説明

コンバイン

【課題】穀粒排出オーガの自動旋回に係る旋回指令手段をシンプルで操作が容易なものとし、かつ、穀粒排出オーガの自動旋回に係る誤操作を防止するコンバインを提供する。
【解決手段】穀粒排出オーガが停止する作業位置は、旋回セット操作スイッチ153を一回押す毎に、収納位置からの旋回量が最も小さい作業位置から順に大きい作業位置へ変更され、旋回セット操作スイッチ153を作業位置の数よりも一回多く押すと穀粒排出オーガ15の旋回が停止し、さらに旋回セット操作スイッチ153を一回押すと再び穀粒排出オーガ15が停止する作業位置が収納位置からの旋回量が最も小さい作業位置に変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回用アクチュエータにより機体に対して旋回するとともに、昇降用アクチュエータにより機体に対して昇降する穀粒排出オーガを備えるコンバインの技術に関する。より詳細には、コンバインの穀粒排出オーガの旋回制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、収穫した穀粒をグレンタンクに貯溜し、グレンタンク内の穀粒を排出するために、穀粒排出オーガが設けられている。該穀粒排出オーガは旋回用アクチュエータにより機体に対して旋回可能とするとともに、昇降用アクチュエータにより機体に対して昇降可能とし、旋回方向に沿って設定された収納位置(不使用時の穀粒排出オーガの位置)まで穀粒排出オーガを自動旋回させるオートリターン機能や、旋回方向に沿って設定された作業位置(グレンタンクに貯溜された穀粒をトラックの荷台等に移載する時など、使用時の穀粒排出オーガの位置)まで穀粒排出オーガを自動旋回させるオートセット機能を備えたコンバインの技術は公知となっている。そして、このようなオートリターン機能およびオートセット機能を操作する旋回指令手段は通常、運転室内(運転席近傍)に設けられ、作業者は運転室内で旋回指令手段を操作して穀粒排出オーガの旋回を行っている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のコンバインの場合、穀粒排出オーガの旋回指令手段であるオーガ操作部には平面視のコンバインを模した表示部が設けられ、該表示部に対して位置関係を合わせる形で、収納位置(格納位置)と、三箇所の作業位置(右側排出位置、左側排出位置、後方排出位置)の計四箇所にそれぞれ自動旋回用スイッチ(格納スイッチ、右側排出スイッチ、左側排出スイッチ、後方排出スイッチ)が設けられている。
このような自動旋回用スイッチは、一度押すと穀粒排出オーガの旋回中に停止スイッチを押さない限り、スイッチから手を離した状態でも目標となる位置まで穀粒排出オーガが旋回する。また、穀粒排出オーガの旋回中に別の自動旋回用スイッチを押すと、後に押した自動旋回用スイッチの目標位置に向かって穀粒排出オーガが旋回する。
さらに、これらの自動旋回用スイッチの近傍にはそれぞれ点灯手段である表示ランプが設けられ、作業者が押した自動旋回スイッチに対応する表示ランプが穀粒排出オーガの旋回時に点灯する構成となっている。その他、手動操作により穀粒排出オーガの上昇・下降および左右旋回を行う操作レバーや穀粒排出オーガ内の螺旋体を駆動力の伝達・遮断を行うクラッチ入切スイッチも設けられている。
【特許文献1】特開2002−281816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の従来のコンバインの場合、旋回指令手段であるオーガ操作部に設けられた穀粒排出オーガの自動旋回操作に係る操作スイッチの個数(格納スイッチ、右側排出スイッチ、左側排出スイッチ、後方排出スイッチ、停止スイッチの計五個)および表示ランプの個数(計四個)は多く、操作が複雑になるとともに、旋回指令手段の製造コストを上昇させる要因となる。
【0005】
また、誤って作業者が意図しない作業位置に対応する自動旋回用の操作スイッチを操作した場合、穀粒排出オーガは停止ボタンを押さない限り目標位置に到達するまで旋回を続けるので、意図しない作業位置付近に干渉物等が存在すると、誤って穀粒排出オーガを干渉物に接触させる場合がある。このとき、作業者は慌てていて、適切に停止スイッチを操作することが困難な場合がある。
【0006】
さらに、自動旋回用の操作スイッチによる穀粒排出オーガの自動旋回を行う場合、作業者が後方を向いて作業することが多く、意図した作業位置に対応する自動旋回スイッチを押した場合であっても、作業者が意図しない方向に穀粒排出オーガが旋回し、意図しない旋回方向の先にある干渉物と誤って接触する場合がある。
本発明は以上の如き状況に鑑み、穀粒排出オーガの自動旋回に係る旋回指令手段をシンプルで操作が容易なものとし、かつ、穀粒排出オーガの自動旋回に係る誤操作を防止するコンバインを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1においては、旋回用アクチュエータにより機体に対して旋回するとともに、昇降用アクチュエータにより機体に対して昇降する穀粒排出オーガと、旋回方向に沿って設定された収納位置および旋回方向に沿って設定された単数または複数の作業位置の間で前記穀粒排出オーガを旋回させるための指令を発する旋回指令手段と、該旋回指令手段から発せられた指令に基づいて穀粒排出オーガを目標となる収納位置または作業位置に旋回させる制御手段とを備えるコンバインにおいて、穀粒排出オーガを収納位置に近づく方向に旋回させる収納操作スイッチと穀粒排出オーガを収納位置から遠ざかる方向に旋回させる旋回セット操作スイッチとからなる自動旋回用の操作スイッチが設けられた旋回指令手段と、旋回セット操作スイッチを押す回数に応じて予め定められた作業位置まで穀粒排出オーガを旋回させる制御手段とを備えるものである。
また、穀粒排出オーガが停止する作業位置は、旋回セット操作スイッチを一回押す毎に、収納位置からの旋回量が最も小さい作業位置から順に大きい作業位置へ変更され、旋回セット操作スイッチを作業位置の数よりも一回多く押すと穀粒排出オーガの旋回が停止し、さらに旋回セット操作スイッチを一回押すと再び穀粒排出オーガが停止する作業位置が収納位置からの旋回量が最も小さい作業位置に変更されるものである。
【0008】
請求項2においては、旋回用アクチュエータにより機体に対して旋回するとともに、昇降用アクチュエータにより機体に対して昇降する穀粒排出オーガと、旋回方向に沿って設定された収納位置および旋回方向に沿って設定された単数または複数の作業位置の間で前記穀粒排出オーガを旋回させるための指令を発する旋回指令手段と、該旋回指令手段から発せられた指令に基づいて穀粒排出オーガを目標となる収納位置または作業位置に旋回させる制御手段とを備えるコンバインにおいて、穀粒排出オーガを収納位置に近づく方向に旋回させる収納操作スイッチと穀粒排出オーガを収納位置から遠ざかる方向に旋回させる旋回セット操作スイッチとからなる自動旋回用の操作スイッチが設けられた旋回指令手段と、収納位置と作業位置との間または隣接する二つの作業位置の間に単数または複数の停止位置を設定するとともに、押された操作スイッチにより定められた旋回方向において、停止位置または収納位置または作業位置のうち最も近い位置まで穀粒排出オーガを旋回させる制御手段とを備えるものである。
【0009】
請求項3においては、旋回用アクチュエータにより機体に対して旋回するとともに、昇降用アクチュエータにより機体に対して昇降する穀粒排出オーガと、旋回方向に沿って設定された収納位置および旋回方向に沿って設定された単数または複数の作業位置の間で前記穀粒排出オーガを旋回させるための指令を発する旋回指令手段と、該旋回指令手段から発せられた指令に基づいて穀粒排出オーガを目標となる収納位置または作業位置に旋回させる制御手段とを備えるコンバインにおいて、穀粒排出オーガを収納位置に近づく方向に旋回させる収納操作スイッチと穀粒排出オーガを右方向に旋回させる右旋回操作スイッチと穀粒排出オーガを左方向に旋回させる左旋回操作スイッチとからなる自動旋回用の操作スイッチが設けられた旋回指令手段と、収納位置と作業位置との間または隣接する二つの作業位置の間に単数または複数の停止位置を予め設定するとともに、押された操作スイッチにより定められた旋回方向において、停止位置または収納位置または作業位置のうち最も近い位置まで穀粒排出オーガを旋回させる制御手段とを備えるものである。
【0010】
請求項4においては、旋回用アクチュエータにより機体に対して旋回するとともに、昇降用アクチュエータにより機体に対して昇降する穀粒排出オーガと、旋回方向に沿って設定された収納位置および旋回方向に沿って設定された単数または複数の作業位置の間で前記穀粒排出オーガを旋回させるための指令を発する旋回指令手段と、該旋回指令手段から発せられた指令に基づいて穀粒排出オーガを目標となる収納位置または作業位置に旋回させる制御手段とを備えるコンバインにおいて、穀粒排出オーガを収納位置に近づく方向に旋回させる収納操作スイッチと穀粒排出オーガを右方向に旋回させる右旋回操作スイッチと穀粒排出オーガを左方向に旋回させる左旋回操作スイッチとからなる自動旋回用の操作スイッチが設けられた旋回指令手段と、右旋回操作スイッチを押した回数により予め設定された作業位置に向かって穀粒排出オーガを右旋回させるとともに、左旋回操作スイッチを押した回数により予め設定された作業位置に向かって穀粒排出オーガを左旋回させる制御手段とを備えるものである。
【0011】
請求項5においては、右旋回操作スイッチの操作は穀粒排出オーガが右旋回中または旋回を停止した状態でのみ受け付けられ、左旋回操作スイッチの操作は穀粒排出オーガが左旋回中または旋回を停止した状態でのみ受け付けられるものである。
また、収納操作スイッチの操作は穀粒排出オーガが旋回を停止した状態でのみ受け付けられるものである。
また、前記旋回指令手段に備えられた複数の操作スイッチのいずれかを押して穀粒排出オーガが旋回している最中に異なる操作スイッチを押すと、穀粒排出オーガの旋回が中止されるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
請求項1に示す如く、旋回用アクチュエータにより機体に対して旋回するとともに、昇降用アクチュエータにより機体に対して昇降する穀粒排出オーガと、旋回方向に沿って設定された収納位置および旋回方向に沿って設定された単数または複数の作業位置の間で前記穀粒排出オーガを旋回させるための指令を発する旋回指令手段と、該旋回指令手段から発せられた指令に基づいて穀粒排出オーガを目標となる収納位置または作業位置に旋回させる制御手段とを備えるコンバインにおいて、穀粒排出オーガを収納位置に近づく方向に旋回させる収納操作スイッチと穀粒排出オーガを収納位置から遠ざかる方向に旋回させる旋回セット操作スイッチとからなる自動旋回用の操作スイッチが設けられた旋回指令手段と、旋回セット操作スイッチを押す回数に応じて予め定められた作業位置まで穀粒排出オーガを旋回させる制御手段とを備えるので、操作性に優れ、誤操作を防止可能であるとともに、部品点数の削減が可能である。
また、穀粒排出オーガが停止する作業位置は、旋回セット操作スイッチを一回押す毎に、収納位置からの旋回量が最も小さい作業位置から順に大きい作業位置へ変更され、旋回セット操作スイッチを作業位置の数よりも一回多く押すと穀粒排出オーガの旋回が停止し、さらに旋回セット操作スイッチを一回押すと再び穀粒排出オーガが停止する作業位置が収納位置からの旋回量が最も小さい作業位置に変更されるので、操作性に優れ、誤操作を防止可能であるとともに、部品点数の削減が可能である。
【0013】
請求項2に示す如く、旋回用アクチュエータにより機体に対して旋回するとともに、昇降用アクチュエータにより機体に対して昇降する穀粒排出オーガと、旋回方向に沿って設定された収納位置および旋回方向に沿って設定された単数または複数の作業位置の間で前記穀粒排出オーガを旋回させるための指令を発する旋回指令手段と、該旋回指令手段から発せられた指令に基づいて穀粒排出オーガを目標となる収納位置または作業位置に旋回させる制御手段とを備えるコンバインにおいて、穀粒排出オーガを収納位置に近づく方向に旋回させる収納操作スイッチと穀粒排出オーガを収納位置から遠ざかる方向に旋回させる旋回セット操作スイッチとからなる自動旋回用の操作スイッチが設けられた旋回指令手段と、収納位置と作業位置との間または隣接する二つの作業位置の間に単数または複数の停止位置を設定するとともに、押された操作スイッチにより定められた旋回方向において、停止位置または収納位置または作業位置のうち最も近い位置まで穀粒排出オーガを旋回させる制御手段とを備えるので、作業者が誤って作業者の意図とは異なる操作スイッチを押した場合でも、穀粒排出オーガが一度に目標とする収納位置または作業位置まで自動旋回せず、作業者の意図しない旋回方向に穀粒排出オーガが旋回したり、作業者の意図しない位置に向かって穀粒排出オーガが旋回して、穀粒排出オーガを誤って干渉物に接触させることを防止することが可能である。
また、操作性に優れ、誤操作を防止可能であるとともに、部品点数の削減が可能である。
【0014】
請求項3に示す如く、旋回用アクチュエータにより機体に対して旋回するとともに、昇降用アクチュエータにより機体に対して昇降する穀粒排出オーガと、旋回方向に沿って設定された収納位置および旋回方向に沿って設定された単数または複数の作業位置の間で前記穀粒排出オーガを旋回させるための指令を発する旋回指令手段と、該旋回指令手段から発せられた指令に基づいて穀粒排出オーガを目標となる収納位置または作業位置に旋回させる制御手段とを備えるコンバインにおいて、穀粒排出オーガを収納位置に近づく方向に旋回させる収納操作スイッチと穀粒排出オーガを右方向に旋回させる右旋回操作スイッチと穀粒排出オーガを左方向に旋回させる左旋回操作スイッチとからなる自動旋回用の操作スイッチが設けられた旋回指令手段と、収納位置と作業位置との間または隣接する二つの作業位置の間に単数または複数の停止位置を予め設定するとともに、押された操作スイッチにより定められた旋回方向において、停止位置または収納位置または作業位置のうち最も近い位置まで穀粒排出オーガを旋回させる制御手段とを備えるので、作業者が誤って作業者の意図とは異なる操作スイッチを押した場合でも、穀粒排出オーガが一度に目標とする収納位置または作業位置まで自動旋回せず、作業者の意図しない旋回方向に穀粒排出オーガが旋回したり、作業者の意図しない位置に向かって穀粒排出オーガが旋回して、穀粒排出オーガを誤って干渉物に接触させることを防止することが可能である。
また、操作性に優れ、誤操作を防止可能であるとともに、部品点数の削減が可能である。
【0015】
請求項4に示す如く、旋回用アクチュエータにより機体に対して旋回するとともに、昇降用アクチュエータにより機体に対して昇降する穀粒排出オーガと、旋回方向に沿って設定された収納位置および旋回方向に沿って設定された単数または複数の作業位置の間で前記穀粒排出オーガを旋回させるための指令を発する旋回指令手段と、該旋回指令手段から発せられた指令に基づいて穀粒排出オーガを目標となる収納位置または作業位置に旋回させる制御手段とを備えるコンバインにおいて、穀粒排出オーガを収納位置に近づく方向に旋回させる収納操作スイッチと穀粒排出オーガを右方向に旋回させる右旋回操作スイッチと穀粒排出オーガを左方向に旋回させる左旋回操作スイッチとからなる自動旋回用の操作スイッチが設けられた旋回指令手段と、右旋回操作スイッチを押した回数により予め設定された作業位置に向かって穀粒排出オーガを右旋回させるとともに、左旋回操作スイッチを押した回数により予め設定された作業位置に向かって穀粒排出オーガを左旋回させる制御手段とを備えるので、操作性に優れ、誤操作を防止可能であるとともに、部品点数の削減が可能である。
【0016】
請求項5に示す如く、右旋回操作スイッチの操作は穀粒排出オーガが右旋回中または旋回を停止した状態でのみ受け付けられ、左旋回操作スイッチの操作は穀粒排出オーガが左旋回中または旋回を停止した状態でのみ受け付けられるので、操作スイッチの誤操作を防止し、操作性を向上させることが可能である。
また、収納操作スイッチの操作は穀粒排出オーガが旋回を停止した状態でのみ受け付けられるので、操作スイッチの誤操作を防止し、操作性を向上させることが可能である。
また、前記旋回指令手段に備えられた複数の操作スイッチのいずれかを押して穀粒排出オーガが旋回している最中に異なる操作スイッチを押すと、穀粒排出オーガの旋回が中止されるので、操作スイッチを誤操作してもすぐに穀粒排出オーガの旋回を停止させることが可能である。また、穀粒排出オーガの旋回を停止させるための専用のスイッチを旋回指令手段に設ける必要がなく、部品点数を削減可能であるとともに、専用の停止スイッチを設けた場合と比較して、誤操作の停止が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1は本発明の実施の一形態であるコンバインの左側面図、図2は本発明の実施の一形態であるコンバインの平面図、図3は本発明の実施の一形態であるコンバインの右側面図、図4は本発明の実施の一形態であるコンバインの正面図である。
【0019】
図5はエンジンから穀粒排出オーガまでの動力伝達経路を示す模式図、図6は穀粒排出オーガの旋回機構の側面図、図7は穀粒排出オーガ先端部の斜視図、図8は穀粒排出オーガの収納位置および作業位置とコンバインの機体との位置関係を示す平面図、図9は旋回指令手段の第一実施例を示す図、図10は制御手段の第一実施例を示すブロック図である。
【0020】
図11は旋回指令手段の第一実施例および制御手段の第一実施例を用いた穀粒排出オーガの自動旋回作業における収納位置、作業位置および停止位置と、オーガの旋回方向との関係を示す図、図12は旋回指令手段の第二実施例を示す図、図13は制御手段の第二実施例を示すブロック図、図14は旋回指令手段の第二実施例および制御手段の第二実施例を用いた穀粒排出オーガの自動旋回作業における収納位置、作業位置および停止位置と、オーガの旋回方向との関係を示す図、図15は旋回指令手段の第三実施例を示す図である。
【0021】
以下では、図1から図4を用いて本発明の実施の一形態であるコンバイン201の全体構成について説明する。
なお、本発明は、実施の一形態であるコンバイン201に限定されず、旋回用アクチュエータにより機体に対して旋回するとともに、昇降用アクチュエータにより機体に対して昇降する穀粒排出オーガを備えるコンバイン(自脱型・汎用型)に広く適用可能である。
【0022】
クローラ式走行装置1上には機体フレーム2L・2Rが載置され、該機体フレーム2L・2R前端には引起し・刈取部3が昇降可能に配設されている。該引起し・刈取部3は前端に分草板4を突出して穀稈を分草し、その後部に引起しケース5を立設して該引起しケース5より突出したタイン6の回転により穀稈を引き起こし、前記分草板4後部に配設した刈刃7にて株元を刈り取るようにしている。
【0023】
刈り取られた穀稈は、上部搬送装置、下部搬送装置、縦搬送装置8にて後部へ搬送され、該縦搬送装置8の上端から株元がフィードチェーン9に受け継がれ、脱穀部12内に穀稈が搬送される。そして、該フィードチェーン9後端には排藁チェーン18が配設され、該排藁チェーン18後部下方には排藁カッター装置、拡散コンベアなどからなる排藁処理部19が形成され、排藁を切断して藁片にした後、拡散しながら圃場に均一放出するようにしている。
【0024】
また、前記脱穀部12側部には選別後の精粒を貯留するグレンタンク13が配設され、該グレンタンク13前部には運転室14が配設される一方、グレンタンク13後部には穀粒排出オーガ15の縦オーガ15aが立設され、該縦オーガ15aを中心にしてグレンタンク13が側方へ回動可能とし、本機内部側に配置した駆動系や油圧系のメンテナンスを容易にしている。
そして、該グレンタンク13の底部には排出コンベア16が前後方向に配設され、該排出コンベア16から前記穀粒排出オーガ15に動力が伝達されて、穀粒排出オーガ15先端よりトラック等へグレンタンク13内の穀粒を排出できるようにしている。更に、脱穀部12下方には、選別部17が配設され、脱穀部12から流下する穀粒や藁屑等(以下「処理物」とする)から穀粒を選別し、前記グレンタンク13に搬送するようにしている。
【0025】
次に、図5を用いてエンジンからグレンタンクおよび穀粒排出オーガへの駆動力伝達経路について説明する。
エンジン101の前方出力軸101bは、クローラ式走行装置1を駆動するための走行用ミッションケース47の入力軸と連結され、クローラ式走行装置1へ駆動力を伝達する。一方、後方出力軸101aには、脱穀部12や選別部17へ駆動力を伝達するためのプーリ102・102・102と、グレンタンク13および穀粒排出オーガ15へ駆動力を伝達するためのプーリ103とが嵌設される。
【0026】
グレンタンク13の底部前面はエンジン101の略後方に位置し、該グレンタンク13の底部前面には駆動ケース104が配設されている。そして、駆動ケース入力軸105が駆動ケース104から機体前方へ突出し、駆動ケース入力軸105の前端にはプーリ106が嵌設される。
前記後方出力軸101a後端に嵌設されたプーリ103と、駆動ケース入力軸105前端に嵌設されたプーリ106とにVベルト107が巻回され、エンジン101の駆動力の一部が駆動ケース104の入力軸105に伝達される。
また、Vベルト107には該Vベルト107のテンションプーリを兼ねるオーガクラッチ118が設けられ、駆動力を駆動ケース104より下流側へ伝達・遮断可能に構成される。
駆動ケース104内には互いに噛合する平歯車108a・108bが収納されており、平歯車108aは駆動ケース104に軸支された前記入力軸105の後端に外嵌固定され、平歯車108bは排出コンベア16の前端に嵌設された回転軸であるコンベア駆動軸56に外嵌固定される。また、平歯車108bの歯数は平歯車108aの歯数より多くなるよう構成されているので、スクリュー式の排出コンベア16の回転数はエンジン101の回転数より小さくなり、穀物を排出する際に大きな回転トルクを発生可能である。
なお、実施の一形態であるコンバイン201では駆動ケース104内の減速機構として二枚の平歯車108a・108bを使用したが、三枚以上使用しても良く、平歯車の個数は限定されない。
【0027】
排出コンベア16の後端にはベベルギア109が嵌設され、縦オーガ15a内のスクリュー式の縦送りコンベア110下端に嵌設されたベベルギア111と噛合している。一方、縦送りコンベア110上端にはベベルギア112が嵌設され、該ベベルギア112と噛合するベベルギア113、チェーンやスプロケットを内設する中間ケース114、続いてベベルギア115・116を経て穀粒排出オーガ15内のスクリュー式の横送りコンベア117を回転駆動する。
【0028】
このように構成することにより、グレンタンク13に貯溜された穀物は排出コンベア16により後方に搬送され、グレンタンク13後方に位置する縦オーガ15aを経て、穀粒排出オーガ15先端から強制的に排出可能である。
【0029】
次に、図2、図5、図6および図7を用いて穀粒排出オーガ15の各部の構造、および穀粒排出オーガ15の操作手段について説明する。
【0030】
図6に示すように、穀粒排出オーガ15の根元側は縦オーガ15aの上端に上下回動可能に枢着される。コンバイン201における昇降用アクチュエータであるオーガ昇降シリンダ130は、一端が縦オーガ15a側面より突設されたブラケット131に回動可能に枢着され、他端が穀粒排出オーガ15側面より突設されたブラケット132に回動可能に枢着される。該オーガ昇降シリンダ130の伸縮により、穀粒排出オーガ15は上下方向に回動する。
なお、コンバイン201における昇降用アクチュエータであるオーガ昇降シリンダ130は油圧式のシリンダであるが、その他の電気式または油圧式のモータでも良く、限定されない。
縦オーガ15aの中途部には平歯車133aが外嵌固定されており、旋回用アクチュエータであるオーガ旋回モータ134の回転軸134aに嵌設された平歯車133bと互いに噛合している。該オーガ旋回モータ134を作動させることにより、縦オーガ15aおよび穀粒排出オーガ15は一体的に旋回する。また、平歯車133bと同軸にオーガ旋回角センサ135が設けられる。
なお、コンバイン201における旋回用アクチュエータであるオーガ旋回モータ134は電気式のモータであるが、油圧式のモータでも、その他の油圧シリンダでも良く、限定されない。また、オーガ旋回角センサ135はレゾルバ、回転式ポテンショメータ、ロータリーエンコーダなどであり、該オーガ旋回角センサ135により、穀粒排出オーガ15の旋回角度を検知することが可能である。
【0031】
図7に示すように、穀粒排出オーガ15の先端には排出ケース136が設けられている。該排出ケース136内には、横送りコンベア117を軸支するためにボールベアリングなどからなる軸受け部が形成されている。排出ケース136はその下面が開口しており、該開口部の縁に沿って略円筒形状のスリーブ137が取り付けられている。また、排出ケース136正面には作業灯142が配設される。スリーブ137は可撓性の樹脂などで構成され、スリーブ137の下端が穀物排出口138となっている。
このように構成することにより、排出ケース136の下面から落下した穀物を周囲に飛散させず、穀物排出口138の直下近傍に集中して排出することが可能である。
【0032】
また、排出ケース136側面にはオーガ操作ボックス139が配設される。該オーガ操作ボックス139の正面にはオーガ手動操作レバー140、右旋回LED140a、左旋回LED140b、オーガクラッチスイッチ141などが設けられている。
【0033】
次に、図1、図2および図4を用いてコンバイン201におけるオーガレストの説明を行う。
オーガレスト52は、穀粒排出オーガ15を使用しないときに穀粒排出オーガ15を支持する部材である。以下では、穀粒排出オーガ15の旋回方向に関して「収納位置にある」とは、基本的には平面視で穀粒排出オーガ15がオーガレスト52上に位置する状態を指す。
オーガレスト52は、主にレスト部52aと支柱部52bとで構成される。レスト部52aは正面視略U字型に形成され、不使用時の穀粒排出オーガ15はオーガレスト52に載置固定される。該レスト部52aの上面(U字型に形成された内面)にはゴムや樹脂などの弾性部材が取り付けられており、穀粒排出オーガ15の胴体部が載置されていても走行中に振動音を発生することがない。支柱部52bは正面視で上半分がコンバインの左側方にやや屈曲した形状をした角パイプである。
【0034】
運転室14の筐体であるキャビンを支持するフレームには支柱部52bの下端部が固設される。また、支柱部52bの中途部と、前記キャビンを支持するフレームにおいて支柱部52bの下端部が固設された位置とは別の箇所と、の間には補強パイプ(図示せず)が固設され、オーガレスト52の強度が向上している。
【0035】
以上の如くオーガレスト52を構成することは、以下の利点がある。
すなわち、従来のオーガレストはグレンタンク13の上面に設けられていたが、穀粒排出オーガ15の重量を支持するために、グレンタンク13上面を補強しなければならず、グレンタンク13の重量増加の原因になっていた。また、グレンタンク13は、メンテナンス性などの観点から縦オーガ15aを中心軸として側方に回動するように構成されているが、該グレンタンク13を側方に回動する際にはメンテナンス作業とは直接関係がない穀粒排出オーガ15を上方に回動させる必要があるため、作業性に問題があった。
コンバイン201におけるオーガレスト52は、コンバインの機体を構成する構造体であるフレームに固設されており、十分な強度を有するとともに、穀粒排出オーガ15をオーガレスト52に載置固定したままでグレンタンク13を側方に回動可能であり、作業性が向上する。また、グレンタンク13上面を補強する必要がないので、グレンタンク13を軽量化可能である。
さらに、オーガレスト52は機体を構成するフレームに固設されており、運転室14の筐体であるキャビンに直接固設されていないので、走行中などにおいて穀粒排出オーガ15の振動が直接運転室14に伝播し、運転室14内の作業者の居住性を損ねることがない。
【0036】
以下では、図8を用いて、コンバイン201における穀粒排出オーガ15の収納位置および作業位置について説明する。
「収納位置」とは、走行中など穀粒排出オーガ15を使用しない時に該穀粒排出オーガ15が停止している位置である。コンバイン201においては、平面視で穀粒排出オーガ15がオーガレスト52上に位置する状態を指す。実際には、平面視で穀粒排出オーガ15がオーガレスト52上に位置する状態から昇降用アクチュエータであるオーガ昇降シリンダ130が短縮して穀粒排出オーガ15が下方に回動し、穀粒排出オーガ15がオーガレスト52上に載置された状態である。
「作業位置」とは、コンバイン201のグレンタンク13に貯溜された収穫物(穀粒)をトラックの荷台などに移載するなど穀粒排出オーガ15を使用する時に該穀粒排出オーガ15が停止している位置である。コンバイン201においては、平面視で穀粒排出オーガ15の先端部(排出ケース136)がコンバイン201の機体右側方に突出した「右側方作業位置」、穀粒排出オーガ15の先端部がコンバイン201の機体左側方に突出した「左側方作業位置」、穀粒排出オーガ15の先端部がコンバイン201の機体後方に突出した「後方作業位置」の計三箇所の作業位置が設定されている。
なお、コンバイン201においては作業位置が三箇所設定されているが、一箇所でも、二箇所でも、四箇所以上でも設定可能であり作業位置の設定箇所の数は限定されない。また、作業位置の収納位置からの旋回角度についても、例えば右側方作業位置を右側方やや後方寄りとしたり、後方作業位置を後方やや右側方寄りとしても良く、限定されない。
【0037】
<旋回指令手段および制御手段の第一実施例>
以下では、図9を用いて本発明における旋回指令手段の第一実施例である旋回指令手段150について説明する。
旋回指令手段150は、旋回方向に沿って設定された収納位置および旋回方向に沿って設定された複数の作業位置の間で前記穀粒排出オーガ15を旋回させるための指令を発するものである。旋回指令手段150は片手で持って操作できる程度の大きさの略直方体形状を呈し、運転室14内に設けられた座席14aの側方のサイドコラムに配置される。また、旋回指令手段150は有線で後述の制御手段53aに接続され、旋回指令手段150を座席14aの側方のサイドコラムから着脱可能に係止されている。
以上の如く構成することにより、作業者が運転室14内で後方を向いて作業する場合でも、旋回指令手段150を座席14aの側方のサイドコラムから取り外し、作業者の手元で操作することが可能であり作業性に優れる。
なお、該旋回指令手段150と制御手段53aとの送受信を有線ではなく無線にて行う構成としても良い。また、座席14aの側方のサイドコラムに限定せず、前方や後方等運転室14内の別の場所に旋回指令手段150を着脱可能に取り付けても良い。
【0038】
機体模式表示部151は、旋回指令手段150の操作面に設けられる。機体模式表示部151はコンバイン201の平面視の形状を模している。
収納操作スイッチの実施の一形態であるリターンスイッチ152は旋回指令手段150の操作面に設けられ、穀粒排出オーガ15を収納位置に近づける方向に自動旋回させる指令を発するためのスイッチである。
旋回セット操作スイッチの実施の一形態であるセットスイッチ153は旋回指令手段150の操作面に設けられ、穀粒排出オーガ15を収納位置から遠ざかる方向(収納位置から作業位置に向かう方向)に自動旋回させる指令を発するためのスイッチである。
【0039】
リターンスイッチ152は旋回指令手段150の操作面上において機体模式表示部151のコンバイン前部となる位置に配置されるとともに、セットスイッチ153は旋回指令手段150の操作面上において機体模式表示部151のコンバイン右側方部となる位置に配置され、リターンスイッチ152およびセットスイッチ153を押したときに作業者が穀粒排出オーガ15の旋回方向を認識することが容易である。
【0040】
点灯手段である表示ランプ154は旋回指令手段150の操作面上に一個設けられ、複数の異なる発光色で発光可能、かつ異なる点滅周期で点滅可能である。なお、表示ランプ154はLED等で構成される。
【0041】
オーガクラッチスイッチ155は旋回指令手段150の操作面上に設けられ、図5に示すオーガクラッチ118を操作して、エンジン101からの駆動力を穀粒排出オーガ15の螺旋体である縦送りコンベア110および横送りコンベア117に伝達および遮断するためのスイッチである。
【0042】
オーガ手動操作スイッチ156はオーガ上昇スイッチ156a、オーガ下降スイッチ156b、オーガ右旋回スイッチ156c、オーガ左旋回スイッチ156dの計四個のスイッチからなる。オーガ手動操作スイッチ156は穀粒排出オーガ15を手動操作するためのスイッチである。
なお、オーガ手動操作スイッチ156において「手動操作」とは、スイッチを押している間だけ穀粒排出オーガ15が上昇、下降、右旋回または左旋回し、スイッチから手を離したときの位置で穀粒排出オーガ15が停止することを指す。
【0043】
スイッチ追加部157はオプションで穀粒排出オーガ15に付加的な機能を装備したとき(例えば、穀粒排出オーガ15の先端部(穀粒排出口138)を揺動させる機能など)に、該付加機能を操作するためのスイッチを設ける部位である。
【0044】
ケーブル158は旋回指令手段150と後述の制御手段53aとを接続するものである。旋回指令手段150に設けられた各スイッチを操作したことを示す旋回指令手段150から制御手段53aへの信号、および穀粒排出オーガ15の状態(旋回中または停止中の区別、停止位置など)に関する制御手段53aから旋回指令手段150への信号が該ケーブル158を介して旋回指令手段150と制御手段53aとの間で送受信される。
【0045】
続いて、図10を用いて、旋回指令手段150に対応する制御手段の第一実施例である制御手段53aについて説明する。
制御手段53aは、旋回指令手段150からの指令に基づいてオートリターン作業(リターンスイッチ152を押して穀粒排出オーガ15を収納位置に自動旋回させる作業)やオートセット作業(セットスイッチ153を押して穀粒排出オーガ15を作業位置に自動旋回させる作業)などの穀粒排出オーガ15の自動旋回・上昇を行うとともに、その他手動による穀粒排出オーガ15の旋回・上昇を行うものであり、主にCPU54aとデータ記憶部55aとで構成される。
CPU54aは各種入力信号およびデータ記憶部55aに記憶された各種データを基にオートリターンおよびオートセットに関する演算処理を行い、各種出力信号を出力する。
データ記憶部55aは、穀粒排出オーガ15のオートセットやオートリターンに関する種々のデータが記憶される。また、該データには、穀粒排出オーガ15と、コンバイン201の他の構成部材との干渉を考慮した情報も含まれる。
【0046】
具体的には、運転室14のキャビン等は、オーガレスト52に載置固定されたときの穀粒排出オーガ15の高さよりも上方に突出しており、穀粒排出オーガ15をオーガレスト52からわずかに上昇させただけで旋回させると、穀粒排出オーガ15が運転室14のキャビン等に接触し、変形・破損の原因となる。
そこで、穀粒排出オーガ15と運転室14のキャビンやその他の構成部材とが干渉する可能性のある位置に対応するオーガ旋回角度をデータ記憶部55aに記憶させておき、該位置に穀粒排出オーガ15が到達したときには自動的に穀粒排出オーガ15を上昇させるように構成する。
なお、制御手段の第一実施例ではデータ記憶部55aとしてEEPROM(Electrionically Erasable and Programmable Read Only Memory:不揮発性半導体メモリの一種で、電気的に内容を書き込み可能な読み出し専用記憶装置)を用いたが、その他の形式のROMや他の記憶媒体などでも良い。また、制御手段53aは、コンバイン201を構成する他の構成部材を制御するための別の制御手段と別体としても、一体としても良い。
【0047】
CPU54aへ入力される信号(情報)としては、エンジン101からのエンジン回転数に関する信号、リターンスイッチ152が押されたことを示す信号、セットスイッチ153が押されたことを示す信号、オーガクラッチスイッチ155が押されたことを示す信号、オーガ手動操作スイッチ156を構成する四個のスイッチであるオーガ上昇スイッチ156a、オーガ下降スイッチ156b、オーガ右旋回スイッチ156c、オーガ左旋回スイッチ156dのいずれか一個、またはオーガ上昇スイッチ156aとオーガ下降スイッチ156bのいずれか一方とオーガ右旋回スイッチ156cとオーガ左旋回スイッチ156dのいずれか一方との組み合わせが押されていることを示す信号、オーガ手動操作レバー140が操作されていることを示す信号、オーガクラッチスイッチ141が押されたことを示す信号、オーガ昇降角センサ130aからの機体に対する穀粒排出オーガ15の昇降角度(回動角度)に関する信号、オーガ旋回角センサ135からの機体に対する穀粒排出オーガ15の旋回角度に関する信号、等が挙げられる。
【0048】
一方、CPU54aから出力される信号(情報)としては、オーガ昇降シリンダ130を作動させるための信号、オーガ旋回モータ134を作動させるための信号、オーガクラッチ118を作動させるための信号、右旋回LED140aを点灯または点滅させて穀粒排出オーガ15が右旋回していることを示すための信号、左旋回LED140bを点灯または点滅させて穀粒排出オーガ15が左旋回していることを示すための信号、表示ランプ154の発光色および点灯または点滅により穀粒排出オーガ15の状態を示すための信号、等が挙げられる。
【0049】
<旋回指令手段および制御手段の第一実施例を用いた自動旋回作業(1)>
続いて、図8から図10を用いて旋回指令手段の第一実施例である旋回指令手段150、および制御手段の第一実施例である制御手段53aを用いた自動旋回作業(オートリターン作業およびオートセット作業)の第一の実施形態について説明する。
図8に示す如く、コンバイン201の機体前方やや左寄りとなる方向に収納位置が設定される。また、機体右側方となる方向には右側方作業位置、機体後方となる方向には後方作業位置、機体左側方となる方向には左側方作業位置がそれぞれ設定される。
これら収納位置、右側方作業位置、後方作業位置および左側方作業位置に穀粒排出オーガ15が位置するときのオーガ旋回角センサ135の信号(電流値または電圧値)に関する情報がデータ記憶部55aに予め記憶されている。
【0050】
旋回指令手段の第一実施例である旋回指令手段150、および制御手段の第一実施例である制御手段53aを用いた自動旋回作業においては、リターンスイッチ152を押したときの穀粒排出オーガ15の旋回方向は平面視で左回り(反時計回り)である。また、セットスイッチ153を押したときの穀粒排出オーガ15の旋回方向は平面視で右回り(時計回り)である。
図8に示す如く、収納位置に穀粒排出オーガ15が位置しているときにセットスイッチ153を一回押すと、穀粒排出オーガ15は旋回時にオーガレスト52と干渉しない位置まで上方に回動し、右回り(時計回り)に旋回する。そして、収納位置から最も近い作業位置である右側方作業位置まで右回り(時計回り)に旋回後、停止する。
次に、右側方作業位置に穀粒排出オーガ15が位置しているときにセットスイッチ153を一回押すと、穀粒排出オーガ15は旋回時にコンバイン201の他の部材と干渉しない位置まで上方に回動し、右回り(時計回り)に旋回する。そして、旋回方向において右側方作業位置から最も近い作業位置である後方作業位置まで右回り(時計回り)に旋回後、停止する。
続いて、後方作業位置に穀粒排出オーガ15が位置しているときにセットスイッチ153を一回押すと、穀粒排出オーガ15は旋回時にコンバイン201の他の部材と干渉しない位置まで上方に回動し、右回り(時計回り)に旋回する。そして、旋回方向において後方作業位置から最も近い作業位置である左側方作業位置まで右回り(時計回り)に旋回後、停止する。
【0051】
収納位置で一回セットスイッチ153を押し、収納位置から右側方作業位置に向かって穀粒排出オーガ15が旋回している最中にさらにセットスイッチ153を一回押すと、穀粒排出オーガ15は右側方作業位置で停止せずに旋回を続け、後方作業位置まで旋回後、停止する。
また、収納位置で一回セットスイッチ153を押し、収納位置から右側方作業位置に向かって穀粒排出オーガ15が旋回している最中にセットスイッチ153を二回押すと、穀粒排出オーガ15は右側方作業位置および後方作業位置で停止せずに旋回を続け、左側方作業位置まで旋回後、停止する。
【0052】
さらに、収納位置でセットスイッチ153を最初に押してから、穀粒排出オーガ15が旋回中に、セットスイッチ153を押した回数が四回となったとき(すなわち、作業位置の数よりもセットスイッチ153を押した回数が一回多くなったとき)、穀粒排出オーガ15は旋回を中止する。そして、旋回を中止してからさらにセットスイッチ153を一回押すと、右側方作業位置に向かって旋回を始める(この場合、穀粒排出オーガ15が旋回を中止した位置が右側方作業位置よりも右旋回した位置のときは穀粒排出オーガ15は左旋回し、穀粒排出オーガ15が旋回を中止した位置が右側方作業位置よりも左旋回した位置のときは穀粒排出オーガ15は右旋回することとなる)。
【0053】
いずれかの作業位置に穀粒排出オーガ15が停止しているとき、または、セットスイッチ153を四回(作業位置の数よりも一回多い回数)押したことにより穀粒排出オーガ15が停止しているときにリターンスイッチ152を押すと、穀粒排出オーガ15は収納位置に向かって旋回し、収納位置にて停止する。また、穀粒排出オーガ15が旋回中にリターンスイッチ152を押した場合、その操作は受け付けられない。このように構成することにより、操作スイッチの誤操作を防止し、操作性を向上させることが可能である。
【0054】
以上の如く構成することにより、穀粒排出オーガ15の自動旋回にかかる操作スイッチがリターンスイッチ152とセットスイッチ153の二つだけであり、操作性に優れ、誤操作を防止可能であるとともに、部品点数の削減が可能である。
【0055】
<旋回指令手段および制御手段の第一実施例を用いた自動旋回作業(2)>
続いて、図8から図11を用いて旋回指令手段の第一実施例である旋回指令手段150、および制御手段の第一実施例である制御手段53aを用いた自動旋回作業(オートリターン作業およびオートセット作業)の第二の実施形態について説明する。
図11に示す如く、コンバイン201の機体前方やや左寄りとなる方向に収納位置181が設定される。また、機体右側方となる方向には右側方作業位置182、機体後方となる方向には後方作業位置183、機体左側方となる方向には左側方作業位置184がそれぞれ設定される。
これら収納位置181、右側方作業位置182、後方作業位置183および左側方作業位置184に穀粒排出オーガ15が位置するときのオーガ旋回角センサ135の信号(電流値または電圧値)に関する情報がデータ記憶部55aに予め記憶されている。
また、本実施形態においては、前記収納位置および複数の作業位置とは別に、機体前方となる位置から穀粒排出オーガ15が30度ずつ時計回りに旋回した位置に第一停止位置191から第七停止位置197までの計七箇所の停止位置が設定される(収納位置または作業位置と重なる位置および平面視でコンバイン201と重なる位置を除く)。これらの停止位置に穀粒排出オーガ15が位置するときのオーガ旋回角センサ135の信号(電流値または電圧値)に関する情報も、データ記憶部55aに予め記憶されている。
【0056】
なお、本実施形態においては、隣接する停止位置間のオーガ旋回角度は30度で一定とし、停止位置の数は七箇所としたが、これに限定されず、停止位置の数を増減したり、隣接する停止位置間のオーガ旋回角度を他の角度(45度など)としても良い。また、隣接する停止位置間のオーガ旋回角度を全周に渡って一定とせず、作業状況に応じて右側方作業位置に近い位置では隣接する停止位置間のオーガ旋回角度を小さくする、といった設定を行うことも可能である。
【0057】
旋回指令手段の第一実施例である旋回指令手段150、および制御手段の第一実施例である制御手段53aを用いた自動旋回作業においては、リターンスイッチ152を押したときの穀粒排出オーガ15の旋回方向は平面視で左回り(反時計回り)である。また、セットスイッチ153を押したときの穀粒排出オーガ15の旋回方向は平面視で右回り(時計回り)である。
収納位置181に穀粒排出オーガ15が位置しているときにセットスイッチ153を押すと、穀粒排出オーガ15は旋回時にオーガレスト52と干渉しない位置まで上方に回動し、右回り(時計回り)に旋回する。このとき、穀粒排出オーガ15は収納位置181から見て、作業位置および停止位置のうち最も近い第一停止位置191まで右回り(時計回り)に旋回後、第一停止位置191で旋回を停止する。
【0058】
次にセットスイッチ153を押すと、穀粒排出オーガ15は第一停止位置191から見て、作業位置および停止位置のうち最も近い第二停止位置192まで右回り(時計回り)に旋回後、第二停止位置192で旋回を停止する。
このように、セットスイッチ153を押す度に、穀粒排出オーガ15はセットスイッチ153の旋回方向である右回り(時計回り)に旋回する。そして、セットスイッチ153を押したときに穀粒排出オーガ15があった位置から見て、停止位置、収納位置および作業位置のうち旋回方向に関して最も近い位置に停止する。このとき、制御手段53aにより、セットスイッチ153を押したときに穀粒排出オーガ15があった位置から見て、停止位置、収納位置および作業位置のうち旋回方向に関して最も近い位置が判断され、その位置まで穀粒排出オーガ15を旋回するようにオーガ旋回モータ134に信号が発せられ、オーガ旋回モータ134が作動する。
【0059】
同様に、リターンスイッチ152を押す度に、穀粒排出オーガ15はリターンスイッチ152の旋回方向である左回り(反時計回り)に旋回する。そして、リターンスイッチ152を押したときに穀粒排出オーガ15があった位置から見て、停止位置、収納位置および作業位置のうち旋回方向に関して最も近い位置に停止する。このとき、制御手段53aにより、リターンスイッチ152を押したときに穀粒排出オーガ15があった位置から見て、停止位置、収納位置および作業位置のうち旋回方向に関して最も近い位置が判断され、その位置まで穀粒排出オーガ15を旋回するようにオーガ旋回モータ134に信号が発せられ、オーガ旋回モータ134が作動する。
いずれかの作業位置または停止位置に穀粒排出オーガ15が停止しているとき、リターンスイッチ152を押すと、穀粒排出オーガ15は収納位置に向かって旋回するが、旋回中にリターンスイッチ152を押してもその操作については受け付けられないように構成される。このように構成することにより、操作スイッチの誤操作を防止し、操作性を向上させることが可能である。
【0060】
なお、穀粒排出オーガ15が自動旋回しているとき(リターンスイッチ152またはセットスイッチ153を押して穀粒排出オーガ15が旋回しているとき)に、異なる操作スイッチを押すと、その時点で穀粒排出オーガ15は旋回を中止するように構成しても良い。
【0061】
以上の如く構成することにより、旋回指令手段の第一実施例である旋回指令手段150、および制御手段の第一実施例である制御手段53aを用いた自動旋回作業の第二の実施形態は、以下のような利点を有する。
第一に、穀粒排出オーガ15の自動旋回にかかる操作スイッチがリターンスイッチ152とセットスイッチ153の二つだけであり、操作性に優れ、誤操作を防止可能であるとともに、部品点数の削減が可能である。
第二に、自動旋回に係る操作スイッチを押したときに穀粒排出オーガ15があった位置から見て、停止位置、収納位置および作業位置のうち旋回方向に関して最も近い位置まで穀粒排出オーガ15が旋回後停止するので、作業者が誤って作業者の意図とは異なる操作スイッチを押した場合でも、穀粒排出オーガ15が一度に目標とする位置まで自動旋回せず、一回の操作スイッチの操作による旋回角度が従来と比較して小さい。従って、穀粒排出オーガ15を誤って干渉物に接触させることを防止することが可能である。
第三に、穀粒排出オーガ15が自動旋回しているとき(リターンスイッチ152またはセットスイッチ153を押して穀粒排出オーガ15が旋回しているとき)に、異なる操作スイッチを押すと、その時点で穀粒排出オーガ15は旋回を中止するので、操作スイッチを誤操作してもすぐに穀粒排出オーガ15の旋回を停止させることが可能である。また、穀粒排出オーガ15の旋回を停止させるための専用のスイッチを旋回指令手段150に設ける必要がなく、部品点数を削減可能であるとともに、専用の停止スイッチを設けた場合と比較して、誤操作の停止が容易である(専用の停止スイッチを設けた場合、誤操作をすると作業者が慌ててしまい、専用のスイッチをうまく押すことができない場合がある)。
【0062】
<旋回指令手段および制御手段の第一実施例を用いた自動旋回作業(3)>
続いて、図8から図10を用いて旋回指令手段の第一実施例である旋回指令手段150、および制御手段の第一実施例である制御手段53aを用いた自動旋回作業(オートリターン作業およびオートセット作業)の第三の実施形態について説明する。
【0063】
旋回指令手段の第一実施例である旋回指令手段150、および制御手段の第一実施例である制御手段53aを用いた自動旋回作業の第三の実施形態は、前記旋回指令手段の第一実施例である旋回指令手段150、および制御手段の第一実施例である制御手段53aを用いた自動旋回作業の第二の実施形態と異なり、停止位置を設定する代わりに、自動旋回時における「所定の旋回角度」(例えば、30度)を予め設定しておき、穀粒排出オーガ15は押されたリターンスイッチ152またはセットスイッチ153により定められた旋回方向において所定の旋回角度以内に収納位置または作業位置があるときは収納位置または作業位置まで旋回し、旋回方向において所定の旋回角度以内に収納位置または作業位置がないときは所定の旋回角度だけ旋回する。
このように構成することにより、前記旋回指令手段の第一実施例である旋回指令手段150、および制御手段の第一実施例である制御手段53aを用いた自動旋回作業の第二の実施形態と略同様の効果を奏する。
このとき、所定の旋回角度は、全周において一定でも良く、オーガ旋回角センサにより検知される穀粒排出オーガの位置によって変化させても良い。
【0064】
<旋回指令手段および制御手段の第一実施例における表示ランプ>
また、旋回指令手段150に設けられた一個の表示ランプ154を、穀粒排出オーガ15の旋回中または停止中において、目標とする収納位置または作業位置または停止位置毎に異なる点滅周期または発光色または点滅周期と発光色との組み合わせで点灯するように構成することも可能である。
例えば、収納位置では緑色に点灯し、作業位置に停止したときには赤色に点灯し、回動時には点滅するようにする。または、収納位置では点灯し、第一停止位置では一回点灯して暫く消灯することを繰り返し、第二停止位置では2回点滅して暫く消灯することを繰り返し、第三停止位置では3回点滅を繰り返して暫く消灯等とする。または、点滅する周期を変更する。例えば、収納位置では点灯し、第一停止位置では点灯と消灯の時間が長く、第二、第三と収納位置より離れるに従って点灯と消灯の時間をそれぞれ所定の時間ずつ短くするのである。または、旋回指令手段150にブザーまたはスピーカを設けて音で認識させることもできる。例えば、収納位置では連続ONと一定時間鳴らし、第一停止位置では「ピッ」と鳴る。第二停止位置では「ピッ・ピッ」と鳴るという様にするのである。
このように構成することにより、作業者は穀粒排出オーガ15の状態(目標とする収納位置または作業位置または停止位置の区別、旋回中または停止中の区別、穀粒排出オーガ15の停止している位置など)を容易に把握することが可能であるとともに、作業者に穀粒排出オーガ15の状態を認識させるための部品点数を削減可能である。
【0065】
<旋回指令手段および制御手段の第二実施例>
以下では、図12を用いて本発明における旋回指令手段の第二実施例である旋回指令手段160について説明する。
旋回指令手段160は、旋回方向に沿って設定された収納位置および旋回方向に沿って設定された複数の作業位置の間で前記穀粒排出オーガ15を旋回させるための指令を発するものである。旋回指令手段160は片手で持って操作できる程度の大きさの略直方体形状を呈し、運転室14内に設けられた座席14aの側方のサイドコラムに配置される。また、旋回指令手段160は有線で後述の制御手段53bに接続され、旋回指令手段160を座席14aの側方のサイドコラムから着脱可能に係止されている。
以上の如く構成することにより、作業者が運転室14内で後方を向いて作業する場合でも、旋回指令手段160を座席14aの側方のサイドコラムから取り外し、作業者の手元で操作することが可能であり作業性に優れる。
なお、該旋回指令手段160と制御手段53bとの送受信を有線ではなく無線にて行う構成としても良い。また、座席14aの右側方のサイドコラムに限定せず、運転室14内の別の場所に旋回指令手段160を着脱可能に取り付けても良い。
【0066】
機体模式表示部161は、旋回指令手段160の操作面に設けられる。機体模式表示部161はコンバイン201の平面視の形状を模している。
収納操作スイッチの実施の一形態であるリターンスイッチ162は旋回指令手段160の操作面に設けられ、穀粒排出オーガ15を収納位置に近づける方向(図14において、収納位置181と穀粒排出オーガ15の旋回中心とを結ぶ直線D−Dよりも機体右側の領域においては左回り(反時計回り)であり、直線D−Dよりも機体左側の領域においては右回り(時計回り)である)に自動旋回させる指令を発するためのスイッチである。
旋回セット操作スイッチの実施の一形態である右旋回セットスイッチ163aは旋回指令手段160の操作面に設けられ、穀粒排出オーガ15を右回り(時計回り)で自動旋回させる指令を発するためのスイッチである。
旋回セット操作スイッチの実施の一形態である左旋回セットスイッチ163bは旋回指令手段160の操作面に設けられ、穀粒排出オーガ15を左回り(反時計回り)で自動旋回させる指令を発するためのスイッチである。
【0067】
リターンスイッチ162は旋回指令手段160の操作面上において機体模式表示部161のコンバイン前部となる位置に配置されるとともに、右旋回セットスイッチ163aは旋回指令手段160の操作面上において機体模式表示部161のコンバイン右側方部、左旋回セットスイッチ163bは旋回指令手段160の操作面上において機体模式表示部161のコンバイン左側方部となる位置に配置され、リターンスイッチ162、右旋回セットスイッチ163aおよび左旋回セットスイッチ163bを押したときに作業者が穀粒排出オーガ15の旋回方向を認識することが容易である。
【0068】
点灯手段である表示ランプ164は旋回指令手段160の操作面上に設けられ、複数の異なる発光色で発光可能、かつ異なる点滅周期で点滅可能である。なお、表示ランプ154はLED等で構成される。
【0069】
オーガクラッチスイッチ165は旋回指令手段160の操作面上に設けられ、図5に示すオーガクラッチ118を操作して、エンジン101からの駆動力を穀粒排出オーガ15の螺旋体である縦送りコンベア110および横送りコンベア117に伝達および遮断するためのスイッチである。
【0070】
オーガ手動操作スイッチ166はオーガ上昇スイッチ166a、オーガ下降スイッチ166b、オーガ右旋回スイッチ166c、オーガ左旋回スイッチ166dの計四個のスイッチからなる。オーガ手動操作スイッチ166は穀粒排出オーガ15を手動操作するためのスイッチである。
なお、オーガ手動操作スイッチ166において「手動操作」とは、スイッチを押している間だけ穀粒排出オーガ15が上昇、下降、右旋回または左旋回し、スイッチから手を離したときの位置で穀粒排出オーガ15が停止することを指す。
【0071】
スイッチ追加部167はオプションで穀粒排出オーガ15に付加的な機能を装備したとき(例えば、穀粒排出オーガ15の先端部(穀粒排出口138)を揺動させる機能など)に、該付加機能を操作するためのスイッチを設ける部位である。
【0072】
ケーブル168は旋回指令手段160と後述の制御手段53bとを接続するものである。旋回指令手段160に設けられた各スイッチを操作したことを示す旋回指令手段160から制御手段53bへの信号、および穀粒排出オーガ15の状態(旋回中または停止中の区別、停止位置など)に関する制御手段53bから旋回指令手段160への信号が該ケーブル168を介して旋回指令手段160と制御手段53bとの間で送受信される。
【0073】
続いて、図13を用いて、旋回指令手段160に対応する制御手段の第二実施例である制御手段53bについて説明する。
制御手段53bは、旋回指令手段160からの指令に基づいてオートリターン作業(リターンスイッチ162を押して穀粒排出オーガ15を収納位置に自動旋回させる作業)やオートセット作業(右旋回セットスイッチ163aまたは左旋回セットスイッチ163bを押して穀粒排出オーガ15を作業位置に自動旋回させる作業)などの穀粒排出オーガ15の自動旋回・上昇を行うとともに、その他手動による穀粒排出オーガ15の旋回・上昇を行うものであり、主にCPU54bとデータ記憶部55bとで構成される。
CPU54bは各種入力信号およびデータ記憶部55bに記憶された各種データを基にオートリターンおよびオートセットに関する演算処理を行い、各種出力信号を出力する。
データ記憶部55bは、穀粒排出オーガ15のオートセットやオートリターンに関する種々のデータが記憶される。また、該データには、穀粒排出オーガ15と、コンバイン201の他の構成部材との干渉を考慮した情報も含まれる。
【0074】
具体的には、運転室14のキャビン等は、オーガレスト52に載置固定されたときの穀粒排出オーガ15の高さよりも上方に突出しており、穀粒排出オーガ15をオーガレスト52からわずかに上昇させただけで旋回させると、穀粒排出オーガ15が運転室14のキャビン等に接触し、変形・破損の原因となる。
そこで、穀粒排出オーガ15と運転室14のキャビンやその他の構成部材とが干渉する可能性のある位置に対応するオーガ旋回角度をデータ記憶部55bに記憶させておき、該位置に穀粒排出オーガ15が到達したときには自動的に穀粒排出オーガ15を上昇させるように構成する。
なお、制御手段の第二実施例では該データ記憶部55bとしてEEPROM(Electrionically Erasable and Programmable Read Only Memory:不揮発性半導体メモリの一種で、電気的に内容を書き込み可能な読み出し専用記憶装置)を用いたが、その他の形式のROMや他の記憶媒体などでも良い。また、制御手段53bは、コンバイン201を構成する他の構成部材を制御するための別の制御手段と別体としても、一体としても良い。
【0075】
CPU54bへ入力される信号(情報)としては、エンジン101からのエンジン回転数に関する信号、リターンスイッチ162が押されたことを示す信号、右旋回セットスイッチ163aが押されたことを示す信号、左旋回セットスイッチ163bが押されたことを示す信号、オーガクラッチスイッチ165が押されたことを示す信号、オーガ手動操作スイッチ166を構成する四個のスイッチであるオーガ上昇スイッチ166a、オーガ下降スイッチ166b、オーガ右旋回スイッチ166c、オーガ左旋回スイッチ166dのいずれか一個、またはオーガ上昇スイッチ166aとオーガ下降スイッチ166bのいずれか一方とオーガ右旋回スイッチ166cとオーガ左旋回スイッチ166dのいずれか一方との組み合わせが押されていることを示す信号、オーガ手動操作レバー140が操作されていることを示す信号、オーガクラッチスイッチ141が押されたことを示す信号、オーガ昇降角センサ130aからの機体に対する穀粒排出オーガ15の昇降角度(回動角度)に関する信号、オーガ旋回角センサ135からの機体に対する穀粒排出オーガ15の旋回角度に関する信号、等が挙げられる。
【0076】
一方、CPU54bから出力される信号(情報)としては、オーガ昇降シリンダ130を作動させるための信号、オーガ旋回モータ134を作動させるための信号、オーガクラッチ118を作動させるための信号、右旋回LED140aを点灯または点滅させて穀粒排出オーガ15が右旋回していることを示すための信号、左旋回LED140bを点灯または点滅させて穀粒排出オーガ15が左旋回していることを示すための信号、表示ランプ164の発光色および点灯または点滅により穀粒排出オーガ15の状態を示すための信号、等が挙げられる。
【0077】
<旋回指令手段および制御手段の第二実施例を用いた自動旋回作業(1)>
続いて、図8、および図12から図14を用いて旋回指令手段の第二実施例である旋回指令手段160、および制御手段の第二実施例である制御手段53bを用いた自動旋回作業(オートリターン作業およびオートセット作業)の第一の実施形態について説明する。
図14に示す如く、コンバイン201の機体前方やや左寄りとなる方向に収納位置181が設定される。また、機体右側方となる方向には右側方作業位置182、機体後方となる方向には後方作業位置183、機体左側方となる方向には左側方作業位置184がそれぞれ設定される。
これら収納位置181、右側方作業位置182、後方作業位置183および左側方作業位置184に穀粒排出オーガ15が位置するときのオーガ旋回角センサ135の信号(電流値または電圧値)に関する情報がデータ記憶部55bに予め記憶されている。
また、本実施形態においては、前記収納位置および複数の作業位置とは別に、機体前方となる位置から穀粒排出オーガ15が30度ずつ時計回りに旋回した位置に第一停止位置191から第七停止位置197までの計七箇所の停止位置が設定される(収納位置または作業位置と重なる位置および平面視でコンバイン201と重なる位置を除く)。これらの停止位置に穀粒排出オーガ15が位置するときのオーガ旋回角センサ135の信号(電流値または電圧値)に関する情報も、データ記憶部55bに予め記憶されている。
【0078】
なお、本実施形態においては、隣接する停止位置間のオーガ旋回角度は30度で一定とし、停止位置の数は七箇所としたが、これに限定されず、停止位置の数を増減したり、隣接する停止位置間のオーガ旋回角度を他の角度(45度など)としても良い。また、隣接する停止位置間のオーガ旋回角度を全周に渡って一定とせず、作業状況に応じて右側方作業位置に近い位置では隣接する停止位置間のオーガ旋回角度を小さくする、といった設定を行うことも可能である。
【0079】
旋回指令手段の第二実施例である旋回指令手段160、および制御手段の第二実施例である制御手段53bを用いた自動旋回作業においては、リターンスイッチ162を押したときの穀粒排出オーガ15の旋回方向は、図14において収納位置181と穀粒排出オーガ15の旋回中心とを結ぶ直線D−Dよりも機体右側の領域においては左回り(反時計回り)であり、直線D−Dよりも機体左側の領域においては右回り(時計回り)である。また、右旋回セットスイッチ163aを押したときの穀粒排出オーガ15の旋回方向は平面視で右回り(時計回り)であり、左旋回セットスイッチ163bを押したときの穀粒排出オーガ15の旋回方向は平面視で左回り(反時計回り)である。
収納位置181に穀粒排出オーガ15が位置しているときに右旋回セットスイッチ163aを押すと、穀粒排出オーガ15は旋回時にオーガレスト52と干渉しない位置まで上方に回動し、右回り(時計回り)に旋回する。このとき、穀粒排出オーガ15は収納位置181から見て、作業位置および停止位置のうち最も近い第一停止位置191まで右回り(時計回り)に旋回後、第一停止位置191で旋回を停止する。
【0080】
次に右旋回セットスイッチ163aを押すと、穀粒排出オーガ15は第一停止位置191から見て、作業位置および停止位置のうち最も近い第二停止位置192まで右回り(時計回り)に旋回後、第二停止位置192で旋回を停止する。
このように、右旋回セットスイッチ163aを押す度に、穀粒排出オーガ15は右旋回セットスイッチ163aの旋回方向である右回り(時計回り)に旋回する。そして、右旋回セットスイッチ163aを押したときに穀粒排出オーガ15があった位置から見て、停止位置、収納位置および作業位置のうち旋回方向に関して最も近い位置に停止する。このとき、制御手段53bにより、右旋回セットスイッチ163aを押したときに穀粒排出オーガ15があった位置から見て、停止位置、収納位置および作業位置のうち旋回方向に関して最も近い位置が判断され、その位置まで穀粒排出オーガ15を旋回するようにオーガ旋回モータ134に信号が発せられ、オーガ旋回モータ134が作動する。
【0081】
同様に、左旋回セットスイッチ163bを押す度に、穀粒排出オーガ15は左旋回セットスイッチ163bの旋回方向である左回り(反時計回り)に旋回する。そして、左旋回セットスイッチ163bを押したときに穀粒排出オーガ15があった位置から見て、停止位置、収納位置および作業位置のうち旋回方向に関して最も近い位置に停止する。このとき、制御手段53bにより、左旋回セットスイッチ163bを押したときに穀粒排出オーガ15があった位置から見て、停止位置、収納位置および作業位置のうち旋回方向に関して最も近い位置が判断され、その位置まで穀粒排出オーガ15を旋回するようにオーガ旋回モータ134に信号が発せられ、オーガ旋回モータ134が作動する。
【0082】
また、リターンスイッチ162を押すと、現在の穀粒排出オーガ15が、図14における収納位置181と穀粒排出オーガ15の旋回中心とを結ぶ直線D−Dよりも機体右側の領域または機体左側の領域のいずれに位置しているかがオーガ旋回角センサ135からの情報に基づいて判断され、穀粒排出オーガ15の旋回方向が定められる。そして、リターンスイッチ162を押したときに穀粒排出オーガ15があった位置から見て、停止位置、収納位置および作業位置のうち、定められた旋回方向に関して最も近い位置が判断され、その位置まで穀粒排出オーガ15を旋回するようにオーガ旋回モータ134に信号が発せられ、オーガ旋回モータ134が作動する。
いずれかの作業位置または停止位置に穀粒排出オーガ15が停止しているとき、リターンスイッチ162を押すと、穀粒排出オーガ15は収納位置に向かって旋回するが、旋回中にリターンスイッチ162を押してもその操作については受け付けられないように構成される。このように構成することにより、操作スイッチの誤操作を防止し、操作性を向上させることが可能である。
また、右旋回セットスイッチ163aの操作は穀粒排出オーガ15が右旋回中または旋回を停止した状態でのみ受け付けられ、左旋回セットスイッチ163bの操作は穀粒排出オーガ15が左旋回中または旋回を停止した状態でのみ受け付けられるように構成される。このように構成することにより、操作スイッチの誤操作を防止し、操作性を向上させることが可能である。
【0083】
なお、穀粒排出オーガ15が自動旋回しているとき(リターンスイッチ162、右旋回セットスイッチ163aまたは左旋回セットスイッチ163bを押して穀粒排出オーガ15が旋回しているとき)に、異なる操作スイッチを押すと、その時点で穀粒排出オーガ15は旋回を中止するように構成しても良い。
【0084】
また、旋回指令手段および制御手段の第一実施例、旋回指令手段および制御手段の第二実施例とも一回のリターンスイッチ152・162の操作で収納位置まで回動するように構成することもできる。
【0085】
以上の如く構成することにより、旋回指令手段の第二実施例である旋回指令手段160、および制御手段の第二実施例である制御手段53bを用いた自動旋回作業の第一の実施形態は、以下のような利点を有する。
第一に、穀粒排出オーガ15の自動旋回にかかる操作スイッチがリターンスイッチ162と右旋回セットスイッチ163aと左旋回セットスイッチ163bの三つだけであり、操作性に優れ、誤操作を防止可能であるとともに、部品点数の削減が可能である。
第二に、自動旋回に係る操作スイッチを押したときに穀粒排出オーガ15があった位置から見て、停止位置、収納位置および作業位置のうち旋回方向に関して最も近い位置まで穀粒排出オーガ15が旋回後停止するので、作業者が誤って作業者の意図とは異なる操作スイッチを押した場合でも、穀粒排出オーガ15が一度に目標とする位置まで自動旋回せず、一回の操作スイッチの操作による旋回角度が従来と比較して小さい。従って、穀粒排出オーガ15を誤って干渉物に接触させることを防止することが可能である。
第三に、穀粒排出オーガ15が自動旋回しているとき(リターンスイッチ162、右旋回セットスイッチ163aまたは左旋回セットスイッチ163bを押して穀粒排出オーガ15が旋回しているとき)に、異なる操作スイッチを押すと、その時点で穀粒排出オーガ15は旋回を中止するので、操作スイッチを誤操作してもすぐに穀粒排出オーガ15の旋回を停止させることが可能である。また、穀粒排出オーガ15の旋回を停止させるための専用のスイッチを旋回指令手段150に設ける必要がなく、部品点数を削減可能であるとともに、専用の停止スイッチを設けた場合と比較して、誤操作の停止が容易である(専用の停止スイッチを設けた場合、誤操作をすると作業者が慌ててしまい、専用のスイッチをうまく押すことができない場合がある)。
【0086】
<旋回指令手段および制御手段の第二実施例を用いた自動旋回作業(2)>
続いて、図8、および図12から図14を用いて旋回指令手段の第二実施例である旋回指令手段160、および制御手段の第二実施例である制御手段53bを用いた自動旋回作業(オートリターン作業およびオートセット作業)の第二の実施形態について説明する。
旋回指令手段の第二実施例である旋回指令手段160、および制御手段の第二実施例である制御手段53bを用いた自動旋回作業の第二の実施形態は、前記旋回指令手段の第二実施例である旋回指令手段160、および制御手段の第二実施例である制御手段53bを用いた自動旋回作業の第一の実施形態と異なり、停止位置を設定する代わりに、自動旋回時における「所定の旋回角度」(例えば、30度)を予め設定しておき、穀粒排出オーガ15は押されたリターンスイッチ162、右旋回セットスイッチ163aまたは左旋回セットスイッチ163bにより定められた旋回方向において所定の旋回角度以内に収納位置または作業位置があるときは収納位置または作業位置まで旋回し、旋回方向において所定の旋回角度以内に収納位置または作業位置がないときは所定の旋回角度だけ旋回する。
このように構成することにより、前記旋回指令手段の第二実施例である旋回指令手段160、および制御手段の第二実施例である制御手段53bを用いた自動旋回作業の第一の実施形態と略同様の効果を奏する。
このとき、所定の旋回角度は、全周において一定でも良く、オーガ旋回角センサにより検知される穀粒排出オーガの位置によって変化させても良い。
【0087】
<旋回指令手段および制御手段の第二実施例を用いた自動旋回作業(3)>
続いて、図8、図12および図13を用いて旋回指令手段の第二実施例である旋回指令手段160、および制御手段の第二実施例である制御手段53bを用いた自動旋回作業(オートリターン作業およびオートセット作業)の第三の実施形態について説明する。
図8に示す如く、コンバイン201の機体前方やや左寄りとなる方向に収納位置が設定される。また、機体右側方となる方向には右側方作業位置、機体後方となる方向には後方作業位置、機体左側方となる方向には左側方作業位置がそれぞれ設定される。
これら収納位置、右側方作業位置、後方作業位置および左側方作業位置に穀粒排出オーガ15が位置するときのオーガ旋回角センサ135の信号(電流値または電圧値)に関する情報がデータ記憶部55bに予め記憶されている。
【0088】
旋回指令手段の第二実施例である旋回指令手段160、および制御手段の第二実施例である制御手段53bを用いた自動旋回作業においては、リターンスイッチ162を押したときの穀粒排出オーガ15の旋回方向は、収納位置への旋回角度が小さくなる方でも良く、右旋回または左旋回のいずれかに固定しておいても良い。
図8に示す如く、収納位置に穀粒排出オーガ15が位置しているときに右旋回セットスイッチ163aを一回押すと、穀粒排出オーガ15は旋回時にオーガレスト52と干渉しない位置まで上方に回動し、右回り(時計回り)に旋回する。そして、右側方作業位置まで右回り(時計回り)に旋回後、停止する。
次に、右側方作業位置に穀粒排出オーガ15が位置しているときに右旋回セットスイッチ163aを一回押すと、穀粒排出オーガ15は旋回時にコンバイン201の他の部材と干渉しない位置まで上方に回動し、右回り(時計回り)に旋回する。そして、後方作業位置まで右回り(時計回り)に旋回後、停止する。
続いて、後方作業位置に穀粒排出オーガ15が位置しているときに右旋回セットスイッチ163aを一回押すと、穀粒排出オーガ15は旋回時にコンバイン201の他の部材と干渉しない位置まで上方に回動し、右回り(時計回り)に旋回する。そして、左側方作業位置まで右回り(時計回り)に旋回後、停止する。
【0089】
収納位置で一回右旋回セットスイッチ163aを押し、収納位置から右側方作業位置に向かって穀粒排出オーガ15が旋回している最中にさらに右旋回セットスイッチ163aを一回押すと、穀粒排出オーガ15は右側方作業位置で停止せずに旋回を続け、後方作業位置まで旋回後、停止する。
また、収納位置で一回右旋回セットスイッチ163aを押し、収納位置から右側方作業位置に向かって穀粒排出オーガ15が旋回している最中に右旋回セットスイッチ163aを二回押すと、穀粒排出オーガ15は右側方作業位置および後方作業位置で停止せずに旋回を続け、左側方作業位置まで旋回後、停止する。
【0090】
さらに、収納位置で右旋回セットスイッチ163aを最初に押してから、穀粒排出オーガ15が旋回中に、右旋回セットスイッチ163aを押した回数が四回となったとき(すなわち、作業位置の数よりも右旋回セットスイッチ163aを押した回数が一回多くなったとき)、穀粒排出オーガ15は旋回を中止する。そして、旋回を中止してからさらに右旋回セットスイッチ163aを一回押すと、右側方作業位置に向かって右旋回を始める。
【0091】
いずれかの作業位置に穀粒排出オーガ15が停止しているとき、または、右旋回セットスイッチ163aを四回(作業位置の数よりも一回多い回数)押したことにより穀粒排出オーガ15が停止しているときにリターンスイッチ162を押すと、穀粒排出オーガ15は収納位置に向かって旋回し、収納位置にて停止する。また、穀粒排出オーガ15が旋回中にリターンスイッチ162を押した場合、その操作は受け付けられない。このように構成することにより、操作スイッチの誤操作を防止し、操作性を向上させることが可能である。
【0092】
上記の操作方法は右旋回セットスイッチ163aについて説明したが、左旋回セットスイッチ163bについても略同様の操作となっている。なお、左旋回セットスイッチ163bについては、一回押したときの目標となる位置が左側方作業位置、二回押したときの目標となる位置が後方作業位置、三回押したときの目標となる位置が右側方作業位置である。
【0093】
以上の如く構成することにより、穀粒排出オーガ15の自動旋回にかかる操作スイッチがリターンスイッチ162と右旋回セットスイッチ163aと左旋回セットスイッチ163bの三つだけであり、操作性に優れ、誤操作を防止可能であるとともに、部品点数の削減が可能である。
【0094】
<旋回指令手段および制御手段の第二実施例における表示ランプ>
また、旋回指令手段160に設けられた一個の表示ランプ164を、穀粒排出オーガ15の旋回中または停止中において、目標とする収納位置または作業位置または停止位置毎に異なる点滅周期または発光色または点滅周期と発光色との組み合わせで点灯するように構成することも可能である。
例えば、収納位置では緑色に点灯し、作業位置に停止したときには赤色に点灯し、回動時には点滅するようにする。または、収納位置では点灯し、第一停止位置では一回点灯して暫く消灯することを繰り返し、第二停止位置では2回点滅して暫く消灯することを繰り返し、第三停止位置では3回点滅を繰り返して暫く消灯等とする。または、点滅する周期を変更する。例えば、収納位置では点灯し、第一停止位置では点灯と消灯の時間が長く、第二、第三と収納位置より離れるに従って点灯と消灯の時間をそれぞれ所定の時間ずつ短くするのである。または、旋回指令手段160にブザーまたはスピーカを設けて音で認識させることもできる。例えば、収納位置では連続ONと一定時間鳴らし、第一停止位置では「ピッ」と鳴る。第二停止位置では「ピッ・ピッ」と鳴るという様にするのである。
このように構成することにより、作業者は穀粒排出オーガ15の状態(目標とする収納位置または作業位置または停止位置の区別、旋回中または停止中の区別、穀粒排出オーガ15の停止している位置など)を容易に把握することが可能であるとともに、作業者に穀粒排出オーガ15の状態を認識させるための部品点数を削減可能である。
【0095】
<旋回指令手段の第三実施例>
以下では、図15を用いて本発明における旋回指令手段の第三実施例である旋回指令手段220について説明する。
【0096】
旋回指令手段220に設けられている機体模式表示部221、リターンスイッチ222、セットスイッチ223、表示ランプ224、オーガクラッチスイッチ225、オーガ手動操作スイッチ226(オーガ上昇スイッチ226a、オーガ下降スイッチ226b、オーガ右旋回スイッチ226c、オーガ左旋回スイッチ226d)、スイッチ追加部227およびケーブル228は、前記旋回指令手段の第一実施例である旋回指令手段150に設けられているものと略同じ機能を有している。従って、旋回指令手段220による自動旋回作業についても、前記第一実施例である旋回指令手段150による自動旋回作業と略同じとなる。
ただし、旋回指令手段220については、作業位置が右側方作業位置と後方作業位置の二箇所について設定されている。
【0097】
旋回指令手段220には、上記の部材の他に、オーガ作動表示手段であるオーガクラッチランプ229が設けられる。該オーガクラッチランプ229は、穀粒排出オーガ15内に設けられ、回転駆動により穀粒を機外に排出する螺旋体(縦送りコンベア110および横送りコンベア117)への駆動力の伝達および遮断を行うオーガクラッチ118を操作するクラッチ操作スイッチであるオーガクラッチスイッチ225を一回押してオーガクラッチ118が「入」のときに点灯(または点滅)し、オーガクラッチスイッチ225をもう一回押してオーガクラッチ118が「切」のときには点灯(または点滅)しないように構成されている。
このように構成することにより、作業者はオーガクラッチ118の作動状況を容易に把握することが可能であり、作業性に優れる。
【0098】
また、表示ランプ224の点灯方法については、穀粒排出オーガ15が収納位置に向かって旋回しているときには緑色に点灯し、穀粒排出オーガ15が右側方作業位置に向かって旋回しているときには赤色に点灯し、穀粒排出オーガ15が後方作業位置に向かって旋回しているときには赤色に点滅する。
このように構成することにより、作業者は穀粒排出オーガ15の作動状況(収納位置または二箇所の作業位置のいずれに向かって旋回しているか)を容易に把握することが可能であり、作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施の一形態であるコンバインの左側面図。
【図2】本発明の実施の一形態であるコンバインの平面図。
【図3】本発明の実施の一形態であるコンバインの右側面図。
【図4】本発明の実施の一形態であるコンバインの正面図。
【図5】エンジンから穀粒排出オーガまでの動力伝達経路を示す模式図。
【図6】穀粒排出オーガの旋回機構の側面図。
【図7】穀粒排出オーガ先端部の斜視図。
【図8】穀粒排出オーガの収納位置および作業位置とコンバインの機体との位置関係を示す平面図。
【図9】旋回指令手段の第一実施例を示す図。
【図10】制御手段の第一実施例を示すブロック図。
【図11】旋回指令手段の第一実施例および制御手段の第一実施例を用いた穀粒排出オーガの自動旋回作業における収納位置、作業位置および停止位置と、オーガの旋回方向との関係を示す図。
【図12】旋回指令手段の第二実施例を示す図。
【図13】制御手段の第二実施例を示すブロック図。
【図14】旋回指令手段の第二実施例および制御手段の第二実施例を用いた穀粒排出オーガの自動旋回作業における収納位置、作業位置および停止位置と、オーガの旋回方向との関係を示す図。
【図15】旋回指令手段の第三実施例を示す図。
【符号の説明】
【0100】
15 穀粒排出オーガ
130 オーガ昇降シリンダ(昇降用アクチュエータ)
134 オーガ旋回モータ(旋回用アクチュエータ)
150 旋回指令手段
152 リターンスイッチ(収納操作スイッチ)
153 セットスイッチ(旋回セット操作スイッチ)
154 表示ランプ(点灯手段)
201 コンバイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回用アクチュエータにより機体に対して旋回するとともに、昇降用アクチュエータにより機体に対して昇降する穀粒排出オーガと、旋回方向に沿って設定された収納位置および旋回方向に沿って設定された単数または複数の作業位置の間で前記穀粒排出オーガを旋回させるための指令を発する旋回指令手段と、該旋回指令手段から発せられた指令に基づいて穀粒排出オーガを目標となる収納位置または作業位置に旋回させる制御手段とを備えるコンバインにおいて、
穀粒排出オーガを収納位置に近づく方向に旋回させる収納操作スイッチと穀粒排出オーガを収納位置から遠ざかる方向に旋回させる旋回セット操作スイッチとからなる自動旋回用の操作スイッチが設けられた旋回指令手段と、旋回セット操作スイッチを押す回数に応じて予め定められた作業位置まで穀粒排出オーガを旋回させる制御手段とを備え、穀粒排出オーガが停止する作業位置は、旋回セット操作スイッチを一回押す毎に、収納位置からの旋回量が最も小さい作業位置から順に大きい作業位置へ変更され、旋回セット操作スイッチを作業位置の数よりも一回多く押すと穀粒排出オーガの旋回が停止し、さらに旋回セット操作スイッチを一回押すと再び穀粒排出オーガが停止する作業位置が収納位置からの旋回量が最も小さい作業位置に変更されることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
旋回用アクチュエータにより機体に対して旋回するとともに、昇降用アクチュエータにより機体に対して昇降する穀粒排出オーガと、旋回方向に沿って設定された収納位置および旋回方向に沿って設定された単数または複数の作業位置の間で前記穀粒排出オーガを旋回させるための指令を発する旋回指令手段と、該旋回指令手段から発せられた指令に基づいて穀粒排出オーガを目標となる収納位置または作業位置に旋回させる制御手段とを備えるコンバインにおいて、
穀粒排出オーガを収納位置に近づく方向に旋回させる収納操作スイッチと穀粒排出オーガを収納位置から遠ざかる方向に旋回させる旋回セット操作スイッチとからなる自動旋回用の操作スイッチが設けられた旋回指令手段と、収納位置と作業位置との間または隣接する二つの作業位置の間に単数または複数の停止位置を設定するとともに、押された操作スイッチにより定められた旋回方向において、停止位置または収納位置または作業位置のうち最も近い位置まで穀粒排出オーガを旋回させる制御手段とを備えることを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
旋回用アクチュエータにより機体に対して旋回するとともに、昇降用アクチュエータにより機体に対して昇降する穀粒排出オーガと、旋回方向に沿って設定された収納位置および旋回方向に沿って設定された単数または複数の作業位置の間で前記穀粒排出オーガを旋回させるための指令を発する旋回指令手段と、該旋回指令手段から発せられた指令に基づいて穀粒排出オーガを目標となる収納位置または作業位置に旋回させる制御手段とを備えるコンバインにおいて、
穀粒排出オーガを収納位置に近づく方向に旋回させる収納操作スイッチと穀粒排出オーガを右方向に旋回させる右旋回操作スイッチと穀粒排出オーガを左方向に旋回させる左旋回操作スイッチとからなる自動旋回用の操作スイッチが設けられた旋回指令手段と、収納位置と作業位置との間または隣接する二つの作業位置の間に単数または複数の停止位置を予め設定するとともに、押された操作スイッチにより定められた旋回方向において、停止位置または収納位置または作業位置のうち最も近い位置まで穀粒排出オーガを旋回させる制御手段とを備えることを特徴とするコンバイン。
【請求項4】
旋回用アクチュエータにより機体に対して旋回するとともに、昇降用アクチュエータにより機体に対して昇降する穀粒排出オーガと、旋回方向に沿って設定された収納位置および旋回方向に沿って設定された単数または複数の作業位置の間で前記穀粒排出オーガを旋回させるための指令を発する旋回指令手段と、該旋回指令手段から発せられた指令に基づいて穀粒排出オーガを目標となる収納位置または作業位置に旋回させる制御手段とを備えるコンバインにおいて、
穀粒排出オーガを収納位置に近づく方向に旋回させる収納操作スイッチと穀粒排出オーガを右方向に旋回させる右旋回操作スイッチと穀粒排出オーガを左方向に旋回させる左旋回操作スイッチとからなる自動旋回用の操作スイッチが設けられた旋回指令手段と、右旋回操作スイッチを押した回数により予め設定された作業位置に向かって穀粒排出オーガを右旋回させるとともに、左旋回操作スイッチを押した回数により予め設定された作業位置に向かって穀粒排出オーガを左旋回させる制御手段とを備えることを特徴とするコンバイン。
【請求項5】
右旋回操作スイッチの操作は穀粒排出オーガが右旋回中または旋回を停止した状態でのみ受け付けられ、左旋回操作スイッチの操作は穀粒排出オーガが左旋回中または旋回を停止した状態でのみ受け付けられ、前記収納操作スイッチの操作は穀粒排出オーガが旋回を停止した状態でのみ受け付けられ、前記旋回指令手段に備えられた複数の操作スイッチのいずれかを押して穀粒排出オーガが旋回している最中に異なる操作スイッチを押すと、穀粒排出オーガの旋回が中止されることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のコンバイン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2007−244397(P2007−244397A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179839(P2007−179839)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【分割の表示】特願2003−138569(P2003−138569)の分割
【原出願日】平成15年5月16日(2003.5.16)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】