説明

コンデンサ

【課題】設置スペースを小さくし、かつ冷凍サイクルにおける冷媒封入量を早い段階で適正封入量としうるコンデンサを提供する。
【解決手段】コンデンサ1の一端部側に、第3および第4熱交換パスP3,P4の第1熱交換管2Aを接続する第1ヘッダタンク3と、第1および第2熱交換パスの第2熱交換管2Bを接続する第2ヘッダタンク4とを設け、前者の上端を後者の下端よりも上方に位置させる。第1ヘッダタンク3内に、第1ヘッダタンク3内から第4熱交換パスP4の第1熱交換管2A内への液相冷媒の流れを促進する分流制御手段23を設ける。分流制御手段23は、第4熱交換パスP4の第1熱交換管2Aが通じる密閉状冷媒流入空間24と、冷媒流入空間24の外側の液溜まり空間26とを形成する空間形成部材25を備えている。空間形成部材25に、冷媒流入空間24の下側部分と液溜まり空間26とを通じさせる連通部29を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば自動車に搭載される冷凍サイクルであるカーエアコンに好適に用いられるコンデンサに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、上下、左右は図1の上下、左右をいうものとする。
【背景技術】
【0003】
たとえばカーエアコンのコンデンサとして、上下方向に間隔をおいて並列状に配置された複数の熱交換管と、熱交換管の左右両端部が接続された上下方向にのびるヘッダタンクとを備え、上下に連続して並んだ複数の熱交換管からなる熱交換パスが上下に並んで3つ設けられ、各熱交換パスを構成する全ての熱交換管の冷媒流れ方向が同一となっているとともに、隣り合う2つの熱交換パスの熱交換管の冷媒流れ方向が異なっているコンデンサであって、左右いずれか一端部側に、下端の熱交換パスを構成する熱交換管が接続される第1ヘッダタンクと、下端の熱交換パスを除いた熱交換パスを構成する熱交換管が接続される第2ヘッダタンクとが別個に設けられ、第2ヘッダタンクが第1ヘッダタンク上に配置され、第1ヘッダタンクの太さが第2ヘッダタンクの太さよりも極めて大きくなっていつとともに、第1ヘッダタンク内に乾燥剤が配置され、これにより第1ヘッダタンクが重力を利用して気液を分離しかつ液を溜める受液器としての機能を有し、第1ヘッダタンクに接続された第1の熱交換管および第2ヘッダタンクに接続された第2の熱交換管の長さが等しくなっているとともに、第1熱交換管の第1ヘッダタンク側の端部および第2熱交換管の第2ヘッダタンク側の端部が同一垂直線上に位置し、すべての熱交換パスが、冷媒を凝縮させる冷媒凝縮パスとなっているコンデンサが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1記載のコンデンサにおいて、第1ヘッダタンク内での気液分離を効果的に行うには、第1ヘッダタンクの内容積を第2ヘッダタンクに比べてかなり大きくする必要があるので、第1ヘッダタンクの太さが第2ヘッダタンクの太さに比較してかなり大きくなっており、コンデンサを配置するために大きなスペースが必要になるという問題がある。
【0005】
また、通常、コンデンサの近傍には、他の機器が配置されるが、特許文献1記載のコンデンサによれば、第1ヘッダタンクが他の機器の邪魔になる。たとえば、カーエアコン用のコンデンサの通風方向下流側にはラジエータが配置されることが一般的であるが、特許文献1記載のコンデンサによれば、第1ヘッダタンクがラジエータ設置の邪魔になり、エンジンルーム内で無駄なスペースが生じ、省スペース化を図ることができない。しかも、第1ヘッダタンクのほぼ全長にわたって熱交換管が接続されているので、気液分離性能が十分ではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平3−31266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、上記問題を解決し、特許文献1記載のコンデンサに比較して設置スペースを小さくすることができるとともに、冷凍サイクルにおける冷媒封入量を早い段階で適正封入量とすることができるコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0009】
1)上下方向に間隔をおいて並列状に配置された左右方向にのびる複数の熱交換管と、熱交換管の左右両端部が接続された上下方向にのびるヘッダタンクとを備え、上下に連続して並んだ複数の熱交換管からなる熱交換パスが上下に並んで3以上設けられているコンデンサであって、
上端の熱交換パスを含みかつ連続して並んだ少なくとも2つの熱交換パスからなるグループを有するとともに、前記グループの下方に少なくとも1つの熱交換パスが設けられ、前記グループにおいて、冷媒が、上下いずれか一端の熱交換パスから同他端の熱交換パスに向かって流れるようになされ、左右いずれか一端部側に、前記グループにおける冷媒流れ方向最下流側の熱交換パスを構成する第1の熱交換管、および前記グループよりも下方に設けられた熱交換パスを構成する第1の熱交換管が接続される第1ヘッダタンクと、残りの全熱交換パスを構成する第2の熱交換管が接続される第2ヘッダタンクとが設けられ、第1ヘッダタンクが、第2ヘッダタンクよりも左右方向外側に配置されるとともに、第1ヘッダタンクの上端が第2ヘッダタンクの下端よりも上方に位置しており、第1ヘッダタンクが気液を分離して液を溜める機能を有し、前記グループの全熱交換パスが、冷媒を凝縮させる冷媒凝縮パスであり、前記グループよりも下方に位置する熱交換パスが、冷媒を過冷却する冷媒過冷却パスであり、第1ヘッダタンク内に、第1ヘッダタンク内から冷媒過冷却パスを構成する第1熱交換管内への液相冷媒の流れを促進する分流制御手段が設けられているコンデンサ。
【0010】
2)分流制御手段が、第1ヘッダタンク内の左右方向内側部分における前記グループに隣接する冷媒過冷却パスと対応する高さ位置に設けられ、かつ当該冷媒過冷却パスの第1熱交換管に通じるとともに当該第1熱交換管内に冷媒を流入させる密閉状の冷媒流入空間、および第1ヘッダタンク内における冷媒流入空間よりも左右方向外側部分に設けられ、かつ第1ヘッダタンク内における第2ヘッダタンクの下端よりも上方に突出した部分に通じる液溜まり空間を形成する空間形成部材を備えており、空間形成部材に、冷媒流入空間の下側部分と液溜まり空間とを通じさせる連通部が設けられている上記1)記載のコンデンサ。
【0011】
3)空間形成部材が、長さ方向を上下方向に向けるとともに、第1ヘッダタンク内を左右方向内側部分と同外側部分とに区画する仕切壁と、仕切壁の上下両端に設けられ、かつ仕切壁よりも左右方向内側部分の空間の上下両端開口を閉鎖する上下両閉鎖壁とを有し、仕切壁および上下両閉鎖壁によって冷媒流入空間が形成され、冷媒流入空間の下側部分と液溜まり空間とを通じさせる連通部が、仕切壁に貫通状に形成された連通穴からなる上記2)記載のコンデンサ。
【0012】
4)連通部が、冷媒流入空間に通じる第1熱交換管が配置されている上下方向の範囲の上下方向中央部よりも下方に設けられている上記2)または3)記載のコンデンサ。
【0013】
5)空間形成部材が、長さ方向を上下方向に向けるとともに、第1ヘッダタンク内を左右方向内側部分と同外側部分とに区画する仕切壁と、仕切壁の上下両端に設けられ、かつ仕切壁よりも左右方向内側部分の空間の上下両端開口を閉鎖する上下両閉鎖壁とを有し、仕切壁および上下両閉鎖壁によって冷媒流入空間が形成され、冷媒流入空間の下側部分と液溜まり空間とを通じさせる連通部が、下閉鎖壁に貫通状に形成された連通穴からなる上記2)記載のコンデンサ。
【0014】
6)前記グループにおいて、冷媒が、上端の熱交換パスから下端の熱交換パスに向かって流れるようになされ、第1ヘッダタンクの下端が第2ヘッダタンクの下端よりも下方に位置しており、第1ヘッダタンクにおける第2ヘッダタンクよりも下方に位置する部分に、前記グループの下端の熱交換パス、および前記グループよりも下方に設けられた熱交換パスを構成する第1熱交換管が接続されている上記1)〜5)のうちのいずれかに記載のコンデンサ。
【0015】
7)第1ヘッダタンクに2つの熱交換パスを構成する第1熱交換管が接続され、第2ヘッダタンクに少なくとも2つの熱交換パスを構成する第2熱交換管が接続されている上記1)〜6)のうちのいずれかに記載のコンデンサ。
【発明の効果】
【0016】
上記1)〜7)のコンデンサによれば、上端の熱交換パスを含みかつ連続して並んだ少なくとも2つの熱交換パスからなるグループを有するとともに、前記グループの下方に少なくとも1つの熱交換パスが設けられ、前記グループにおいて、冷媒が、上下いずれか一端の熱交換パスから同他端の熱交換パスに向かって流れるようになされ、左右いずれか一端部側に、前記グループにおける冷媒流れ方向最下流側の熱交換パスを構成する第1の熱交換管、および前記グループよりも下方に設けられた熱交換パスを構成する第1の熱交換管が接続される第1ヘッダタンクと、残りの全熱交換パスを構成する第2の熱交換管が接続される第2ヘッダタンクとが設けられ、第1ヘッダタンクが、第2ヘッダタンクよりも左右方向外側に配置されるとともに、第1ヘッダタンクの上端が第2ヘッダタンクの下端よりも上方に位置しており、第1ヘッダタンクが気液を分離して液を溜める機能を有しているので、第1ヘッダタンクの上端を、たとえば第2ヘッダタンクの上端近傍まで上方に延ばすことによって、特許文献1記載のコンデンサに比べて、第1ヘッダタンクの太さを第2ヘッダタンクの太さよりも大きくすることなく、第1ヘッダタンクの内容積を、気液分離を効果的に行いうる大きさにすることができる。したがって、コンデンサを配置するためのスペースを、特許文献1記載のコンデンサに比べて小さくすることができる。その結果、省スペース化を図ることが可能になる。また、第1ヘッダタンクにおける熱交換管が接続された部分よりも上方に空間が存在するので、重力による気液分離効果が優れたものになる。
【0017】
また、前記グループの全熱交換パスが、冷媒を凝縮させる冷媒凝縮パスであり、前記グループよりも下方に位置する熱交換パスが、冷媒を過冷却する冷媒過冷却パスであり、第1ヘッダタンク内に、第1ヘッダタンク内から冷媒過冷却パスを構成する第1熱交換管内への液相冷媒の流れを促進する分流制御手段が設けられているので、冷媒封入の際に、液相冷媒が、第1ヘッダタンク内から冷媒過冷却パスを構成する第1熱交換管内に速やかに流入する。したがって、冷媒過冷却パスの第1熱交換管内を早い段階で液相冷媒で満たすことが可能になって、冷凍サイクルにおける冷媒封入量を、早い段階で、過冷度が一定となる適正封入量とすることが可能になる。しかも、過冷度が一定となる安定化域の幅、すなわち過冷度が一定となる冷媒封入量の幅が広くなるので、負荷変動や冷媒洩れに対してより安定した過冷特性が得られる。
【0018】
上記2)のコンデンサによれば、第1ヘッダタンク内における第2ヘッダタンクの下端よりも上方に突出した部分に通じる液溜まり空間内の圧力が冷媒流入空間内の圧力よりも高くなるので、液溜まり空間内に溜まった液相冷媒の液面が、前記グループに隣接する冷媒過冷却パスの上端の第1熱交換管よりも上方に達する以前に、冷媒流入空間内を液相冷媒で満たすことができるとともに、冷媒過冷却パスを構成する第1熱交換管内を液相冷媒で満たすことができる。したがって、冷媒過冷却パスの第1熱交換管内を早い段階で液相冷媒で満たすことが可能になって、冷凍サイクルにおける冷媒封入量を、早い段階で、過冷度が一定となる適正封入量とすることが可能になる。
【0019】
上記3)のコンデンサによれば、分流制御手段の空間形成部材を比較的簡単に構成することができる。
【0020】
上記7)のコンデンサによれば、下端に位置する冷媒凝縮パスを構成する複数の熱交換管から第1ヘッダタンク内に冷媒が流入し、第1ヘッダタンク内で気液を分離するので、圧力降下の発生を抑制して液相冷媒の再気化を防止することができる。
【0021】
また、上記7)のコンデンサによれば、下端に位置する冷媒凝縮パスを構成する複数の熱交換管から第1ヘッダタンク内に冷媒が流入し、第1ヘッダタンク内で気液を分離するので、第1ヘッダタンク内で気液分離を効率良く行うことができる。すなわち、冷媒凝縮パスを構成する複数の熱交換管のうちの上側の熱交換管内には気相成分の多い気液混相冷媒が流れ、同じく下側の熱交換管内には液相成分の多い気液混相冷媒が流れるが、これらの気液混相冷媒が混じり合うことなく第1ヘッダタンク内に流入するので、気液分離を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明によるコンデンサの第1の実施形態の全体構成を具体的に示す正面図である。
【図2】図1に示すコンデンサを模式的に示す正面図である。
【図3】図1に示すコンデンサの第1ヘッダタンクの部分を拡大して示す一部を省略した垂直断面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】図1に示すコンデンサを有するカーエアコンに冷媒を封入する際のコンデンサにおける冷媒の流れを模式的に示す図2の一部に相当する図である。
【図6】図1に示すコンデンサを用いて行った実験結果を示すグラフである。
【図7】この発明によるコンデンサの第2の実施形態を示す図3相当の図である。
【図8】この発明によるコンデンサの第3の実施形態を示す図3相当の図である。
【図9】図8に示すコンデンサの第1ヘッダタンクの下側部分を拡大して示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
以下の説明において、図1の紙面裏側(図4の上側)を前、これと反対側を後というものとする。
【0025】
また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0026】
図1はこの発明によるコンデンサの第1の実施形態の全体構成を具体的に示し、図2は図1のコンデンサを模式的に示す。図2においては、個々の熱交換管の図示は省略されるとともに、コルゲートフィン、サイドプレート、冷媒入口部材および冷媒出口部材の図示も省略されている。また、図3および図4は図1のコンデンサの要部の構成を示す。
【0027】
図1および図2において、コンデンサ(1)は、幅方向を前後方向に向けるとともに長さ方向を左右方向に向けた状態で上下方向に間隔をおいて配置された複数のアルミニウム製扁平状熱交換管(2A)(2B)と、熱交換管(2A)(2B)の左右両端部がろう付により接続された上下方向にのびる3つのアルミニウム製ヘッダタンク(3)(4)(5)と、隣り合う熱交換管(2A)(2B)どうしの間および上下両端の熱交換管(2A)(2B)の外側に配置されて熱交換管(2A)(2B)にろう付されたアルミニウム製コルゲートフィン(6A)(6B)と、上下両端のコルゲートフィン(6A)(6B)の外側に配置されてコルゲートフィン(6A)(6B)にろう付されたアルミニウム製サイドプレート(7)とを備えており、上下に連続して並んだ複数の熱交換管(2A)(2B)からなる熱交換パス(P1)(P2)(P3)(P4)が上下に並んで3以上、ここでは4つ設けられている。4つの熱交換パスを、上から順に第1〜第4熱交換パス(P1)(P2)(P3)(P4)というものとする。各熱交換パス(P1)(P2)(P3)(P4)を構成する全ての熱交換管(2A)(2B)の冷媒流れ方向が同一となっているとともに、隣り合う2つの熱交換パスの熱交換管(2A)(2B)の冷媒流れ方向が異なっている。
【0028】
すなわち、コンデンサ(1)は、上端の第1熱交換パス(P1)を含みかつ連続して並んだ少なくとも2つ、ここでは3つの第1〜第3熱交換パス(P1)(P2)(P3)からなるグループ(G)を有するとともに、グループ(G)の下方に少なくとも1つ、ここでは1つの第4熱交換パス(P4)が設けられている。第1〜第3熱交換パス(P1)(P2)(P3)からなるグループ(G)において、冷媒は、上端の第1熱交換パス(P1)から下端の第3熱交換パス(P3)に向かって流れる。
【0029】
コンデンサ(1)の左端側には、グループ(G)の冷媒流れ方向最下流側に位置する下端の熱交換パスおよびグループ(G)よりも下方に位置する熱交換パス、ここでは第3および第4熱交換パス(P3)(P4)を構成する熱交換管(2A)がろう付により接続された第1ヘッダタンク(3)と、残りの全熱交換パス、ここでは第1および第2熱交換パス(P1)(P2)を構成する熱交換管(2B)がろう付により接続された第2ヘッダタンク(4)とが別個に設けられている。なお、第1ヘッダタンク(3)の下端は第2ヘッダタンク(4)の下端よりも下方に位置しており、第1ヘッダタンク(3)における第2ヘッダタンク(4)よりも下方に位置する部分に、第3および第4熱交換パス(P3)(P4)を構成する熱交換管(2A)がろう付により接続されている。
【0030】
ここで、第1ヘッダタンク(3)に接続された熱交換管(2A)が第1熱交換管であり、第2ヘッダタンク(4)に接続された熱交換管(2B)が第2熱交換管である。なお、隣り合う第1熱交換管(2A)どうしの間および下端の第1熱交換管(2A)と下側サイドプレート(7)との間に配置されたコルゲートフィン(6A)を第1コルゲートフィンといい、隣り合う第2熱交換管(2B)どうしの間および上端の第2熱交換管(2B)と上側サイドプレート(7)との間に配置されたコルゲートフィン(6B)を第2コルゲートフィンというものとする。
【0031】
第1ヘッダタンク(3)と第2ヘッダタンク(4)との前後方向の寸法はほぼ等しくなっているが、水平断面積は第1ヘッダタンク(3)の方が第2ヘッダタンク(4)よりも大きくなっている。第1ヘッダタンク(3)は第2ヘッダタンク(4)よりも左方(左右方向外側)に配置されており、第1ヘッダタンク(3)の左右方向の中心が第2ヘッダタンク(4)の左右方向の中心よりも左右方向外側に位置しているとともに、第1および第2ヘッダタンク(3)(4)の前後方向の中心は左右方向にのびる同一垂直平面上に位置している。したがって、第1ヘッダタンク(3)と第2ヘッダタンク(4)とは、平面から見て重なることなくずれている。また、第1ヘッダタンク(3)の上端は第2ヘッダタンク(4)の下端よりも上方、ここでは第2ヘッダタンク(4)の上端とほぼ同一高さ位置にあり、第1ヘッダタンク(3)が、重力を利用して気液を分離しかつ液を溜める受液部としての機能を有している。すなわち、第1ヘッダタンク(3)の内容積は、第1ヘッダタンク(3)内に流入した気液混相冷媒のうち液相主体混相冷媒が重力により第1ヘッダタンク(3)内の下部に溜まるとともに、気液混相冷媒のうちの気相成分が重力により第1ヘッダタンク(3)内の上部に溜まり、これにより第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)内には液相主体混相冷媒が流入するような内容積となっている。
【0032】
コンデンサ(1)の右端部側には、第1〜第4熱交換パス(P1)〜(P4)を構成するすべての熱交換管(2A)(2B)が接続される第3ヘッダタンク(5)が配置されている。第3ヘッダタンク(5)の横断面形状は第2ヘッダタンク(4)と同一である。第3ヘッダタンク(5)内は、第1熱交換パス(P1)と第2熱交換パス(P2)との間の高さ位置、および第3熱交換パス(P3)と第4熱交換パス(P4)との間の高さ位置にそれぞれ設けられたアルミニウム製仕切板(8)(9)により上側ヘッダ部(11)と、中間ヘッダ部(12)と、下側ヘッダ部(13)とに区画されている。第1熱交換パス(P1)の第2熱交換管(2B)の左端部は第2ヘッダタンク(4)に、同右端部は第3ヘッダタンク(5)の上側ヘッダ部(11)にそれぞれ接続され、第2熱交換パス(P2)の第2熱交換管(2B)の左端部は第2ヘッダタンク(4)に、同右端部は第3ヘッダタンク(5)の中間ヘッダ部(12)にそれぞれ接続され、第3熱交換パス(P3)の第1熱交換管(2A)の左端部は第1ヘッダタンク(3)に、同右端部は第3ヘッダタンク(5)の中間ヘッダ部(12)にそれぞれ接続され、第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)の左端部は第1ヘッダタンク(3)に、同右端部は第3ヘッダタンク(5)の下側ヘッダ部(13)にそれぞれ接続されている。
【0033】
そして、第2ヘッダタンク(4)、第1ヘッダタンク(3)における第3熱交換パス(P3)の第1熱交換管(2A)が接続された部分、第3ヘッダタンク(5)の上側ヘッダ部(11)および中間ヘッダ部(12)、ならびに第1〜第3熱交換パス(P1)〜(P3)により冷媒を凝縮させる凝縮部(1A)が形成され、第1ヘッダタンク(3)における第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)が接続された部分、第3ヘッダタンク(5)の下側ヘッダ部(13)および第4熱交換パス(P4)により冷媒を過冷却する過冷却部(1B)が形成され、グループ(G)の全熱交換パスである第1〜第3熱交換パス(P1)〜(P3)が冷媒を凝縮させる冷媒凝縮パスとなっているとともに、グループ(G)よりも下方に位置する第4熱交換パス(P4)が冷媒を過冷却する冷媒過冷却パスとなっている。
【0034】
凝縮部(1A)を構成する第3ヘッダタンク(5)の上側ヘッダ部(11)に冷媒入口(14)が形成され、過冷却部(1B)を構成する第3ヘッダタンク(5)の下側ヘッダ部(13)に冷媒出口(15)が形成されている。そして、第3ヘッダタンク(5)に、冷媒入口(14)に通じる冷媒入口部材(16)および冷媒出口(15)に通じる冷媒出口部材(17)が接合されている。
【0035】
第3熱交換パス(P3)の上端の第1熱交換管(2A)と第2熱交換パス(P2)の下端の第2熱交換管(2B)との間に、これらの熱交換管(2A)(2B)と離隔するとともに、両熱交換管(2A)(2B)とほぼ平行になるように、左右方向にのびるアルミニウム製中間部材(18)が配置されている。第3熱交換パス(P3)の上端の第1熱交換管(2A)と中間部材(18)との間には第1コルゲートフィン(6A)が配置されて第1熱交換管(2A)および中間部材(18)にろう付され、第2熱交換パス(P2)の下端の第2熱交換管(2B)と中間部材(18)との間には第2コルゲートフィン(6B)が配置されて第2熱交換管(2B)および中間部材(18)にろう付されている。中間部材(18)の左右両端部は、第1ヘッダタンク(3)および第3ヘッダタンク(5)に近接した位置にあって第1ヘッダタンク(3)および第3ヘッダタンク(5)内には挿入されていない。
【0036】
第1ヘッダタンク(3)は、両端が開口した円筒状体および円筒状体の下端部にろう付された底部材からなり、かつ上端が開口するとともに下端が閉鎖されたアルミニウム製筒状本体(21)と、筒状本体(21)の上端部に着脱自在に取り付けられて筒状本体(21)の上端開口を閉鎖する閉鎖部材(22)とにより構成されている。
【0037】
図3および図4に示すように、第1ヘッダタンク(3)内に、第3熱交換パス(P3)の第1熱交換管(2A)から第1ヘッダタンク(3)内への液相冷媒の流れを促進する第1の分流制御手段(20)と、第1ヘッダタンク(3)内から冷媒過冷却パスである第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)内への液相冷媒の流れを促進する第2の分流制御手段(23)とが設けられている。
【0038】
第1分流制御手段(20)および第2分流制御手段(23)は、第1ヘッダタンク(3)内の左右方向内側部分における第3熱交換パス(P3)と対応する高さ位置に設けられ、かつ第3熱交換パス(P3)の第1熱交換管(2A)に通じるとともに、第3熱交換パス(P3)の第1熱交換管(2A)から冷媒が流出する密閉状の冷媒流出空間(27)、第1ヘッダタンク(3)内における冷媒流出空間(27)よりも左右方向外側部分に設けられ、かつ第1ヘッダタンク(3)内における第2ヘッダタンク(4)の下端よりも上方に突出した部分と後述する液溜まり空間(26)とを通じさせる連通空間(28)、第1ヘッダタンク(3)内の左右方向内側部分における第4熱交換パス(P4)(グループ(G)の下側に隣接する冷媒過冷却パス)と対応する高さ位置に設けられ、かつ第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)に通じるとともに、当該第1熱交換管(2A)内に冷媒を流入させる密閉状の冷媒流入空間(24)、および第1ヘッダタンク(3)内における冷媒流入空間(24)よりも左右方向外側部分の設けられ、かつ連通空間(28)を介して第1ヘッダタンク(3)内における第2ヘッダタンク(4)の下端よりも上方に突出した部分に通じる液溜まり空間(26)を形成する空間形成部材(25)を備えている。冷媒流入空間(24)の内容積は、第4熱交換パス(P4)の全第1熱交換管(2A)における全冷媒通路の内容積の合計以上の大きさとなっていることが好ましい。空間形成部材(25)に、絞り機能を有しかつ冷媒流出空間(27)の下側部分と連通空間(28)とを通じさせる絞り部(31)、および冷媒流入空間(24)の下側部分と液溜まり空間(26)とを通じさせる連通部(29)が形成されている。絞り部(31)は、冷媒流出空間(27)に通じる第3熱交換パス(P3)の第1熱交換管(2A)が配置されている上下方向の範囲の上下方向中央部よりも下方に設けられている。連通部(29)は、冷媒流入空間(24)に通じる第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)が配置されている上下方向の範囲の上下方向中央部よりも下方に設けられている。
【0039】
空間形成部材(25)は、長さ方向を上下方向に向けるとともに通風方向の両側縁が第1ヘッダタンク(3)の筒状本体(21)の周壁(21a)内周面における第1熱交換管(2A)の通風方向の両側部分に接触し、かつ第1ヘッダタンク(3)内を左右方向内側部分と同外側部分とに区画する水平断面円弧状の仕切壁(32)と、仕切壁(32)の上下両端に設けられ、かつ仕切壁(32)と第1ヘッダタンク(3)の筒状本体(21)の周壁(21a)における左右方向内側部分との間の空間(35)の上下両端開口を閉鎖する頂壁(33)および底壁(34)と、仕切壁(32)の上下方向の中央部に設けられ、かつ空間(35)を上下に仕切る区画壁(36)とよりなる。仕切壁(32)は、上端が第3熱交換パス(P3)の上端の第1熱交換管(2A)よりも上方に位置しているとともに、下端が第4熱交換パス(P4)の下端の第1熱交換管(2A)よりも下方に位置している。なお、ここでは、仕切壁(32)の下端は筒状本体(21)の底壁(21b)上に載っており、筒状本体(21)の底壁(21b)の一部が底壁(34)となっている。そして、仕切壁(32)の上部、頂壁(33)および区画壁(36)により冷媒流出空間(27)が形成され、頂壁(33)が空間形成部材(25)における冷媒流出空間(27)の上閉鎖壁となり、区画壁(36)が冷媒流出空間(27)の下閉鎖壁となっており、仕切壁(32)における区画壁(36)よりも若干上方の部分に、貫通状の絞り穴からなる絞り部(31)が形成されている。また、仕切壁(32)の下部、底壁(34)および区画壁(36)により冷媒流入空間(24)が形成され、区画壁(36)が、空間形成部材(25)における冷媒流入空間(24)の上閉鎖壁となり、底壁(31)が空間形成部材(25)における冷媒流入空間(24)の下閉鎖壁となっており、仕切壁(32)の下端部に貫通状の連通穴からなる連通部(29)が形成されている。
【0040】
なお、図示は省略したが、第1ヘッダタンク(3)内の第2分流制御手段(23)よりも上方の部分には、乾燥剤が配置されていてもよい。
【0041】
コンデンサ(1)は、圧縮機、膨張弁(減圧器)およびエバポレータとともに冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして車両に搭載される。
【0042】
上述した構成のコンデンサ(1)において、圧縮機により圧縮された高温高圧の気相冷媒が、冷媒入口部材(16)および冷媒入口(14)を通って第3ヘッダタンク(5)の上側ヘッダ部(11)内に流入し、第1熱交換パス(P1)の第2熱交換管(2B)内を左方に流れる間に凝縮させられて第2ヘッダタンク(4)内に流入する。第2ヘッダタンク(4)内に流入した冷媒は、第2熱交換パス(P2)の第2熱交換管(2B)内を右方に流れる間に凝縮させられて第3ヘッダタンク(5)の中間ヘッダ部(12)内に流入する。第3ヘッダタンク(5)の中間ヘッダ部(12)内に流入した冷媒は第3熱交換パス(P3)の第1熱交換管(2A)内を左方に流れる間に凝縮させられて第1ヘッダタンク(3)内の冷媒流出空間(27)に流入する。
【0043】
第1ヘッダタンク(3)内の冷媒流出空間(27)に流入した冷媒は絞り部(31)を通って連通空間(28)内に入る。連通空間(28)内に入った冷媒は気液混相冷媒であり、当該気液混相冷媒のうち液相主体混相冷媒は重力により第1ヘッダタンク(3)内の液溜まり空間(26)に溜まる。液溜まり空間(26)内に溜まった液相主体混相冷媒は、連通部(29)を経て冷媒流入空間(24)内に入り、第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)内に入る。
【0044】
第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)内に入った液相主体混相冷媒は第1熱交換管(2A)内を右方に流れる間に過冷却された後、第3ヘッダタンク(5)の下側ヘッダ部(13)内に入り、冷媒出口(15)および冷媒出口部材(17)を通って流出し、膨張弁を経てエバポレータに送られる。
【0045】
一方、連通空間(28)内に流入した気液混相冷媒のうちの気相成分は、第1ヘッダタンク(3)内の上部に溜まる。
【0046】
上述したカーエアコンに冷媒を封入する際には、まず第1分流制御手段(20)の絞り機能を有する絞り部(31)の働きによって、冷媒流出空間(27)内の圧力が、第1ヘッダタンク(3)内における第2ヘッダタンク(4)の下端よりも上方に突出した部分に通じる連通空間(28)内および液溜まり空間(26)内の圧力よりも高くなるので、図5に示すように、冷媒流出空間(27)内の液相冷媒(L)が下方へと押し下げられる。したがって、液相冷媒(L)が第3熱交換パス(P3)の第1熱交換管(2A)から第1ヘッダタンク(3)内の連通空間(28)内に速やかに流入し、第3熱交換パス(P3)を構成する第1熱交換管(2A)内に溜まる液相冷媒(L)の量が少なくなる。
【0047】
また、第1ヘッダタンク(3)内における第2ヘッダタンク(4)の下端よりも上方に突出した部分に通じる液溜まり空間(26)内の圧力が冷媒流入空間(24)内の圧力よりも高くなるので、液溜まり空間(26)内に溜まった液相冷媒(L)の液面が、第4熱交換パス(P4)の上端の第1熱交換管(2A)よりも上方に達する以前に、冷媒流入空間(24)内を液相冷媒(L)で満たすことができるとともに、第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)内を液相冷媒(L)で満たすことができる。したがって、冷媒過冷却パスの第1熱交換管(2A)内を早い段階で液相冷媒(L)で満たすことが可能になって、冷凍サイクルにおける冷媒封入量を、早い段階で、過冷度が一定となる適正封入量とすることが可能になる。しかも、冷凍サイクルにおける冷媒封入量を、早い段階で、過冷度が一定となる適正封入量とすることが可能になるので、過冷度が一定となる安定化域の幅、すなわち過冷度が一定となる冷媒封入量の幅が広くなり、負荷変動や冷媒洩れに対してより安定した過冷特性が得られる。
【0048】
次に、上述した構成のコンデンサ(1)を用いて行った実験例について説明する。
【0049】
すなわち、コンデンサ(1)、圧縮機、膨張弁およびエバポレータを用いて冷凍サイクルを組み立て、これらの冷凍サイクル内に最初に所定量の冷媒を入れて冷凍サイクルの運転を開始し、冷媒を継ぎ足しつつ種々の冷媒封入量における過冷度を調べてチャージグラフを作成した。その結果を図6に示す。図6に示すチャージグラフにおいて、A点がコンデンサ(1)から流出してきた冷媒の過冷却が開始された点であり、B点がコンデンサ(1)の第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)内が液相冷媒(L)で満たされた点であり、C点がコンデンサ(1)の第1ヘッダタンク(3)内が液相冷媒(L)で満たされた点である。そして、図6を見ると、冷凍サイクルにおける冷媒封入量を、早い段階で、過冷度が一定となる適正封入量とすることが可能になる。しかも、過冷度が一定となる安定化域の幅、すなわち過冷度が一定となる冷媒封入量の幅が広くなるので、負荷変動や冷媒洩れに対してより安定した過冷特性が得られる。
【0050】
図7はこの発明によるコンデンサの第2の実施形態を示す。
【0051】
図7に示すコンデンサの場合、第1ヘッダタンク(3)内には、第1ヘッダタンク(3)内から冷媒過冷却パスである第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)内への液相冷媒の流れを促進する分流制御手段(40)だけが設けられている。
【0052】
分流制御手段(40)は、第1ヘッダタンク(3)内の左右方向内側部分における第4熱交換パス(P4)と対応する高さ位置に設けられ、かつ第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)に通じるとともに、当該第1熱交換管(2A)内に冷媒を流入させる密閉状の冷媒流入空間(24)、および第1ヘッダタンク(3)内における冷媒流入空間(24)よりも左右方向外側部分の設けられ、かつ第1ヘッダタンク(3)内における第2ヘッダタンク(4)の下端よりも上方に突出した部分に通じる液溜まり空間(26)を形成する空間形成部材(41)を備えている。空間形成部材(41)における冷媒流入空間(24)に通じる第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)が配置されている上下方向の範囲の上下方向中央部よりも下方の高さ位置に、冷媒流入空間(24)の下側部分と液溜まり空間(26)とを通じさせる連通部(29)が形成されている。
【0053】
空間形成部材(41)は、第1の実施形態のコンデンサ(1)の空間形成部材(25)における仕切壁(32)の区画壁(36)よりも上方の部分、および頂壁(33)を除去したものである。
【0054】
図8および図9はこの発明によるコンデンサの第3の実施形態を示す。
【0055】
図8および図9に示すコンデンサの場合、第1ヘッダタンク(3)は、両端が開口した円筒状体および円筒状体の上端部にろう付された蓋部材からなり、かつ下端が開口するとともに上端が閉鎖されたアルミニウム製筒状本体(45)と、筒状本体(45)の下端部に着脱自在に取り付けられて筒状本体(45)の下端開口を閉鎖する下閉鎖部材(46)とにより構成されており、第1ヘッダタンク(3)の下端寄りの部分は下側のサイドプレート(7)よりも下方に突出している。
【0056】
第1ヘッダタンク(3)内には、第1ヘッダタンク(3)内から冷媒過冷却パスである第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)内への液相冷媒の流れを促進する分流制御手段(50)だけが設けられている。
【0057】
分流制御手段(50)は、第1ヘッダタンク(3)の左右方向内側部分における第4熱交換パス(P4)と対応する高さ位置に設けられ、かつ第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)が通じるとともに、当該第1熱交換管(2A)内に冷媒を流入させる冷媒流入空間(24)および第1ヘッダタンク(3)内における冷媒流入空間(24)よりも左右方向外側の部分に設けられ、かつ第1ヘッダタンク(3)内における第2ヘッダタンク(4)の下端よりも上方に突出した部分に通じる液溜まり空間(26)を形成する空間形成部材(51)を備えている。
【0058】
空間形成部材(51)は、長さ方向を上下方向に向けるとともに幅方向を前後方向に向け、かつ第1ヘッダタンク(3)内を左右方向内側部分と同外側部分とに区画する帯板状の仕切壁(52)と、仕切壁(52)の上下両端に設けられ、かつ仕切壁(52)よりも左右方向内側部分の空間の上下両端開口を閉鎖する平面から見て半円形の上下両閉鎖壁(53)(54)とを有している。仕切壁(52)の前後両側縁部は、筒状本体(45)の周壁(45a)における第1熱交換管(2A)の通風方向外側部分にろう付されている。上下両閉鎖壁(53)(54)の先端部には第1ヘッダタンク(3)の筒状本体(45)の周壁(45a)に形成された貫通穴(55)に嵌め入れられる凸片(53a)(54a)が形成されており、凸片(53a)(54a)が貫通穴(55)に嵌め入れられた状態で、上下両閉鎖壁(53)(54)の円弧状周縁部および凸片(53a)(54a)が周壁(45a)にろう付されている。空間形成部材(51)の下閉鎖壁(54)に、冷媒流入空間(24)の下側部分と液溜まり空間(26)とを通じさせる貫通状の連通穴からなる連通部(56)が形成されている。
【0059】
第1ヘッダタンク(3)の下側サイドプレート(7)よりも下方に突出した部分において、筒状本体(45)の周壁(45a)の下端部内周面にはめねじ(57)が形成されている。また、下閉鎖部材(46)は筒状本体(45)内に挿入される挿入部(46a)を有しており、挿入部(46a)の外周面におねじ(58)が形成されている。そして、挿入部(46a)のおねじ(58)が周壁(45a)のめねじ(57)にねじ合わされることにより、下閉鎖部材(46)が筒状本体(45)の下端部に着脱自在に取り付けられている。また、下閉鎖部材(46)の挿入部(46a)の外周面におけるおねじ(58)の上下両側部分と、周壁(45a)の内周面におけるめねじ(57)の上下両側部分との間は、それぞれ挿入部(46a)に装着されたシールリング(59)(61)によりシールされている。
【0060】
上述した第2および第3の実施形態のコンデンサにおいて、第3ヘッダタンク(5)の中間ヘッダ部(12)内に流入した冷媒が第3熱交換パス(P3)の第1熱交換管(2A)内を左方に流れるまでは、第1の実施形態のコンデンサ(1)と同様である。
【0061】
第3熱交換パス(P3)の第1熱交換管(2A)内を左方に流れる間に凝縮させられた冷媒は、第1ヘッダタンク(3)内における液溜まり空間(26)よりも上方の上方空間(3a)内に直接流入する。第1ヘッダタンク(3)の上方空間(3a)内に流入した冷媒は気液混相冷媒であり、当該気液混相冷媒のうち液相主体混相冷媒は重力により下方に流れて液溜まり空間(26)に溜まり、上方空間(3a)内に流入した気液混相冷媒のうちの気相成分は、第1ヘッダタンク(3)の上方空間(3a)内の上部に溜まる。
【0062】
液溜まり空間(26)に溜まった液相主体混相冷媒は、連通部(29)(56)を通って冷媒流入空間(24)内に入り、第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)内に入る。
【0063】
第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)内に入った液相主体混相冷媒は第1熱交換管(2A)内を右方に流れる間に過冷却された後、第3ヘッダタンク(5)の下側ヘッダ部(13)内に入り、冷媒出口(15)および冷媒出口部材(17)を通って流出し、膨張弁を経てエバポレータに送られる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
この発明によるコンデンサは、自動車に搭載されるカーエアコンに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0065】
(1):コンデンサ
(1A):凝縮部
(1B):過冷却部
(2A):第1熱交換管
(2B):第2熱交換管
(3):第1ヘッダタンク
(4):第2ヘッダタンク
(5):第3ヘッダタンク
(21):筒状本体
(21a):周壁
(22):閉鎖部材
(23)(50):分流制御手段
(24):冷媒流入空間
(25)(51):空間形成部材
(26):液溜まり空間
(29)(56):連通部
(32):仕切壁
(34):底壁(下閉鎖壁)
(35):空間
(36):区画壁(上閉鎖壁)
(52):仕切壁
(53)(54):上下両閉鎖壁
(P1):第1熱交換パス
(P2):第2熱交換パス
(P3):第3熱交換パス
(P4):第4熱交換パス
(G):グループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に間隔をおいて並列状に配置された左右方向にのびる複数の熱交換管と、熱交換管の左右両端部が接続された上下方向にのびるヘッダタンクとを備え、上下に連続して並んだ複数の熱交換管からなる熱交換パスが上下に並んで3以上設けられているコンデンサであって、
上端の熱交換パスを含みかつ連続して並んだ少なくとも2つの熱交換パスからなるグループを有するとともに、前記グループの下方に少なくとも1つの熱交換パスが設けられ、前記グループにおいて、冷媒が、上下いずれか一端の熱交換パスから同他端の熱交換パスに向かって流れるようになされ、左右いずれか一端部側に、前記グループにおける冷媒流れ方向最下流側の熱交換パスを構成する第1の熱交換管、および前記グループよりも下方に設けられた熱交換パスを構成する第1の熱交換管が接続される第1ヘッダタンクと、残りの全熱交換パスを構成する第2の熱交換管が接続される第2ヘッダタンクとが設けられ、第1ヘッダタンクが、第2ヘッダタンクよりも左右方向外側に配置されるとともに、第1ヘッダタンクの上端が第2ヘッダタンクの下端よりも上方に位置しており、第1ヘッダタンクが気液を分離して液を溜める機能を有し、前記グループの全熱交換パスが、冷媒を凝縮させる冷媒凝縮パスであり、前記グループよりも下方に位置する熱交換パスが、冷媒を過冷却する冷媒過冷却パスであり、第1ヘッダタンク内に、第1ヘッダタンク内から冷媒過冷却パスを構成する第1熱交換管内への液相冷媒の流れを促進する分流制御手段が設けられているコンデンサ。
【請求項2】
分流制御手段が、第1ヘッダタンク内の左右方向内側部分における前記グループに隣接する冷媒過冷却パスと対応する高さ位置に設けられ、かつ当該冷媒過冷却パスの第1熱交換管に通じるとともに当該第1熱交換管内に冷媒を流入させる密閉状の冷媒流入空間、および第1ヘッダタンク内における冷媒流入空間よりも左右方向外側部分に設けられ、かつ第1ヘッダタンク内における第2ヘッダタンクの下端よりも上方に突出した部分に通じる液溜まり空間を形成する空間形成部材を備えており、空間形成部材に、冷媒流入空間の下側部分と液溜まり空間とを通じさせる連通部が設けられている請求項1記載のコンデンサ。
【請求項3】
空間形成部材が、長さ方向を上下方向に向けるとともに、第1ヘッダタンク内を左右方向内側部分と同外側部分とに区画する仕切壁と、仕切壁の上下両端に設けられ、かつ仕切壁よりも左右方向内側部分の空間の上下両端開口を閉鎖する上下両閉鎖壁とを有し、仕切壁および上下両閉鎖壁によって冷媒流入空間が形成され、冷媒流入空間の下側部分と液溜まり空間とを通じさせる連通部が、仕切壁に貫通状に形成された連通穴からなる請求項2記載のコンデンサ。
【請求項4】
連通部が、冷媒流入空間に通じる第1熱交換管が配置されている上下方向の範囲の上下方向中央部よりも下方に設けられている請求項2または3記載のコンデンサ。
【請求項5】
空間形成部材が、長さ方向を上下方向に向けるとともに、第1ヘッダタンク内を左右方向内側部分と同外側部分とに区画する仕切壁と、仕切壁の上下両端に設けられ、かつ仕切壁よりも左右方向内側部分の空間の上下両端開口を閉鎖する上下両閉鎖壁とを有し、仕切壁および上下両閉鎖壁によって冷媒流入空間が形成され、冷媒流入空間の下側部分と液溜まり空間とを通じさせる連通部が、下閉鎖壁に貫通状に形成された連通穴からなる請求項2記載のコンデンサ。
【請求項6】
前記グループにおいて、冷媒が、上端の熱交換パスから下端の熱交換パスに向かって流れるようになされ、第1ヘッダタンクの下端が第2ヘッダタンクの下端よりも下方に位置しており、第1ヘッダタンクにおける第2ヘッダタンクよりも下方に位置する部分に、前記グループの下端の熱交換パス、および前記グループよりも下方に設けられた熱交換パスを構成する第1熱交換管が接続されている請求項1〜5のうちのいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項7】
第1ヘッダタンクに2つの熱交換パスを構成する第1熱交換管が接続され、第2ヘッダタンクに少なくとも2つの熱交換パスを構成する第2熱交換管が接続されている請求項1〜6のうちのいずれかに記載のコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−242118(P2011−242118A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59088(P2011−59088)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】