説明

コンバイン

【課題】複数の遠隔操作装置が操作された場合であっても、排出オーガの誤作動を防止するとともに、この排出オーガの穀粒排出作業の作業性を向上させることができるコンバインを提供する。
【解決手段】コンバイン1は、前記制御手段60は、前記複数の遠隔操作装置(第一及び第二遠隔操作装置80・180)に優先順位を設定し、前記複数の遠隔操作装置(第一及び第二遠隔操作装置80・180)のうち少なくとも2つ以上の遠隔操作装置(第一及び第二遠隔操作装置80・180)から同時に操作信号を受信した場合、その2つ以上の遠隔操作装置(第一及び第二遠隔操作装置80・180)のうち最も優先順位が高い遠隔操作装置(第一遠隔操作装置80)から受信した操作信号に対応して前記作動用アクチュエータ(各アクチュエータ35・37・41)を駆動制御して、前記排出オーガ32を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの技術に関し、特にグレンタンク内の穀粒を排出する排出オーガを遠隔操作装置により無線通信を用いて操作する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀選別後の穀粒をグレンタンク内に貯溜して、その貯溜した穀粒を昇降及び旋回可能な排出オーガにより搬送して、この排出オーガの先端部の排出口から外部に排出可能としたコンバインは公知となっている。このようなコンバインには、排出オーガを作動させるための操作装置として、無線通信を用いて遠隔操作する無線(遠隔)操作装置(リモートコントローラ)と、有線通信を用いて操作する有線操作装置とを備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された技術においては、作業者は、無線操作装置と有線操作装置とを用いて、機体から離れた場所からは無線操作装置を操作して、又は、運転席からは有線操作装置を操作して、つまり選択的に各操作装置を操作して排出オーガを作動させることができる。そして、前記コンバインは、無線操作装置及び有線操作装置のいずれか一方の操作装置の操作に応じて排出オーガが作動している状態で、いずれか他方の操作装置が操作されると(無線操作装置と有線操作装置とが同時に操作されると)、排出オーガの作動が停止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−225674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、排出オーガを作動させる操作手段として無線操作装置と有線操作装置との2つの操作手段を想定するものであり、機体から離れて使用される無線操作装置が複数設けられる場合を想定するものではない。また、無線操作装置が複数設けられる場合、例えば、複数の無線操作装置が同時に操作されると排出オーガの作動が停止するように構成されると、複数の無線操作装置が同時に操作されるごとに排出オーガの作動が停止することとなり、排出オーガによる穀粒排出作業の作業性が良くないという不都合がある。
【0006】
本発明は、このような現状の課題に鑑みてなされたものであり、複数の遠隔操作装置が操作された場合であっても、排出オーガを継続して作動させて、この排出オーガの穀粒排出作業の作業性を向上させることができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、グレンタンク内の穀粒を外部に排出する作動可能な排出オーガと、前記排出オーガを作動させる作動用アクチュエータと、前記作動用アクチュエータを駆動制御する制御手段と、前記排出オーガの作動操作手段を有し、無線通信を用いて前記制御手段を遠隔操作する複数の遠隔操作装置と、を備えるコンバインであって、前記制御手段は、前記複数の遠隔操作装置に優先順位を設定し、前記複数の遠隔操作装置のうち少なくとも2つ以上の遠隔操作装置から同時に操作信号を受信した場合、その2つ以上の遠隔操作装置のうち最も優先順位が高い遠隔操作装置から受信した操作信号に対応して前記作動用アクチュエータを駆動制御して、前記排出オーガを作動させるものである。
【0009】
請求項2においては、前記制御手段は、前記遠隔操作装置からの操作信号を受信しなくなって、前記排出オーガの作動を停止させた場合、その停止時から予め設定された時間内は、この遠隔操作装置を除いた他の前記遠隔操作装置から操作信号を受信しても、前記排出オーガの作動の停止状態を保持するものである。
【0010】
請求項3においては、前記各遠隔操作装置は、前記停止状態を解除するための解除手段を有するものである。
【0011】
請求項4においては、前記各遠隔操作装置は、当該遠隔操作装置の操作が無効な状態であることを報知する報知手段を備え、前記制御手段は、前記遠隔操作装置からの操作信号を受信して、前記排出オーガを作動させている場合、この遠隔操作装置よりも優先順位が低い遠隔操作装置に、当該遠隔操作装置の操作が無効な状態であることを前記報知手段に報知させるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、複数の遠隔操作装置が同時に操作された場合、最も優先順位の高い遠隔操作装置以外の遠隔操作装置の操作は無効となり、最も優先順位の高い遠隔操作装置の操作のみに対応して作動用アクチュエータが駆動して、前記排出オーガが作動することになる。そのため、複数の遠隔操作装置が同時に操作された場合であっても、排出オーガの誤作動を防止することができる。また、排出オーガの作動が停止せず、最も優先順位の高い操作装置である遠隔操作装置を操作する作業者によって、排出オーガの作動を継続して作業を行うことができる。したがって、排出オーガの穀粒排出作業の作業性を向上させることができる。
【0014】
請求項2においては、複数の遠隔操作装置のうち一の操作装置の操作が解除された直後に、他の操作装置の操作が開始された場合であっても、予め設定された時間内は他の操作装置の操作に対応した排出オーガの作動を防止することができる。したがって、例えば優先順位の高い操作装置の操作が一時的に解除された直後に、この優先順位の高い遠隔操作装置を操作する作業者の意図に反して、それよりも優先順位の低い操作装置の操作が開始されて排出オーガが作動することを防止できる。したがって、作業を円滑に行うことができ、排出オーガの穀粒排出作業の作業性を向上させることができる。
【0015】
請求項3においては、複数の遠隔操作装置のうち一の遠隔操作装置の操作が解除された後、他の遠隔操作装置の操作を即座に開始したい場合に、解除手段により前記停止状態を解除すれば、予め設定された時間内であっても、他の操作装置の操作を有効にすることが可能となる。したがって、作業を状況に応じて速やかに再開させることができ、排出オーガ32の穀粒排出作業の作業性を向上させることができる。
【0016】
請求項4においては、各遠隔操作装置の操作が有効か否かを即座に認識して、状況に応じた適切な遠隔操作装置を選択することが可能となる。したがって、排出オーガの穀粒排出作業の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るコンバインの全体的な構成を示した平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係るコンバインの排出オーガにおける縦排出オーガと横排出オーガとの連結部分の構成を示した側面図。
【図4】本発明の一実施形態に係るコンバインの排出オーガにおける横排出オーガの先端部の構成を示した側面断面図。
【図5】本発明の一実施形態に係るコンバインの制御構成を示したブロック図。
【図6】本発明の一実施形態に係るコンバインの本機側操作装置の構成を示した正面図。
【図7】本発明の一実施形態に係るコンバインの遠隔操作装置の構成を示した正面図。
【図8】本発明の一実施形態に係るコンバインの排出オーガの作動に関する制御のフローチャート図。
【図9】本発明の一実施形態に係るコンバインの制御手段の第一処理の実行に関する制御のフローチャート図。
【図10】本発明の一実施形態に係るコンバインの制御手段の第二処理の実行に関する制御のフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態に係るコンバイン1について、図1及び図2を用いて説明する。
なお、以下において、図1における矢印Aの指す方向を機体前方向として、機体の前後方向を規定する。また、かかる前後方向と水平方向に直交する方向を機体の左右方向と規定する。
【0019】
コンバイン1は、図1及び図2に示すように、機体フレーム10に対して、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、穀粒貯溜部6と、排藁処理部7と、エンジン部8と、運転部9等とから構成される。
【0020】
走行部2は、機体フレーム10の下部に設けられる。走行部2には、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置11等が設けられる。走行部2は、クローラ式走行装置11が駆動することにより機体を走行させるように構成される。
【0021】
刈取部3は、機体フレーム10の前端部に機体に対して昇降可能に設けられる。刈取部3は、分草装置12と、引起装置13と、切断装置14と、搬送装置15等とから構成される。刈取部3は、分草装置12により圃場の穀稈を分草し、引起装置13により分草後の穀稈を引き起こし、切断装置14により引き起こし後の穀稈の株元を切断し、搬送装置15により切断後の穀稈を脱穀部4側へ搬送するように構成される。
【0022】
脱穀部4は、機体フレーム10の左側前部であって、刈取部3の後方に設けられる。脱穀部4は、フィードチェン16と、図示せぬ扱胴等とから構成される。脱穀部4は、刈取部3から搬送される穀稈を受け継いで、フィードチェン16により排藁処理部7側へ搬送し、搬送中の穀稈を前記扱胴等により脱穀し、その脱穀処理物を選別部5へ落下させるように構成される。
【0023】
選別部5は、機体フレーム10の左側部であって、脱穀部4の下方に設けられる。選別部5は、脱穀部4から落下した脱穀処理物を揺動選別及び風選別により、穀粒と、穂付粒や未脱粒と、排藁と、塵埃等とに選別する。そして、選別部5は、選別した穀粒を穀粒貯溜部6へ搬送し、穂付粒及び未脱粒等の二番物は脱穀部4へ戻すように搬送し、排藁及び塵埃等は機体の外部へ排出するように構成される。
【0024】
穀粒貯溜部6は、機体フレーム10の右側後部であって、脱穀部4及び選別部5の右側方に設けられる。穀粒貯溜部6は、グレンタンク17と、穀粒排出装置30等とから構成される。穀粒貯溜部6は、選別部5から搬送される穀粒をグレンタンク17に貯溜するとともに、グレンタンク17に貯溜される穀粒を穀粒排出装置30により機体の外部へ排出するように構成される。
【0025】
排藁処理部7は、機体フレーム10の後部であって、脱穀部4の後方に設けられる。排藁処理部7は、図示せぬ排藁搬送装置や排藁切断装置等とから構成される。排藁処理部7は、脱穀部4から搬送される脱穀済みの穀稈を、前記排藁搬送装置で受け継いで排藁として外部へ排出し、又は前記排藁切断装置に搬送して切断した後に機体の外部へ排出するように構成される。
【0026】
エンジン部8は、機体フレーム10の右側部であって、穀粒貯溜部6の前方に設けられる。エンジン部8は、エンジン8a等を有して、エンジン8aの動力を駆動源とする各部の装置に適宜の伝達機構を介して当該エンジン8aの動力を伝達し、各部の装置を駆動させるように構成される。
【0027】
運転部9は、機体フレーム10の右側前部であって、刈取部3の搬送装置15の右側方に設けられる。運転部9は、キャビン18と、座席19と、ハンドル20と、操作ペダルや操作レバー等の操作具類と、操作パネル等とから構成される。運転部9は、キャビン18により座席19やハンドル20等が覆われるように構成される。
【0028】
このようにして、コンバイン1は、運転部9での操作具類の操作によって、エンジン部8のエンジン8aの動力を各部の装置に伝達して、走行部2にて機体を走行させながら、刈取部3で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部4で刈取部3からの穀稈を脱穀し、選別部5で脱穀部4からの脱穀物を選別して、穀粒貯溜部6で選別部5からの穀粒を貯溜すると同時に、排藁処理部7で脱穀部4からの排藁を機体の外部へ排出することができるように構成される。
【0029】
次に、穀粒貯溜部6のグレンタンク17及び穀粒排出装置30の構成について、図1から図4を用いてさらに詳細に説明する。
【0030】
グレンタンク17は、選別部5による選別後の穀粒を貯溜するものである。グレンタンク17は、図1及び図2に示すように、機体フレーム10上に設けられる。グレンタンク17は、脱穀部4及び選別部5の右側方であって、運転部9の後方に配置される。グレンタンク17は、その後部が穀粒排出装置30の一部(排出オーガ32の縦排出オーガ筒34)に回動可能に支持されて、グレンタンク17の前部が脱穀部4及び選別部5に対して近接又は離間する左右方向へ移動するように構成される。
【0031】
穀粒排出装置30は、グレンタンク17に貯溜される穀粒を機体の外部へ排出するものである。穀粒排出装置30は、図1及び図2に示すように、排出コンベア31と、排出オーガ32とを備える。
【0032】
排出コンベア31は、図2に示すように、スクリューコンベアで構成され、長手方向を前後方向としてグレンタンク17内の底部に配置される。排出コンベア31は、エンジン8aに伝動機構を介して接続される。そして、排出コンベア31は、エンジン8aの動力により回転して、グレンタンク17内の底部で穀粒を後部へ搬送するように構成される。エンジン8aから排出コンベア31までの動力伝達経路上には、ベルトテンションクラッチ等のオーガクラッチ33(図5参照)が配設される。オーガクラッチ33は、入り切り操作されることにより、エンジン8aの動力が排出コンベア31へ伝達又は遮断されるように構成される。
【0033】
排出オーガ32は、図3及び図4に示すように、縦排出オーガと、横排出オーガと、旋回用アクチュエータ35と、昇降用アクチュエータ37と、穀粒排出筒体40と、筒体回動用アクチュエータ41とを備える。排出オーガ32は、使用時には、横排出オーガの横排出オーガ筒36がグレンタンク17や脱穀部4等の上方を移動可能に構成される。横排出オーガ筒36は、図1及び図2に示すように、不使用時には脱穀部4の前上部付近に設けられたオーガレスト21に載置される。
【0034】
縦排出オーガは、機体上下方向に延在して、グレンタンク17からの穀粒を揚送するものである。縦排出オーガは、縦排出オーガ筒34と、縦排出コンベア38とを備える。
【0035】
縦排出オーガ筒34は、図1及び図3に示すように、細長い中空筒状の部材である。縦排出オーガ筒34は、グレンタンク17の後方で長手方向を上下方向として垂直方向(縦方向)に立設される。縦排出オーガ筒34の下端部は、排出コンベア31の後端と連通するように接続される。縦排出オーガ筒34の上端部は、横排出オーガ筒36の基端部と連通するように接続される。縦排出オーガ筒34は、機体フレーム10に対して左右方向(水平方向)へ回動可能に構成される。
【0036】
縦排出コンベア38は、図3に示すように、スクリューコンベアで構成され、長手方向を上下方向(垂直方向)として縦排出オーガ筒34内に立設される。縦排出コンベア38は、排出コンベア31によりグレンタンク17内の底部で後部へ搬送された穀粒を、縦排出オーガ筒34内で上方へ搬送するものである。縦排出コンベア38の下端部は、排出コンベア31の後端部とベベルギヤ等を介して連動するように連結される。縦排出コンベア38には、エンジン8aの動力が、排出コンベア31を介して伝達される。
【0037】
横排出オーガは、その基端部で縦排出オーガの上部に昇降かつ旋回可能に支持されて、縦排出オーガからの穀粒を搬送し、その先端部から外部に排出するものである。横排出オーガは、横排出オーガ筒36と、横排出コンベア39とを備える。
【0038】
横排出オーガ筒36は、図1から図3に示すように、細長い中空筒状の部材である。横排出オーガ筒36は、縦排出オーガ筒34の上端部から水平方向へ延設される。横排出オーガ筒36の基端部は、縦排出オーガ筒34の上端部に上下方向へ回動可能に支持される。図4に示すように、横排出オーガ筒36の先端部には、投出口体47が固設される。投出口体47は、四角筒を略L形に折り曲げた形状に形成されている。投出口体47は、開口された一側が横排出オーガ筒36の先端部と連通するように接続され、且つ開口された他側が下方を臨むように配置される。横排出オーガ筒36の先端部から排出された穀粒は、投出口体47の前記開口された他側を通じて外部へ排出される。投出口体47には、穀粒排出筒体40が取り付けられる。
【0039】
横排出コンベア39は、図3及び図4に示すように、スクリューコンベアで構成され、長手方向を水平方向として横排出オーガ筒36内に横設される。横排出コンベア39は、縦排出コンベア38により縦排出オーガ筒34内の上端部に搬送された穀粒を、横排出オーガ筒36内で先端部へ搬送するものである。横排出コンベア39の基端部は、縦排出コンベア38の上端部とベベルギヤ等を介して連動するように連結される。横排出コンベア39には、エンジン8aの動力が、縦排出コンベア38を介して伝達される。
【0040】
旋回用アクチュエータ35は、図3に示すように、縦排出オーガ筒34を左右方向(水平方向)へ回動させる部材である。旋回用アクチュエータ35は、回転軸44を備える。回転軸44には、駆動ギヤ45が固設される。駆動ギヤ45には、縦排出オーガ筒34の上下中途部に外嵌するように固定された従動ギヤ43が噛合される。また、回転軸44には、旋回角度検出センサ46が取り付けられる。旋回角度検出センサ46は、回転式ポテンショメータ等が用いられて、縦排出オーガ筒34(排出オーガ32)の旋回角度を検出することができる。
なお、本実施形態において、旋回用アクチュエータ35は、排出オーガ32を作動させる作動用アクチュエータの一実施形態である。また、旋回用アクチュエータ35には、電動モータが用いられているが、これに限定するものではない。
こうして、旋回用アクチュエータ35が駆動されると、回転軸44が軸心回り(左右方向)へ回動され、駆動ギヤ45及び従動ギヤ43を介して、縦排出オーガ筒34が左右方向(水平方向)へ回動するように構成される。
【0041】
昇降用アクチュエータ37は、図3に示すように、横排出オーガ筒36を上下方向へ回動させる部材である。昇降用アクチュエータ37の両端部には、横排出オーガ筒36に突設されるブラケット48と、縦排出オーガ筒34に突設されるブラケット49とが、それぞれ回動自在に接続される。また、昇降用アクチュエータ37には、昇降角度検出センサ54が取り付けられる。昇降角度検出センサ54は、伸縮式ポテンショメータ等が用いられて、昇降用アクチュエータ37のストロークを検出して横排出オーガ筒36(排出オーガ32)の昇降角度を検出することができる。
なお、本実施形態において、昇降用アクチュエータ37は、排出オーガ32を作動させる作動用アクチュエータの一実施形態である。また、昇降用アクチュエータ37には、油圧シリンダが用いられているが、これに限定するものではない。
こうして、昇降用アクチュエータ37が駆動されると(伸縮されると)、ブラケット48及びブラケット49を介して、横排出オーガ筒36が基端部を中心として上下方向へ回動するように構成される。
【0042】
穀粒排出筒体40は、図4に示すように、横排出オーガ筒36の先端部に設けられた中空筒状の部材である。穀粒排出筒体40は、基端側の開口部を通じて横排出オーガ筒36の投出口体47が挿入されて、当該投出口体47の後下部に前後方向へ回動可能に支持される。穀粒排出筒体40の先端側の開口部が水平方向を臨むように配置されている場合、投出口体47の穀粒排出口(前記開口された他側)は穀粒排出筒体40の内側壁により被覆されるので、投出口体47から外部へ穀粒を排出することはできない。他方、穀粒排出筒体40の先端側の開口部が水平方向より下方向を臨むように配置されている場合、投出口体47の穀粒排出口(前記開口された他側)と穀粒排出筒体40の内側壁との間に間隙が設けられて投出口体47から排出された穀粒は、穀粒排出筒体40の先端側の開口部を通じて穀粒排出筒体40(排出オーガ32)の外部へ排出されることとなる。また、穀粒排出筒体40の先端側の開口部が臨む方向を水平方向より下方向の範囲で前後方向へ調整することにより、穀粒排出筒体40(排出オーガ32)から排出される穀粒の排出方向が調整可能となる。
なお、本実施形態において、穀粒排出筒体40は、穀粒排出部の一例であり、これに限定するものではない。
【0043】
筒体回動用アクチュエータ41は、図4に示すように、穀粒排出筒体40を前後方向へ回動させる部材である。筒体回動用アクチュエータ41は、横排出オーガ筒36の先端側に取り付けられる。筒体回動用アクチュエータ41は、出力軸50を備える。出力軸50には、出力軸ギヤ51が固設されるとともに、回動角度検出センサ56が配置される。出力軸ギヤ51は、扇形の開閉ギヤ52の一端側に歯合される。開閉ギヤ52は、中央部で回動可能に軸支されて、他端側にロッド53の一端側が回動可能に連結される。ロッド53の他端側は、前下方向へ向けて延設されて、平板状の開閉リンク55の一端側に回動可能に連結される。開閉リンク55の他端側は、穀粒排出筒体40に固定されている。回動角度検出センサ56は、穀粒排出筒体40の回動角度を検出する。
なお、本実施形態において、筒体回動アクチュエータ41は、排出オーガ32を作動させる作動用アクチュエータの一実施形態である。また、筒体回動アクチュエータ41には、電動モータが用いられているが、これに限定するものではない。
こうして、筒体回動用アクチュエータ41が駆動されると、出力軸50が軸心回りへ回動され、出力軸ギヤ51を介して、開閉ギヤ52が前後方向へ回動する。そして、開閉ギヤ52が前方向へ回動すると、ロッド53及び開閉リンク55を介して、穀粒排出筒体40が後方向へ回動するように構成される。他方、開閉ギヤ52が後方向へ回動すると、ロッド53及び開閉リンク55を介して、穀粒排出筒体40が前方向へ回動するように構成される。
【0044】
以上のような構成により、排出オーガ32は、旋回用アクチュエータ35により縦排出オーガ筒34を左右方向へ回動させることによって旋回し、昇降用アクチュエータ37により横排出オーガ筒36を上下方向へ回動させることによって昇降するように構成される。また、排出オーガ32は、筒体回動用アクチュエータ41により穀粒排出筒体40を前後方向へ回動させて、グレンタンク17内の穀粒を機体の外部の任意の場所へ排出可能に構成される。
また、オーガクラッチ33が「入」の場合、排出オーガ32は、エンジン8aの動力が排出コンベア31を介して縦排出コンベア38及び横排出コンベア39へ伝達されるので、縦排出コンベア38及び横排出コンベア39が駆動して、グレンタンク17内の穀粒が穀粒排出筒体40を通じて排出可能に構成される。他方、オーガクラッチ33が「切」の場合、排出オーガ32は、エンジン8aの動力が排出コンベア31へ伝達されず、縦排出コンベア38及び横排出コンベア39が駆動しないので穀粒が排出されないように構成される。
【0045】
また、排出オーガ32は、本機側操作装置70により有線通信を用いて、或いは複数の遠隔操作装置、即ち第一又は第二遠隔操作装置80・180により無線通信を用いて操作されるように構成される。詳細については後述するが、排出オーガ32は、本機側操作装置70、或いは第一又は第二遠隔操作装置80・180が操作されると、各アクチュエータ35・37・41をその操作に応じてコンバイン1の任意箇所に設置された制御手段60によって駆動させて、昇降又は旋回したり、或いは穀粒排出筒体40が回動したりするように構成される。
【0046】
次に、制御手段60の構成について、図5を用いて説明する。
【0047】
制御手段60は、図5に示すように、RAMやROM等の記憶装置63、受信部61、タイマーT、CPU等の演算処理装置62等により構成される。
記憶装置63は、各アクチュエータ35・37・41等の駆動制御に関する制御プログラム等を格納する。受信部61は、第一及び第二遠隔操作装置80・180の送信部81から無線で送信された各種信号を受信する。タイマーTは、第一及び第二遠隔操作装置80・180の操作手段の操作停止からの経過時間T1を計測する。演算処理装置62は、受信部61から入力された各種信号や前記制御プログラムに基づいて演算処理を行い、各アクチュエータ35・37・41へ制御信号を出力するなどする。
【0048】
制御手段60は、本機側操作装置70が有する操作手段としての各種ボタンと、旋回角度検出センサ46と、昇降角度検出センサ54と、回動角度検出センサ56と接続されるとともに、第一及び第二遠隔操作装置80・180が有する操作手段としての各種ボタンと無線で接続される。
また、演算処理装置62は、旋回用アクチュエータ35と、昇降用アクチュエータ37と、オーガクラッチ33と、筒体回動用アクチュエータ41と接続される。
【0049】
制御手段60は、本機側操作装置70、第一又は第二遠隔操作装置80・180の各種ボタンが押し操作されると、その操作に対応する操作信号を受信し、受信した操作信号に基づいて、前記制御プログラムと各角度検出センサ46・54・56からの検出信号とを利用しながら、各アクチュエータ35・37・41を駆動制御して、排出オーガ32を昇降又は旋回、或いは穀粒排出筒体40を回動させる。
【0050】
次に、本機側操作装置70の構成について、図5及び図6を用いて説明する。
【0051】
本機側操作装置70は、排出オーガ32を、有線通信を用いて操作するための部材である。本機側操作装置70は、運転部9に設けられた支持ホルダに着脱可能に支持される。本機側操作装置70は、排出オーガ32の操作に関する操作手段としての各種ボタンを備える。なお、本機側操作装置70と同等の機能を有する操作装置を、排出オーガ32の穀粒排出口近傍に設けることも可能である。
【0052】
前記各種ボタンは、自動右セットボタン(「右」表示ボタン)70aと、自動後セットボタン(「後」表示ボタン)70bと、自動リターンボタン(「前」表示ボタン)70cと、オーガクラッチボタン(「クラッチ」表示ボタン)70dと、オーガ上昇ボタン(「上」表示ボタン)70eと、オーガ下降ボタン(「下」表示ボタン)70fと、オーガ左旋回ボタン(「左」表示ボタン)70gと、オーガ右旋回ボタン(「右」表示ボタン)70hと、筒体前回動ボタン(「リターン」表示ボタン)70iと、筒体後回動ボタン(「セット」表示ボタン)70jとからなる。
【0053】
自動右セットボタン70aは、排出オーガ32を予め設定された使用時の所定位置へ自動的に移動(昇降及び旋回)させるためのものである。横排出オーガ(以下、単に排出オーガ32という。)がオーガレスト21に載置されている状態で、自動右セットボタン70aが押し操作されると、制御手段60が旋回用アクチュエータ35及び昇降用アクチュエータ37を受信した操作信号に基づいて駆動させる。その結果、排出オーガ32は、昇降及び旋回して、穀粒排出筒体40(穀粒排出口)が機体右側方に位置するように所定位置に自動的に移動する。
【0054】
自動後セットボタン70bは、排出オーガ32を予め設定された使用時の所定位置へ自動的に移動(昇降及び旋回)させるためのものである。横排出オーガ筒36がオーガレスト21に載置されている状態で、自動後セットボタン70bが押し操作されると、制御手段60が旋回用アクチュエータ35及び昇降用アクチュエータ37を受信した操作信号に基づいて駆動させる。その結果、排出オーガ32は、昇降及び旋回して、穀粒排出筒体40(穀粒排出口)が機体後方に位置するように所定位置に自動的に移動する。
【0055】
自動リターンボタン70cは、排出オーガ32を予め設定された非使用時の収納位置(オーガレスト21に載置される位置)へ自動的に移動(昇降及び旋回)させるためのものである。自動リターンボタン70cが押し操作されると、制御手段60が旋回用アクチュエータ35及び昇降用アクチュエータ37を受信した操作信号に基づいて駆動させる。その結果、排出オーガ32は、昇降及び旋回して、非使用時の収納位置に自動的に移動する。
【0056】
なお、オーガレスト21には、横排出オーガ筒36が載置されているか否かを検出するオーガレストセットセンサ57が配置される。そして、オーガレストセットセンサ57は制御手段60と接続される。
【0057】
オーガクラッチボタン70dは、オーガクラッチ33を入り切りさせるためのものである。オーガクラッチボタン70dが押し操作されている間、制御手段60はオーガクラッチ33を「入」にする。オーガクラッチボタン70dの押し操作が解除されると、制御手段60はオーガクラッチ33を「切」にする。その結果、排出オーガ32は、オーガクラッチボタン70dが押し操作されているときだけ、穀粒を外部に排出する。
【0058】
オーガ上昇ボタン70e、オーガ下降ボタン70fは、それぞれ排出オーガ32を上昇、下降させるためのものである。オーガ上昇ボタン70e又はオーガ下降ボタン70fが押し操作されている間、制御手段60は昇降用アクチュエータ37を受信した操作信号に基づいて駆動させる。オーガ上昇ボタン70e又はオーガ下降ボタン70fの押し操作が解除されると、制御手段60は昇降用アクチュエータ37を停止させる。その結果、排出オーガ32は、オーガ上昇ボタン70e又はオーガ下降ボタン70fが押し操作されているときは、その押し操作に対応して上昇又は下降し、押し操作されていないときは、昇降せずに停止する。
なお、本実施形態において、オーガ上昇ボタン70e、オーガ下降ボタン70fは、排出オーガ32の昇降用操作手段の一例であり、これに限定するものではない。
【0059】
オーガ左旋回ボタン70g、オーガ右旋回ボタン70hは、それぞれ排出オーガ32を左旋回、右旋回させるためのものである。オーガ左旋回ボタン70g又はオーガ右旋回ボタン70hが押し操作されている間、制御手段60は旋回用アクチュエータ35を受信した操作信号に基づいて駆動させる。オーガ左旋回ボタン70g又はオーガ右旋回ボタン70hの押し操作が解除されると、制御手段60は旋回用アクチュエータ35を停止させる。その結果、排出オーガ32は、オーガ左旋回ボタン70g又はオーガ右旋回ボタン70hが押し操作されているときは、その押し操作に対応して左旋回又は右旋回し、押し操作されていないときは、旋回せずに停止する。
なお、本実施形態において、オーガ左旋回ボタン70g、オーガ右旋回ボタン70hは、排出オーガ32の旋回用操作手段の一例であり、これに限定するものではない。
【0060】
筒体前回動ボタン70i、筒体後回動ボタン70jは、それぞれ穀粒排出筒体40を前方向へ回動、後方向へ回動させるためのものである。筒体前回動ボタン70i又は筒体後回動ボタン70jが押し操作されている間、制御手段60は筒体回動用アクチュエータ41を受信した操作信号に基づいて駆動させる。筒体前回動ボタン70i又は筒体後回動ボタン70jの押し操作が解除されると、制御手段60は筒体回動用アクチュエータ41を停止させる。その結果、穀粒排出筒体40が、筒体前回動ボタン70i又は筒体後回動ボタン70jが押し操作されているときは、その押し操作に対応して前方向又は後方向へ回動し、押し操作されていないときは、回動せずに停止する。
なお、本実施形態において、筒体前回動ボタン70i、筒体後回動ボタン70jは、排出オーガ32の穀粒排出筒体40の回動用操作手段の一例であり、これに限定するものではない。
【0061】
なお、本実施形態において、本機側操作装置70は、本機側操作装置の一例であり、これに限定するものではない。また、本機側操作装置70の各種ボタンは、操作手段の一例であり、これに限定するものではない。
【0062】
以上のように、本機側操作装置70は、各種ボタンがそれぞれ一つずつ押し操作されることにより、制御手段60によってその押し操作に対応するように各アクチュエータ35・37・41を駆動させて、排出オーガ32を昇降させたり、排出オーガ32を旋回させたり、排出オーガ32の穀粒排出筒体40を回動させたりするように構成される。
【0063】
次に、第一及び第二遠隔操作装置80・180の構成について、図5及び図7を用いて説明する。
【0064】
第一及び第二遠隔操作装置80・180は、排出オーガ32を、無線通信を用いて操作するための部材である。第一及び第二遠隔操作装置80・180は、運転部9や排出オーガ32の穀粒排出口近傍位置に設けられた支持ホルダに着脱可能に支持され、作業者が携帯することができるように構成される。第一及び第二遠隔操作装置80・180は、排出オーガ32の操作に関する操作手段としての各種ボタンと、送信部81と、図示せぬ電源ボタンとを備える。
【0065】
送信部81は、前記各種ボタンと接続され、各種ボタンが押し操作されている間、その押し操作に対応する操作信号を制御手段60(さらに詳しくは、制御手段60の受信部61)へと無線で送信するものである。
【0066】
前記各種ボタンは、自動右セット・リターンボタン(「セット・リターン」表示ボタン)80aと、オーガクラッチボタン(「クラッチ」表示ボタン)80dと、オーガ上昇ボタン(「上」表示ボタン)80eと、オーガ下降ボタン(「下」表示ボタン)80fと、オーガ左旋回ボタン(「左」表示ボタン)80gと、オーガ右旋回ボタン(「右」表示ボタン)80hと、筒体前回動ボタン(「シュータ前」表示ボタン)80iと、筒体後回動ボタン(「シュータ後」表示ボタン)80jとからなる。
【0067】
自動右セット・リターンボタン80aは、排出オーガ32を予め設定された使用時の所定位置、又は非使用時の収納位置(オーガレスト21に載置される位置)へ自動的に交互に移動(昇降及び旋回)させるためのものである。横排出オーガ(以下、単に排出オーガ32という。)がオーガレスト21に載置されている状態で、自動右セット・リターンボタン80aが押し操作されると、制御手段60が旋回用アクチュエータ35及び昇降用アクチュエータ37を受信した操作信号に基づいて駆動させる。その結果、排出オーガ32は、昇降及び旋回して、穀粒排出筒体40(穀粒排出口)が機体右側方に位置するように所定位置に自動的に移動する。穀粒の排出が終了して自動右セット・リターンボタン80aが押し操作されると、制御手段60が旋回用アクチュエータ35及び昇降用アクチュエータ37を受信した操作信号に基づいて駆動させる。その結果、排出オーガ32は、昇降及び旋回して、非使用時の収納位置に自動的に移動する。このように、自動右セット・リターンボタン80aは、一つのボタンで本機側操作装置70における自動右セットボタン70a及び自動リターンボタン70cという二つのボタンが果たす機能を兼ね備えるものである。
【0068】
オーガクラッチボタン80dは、オーガクラッチ33を入り切りさせるためのものである。オーガクラッチボタン80dが押し操作されている間、制御手段60はオーガクラッチ33を「入」にする。オーガクラッチボタン80dの押し操作が解除されると、制御手段60はオーガクラッチ33を「切」にする。その結果、排出オーガ32は、オーガクラッチボタン80dが押し操作されているときだけ、穀粒を外部に排出する。ただし、横排出オーガ筒36がオーガレスト21に載置されているときや、穀粒排出筒体40の先端側の開口部が水平方向を望むように配置されているときは、オーガクラッチボタン80dが押し操作されても、制御手段60はオーガクラッチ33を「入」にしない。これにより、誤操作による穀粒の排出を防止することができる。
【0069】
オーガ上昇ボタン80e、オーガ下降ボタン80fは、それぞれ排出オーガ32を上昇、下降させるためのものである。オーガ上昇ボタン80e又はオーガ下降ボタン80fが押し操作されている間、制御手段60は昇降用アクチュエータ37を受信した操作信号に基づいて駆動させる。オーガ上昇ボタン80e又はオーガ下降ボタン80fの押し操作が解除されると、制御手段60は昇降用アクチュエータ37を停止させる。その結果、排出オーガ32は、オーガ上昇ボタン80e又はオーガ下降ボタン80fが押し操作されているときは、その押し操作に対応して上昇又は下降し、押し操作されていないときは、昇降せずに停止する。
【0070】
オーガ左旋回ボタン80g、オーガ右旋回ボタン80hは、それぞれ排出オーガ32を左旋回、右旋回させるためのものである。オーガ左旋回ボタン80g又はオーガ右旋回ボタン80hが押し操作されている間、制御手段60は旋回用アクチュエータ35を受信した操作信号に基づいて駆動させる。オーガ左旋回ボタン80g又はオーガ右旋回ボタン80hの押し操作が解除されると、制御手段60は旋回用アクチュエータ35を停止させる。その結果、排出オーガ32は、オーガ左旋回ボタン80g又はオーガ右旋回ボタン80hが押し操作されているときは、その押し操作に対応して左旋回又は右旋回し、押し操作されていないときは、旋回せずに停止する。
【0071】
筒体前回動ボタン80i、筒体後回動ボタン80jは、それぞれ穀粒排出筒体40を前方向へ回動、後方向へ回動させるためのものである。筒体前回動ボタン80i又は筒体後回動ボタン80jが押し操作されている間、制御手段60は筒体回動用アクチュエータ41を受信した操作信号に基づいて駆動させる。筒体前回動ボタン80i又は筒体後回動ボタン80jの押し操作が解除されると、制御手段60は筒体回動用アクチュエータ41を停止させる。その結果、穀粒排出筒体40が、筒体前回動ボタン80i又は筒体後回動ボタン80jが押し操作されているときは、その押し操作に対応して前方向又は後方向へ回動し、押し操作されていないときは、回動せずに停止する。
【0072】
なお、本発明に係る遠隔操作装置は、本実施形態においては第一及び第二遠隔操作装置80・180としているが、これに限定するものではない。また、第一及び第二遠隔操作装置80・180は、略同一の構成としているが、それぞれ異なる構成であってもよい。
また、本発明に係る遠隔操作装置の作動操作手段は、本実施形態においては、自動右セット・リターンボタン80aと、オーガクラッチボタン80dと、オーガ上昇ボタン80eと、オーガ下降ボタン80fと、オーガ左旋回ボタン80gと、オーガ右旋回ボタン80hと、筒体前回動ボタン80iと、筒体後回動ボタン80jとしているが、これに限定するものではない。
また、遠隔操作装置は、コンバイン1に2つ備えられているが、これに限定するものではない。つまり、遠隔操作装置は、コンバイン1に2つ以上備えられる構成であればよい。
【0073】
以上のように、第一及び第二遠隔操作装置80・180は、各種ボタンがそれぞれ一つずつ押し操作されることにより、制御手段60によってその押し操作に対応するように各アクチュエータ35・37・41を駆動させて、排出オーガ32を昇降させたり、排出オーガ32を旋回させたり、排出オーガ32の穀粒排出筒体40を回動させたりするように構成される。その上で、第一及び第二遠隔操作装置80・180は、制御手段60により優先順位を設定される。
【0074】
次に、第一及び第二遠隔操作装置80・180の優先順位について説明する。
なお、以下の説明において、排出オーガ32の穀粒排出筒体40の回動、排出オーガ32の昇降及び旋回を、総じて「排出オーガ32の作動」と称する。また、第一及び第二遠隔操作装置80・180の昇降用操作手段、旋回用操作手段及び回動操作手段の各操作手段のボタンの押し操作を、総じて「ボタン操作」と称する。
【0075】
第一及び第二遠隔操作装置80・180の「優先順位」とは、排出オーガ32の作動に関する操作において、第一及び第二遠隔操作装置80・180が同時にボタン操作された場合、つまり制御手段60が、第一及び第二遠隔操作装置80・180から同時に操作信号を受信した場合、どちらの操作装置の操作信号に対応して各アクチュエータ35・37・41を駆動制御するのかを判定するための順位である。優先順位は、予め設定されて、制御手段60の記憶装置63に格納される。優先順位は、遠隔操作装置が2つ以上設けられた場合、各遠隔操作装置に設定される。本実施形態においては、第一遠隔操作装置80の優先順位が、第二遠隔操作装置180の優先順位よりも高く設定されている。
【0076】
このような構成により、第一及び第二遠隔操作装置80・180が同時にボタン操作されると、制御手段60により第一及び第二遠隔操作装置80・180のどちらの優先順位が高いのかが判定され、本実施形態において優先順位の高い操作装置である第一遠隔操作装置80のボタン操作が優先されて、つまり第二遠隔操作装置180のボタン操作が無効となり、第一遠隔操作装置80のボタン操作が有効となって、そのボタン操作に対応して各アクチュエータ35・37・41が駆動制御され、排出オーガ32が作動することとなる。
【0077】
なお、コンバイン1は、図5に示すように、第一及び第二遠隔操作装置80・180の優先順位を変更可能とする優先順位設定変更手段93を備える構成とすることができる。
この場合、優先順位設定変更手段93は、回転式のダイヤル又はスイッチ等で構成され、本機側操作装置70や、第一遠隔操作装置80や、第二遠隔操作装置180や、運転部9等の少なくとも一つに配置される。優先順位設定変更手段93は制御手段60と接続される。優先順位設定変更手段93が操作されると、制御手段60がその操作に基づいて第一及び第二遠隔操作装置80・180の優先順位を作業者の任意の順位に変更するようになっている。つまり、本実施形態においては、第二遠隔操作装置180の優先順位が、第一遠隔操作装置80の優先順位よりも高くなるように設定変更することができる。
なお、優先順位設定変更手段93は、優先順位設定変更手段の一例であり、これに限定するものではない。
【0078】
また、優先順位は、第一遠隔操作装置80と第二遠隔操作装置180とだけではなく、本機側操作装置70と第一遠隔操作装置80と第二遠隔操作装置180とに設定される構成とすることができる。
この場合の「優先順位」とは、排出オーガ32の作動に関する操作において、本機側操作装置70と第一遠隔操作装置80と第二遠隔操作装置180とのうち少なくとも2つ以上の操作装置が同時にボタン操作された場合、つまり制御手段60が、本機側操作装置70と第一遠隔操作装置80と第二遠隔操作装置180とのうち少なくとも2つ以上の操作装置から同時に操作信号を受信した場合、どの操作装置の操作信号に対応して各アクチュエータ35・37・41を駆動制御するのかを判定するための順位である。
このような構成により、本機側操作装置70と第一遠隔操作装置80と第二遠隔操作装置180とのうち少なくとも2つ以上の操作装置が同時に操作されると、制御手段60により本機側操作装置70と第一遠隔操作装置80と第二遠隔操作装置180とのうちどの優先順位が最も高いのかが判定され、優先順位の最も高い操作装置のボタン操作が優先され、このボタン操作に対応して各アクチュエータ35・37・41が駆動制御され、排出オーガ32が作動することとなる。
【0079】
次に、排出オーガ32の作動における第一及び第二遠隔操作装置80・180のボタン操作に関する制御について、図8のフローチャートを用いて具体的に説明する。
【0080】
まず、ステップ101において、第一及び第二遠隔操作装置80・180の少なくとも一つがボタン操作されると、ボタン操作が続く間、操作信号が送信部81から制御手段60の受信部61へ送信される。制御手段60は、受信部61が受信した操作信号を演算処理装置62に入力する。そして、制御手段60は、演算処理装置62に入力された操作信号が、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうち一の遠隔操作装置からの操作信号であるか否か、つまり第一及び第二遠隔操作装置80・180が同時にボタン操作されているか否かを判定する。
【0081】
その結果、演算処理装置62に入力される操作信号が第一及び第二遠隔操作装置80・180のうち一の遠隔操作装置からの操作信号である場合、つまり第一及び第二遠隔操作装置80・180が同時にボタン操作されていない場合には、制御手段60はステップをステップ102へ移行させる。
一方、演算処理装置62に入力される操作信号が第一及び第二遠隔操作装置80・180のうち一の遠隔操作装置からの操作信号でない場合、つまり第一及び第二遠隔操作装置80・180のボタン操作が同時に行われている場合には、制御手段60はステップをステップ105へ移行させる。
【0082】
ステップ102において、制御手段60は、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうちボタン操作されている遠隔操作装置のボタン操作に対応した各アクチュエータ35・37・41を駆動させ、排出オーガ32を作動させる。そして、制御手段60は、ステップをステップ103へ移行させる。
【0083】
ステップ103において、制御手段60は、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうちボタン操作されている遠隔操作装置の送信部81から送信されている操作信号が演算処理装置62に受信部61を介して入力されているか否か、つまりボタン操作の開始から継続してボタン操作がされているか否かを判定する。
【0084】
その結果、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうちボタン操作されている遠隔操作装置からの操作信号が制御手段60の演算処理装置62に入力されていない場合、つまりボタン操作が解除された場合には、制御手段60はステップをステップ104へ移行させる。
一方、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうちボタン操作されている遠隔操作装置からの操作信号が制御手段60の演算処理装置62に入力されている場合、つまりボタン操作が継続されている場合には、制御手段60はステップをステップ101へ移行させる。この場合、制御手段60は排出オーガ32の作動を続行させる。
【0085】
ステップ104において、制御手段60は、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうちボタン操作されていた遠隔操作装置のボタン操作に対応した各アクチュエータ35・37・41の駆動を停止させ、排出オーガ32の作動を停止させる。
【0086】
ステップ105において、制御手段60は、排出オーガ32の作動に関して第一処理を実行する。
【0087】
次に、制御手段60の第一処理の実行について説明する。
【0088】
制御手段60の「第一処理」の実行とは、制御手段60が、複数の操作装置のうち少なくとも2つ以上の操作装置から操作信号を同時に受信している場合、つまり複数の操作装置のうち少なくとも2つ以上の操作装置が同時にボタン操作されている場合には、それらの操作装置のうち優先順位が最も高い操作装置から受信している操作信号に対応して各アクチュエータ35・37・41を駆動させ、排出オーガ32を作動させるという処理を実行することである。
【0089】
なお、本実施形態においては、コンバイン1には、遠隔操作装置として第一及び第二遠隔操作装置80・180という2つの操作装置が設けられる。したがって、第一及び第二遠隔操作装置80・180が同時にボタン操作された場合に、制御手段60により第一処理が実行され、優先順位が最も高い操作装置である第一遠隔操作装置80から受信されている操作信号に対応して各アクチュエータ35・37・41が駆動され、排出オーガ32が作動されることとなる。
【0090】
次に、第一処理の実行に関する制御について、図9のフローチャートを用いて具体的に説明する。
【0091】
まず、ステップ201において、制御手段60は、第一及び第二遠隔操作装置80・180から操作信号を同時に受信している場合、つまり第一及び第二遠隔操作装置80・180が同時にボタン操作されている場合には、第一及び第二遠隔操作装置80・180の優先順位を記憶装置63から取得して、第一及び第二遠隔操作装置80・180の優先順位のどちらが高いのかを判定する。そして、本実施形態の当初の設定においては、最も優先順位の高い操作装置として第一遠隔操作装置80が判定される。そして、制御手段60は、ステップをステップ202へ移行させる。
【0092】
ステップ202において、制御手段60は、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうち優先順位の低い(最も優先順位の高い操作装置以外の)操作装置、つまり第二遠隔操作装置180のボタン操作に対応して各アクチュエータ35・37・41を駆動させ、排出オーガ32を作動させているか否かを判定する。
【0093】
その結果、優先順位の低い操作装置、つまり第二遠隔操作装置180のボタン操作に対応して各アクチュエータ35・37・41の駆動させ、排出オーガ32を作動させている場合には、制御手段60は、ステップをステップ203へ移行させる。
一方、優先順位の低い操作装置、つまり第二遠隔操作装置180のボタン操作に対応して各アクチュエータ35・37・41を駆動させておらず、排出オーガ32を作動させていない場合には、制御手段60は、ステップをステップ204へ移行させる。
【0094】
ステップ203において、制御手段60は、優先順位の低い操作装置、つまり第二遠隔操作装置180のボタン操作に対応した各アクチュエータ35・37・41の駆動を停止させ、排出オーガ32の作動を停止させる。そして、制御手段60は、ステップをステップ204へ移行させる。
【0095】
ステップ204において、制御手段60は、同時にボタン操作されている複数の操作装置のうち最も優先順位が高い操作装置、つまり第一遠隔操作装置80のボタン操作に対応して各アクチュエータ35・37・41を駆動させ、排出オーガ32を作動させる。そして、制御手段60は、ステップをステップ205へ移行させる。
【0096】
ステップ205において、制御手段60は、第一遠隔操作装置80の送信部81から送信されている操作信号が制御手段60の演算処理装置62に受信部61を介して入力されているか否か、つまり最も優先順位が高い操作装置である第一遠隔操作装置80においてボタン操作の開始から継続してボタン操作がされているか否かを判定する。
【0097】
その結果、第一遠隔操作装置80からの操作信号が制御手段60の演算処理装置62に入力されていない場合、つまり最も優先順位が高い操作装置である第一遠隔操作装置80においてボタン操作が解除された場合には、制御手段60はステップをステップ206へ移行させる。
一方、第一遠隔操作装置80からの操作信号が制御手段60の演算処理装置62に入力されている場合、つまり最も優先順位が高い操作装置である第一遠隔操作装置80においてボタン操作が継続されている場合には、制御手段60はステップを再びステップ205へ移行させる。この場合、制御手段60は第一遠隔操作装置80のボタン操作に対応して排出オーガ32の作動を続行させる。
【0098】
ステップ206において、制御手段60は、第二遠隔操作装置180の送信部81から送信されている操作信号が演算処理装置62に受信部61を介して入力されているか否か、つまり優先順位の低い操作装置である第二遠隔操作装置180においてボタン操作がされているか否かを判定する。
【0099】
その結果、第二遠隔操作装置180からの操作信号が制御手段60の演算処理装置62に入力されていない場合、つまり優先順位の低い操作装置である第二遠隔操作装置180においてボタン操作されていない場合には、制御手段60はステップをステップ207へ移行させる。
また、第二遠隔操作装置180からの操作信号が制御手段60の演算処理装置62に入力されている場合、つまり優先順位の低い操作装置である第二遠隔操作装置180においてボタン操作されている場合には、制御手段60はステップをステップ208へ移行させる。
【0100】
ステップ208において、制御手段60は、第二遠隔操作装置180のボタン操作に対応した各アクチュエータ35・37・41を駆動させ、排出オーガ32を作動させる。つまり、制御手段60は、同時にボタン操作されている操作装置のうち最も優先順位が高い操作装置であった第一遠隔操作装置80のボタン操作が解除されたため、その後ボタン操作されている操作装置(本実施形態においては、第二遠隔操作装置180のみ)のうち、最も優先順位が高い操作装置となった第二遠隔操作装置180のボタン操作に対応して各アクチュエータ35・37・41を駆動させ、排出オーガ32を作動させる。そして、制御手段60は、ステップをステップ209へ移行させる。
【0101】
ステップ209において、制御手段60は、第一遠隔操作装置80の送信部81から送信されている操作信号が制御手段60の演算処理装置62に受信部61を介して入力されているか否か、つまり第一遠隔操作装置80においてボタン操作が再開されて、第一及び第二遠隔操作装置80・180が同時にボタン操作されているか否かを判定する。
【0102】
その結果、第一遠隔操作装置80からの操作信号が制御手段60の演算処理装置62に入力されている場合、つまり第一遠隔操作装置80においてボタン操作が再開されて、第一及び第二遠隔操作装置80・180が同時にボタン操作されている場合には、制御手段60はステップをステップ201へ移行させる。
一方、第一遠隔操作装置80からの操作信号が演算処理装置62に入力されていない場合、つまり第一遠隔操作装置80においてボタン操作が再開されていない場合には、制御手段60はステップをステップ206へ移行させる。この場合、制御手段60は第二遠隔操作装置180のボタン操作に対応して排出オーガ32の作動を続行させる。
【0103】
また、ステップ207において、制御手段60は、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうちボタン操作に対応した各アクチュエータ35・37・41の駆動を停止させ、排出オーガ32の作動を停止させる。
【0104】
以上のように、コンバイン1は、グレンタンク17内の穀粒を外部に排出する作動可能な排出オーガ32と、前記排出オーガ32を作動させる各アクチュエータ35・37・41(作動用アクチュエータ)と、前記各アクチュエータ35・37・41(作動用アクチュエータ)を駆動制御する制御手段60と、前記排出オーガ32の各種ボタン(作動操作手段)を有し、無線通信を用いて前記制御手段60を遠隔操作する第一及び第二遠隔操作装置80・180(複数の遠隔操作装置)と、を備えるコンバインであって、前記制御手段60は、前記第一及び第二遠隔操作装置80・180(複数の遠隔操作装置)に優先順位を設定し、前記第一及び第二遠隔操作装置80・180(複数の遠隔操作装置)のうち少なくとも2つ以上の遠隔操作装置から同時に操作信号を受信した場合、その2つ以上の遠隔操作装置のうち最も優先順位が高い第一遠隔操作装置80から受信した操作信号に対応して前記各アクチュエータ35・37・41(作動用アクチュエータ)を駆動制御して、前記排出オーガ32を作動させるものである。
【0105】
このような構成により、複数の遠隔操作装置、つまり第一及び第二遠隔操作装置80・180が同時に操作された場合、最も優先順位の高い遠隔操作装置(第一遠隔操作装置80)以外の遠隔操作装置(第二遠隔操作装置180)のボタン操作は無効となり、第一遠隔操作装置80のボタン操作に対応して各アクチュエータ35・37・41が駆動して、前記排出オーガ32が作動することになる。そのため、第一及び第二遠隔操作装置80・180が同時にボタン操作された場合であっても、排出オーガ32の誤作動を防止することができる。また、排出オーガ32の作動が停止せず、最も優先順位の高い操作装置である第一遠隔操作装置80をボタン操作する作業者によって、排出オーガ32の作動を継続して作業を行うことができる。したがって、排出オーガ32の穀粒排出作業の作業性を向上させることができる。
【0106】
また、制御手段60は、排出オーガ32の作動に関して第二処理を実行する構成とすることができる。
【0107】
次に、制御手段60の第二処理の実行について説明する。
【0108】
制御手段60の「第二処理」の実行とは、制御手段60が、複数の操作装置のうち各アクチュエータ35・37・41を駆動制御していた一の操作装置からの操作信号の受信が停止した場合、その停止時から予め設定された時間内は、他の操作装置から受信した操作信号に対応して各アクチュエータ35・37・41を駆動制御せず、排出オーガ32を作動させないという処理を実行することである。
【0109】
なお、本実施形態においては、コンバイン1には、遠隔操作装置として第一及び第二遠隔操作装置80・180という2つの操作装置が設けられる。したがって、制御手段60が、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうち第一遠隔操作装置80から操作信号を受信していた場合、予め設定された時間(以下の説明においては、「設定時間T2」と称する。)内は、第二遠隔操作装置180から操作信号に対応して各アクチュエータ35・37・41が駆動制御されず、排出オーガ32を作動させることができないこととなる。つまり第一遠隔操作装置80のボタン操作が解除されても、設定時間T2内は、第二遠隔操作装置180のボタン操作により排出オーガ32を作動させることができないこととなる。
なお、設定時間T2は、制御手段60の記憶装置63に格納されている。
【0110】
次に、第二処理の実行に関する制御について、図10のフローチャートを用いて具体的に説明する。
【0111】
まず、ステップ301において、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうち一の操作装置がボタン操作されると、ボタン操作が続く間、操作信号が送信部81から制御手段60の受信部61へ送信される。制御手段60は、受信部61が受信した信号を制御手段60の演算処理装置62に入力する。そして、制御手段60は、ボタン操作に対応した各アクチュエータ35・37・41を駆動させて、排出オーガ32の作動させる。そして、制御手段60は、ステップをステップ302へ移行させる。
【0112】
ステップ302において、制御手段60は、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうち一の操作装置の送信部81から送信されている信号が演算処理装置62に受信部61を介して入力されているか否か、つまりボタン操作の開始から継続してボタン操作されているか否かを判定する。
【0113】
その結果、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうち一の操作装置からの信号が演算処理装置62に入力されていない場合、つまりボタン操作が解除された場合には、制御手段60はステップをステップ303へ移行させる。
一方、第一及び遠隔操作装置80・180のうち一の操作装置からの信号が制御手段60の演算処理装置62に入力されている、つまりボタン操作が継続されている場合には、制御手段60はステップを再びステップ302へ移行させる。この場合、制御手段60はボタン操作に対応した排出オーガ32の作動を続行させる。
【0114】
ステップ303において、制御手段60は、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうち一の操作装置のボタン操作に対応した各アクチュエータ35・37・41の駆動を停止させ、排出オーガ32の作動を停止させる。そして、制御手段60は、ステップをステップ304へ移行させる。
【0115】
ステップ304において、制御手段60は、タイマーTをリセットした後、このタイマーにより第一及び第二遠隔操作装置80・180のうち一の操作装置のボタン操作の解除から(受信部61からの信号が演算処理装置62に入力しなくなった時点から)の時間計測を開始して、経過時間T1を得る。そして、制御手段60は、ステップをステップ305へ移行させる。
【0116】
ステップ305において、制御手段60は、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうち他の操作装置の送信部81から送信されている操作信号が制御手段60の演算処理装置62に受信部61を介して入力されているか否か、つまり先にボタン操作が行われていた操作装置とは別の操作装置がボタン操作されているか否かを判定する。
【0117】
その結果、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうち他の操作装置からの操作信号が制御手段60の演算処理装置62に入力されていない場合、つまり第一及び第二遠隔操作装置80・180の他の操作装置がボタン操作されていない場合には、制御手段60は、ステップをステップ306へ移行させる。
一方、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうち他の操作装置からの操作信号が制御手段60の演算処理装置62に入力されている場合、つまり第一及び第二遠隔操作装置80・180のうち他の操作装置がボタン操作されている場合には、制御手段60は、ステップをステップ307へ移行させる。
【0118】
ステップ307において、制御手段60は、タイマーTにより計測された経過時間T1が、設定時間T2内であるか否かを判定する。
【0119】
その結果、経過時間T1が、設定時間T2内でない場合、つまり経過時間T1が設定時間T2を経過している場合には、制御手段60は、ステップをステップ301へ移行させる。
一方、経過時間T1が、設定時間T2内である場合、つまり経過時間T1が設定時間T2を経過していない場合には、制御手段60は、排出オーガ32の作動の停止状態を保持したまま、ステップをステップ305へ移行させる。
【0120】
ステップ306において、制御手段60は、タイマーTにより計測された経過時間T1が、設定時間T2内であるか否かを判定する。
【0121】
その結果、経過時間T1が、設定時間T2内でない場合、つまり経過時間T1が設定時間T2を経過していない場合には、制御手段60は、ステップをステップ305へ移行させる。
一方、経過時間T1が、設定時間T2内である場合、つまり経過時間T1が設定時間T2を経過した場合には、制御手段60は、第二処理の実行を完了する。
【0122】
以上のように、前記制御手段60は、第一遠隔操作装置80からの操作信号を受信しなくなって、前記排出オーガ32の作動を停止させた場合、その停止時から予め設定された時間内は、この第一遠隔操作装置80を除いた他の前記遠隔操作装置から操作信号を受信しても、前記排出オーガ32の作動の停止状態を保持するものである。
【0123】
このような構成により、複数の遠隔操作装置のうち一の操作装置である第一遠隔操作装置80のボタン操作が解除された直後に、他の操作装置である第二遠隔操作装置180のボタン操作が開始された場合であっても、予め設定された時間内は他の操作装置(第二遠隔操作装置180)のボタン操作に対応した排出オーガ32の作動を防止することができる。したがって、例えば優先順位の高い操作装置(第一遠隔操作装置80)のボタン操作が一時的に解除された直後に、この優先順位の高い遠隔操作装置(第一遠隔操作装置180)をボタン操作する作業者の意図に反して、それよりも優先順位の低い操作装置(第二遠隔操作装置180)のボタン操作が開始されて排出オーガ32が作動することを防止できる。したがって、作業を円滑に行うことができ、排出オーガ32の穀粒排出作業の作業性を向上させることができる。
【0124】
また、コンバイン1は、図5に示すように、制御手段60の記憶装置63に記憶された設定時間T2を変更可能とする設定時間変更手段91を備える構成とすることができる。
設定時間変更手段91は、回転式のダイヤル又はスイッチ等で構成され、本機側操作装置70や、第一遠隔操作装置80や、第二遠隔操作装置180や、運転部9等の少なくとも一つに配置される。設定時間変更手段91は制御手段60と接続される。設定時間変更手段91が操作されることにより、制御手段60がその操作に基づいて設定時間T2を長く又は短く変更するようになっている。これによって、作業者が作業状況や排出オーガ32のボタン操作の熟練度等に応じて設定時間T2を変更できるので、排出オーガ32の穀粒排出作業の作業性を向上させることができる。
なお、設定時間変更手段91は、設定時間変更手段の一例であり、これに限定するものではない。
【0125】
また、コンバイン1は、図5に示すように、制御手段60の第二処理の実行を解除する第二処理解除手段94を備える構成とすることができる。
第二処理解除手段94は、回転式のダイヤル又はスイッチ等で構成され、第一及び第二遠隔操作装置80・180に配置される。第二処理解除手段94は制御手段60と接続される。第二処理解除手段94が操作されることにより、制御手段60の第二処理の実行が解除される。つまり、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうち一の操作装置のボタン操作が解除された後、経過時間T1が設定時間T2内であっても、第二処理解除手段94の操作によって第二処理の実行が解除されると、他の操作装置のボタン操作により制御手段60がそのボタン操作に対応して各アクチュエータ35・37・41を駆動させ、排出オーガ32を作動させることができる。
なお、本実施形態において、第二処理解除手段94は、解除手段の一例であり、これに限定するものではない。例えば、第一及び第二遠隔操作装置80・180の各種ボタンのうちいずれかのボタンを所定の時間内に2度連続して押し操作することにより、第二処理の実行が解除されるような構成としてもよい。
【0126】
以上のように、第一及び第二遠隔操作装置80・180は、それぞれ前記停止状態を解除するための第二処理解除手段94を有するものである。
【0127】
このような構成により、複数の遠隔操作装置のうち一の遠隔操作装置である第一遠隔操作装置80のボタン操作が解除された後、他の遠隔操作装置である第二遠隔操作装置180のボタン操作を即座に開始したい場合に、第二処理解除手段94(解除手段)により第二処理の実行を解除すれば、予め設定された時間内であっても、他の操作装置(第二遠隔操作装置180)のボタン操作を有効にすることが可能となる。したがって、作業を状況に応じて速やかに再開させることができ、排出オーガ32の穀粒排出作業の作業性を向上させることができる。
【0128】
また、第一及び第二遠隔操作装置80・180には、図5及び図7に示すように、表示灯95を備える構成とすることができる。
表示灯95は、制御手段60により点灯及び消灯を切り換え可能とする発光体である。表示灯95は、第一及び第二遠隔操作装置80・180の任意の位置に配置される。表示灯95は、制御手段60と接続される。表示灯95は、第一及び第二遠隔操作装置80・180がボタン操作されていない状態と、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうち一の操作装置がボタン操作されている状態(第一及び第二遠隔操作装置80・180が同時にボタン操作されていない状態)とでは、制御手段60により消灯される。一方、第一及び第二遠隔操作装置80・180が同時にボタン操作された場合、つまり、制御手段60が第一及び第二遠隔操作装置80・180から操作信号を同時に受信している場合に、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうち優先順位の低い(最も優先順位の高い操作装置以外の)操作装置に配置された表示灯95は、制御手段60により点灯させられるように構成される。換言すれば、ボタン操作されても排出オーガ32を作動させることができない場合、そのボタン操作された操作装置に配置された表示灯95が点灯するものである。そして、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうち最も優先順位の高い操作装置のボタン操作が解除され、第一及び第二遠隔操作装置80・180のうち優先順位の低い操作装置のボタン操作が可能となったとき表示灯95が制御手段60により消灯させられるように構成される。
なお、本実施形態において、表示灯95は、報知手段の一例であり、これに限定するものではない。即ち、報知手段は、複数の遠隔操作装置のうち優先順位が低い操作装置である旨、つまりボタン操作により排出オーガ32を作動させることができない旨を、当該操作装置をボタン操作する作業者に報知できるものであればよい。
【0129】
以上のように、第一及び第二遠隔操作装置80・180は、それぞれ当該遠隔操作装置(第一又は第二遠隔操作装置80・180)の操作が無効な状態であることを報知する表示灯95(報知手段)を備え、前記制御手段60は、第一又は第二遠隔操作装置80・180からの操作信号を受信して、前記排出オーガ32を作動させている場合、この第一又は第二遠隔操作装置80・180よりも優先順位が低い遠隔操作装置に、当該遠隔操作装置の操作が無効な状態であることを表示灯95に報知させる、例えば、第一遠隔操作装置80からの操作信号を受信して、前記排出オーガ32を作動させている場合、この第一遠隔操作装置80よりも優先順位が低い第二遠隔操作装置180に、当該第二遠隔操作装置180の操作が無効な状態であることを表示灯95に報知させるものである。
【0130】
このような構成により、各遠隔操作装置(第一及び第二遠隔操作装置80・180)の操作が有効か否かを即座に認識して、状況に応じた適切な遠隔操作装置を選択することが可能となる。したがって、排出オーガ32の穀粒排出作業の作業性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0131】
1 コンバイン
17 グレンタンク
32 排出オーガ
35 旋回用アクチュエータ
37 昇降用アクチュエータ
41 筒体回動用アクチュエータ
60 制御手段
80 第一遠隔操作装置
94 第二処理解除手段
95 表示灯
180 第二遠隔操作装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレンタンク内の穀粒を外部に排出する作動可能な排出オーガと、
前記排出オーガを作動させる作動用アクチュエータと、
前記作動用アクチュエータを駆動制御する制御手段と、
前記排出オーガの作動操作手段を有し、無線通信を用いて前記制御手段を遠隔操作する複数の遠隔操作装置と、
を備えるコンバインであって、
前記制御手段は、前記複数の遠隔操作装置に優先順位を設定し、前記複数の遠隔操作装置のうち少なくとも2つ以上の遠隔操作装置から同時に操作信号を受信した場合、その2つ以上の遠隔操作装置のうち最も優先順位が高い遠隔操作装置から受信した操作信号に対応して前記作動用アクチュエータを駆動制御して、前記排出オーガを作動させる、コンバイン。
【請求項2】
前記制御手段は、前記遠隔操作装置からの操作信号を受信しなくなって、前記排出オーガの作動を停止させた場合、その停止時から予め設定された時間内は、この遠隔操作装置を除いた他の前記遠隔操作装置から操作信号を受信しても、前記排出オーガの作動の停止状態を保持する、請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記各遠隔操作装置は、前記停止状態を解除するための解除手段を有する、請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記各遠隔操作装置は、当該遠隔操作装置の操作が無効な状態であることを報知する報知手段を備え、
前記制御手段は、前記遠隔操作装置からの操作信号を受信して、前記排出オーガを作動させている場合、この遠隔操作装置よりも優先順位が低い遠隔操作装置に、当該遠隔操作装置の操作が無効な状態であることを前記報知手段に報知させる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−217669(P2011−217669A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90215(P2010−90215)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】