説明

コンバイン

【課題】モニタの振動幅を制限してモニタの視認性を向上させると共に、外光による視認性の低下も回避する。
【解決手段】機体後方をカメラ16で撮影すると共に、撮影した機体後方画像をキャビン7内のモニタ17に表示する後方監視装置を備えたコンバイン1において、モニタ17を、モニタ取付部材20を介してキャビンフレーム9に吊持状に取り付けると共に、モニタ17の上端部をキャビン7の天井面に近接又は当接させる。また、キャビン7の天井面は、前段天井面21aと、該前段天井面21aの後端から立ち上がる立ち上がり面21bと、該立ち上がり面21bの上端から後方に延出する後段天井面21cとからなる段差部21dを有し、該段差部21dの後段天井面21cに対して、モニタ17の上端部を近接又は当接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茎稈の刈り取りや脱穀を行うコンバインに関し、詳しくは、機体後方を撮像手段で撮影すると共に、撮影した機体後方画像をキャビン内のモニタに表示する後方監視装置を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、この種のコンバインでは、機体後方に存在する死角部分を監視するために、機体後方を撮像手段で撮影すると共に、撮影した機体後方画像をキャビン内のモニタに表示する後方監視装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。キャビン内におけるモニタの取付位置は、オペレータの視認性を優先すると、オペレータの頭部前方位置(フロントガラス上部近傍位置)が好ましく、また、モニタの取付構造は、後付けにも容易に対応できるものであることが好ましい。例えば、図10に示すような取付部材101を介して、モニタ102をキャビンフレーム(図示せず)に吊持状に取り付けるようにすれば、キャビンの天井部103に追加の孔加工などを行わなくても、モニタ102を取付けることが可能になる。
【特許文献1】特開2008−5711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、図10に示すモニタ取付構造には、二つの問題点がある。
第一の問題点は、モニタが機体振動などに応じて振動するため、モニタの視認性が低下することである。モニタの振動は、取付部材の補強によってある程度抑えることが可能であるが、取付部材の補強だけでは、良好な視認性を確保することが困難である。
第二の問題点は、モニタ取付部における外光の入射量が多いため、モニタの視認性が低下することである。この問題は、モニタ取付部の周囲を遮光することにより解決し得るが、別途遮光部材が必要となるため、コストアップとなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、機体後方を撮像手段で撮影すると共に、撮影した機体後方画像をキャビン内のモニタに表示する後方監視装置を備えたコンバインにおいて、前記モニタを、取付部材を介してキャビンフレームに吊持状に取り付けると共に、モニタの上端部をキャビンの天井面に近接させたことを特徴とする。このようにすると、取付部材を短くして、モニタの振動を抑制できるだけでなく、キャビンの天井面を利用して、モニタの振動幅を制限できるので、モニタの視認性を向上させることが可能になる。しかも、モニタの上端部をキャビンの天井面に近接させたことにより、外光の入射量を抑えることができるので、外光による視認性の低下も回避することができる。
また、前記モニタの上端部をキャビンの天井面に当接させたことを特徴とする。このようにすると、モニタの振動がより確実に抑制されるので、モニタの視認性をさらに向上させることができる。
また、前記キャビンの天井面は、前段天井面と、該前段天井面の後端から立ち上がる立ち上がり面と、該立ち上がり面の上端から後方に延出する後段天井面とからなる段差部を有し、該段差部の後段天井面に対して、前記モニタの上端部を近接又は当接させたことを特徴とする。このようにすると、天井面に存在する段差部を利用して、外光の入射量をより効果的に減らすことができるので、モニタの視認性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1〜図3において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、茎稈を刈り取る前処理部2、刈り取った茎稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀部3、選別した穀粒を貯留する穀粒タンク4、穀粒タンク4内の穀粒を機外の任意の位置に排出する排出オーガ5、脱穀済みの排藁を後処理する後処理部6、操縦部を覆うキャビン7、クローラ式の走行部8などを備えて構成されている。
【0006】
キャビン7は、図4及び図5に示すキャビンフレーム9に、屋根部を構成するルーフユニット10、窓部を覆うフロントガラス11などの窓ガラス、乗降口を開閉自在に覆うドア12などを備えて構成されている。尚、本実施形態のキャビンフレーム9は、平面視長方形の屋根枠13を有しており、ここに窓枠14や乗降口枠15を一体的に結合して構成されるものである。
【0007】
コンバイン1には、機体後方に存在する死角部分を監視するために、機体後方をカメラ(撮像手段)16で撮影すると共に、撮影した機体後方画像をキャビン7内のモニタ17に表示する後方監視装置が設けられている。例えば、カメラ16は、CCDカメラで構成され、モニタ17は、液晶モニタで構成される。
【0008】
図6に示すように、カメラ16は、カメラ本体16aと、該カメラ本体16aを角度調節可能に支持するブラケット16bとを備えて構成されている。本実施形態のカメラ16は、カメラ取付部材18を介してコンバイン1の機体後部に取付けられており、具体的には、排藁カッタカバー19の上面部に形成される既存の孔19aを利用し、該孔19aに対してカメラ取付部材18の基端部をボルト・ナット18aで固定する一方、カメラ取付部材18の先端部にカメラ16のブラケット16bを固定してある。
【0009】
このようなカメラ取付構造によれば、追加の孔加工が不要であるため、取付作業が容易であるが、カメラ取付部材18が一点支持となるため、回止め対策や振動対策が必要となる。そこで、本実施形態では、カメラ取付部材18の先端側下部に、L字プレート18bを介して永久磁石18cを取付け、該永久磁石18cを磁性金属からなる排藁カッタカバー19の後面部に磁着させる。これにより、簡略な構成でありながら、カメラ取付部材18の回止め及び振動抑制が可能となる。
【0010】
一方、キャビン7内におけるモニタ17の取付位置は、オペレータの視認性を優先すると、オペレータの頭部前方位置(フロントガラス11の上部近傍位置)が好ましく、また、モニタ17の取付構造は、後付けにも容易に対応できるものであることが好ましい。そこで、本実施形態では、図7〜図9に示すように、モニタ取付部材20を介して、モニタ17をキャビンフレーム9(屋根枠13の左側フレーム)に吊持状に取り付ける。
【0011】
このようなモニタ取付構造によれば、キャビン7の天井パネル21に追加の孔加工などを行わなくても、モニタ17を好ましい位置に取付けることが可能になるが、二つの課題を解決する必要がある。第一の課題は、モニタ17が機体振動などに応じて振動し、視認性が低下することである。また、第二の課題は、モニタ取付部における外光の入射量が多いため、モニタ17の視認性が低下することである。
【0012】
そこで、本実施形態では、モニタ取付部材20を介して、モニタ17をキャビンフレーム9に吊持状に取り付けるにあたり、モニタ17の上端部をキャビン7の天井面(天井パネル21)に近接させてある。このようにすると、モニタ取付部材20を短くして、モニタ17の振動を抑制できるだけでなく、キャビン7の天井面を利用して、モニタ17の振動幅を制限できるので、モニタ17の視認性を向上させることが可能になる。しかも、モニタ17の上端部をキャビン7の天井面に近接させたことにより、外光の入射量を抑えることができるので、外光による視認性の低下も回避することができる。
【0013】
また、モニタ17の上端部は、キャビン7の天井面に当接させてもよい。このようにすると、モニタ17の振動がより確実に抑制されるので、モニタ17の視認性をさらに向上させることができる。
【0014】
また、キャビン7の天井面(天井パネル21)は、前段天井面21aと、該前段天井面21aの後端から立ち上がる立ち上がり面21bと、該立ち上がり面21bの上端から後方に延出する後段天井面21cとからなる段差部21dを有し、該段差部21dの後段天井面21cに対して、モニタ17の上端部を近接又は当接させることが好ましい。このようにすると、天井面に存在する段差部1dを利用して、外光の入射量をより効果的に減らすことができるので、モニタの視認性をさらに向上させることができる。
【0015】
次に、モニタ取付部材20の具体的な構成について、図7〜図9を参照して説明する。これらの図に示すように、モニタ取付部材20は、クランプ22と、正面視S字状に曲げ加工されたS字プレート23と、平面視L字状に曲げ加工されたL字プレート24とを備えて構成されている。
【0016】
クランプ22は、キャビンフレーム9(屋根枠13の左側フレーム)に着脱可能に装着される。S字プレート23は、クランプ22から下方に延出するように、上端部がクランプ22に対してボルト・ナット25で固定されている。L字プレート24は、S字プレート23の下端部から一側方に延出するように、基端部がS字プレート23の下端部に対してボルト・ナット26で固定されている。そして、L字プレート24の先端側に対し、蝶ボルト27を介してモニタ17の背面部が固定される。尚、本実施形態のS字プレート23には、当該S字プレート23の捻れ変形を規制する補強プレート28が一体的に溶着されており、S字プレート23の捻れ変形によるモニタ17の振動を抑制し、モニタ17の視認性を高めている。
【0017】
本実施形態のモニタ取付部材20は、モニタ17の上下位置、前後位置及び左右位置を調節可能に構成されている。具体的には、S字プレート23に形成されるボルト・ナット26の貫通孔23aを上下方向に長い長孔とすることにより、モニタ17の上下位置調節を可能とし、また、L字プレート24に形成されるボルト・ナット26の貫通孔24aを前後方向に長い長孔とすることにより、モニタ17の前後位置調節を可能とし、さらに、L字プレート24に形成される蝶ボルト27の貫通孔24bを左右方向に長い長孔とすることにより、モニタ17の左右位置調節を可能としている。
【0018】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、機体後方をカメラ16で撮影すると共に、撮影した機体後方画像をキャビン7内のモニタ17に表示する後方監視装置を備えたコンバイン1において、モニタ17を、モニタ取付部材20を介してキャビンフレーム9に吊持状に取り付けると共に、モニタ17の上端部をキャビン7の天井面に近接させたので、モニタ取付部材20を短くして、モニタ17の振動を抑制できるだけでなく、キャビン7の天井面を利用して、モニタ17の振動幅を制限し、モニタ17の視認性を向上させることが可能になる。しかも、モニタ17の上端部をキャビン7の天井面に近接させたことにより、外光の入射量を抑えることができるので、外光による視認性の低下も回避することができる。
【0019】
また、モニタ17の上端部をキャビン7の天井面に当接させた場合は、モニタ17の振動がより確実に抑制されるので、モニタ17の視認性をさらに向上させることができる。
【0020】
また、キャビン7の天井面は、前段天井面21aと、該前段天井面21aの後端から立ち上がる立ち上がり面21bと、該立ち上がり面21bの上端から後方に延出する後段天井面21cとからなる段差部21dを有し、該段差部21dの後段天井面21cに対して、モニタ17の上端部を近接又は当接させた場合は、天井面に存在する段差部21dを利用して、外光の入射量をより効果的に減らすことができるので、モニタ17の視認性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】コンバインの斜視図である。
【図2】コンバインの側面図である。
【図3】コンバインの平面図である。
【図4】左下方から見たキャビンフレームの斜視図である。
【図5】右上方から見たキャビンフレームの斜視図である。
【図6】カメラの取付構造を示す側面図である。
【図7】モニタの取付構造を示す全体正面図である。
【図8】モニタの取付構造を示す要部正面図である。
【図9】モニタの取付構造を示す側面図である。
【図10】参考例に係るモニタの取付構造を示す正面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 コンバイン
7 キャビン
9 キャビンフレーム
16 カメラ
20 モニタ取付部材
21 天井パネル
21a 該前段天井面
21b 立ち上がり面
21c 後段天井面
21a 前段天井面
21d 段差部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体後方を撮像手段で撮影すると共に、撮影した機体後方画像をキャビン内のモニタに表示する後方監視装置を備えたコンバインにおいて、
前記モニタを、取付部材を介してキャビンフレームに吊持状に取り付けると共に、モニタの上端部をキャビンの天井面に近接させたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記モニタの上端部をキャビンの天井面に当接させたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記キャビンの天井面は、前段天井面と、該前段天井面の後端から立ち上がる立ち上がり面と、該立ち上がり面の上端から後方に延出する後段天井面とからなる段差部を有し、該段差部の後段天井面に対して、前記モニタの上端部を近接又は当接させたことを特徴とする請求項1又は2記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−17142(P2010−17142A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181226(P2008−181226)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】