説明

コンデンサ用フィルム及びコンデンサ用フィルムの製造方法、並びにコンデンサ

【課題】比誘電率及び誘電正接が低く、かつ、耐電圧が高いコンデンサ用フィルム及びコンデンサ用フィルムの製造方法、並びにコンデンサの提供。
【解決手段】本発明のコンデンサ用フィルムは、結晶性ポリエステルからなり、表面に露出しない状態で内部に空洞を有するコンデンサ用フィルムであって、前記空洞の中心から前記コンデンサ用フィルムの表面までの最短距離(a)と、前記コンデンサ用フィルムの平均厚み(b)とが、a/b≧0.01の関係を満たす。本発明のコンデンサ用フィルムは、未延伸結晶性ポリエステル成形体を延伸することで得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比誘電率、誘電正接が低く、優れた耐電圧を有するコンデンサ用フィルム及びコンデンサ用フィルムの製造方法、並びにコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサは、電気を蓄える機能、交流電流のみを通す機能、及びノイズを吸収し電子機器の誤作動を防ぐ機能などを有していることから、様々な電子機器に使用されている。近年、電子機器の小型化に伴い、コンデンサなどの電子部品に対して、小型化かつ大容量化の要求が高まっている。
【0003】
一般に、コンデンサは、フィルム状の高分子に金属を蒸着させ、円筒状に巻くことで作製することができ、前記要求に対しては、フィルム状の高分子の電気特性を改良することで達成しようとする試みが行われている。
例えば、不活性粒子を含有させた二軸延伸フィルムを用いることでコンデンサの電気特性を向上させることが提案されており(特許文献1)、また、平均粒径が0.01〜0.1μmの多孔質シリカ粒子を含有させた二軸延伸フィルムを用いることで、コンデンサの電気特性を向上させることが提案されている(特許文献2)。
また、互いに非相溶である2種類のポリマーを用い、空洞を含有させたフィルムを用いることで電気特性を向上させることが提案されている(特許文献3)。
【0004】
しかしながら、フィルム中に空洞形成剤として粒子やポリマーなどが存在すると比誘電率及び誘電正接が上昇してしまう。電力損失は、周波数と比誘電率と誘電正接との積に比例するので、比誘電率及び誘電正接が上昇するとコンデンサの電力損失が大きくなるという問題があった。また、空洞形成剤を用いると、フィルム表面に空洞ができてしまい、フィルムの耐電圧が低下するという問題があった。
【0005】
したがって、優れた比誘電率、誘電正接及び耐電圧を有するコンデンサ用フィルムの速やかな開発が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2913779号公報
【特許文献2】特許第3566450号公報
【特許文献3】特開2004−281677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、比誘電率及び誘電正接が低く、かつ、耐電圧が高いコンデンサ用フィルム及びコンデンサ用フィルムの製造方法、並びにコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 結晶性ポリエステルからなり、表面に露出しない状態で内部に空洞を有するコンデンサ用フィルムであって、前記コンデンサ用フィルムの最外面までの最短距離(a)と、前記コンデンサ用フィルムの平均厚み(b)とが、a/b≧0.01の関係を満たすことを特徴とするコンデンサ用フィルムである。
<2> 結晶性ポリエステルが、脂肪族ジカルボン酸とグリコール成分との重縮合反応により得られる前記<1>に記載のコンデンサ用フィルムである。
<3> コンデンサ用フィルムの少なくとも一面の表面粗さRaが、400nm以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載のコンデンサ用フィルムである。
<4> 平均厚みが、1.5μm〜25μmである前記<1>から<3>のいずれかに記載のコンデンサ用フィルムである。
<5> 空洞が、一方向に配向している前記<1>から<4>のいずれかに記載のコンデンサ用フィルムである。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載のコンデンサ用フィルムと、金属層と、を有することを特徴とするコンデンサである。
<7> 前記<1>から<5>のいずれかに記載のコンデンサ用フィルムの製造方法であって、溶融混練した結晶性ポリエステルをダイから押し出す押出工程と、押し出された前記結晶性ポリエステルを未延伸の状態で冷却し、未延伸結晶性ポリエステル成形体を成形する工程と、前記未延伸結晶性ポリエステル成形体を延伸する工程と、を含むことを特徴とするコンデンサ用フィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来における諸問題を解決でき、比誘電率及び誘電正接が低く、かつ、耐電圧が高いコンデンサ用フィルム及びコンデンサ用フィルムの製造方法、並びにコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、コンデンサ用フィルムの製造方法の一例を示す図であって、二軸延伸フィルム製造装置のフロー図である。
【図2A】図2Aは、アスペクト比の一例を説明するための図であって、コンデンサ用フィルムの斜視図である。
【図2B】図2Bは、アスペクト比の一例を説明するための図であって、図2Aにおけるコンデンサ用フィルムのA−A’断面図である。
【図2C】図2Cは、アスペクト比の一例を説明するための図であって、図2Aにおけるコンデンサ用フィルムのB−B’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(コンデンサ用フィルム)
本発明のコンデンサ用フィルムは、表面で露出しない状態で内部に空洞を有する結晶性ポリエステルからなり、必要に応じてその他の成分を含む。
【0012】
<結晶性ポリエステル>
一般に、ポリマーは、結晶性を有するポリマー(以下、単に「結晶性ポリマー」と称することがある。)と、非晶性(アモルファス)ポリマーとに分けられるが、結晶性ポリマーといえども100%結晶状態であるということはなく、分子構造の中に長い鎖状の分子が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に並んでいない非結晶(アモルファス)領域とを含んでいる。
したがって、前記結晶性ポリエステルとしては、分子構造の中に少なくとも前記結晶性領域を含んでいればよく、結晶性領域と非結晶領域とが混在していてもよい。
【0013】
前記結晶性ポリエステルは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子化合物の総称を意味する。したがって、前記結晶性ポリエステルとしては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)だけでなく、ジカルボン酸成分とジオール(グリコール)成分との重縮合反応によって得られる高分子化合物が全て含まれる。
【0014】
前記ジカルボン酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、オキシカルボン酸、多官能酸などが挙げられる。これらの中でも柔軟性や低誘電性という点で脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、エイコ酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
前記脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキシンジカルボン酸などが挙げられる。
前記オキシカルボン酸としては、例えば、p−オキシ安息香酸などが挙げられる。
前記多官能酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられる。
【0015】
前記ジオール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
【0016】
前記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコールなどが挙げられる。これらの中でも、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールが特に好ましい。
前記脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
前記芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどが挙げられる。
【0017】
前記結晶性ポリエステルの溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50Pa・s〜700Pa・sが好ましく、70Pa・s〜500Pa・sがより好ましく、80Pa・s〜300Pa・sが特に好ましい。
前記溶融粘度が、50Pa・s未満であると、安定的に成形できにくくなり、製品が破損しやすくなることがあり、700Pa・sを超えると、製膜時に樹脂の流れが安定せず滞留が発生しやすくなることがある。前記溶融粘度は、レオメ−タ、キャピログラフなどにより測定することができる。
【0018】
前記結晶性ポリエステルの極限粘度(IV)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.2が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく、0.7〜0.9が特に好ましい。
前記極限粘度が、0.4未満であると、製品が破損しやすくなることがあり、1.2を超えると、製膜時に押出しがしにくくなり、樹脂の流れが安定せず滞留が発生しやすくなることがある。前記極限粘度は、ウッベロ−デ粘度計などにより測定することができる。
【0019】
前記結晶性ポリエステルの融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐熱性や製膜性などの観点から、150℃〜300℃が好ましく、180℃〜270℃がより好ましく、190℃〜250℃が特に好ましい。
前記融点が、150℃未満であると、使用環境によっては耐熱性に劣ることがあり、300℃を超えると、溶融押し出しができず製膜ができないことがある。前記融点は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0020】
なお、前記結晶性ポリエステルとして、前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分とが、それぞれ1種で重合してポリマーを形成していてもよく、前記ジカルボン酸成分及び/又は前記ジオール成分が、2種以上で共重合してポリマーを形成していてもよい。また、前記ポリエステル樹脂として、2種以上のポリマーをブレンドして使用してもよい。
【0021】
前記2種以上でのポリマーのブレンドにおいて、主たるポリマーに対して添加されるポリマーは、前記主たるポリマーに対して、溶融粘度及び極限粘度が近く、添加量が少量であるほうが、製膜時や溶融押出し時に物性が高まり、押出ししやすくなる点で好ましい。
【0022】
また、前記結晶性ポリエステルの流動特性の改良、光線透過性の制御、塗布液との密着性の向上などを目的として、前記結晶性ポリエステルに対してポリエステル系以外の樹脂を添加してもよい。
【0023】
<空洞>
前記空洞とは、表面に露出しない状態で前記結晶性ポリエステル内部に存在する、真空状態のドメイン又は気相のドメインを意味する。前記空洞は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像によって確認することができる。
【0024】
前記空洞は、前記コンデンサ用フィルムの厚み方向と直交して配向している。そして、前記空洞は、特定範囲のアスペクト比を有している。前記コンデンサ用フィルムは、空洞を有し、その空洞が特定の配向及び特定範囲のアスペクト比を有することで、低い誘電正接を得ることができる。そのため、本発明のコンデンサ用フィルムは、コンデンサへの使用が可能である。
【0025】
−アスペクト比−
前記アスペクト比とは、前記厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比(以下、「アスペクト比」と省略することがある。)を意味する。
【0026】
図2A〜図2Cは、アスペクト比の一例を具体的に説明するための図であって、図2Aは、空洞を有するコンデンサ用フィルムの斜視図であり、図2Bは、図2Aにおける空洞を有するコンデンサ用フィルムのA−A’断面図であり、図2Cは、図2Aにおける空洞を有するコンデンサ用フィルムのB−B’断面図である。
【0027】
前記アスペクト比とは、前記コンデンサ用フィルム1の表面1aに直交し、かつ、前記空洞の配向方向に直交する方向における空洞100の平均の長さをr(μm)(図2B参照)とし、前記コンデンサ用フィルムの表面に直交し、かつ、前記空洞の配向方向における空洞100の平均の長さをL(μm)(図2C参照)とした際のL/r比を意味する。
前記アスペクト比としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10以上500以下が好ましく、15以上300以下がより好ましく、20以上100以下が特に好ましい。
前記アスペクト比が、10未満であると、低誘電性を発現しにくくなることがあり、500を超えると、前記コンデンサ用フィルムの強度が低下することがある。
【0028】
ここで、前記空洞の配向方向に直交する方向における前記空洞の平均長さ(r(μm))は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。同様に、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さ(L(μm))は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0029】
−空洞含有率−
前記空洞含有率とは、前記コンデンサ用フィルムの固相部分の総体積と含有される空洞の総体積の和に対する、前記含有される空洞の総体積を意味する。
前記空洞含有率としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5体積%〜95体積%が好ましく、10体積%〜90体積%がより好ましく、10体積%〜80体積%が特に好ましい。
前記空洞含有率が、5体積%未満であると、光学顕微鏡や電子顕微鏡で空隙を確認できず、また低誘電性も発現しないことがあり、95体積%を超えると、フィルムの強度が低下することがある。
ここで、前記空洞含有率は、密度を測定し、前記密度に基づいて算出することができる。
具体的には、前記空洞含有率は、下記の(1)式により求めることができる。

空洞含有率(%)={1−(延伸後のコンデンサ用フィルムの密度)/(延伸前の結晶性ポリエステルの密度)} ・・・(1)
【0030】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、空洞の発現に寄与しない成分であれば、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、例えば、結晶核剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、有機の易滑剤、染料、顔料、分散剤、カップリング剤及び蛍光増白剤などが挙げられる。前記その他の成分が空洞の発現に寄与したかどうかは、空洞内又は空洞の界面部分に、結晶性ポリエステル以外の成分が検出されるかどうかで判別できる。
【0031】
−結晶核剤−
前記結晶核剤としては、前記結晶性ポリエステル内部の結晶形成を促進するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単体酸化物又は複合酸化物を含む金属化合物類、カルボキシル基を含む低分子有機化合物の金属塩類、カルボキシル基を含む高分子有機化合物の金属塩類、他の高分子有機化合物、リン酸及びその金属塩、亜リン酸及びその金属塩、ソルビトール誘導体、4級アンモニウム化合物、無水チオグリコール酸及びその金属塩、パラトルエンスルホン酸及びその金属塩、二塩基酸ビス(安息香酸ヒドラジド)化合物、イソシアヌレート化合物、バルビツル酸構造を有する化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記単体酸化物又は複合酸化物を含む金属化合物類としては、例えば、炭酸カルシウム、合成ケイ酸、ケイ酸塩、シリカ、亜鉛華、ハイサイトクレー、カオリン、塩基性炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、石英粉、ケイ藻土、ドロマイト粉、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸カルシウム、窒化ホウ素などが挙げられる。
前記カルボキシル基を含む低分子有機化合物としては、例えば、オクチル酸、トルイル酸、ヘプタン酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、テレフタル酸、テレフタル酸モノメチルエステル、イソフタル酸、イソフタル酸モノメチルエステル、ショウノウ酸、シトロネル酸、ヒノキ酸、アビエチン酸、ロジン酸、水素化ロジン酸などが挙げられる。
前記カルボキシル基を含む高分子有機化合物としては、例えば、ポリエチレンの酸化によって得られるカルボキシル基含有ポリエチレン、ポリプロピレンの酸化によって得られるカルボキシル基含有ポリプロピレン、オレフィン類とアクリル酸(又は、メタクリル酸)との共重合体、スチレンとアクリル酸(又は、メタクリル酸)との共重合体、オレフィン類と無水マレイン酸との共重合体、スチレンと無水マレイン酸との共重合体などが挙げられる。
前記オレフィン類としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどが挙げられる。
前記他の高分子有機化合物としては、例えば、炭素数5以上の3位分岐α−オレフィン、ビニルシクロアルカンの重合体、ポリアルキレングリコール、脂肪族系ポリアミド化合物、ポリグリコール酸、セルロース、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリビニルアルコール、キチン、キトサン、テレフタル酸とレゾルシンを主な構成単位とする全芳香族ポリエステル微粉末、ポリヒドロキシアルカノエート類などが挙げられる。
前記炭素数5以上の3位分岐α−オレフィンとしては、例えば、3,3−ジメチルブテン−1,3−メチルブテン−1,3−メチルペンテン−1,3−メチルヘキセン−1,3,5,5−トリメチルヘキセン−1等の炭素数5以上の3位分岐α−オレフィンなどが挙げられる。
前記ビニルシクロアルカンの重合体としては、例えば、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどが挙げられる。
前記ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
前記脂肪族系ポリアミド化合物としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612などが挙げられる。
前記リン酸及びその金属塩としては、例えば、リン酸ジフェニル、リン酸ビス(4−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸メチレン(2,4−tert−ブチルフェニル)ナトリウムなどが挙げられる。
前記亜リン酸及びその金属塩としては、例えば、亜リン酸ジフェニルなどが挙げられる。
前記ソルビトール誘導体としては、例えば、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトールなどが挙げられる。
前記4級アンモニウム化合物としては、例えば、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラn−プロピルアンモニウムクロリド、テトラn−ブチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラn−プロピルアンモニウムブロミド、テトラn−ブチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムシリケート、テトラn−ブチルアンモニウムシリケートなどが挙げられる。
前記二塩基酸ビス(安息香酸ヒドラジド)化合物としては、例えば、下記一般式(I)で表されるものが挙げられる。
【化1】

前記イソシアヌレート化合物としては、例えば、下記一般式(II)で表されるものが挙げられる。
【化2】

前記バルビツル酸構造を有する化合物としては、例えば、下記式(1)〜(7)で表されるものが挙げられる。
【化3】


(式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜10の分岐や置換基を有してもよいアルキル基、炭素原子数1〜10の分岐や置換基を有してもよいアルコキシ基、炭素原子数3〜30の置換基を有してもよい環状基若しくは−NH−R(Rは、Rと同じもの、又は炭素原子数2〜20のカルボン酸誘導体を表す。)、又は、これらの基の組合せを表し、Lは、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【化4】

(式(2)中、R、R、R及びLは、上記一般式(1)中と同じものを表し、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜10の分岐や置換基を有してもよいアルキル基、炭素原子数1〜10の分岐や置換基を有してもよいアルコキシ基、炭素原子数3〜30の置換基を有してもよい環状基若しくは−NH−R(Rは、Rと同じもの、又は炭素原子数2〜20のカルボン酸誘導体を表す。)、又は、これらの基の組合せを表す。)
【化5】

(式(3)中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜10の分岐や置換基を有してもよいアルキル基、炭素原子数1〜10の分岐や置換基を有してもよいアルコキシ基、炭素原子数3〜30の置換基を有してもよい環状基若しくは−NH−R(Rは、Rと同じもの、又は炭素原子数2〜20のカルボン酸誘導体を表す。)、又は、これらの基の組合せを表し、Lは、酸素原子又は硫黄原子を表し、Mは、水素原子又は金属原子を表し、Mが水素原子又は価数1の金属原子である場合には、pは、1、qは0を表し、Mが価数2の金属原子である場合には、qは、0又は1の整数、pは、2−qを表し、Mが価数3の金属原子である場合には、qは、0〜2の整数、pは、3−qを表し、Mが価数4の金属原子である場合には、qは、0〜3の整数、pは、4−qを表す。)
【化6】

(式(4)中、R、R、R、L、M、p及びqは、上記一般式(3)と同じものを表し、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜10の分岐や置換基を有してもよいアルキル基、炭素原子数1〜10の分岐や置換基を有してもよいアルコキシ基、炭素原子数3〜30の置換基を有してもよい環状基若しくは−NH−R(Rは、Rと同じもの、又は炭素原子数2〜20のカルボン酸誘導体を表す。)、又は、これらの基の組合せを表す。)
【化7】

(式(5)中、R、R、R、R及びLは、上記一般式(4)と同じものを表す。)
【化8】

(式(6)中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜10の分岐や置換基を有してもよいアルキル基、炭素原子数1〜10の分岐や置換基を有してもよいアルコキシ基、炭素原子数3〜30の置換基を有してもよい環状基若しくは−NH−R(Rは、Rと同じもの、又は炭素原子数2〜20のカルボン酸誘導体を表す。)、又は、これらの基の組合せを表し、Lは、酸素原子又は硫黄原子を表し、Mは、水素原子又は金属原子を表し、nは、1〜4の整数を表す。)
【化9】

(式(7)中、R、R、R、L、M及びnは、上記一般式(6)と同じものを表し、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜10の分岐や置換基を有してもよいアルキル基、炭素原子数1〜10の分岐や置換基を有してもよいアルコキシ基、炭素原子数3〜30の置換基を有してもよい環状基若しくは−NH−R(Rは、Rと同じもの、又は炭素原子数2〜20のカルボン酸誘導体を表す。)、又は、これらの基の組合せを表す。)
【0033】
前記結晶核剤としては、無機物及び有機物のいずれであってもよいが、無機物が引き起こした光の乱反射による反射率の低下、紫外線等の照射による無機物をトリガーとした樹脂の黄変、及び無機物(粒子)の工程時の脱落による汚れなどの点で、有機化合物、有機金属等の有機結晶核剤が好ましい。
【0034】
前記結晶核剤の中でも、例えば、マイカ、タルク、ステアリン酸、安息香酸、テレフタル酸、ショウノウ酸、アビエチン酸、ロジン酸、水素化ロジン酸、オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1)とアクリル酸(又は、メタクリル酸)との共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、テレフタル酸とレゾルシンを主な構成単位とする全芳香族ポリエステル微粉末、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、二塩基酸ビス(安息香酸ヒドラジド)化合物、イソシアヌレート化合物、バルビツル酸構造を有する化合物が好ましく、二塩基酸ビス(安息香酸ヒドラジド)化合物、イソシアヌレート化合物、バルビツル酸構造を有する化合物がより好ましい。
【0035】
−−結晶核剤の含有量−−
前記結晶核剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結晶性ポリエステルに対して0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5質量%以下がより好ましい。
前記含有量が、0.01質量%未満であると、所定の効果が得られにくいことがあり、10質量%を超えると、配合量に見合うだけの効果が期待できず、実際的でないばかりか、不経済であることがある。
【0036】
−−結晶核剤の存在確認分析−−
前記結晶核剤を含有する結晶性ポリエステルを、例えば、クロロホルム、ヘキサフルオロイソプロパノールなどに溶解させ、ポリエステル樹脂の貧溶媒を添加し、上澄み溶液を濃縮し、再度適当な溶媒に溶解させて、H−NMR等の分光法や質量分析法、液体クロマトグラフィーによる分析などを行うことにより、結晶核剤の種類、添加量などを測定することができる。
【0037】
−酸化防止剤−
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知のヒンダードフェノール類を添加してもよい。前記ヒンダードフェノール類としては、例えば、イルガノックス1010、同スミライザーBHT、同スミライザーGA−80などの商品名で市販されている酸化防止剤が挙げられる。
また、前記酸化防止剤を一次酸化防止剤として利用し、更に二次酸化防止剤を組み合わせて適用することもできる。前記二次酸化防止剤としては、例えば、スミライザーTPL−R、同スミライザーTPM、同スミライザーTP−Dなどの商品名で市販されている酸化防止剤が挙げられる。
【0038】
−蛍光増白剤−
前記蛍光増白剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばユビテック、OB−1、TBO、ケイコール、カヤライト、リューコプア、EGMなどの商品名で市販されているものを用いることができる。なお、前記蛍光増白剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
このように、本発明のコンデンサ用フィルムは、従来技術において添加されていた無機系微粒子、相溶しない樹脂などの空洞形成剤を特に添加しなくても、簡便な工程で空洞を形成させることができる。さらに、不活性ガスを予め樹脂の中に溶け込ませるための特殊な設備も必要としない。なお、コンデンサ用フィルムの製造方法については後述する。
【0040】
前記コンデンサ用フィルムの平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.5μm〜25μmが好ましく、2μm〜12μmがより好ましく、4μm〜8μmが特に好ましい。
前記平均厚みが、1.5μm未満であると、延伸による膜厚を均一にできないことがあり、25μmを超えると、静電容量が低下することがある。前記平均厚みとしては、キーエンス社製、ロングレンジ接触式変位計AF030(測定部)、AF350(指示部)を用いて10点測定し、その平均値を平均厚みとした。
【0041】
前記コンデンサ用フィルムとしては、前記空洞の中心から前記コンデンサ用フィルムの表面までの最短距離(a)と、前記コンデンサ用フィルムの平均厚み(b)とが、a/b≧0.01の関係を満たすことが好ましく、a/b≧0.015の関係を満たすことがより好ましく、a/b≧0.02の関係を満たすことが特に好ましい。
前記a/bが0.01未満であると、前記コンデンサ用フィルムの表面に空洞があることとなり、耐電圧が低下することがある。
前記a/b≧0.01の関係を満たすことで、前記コンデンサ用フィルムの表面に空洞がなくなる。前記表面に空洞がなくなると耐電圧が向上する点で有利である。また、前記表面に空洞がないことから、前記コンデンサ用フィルムの表面が平滑となり、例えば、前記コンデンサ用フィルム上に直接金属を蒸着させ、金属層を設けることができる点においても有利である。前記a/bは、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像解析で測定することができる。
前記「空洞の中心」とは、前記コンデンサ用フィルムの厚み方向に対して平行であり、かつ、前記厚み方向と直交する長手方向に対して垂直となるように切断した際の前記空洞の断面形状が、真円である場合にはその中心を意味し、それ以外の形状の場合には、例えば、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とする。
前記「コンデンサ用フィルムの表面」とは、厚み方向における、コンデンサ用フィルムの最外面を意味する。通常、前記コンデンサ用フィルムを載置したときの上面を意味する。
【0042】
前記コンデンサ用フィルムの少なくとも一面の表面粗さRaとしては、400nm以下が好ましく、1nm〜200nmがより好ましく、2nm〜100nmが特に好ましい。
前記表面粗さRaが、400nmを超えると、均一に金属蒸着ができないことがある。前記表面粗さRaは、触針式表面粗さ計、光干渉式表面形状装置、AFMなどで測定することができる。
【0043】
前記コンデンサ用フィルムのガラス転移温度(Tg)としては、−50℃〜300℃が好ましく、−20℃〜200℃がより好ましく、40℃〜150℃が特に好ましい。
前記ガラス転移温度が、−50℃未満であると、結晶化しても柔軟すぎてハンドリングなどが困難になることがあり、300℃を超えると、成形する場合に形状が追随しにくいことがある。前記ガラス転移温度は、DSC、動的粘弾性法などで測定することができる。
【0044】
前記コンデンサ用フィルムの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平面状、円筒状などが挙げられる。
【0045】
(コンデンサ用フィルムの製造方法)
前記コンデンサ用フィルムの製造方法は、押出工程と、成形工程と、延伸工程とを少なくとも含み、必要に応じて溶融混練工程などその他の工程を含んでなる。
【0046】
<押出工程>
前記押出工程は、溶融混練した結晶性ポリエステルをダイから押し出す工程である。
【0047】
−溶融混練−
前記結晶性ポリエステルを溶融混練する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、二軸押出機中で溶融混練する方法、単軸押出機中で溶融混練する方法などが挙げられる。前記押出機中で溶融混練を行う場合、発熱しないようなスクリュー構造を有するもの、又は適当な冷却装置を有するものを使用することが好ましい。
前記溶融混練の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結晶性ポリエステルの融点+10℃〜前記結晶性ポリエステルの融点+80℃が好ましく、前記結晶性ポリエステルの融点+15℃〜前記結晶性ポリエステルの融点+70℃がより好ましく、前記結晶性ポリエステルの融点+20℃〜前記結晶性ポリエステルの融点+60℃が特に好ましい。
前記溶融混練の温度が、前記結晶性ポリエステルの融点+10℃未満であると、押出量が不安定となったり、分散不良になることがあり、前記結晶性ポリエステルの融点+80℃を超えると、結晶性ポリエステルの熱劣化が進行することがある。一方、前記溶融混練の温度が前記特に好ましい範囲内であると、混練物の良好な混合性、良好な成型加工性及び少ない熱劣化の点で有利である。
【0048】
−押し出し−
前記押し出しの方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記溶融混練したポリマー組成物を押出機から直接に又は別の押出機を介してダイから押し出す方法、一旦冷却してペレット化した後再度押出機を介してダイから押し出す方法が挙げられる。
【0049】
前記ダイとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、澤田慶司著「プラスチックの押出成形とその応用」((株)誠文堂新光社)に記載されているような、Tダイ、フィッシュテールダイ、コートハンガダイなどが挙げられる。中でも、Tダイが好ましい。
前記ダイのギャップとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5mm以下とすることができる。
前記ダイから押し出す前記結晶性ポリエステルの量としては、特に制限はなく、目的とする未延伸ポリマー成形体の厚みに応じて適宜選択することができる。
【0050】
前記ダイから押し出す前記結晶性ポリエステルの温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記結晶性ポリエステルの融点−10℃〜前記結晶性ポリエステルの融点+80℃が好ましく、前記結晶性ポリエステルの融点〜前記結晶性ポリエステルの融点+60℃がより好ましく、前記結晶性ポリエステルの融点+5℃〜前記結晶性ポリエステルの融点+50℃が特に好ましい。
前記ダイから押し出す前記結晶性ポリエステルの温度が、前記結晶性ポリエステルの融点−10℃未満であると、フィルムにブツ状の故障が発生することがあり、前記結晶性ポリエステルの融点+80℃を超えると、ポリマーが劣化し、フィルムが褐色になったりすることがある。
【0051】
<成形工程>
前記成形工程は、前記押し出された結晶性ポリエステルを未延伸の状態で冷却速度を40℃/秒以上で冷却し、未延伸結晶性ポリエステル成形体を成形する工程である。
【0052】
−冷却−
前記冷却により、前記押し出された結晶性ポリエステルの結晶化をできるだけ抑制し、未延伸結晶性ポリエステル成形体を成形することができる。
【0053】
前記冷却の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記押し出された結晶性ポリエステルの温度が、−70℃〜60℃となるまで行うことが好ましく、−50℃〜50℃となるまで行うことがより好ましく、−30℃〜45℃となるまで行うことが特に好ましい。
前記冷却の温度が、−70℃未満であると、フィルム上に水滴が生じ、ゴミなどの塵埃が付着しやすくなることがあり、60℃を超えると、ヘイズが高くなり、巻取りが困難になることがある。一方、前記冷却の温度が前記特に好ましい範囲内であると、塵埃が付着せず、ヘイズの低い、透明なフィルムが良好に巻き取れる点で有利である。
【0054】
前記冷却速度としては、40℃/秒以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、45℃/秒以上とすることが好ましく、50℃/秒以上とすることがより好ましい。
前記冷却速度が、40℃/秒未満であると、ヘイズが高くなり、巻取りが困難になることがある。一方、前記冷却速度が前記より好ましい範囲内であると、ヘイズの低い、透明なフィルムが良好に巻き取れる点で有利である。
【0055】
前記冷却の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記押し出された結晶性ポリエステルをキャスティングドラム(キャスティングロール)で受け、前記キャスティングドラムで冷却する方法が挙げられる。
前記キャスティングドラムの温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、−70℃〜60℃が好ましく、−50℃〜50℃がより好ましく、−30℃〜45℃が特に好ましい。
前記キャスティングドラムの温度が、−70℃未満であると、フィルム上に水滴が生じ、ゴミなどの塵埃が付着しやすくなることがあり、60℃を超えると、ヘイズが高くなり、巻取りが困難になることがある。一方、前記キャスティングドラムの温度が前記特に好ましい範囲内であると、塵埃が付着せず、ヘイズの低い、透明なフィルムが良好に巻き取れる点で有利である。
【0056】
前記ダイと前記キャスティングドラムの間の距離としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1cm〜10cmが好ましく、1cm〜8cmがより好ましく、1cm〜6cmが特に好ましい。
前記ダイと前記キャスティングドラムの間の距離が、1cm未満であると予期せぬ振動が起こった際にキャスティングドラムに触れたり、当たったりして、装置の損傷や製膜故障をきたすことがあり、10cmを超えると、溶融ポリマーがキャスティングドラムに接地する前に結晶、白濁化し、ヘイズがあがることがある。一方、前記ダイと前記キャスティングドラムの間の距離が前記特に好ましい範囲内であると、効率的に透明性の良いフィルムを作製できる点で有利である。
【0057】
前記キャスティングドラムの周速としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記キャスティングドラム径(直径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、前記キャスティングドラムは、単独で設けてもよいし、複数設けてもよい。複数設ける場合には、各キャスティングドラムの周速は同じとすることが好ましく、各キャスティングドラムの温度は異なっていてもよい。
前記ポリマー組成物が前記キャスティングドラム上に接地する時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、200℃以上の前記ポリマー組成物が前記キャスティングドラム上で室温程度まで冷却される時間(数秒)とすることが好ましい。
【0058】
<延伸工程>
前記延伸工程では、前記結晶性ポリエステルの成形体が少なくとも1軸に延伸される。そして、前記延伸工程により、結晶性ポリエステルの成形体が延伸されるとともに、その内部に第一の延伸方向に沿って配向した空洞が形成されることで、空洞を有するコンデンサ用フィルムが得られる。
【0059】
延伸により空洞が形成される理由としては、前記結晶性ポリエステル体が、複数種類の結晶状態からなり、延伸時に伸張し難い結晶を含む相で、硬い結晶間の樹脂が引きちぎられるような形で剥離延伸されることにより、これが空洞形成源となって空洞が形成されるものと考えられる。
なお、このような延伸による空洞形成は、結晶性ポリエステルが1種類の場合だけではなく、2種類以上の結晶性のポリマーが、ブレンド又は共重合されている場合であっても可能である。
【0060】
前記延伸の方法としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、1軸延伸、逐次2軸延伸、同時2軸延伸が挙げられるが、いずれの延伸方法においても、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸が行われることが好ましい。
【0061】
一般に、縦延伸においては、ロールの組合せやロール間の速度差により、縦延伸の段数や延伸速度を調節することができる。
前記縦延伸の段数としては、1段以上であれば特に制限はないが、より安定して高速に延伸することができる点及び製造の歩留まりや機械の制約の点から、2段以上に縦延伸することが好ましい。また、2段以上に縦延伸することは、1段目の延伸によりネッキングの発生を確認したうえで、2段目の延伸により空洞を形成させることができる点においても、有利である。
【0062】
−延伸速度−
前記縦延伸の延伸速度としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10mm/min〜36,000mm/minが好ましく、800mm/min〜24,000mm/minがより好ましく、1,200mm/min〜12,000mm/minが特に好ましい。
前記延伸速度が、10mm/min未満であると、充分なネッキングを発現させにくくなることがあり、36,000mm/minを超えると、均一な延伸がしにくくなり、樹脂が破断しやすくなることがある。
【0063】
より具体的には、1段延伸の場合の延伸速度としては、10mm/min〜36,000mm/minが好ましく、50mm/min〜20,000mm/minがより好ましく、100mm/min〜10,000mm/minが特に好ましい。
【0064】
2段延伸の場合には、1段目の延伸を、ネッキングを発現させることを主なる目的とした予備的な延伸とすることが好ましい。前記予備的な延伸の延伸速度としては、10mm/min〜10,000mm/minが好ましく、20mm/min〜5,000mm/minがより好ましく、50mm/min〜1,000mm/minが特に好ましい。
【0065】
そして、2段延伸における、前記予備的な延伸(1段目の延伸)によりネッキングを発現させた後の2段目の延伸速度は、前記予備的な延伸の延伸速度と変えることが好ましい。前記予備的延伸によりネッキングを発現させた後の、2段目の延伸速度としては、30mm/min〜36,000mm/minが好ましく、60mm/min〜30,000mm/minがより好ましく、150mm/min〜15,000mm/minが特に好ましい。
【0066】
−延伸温度−
前記延伸温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、延伸温度をT(℃)、前記コンデンサ用フィルムのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、
(Tg−30)(℃)≦T(℃)≦(Tg+70)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが好ましく、
(Tg−25)(℃)≦T(℃)≦(Tg+70)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することがより好ましく、
(Tg−20)(℃)≦T(℃)≦(Tg+70)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが特に好ましい。
【0067】
一般に、延伸温度(℃)が高いほど延伸張力も低めに抑えられて容易に延伸できるが、前記延伸温度(℃)が、{ガラス転移温度(Tg)−30}℃以上、{ガラス転移温度(Tg)+70}℃以下であると、空洞含有率が高くなり、アスペクト比が10以上になりやすく、かつ、充分に空洞が発現する点で好ましい。
ここで、前記延伸温度T(℃)は、非接触式温度計により測定することができる。また、前記ガラス転移温度Tg(℃)は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0068】
なお、前記延伸工程において、空洞の発現の妨げにならない範囲で、横延伸してもよく、しなくてもよい。また、横延伸をする場合には、横延伸工程を利用してフィルムを緩和させたり、熱処理を行ったりしてもよい。
また、延伸後の成形体は、形状安定化などの目的で、更に熱を加えて熱収縮させたり、張力を加えたりする等の処理をしてもよい。
【0069】
図1は、コンデンサ用フィルムの製造方法の一例を示す図であって、二軸延伸フィルム製造装置のフロー図である。
図1に示すように、原料樹脂(結晶性ポリエステル)11は、押出機12(原料形状や、製造規模によって、二軸押出機を用いたり、単軸押出し機を用いたりする)内部で熱溶融、混練された後、Tダイ13から柔らかい板状(フィルム又はシート状)に吐出される。
次に、吐出されたフィルム又はシートFは、キャスティングロール14で冷却固化されて、製膜される。製膜されたフィルム又はシートF(「結晶性ポリエステルの成形体」に相当する)は、縦延伸機15に送られる。
そして、製膜されたフィルム又はシートFは、縦延伸機15内で再び加熱され、速度の異なるロール15a間で、縦に延伸される。この縦延伸により、フィルム又はシートFの内部に延伸方向に沿って空洞が形成される。そして、空洞が形成されたフィルム又はシートFは、横延伸機16の左右のクリップ16aで両端を把持されて、巻取機側(図示せず)へ送られながら横に延伸されて、コンデンサ用フィルム1となる。なお、前記工程において、縦延伸のみを行ったフィルム又はシートFを横延伸機16に供さず、空洞を有するコンデンサ用フィルム1として使用してもよい。
【0070】
(コンデンサ)
本発明のコンデンサとしては、前記コンデンサ用フィルムと、前記コンデンサ用フィルム上に金属層と、を有し、必要に応じてその他の成分を有する。
【0071】
前記金属層を構成する材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜変更することができるが、例えば、亜鉛、アルミニウム、錫、ニッケル、クロム、鉄、銅、チタンなどが挙げられる。
【0072】
前記金属層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜変更することができるが、例えば、箔、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、などが挙げられるが、生産性が高くコストが低いという点で蒸着法が好ましい。
【0073】
前記金属層の厚みとしては、0.05μm〜10μmが好ましく、0.1μm〜5μmがより好ましく、0.1μm〜1μmが特に好ましい。
前記厚みが、0.05μm未満であると、十分な導電性が得られないことがあり、10μmを超えると、セルフヒ−リング不良を発生し絶縁抵抗が悪化することがある。前記厚みは、透過型電子顕微鏡などで測定することができる。
【0074】
前記金属層の抵抗としては、0.5Ω/□〜10Ω/□が好ましく、2Ω/□〜8Ω/□がより好ましく、3Ω/□〜6Ω/□が特に好ましい。
前記抵抗が、0.5Ω/□未満であると、セルフヒ−リング不良を発生し絶縁抵抗が悪化することがあり、10Ω/□を超えると、直列等価抵抗が増大し誘電正接が悪化することがある。前記抵抗は、例えば、4端子法により、100mmの電極間の金属膜の抵抗を測定し、測定値を測定幅と電極間距離で除し、幅10mm、電極間距離10mm当たりの膜抵抗を算出することで測定することができる。
【0075】
前記コンデンサの形状としては、フィルムを捲廻す円筒型のコンデンサ、素子断面を楕円状に成形した扁平型のコンデンサ、フィルムを積み重ねた積層コンデンサなどが挙げられる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0077】
(作製例1)
<コンデンサ用フィルムの作製>
極限粘度(IV)が0.71であるPBT(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂(富士フイルム社製))を、溶融押出機(ムサシノキカイ社製)を用いて245℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚みが約90μmの結晶性ポリエステルの成形体を得た。その後、この成形体を40℃の加温雰囲気下で、510mm/minの速度で、ネッキング延伸で1軸延伸(縦延伸)することでコンデンサ用フィルム1を得た。
【0078】
<測定>
作製したコンデンサ用フィルム1の厚み、表面粗さRa、空洞の有無、空洞の配向方向、アスペクト比及び空洞の中心からコンデンサ用フィルムの表面までの最短距離(a)と、前記コンデンサ用フィルムの平均厚み(b)との比(a/b)、ハンドリング特性、金属蒸着層の厚みを以下のように測定した。結果を表1、表2に示す。
【0079】
−コンデンサ用フィルムの平均厚み
平均厚みについては、キーエンス社製、ロングレンジ接触式変位計AF030(測定部)、AF350(指示部)を用いて10点測定し、その平均値を平均厚みとした。
【0080】
−コンデンサ用フィルムの表面粗さRa−
光干渉式三次元形状解析装置(New View5022、Zygo社製)を用い、対物レンズ50倍でフィルムの表面粗さ(Ra)を測定した。
【0081】
−空洞の平均個数−
走査型電子顕微鏡(S−4800、日立ハイテクノロジー社製)により、コンデンサ用フィルム1の表面に垂直で、かつ、縦延伸方向に直角な断面を撮影した。また、前記走査型電子顕微鏡による検鏡により、空洞が縦延伸方向に沿って配向していることを確認した。
そして、断面写真において厚み方向に(コンデンサ用フィルム1の底面から上面にかけて)直線を引き、前記直線に接する空洞の個数を計測した。この作業を20本の直線について行い、平均の個数Pを求めた。
【0082】
−空洞の配向方向−
配向方向は、走査型電子顕微鏡(S−4800、日立ハイテクノロジー社製)により確認した。
【0083】
−アスペクト比−
コンデンサ用フィルムの表面に垂直で、かつ、縦延伸方向に直角な断面(図2B参照)と、前記コンデンサ用フィルムの表面に垂直で、かつ、前記縦延伸方向に平行な断面(図2C参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300〜3,000倍の適切な倍率で検鏡し、前記各断面写真において測定枠をそれぞれ設定した。この測定枠は、その枠内に空洞が50〜100個含まれるように設定した。また、前記走査型電子顕微鏡による検鏡により、空洞が縦延伸方向に沿って配向していることを確認した。
次に、測定枠に含まれる空洞の数を計測し、前記縦延伸方向に直角な断面の測定枠(図2B参照)に含まれる空洞の数をm個、前記縦延伸方向に平行な断面の測定枠(図2C参照)に含まれる空洞の数をn個とした。
そして、前記縦延伸方向に直角な断面の測定枠(図2B参照)に含まれる空洞の1個ずつの厚み(r)を測定し、その平均の厚さをrとした。また、前記縦延伸方向に平行な断面の測定枠(図2C参照)に含まれる空洞の1個ずつの長さ(L)を測定し、その平均の長さをLとした。
即ち、r及びLは、それぞれ下記の(2)式及び(3)式で表すことができる。
r=(Σr)/m ・・・(2)
L=(ΣL)/n ・・・(3)
そして、L/rを算出し、アスペクト比とした。
【0084】
−空洞の中心からコンデンサ用フィルムの表面までの最短距離(a)と、前記コンデンサ用フィルムの平均厚み(b)との比(a/b)−
前記比(a/b)は、走査型電子顕微鏡(S−4800、日立ハイテクノロジー社製) の画像において測長により測定した。
【0085】
−空洞含有率−
前記空洞含有率は、以下に示す式に基づいて求めた。

空洞含有率(%)={1−(延伸後のコンデンサ用フィルムの密度)/(延伸前の結晶性ポリエステルの密度)}

密度が1.05g/cm以上の場合は、5mm×5mmのコンデンサ用フィルムを密度勾配管を用いた密度勾配管法により測定を行った。密度勾配液は四塩化炭素とヘプタンの混合液を用いた。密度が1.05g/cm未満の場合は、コンデンサ用フィルムが密度勾配管にて浮くことを確認した後、フィルムの面積、平均厚み、重量を用いて計算により求めた。
【0086】
−金属蒸着層の厚み−
前記金属蒸着性は、サンプル小片を包埋樹脂で包埋し超薄切片作成後、透過型電子顕微鏡(JEM2010型 日本電子社製)、または断面作成し、走査型電子顕微鏡(S−4700型 日立ハイテクノロジー社製)により測定し、以下の評価基準で評価した。
[評価基準]
○:蒸着層が均一で、視認により鏡面状態である。
×:蒸着層が不均一で、視認より鏡面ではなくつやがない状態である。
【0087】
(作製例2)
<コンデンサ用フィルムの作製>
作製例1で作製したコンデンサ用フィルム1を横方向にテンターにより横延伸した。具体的には50℃の加温下、300mm/minで2倍に横延伸し、150℃で熱固定後冷却して巻き取ることでコンデンサ用フィルム2を得た。
作製したコンデンサ用フィルム2を作製例1と同様に測定した。結果を表1、表2に示す。
【0088】
(作製例3)
<コンデンサ用フィルムの作製>
極限粘度(IV)が0.69であるPET(ポリエチレンテレフタレート100%樹脂(富士フイルム社製))を、溶融押出機(ムサシノキカイ社製)を用いて295℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚みが約130μmの結晶性ポリエステルの成形体を得た。その後、この成形体を70℃の加温雰囲気下で、510mm/minの速度で、ネッキング延伸で1軸延伸(縦延伸)することでコンデンサ用フィルム3を得た。
作製したコンデンサ用フィルム3を作製例1と同様に測定した。結果を表1、表2に示す。
【0089】
(作製例4)
<コンデンサ用フィルムの作製>
作製例3で作製したコンデンサ用フィルム3を横方向にテンターにより横延伸した。具体的には120℃の加温下、300mm/minで4倍に横延伸し、200℃で熱固定後冷却して巻き取ることでコンデンサ用フィルム4を得た。
作製したコンデンサ用フィルム4を作製例1と同様に測定した。結果を表1、表2に示す。
【0090】
(作製例5)
<コンデンサ用フィルムの作製>
極限粘度(IV)が0.60であるPEN(ポリエチレンナフタレート100%樹脂(富士フイルム社製))を、溶融押出機(ムサシノキカイ社製)を用いて310℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚みが約80μmの結晶性ポリエステルの成形体を得た。この成形体を125℃の加温雰囲気下で、510mm/minの速度で、ネッキング延伸で1軸延伸(縦延伸)することでコンデンサ用フィルム5を得た。
作製したコンデンサ用フィルム5を作製例1と同様に測定した。結果を表1、表2に示す。
【0091】
(作製例6)
<コンデンサ用フィルムの作製>
作製例5で作製したコンデンサ用フィルム5を横方向にテンターにより横延伸した。具体的には157℃の加温下、50mm/minで3.3倍に横延伸し、220℃で熱処理後冷却して巻き取ることでコンデンサ用フィルム6を得た。
作製したコンデンサ用フィルム6を作製例1と同様に測定した。結果を表1、表2に示す。
【0092】
(作製例7)
<コンデンサ用フィルムの作製>
極限粘度(IV)が0.64であるPBS(ポリブチレンサクシネ−ト100%樹脂(富士フイルム社製))を、溶融押出機(ムサシノキカイ社製)を用いて150℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚みが約130μmの結晶性ポリエステルの成形体を得た。その後、この成形体を30℃の加温雰囲気下で、600mm/minの速度で、ネッキング延伸で1軸延伸(縦延伸)することでコンデンサ用フィルム7を得た。
作製したコンデンサ用フィルム7を作製例1と同様に測定した。結果を表1、表2に示す。
【0093】
(作製例8)
<コンデンサ用フィルムの作製>
作製例7で作製したコンデンサ用フィルム7を横方向にテンターにより横延伸した。具体的には50℃の加温下、50mm/minで3倍に横延伸し、90℃で熱処理後冷却して巻き取ることでコンデンサ用フィルム8を得た。
作製したコンデンサ用フィルム8を作製例1と同様に測定した。結果を表1、表2に示す。
【0094】
(作製例9)
<コンデンサ用フィルムの作製>
極限粘度(IV)が0.71であるPBT(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂(富士フイルム社製))を、溶融押出機(ムサシノキカイ社製)を用いて245℃でTダイより吐出させ冷却回転ドラムで急冷固化させて、厚みが約10μmの結晶性ポリエステルの成形体を得た。その後、この成形体を30℃の加温雰囲気下で、600mm/minの速度で、ネッキング延伸で1軸延伸(縦延伸)することでコンデンサ用フィルム9を得た。
作製したコンデンサ用フィルム9を作製例1と同様に測定した。結果を表1、表2に示す。
【0095】
(作製例10)
<コンデンサ用フィルムの作製>
極限粘度(IV)が0.71であるPBT(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂(富士フイルム社製))を、溶融押出機(ムサシノキカイ社製)を用いて245℃でTダイより吐出させ冷却回転ドラムで急冷固化させて、厚みが約140μmの結晶性ポリエステルの成形体を得た。その後、この成形体を30℃の加温雰囲気下で、570mm/minの速度で、ネッキング延伸で1軸延伸(縦延伸)することでコンデンサ用フィルム10を得た。
作製したコンデンサ用フィルム10を作製例1と同様に測定した。結果を表1、表2に示す。
【0096】
(作製例11)
<コンデンサ用フィルムの作製>
極限粘度(IV)が0.71であるPBT(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂(富士フイルム社製))に、平均径0.3μmの球状炭酸カルシウムを5重量%混合し溶融押出機(ムサシノキカイ社製)を用いて245℃でTダイより吐出させ冷却回転ドラムで急冷固化させて、厚みが約140μmの結晶性ポリエステルの成形体を得た。その後、この成形体を30℃の加温雰囲気下で、570mm/minの速度で、ネッキング延伸で1軸延伸(縦延伸)することでコンデンサ用フィルム11を得た。
作製したコンデンサ用フィルム11を作製例1と同様に測定した。結果を表1、表2に示す。
【0097】
(比較作製例1)
<コンデンサ用フィルムの作製>
作製例1において、厚みが約90μmの結晶性ポリエステルの成形体を厚みが約10μmの結晶性ポリエステルの成形体とし、この結晶性ポリエステルの成形体をコンデンサ用フィルム12とした。
作製したコンデンサ用フィルム12を作製例1と同様に測定した。結果を表1、表2に示す。
【0098】
(比較作製例2)
<コンデンサ用フィルムの作製>
比較作製例1で作製したコンデンサ用フィルム7を縦方向に1軸延伸した。具体的には、60℃の加温雰囲気下で、410mm/minの速度で1軸延伸することで空洞のないコンデンサ用フィルム13を得た。
作製したコンデンサ用フィルム13を作製例1と同様に測定した。結果を表1、表2に示す。
【0099】
(比較作製例3)
<コンデンサ用フィルムの作製>
極限粘度(IV)が0.69であるPET(ポリエチレンテレフタレート100%樹脂(富士フイルム社製))を、溶融押出機(ムサシノキカイ社製)を用いて295℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚みが約80μmの結晶性ポリエステルの成形体を得た。この成形体を120℃の加温雰囲気下で、300mm/minの速度で3.3倍に1軸延伸(縦延伸)し、更に160℃の加温雰囲気下で3.4倍に横延伸し、更に200℃で熱固定することでコンデンサ用フィルム14を得た。
作製したコンデンサ用フィルム14を作製例1と同様に測定した。結果を表1、表2に示す。
【0100】
(比較作製例4)
<コンデンサ用フィルムの作製>
テレフタル酸166質量部とエチレングリコール75質量部を用いた通常のエステル化反応により得た低重合体に、着色防止剤としてリン酸85%水溶液を0.03質量部、重縮合触媒として三酸化アンチモンを0.06質量部添加して重縮合反応を行い、極限粘度(IV)=0.66のポリエチレンテレフタレートを得た。このポリエチレンテレフタレート100質量部に対し、ポリメチルペンテン(三井化学社製、TPX、タイプRT18、以下PMPと略記する。)15質量部をチップ状態のままドライブレンドしたものをホッパーに充填した。続いて、溶融押出機を用いて285℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚み2,000μmのポリマー成形体(ポリマーフィルム)を作製した。続いて、このポリマー成形体(ポリマーフィルム)を通常の逐次2軸延伸装置にて製膜した。
具体的には、赤外線ヒ−タにより90℃の加温雰囲気下で、周速比3.3倍で縦延伸を行い、ついで横方向にテンターにより130℃の加熱雰囲気下で3.5倍に横延伸後220℃で熱固定した後、幅方向に4%弛緩させ冷却し巻き取り、厚み170μmの樹脂フィルム7(独立した空洞を有する樹脂フィルム7)を作製した。
作製したコンデンサ用フィルム15を作製例1と同様に測定した。結果を表1、表2に示す。
【0101】
(比較作製例5)
<コンデンサ用フィルムの作製>
極限粘度(IV)が0.60であるPEN(ポリエチレンナフタレート100%樹脂(富士フイルム社製))を、溶融押出機(ムサシノキカイを用いて310℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚みが約80μmの結晶性ポリエステルの成形体を得た。この成形体を140℃の加熱雰囲気下で、30mm/minの速度で、3.15倍に1軸延伸(縦延伸)し、更に180℃の加熱雰囲気下で150mm/minの速度で、3.3倍に横延伸し、更に220℃で熱固定することでコンデンサ用フィルム16を得た。
作製したコンデンサ用フィルム16を作製例1と同様に測定した。結果を表1、表2に示す。
【0102】
(比較作製例6)
<コンデンサ用フィルムの作製>
フィルム厚さ150μmの未延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)に、二酸化炭素を浸透圧力60kg/cmで浸透させた。このフィルムを2枚の厚さが20μmのSPSフィルムで挟んで、ラミネート温度200℃でラミネートした。このラミネート工程において、ラミネートする際の加熱によって、含浸している二酸化炭素が発泡し多孔質なプラスチック部が形成された。発泡後、2枚のSPSフィルムを剥がし、全体として空孔率約36体積%、厚み200μmのプラスチック発泡フィルムがコンデンサ用フィルム17を得た。
【0103】
作製したコンデンサ用フィルム17を作製例1と同様に測定した。結果を表1、表2に示す。
【0104】
(実施例1)
<コンデンサ1の作製>
斉藤幸男、武祐一郎 共編、“電気絶縁紙”、(株)コロナ社(1969)、P476−484 に記載されている方法で作製した。
コンデンサ用フィルム1上に、アルミニウムを2.5Ω/□となるように真空蒸着装置(商品名:VPC−410、アルバック機工株式会社製)にて蒸着を行った。なお、蒸着を行うに際して、コンデンサ用フィルム1の長手方向の両端に幅が約2mmの非蒸着部分(マージン)を有するように蒸着させた。
次に、JIS C 2318に示す方法に準じて、2枚の12mm幅にスリットしたテープ状のコンデンサ用フィルム1を、それぞれ非マージン端部がわずかに外側にはみでるようにずらして重ねて巻回すことで有効面積が10,000mmとなるように巻取り、コンデンサ1を作製した。
【0105】
<測定>
作製したコンデンサ1の誘電正接、静電容量、及び耐電圧は、JIS C5102 に準拠した方法で測定した。作製したコンデンサ1の誘電正接及び静電容量は、1kHz、1Vで測定した。耐電圧は、コンデンサ1の両電極間に直流電圧を100V/secで昇圧しながら印加していき絶縁破壊を起こした時の電圧を絶縁破壊電圧とした。ここで、両電極間に10mA以上の電流が流れた時を絶縁破壊が発生したものとした。
耐電圧は、220V/μm以上が好ましく、240V/μm以上が特に好ましい。結果を表2に示す。
【0106】
(実施例2)
<コンデンサ2の作製>
実施例1において、コンデンサ用フィルム1をコンデンサ用フィルム2に代えた以外は実施例1と同様にして、コンデンサ2を作製した。
作製したコンデンサ2を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0107】
(実施例3)
<コンデンサ3の作製>
実施例1において、コンデンサ用フィルム1をコンデンサ用フィルム3に代えた以外は実施例1と同様にして、コンデンサ3を作製した。
作製したコンデンサ3を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0108】
(実施例4)
<コンデンサ4の作製>
実施例1において、コンデンサ用フィルム1をコンデンサ用フィルム4に代えた以外は実施例1と同様にして、コンデンサ4を作製した。
作製したコンデンサ4を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0109】
(実施例5)
<コンデンサ5の作製>
実施例1において、コンデンサ用フィルム1をコンデンサ用フィルム5に代えた以外は実施例1と同様にして、コンデンサ5を作製した。
作製したコンデンサ5を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0110】
(実施例6)
<コンデンサ6の作製>
実施例1において、コンデンサ用フィルム1をコンデンサ用フィルム6に代えた以外は実施例1と同様にして、コンデンサ6を作製した。
作製したコンデンサ6を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0111】
(実施例7)
<コンデンサ7の作製>
実施例1において、コンデンサ用フィルム1をコンデンサ用フィルム7に代えた以外は実施例1と同様にして、コンデンサ7を作製した。
作製したコンデンサ7を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0112】
(実施例8)
<コンデンサ8の作製>
実施例1において、コンデンサ用フィルム1をコンデンサ用フィルム8に代えた以外は実施例1と同様にして、コンデンサ8を作製した。
作製したコンデンサ8を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0113】
(実施例9)
<コンデンサ9の作製>
実施例1において、コンデンサ用フィルム1をコンデンサ用フィルム9に代えた以外は実施例1と同様にして、コンデンサ9を作製した。
作製したコンデンサ9を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0114】
(実施例10)
<コンデンサ10の作製>
実施例1において、コンデンサ用フィルム1をコンデンサ用フィルム10に代えた以外は実施例1と同様にして、コンデンサ10を作製した。
作製したコンデンサ10を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0115】
(実施例11)
<コンデンサ11の作製>
実施例1において、コンデンサ用フィルム1をコンデンサ用フィルム11に代えた以外は実施例1と同様にして、コンデンサ11を作製した。
作製したコンデンサ11を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0116】
(比較例1)
<コンデンサ12の作製>
実施例1において、コンデンサ用フィルム1をコンデンサ用フィルム12に代えた以外は実施例1と同様にして、コンデンサ12を作製した。
作製したコンデンサ12を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0117】
(比較例2)
<コンデンサ13の作製>
実施例1において、コンデンサ用フィルム1をコンデンサ用フィルム13に代えた以外は実施例1と同様にして、コンデンサ13を作製した。
作製したコンデンサ13を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0118】
(比較例3)
<コンデンサ14の作製>
実施例1において、コンデンサ用フィルム1をコンデンサ用フィルム14に代えた以外は実施例1と同様にして、コンデンサ14を作製した。
作製したコンデンサ14を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0119】
(比較例4)
<コンデンサ15の作製>
実施例1において、コンデンサ用フィルム1をコンデンサ用フィルム15に代えた以外は実施例1と同様にして、コンデンサ15を作製した。
作製したコンデンサ15を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0120】
(比較例5)
<コンデンサ16の作製>
実施例1において、コンデンサ用フィルム1をコンデンサ用フィルム16に代えた以外は実施例1と同様にして、コンデンサ16を作製した。
作製したコンデンサ16を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0121】
(比較例6)
<コンデンサ17の作製>
実施例1において、コンデンサ用フィルム1をコンデンサ用フィルム17に代えた以外は実施例1と同様にして、コンデンサ17を作製した。
作製したコンデンサ17を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0122】
【表1】

(表中、MDとは、フィルムの長手方向を表す。)
【表2】

【0123】
表1、表2から、作製例1〜作製例11のコンデンサ用フィルムは、表面まで空洞が達していないことから、表面粗さRaが低いことがわかる。このため、コンデンサ用フィルム上に直接金属を蒸着させることができる。また、実施例1〜実施例11は、比誘電率が低く、誘電正接も低いことがわかる。また、静電容量及び耐電圧が高いことから、実施例1〜11で使用しているコンデンサ用フィルムは、コンデンサへの用途に優れていることがわかる。一方、比較例1〜比較例6は、実施例1〜実施例11よりも比誘電率及び誘電正接が高く、静電容量が低いことがわかる。また、比較例4及び比較例6では、蒸着はできるが蒸着面が均一ではないので、静電容量などが著しく劣るものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明のコンデンサ用フィルムは、比誘電率、誘電正接が低く、耐電圧に優れていることから、コンデンサへの用途として有用である。
【符号の説明】
【0125】
1 コンデンサ用フィルム
1a 表面
11 原料
12 2軸押出機/単軸押出機
13 Tダイ
14 キャスティングロール
15 縦延伸機
15a ロール
16 横延伸機
16a クリップ
100 空洞
F フィルム又はシート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリエステルからなり、表面に露出しない状態で内部に空洞を有するコンデンサ用フィルムであって、
前記空洞の中心から前記コンデンサ用フィルムの表面までの最短距離(a)と、前記コンデンサ用フィルムの平均厚み(b)とが、a/b≧0.01の関係を満たすことを特徴とするコンデンサ用フィルム。
【請求項2】
結晶性ポリエステルが、脂肪族ジカルボン酸とグリコール成分との重縮合反応により得られる請求項1に記載のコンデンサ用フィルム。
【請求項3】
コンデンサ用フィルムの少なくとも一面の表面粗さRaが、400nm以下である請求項1から2のいずれかに記載のコンデンサ用フィルム。
【請求項4】
平均厚みが、1.5μm〜25μmである請求項1から3のいずれかに記載のコンデンサ用フィルム。
【請求項5】
空洞が、一方向に配向している請求項1から4のいずれかに記載のコンデンサ用フィルム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のコンデンサ用フィルムと、金属層と、を有することを特徴とするコンデンサ。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載のコンデンサ用フィルムの製造方法であって、
溶融混練した結晶性ポリエステルをダイから押し出す押出工程と、
押し出された前記結晶性ポリエステルを未延伸の状態で冷却し、未延伸結晶性ポリエステル成形体を成形する工程と、
前記未延伸結晶性ポリエステル成形体を延伸する工程と、を含むことを特徴とするコンデンサ用フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公開番号】特開2011−184579(P2011−184579A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51692(P2010−51692)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】