説明

コンバインの排出オーガ

【課題】排出シュータから搬送先内に穀粒を確実に投入できるとともに、排出オーガ内の穀粒詰まりを防止し得る、作業性を向上させたコンバインの排出オーガを提供する。
【解決手段】穀粒を貯留する穀粒タンク10に、貯留した穀粒を排出するための排出オーガ13を昇降かつ旋回自在に連通連設するとともに、排出オーガ13の先端部に備えた穀粒を排出する排出シュータ31は、この排出シュータ31の回動支点軸32(回動基部)を中心として、上下方向に回動自在に備えるとともに、排出シュータ31は、地面に平行な水平面に対する対地角度αおよび排出オーガ13の延長線に対する対排出オーガ角度θを変更可能にするとともに、排出オーガ13の昇降に応じて、対地角度αもしくは対排出オーガ角度θを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒を貯留する穀粒タンクに、貯留した穀粒を排出するための排出オーガを昇降かつ旋回自在に連通連設するとともに、排出オーガの先端部には、穀粒を排出する排出シュータを、この排出シュータの回動基部を中心として、上下方向に回動自在に備えるコンバインの排出オーガに関し、より詳細には、排出シュータは、地面に平行な水平面に対する対地角度および排出オーガの延長線に対する対排出オーガ角度を変更可能にするとともに、排出オーガの昇降に応じて、対地角度もしくは対排出オーガ角度を制御するコンバインの排出オーガに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインの排出オーガには、その先端部に、排出オーガ内の搬送穀粒を、搬送ダンプのコンテナ内などに排出する排出シュータを備え、この排出シュータを、任意の位置に自動制御や遠隔操作により回動させることで、排出オーガを旋回及び昇降させた際に、コンバインのグレンタンク内からコンテナ内への穀粒排出を効率よく容易にするもの(例えば、特許文献1および特許文献2など)がある。
また、排出シュータに設けた傾斜センサにより、コントローラが、排出シュータの対地角度を所定の範囲内に収まるように制御して、排出シュータを常に下方向きにすることで、穀粒排出を淀みなく行うもの(例えば、特許文献3)もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−120048号公報
【特許文献2】特開2001−120049号公報
【特許文献3】特開2001−211731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1〜2のようなコンバインの排出オーガでは、例えば、排出シュータを、自動制御や遠隔操作などで任意の位置に回動させ、その対排出オーガ角度を維持したまま、排出オーガを昇降させると、排出シュータから作業者の意図しない方向に穀粒が排出されてしまい、搬送先のコンテナ内などに穀粒を排出することができない懸念があった。
また、特許文献3のようなコンバインの排出オーガでは、排出シュータが上方を向いて穀粒が排出シュータから排出不能になることを防ぐために、排出シュータを常に下方へ向けるように排出シュータの対地角度を制御するものであり、排出シュータの対地角度が水平となる場合には、排出オーガ内の搬送力のみでは穀粒が排出シュータから十分に排出されないとともに、排出シュータを常に下方に向けたとしても、排出シュータが排出オーガの穀粒搬送路を遮断して、排出シュータから穀粒が排出されないなど、排出不能もしくは詰まりが発生する恐れがあり、作業性が悪いという問題があった。
そこで、この発明の目的は、排出シュータから搬送先内に穀粒を確実に投入できるとともに、排出オーガ内の穀粒詰まりを防止し得る、作業性を向上させたコンバインの排出オーガを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、穀粒を貯留する穀粒タンクに、貯留した穀粒を排出するための排出オーガを昇降かつ旋回自在に連通連設するとともに、前記排出オーガの先端部に、穀粒を排出する排出シュータを備え、前記排出シュータは、前記排出シュータの回動基部を中心として、上下方向に回動自在に備えるコンバインの排出オーガにおいて、前記排出シュータは、地面に平行な水平面に対する対地角度および前記排出オーガの延長線に対する対排出オーガ角度を変更可能にするとともに、前記排出オーガの昇降に応じて、前記対地角度もしくは前記対排出オーガ角度を制御することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインの排出オーガにおいて、前記排出オーガの昇降時に、設定した前記対地角度の維持に応じて、前記対排出オーガ角度を制御することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインの排出オーガにおいて、前記排出シュータは、所定の前記対排出オーガ角度による前記排出オーガの上昇に伴い、設定した前記対地角度に到達するまでの間、前記所定の対排出オーガ角度を維持するとともに、前記対地角度に到達した後、さらに前記排出オーガの上昇に伴い、前記対排出オーガ角度を制御して、前記設定対地角度を維持することを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインの排出オーガにおいて、前記設定対地角度は、前記排出オーガに対して、機体の外方および内方に向けてそれぞれ20度〜60度の範囲内とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、穀粒を貯留する穀粒タンクに、貯留した穀粒を排出するための排出オーガを昇降かつ旋回自在に連通連設するとともに、排出オーガの先端部に、穀粒を排出する排出シュータを備え、排出シュータは、この排出シュータの回動基部を中心として、上下方向に回動自在に備えるコンバインの排出オーガにおいて、排出シュータは、地面に平行な水平面に対する対地角度および排出オーガの延長線に対する対排出オーガ角度を変更可能にするとともに、排出オーガの昇降に応じて、対地角度もしくは対排出オーガ角度を制御するので、排出シュータからコンテナなどの搬送先内に穀粒を確実に投入できるとともに、排出オーガ内の穀粒詰まりを防止することができる。従って、作業性および生産性を向上させたコンバインの排出オーガを提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、排出オーガの昇降時に、設定した対地角度の維持に応じて、対排出オーガ角度を制御するので、排出シュータの対排出オーガ角度を変更することにより、昇降に伴う排出オーガの稼動位置に関わらず、排出シュータの対地角度を維持でき、排出シュータからコンテナなどの搬送先内に穀粒をこぼすことなく確実に投入することができる。従って、作業性および生産性を向上させたコンバインの排出オーガを提供することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、排出シュータは、所定の対排出オーガ角度による排出オーガの上昇に伴い、設定した対地角度に到達するまでの間、所定の対排出オーガ角度を維持するとともに、対地角度に到達した後、さらに排出オーガの上昇に伴い、対排出オーガ角度を制御して、設定対地角度を維持するので、所定の対排出オーガ角度を有する排出シュータで排出オーガを上昇させると、排出シュータの対地角度は徐々に小さくなっていくが、排出シュータが設定した対地角度に到達したところで、この排出シュータの設定対地角度を維持するために、排出シュータの対排出オーガ角度を変更するため、排出オーガの上昇に伴い、排出オーガ内の穀粒を常時詰まらせることなく、排出オーガから容易に排出させることができる。従って、作業性を向上させたコンバインの排出オーガを提供することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、設定対地角度は、排出オーガに対して、機体の外方および内方に向けてそれぞれ20度〜60度の範囲内とするので、排出オーガ内の穀粒搬送路を排出シュータで遮蔽して穀粒搬送を詰まらせることなく、かつ排出オーガ内の穀粒を、搬送力で得た勢いと穀粒の自重により容易に排出可能として、搬送先内などに効率よく排出させることができる。従って、作業性を向上させたコンバインの排出オーガを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るコンバインの一例を示した左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの右側面図である。
【図4】コンバインの正面図である。
【図5】縦送りオーガおよび排出オーガの説明図である。
【図6】排出シュータの説明図である。
【図7】排出シュータ回動部の正面図である。
【図8】コントローラによる排出シュータ回動角度の制御ブロック図である。
【図9】排出オーガの昇降に伴う排出シュータの角度制御を示す排出オーガおよび排出シュータの側面模式図である。
【図10】排出オーガの上昇に伴う排出シュータの角度制御を示す排出オーガおよび排出シュータの側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例を図面に示しながら説明する。なお、本発明の実施形態は請求項記載の範囲内で任意に変更することができる。図1は本発明に係るコンバインの一例を示した左側面図、図2は同平面図、図3は同右側面図、図4は同正面図、図5は縦送りオーガおよび排出オーガの説明図、図6は排出シュータの説明図である。
【0015】
まず、本発明の一実施例に係わるコンバイン1は、その全体構成として、図1〜4に示すように、トラックフレーム2の左右にクローラ式走行装置3L,3Rを支持し、該トラックフレーム2上に機体フレーム4を架設している。また、脱穀部5には、フィードチェーン6などを張架して扱胴7や処理胴などを内蔵する。
【0016】
脱穀部5の下方には、脱穀された穀粒を選別する選別装置8を配置し、該選別装置8により選別された穀粒を、揚穀筒9を介して搬入する穀粒タンク10が、キャビン11後方に備えられる。さらに、穀粒タンク10内の穀粒を機外に搬出する排出オーガ13をコンバイン1の上部に備え、コンバイン1の後端には、排藁チェーン14の終端を臨ませる排藁処理部15が配置される。
【0017】
また、機体前部には、刈取部16が形成され、刈刃17や図示しない穀稈搬送機構などが備えられる。さらに、その刈取部16の後方には、丸型の操向ハンドル18や運転席19を配置したキャビン11が設置される。そして、キャビン11側方の機体フレーム4前部上には、刈取部16を上下に回動自在に支持する載置台20と、該載置台20上の刈取部16を、刈取フレーム21を介して昇降させる油圧シリンダ22とが備えられる。
【0018】
さらに、キャビン11の下方で、機体フレーム4前部には、エンジン23が配置され、該エンジン23からの動力により、クローラ式走行装置3L,3Rを駆動して走行するとともに、穀稈をコンバイン1の前方から刈取部16で連続的に刈取って、脱穀部5で脱穀するように構成している。
【0019】
次に、排出オーガ13は、図5に示すように、後部を中心として上下方向に回動自在、かつ水平方向に旋回自在に設けるもので、排出オーガ13における後側の基部を中心に、前部を昇降させる、油圧式の昇降シリンダ25を設け、縦送りオーガ12上端部に排出オーガ13の基部を回動支点軸回りに上下回動自在に連結させる。
【0020】
また、縦送りオーガ12を、一対のギヤ26,27を介し軸芯回りに回転させる電動式の旋回モータ28を設け、縦送りオーガ12の略垂直な軸芯回りに縦送りオーガ12および排出オーガ13を一体回転させるもので、昇降シリンダ25によって排出オーガ13の先端部を上下に昇降させるとともに、旋回モータ28によって排出オーガ13先端部を左右に旋回させるように構成している。なお、縦送りオーガ12および排出オーガ13には、スクリューコンベア29,30が内設されている。
【0021】
なお、符号s1は、排出オーガ13の旋回角度を検出する、縦送りオーガ12に設置したポテンショメータなどの旋回角度検出器、符号s2は、排出オーガ13に設置した排出オーガ13の昇降角度を検出するポテンショメータなどの昇降角度検出器である。
【0022】
さらに、排出オーガ13の先端部には、図6に示すように、穀粒タンク10内から縦送りオーガ12を介して排出オーガ13内をスクリューコンベア30によって排出オーガ13の先端部まで搬送されてきた穀粒を機外に排出するとともに、その排出方向をガイドする排出シュータ31が回動自在に取付けられる。
【0023】
この排出シュータ31は、排出オーガ13の先端下部に、排出オーガ13の横方向に回動基部である回動支点軸32を備え、この回動支点軸32を介して、回動自在に取付ける側面視略逆L字形状の排出回動部33と、この排出回動部33の先端外周にボルトなどの締結具34を介して着脱自在に固定する断面略四角形状などの排出筒35とから構成される。
【0024】
そして、排出筒35の先端外周上面には、軸受部材36を着脱自在に固設させ、排出オーガ13先端を軸受部材36に回転自在に支持させるとともに、軸受部材36より基端側の排出オーガ13下部外側に回動基板37を固設させ、回動支点軸32を回転自在に支持する図示しない筒軸を回動基板37下面に図示しない締結具を介して着脱自在に固定させている。
【0025】
また、排出シュータ31を回動駆動させる回動モータ38を取付けるモータ台39を回動基板37の側面に図示しない締結具を介して着脱自在に固定させるとともに、回動モータ38のモータ軸38aに取付ける小径のギヤ40を、回動支点軸32のギヤ41に結合させ、回動支点軸32の左右両端に固設する図示しない左右側板を、排出回動部33の左右内側面に図示しない締結具を介して着脱自在に固定させ、回動モータ38の駆動で回動支点軸32を回動させるとき、回動支点軸32と一体に排出回動部33および排出筒35も排出オーガ13に対して前後方向に回動されることで、排出オーガ13の昇降に応じて排出オーガ13からの穀粒の排出方向をガイドできる構成とされる。
【0026】
次に、本願発明の特徴である排出シュータの角度制御について詳述する。図7は排出シュータ回動部の正面図、図8はコントローラによる排出シュータ回動角度の制御ブロック図、図9は排出オーガの昇降に伴う排出シュータの角度制御を示す排出オーガおよび排出シュータの側面模式図である。
【0027】
排出シュータ31は、図7に示すように、その回動支点軸32近傍の側面に、アブソリュート型のロータリエンコーダなどからなる対地角度検出器s3が設置される。つまり、この対地角度検出器s3により、地面に平行な水平面に対する排出シュータ31の傾斜角度が対地角度αとして検出される。
【0028】
また、排出シュータ31には、回動支点軸32に連結して、ポテンショメータなどの対排出オーガ角度検出器s4が設置される。従って、この対排出オーガ角度検出器s4により、排出オーガ13の延長線に対する排出シュータ31の傾斜角度が対排出オーガ角度θとして検出される。
【0029】
そして、図8に示すように、これら対地角度検出器s3および対排出オーガ角度検出器s4をはじめ、上述した排出オーガ13の旋回角度検出器s1および昇降角度検出器s2は、コントローラCに接続される。さらに、コントローラCには、排出シュータ31の回動モータ38が接続される。
【0030】
そして、コントローラCには、予め、排出オーガ13の昇降角度に関わらず、排出シュータ31の対地角度αが、例えば40度となるように設定入力されている。なお、排出シュータ31の設定した対地角度αは、排出オーガ13に対し、機体の外方および内方に向けてそれぞれ20度〜60度(詳細は後述する)の範囲内で任意に設定可能とされる。
【0031】
ここで、図9に示すように、例えば、排出オーガ13を昇降位置イにおいて、排出シュータ31を、対地角度αが40度となる、任意の対排出オーガ角度θで、排出オーガ13から機外のコンテナ(搬送先)内などへの穀粒排出時に、作業者の操作により、排出オーガ13を昇降位置ロに上昇させた場合、昇降角度検出器s2による排出オーガ13の昇降角度と、対地角度検出器s3による排出シュータ31の対地角度と、対排出オーガ角度検出器s4による排出シュータ31の対排出オーガ角度θとが、コントローラCに伝達される。
【0032】
つまり、排出オーガ13が昇降位置ロにおいて、排出シュータ31は、昇降位置イの対排出オーガ角度θが維持されたまま、対地角度αが30度よりも小さな角度となる。
【0033】
そこで、コントローラCは、排出オーガ13が、昇降位置ロにおける対地角度を対地角度α=40度となるように、回動モータ38を駆動させ、排出シュータ31を対排出オーガ角度θから対排出オーガ角度θ1まで回動させる。
【0034】
また、排出オーガ13を、昇降位置イ(対地角度α=40度となる、任意の対排出オーガ角度θ)から昇降位置ハに下降させた場合には、上述同様に昇降角度検出器s2による排出オーガ13の昇降角度と、対地角度検出器s3による排出シュータ31の対地角度と、対排出オーガ角度検出器s4による排出シュータ31の対排出オーガ角度θとがコントローラCに伝達される。
【0035】
つまり、この場合、排出オーガ13が、昇降位置ハにおいて、排出シュータ31は、昇降位置イの対排出オーガ角度θが維持されたまま、対地角度α2が40度よりも大きな角度となる。
【0036】
そこで、コントローラCは、排出オーガ13が、昇降位置ハにおける対地角度を、対地角度α=40度となるように、回動モータ38を駆動させ、排出シュータ31を対排出オーガ角度θから対排出オーガ角度θ2まで回動させる。
【0037】
このような構成にすることで、昇降に伴う排出オーガ13の稼動位置に関わらず、排出シュータ31の対排出オーガ角度θを変更することにより、排出シュータ31の対地角度αを維持でき、排出シュータ31からコンテナなどの搬送先内に穀粒をこぼすことなく確実に投入することができる。
【0038】
また、排出シュータ31の対地角度αは、排出オーガ13の昇降位置に関わらず、排出オーガ13に対して、機体の外方および内方に向けてそれぞれ20度〜60度の範囲内とすることが好ましい。これは、排出オーガ13内の穀粒搬送路を排出シュータ31で遮蔽して穀粒搬送を詰まらせることなく、かつ排出オーガ13内の穀粒を、スクリューコンベア30の搬送力で得た勢いと穀粒の自重により容易に排出可能として、搬送先内などに効率よく排出させることができるものである。なお、排出シュータ31の対地角度αを60度までとしたのは、水分状態により流動性の左右する搬送穀粒が、排出シュータ31から効率よく排出される適切な角度範囲となる、研究結果に基づくものである。
【0039】
次に、排出オーガ13の上昇に伴い、穀粒を排出可能に設定した排出シュータ31の対地角度α´を維持するため、排出シュータ31の対排出オーガ角度θ´を制御させることもできる。図10は、排出オーガの上昇に伴う排出シュータの角度制御を示す排出オーガおよび排出シュータの側面模式図である。
【0040】
この場合、例えば図10に示すように、排出オーガ13を昇降位置ニにおいて、排出シュータ31の対地角度α´が、例えば任意の40度(20度〜60度の範囲内)で、排出シュータ31を任意所定の対排出オーガ角度θ´により、排出オーガ13から搬送先内に穀粒を排出させているとき、作業者の操作により、排出オーガ13を上昇させる。なお、予めコントローラCには、例えば、排出シュータ31の対地角度α´´を30度とした設定値が入力されている。
【0041】
そして、排出オーガ13を、例えば、昇降位置ホになるまで上昇させたとき、昇降角度検出器s2による排出オーガ13の昇降角度と、対地角度検出器s3による排出シュータ31の対地角度と、対排出オーガ角度検出器s4による排出シュータ31の対排出オーガ角度θ´とがコントローラCに伝達される。
【0042】
つまり、昇降位置ニから昇降位置ホに向けて排出オーガ13の上昇に伴い、排出シュータ31の対地角度α´は徐々に小さくなっていくが、コントローラCは、排出シュータ31の設定対地角度α´´が30度となる排出オーガ13の昇降位置ホまでは、回動モータ38を駆動させず、排出シュータ31の対排出オーガ角度θ´を維持する。
【0043】
次いで、排出オーガ13を、昇降位置ホを超えて昇降位置へまで上昇させた場合、昇降角度検出器s2による排出オーガ13の昇降角度と、対地角度検出器s3による排出シュータ31の対地角度と、対排出オーガ角度検出器s4による排出シュータ31の対排出オーガ角度θ´とがコントローラCに伝達される。
【0044】
つまり、排出シュータ31の対地角度は、排出オーガ13が昇降位置ホを超えた時点で30度よりも小さくなるため、コントローラCは、設定対地角度α´´が30度となるように、回動モータ38を駆動させ、排出シュータ31を対排出オーガ角度θ´から対排出オーガ角度θ1´まで回動させる。
【0045】
なお、上述の例では、排出オーガ13の昇降位置ホにおける、排出シュータ31の対排出オーガ角度θ´を制御することについて説明したが、排出オーガ13が、昇降位置ホを超えて昇降位置へに至るまでの間の昇降位置で、コントローラCは、昇降角度検出器s2による排出オーガ13の昇降角度と、対地角度検出器s3による排出シュータ31の対地角度までの角度と、対排出オーガ角度検出器s4による排出シュータ31の対排出オーガ角度θ1´までの角度の検出情報に基づき、排出シュータ31が、その設定対地角度α´´=30度となるように、回動モータ38を駆動させ、排出シュータ31を回動させる。
【0046】
このような構成にすることで、従来のように、対排出オーガ角度θ´を維持したまま、排出オーガ13の上昇に伴い、排出シュータ31の対地角度が20度よりも小さい水平(地面に平行)近傍の角度となり、スクリューコンベア30の搬送力のみの勢いでは穀粒が排出シュータ31から排出されず、排出シュータ31内および排出オーガ13内に穀粒を詰まらせることがない。
【0047】
すなわち、所定の対排出オーガ角度θ´を有する排出シュータ31で排出オーガ13を上昇させると、排出シュータの対地角度は徐々に小さくなっていくが、排出シュータ31が設定対地角度α´´に到達したところで、この排出シュータ31の設定対地角度α´´を維持するために排出シュータ31の対排出オーガ角度θ´を変更するので、排出オーガ13の上昇に伴い、排出オーガ13内の穀粒を詰まらせることなく、排出オーガ13から容易に排出させることができる。特に、搬送穀粒が湿材時において、上記効果が顕著である。
【0048】
以上詳述したように、この例のコンバイン1の排出オーガ13は、穀粒を貯留する穀粒タンク10に、貯留した穀粒を排出するための排出オーガ13を昇降かつ旋回自在に連通連設するとともに、排出オーガ13の先端部に備えた穀粒を排出する排出シュータ31は、この排出シュータ31の回動支点軸32(回動基部)を中心として、上下方向に回動自在に備えるとともに、排出シュータ31は、地面に平行な水平面に対する対地角度αおよび排出オーガ13の延長線に対する対排出オーガ角度θを変更可能にするとともに、排出オーガ13の昇降に応じて、対地角度αもしくは対排出オーガ角度θを制御するものである。
【0049】
加えて、排出オーガ13の昇降時に、排出シュータ31における設定した対地角度α´´の維持に応じて、対排出オーガ角度θを制御し、かつ、排出シュータ31は、所定の対排出オーガ角度θ´による排出オーガ13の上昇に伴い、設定した対地角度α´´に到達するまでの間、所定の対排出オーガ角度θ´を維持するとともに、設定対地角度α´´に到達した後、さらに排出オーガ13の上昇に伴い、対排出オーガ角度θ´を制御して、設定対地角度α´´を維持する。
【産業上の利用可能性】
【0050】
なお、この発明は、先端部に穀粒を排出させる排出シュータを設けた排出オーガを備えるあらゆるコンバインに適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
12 縦オーガ
13 排出オーガ
31 排出シュータ
32 回動支点軸
33 排出回動部
35 排出筒
s1 旋回角度検出器
s2 昇降角度検出器
s3 対地角度検出器
s4 対排出オーガ角度検出器
イ,ロ,ハ,ニ,ホ,ヘ 昇降位置
α 対地角度
θ 対排出オーガ角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粒を貯留する穀粒タンクに、貯留した穀粒を排出するための排出オーガを昇降かつ旋回自在に連通連設するとともに、前記排出オーガの先端部に、穀粒を排出する排出シュータを備え、
前記排出シュータは、前記排出シュータの回動基部を中心として、上下方向に回動自在に備えるコンバインの排出オーガにおいて、
前記排出シュータは、地面に平行な水平面に対する対地角度および前記排出オーガの延長線に対する対排出オーガ角度を変更可能にするとともに、
前記排出オーガの昇降に応じて、前記対地角度もしくは前記対排出オーガ角度を制御することを特徴とするコンバインの排出オーガ。
【請求項2】
前記排出オーガの昇降時に、設定した前記対地角度の維持に応じて、前記対排出オーガ角度を制御することを特徴とする、請求項1に記載のコンバインの排出オーガ。
【請求項3】
前記排出シュータは、所定の前記対排出オーガ角度による前記排出オーガの上昇に伴い、設定した前記対地角度に到達するまでの間、前記所定の対排出オーガ角度を維持するとともに、前記対地角度に到達した後、さらに前記排出オーガの上昇に伴い、前記対排出オーガ角度を制御して、前記設定対地角度を維持することを特徴とする、請求項1に記載のコンバインの排出オーガ。
【請求項4】
前記設定対地角度は、前記排出オーガに対して、機体の外方および内方に向けてそれぞれ20度〜60度の範囲内とすることを特徴とする、請求項1〜2に記載のコンバインの排出オーガ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−62089(P2011−62089A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212987(P2009−212987)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】