説明

コンバイン

【課題】ディーゼルパティキュレートフィルタ又はNOx触媒等を簡単に組付けることができるものでありながら、グレンタンクから穀粒をスムーズに排出できるようにしたコンバインを提供する。
【解決手段】ディーゼルエンジン20を搭載した走行機体1と、左右の走行クローラと、刈取装置と、脱穀装置5と、グレンタンク7とを備えたコンバインにおいて、ディーゼルエンジン20の排気ガス中の粒子状物質等を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ65と、ディーゼルエンジン20の排気ガス中の窒素酸化物を還元するNOx触媒68とを備え、グレンタンク7の前部外側方に近接させて、ディーゼルパティキュレートフィルタ65又はNOx触媒68の少なくともいずれか一方又は両方を配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取装置によって圃場の未刈り穀稈を刈取り、刈取った穀稈を脱穀装置によって脱穀するコンバインに係り、より詳しくは、ディーゼルエンジンを搭載したコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車両としてのトラクタ等において、走行機体に搭載されたディーゼルエンジンの排気ガス排出径路中に、ディーゼルパティキュレートフィルタ又はNOx触媒等が設けられ、ディーゼルエンジンから排出された排気ガスが、ディーゼルパティキュレートフィルタ又はNOx触媒等によって浄化処理されるようにした技術がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−31955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
刈取装置や脱穀装置を備えたコンバインでは、運転席の下方にディーゼルエンジンを設けて、刈取装置や脱穀装置等の作業部と、走行用のミッションケースとに、ディーゼルエンジンの動力を短距離で伝達するように構成していた。例えば、運転席から離れた脱穀装置の上方や、走行機体の下方等に排気管を延長させることによって、脱穀装置の上方や走行機体の下方にディーゼルパティキュレートフィルタ又はNOx触媒等を設けるスペースを簡単に確保できるが、ディーゼルパティキュレートフィルタ又はNOx触媒の温度管理等が面倒になる等の問題があった。また、収集された穀粒を溜めるグレンタンクを備えたコンバインでは、穀粒が高水分の状態のときに、穀粒の流れが悪くなるから、振動又は揺動させる穀粒排出促進部材をグレンタンク内に特別に設け、高水分の穀粒であってもグレンタンクからスムーズに排出できるように構成していた。
【0004】
本発明の目的は、ディーゼルパティキュレートフィルタ又はNOx触媒等を簡単に組付けることができるものでありながら、グレンタンクから穀粒をスムーズに排出できるようにしたコンバインを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明のコンバインは、ディーゼルエンジンを搭載した走行機体と、左右の走行クローラと、刈取装置と、脱穀装置と、グレンタンクとを備えたコンバインにおいて、前記ディーゼルエンジンの排気ガス中の粒子状物質等を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタと、前記ディーゼルエンジンの排気ガス中の窒素酸化物を還元するNOx触媒とを備え、前記グレンタンクの前部外側方に近接させて、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記NOx触媒の少なくともいずれか一方又は両方を配置したものである。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記NOx触媒の少なくともいずれか一方又は両方を、前記グレンタンクに平面視で重合する位置に配置したものである。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記NOx触媒の少なくともいずれか一方又は両方によって加温された暖気を、前記グレンタンクの内部に導入させるように構成したものである。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記ディーゼルエンジンと前記グレンタンクの間で、前記ディーゼルエンジンから前記グレンタンク方向に排気管を延長させ、排気ガス排出側が低くなる姿勢に前記排気管を傾斜させ、前記排気管の傾斜下端側に前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記NOx触媒の少なくともいずれか一方又は両方を配置したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、ディーゼルエンジンを搭載した走行機体と、左右の走行クローラと、刈取装置と、脱穀装置と、グレンタンクとを備えたコンバインにおいて、前記ディーゼルエンジンの排気ガス中の粒子状物質等を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタと、前記ディーゼルエンジンの排気ガス中の窒素酸化物を還元するNOx触媒とを備え、前記グレンタンクの前部外側方に近接させて、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記NOx触媒の少なくともいずれか一方又は両方を配置したものであるから、前記ディーゼルエンジンが内設されたエンジンルームと前記グレンタンクの間に、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記NOx触媒の少なくともいずれか一方又は両方をコンパクトに設置できる。例えば、前記グレンタンクの前方に前記ディーゼルエンジン及び運転座席等を設けたコンバイン機体構造において、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記NOx触媒の少なくともいずれか一方又は両方を簡単に組付けることができる。また、前記ディーゼルパティキュレートフィルタにて捕集された未燃焼物の燃焼処理用の加熱手段等を不要にでき、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記NOx触媒の温度管理等の取扱い性を向上できる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記NOx触媒の少なくともいずれか一方又は両方を、前記グレンタンクに平面視で重合する位置に配置したものであるから、前記グレンタンクの底部に近接させて前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記NOx触媒の少なくともいずれか一方又は両方を設置でき、前記グレンタンクなどの加温に、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記NOx触媒の少なくともいずれか一方又は両方の発熱を利用でき、湿材の収穫作業性を向上できる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記NOx触媒の少なくともいずれか一方又は両方によって加温された暖気を、前記グレンタンクの内部に導入させるように構成したものであるから、前記暖気によって前記グレンタンク内の流穀板を加温でき、高水分の穀粒であっても前記グレンタンクからスムーズに排出できる。しかも、従来の穀粒排出促進部材を前記グレンタンク内に特別に設ける必要がないから、前記グレンタンクの内部構造を低コストで簡単に構成できる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、前記ディーゼルエンジンと前記グレンタンクの間で、前記ディーゼルエンジンから前記グレンタンク方向に排気管を延長させ、排気ガス排出側が低くなる姿勢に前記排気管を傾斜させ、前記排気管の傾斜下端側に前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記NOx触媒の少なくともいずれか一方又は両方を配置したものであるから、前記排気管の折り曲げ角度を大きくして前記排気管の排気ガス流動抵抗を低減できる。また、前記グレンタンクの底部外側のデッドスペースを活用して前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記NOx触媒の少なくともいずれか一方又は両方をコンパクトに配置できる。また、NOx触媒の還元剤(尿素又はアンモニア等)がディーゼルエンジンの排気マニホールド側に移動するのを簡単に防止でき、前記ディーゼルエンジンの排気ガス排出部品が前記還元剤にて腐食するのを低減でき、前記ディーゼルエンジン又は付属部品の耐久性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1はコンバインの左側面図、図2はコンバインの右側面図、図3はコンバインの平面図、図4はディーゼルエンジンの左側面図、図5はディーゼルエンジンの正面図、図6はディーゼルエンジンの平面図である。図1〜図3を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0014】
図1〜図3に示されるように、本実施形態のコンバインは、左右一対の走行クローラ2(走行部)にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈取る4条刈り用の刈取装置3が配置されている。単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に、走行機体1の前部に刈取装置3が装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留するグレンタンク7とが横並び状に搭載されている。脱穀装置5が走行機体1の前進方向に向かって左側に配置され、グレンタンク7が走行機体1の前進方向に向かって右側に配置されている(図3参照)。グレンタンク7内の穀粒を機体外部に排出する穀粒排出オーガ8が配設されている。
【0015】
走行機体1の右側前部には、運転部10が設けられている。グレンタンク7の前方の運転部10には、オペレータが搭乗するステップ11、運転座席12、操向ハンドル13や各種の操作レバーなどを備えた操作装置を配置している。運転座席12の下方の走行機体1には、動力源としてのディーゼルエンジン20が配置されている。
【0016】
図1及び図2に示されるように、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にディーゼルエンジン20の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持する。
【0017】
図1〜図3に示されるように、刈取装置3の刈取回動支点軸4aに刈取フレーム9を連結している。刈取装置3は、圃場の未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置47と、圃場の未刈り穀稈を引起す4条分の穀稈引起装置48と、刈刃装置47によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置49と、圃場の未刈り穀稈を分草する4条分の分草体50とを備える。刈取フレーム9の下方に刈刃装置47が設けられている。刈取フレーム9の前方に穀稈引起装置48が配置されている。穀稈引起装置48とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間に穀稈搬送装置49が配置されている。穀稈引起装置48の下部前方に分草体50が突設されている。ディーゼルエンジン20にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3を駆動して圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取る。
【0018】
図1及び図2に示されるように、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴26と、扱胴26の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別機構としての揺動選別盤27と、揺動選別盤27に選別風を供給する唐箕ファン28と、扱胴26の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴29と、揺動選別盤27の後部の排塵を機外に排出する排塵ファン30とを備えている。
【0019】
図1乃至図3に示す如く、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン34が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン34に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ35にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出される。
【0020】
揺動選別盤27の下方側には、揺動選別盤27にて選別された穀粒(一番選別物)を取出す一番コンベヤ31と、枝梗付き穀粒等の二番選別物を取出す二番コンベヤ32とが設けられている。本実施形態の両コンベヤ31,32は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ31、二番コンベヤ32の順で、側面視において走行機体1の上面側に横設されている。
【0021】
図1乃至図3に示す如く、揺動選別盤27は、扱胴26の下方に落下した脱穀物を、揺動選別(比重選別)するように構成している。揺動選別盤27から落下した穀粒(一番選別物)は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン28からの選別風によって除去され、一番コンベヤ31に落下する。一番コンベヤ31のうち脱穀装置5におけるグレンタンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる一番揚穀筒33が連通接続されている。一番コンベヤ31から取出された穀粒は、一番揚穀筒33内の一番揚穀コンベヤ(図示せず)によってグレンタンク7に搬入され、グレンタンク7に収集される。
【0022】
揺動選別盤27は、揺動選別(比重選別)によって、枝梗付き穀粒等の二番選別物(穀粒と藁屑等が混在した再選別用の還元再処理物)を二番コンベヤ32に落下させるように構成している。二番コンベヤ32によって取出された二番選別物は、二番還元筒36及び二番処理部37を介して揺動選別盤27の上面側に戻されて再選別される。また、扱胴26からの脱粒物中の藁屑及び粉塵等は、唐箕ファン28からの選別風によって、走行機体1の後部から圃場に向けて排出される。
【0023】
図4乃至図6を参照して、ディーゼルエンジン20の吸気構造と排気構造を説明する。ディーゼルエンジン20は、上面にシリンダヘッド60が締結されたシリンダブロック59を備えている。シリンダヘッド60には、ターボ過給機61が取付けられている。ターボ過給機61は、タービンホィール(図示省略)を内蔵したタービンケース62と、ブロアホィール(図示省略)を内蔵したコンプレッサケース63とを有する。
【0024】
図5に示す如く、シリンダヘッド60の前側面に排気マニホールド64が配置されている。タービンケース62の排気ガス取入れ側に排気マニホールド64が接続されている。タービンケース62の排気ガス排出側には、排気ガス処理装置としてのディーゼルパティキュレートフィルタ65(以下、DPFという)が設けられている。タービンケース62の排気ガス排出側に前部排気管66を介してDPF65の排気ガス取入れ側が接続されている。
【0025】
図4に示す如く、DPF65の排気ガス排出側に中間排気管67を介してNOx触媒68の排気ガス取入れ側が接続されている。NOx触媒68の排気ガス排出側にテールパイプ69が接続されている。即ち、ディーゼルエンジン20の各気筒から排気マニホールド64に排出された排気ガスは、DPF65を経由して浄化処理されたのち、NOx触媒68を経由して浄化処理され、テールパイプ69から外部に放出される。また、DPF65は排気ガス中の粒子状物質(PM)等を捕集するためのものである。図7に示す如く、DPF65は、耐熱金属材料製のDPFケーシング100に内蔵した略筒型のフィルタケース101,102に、例えば白金等のディーゼル酸化触媒103とハニカム構造のフィルタ体であるすすフィルタ104とを直列に並べて収容した構造になっている。DPFケーシング100は、シリンダヘッド60の左側面にボルト等にて着脱可能に締結されている。
【0026】
また、消音機能を有したNOx触媒68は、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元して無害化し、且つ排気音を減衰するためのものである。図8に示す如く、NOx触媒68としては、尿素水を還元剤とした選択接触還元触媒であるNOx除去触媒105を用いている。NOx触媒68は、耐熱金属材料製のNOx触媒ケーシング106に内蔵した略筒型のフィルタケース107,108に、NOx除去触媒105とアンモニア除去触媒109とを直列に並べて収容した構造になっている。また、DPF65とNOx触媒68との間、即ち、NOx触媒68の排気ガス流入側からNOx触媒68内に、尿素供給タンク装置(図示省略)から尿素供給ポンプ(図示省略)等によって尿素水溶液が噴射される。なお、図示しないが、耐熱金属材料製の略筒型の触媒ケーシングにNOx触媒68を内蔵している。また、尿素供給タンク装置は、脱穀装置5の扱口81の下方に形成されたデッドスペース等を活用して、走行機体1に設置される。
【0027】
図5に示す如く、ディーゼルエンジン20の前面に、ターボ過給機61が配置されている。ターボ過給機61からディーゼルエンジン20の左側外方を介して後方側に向けて前部排気管66が延長される。前部排気管66の延長後端側にDPF65の排気ガス取入れ側を連結している。ディーゼルエンジン20に対向したグレンタンク7の前面に、DPF65(前記DPFケーシング)が配置されている。DPF65からグレンタンク7の左側外方に向けて中間排気管67の前端側が延長される。グレンタンク7の左外側面に沿わせて機体後方に向けて中間排気管67の後端側を延長させている。中間排気管67の後端側にNOx触媒68の排気ガス取入れ側を連結している。脱穀装置5とグレンタンク7の間で、NOx触媒68からテールパイプ69を後向きに延長させる。脱穀装置5の上面よりも低い走行機体1の上面側で、テールパイプ69の後端側を後方に向けて開口させている。
【0028】
一方、図4乃至図6に示す如く、コンプレッサケース63の給気取入れ側に給気管70を介してエアクリーナ71の給気排出側が接続されている。プリクリーナ72に給気ダクト73を介してエアクリーナ71の給気取入れ側が接続されている。シリンダヘッド60の後側面に給気マニホールド75が配置されている。コンプレッサケース63の給気排出側に過給管74を介して給気マニホールド75が接続されている。即ち、プリクリーナ72からエアクリーナ71に吸込まれた外気は、エアクリーナ71によって除塵されたのち、給気マニホールド75からディーゼルエンジン20の各気筒に供給される。
【0029】
図4乃至図6に示す如く、ディーゼルエンジン20の前面側で、ディーゼルエンジン20の高位置に、ターボ過給機61が配置されている。ディーゼルエンジン20の右側方に、ディーゼルエンジン20の水冷用のラジエータ76と、ディーゼルエンジン20の空冷用の冷却ファン77が配置されている。ディーゼルエンジン20が内設されたエンジンルーム79の右側方に冷却ファン77が配置され、エンジンルーム79の前部上方にターボ過給機61が配置されている。
【0030】
図4及び図5に示す如く、ディーゼルエンジン20から左側方に出力軸83を突出させる。出力軸83上にフライホィール84を設けている。フライホィール84に、刈取装置3や脱穀装置5に駆動力を伝達する作業部駆動プーリ85や、走行クローラ2にミッションケース86から駆動力を伝達する走行駆動プーリ87を固着させ、ディーゼルエンジン20の出力部を構成している。ディーゼルエンジン20の出力部としての作業部駆動プーリ85や走行駆動プーリ87の上方のデッドスペースを活用して、ディーゼルエンジン20の前部の高位置からグレンタンク7の前面側に向けて、前部排気管66をコンパクトに延長している。
【0031】
図4乃至図6を参照して、グレンタンク7にDPF65及びNOx触媒68を設ける構造について説明する。図4に示す如く、穀粒排出オーガ8にグレンタンク7内の穀粒を搬出させる穀粒取出しコンベヤ88を備える。グレンタンク7内の底部に穀粒取出しコンベヤ88を配置する。穀粒取出しコンベヤ88は、走行機体1の前後方向に向けて横向きに略水平に延長させる。グレンタンク7から穀粒取出しコンベヤ88軸を突出して、その軸前端にタンク入力プーリ89を設ける。ディーゼルエンジン20によって入力プーリ89を介して穀粒取出しコンベヤ88が駆動される。穀粒取出しコンベヤ88を介して穀粒排出オーガ8等も駆動される。
【0032】
図4及び図5に示す如く、穀粒取出しコンベヤ88の上方側を覆う滑落流穀板90を備える。滑落流穀板90は、左右幅中央を上方に突出させ、且つ左右両端側を低くする斜面が左右対称に設けられていて、端面が傘形になる形状に形成されている。グレンタンク7の前後幅寸法と、滑落流穀板90の前後長さとを一致させ、グレンタンク7の前面壁と後面壁とに、滑落流穀板90の前端と後端が固着されている。また、グレンタンク7の底部近傍の左右側壁を中央寄りに傾斜させて左右のタンク底部流穀板91,92を形成している。滑落流穀板90の左右両端と、左右のタンク底部流穀板91,92の上面との間から、グレンタンク7内の穀粒が穀粒取出しコンベヤ88方向に滑落するように構成している。
【0033】
図4及び図6に示す如く、グレンタンク7の前面壁の外側面にDPF外装ケース93を設けている。エンジンルーム79に連通させる吸気口94と、滑落流穀板90の下面側に連通させる排気口95とを介して、エンジンルーム79内と、滑落流穀板90の下面側とに、DPF外装ケース93の内部を接続させている。ディーゼルエンジン20を冷却したエンジンルーム79内の暖気が、DPF外装ケース93内に移動して、DPF65によって加温される。DPF65によって加温されたDPF外装ケース93内の暖気が、滑落流穀板90の下面側に移動して、滑落流穀板90及び周辺を加温するように構成している。
【0034】
図4及び図6に示す如く、グレンタンク7の左側面壁の外側面にNOx外装ケース96を設ける。NOx外装ケース96にNOx触媒68(前記触媒ケーシング)を内蔵している。また、左のタンク底部流穀板91に換気口97を形成する。換気口97を介してグレンタンク7内にNOx外装ケース96の内部を連通させる。グレンタンク7の左側面に対向した脱穀装置5の右側に向けてNOx外装ケース96を開口させている。脱穀装置5の右側からNOx外装ケース96内に外気が移動して、NOx触媒68によって加温される。NOx触媒68によって加温されたNOx外装ケース96内の暖気が、左のタンク底部流穀板91の上面側に移動して、左のタンク底部流穀板91及びその周辺を加温するように構成している。
【0035】
即ち、グレンタンク7の底部に近接させてDPF65又はNOx触媒68を組付け、DPF65やNOx触媒68の放熱を活用して、グレンタンク7の滑落流穀板90やタンク底部流穀板91を加温できる。その結果、滑落流穀板90やタンク底部流穀板91に付着する塵を低減でき、且つグレンタンク7内の穀粒同士の摩擦又は穀粒と流穀板90,91との摩擦を低減でき、グレンタンク7の底部における穀粒の流動性を良好に維持できる。従来、グレンタンク7の底部に振動機構又は揺動機構等の穀粒排出促進機構を設け、グレンタンク7から穀粒を排出するときに、グレンタンク7の底部に穀粒が停滞するのを防止していたが、従来の穀粒排出促進機構が不要になる。湿材等の刈取作業においても、グレンタンク7からの穀粒排出作業性を向上できる。
【0036】
なお、上記の実施形態において、グレンタンク7の前面にDPF65を配置し、グレンタンク7の左外側面にNOx触媒68を配置したが、グレンタンク7の前面にNOx触媒68を配置し、グレンタンク7の左外側面にDPF65を配置してもよい。前部排気管66の後端側にNOx触媒68の排気ガス取入れ側を連結し、NOx触媒68に中間排気管67を介してDPF65の排気ガス取入れ側を連結することも可能である。
【0037】
図4に示す如く、グレンタンク7の上面に排気口98を形成し、電動換気ファン99の吸気側を排気口98に接続させている。ディーゼルエンジン20を始動させるバッテリ(図示省略)によって換気ファン99を作動させ、グレンタンク7内の空気が換気ファン99によって排出されるように構成している。例えば、収穫作業をするときの気温等に対処して、換気ファン99を作動させように制御し、又はそれを停止させるように制御することによって、DPF65やNOx触媒68が排気ガスの浄化に必要な温度を維持しながら、DPF65やNOx触媒68によって加温された空気がグレンタンク7内に取入れられる。また、炎天下の収穫作業中、昼休み等において、グレンタンク7内に適宜量の穀粒が入った状態で、収穫作業を中断するときに、換気ファン99を作動させることによって、グレンタンク7内グレンタンク7内の温度の上昇を抑制でき、グレンタンク7内が高温になって内部の穀粒が変質するのを防止することもできる。
【0038】
図1、図4及び図6に示す如く、ディーゼルエンジン20を搭載した走行機体1と、左右の走行クローラ2と、刈取装置3と、脱穀装置5と、グレンタンク7とを備えたコンバインにおいて、ディーゼルエンジン20の排気ガス中の粒子状物質等を捕集するDPF65と、ディーゼルエンジン20の排気ガス中の窒素酸化物を還元するNOx触媒68とを備え、グレンタンク7の前部外側方に近接させて、DPF65又はNOx触媒68の少なくともいずれか一方又は両方を配置している。したがって、ディーゼルエンジン20が内設されたエンジンルーム79とグレンタンク7の間に、DPF65又はNOx触媒68の少なくともいずれか一方又は両方をコンパクトに設置できる。例えば、グレンタンク7の前方にディーゼルエンジン20及び運転座席12等を設けたコンバイン機体構造において、DPF65又はNOx触媒68の少なくともいずれか一方又は両方を簡単に組付けることができる。また、DPF65にて捕集された未燃焼物の燃焼処理用の加熱手段等を不要にでき、DPF65又はNOx触媒68の温度管理等の取扱い性を向上できる。
【0039】
図4及び図6に示す如く、グレンタンク7の下部の前面側にDPF65を近接させて設け、グレンタンク7の下部の左側面側にNOx触媒68を近接させて設け、DPF65又はNOx触媒68の少なくともいずれか一方又は両方を、グレンタンク7に平面視で重合する位置に配置している。したがって、グレンタンク7の底部に近接させてDPF65又はNOx触媒68の少なくともいずれか一方又は両方を設置できる。グレンタンク7などの加温に、DPF65又はNOx触媒68の少なくともいずれか一方又は両方の発熱を利用でき、グレンタンク7内の穀粒の流動性を維持でき、湿材の収穫作業性を向上できる。
【0040】
図4及び図6に示す如く、DPF65又はNOx触媒68の少なくともいずれか一方又は両方によって加温された暖気を、グレンタンク7の内部に導入させるように構成している。したがって、前記暖気によってグレンタンク7内の流穀板90,91を加温でき、流穀板90,91上の塵又は穀粒の水分を低減できるから、流穀板90,91の摩擦又は穀粒の摩擦を低減でき、高水分の穀粒の収穫作業であっても、グレンタンク7から穀粒をスムーズに排出できる。流穀板90,91の上方で穀粒がブリッジ状に詰るのを防止し、下方の穀粒取出しコンベヤ88に穀粒が落下しなくなるのを阻止できる。例えば、流穀板90,91の上方で穀粒がブリッジ状に詰るのを防止するための従来の穀粒排出促進部材を、グレンタンク7内に特別に設ける必要がないから、グレンタンク7の内部の構造を低コストで簡単に構成できる。
【0041】
図4及び図6に示す如く、ディーゼルエンジン20とグレンタンク7の間で、ディーゼルエンジン20からグレンタンク7方向に排気管66を延長させ、排気ガス排出側が低くなる姿勢に排気管66を傾斜させ、排気管66の傾斜下端側にDPF65又はNOx触媒68の少なくともいずれか一方又は両方を配置している。したがって、排気管66の折り曲げ角度を大きくして排気管66の排気ガス流動抵抗を低減できる。また、グレンタンク7の底部外側のデッドスペースを活用してDPF65はNOx触媒68の少なくともいずれか一方又は両方をコンパクトに配置できる。また、NOx触媒68の還元剤(尿素又はアンモニア等)がディーゼルエンジン20の排気マニホールド64側に移動するのを簡単に防止でき、ディーゼルエンジン20の排気ガス排出部品が前記還元剤にて腐食するのを低減でき、ディーゼルエンジン20又は付属部品の耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態の4条刈り用のコンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの右側面図である。
【図3】コンバインの平面図である。
【図4】ディーゼルエンジンの左側面図である。
【図5】ディーゼルエンジンの正面図である。
【図6】ディーゼルエンジンの平面図である。
【図7】DPFの説明図である。
【図8】NOx触媒の説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 走行機体
2 走行クローラ
3 刈取装置
5 脱穀装置
7グレンタンク
20ディーゼルエンジン
65ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)
66前部排気管
68NOx触媒


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンを搭載した走行機体と、左右の走行クローラと、刈取装置と、脱穀装置と、グレンタンクとを備えたコンバインにおいて、
前記ディーゼルエンジンの排気ガス中の粒子状物質等を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタと、前記ディーゼルエンジンの排気ガス中の窒素酸化物を還元するNOx触媒とを備え、前記グレンタンクの前部外側方に近接させて、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記NOx触媒の少なくともいずれか一方又は両方を配置したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記NOx触媒の少なくともいずれか一方又は両方を、前記グレンタンクに平面視で重合する位置に配置したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記NOx触媒の少なくともいずれか一方又は両方によって加温された暖気を、前記グレンタンクの内部に導入させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン
【請求項4】
前記ディーゼルエンジンと前記グレンタンクの間で、前記ディーゼルエンジンから前記グレンタンク方向に排気管を延長させ、排気ガス排出側が低くなる姿勢に前記排気管を傾斜させ、前記排気管の傾斜下端側に前記ディーゼルパティキュレートフィルタ又は前記NOx触媒の少なくともいずれか一方又は両方を配置したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−51216(P2010−51216A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218494(P2008−218494)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】