10.2cm(4インチ)であることが好ましい。ベース手段36の長さは特に限定されないが、摩擦力測定手段によって摩擦力の読み取り値を得るために、コンディショニングディスクが十分に長手方向に移動できるようにするのに十分な長さを有する必要がある。少なくとも45.7cm(18インチ)の長さが好ましい。ベース手段36の厚さは特に限定されないが、十分な剛性を確保するために厚さが約12.7mm(0.5インチ)以上であることが好ましい。しかし、ベース手段36の寸法が大きすぎる場合、摩擦力測定手段28で摩擦力を測定する際のベース手段36の動作が妨げられるほど、質量が大きくては不具合がある。したがって、原則的に、ベース手段36の寸法および質量は、操作のための安定した円滑な表面を提供し、コンディショニングディスク52の移動距離が使用者に望ましい範囲において、必要以上に大きくてはならない。
【0023】
ベース手段36上に設けられるディスク摩擦手段39としては、コンディショニングディスク52の砥粒面によって均一に擦ることができるように、極めて円滑な平坦面を有する任意の硬い材料を使用することができる。CMPパッドに使用される材料(一般にはポリウレタン)と同じまたは同様の硬さを有する硬い材料が好ましい。特に、本質的に非常に平坦な円滑面を有し、家庭用金物マーケットなどからも容易に購入できるポリカーボネートシートがより好ましい。ディスク摩擦手段39は、ベース手段36の上面の全面またはほぼ全面に密着して取り付けられ、取付手段は限定されないが、ディスク摩擦手段39の少なくとも四隅をベース手段36に押しつけて着脱可能に固定する各種クランプが好ましい。
【0024】
ディスク摩擦手段39のディスク摩擦面に沿ってコンディショニングディスク52を移動する移動手段48としては、摩擦力に打ち勝ってディスク52を一定の速さで、脈動することなく、移動可能であればいかなる移動手段も使用可能である。移動手段48として例えば、ねじ送り機構(スクリューフィーダ)、鎖、液体またはその他の流体、あるいは電磁機構を備えるモータ等によって駆動される機構が使用できる。低速で高トルクを容易に実現できる機構としては、コンディショニングディスク52を固定する固定手段50が取り付けられたねじ山付きブロック48を、軸線回りに回転する長いスクリュー41で移動させるスクリューフィーダが好ましい。
【0025】
スクリュー41は、モータにより駆動されていてもよい。コンディショニングディスク52がディスク摩擦手段39に与えた摩擦力は、ベース手段36と基台との間に設けられた荷重計(ロードセル)で測定してもよい。
【0026】
移動手段48に対してコンディショニングディスク52を固定する固定手段50としては、移動手段48が前方へ移動する際に、コンディショニングディスク52を剛性的に支持し、コンディショニングディスク52を追従して移動させることができ、かつ、その間にコンディショニングディスク52の回転は阻止できる、如何なる手段も使用できる。例えば、固定手段は、移動手段48に固定されたホルダ50であり、ホルダ50のディスク移動方向の前方側には、平面視して凹形をなす凹部が形成されていてもよい。この凹部は、ディスク研磨面上に砥粒面を下向きにして配置されたコンディショニングディスク52の外周の少なくとも一部を収容する形状を有し、移動手段48がディスク移動方向の前方側に移動する際に凹部はコンディショニングディスク52を保持する。さらに、保持状態においてコンディショニングディスク52上に載置可能な複数種の錘54を備えていることが好ましい。
【0027】
ホルダ50は、プラスチック、セラミック、金属、またはその他の硬い材料から作製された平面視して凹形をなす構造体であり、その凹面はいずれもディスク研磨面に垂直であることが好ましい。垂直面であれば、コンディショニングディスク52に対して水平方向の力のみを発生させ、鉛直方向の力を発生させずに済むからである。ホルダ50の寸法は、コンディショニングディスク52を保持するために適切な任意の寸法であればよく、例えば、凹部の幅は7.6cm(3インチ)であってもよい。ホルダ50の高さは、ある程度の荷重を有する錘54をコンディショニングディスク52の上に載せた際に、コンディショニングディスク52と錘54を同時に押すことができるように、任意の適切な寸法が選択されるが、例えば、約38.1mm(1.5インチ)の高さが好ましい。
【0028】
移動手段48を駆動する駆動手段41として、この実施形態では、図示しないケーブルによってコントローラに接続され、スクリュー41の端部にケーブル取付具46を介して連結されたステッパモータ(図示略)が好ましい。コントローラにより、ステッパモータの回転数は一定の範囲内で正確に制御できる。
【0029】
この実施形態では、コンディショニングディスク52の移動速度を測定する測定手段が設けられている。測定手段は限定されないが、移動方向に沿って複数配置された点の間をコンディショニングディスク52が移動するために必要な時間を記録するセンサもしくはタイマを含む任意の手段が使用でき、例えば、モータまたはねじの回転数に基づいて連続的にディスクの速度を計算および記録するソフトウェアプログラムが好ましい。
【0030】
摩擦力を測定する測定手段28としては、従来から知られている如何なる妥当な測定手段も使用できる。しかし、図1〜図3に示すように、ベース手段36を支持する上プレート10を設け、この上プレート10をランナー18(またはレール、車輪、またはガイド)によって下プレート12に対して平行かつ滑らかにベース手段36の長手方向へ移動可能に支持し、これら上プレート10と下プレート12との間に両者間にかかる水平方向の荷重を測定するための荷重センサ(ロードセル)28を取り付け、この荷重センサ28によって、コンディショニングディスク52の移動につれてディスク摩擦手段39のディスク摩擦面に働く摩擦力を測定する構成とすることが好ましい。上プレート10および下プレート12は、限定はされないが、45.36kg(100ポンド)より軽く、その形状が容易に歪まない剛性および耐久性のある材料から作製でき、例えば、鋼板が好ましい。
【0031】
2つのプレート10、12の間に荷重センサ28を取り付ける構造としては、従来から知られている任意の構造を使用できるが、上プレート10の一端22に図3に示すように下向きの突起24を形成する一方、下プレート12の対応する一端には上向きの突起22を形成し、突起22側に荷重センサ28をボルト30等で取り付け、その感知部34を突起24にボルト等で結合させてもよい。この実施形態では、2本の平行な滑らかな棒状のランナ18が、下プレート12に固定された各一対の受台14の間に、それぞれ水平かつ前後方向へ向けて固定されている。各ランナ18には、一対のランナホルダ16が滑らかに移動可能に通されており、これら計4つのランナホルダ16が上プレート10の下面に固定されている。これにより、上プレート10はランナ18に沿って殆ど抵抗なく滑らかに水平かつ前後方向へ移動可能とされている。上プレート10の下プレート12に対する移動可能距離は、荷重センサ28により摩擦力を計測できる程度の距離であればよい。さらに、図3に示すように、上プレート10と下プレート12の対向面には、それぞれ前後方向に伸びる角棒状のガイド突条25が形成され、両者が滑らかな側面を係合しあうことにより、上プレート10と下プレート12の左右方向への移動を阻止する構成となっていてもよい。ランナホルダ16およびランナ18の摺動面は、摩擦抵抗の小さい耐摩擦材料によって処理または被覆されていることが好ましい。受台14とランナ18との間が摺動する構成としてもよい。
【0032】
荷重センサ28は任意の適切な手段によって突起22へ取り付けることができるが、この実施形態では、2つの12.7mm(0.5インチ)のボルト30によって固定されている。
【0033】
この実施形態の装置によって摩擦係数を測定するには、まず、周囲の温度および湿度を測定した後に、固定手段50の凹部にコンディショニングディスク52の外周を沿わせ、コンディショニングディスク52をディスク摩擦面上に砥粒層を下向きにして配置する。コンディショニングディスク52の上には、0kg〜4.983kg(11ポンド)の間の既知の質量の錘54を載せる。コントローラによりステッパモータを定速回転させ、予め決めておいた1秒当たり所定のインチ数の速度で、ディスク摩擦面の長手方向にコンディショニングディスク52を移動し、荷重センサ28により摩擦力を測定する。摩擦力はコンピューターにより一定タイミングで継続的に記録し、平均値を求めてもよい。摩擦係数は、荷重センサ28により測定された摩擦力を、コンディショニングディスク52の質量および錘54の質量の合計値で割った値として得られる。一回の測定が完了したら、コンディショニングディスク52を一定角度軸線回りに回転させたうえ(例えば90度)、再度測定を繰り返し、ディスクが1回転するまでに得られた複数回の結果を平均してもよいし、あるいは各回の測定結果を比較し、砥粒層の研削効果の方向性を評価してもよい。回転角度は、例えば30、45、60、90、120゜などがよい。
【0034】
ディスク摩擦手段39は、条件を揃えるため1回測定するたびに新品と交換することが望ましい。同一のディスク52に対して使用期間の異なる複数の時期に繰返し摩擦係数測定を行うことにより、コンディショニングディスクの性能の経時変化を測定することもできるし、または製造業者から入手した多数の同じコンディショニングディスクを測定してばらつきを評価することも可能である。ディスク移動速度と、摩擦力に関するセンサデータが出力されるので、それらデータからソフトウェアを利用して摩擦係数を計算することができる。データは、ケーブル、無線アンテナ、または任意の適切な手段によって荷重センサ28からコンピューターまたは計算手段まで伝達できる。
【実施例1】
【0035】
以下の構成で、図1〜図3に示す測定装置を組み立てた。45.7cm(18インチ)×76.2cm(30インチ)の寸法を有する厚さ6.35mm(1/4インチ)の2つの鋼板により上方プレート10および下方プレート12を作製した。下方プレート12は中実のテーブル44の表面にボルト留めされている。4つの受台14が下方プレート12の上面にボルト留めされている。4つのランナホルダ16が上方プレート10の底部に一対の線に沿って取り付けられ、2つのランナ18がランナホルダ16の間に固定されている。ランナ18は、前後方向に少なくとも短い距離を自由に摺動できるように、受台14に支持されている。上方に突出する取付具(突起)22が下方プレート12の前縁に取り付けられ、下方に突出する取付具(突起)24が上方プレート10の前縁に、両者の先端が近接するように取り付けられる。荷重センサ28が2つの12.7mm(0.5インチ)のボルト30によって取付具22に取り付けられ、荷重計のセンサ端子32が取付具24に接触するように配置されている。装置が使用されていない場合に移動することで荷重計28を損傷しないように、取り外し可能な12.7mm(0.5インチ)のボルト34で荷重計28のセンサ端子が取付具24に固定されている。
【0036】
水平で平滑に研磨された上面38を有し、60.96cm(2フィート)×15.2cm(6インチ)×5.08cm(2インチ)の寸法を有する、花崗岩のブロック36が取り付けガイド37によって上方プレート10の上面に取り付けられている。花崗岩ブロックの表面38上には、厚さ2.36mm(0.093インチ)で、花崗岩ブロック38と同じ平面寸法を有するポリカーボネートシート39が載置されている。シート39は試験の前に同じものを多数準備した。シート39は、複数のクランプ(図示略)によりブロック36に交換可能に取り付けられている。図3に示すように、ブロック38の長手方向と平行に伸びる水平な横断部40が、テーブル表面44にボルト留めされた支持構造42によって支持されている。横断部40の両端間には、回転自在にスクリュー41の両端が支持されている。スクリュー41の一端部には、ケーブル取付具46が連結され、ケーブル取付具46を介してステッパモータ(図示略)のシャフトにケーブルで連結されている。スクリュー41には、ねじ山付きブロック48が取り付けられ、ブロック48にはコンディショニングディスク52の外周の一部を把持するホルダ50が取り付けられている。これにより、ステッパモータを駆動するとスクリュー41が回転し、ねじ山付きブロック48が前後方向に移動するようになっている。ステッパモータの回転数は、コントローラで調整できる。コンディショニングディスク52と錘54の合計質量が2.77kg(2.76kg(6.1lb)s)となるように、コンディショニングディスク52の上に錘54が置かれる。測定前に、ホルダ50に対するコンディショニングディスク52の正確な回転位置を記録する。
【0037】
ステッパモータの回転数を調整し、錘54をコンディショニングディスク52上に配置した状態で、横断部40のブロック48を1分当たり0.246mの速度で移動させ、コンディショニングディスク52を横断部40の長手方向に移動させた。コンディショニングディスク52の移動が始まると、摩擦力を表す荷重計28からのデータが連続的に記録され、ディスプレー(図示略)上にグラフとして出力される。データからディスク移動中の摩擦係数の平均および標準偏差が計算される。
【実施例2】
【0038】
次に、実施例2では、ディスク移動方向に対してコンディショニングディスクの向きを45度回転させ、他の条件は全て実施例1と同様にして、測定を行った。
【0039】
さらに、実施例3〜64は、コンディショニングディスク52の交換、45度毎の向きの変更、および錘54を交換して、その他の条件は共通として測定を行った結果を表している。実施例1〜64の結果を、下記の表1から16に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
【表6】

【0046】
【表7】

【0047】
【表8】

【0048】
【表9】

【0049】
【表10】

【0050】
【表11】

【0051】
【表12】

【0052】
【表13】

【0053】
【表14】

【0054】
【表15】

【0055】
【表16】

【0056】
表1〜16に示すように、コンディショニングディスク52にかける荷重を増やすと、予測したように摩擦係数は増加した。しかし、移動速度を変更しても摩擦力は大幅には変化しなかった。2.76kg(6.1lb)および0.246m/分の下では、Disc979926−05−4およびDisc979926−05−1に関する摩擦係数はほぼ同じであり、これらの2つは同様に摩擦係数がほぼ同じのDisc979926−05−3およびDisc979926−05−2に関する摩擦係数よりも少ない。2.76kg(6.1lb)および0.493m/分の下では、Disc979926−05−4に関する摩擦係数はDisc979926−05−1に関する摩擦係数よりも少なく、Disc979926−05−1に関する摩擦係数はDisc979926−05−3の摩擦係数よりも少ない。Disc979926−05−2に関する摩擦係数は、Disc979926−05−3に関する摩擦係数とほぼ同じである。5.44kg(12lb)および0.246m/分の下では、Disc979926−05−4に関する摩擦係数はDisc979926−05−1および979926−05−3に関する摩擦係数よりも少なく、Disc979926−05−1および979926−05−3に関する摩擦係数はDisc979926−05−2に関する摩擦係数よりも少ない。そして最後に、5.44kg(12lb)および0.493m/分の下では、Disc979926−05−4に関する摩擦係数はDisc979926−05−1に関する摩擦係数よりも少なく、Disc979926−05−1に関する摩擦係数はDisc979926−05−3に関する摩擦係数よりも少なく、Disc979926−05−3に関する摩擦係数はDisc979926−05−2に関する摩擦係数よりも少ない。
【0057】
ディスクにある程度のばらつきがあり、ディスクの必ずしも全てが荷重の増加に同じ様に反応しない点が興味深い。平均の標準偏差に基づいて、向きの影響についてディスク間にある程度の変動があることも興味深い。しかし、同じディスク、荷重、および向きによって得られた測定値は、摩擦係数の特性およびコンディショニングディスクの研削能力を再現性よく反映し正確な値が得られた。
【符号の説明】
【0058】
10 上プレート
12 下プレート
14 受台
16 ランナホルダ
18 ランナ
22 取付具(突起)
24 取付具(突起)
25 ガイド突条
28 荷重センサ(測定手段)
30 ボルト
32 センサ端子
34 ボルト
36 花崗岩ブロック(ベース手段)
37 取り付けガイド
38 上面
39 シート(ディスク摩擦手段)
40 横断部
41 スクリュー(駆動手段)
42 支持構造
44 テーブル
46 ケーブル取付具
48 ねじ山付きブロック(移動手段)
50 ホルダ(固定手段)
52 コンディショニングディスク
54 錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース手段(36)と、前記ベース手段(36)上に設けられたディスク摩擦手段(39)とを備え、前記ベース手段(36)と前記ディスク摩擦手段(39)の両方が摩擦係数の測定のために前記コンディショニングディスク(52)の水平移動を可能にする長さを有し、装置はさらに、前記ディスク摩擦手段(39)のディスク摩擦面に沿って前記コンディショニングディスク(52)を移動する移動手段(48)と、前記移動手段に対してコンディショニングディスク(52)を固定する固定手段(50)と、前記ディスク摩擦面に沿って前記コンディショニングディスク(52)を移動する前記移動手段(48)を駆動する駆動手段(41)と、前記移動するコンディショニングディスク(52)によって前記ディスク摩擦面に加えられる摩擦力を測定する測定手段(28)とを備えたことを特徴とする、コンディショニングディスクの摩擦係数測定装置。
【請求項2】
前記移動手段は、前記ベース手段(36)および前記ディスク摩擦手段(39)の長手方向に沿って移動可能に配置されたブロック(48)であり、前記固定手段は、前記ブロック(48)に固定されたホルダ(50)であり、前記ホルダ(50)のディスク移動方向の前方側には、平面視して凹形をなす凹部が形成され、この凹部は、前記ディスク研磨面上に砥粒面を下向きにして配置されたコンディショニングディスク(52)の外周の少なくとも一部を収容する形状を有し、前記ブロック(48)をディスク移動方向の前方側に移動する際に前記凹部はコンディショニングディスク(52)を保持することが可能であり、かつ、この保持状態において前記コンディショニングディスク(52)上に載置可能な複数種の錘(54)を備えた、請求項1に記載のコンディショニングディスクの摩擦係数測定装置。
【請求項3】
前記コンディショニングディスク(52)を移動する前記移動手段は、前記ブロック(48)を前記ベース手段(36)および前記ディスク摩擦手段(39)の長手方向に沿って移動させるための機械的手段(41)と、この機械的手段(41)を駆動するためのモーターとを有する、請求項2に記載のコンディショニングディスクの摩擦係数測定装置。
【請求項4】
前記ベース手段は、平滑な上面を有する剛性材料製のブロック(36)であり、前記ディスク摩擦手段は、前記ブロック(36)の上面に交換可能に固定されるシート(39)であり、前記シート(39)は、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、及びアクリル樹脂から選択される1種または複数種の材質で形成され、前記測定手段は、移動するコンディショニングディスク(52)によって前記ブロック(36)に加えられた摩擦力を測定する荷重計(28)である、請求項1に記載のコンディショニングディスクの摩擦係数測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載のコンディショニングディスクの摩擦係数測定装置を用いたコンディショニングディスクの摩擦係数の測定方法であって、前記移動手段(48)により前記ディスク摩擦手段(39)のディスク摩擦面に沿って前記コンディショニングディスク(52)を移動する工程と、前記移動するコンディショニングディスク(52)によって前記ディスク摩擦面に加えられる摩擦力を測定する工程とを有する、コンディショニングディスクの摩擦係数の測定方法。
【請求項6】
前記コンディショニングディスク(52)の上に交換可能な錘(54)を載置した状態で、前記ディスク摩擦面に沿って前記コンディショニングディスク(52)を移動し、前記コンディショニングディスク(52)によって前記ディスク摩擦面に加えられる摩擦力を測定する、請求項5に記載のコンディショニングディスクの摩擦係数の測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−105147(P2010−105147A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193652(P2009−193652)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(507245629)アラカ・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】