説明

コンバータ装置および系統連系システム

【課題】太陽電池ユニット等の発電装置の発電電圧が比較的高く、昇圧を行うためにPWM制御を行うスイッチング素子がオフ状態になりやすいコンバータ装置を用いる場合でも、電力損失を極力抑制し、ひいては、効率の良い電力利用を図る
【解決手段】太陽電池ユニット11の直流入力電圧を昇圧して直流出力電圧とする昇圧型のコンバータ装置12において、リアクトル素子34およびスイッチング素子であるMOSFET33を有する昇圧部と、MOSFET33のオフ時にリアクトル素子34を介して太陽電池ユニット11からの電流が流れるリアクトル素子電流流路と並列に、太陽電池ユニット11からの電流の一部をバイパスするリアクトル素子電流流路より低電流損失のバイパス電流流路として第2ダイオード39を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバータ装置および系統連系システムに係り、特に太陽電池等のように構造的に蓄電する機能を有していない発電装置に好適で、このような発電装置により発電した直流電圧を昇圧して安定した直流電圧を出力するコンバータ装置およびこのコンバータ装置を備えた系統連系システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、太陽電池により発電した直流電圧を、降圧又は昇圧するコンバータ装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−280220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のコンバータ装置では、昇圧前の電圧が目標電圧よりも高い場合、すなわち、昇圧の必要がない場合には、パルス幅変調(PWM)を行うためのスイッチング素子であるパワートランジスタ素子をオフ状態とするだけであり、太陽電池側からの供給電力は、昇圧用のリアクトルおよび逆流防止用ダイオードを介して昇圧回路内を流れることとなる。
【0005】
この場合において、パワートランジスタ素子がオフであっても負荷側には電力が供給されるため、太陽電池のように機構的に蓄電する機能を有していない発電装置においては、発電電力の有効利用を図る観点からは好ましい構成となっていた。
しかしながら、仕様により太陽電池の発電電圧である昇圧前の電圧が、目標電圧よりも高い状態が通常状態であるような構成では、昇圧を行う必要が無い期間が長くなり、昇圧用のリアクトル素子および逆流防止用ダイオードにおける電力損失が無視できないような状態となってしまうという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、太陽電池ユニット等の発電装置の発電電圧が比較的高く、昇圧を行うためにPWM制御を行うスイッチング素子がオフ状態になりやすいコンバータ装置を用いる場合でも、電力損失を極力抑制し、ひいては、効率の良い電力利用を図ることが可能なコンバータ装置およびこのコンバータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、直流電源の直流入力電圧を昇圧して直流出力電圧とする昇圧型のコンバータ装置において、リアクトル素子およびスイッチング素子を有する昇圧部と、前記スイッチング素子のオフ時に前記リアクトル素子を介して前記直流電源からの電流が流れるリアクトル素子電流流路と並列に、前記直流電源からの電流の一部をバイパスする前記リアクトル素子電流流路より低電流損失のバイパス電流流路を設けたことを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、スイッチング素子のオフ時には、直流電源からの電流の一部は、リアクトル素子電流流路と並列に設けられた、低電流損失のバイパス電流流路を流れるため、直流電源からの電流が全てリアクトル素子電流流路を流れる場合と比較して低損失で負荷に電力を供給でき、有効に電力を利用することができる。
【0009】
また、直流電源の直流入力電圧を昇圧して直流出力電圧とする昇圧型のコンバータ装置において、リアクトル素子およびスイッチング素子を有する昇圧部が複数多段に接続され、各昇圧部において、前記スイッチング素子のオフ時に前記リアクトル素子を介して前記直流電源からの電流が流れるリアクトル素子電流流路と並列に、前記直流電源からの電流の一部をバイパスするバイパス電流流路がそれぞれ設けられたことを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、スイッチング素子のオフ時には、直流電源からの電流の一部は、各リアクトル素子電流流路と並列に設けられた、低電流損失のバイパス電流流路をそれぞれ流れるため、直流電源からの電流が全てリアクトル素子電流流路を流れる場合と比較して低損失で負荷に電力を供給でき、有効に電力を利用することができる。
【0011】
この場合において、前記昇圧部は、リアクトル素子電流流路を形成するとともに、逆流電流を防止すべく前記リアクトル素子の出力端子に直列に接続された第1ダイオード素子を有し、前記バイパス電流流路は、前記バイパス時に流れる電流の電流損失が、前記リアクトル素子および前記第1ダイオード素子の電流損失よりも小さい第2ダイオード素子を備えるようにしてもよい。
また、前記第2ダイオードは、前記第1ダイオード素子よりも小さい順方向バイアス電圧を有するようにしてもよい。
【0012】
また、直流電源の直流入力電圧を昇圧して直流出力電圧とする昇圧型のコンバータ装置において、リアクトル素子およびスイッチング素子を有する昇圧部が複数多段に接続された多段昇圧部を有し、前記スイッチング素子のオフ時に前記多段昇圧部を構成する複数の前記リアクトル素子を介して前記直流電源からの電流が流れるリアクトル素子電流流路と並列に、前記直流電源からの電流の一部をバイパスする前記リアクトル素子電流流路より低電流損失のバイパス電流流路が設けられたことを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、スイッチング素子のオフ時には、直流電源からの電流の一部は、多段昇圧部を構成する複数のリアクトル素子電流流路と並列に設けられた、低電流損失のバイパス電流流路を流れるため、直流電源からの電流が全てリアクトル素子電流流路を流れる場合と比較して低損失で負荷に電力を供給でき、有効に電力を利用することができる。
【0014】
この場合において、各前記昇圧部は、リアクトル素子電流流路を形成するとともに、逆流電流を防止すべく前記リアクトル素子の出力端子に直列に接続された第1ダイオード素子を有し、前記バイパス電流流路は、前記バイパス時に流れる電流の電流損失が、前記多段昇圧部を構成する複数の前記リアクトル素子および複数の前記第1ダイオード素子全体の電流損失よりも小さい第2ダイオード素子を備えるようにしてもよい。
また、前記第2ダイオードは、少なくとも複数の直列接続された前記第1ダイオード素子よりも小さい順方向バイアス電圧を有するようにしてもよい。
【0015】
また、直流電力を供給する発電電力供給装置と、前記発電電力供給装置の出力側に接続された、上記いずれかに記載のコンバータ装置と、前記コンバータ装置の出力である直流電圧を交流電圧に変換し、商用電力系統に連系して負荷及又は前記商用電力系統に電力を供給する系統連系インバータ装置と、を備えたことを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、コンバータ装置は、発電電力供給装置から供給された直流電力を昇圧するに際し、スイッチング素子のオフ時には、直流電源からの電流の一部は、リアクトル素子電流流路と並列に設けられた、低電流損失のバイパス電流流路を流れるため、直流電源からの電流が全てリアクトル素子電流流路を流れる場合と比較して低損失で負荷に電力を供給でき、有効に電力を利用することができる。
【0017】
この場合において、前記発電電力供給装置は、複数のセルを有する太陽電池であるようにしてもよい。
【0018】
また、前記発電電力供給装置は、発電を行い交流電力を供給する発電部と、前記交流電力の整流を行って、直流電力を供給する整流部と、を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、太陽電池ユニット等の発電装置の発電電圧が比較的高く、昇圧を行うためにPWM制御を行うスイッチング素子がオフ状態になりやすいコンバータ装置を用いる場合でも、電力損失を極力抑制し、ひいては、効率の良い電力利用を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は、実施形態のコンバータ装置を含む系統連系太陽光発電システムのブロック図である。
系統連系太陽光発電システム10は、大別すると、発電装置として機能する太陽電池ユニット11と、コンバータ装置12と、インバータ装置13と、フィルタ回路(ノイズフィルタ)14と、パワーリレー15と、パワコン側ブレーカ16と、コントローラ17と、を備えている。
【0021】
ここで、パワコン側ブレーカ16には、商用電源20が接続されている。
太陽電池ユニット11は、複数のセル11−1〜11−nを備えており、最大で600V程度の発電が可能となっている。
コンバータ装置12は、本実施形態において、発電状態に応じて出力電圧が変動する太陽電池ユニット11から供給される直流電圧を、安定した所定の直流電圧に変換して出力するDC−DCコンバータであり、出力電圧300V程度を目標値としている。
【0022】
ここで、コンバータ装置の構成について説明する。
コンバータ装置12は、太陽電池ユニット11から出力される直流電流の電圧Viを入力電圧とし、この入力電圧Viに応じて、出力電圧Voを目標直流電圧に近づけるべく、昇圧を行うDC−DC変換部31と、DC−DC変換部31の制御を行う制御部32とを備えている。
DC−DC変換部31は、昇圧スイッチング素子であるMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)33を有し、このMOSFET33の動作により直流電源ラインLの入力端P1に入力された入力電圧Viを昇圧する昇圧回路として機能している。このMOSFET33は、スイッチングを15〜20kHzで行う必要があるため、順方向バイアス電圧だけでなく、スイッチング損失も加味して選択する必要がある。しかしながら、順方向バイアス電圧とスイッチング損失とは相反関係(トレードオフ)にあるため、順方向バイアス電圧を一方的に下げることはできないのである。
なお、昇圧スイッチング素子としては、MOSFETに限らず、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であっても構わない。
【0023】
具体的には、高電位側直流電源ラインL1に、リアクトル素子34を設け、このリアクトル素子34の出力端子に第1ダイオード35のアノード端子を接続し、リアクトル素子34と第1ダイオード35のアノード端子の接続点に昇圧スイッチング素子であるMOSFET33のエミッタ端子を接続し、低電位側直流電源ラインL2にMOSFET33のコレクタ端子を接続している。
ここで、第1ダイオード35は、スイッチングを15〜20kHzで行う必要があるため、MOSFET33と同様の理由により、順方向バイアス電圧だけでなく、スイッチング損失も加味して選択する必要がある。
【0024】
さらに第1ダイオード35のカソード端子にコンデンサ57の一方の端子Q1を接続し、他方の端子Q2を低電位側直流電源ラインL2に接続している。
ここで、MOSFET33には、電流の逆流の発生に対する保護を行う保護ダイオード38が設けられ、保護ダイオード38のアノード端子がMOSFET33のコレクタ端子に接続され、カソード端子がMOSFET33のエミッタ端子に接続されている。
【0025】
また、直列接続されたリアクトル素子34および第1ダイオード35に並列にMOSFET33のオフ時に太陽電池ユニット11からインバータ装置13側に流れる電流の一部をバイパスして流す第2ダイオード39が設けられている。
ここで、第2ダイオード39は、MOSFET33や第1ダイオード35とは異なり、スイッチングを行う必要はないので、順方向バイアス電圧のみを考慮していれば、スイッチング損失を考慮せずに選択することが可能である。したがって、現実的には、第2ダイオード39の順方向電圧は、第1ダイオード35のおよそ半分以下とすることが可能となっている。
【0026】
さらに、コンデンサ37の一方の端子Q1には、DC−DC変換部31への電流の逆流を防止する逆流防止ダイオード40のアノードが接続され、この逆流防止ダイオード40のカソード端子がコンバータ装置12の出力端子T1に接続されている。この場合において、逆流防止ダイオード40における電圧降下は、出力電圧Voに対して無視できる程度に小さいので、高電位側直流電源ラインL1側の出力端子T1と、コンデンサの一方の端子Q1と、は略同電位であるといえる。また、低電位側直流電源ラインL2の出力端子T2と出力端Q2とは同電位である。
【0027】
制御部32は、DC−DC変換部31を制御するものである。つまり、制御部32は、コンデンサ37の両端子Q1、Q2間の電圧に相当する出力電圧Voを目標直流電圧Vtに近づけるべく、DC−DC変換部31の出力電圧Voに応じて、MOSFET33の動作を制御する。
【0028】
制御部32は、入力電圧Viを測定する入力電圧測定部41と、出力電圧Voを測定する出力電圧検出部42と、IGBT53にゲート信号であるPWM信号Sを出力するドライブ回路43と、このドライブ回路43を動作させるための制御を行うマイクロコンピュータとして構成されているコントローラ44とを備えている。
【0029】
このコントローラ44には、図示を省略したROMが接続されており、このROMに記憶されている制御プログラムに基づいて、DC−DC変換部31の出力電圧Voを目標直流電圧Vtにすべく、この出力電圧Voに応じてPWM信号Sを制御するものである。
インバータ装置13は、ブリッジ接続したIGBT51〜54を備えており、コントローラ17の制御下で、コンバータ装置12からの入力電力を所定の交流電力に変換してフィルタ回路14に出力する。
【0030】
より詳細には、インバータ装置13は、コントローラ17内のスイッチング素子駆動回路から供給されるPWM信号Sに応じて、太陽電池ユニット11からコンバータ装置12を介して供給される直流電力を、商用電源20と同じ周波数(例えば50Hz又は60Hz)の交流電力に変換する。本実施形態におけるインバータ装置13の出力は、例えばノコギリ状波の擬似正弦波となっている。
【0031】
インバータ装置13で交流に変換された電力を負荷20に供給する場合、インバータ装置13で交流に変換された電力は、フィルタ回路14、パワーリレー15およびパワコン側ブレーカ16を介して商用電源20へと供給される。
このとき、インバータ装置13から出力された交流電力は、フィルタ回路14を通過することにより、高調波成分が除去され、ノコギリ状波から正弦波の交流電力(整合電力)として出力される。ここで、インバータ装置13の出力電圧は、フィルタ回路14、パワーリレー15およびパワコン側ブレーカ17を介して供給される商用電源20の電圧に同期している。更に、インバータ装置13の出力電流は、インバータ装置13の出力電圧に同期している。つまり、インバータ装置13の出力が、力率1となるように制御されている。
【0032】
昇圧の制御を行う場合、コントローラ44は、MOSFET33のゲートにPWM信号Sを出力してMOSFET33をPWM制御するものである。このMOSFET33のPWM制御、即ち、PWM信号Sのパルス幅の調整(デューティ比の調整)により、昇圧の制御が行われる。
より具体的には、出力電圧Voを検出し、この検出した出力電圧Voを目標直流電圧Vtにすべく、MOSFET33のゲートに入力するPWM信号Sのパルス幅(デューティ比)を調整する。
【0033】
つまり、出力電圧Voが上昇してきたらPWM信号SにおけるMOSFET33のオン期間を短くするように、PWM信号Sのパルス幅(デューティ比)を調整する。これによって、出力電圧Voを一定に保つことができる。言い換えれば、入力電圧Viが変動しても、出力電圧Voを一定の電圧に安定して出力することが可能である。
【0034】
つまり、制御部32は、昇圧の制御を行う場合は、出力電圧Voに基づいてMOSFET33へのPWM信号Sのデューティ比を調整している。
このとき、MOSFET33がオフ状態となった場合には、太陽電池ユニット11からインバータ装置13側に直接電力が供給される。
【0035】
より詳細には、太陽電池ユニット11からインバータ装置13側に供給される電力の一部は、リアクトル素子34および第1ダイオード35により構成されるリアクトル素子電流流路を介して供給され、残りは第2ダイオード39により構成されるバイパス電流流路を介して供給されることとなる。
【0036】
このとき、リアクトル素子34は、直流電力に対しては、抵抗として働くため、この抵抗値をRrとし、第1ダイオード35の抵抗成分(=順方向バイアス電圧VFに相当)をRd1とすると、リアクトル素子34と第1ダイオード35は見かけ上、抵抗R1と見なせる。
R1=Rr+Rd1
ここで、
Rr<<Rd1
であるので、
R1≒Rd1
となる。
【0037】
一方、第2ダイオード39の抵抗成分をRd2(<Rd1)とする。ここでも抵抗成分Rd2は、第2ダイオード39の順方向バイアス電圧VFに相当している。
そして、第2ダイオード39を設けない場合(従来例に相当)であって、MOSFET33がオフ状態の場合に、リアクトル素子電流流路を流れる電流を電流Iとし、第2ダイオード39を設けた場合に、リアクトル素子電流流路を流れる電流を電流Irとし、バイパス電流流路(=第2ダイオード39)を流れる電流を電流Id2とすると、次式が成立する。
I=Ir+Id2
【0038】
これらより、第2ダイオード39を設けない場合であって、MOSFET33がオフ状態の場合に、リアクトル素子電流流路で消費される電力Wrpは、
Wrp=I2・R1
=I2・Rd1
となる。
【0039】
一方、第2ダイオード39を設けた場合に、リアクトル素子電流流路で消費される電力Wrは、
Wr=Ir2・Rd1
となり、バイパス電流流路で消費される電力Wrは、
Wd2=Id22・Rd2
となる。
【0040】
したがって、第2ダイオード39を設けた場合に、リアクトル素子電流流路およびバイパス電流流路で消費される電力W1は、
W1=Wr+Wd2
=Ir2・Rd1+Id22・Rd2 ……(1)
となる。
ところで、上述したように、
Wrp=I2・Rd1
であるから、
Wrp=(Ir+Id2)2・Rd1
=(Ir2+2・Ir・Id2+Id22)・Rd1
=Ir2・Rd1+2・Ir・Id2・Rd1+Id22・Rd1
……(2)
となる。
【0041】
ここで、(1)式および(2)式より、
Wrp−W1=Ir2・Rd1+2・Ir・Id2・Rd1
+Id22・Rd1−(Ir2・Rd1+Id22・Rd2)
=2・Ir・Id2・Rd1+Id22・(Rd1−Rd2)
【0042】
また、
Rd1>Rd2
であるから、
Wrp−W1>0
となり、
Wrp>W1
となる。
【0043】
すなわち、第2ダイオード39を設けた場合の方が、第2ダイオード39を設けなかった場合と比較して、電力損失が少ないことが分かる。
ひいては、効率よく、商用電源20側、ひいては、負荷に電力を利用させることが可能となる。
【0044】
以上の説明のように、本実施形態によれば、太陽電池ユニット等の発電装置の発電電圧が比較的高く、昇圧を行うためにPWM制御を行うスイッチング素子がオフ状態になりやすいコンバータ装置を用いる場合でも、電力損失を極力抑制し、ひいては、効率の良い電力利用を図ることが可能となっている。
[2]実施形態の変形例
【0045】
[2.1]第1変形例
以上の実施形態においては、コンバータ装置が1段の昇圧回路(=MOSFET33、リアクトル素子34、第1ダイオード35およびコンデンサ37)を有している場合であったが、多々段の昇圧回路を有している場合でも適用が可能である。
【0046】
図2は、第1変形例の第1態様の説明図である。
図2において、図1と同様の部分については、同一の参照符号に添え字を伏して示している。
すなわち、第1変形例の第1態様において、コンバータ装置12−1の第1段目の昇圧回路は、MOSFET33−1、リアクトル素子34−1、第1ダイオード35−1およびコンデンサ37−1を備えている。
【0047】
同様に第2段目の昇圧回路は、MOSFET33−2、リアクトル素子34−2、第1ダイオード35−2およびコンデンサ37−2を備えている。
ここで、リアクトル素子34−1、第1ダイオード35−1、リアクトル素子34−2および第1ダイオード35−2は、リアクトル素子電流流路を構成しており、このリアクトル素子電流流路と並列に、直流電源である太陽電池ユニット11からの電流の一部をバイパスするリアクトル素子電流流路より低電流損失の第2ダイオード39−1がバイパス電流流路として設けられている。
【0048】
この結果、本第1変形例の第1態様によっても、実施形態と同様に、太陽電池ユニット等の発電装置の発電電圧が比較的高く、昇圧を行うためにPWM制御を行うスイッチング素子がオフ状態になりやすいコンバータ装置を用いる場合でも、電力損失を極力抑制し、ひいては、効率の良い電力利用を図ることが可能となっている。
以上の説明は、昇圧回路を2段構成とした場合について述べたが、3段以上とすることも可能である。
【0049】
図3は、第1変形例の第2態様の説明図である。
図3においても、図1あるいは図2と同様の部分については、同一の参照符号に添え字を伏して示している。
すなわち、第1変形例の第2態様において、コンバータ装置12−1の第1段目の昇圧回路は、MOSFET33−1、リアクトル素子34−1、第1ダイオード35−1およびコンデンサ37−1を備えている。
【0050】
同様に第2段目の昇圧回路は、MOSFET33−2、リアクトル素子34−2、第1ダイオード35−2およびコンデンサ37−2を備えている。
ここで、リアクトル素子34−1および第1ダイオード35−1は、第1のリアクトル素子電流流路を構成しており、この第1のリアクトル素子電流流路と並列に、直流電源である太陽電池ユニット11からの電流の一部をバイパスするリアクトル素子電流流路より低電流損失の第2ダイオード39−1がバイパス電流流路として設けられている。
【0051】
さらに、リアクトル素子34−2および第1ダイオード35−2は、第2のリアクトル素子電流流路を構成しており、この第2のリアクトル素子電流流路と並列にも、直流電源である太陽電池ユニット11からの電流の一部をバイパスするリアクトル素子電流流路より低電流損失の第2ダイオード39−2がバイパス電流流路として設けられている。
【0052】
この結果、本第1変形例の第2態様によっても、実施形態と同様に、太陽電池ユニット等の発電装置の発電電圧が比較的高く、昇圧を行うためにPWM制御を行うスイッチング素子がオフ状態になりやすいコンバータ装置を用いる場合でも、電力損失を極力抑制し、ひいては、効率の良い電力利用を図ることが可能となっている。
以上の説明は、昇圧回路を2段構成とした場合について述べたが、3段以上とすることも可能である。
【0053】
[2.2]第2変形例
図4は、実施形態の第2変形例のコンバータ装置を含む系統連系太陽光発電システムのブロック図である。
以上の各実施形態および第1変形例の説明においては、PW制御を行うスイッチング素子のオフ時にリアクトル素子電流流路およびバイパス電流流路の双方に電流を流す場合の実施形態であったが、図4に示すように、リアクトル素子電流流路の上流側にスイッチ素子(例えば、スイッチングトランジスタ)60を設け、PW制御を行うスイッチング素子(上述の例の場合、MOSFET33、33−1、33−2)のオフ時に当該スイッチ素子60もオフ状態として、直流電源である太陽電池ユニット11からの電流を全てバイパス電流流路側に流すようにすることも可能である。
この構成によれば、より一層、電力損失を低減することができ、さらに効率の良い電力利用を図ることができる。
【0054】
[2.3]第3変形例
以上の説明においては、発電電力供給装置として、複数のセルを有する太陽電池ユニットを用いる場合について説明したが、エンジン、風力などを利用して、発電を行い交流電力を供給する発電部および発電部で得られた交流電力の整流を行って直流電力として供給する整流回路(整流部)を設けるようにしてもよい。
[2.4]第4変形例
以上の説明においては、第2ダイオード素子として、通常のダイオード素子を用いていたが、MOSFETのドレイン端子およびソース端子あるいはIGBTのエミッタ端子およびコレクタ端子を、当該MOSFETあるいはIGBTがオン(閉)状態において、バイパス電流路として機能するように接続することも可能である。
この場合には、昇圧スイッチング素子のオフ時にオン状態となるようにMOSFETあるいはIGBTを制御するようにする。
この結果、MOSFETあるいはIGBTのオン抵抗は、通常のダイオード素子の順方向抵抗に比較して、非常に小さいので、より電力損失を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施形態のコンバータ装置を含む系統連系太陽光発電システムのブロック図である。
【図2】第1変形例の第1態様の説明図である。
【図3】第1変形例の第2態様の説明図である。
【図4】実施形態の第2変形例のコンバータ装置を含む系統連系太陽光発電システムのブロック図である。
【符号の説明】
【0056】
10 系統連系太陽光発電システム
11 太陽電池ユニット
12 コンバータ装置
13 インバータ装置
14 フィルタ回路
15 パワーリレー
16 パワコン側ブレーカ
17 コントローラ
18 メインブレーカ
19 コントローラ
20 負荷
21 商用電源
31 DC−DC変換部
32 制御部
33 MOSFET
34 リアクトル素子
35 第1ダイオード
37 コンデンサ
38 保護ダイオード
39 第2ダイオード
40 逆流防止ダイオード
41 入力電圧測定部
42 出力電圧検出部
43 ドライブ回路
44 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の直流入力電圧を昇圧して直流出力電圧とする昇圧型のコンバータ装置において、
リアクトル素子およびスイッチング素子を有する昇圧部と、
前記スイッチング素子のオフ時に前記リアクトル素子を介して前記直流電源からの電流が流れるリアクトル素子電流流路と並列に、前記直流電源からの電流の一部をバイパスする前記リアクトル素子電流流路より低電流損失のバイパス電流流路を設けたことを特徴とするコンバータ装置。
【請求項2】
直流電源の直流入力電圧を昇圧して直流出力電圧とする昇圧型のコンバータ装置において、
リアクトル素子およびスイッチング素子を有する昇圧部が複数多段に接続され、
各昇圧部において、前記スイッチング素子のオフ時に前記リアクトル素子を介して前記直流電源からの電流が流れるリアクトル素子電流流路と並列に、前記直流電源からの電流の一部をバイパスするバイパス電流流路がそれぞれ設けられたことを特徴とするコンバータ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のコンバータ装置において、
前記昇圧部は、リアクトル素子電流流路を形成するとともに、逆流電流を防止すべく前記リアクトル素子の出力端子に直列に接続された第1ダイオード素子を有し、
前記バイパス電流流路は、前記バイパス時に流れる電流の電流損失が、前記リアクトル素子および前記第1ダイオード素子の電流損失よりも小さい第2ダイオード素子を備えたことを特徴とするコンバータ装置。
【請求項4】
請求項3記載のコンバータ装置において、
前記第2ダイオードは、前記第1ダイオード素子よりも小さい順方向バイアス電圧を有することを特徴とするコンバータ装置。
【請求項5】
直流電源の直流入力電圧を昇圧して直流出力電圧とする昇圧型のコンバータ装置において、
リアクトル素子およびスイッチング素子を有する昇圧部が複数多段に接続された多段昇圧部を有し、
前記スイッチング素子のオフ時に前記多段昇圧部を構成する複数の前記リアクトル素子を介して前記直流電源からの電流が流れるリアクトル素子電流流路と並列に、前記直流電源からの電流の一部をバイパスする前記リアクトル素子電流流路より低電流損失のバイパス電流流路が設けられたことを特徴とするコンバータ装置。
【請求項6】
請求項5記載のコンバータ装置において、
各前記昇圧部は、リアクトル素子電流流路を形成するとともに、逆流電流を防止すべく前記リアクトル素子の出力端子に直列に接続された第1ダイオード素子を有し、
前記バイパス電流流路は、前記バイパス時に流れる電流の電流損失が、前記多段昇圧部を構成する複数の前記リアクトル素子および複数の前記第1ダイオード素子全体の電流損失よりも小さい第2ダイオード素子を備えたことを特徴とするコンバータ装置。
【請求項7】
請求項6記載のコンバータ装置において、
前記第2ダイオードは、少なくとも複数の直列接続された前記第1ダイオード素子よりも小さい順方向バイアス電圧を有することを特徴とするコンバータ装置。
【請求項8】
直流電力を供給する発電電力供給装置と、
前記発電電力供給装置の出力側に接続された、請求項1乃至7のいずれかに記載のコンバータ装置と、
前記コンバータ装置の出力である直流電圧を交流電圧に変換し、商用電力系統に連系して負荷及又は前記商用電力系統に電力を供給する系統連系インバータ装置と、
を備えたことを特徴とする系統連系システム。
【請求項9】
請求項8記載の系統連系システムにおいて、
前記発電電力供給装置は、複数のセルを有する太陽電池であることを特徴とする系統連系システム。
【請求項10】
請求項8記載の系統連系システムにおいて、
前記発電電力供給装置は、発電を行い交流電力を供給する発電部と、
前記交流電力の整流を行って、直流電力を供給する整流部と、
を備えたことを特徴とする系統連系システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−140038(P2008−140038A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324598(P2006−324598)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】