説明

コンバインの前処理昇降制御装置

【課題】刈高さ解除制御で下降させ過ぎた前処理部を少しだけ上昇させるためにマルチステアリングレバーを上昇操作すると、刈高さ解除制御のためにトリガースイッチを操作していることで前処理部が自動上昇駆動してしまい、オペレータの想定を超えて前処理部が上昇するという課題があった。
【解決手段】刈高さ解除制御手段(21C)の作動中は、前処理操作検出手段(22)による昇降操作レバー(11)上昇操作を入力しても、自動昇降制御手段(21A)による前処理部(5)の自動上昇駆動を行わないように牽制した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降操作レバーの前後操作により前処理部を昇降駆動制御するコンバインに係る。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインにおいて、マルチステアリングレバーに自動昇降指令するトリガースイッチを設け、刈高さ設定ダイヤルで設定した位置より前処理部が高い位置にいる場合、トリガースイッチの操作を入力しながらマルチステアリングレバー下降操作を入力すると、リフトポテンショの入力に基づいて前処理部が刈高さ設定ダイヤルにより設定した高さまで自動的に下降すると共に、あらかじめ設定した設定高さより前処理部が低い位置にいる場合、トリガースイッチの操作を入力しながらマルチステアリングレバー上昇操作を入力すると、リフトポテンショの入力に基づいて前処理部が設定高さまで自動的に上昇する自動昇降制御を備えたコンバインが案出されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のコンバインは、自動昇降制御に加え、刈高さ設定ダイヤルとリフトポテンショからの入力に基づき前処理部が刈高さ設定ダイヤルにより設定した刈高さより下降しないようにする刈高さ制御を備えると共に、前処理部が刈高さ設定ダイヤルにより設定した刈高さまで下降した時点で作動開始する刈高さ制御の作動中に、トリガースイッチを操作しながらマルチステアリングレバーを下降操作すると、刈高さ制御を解除して刈高さ設定ダイヤルで設定した高さより低い位置に前処理部を下降制御可能にするする刈高さ解除制御を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−233527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載のものは、トリガースイッチを操作しながらマルチステアリングレバーを下降操作して刈高さ制御を解除している最中も自動上昇制御が可能であったため、刈高さ解除制御で下降させ過ぎた前処理部を少しだけ上昇させるためにマルチステアリングレバーを上昇操作すると、刈高さ解除制御のためにトリガースイッチを操作していることで前処理部が自動上昇駆動してしまい、オペレータの想定を超えて前処理部が上昇するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、前処理部(5)を機体(1)に対して昇降駆動する昇降駆動手段(4)と、前記前処理部(5)の前記機体(1)に対する高さを検出する前処理高さ検出手段(25)と、中立位置から前後操作可能な昇降操作レバー(11)と、該昇降操作レバー(11)の前後操作を検出する前処理操作検出手段(22)と、該前処理操作検出手段(22)からの入力に基づき前記昇降駆動手段(4)を駆動制御して前記前処理部(5)の昇降位置を変更する制御手段(21)とを備えたコンバインの前処理昇降制御装置において、前記前処理部(5)の刈高さ位置を任意に設定する刈高さ設定手段(19)と、前記前処理部(5)へ自動昇降指令する自動昇降指令手段(20)を設け、前記制御手段(21)は、前記前処理部(5)の位置が刈高さ設定手段(19)により設定した設定刈高さ(C)より高い位置の時に、前記自動昇降指令手段(20)の操作を入力しながら前記前処理操作検出手段(22)による前記昇降操作レバー(11)下降操作を入力すると、前記前処理高さ検出手段(25)の入力に基づいて前記前処理部(5)が前記設定刈高さ(C)まで自動的に下降するように、前記昇降駆動手段(4)を前処理下降方向に駆動制御すると共に、前記前処理部(5)の位置があらかじめ設定した設定上昇高さ(B)より低い位置の時に、前記自動昇降指令手段(20)の操作を入力しながら前記前処理操作検出手段(22)による前記昇降操作レバー(11)上昇操作を入力すると、前記前処理高さ検出手段(25)の入力に基づいて前記前処理部(5)が前記設定上昇高さ(B)まで自動的に上昇するように、前記昇降駆動手段(4)を前処理上昇方向に駆動制御する自動昇降制御手段(21A)を備え、前記制御手段(21)は、前記刈高さ設定手段(19)と前記前処理高さ検出手段(25)からの入力に基づき、前記前処理部(5)が前記設定刈高さ(C)より下降しないように前記昇降駆動手段(4)を制御する刈高さ位置制御手段(21B)を備え、前記刈高さ解除指令する刈高さ解除操作手段(20)を備え、前記制御手段(21)は、前記前処理部(5)が前記刈高さ設定手段(19)により設定した刈高さまで下降した時点で作動開始する前記刈高さ位置制御手段(21B)の作動中に、前記刈高さ解除操作手段(20)の操作を入力しながら前記前処理操作検出手段(22)による前記昇降操作レバー(11)下降操作を入力すると、一時的に前記刈高さ位置制御手段(21B)を解除して前記設定刈高さ(C)より低い位置に前記前処理部(5)を下降制御可能にする刈高さ解除制御手段(21C)を備え、前記刈高さ解除制御手段(21C)の作動を指令する前記刈高さ解除操作手段(20)を、前記自動昇降指令手段(20)で兼用構成し、前記制御手段(21)は、前記刈高さ解除制御手段(21C)の作動中は、前記前処理操作検出手段(22)による前記昇降操作レバー(11)上昇操作を入力しても、前記自動昇降制御手段(21A)による前記前処理部(5)の自動上昇駆動を行わないように牽制したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によると、前記刈高さ解除制御手段の作動中は、前記前処理操作検出手段による前記昇降操作レバー上昇操作を入力しても、前記自動昇降制御手段による前記前処理部の自動上昇駆動を行わないように牽制したので、オペレータが意図しない前記前処理部の自動上昇駆動を防止すると共に、前記制御手段はオペレータが意図した前処理昇降駆動を適切且つ自動的に選択することができ、操作性が著しく向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】コンバインの右側面図。
【図2】コンバインの運転部平面図。
【図3】マルチステアリングレバー周辺斜視図。
【図4】刈高さ設定ダイヤル周辺平面図。
【図5】制御ブロック図。
【図6】前処理昇降制御メインルーチンのフローチャート図。
【図7】自動昇降制御サブルーチンのフローチャート図。
【図8】刈高さ位置制御サブルーチンのフローチャート図。
【図9】前処理部の昇降位置説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面に基づいて本発明の実施形態に係るコンバインについて説明をする。なお、説明中の方向は作業者が機体に着座した状態を基準として考えるものとする。
【0010】
[コンバインの概要]
図1はコンバインの右側面図であり、コンバイン(機体)1は、左右一対のクローラ走行装置2に支持された機体3を有していると共に、機体3の前方には前処理リフトシリンダ(昇降駆動手段)4を介して前処理部5が昇降自在に設けられている。前処理部5の右後方には作業者が運転操作を行う運転部6が設けられている。
【0011】
[運転部の概要]
図2はコンバインの運転部平面図であり、エンジンルーム8の上方に設けた運転シート9の前方にはフロントパネル10が設けられている。フロントパネル10の右上部にはマルチステアリングレバー(昇降操作レバー)11が備えてあり、マルチステアリングレバー11を中立位置から左方向に操作することによりコンバイン1を左方向に旋回させると共に、右方向に操作することによりコンバイン1を右方向に旋回させることができる。また、マルチステアリングレバー11を前方向に操作することにより前処理部5を下降駆動させると共に、後方向に操作することにより前処理部5を上昇駆動させることができる。
【0012】
また、フロントパネル10の左端から後方で運転シート9の左側方にわたってサイドパネル13が設けられている。サイドパネル13上の前方には走行速度を無段階に変速操作する主変速レバー15が備えてあり、主変速レバー15を中立位置から前方に操作することによりコンバイン1を前進させると共に、後方に操作することによりコンバイン1を後進させることができる。また、主変速レバー15の左側方には副変速レバー16が備えてあり、副変速レバー16を前方に操作することにより高速(路上)走行位置に変速すると共に、後方に操作することにより低速(作業)走行位置に変速する。また、副変速レバー16を低速走行位置から左方向に操作することにより、低速走行位置のままで逆転旋回モードに切り替えることができる。また、主変速レバー15の後方には脱こくクラッチ及び刈取クラッチを断接操作するパワークラッチスイッチ(脱こく・刈取クラッチ操作手段)17を備えている。また、副変速レバー16の前方には後述する刈高さ設定ダイヤル(刈高さ設定手段)19を備えている。
【0013】
[パワークラッチの作用]
パワークラッチスイッチ17はシーソ式のスイッチで構成していて、脱こくクラッチ及び刈取クラッチが両方とも切断している状態でパワークラッチスイッチ17の左側を1回押すと脱こくクラッチのみ接続し、この状態で左側をもう1回押すと脱こくクラッチの接続を維持した状態で刈取クラッチが接続する。
また、脱こくクラッチ及び刈取クラッチが両方とも接続している状態でパワークラッチスイッチ17の右側を1回押すと刈取クラッチのみ切断し、この状態で右側をもう1回押すと脱こくクラッチを切断する。
【0014】
[マルチステアリングレバーの概要]
図3は運転部のマルチステアリングレバー右前斜視図であり、マルチステアリングレバー11の前面側には前処理部5を自動昇降操作するトリガースイッチ(自動昇降指令手段、刈高さ解除操作手段)20を備えている。
【0015】
[刈高さ設定ダイヤルの概要]
図4は刈高さ設定ダイヤル周辺平面図であり、刈高さ設定ダイヤル19は刈高さ位置制御の設定刈高さを調節するものであり、刈高さ設定ダイヤル19を左端まで回すと刈高さ制御が切りになる。
【0016】
[制御装置の構成]
図5は制御ブロック図であり、制御装置を構成するマイコン(制御手段)21内には、自動昇降制御手段21A、刈高さ位置制御手段21B、刈高さ解除制御手段21Cを備えている。
また、マイコン21の入力側には、パワークラッチスイッチ17、刈高さ設定ダイヤル19、トリガースイッチ20の他に、マルチステアリングレバー11の前後操作量(角度)を検出する前処理操作ポテンショ(前処理操作検出手段)22、前処理部5の機体1に対する高さを検出するリフトポテンショ(前処理高さ検出手段)25を接続している。
また、マイコン21の出力側には、前処理部5を昇降駆動する油圧シリンダを駆動する前処理上昇・下降比例弁27U,27Dを接続している。
【0017】
[前処理部昇降制御]
次に、本実施の形態に係るコンバインの作用について説明をする。
図6は前処理昇降制御メインルーチンのフローチャート図である。
まず、S1では自動昇降制御サブルーチンを経由してS2に進む。
次に、S2で自動昇降フラグの状態を判断して、自動昇降フラグがONであれば次に進み、OFFであればS3に進む。
次に、S3で刈高さ位置制御動作条件を判断して、OK(条件が揃っている)であればS4の刈高さ位置制御サブルーチンを経由してS5に進み、NG(条件が揃っていない)であればS6で刈高さ位置フラグをOFFに設定してS7の前処理手動制御サブルーチン(詳細は省略)を経由して次に進む。
なお、S3の刈高さ位置制御動作条件は、「刈高さ設定ダイヤル19が切り位置以外」,「脱こくクラッチ接続」,「マルチステアリングレバー11の前処理部5下降操作中」,「リフトポテンショ25検出値が刈高さ設定ダイヤル19で設定した設定刈高さと同一又は低い」の4つであり、全ての条件が揃った時に刈高さ位置制御動作条件OKとなるが、一例であり、他の条件の組み合わせでもよい。
【0018】
[自動昇降制御]
図7は自動昇降制御サブルーチンのフローチャート図である。
まず、S11でトリガースイッチ20の状態を判断して、ONであればS12に進み、OFFであればS13で自動昇降禁止フラグをOFFに設定してS12に進む。
次に、S12で自動昇降禁止フラグの状態を判断して、ONであれば自動昇降制御サブルーチンを抜けて前処理昇降制御メインルーチンに戻り、OFFであればS14に進む。
次に、S14で自動昇降フラグがONであればS15に進み、OFFであればS16に進む。
次に、S16で自動昇降開始条件を判断して、OK(条件が揃っている)であればS17で自動昇降フラグをONに設定してS15に進み、NG(条件が揃っていない)であれば自動昇降制御サブルーチンを抜けて前処理昇降制御メインルーチンに戻る。
次に、S15で自動昇降停止条件を判断して、OK(条件が揃っている)であればS18で自動昇降フラグをOFFに設定して自動昇降制御サブルーチンを抜けて前処理昇降制御メインルーチンに戻り、NG(条件が揃っていない)であればS19の自動昇降出力制御サブルーチンを経由して前処理昇降制御メインルーチンに戻る。
なお、S16の自動昇降開始条件は、「刈高さ設定ダイヤル19が切り位置以外」,「刈取クラッチ接続」,「マルチステアリングレバー11が昇降操作後に中立位置復帰」の3つであり、全ての条件が揃った時に自動昇降開始条件OKとなるが、一例であり、他の条件の組み合わせでもよい。
また、S15の自動昇降停止条件は、「自動昇降目標位置到達」,「前処理5の駆動方向とは反対方向へのマルチステアリングレバー11操作」の2つであり、全ての条件が揃った時に自動昇降停止条件OKとなるが、一例であり、他の条件の組み合わせでもよい。
【0019】
[刈高さ位置制御]
図8は刈高さ位置制御サブルーチンのフローチャート図である。
まず、S21で自動昇降禁止フラグの状態を判断して、ONであればS22に進み、OFFであればS23に進む。
次に、S23で前処理下降操作が行われているかを判断して、下降操作中であればYESと判断してS22に進み、下降操作中でないと判断した場合はS24に進む。
次に、S22でリフトポテンショ25の入力から前処理部5の刈高さ位置を判断して、刈高さ位置が目標より低いと判断した場合はS25で刈高さ位置フラグをONに設定してS26に進み、それ以外(刈高さ位置が目標と同一もしくは高い)と判断すればS27で刈高さ位置フラグをOFFに設定してS24に進む。
次に、S24で刈高さ位置フラグの状態を判断して、ONであればS27の刈高さ位置動作制御サブルーチン(詳細は省略)を経由して刈高さ位置制御サブルーチンを抜けて前処理昇降制御メインルーチンに戻り、OFFであれば刈高さ位置制御サブルーチンを抜けて前処理昇降制御メインルーチンに戻る。
次に、S26でトリガースイッチ20の状態を判断して、ONであればS28で刈高さ解除制御サブルーチン(詳細は省略)を経由してS29で自動昇降禁止フラグをONに設定して刈高さ位置制御サブルーチンを抜けて前処理昇降制御メインルーチンに戻り、OFFであればS24に進む。
【0020】
[前処理部位置における昇降駆動作用]
図9は、前処理部の昇降位置説明図であり、Aは前処理上限位置、Bは刈取駆動停止位置(設定上昇高さ)、Cは刈高さ設定ダイヤル19で設定できる刈高さ位置制御設定可能範囲、Dは前処理下限位置、Xは刈高さ設定ダイヤル19で設定した設定刈高さである。
【0021】
まず、コンバイン1が前進走行中且つ刈取クラッチ接続状態で前処理部5が前処理上限位置Aに位置する状態から、マルチステアリングレバー11の前処理部下降操作により前処理部5が刈取駆動停止位置Bに下降した時には、前処理部5が駆動を開始する。
次に、前処理部5が刈取駆動停止位置Bに位置する状態から、マルチステアリングレバー11の前処理部下降操作により前処理部5が刈高さ位置制御設定可能範囲Cの刈高さ設定ダイヤル19で設定した設定刈高さXに下降した時には、刈高さ位置制御手段21Bが起動して前処理部5の下降駆動が自動的に停止する。この状態でマルチステアリングレバー11を更に前処理部下降操作しても、前処理部5は下降駆動しないと共に、刈高さ設定ダイヤル19を手動調節指示すると、指示された設定刈高さXに前処理部5が昇降駆動する。
次に、前処理部5が刈高さ位置制御設定可能範囲Cの設定刈高さXにある状態から、トリガースイッチ20を操作しながらマルチステアリングレバー11を前処理下降操作した時には、刈高さ解除制御手段21Cが起動して前処理部5は設定刈高さXより下方の範囲で前処理下限位置Dまで下降駆動できる。この状態でトリガースイッチ20の操作をやめると、刈高さ解除制御手段21Cが終了して刈高さ位置制御手段21Bが再起動することにより、前処理部5は設定刈高さXに自動復帰すると共に、前処理部5の刈高さが設定刈高さX以上になると、刈高さ位置制御手段21Bが終了する。
【0022】
また、前処理部5が刈高さ位置制御設定可能範囲Cの設定刈高さXより上方位置にいる時に、トリガースイッチ20を操作しながらマルチステアリングレバー11を前処理下降操作した後、トリガースイッチ20やマルチステアリングレバー11から手を離すと、自動昇降制御手段21Aが起動して設定刈高さXまで前処理部5が自動的に下降駆動する。
また、前処理部5が刈取駆動停止位置Bより下方位置にいる時に、トリガースイッチ20を操作しながらマルチステアリングレバー11を前処理上昇操作した後、トリガースイッチ20やマルチステアリングレバー11から手を離すと、自動昇降制御手段21Aが起動して刈取駆動停止位置Bまで前処理部5が自動的に上昇駆動すると共に、前処理部5が刈取駆動停止位置Bに到達すると、自動的に前処理部5の上昇駆動を停止すると共に前処理部5の駆動も停止する。
【0023】
なお、刈取駆動停止位置Bは、メモリバックアップ作業により任意の高さ位置を設定できるが、詳細は省略する。
また、刈取駆動停止位置Bを前処理上限位置Aと同じ高さ位置に設定することも可能である。
【0024】
[前処理部昇降制御の作用効果]
つまり、前処理部5の昇降制御は基本的にマルチステアリングレバー11による手動操作を優先しているが、刈高さ位置制御手段21Bが起動している時には、前処理部5の高さが刈高さ設定ダイヤル19で設定している設定刈高さXと同一又は低くなった時点で、刈高さ位置制御に突入して前処理部5のそれ以上の下降駆動を規制することで、誤操作による前処理部5先端部の圃場への突っ込みを防止している。
さらに、刈高さ位置制御手段21Bが起動している状態においても、トリガースイッチ20を操作しながらマルチステアリングレバー11を前処理下降操作することにより、一時的に前処理部5の下降規制を解除する刈高さ解除制御手段21Cが起動する。例えば湿田圃場でのヘッドアップ時でも機械的な下降限界まで前処理部5を下降操作して、適正な刈高さ位置で刈取り作業を続行することができる。
ここで、刈高さ解除制御手段21C起動中にトリガースイッチ20の操作をやめると、刈高さ解除制御手段21Cが終了して刈高さ位置制御手段21Bが再起動する。
また、刈高さ解除制御手段21C起動中に前処理部5の刈高さが設定刈高さX以上になると、刈高さ位置制御手段21Bが終了する。
【0025】
さらに、トリガースイッチ20を操作しながらマルチステアリングレバー11を前処理下降操作した後、トリガースイッチ20やマルチステアリングレバー11から手を離すと自動昇降制御手段21Aが起動するので、マルチステアリングレバー11の前処理下降操作を継続しなくとも前処理部5が自動的に下降駆動を続け、あらかじめ刈高さ設定ダイヤル19で設定した設定刈高さXに前処理部5が位置すると自動的に前処理部5の下降駆動を停止するものである。
また、トリガースイッチ20を操作しながらマルチステアリングレバー11を前処理上昇操作した後、トリガースイッチ20やマルチステアリングレバー11から手を離すと自動上昇制御が起動するので、マルチステアリングレバー11の前処理上昇操作を継続しなくとも前処理部5が自動的に上昇駆動を続け、あらかじめ設定された刈取駆動停止位置Bに到達すると、自動的に前処理部5の上昇駆動を停止すると共に前処理部5の駆動も停止する。
よって、刈り始めに自動下降制御をすることで条合わせ操作に集中することができると共に、刈り終わりに自動上昇制御をすることで刈取搬送伝動が停止する位置まで前処理部5が自動的に上昇するので、動力負荷の高い旋回駆動時にもエンジンの回転が必要以上に低下することなくスムーズに旋回でき、しかも機械的な上昇限界位置まで上昇するのではなく、必要最低限の上昇位置で停止しているので次工程の刈り始めも素早く作業に入ることが可能になる。
【0026】
しかも、刈高さ解除制御手段21Cが起動している状態では、自動昇降制御手段21Aを起動しないように牽制しているので、刈高さ解除制御中にトリガースイッチ20を操作した状態でマルチステアリングレバー11を上昇操作しても自動上昇制御することはなく、オペレータが意図しない前処理部5の昇降駆動を防止すると共に、マイコン21はオペレータが意図した駆動を適切且つ自動的に選択することができ、操作性が著しく向上することになる。
【符号の説明】
【0027】
1 コンバイン(機体)
4 前処理リフトシリンダ(昇降駆動手段)
5 前処理部
11 マルチステアリングレバー(昇降操作レバー)
19 刈高さ設定ダイヤル(刈高さ設定手段)
20 トリガースイッチ(自動昇降指令手段、刈高さ解除操作手段)
21 マイコン(制御手段)
21A 自動昇降制御手段
21B 刈高さ制御位置手段
21C 刈高さ解除制御手段
22 前処理操作ポテンショ(前処理操作検出手段)
25 リフトポテンショ(前処理高さ検出手段)
B 刈取駆動停止位置(設定上昇高さ)
X 設定刈高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理部(5)を機体(1)に対して昇降駆動する昇降駆動手段(4)と、前記前処理部(5)の前記機体(1)に対する高さを検出する前処理高さ検出手段(25)と、中立位置から前後操作可能な昇降操作レバー(11)と、該昇降操作レバー(11)の前後操作を検出する前処理操作検出手段(22)と、該前処理操作検出手段(22)からの入力に基づき前記昇降駆動手段(4)を駆動制御して前記前処理部(5)の昇降位置を変更する制御手段(21)とを備えたコンバインの前処理昇降制御装置において、
前記前処理部(5)の刈高さ位置を任意に設定する刈高さ設定手段(19)と、前記前処理部(5)へ自動昇降指令する自動昇降指令手段(20)を設け、
前記制御手段(21)は、前記前処理部(5)の位置が刈高さ設定手段(19)により設定した設定刈高さ(X)より高い位置の時に、前記自動昇降指令手段(20)の操作を入力しながら前記前処理操作検出手段(22)による前記昇降操作レバー(11)下降操作を入力すると、前記前処理高さ検出手段(25)の入力に基づいて前記前処理部(5)が前記設定刈高さ(X)まで自動的に下降するように、前記昇降駆動手段(4)を前処理下降方向に駆動制御すると共に、
前記前処理部(5)の位置があらかじめ設定した設定上昇高さ(B)より低い位置の時に、前記自動昇降指令手段(20)の操作を入力しながら前記前処理操作検出手段(22)による前記昇降操作レバー(11)上昇操作を入力すると、前記前処理高さ検出手段(25)の入力に基づいて前記前処理部(5)が前記設定上昇高さ(B)まで自動的に上昇するように、前記昇降駆動手段(4)を前処理上昇方向に駆動制御する自動昇降制御手段(21A)を備え、
前記制御手段(21)は、前記刈高さ設定手段(19)と前記前処理高さ検出手段(25)からの入力に基づき、前記前処理部(5)が前記設定刈高さ(X)より下降しないように前記昇降駆動手段(4)を制御する刈高さ位置制御手段(21B)を備え、
前記刈高さ解除指令する刈高さ解除操作手段(20)を備え、
前記制御手段(21)は、前記前処理部(5)が前記刈高さ設定手段(19)により設定した刈高さまで下降した時点で作動開始する前記刈高さ位置制御手段(21B)の作動中に、前記刈高さ解除操作手段(20)の操作を入力しながら前記前処理操作検出手段(22)による前記昇降操作レバー(11)下降操作を入力すると、一時的に前記刈高さ位置制御手段(21B)を解除して前記設定刈高さ(X)より低い位置に前記前処理部(5)を下降制御可能にする刈高さ解除制御手段(21C)を備え、
前記刈高さ解除制御手段(21C)の作動を指令する前記刈高さ解除操作手段(20)を、前記自動昇降指令手段(20)で兼用構成し、
前記制御手段(21)は、前記刈高さ解除制御手段(21C)の作動中は、前記前処理操作検出手段(22)による前記昇降操作レバー(11)上昇操作を入力しても、前記自動昇降制御手段(21A)による前記前処理部(5)の自動上昇駆動を行わないように牽制したことを特徴とするコンバインの前処理昇降制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−196173(P2012−196173A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62121(P2011−62121)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】