説明

コンフォメーションに関する変種のプロファイリング、抗体組成物

この発明は、医薬組成物を製造する方法に関し、タンパク質を含む複数のサンプルを提供し、複数のサンプルから、タンパク質が由来した病原体に対して、中和抗体の産生を刺激することが可能なタンパク質のコンフォメーションに関する変種を含むサンプルを同定する工程を含むタンパク質抗原を含む。また、この方法によって取得されるコンフォメーションに関する変種を含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する分野
本発明は、被検者(患者)において中和抗体応答を誘発するタンパク質抗原を含む医薬組成物およびそのような医薬組成物の製造方法を提供する。このような医薬組成物は、免疫応答を刺激するための組成物、例えばワクチンとして使用することができる。
【0002】
関連出願
本出願は、2003年4月10日出願の米国仮出願第60/461,753号の優先権を主張する。この仮出願は引用により本明細書中に包含される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
タンパク質はアミノ酸の鎖状重合体(ポリペプチドと称される)から構成される。天然には、20種の化学的に識別されるアミノ酸がタンパク質中に認められる。長いポリペプチド鎖中の多数の結合はそれらが連結する原子の自由回転を許容し、このポリペプチドに大きな柔軟性を付与する。よって、原理的には、タンパク質分子はほぼ無数の形状またはコンフォメーションをとり得る。例えば、40残基からなるタンパク質は、理論的には、1040種のコンフォメーションをとることができると考えられる。しかし、ほとんどのポリペプチド鎖は迅速にフォールディングして、唯一または少数の特定コンフォメーションになる。これらのコンフォメーションはあわせて天然コンフォメーションと称される。
【0004】
4つのレベルのタンパク質構造が認められる。一次構造はアミノ酸配列である。二次構造とは、鎖状配列において相互に近接しているアミノ酸残基の特定三次元配置を表す、すなわち、これはポリペプチド主鎖の局所コンフォメーションである。三次構造とは、タンパク質のコンフォメーション、すなわち、鎖状配列において離れているアミノ酸残基の立体配置、およびジスルフィド結合のパターンを表す。要するに、タンパク質の二次構造要素のフォールディングとその側鎖の空間的配置によって三次構造が構成される。四次構造とは、サブユニットまたは三次構造の立体配置およびその接触の性質を表す。例えば、あるタンパク質が、規則的に又は秩序立って配置されている複数のポリペプチド鎖からなる場合に四次構造が存在する。
【0005】
ほとんどのタンパク質は自然にその天然コンフォメーションにフォールディングする。特定の試薬で処理することにより、タンパク質をアンフォールディングまたは変性させて、その天然コンフォメーションを喪失した柔軟なポリペプチド鎖を得ることができる。変性剤を除去すれば、このタンパク質は自然にその元のコンフォメーションにリフォールディングすることができる。これはタンパク質の形状を特定するのに必要なすべての情報がアミノ酸配列そのものに含まれていることを示す。
【0006】
フォールディングは、アミノ酸が互いに及び水と相互作用して、種々の有利かつ弱い非共有結合、および静電相互作用を形成するために生じる。非極性アミノ酸の疎水性側鎖は分子の内部へまとめて押し込まれる傾向があり、これによりこれらの側鎖は水性環境との接触を回避することが可能になる。対照的に、極性および荷電アミノ酸の側鎖はタンパク質分子の外側付近に落ち着く傾向があり、この位置でこれらの側鎖は水および他の極性または荷電分子と相互作用することができる。ペプチド結合はそれ自体極性であるから、これらは相互および極性側鎖の両者と相互作用して水素結合を形成する傾向がある。タンパク質内に埋まっているほとんどすべての極性残基はこのように対形成している。よって、水素結合は、フォールディングしたタンパク質分子においてポリペプチド鎖の諸領域をまとめるのに主要な役割を果たす。
【0007】
分泌分子または細胞表面分子を含む多数のタンパク質は、追加の共有結合性鎖内結合を形成することが多い。例えば、これらのタンパク質は、隣接するシステイン残基の2つの−SH基の間でジスルフィド結合を形成することがある。この結合は細胞外タンパク質の三次元構造をさらに安定化するのに役立つ。これらの結合はタンパク質に固有のフォールディングには必要とされない。その理由は、フォールディングが通常は還元剤の存在下で生じるからである。
【0008】
すべての個々のアミノ酸が相互作用した結果、最終的に、ほとんどのタンパク質分子は自然にフォールディングして正確に規定コンフォメーションになる。天然コンフォメーションにおけるタンパク質表面上の諸原子の配置および化学により、このタンパク質が他のタンパク質、例えば、抗体と結合する能力が決定される。
【0009】
免疫系は外来抗原(その多くはタンパク質である)の構造を認識し、免疫応答を開始する。免疫応答には、大きく分けて次の2種類が存在する:細胞性応答および抗体応答である。細胞性免疫応答はT細胞によって媒介される。これらのT細胞上に存在する受容体は、アンフォールディングされ、分解されているか、あるいは別の様式でプロセシングされ、そして他の宿主細胞表面上に表示されている抗原を認識する。このT細胞は、抗原を提示している宿主細胞を死滅させるか、あるいはマクロファージを活性化する化学シグナルを分泌して、侵入した微生物を破壊させることができる。
【0010】
抗体応答はB細胞によって媒介される。この応答には、自身を誘発した外来抗原と特異的に結合する抗体の分泌が含まれる。これらの抗体はコンフォメーションに基づくエピトープを認識し、これと結合することが多い。このエピトープは、一次配列において離れているが、三次元空間においては近接しているアミノ酸から構成されていることがある。このようなコンフォメーション依存型のエピトープは、一般に、立体形状上の決定基(topographical determinants)またはコンフォメーショナルエピトープと称される(Berzofsky及びBerkower、Immunogenicity and Antigen Structure in Fundamental Immunology, Fourth Edition, Ed. William Paul, 1999を参照のこと)。分泌された抗体は、ウイルスまたは細菌毒素を、宿主細胞上の受容体と結合するその能力をブロックすることによって不活化する。また、抗体の結合により、侵入した微生物が標識される。この標識は、貪食細胞によるそれらの摂取を容易にするか、あるいは血液タンパク質の系を活性化することによって、これらの微生物を破壊するためのものである。この血液タンパク質は包括的に補体と称され、これは侵入者を死滅させる。抗体応答は液性応答としても知られる。
【0011】
ワクチン接種の過程は、免疫系を利用して被検者を侵入微生物から保護する。ワクチン接種では、抗原を含むワクチンによって身体を免疫化する。この抗原は、その疾患を防御するであろう抗体の形成を刺激する。例えば、死んだ生物体を注射して、細菌性疾患、例えば、腸チフスおよび百日ぜきを防御し、弱毒化毒素を注射して、破傷風およびボツリヌス症を防御し、ならびに弱毒化生物体を注射して、ウイルス性疾患、例えば、灰白髄炎および麻疹を防御する。
【0012】
ワクチンが保護免疫応答を生じさせるためには、ワクチン製剤は免疫原性である必要がある。これは、抗原が免疫応答を誘発可能である必要があることを意味する。いくつかの物質、例えば、破傷風毒素は元々免疫原性であり、修飾を施すことなくワクチンにおいて投与することができる。他の重要な物質は免疫原性ではなく、よって免疫原性分子に変換する必要があり、変換後にこれらは免疫応答を誘発することができるようになる。この過程はアジュバントの使用によって実施してよく、ほとんどの慣用ワクチンは抗原に対する免疫応答を増強するためのアジュバントを含む。
【0013】
アジュバントは宿主生物において抗原に対する免疫応答を非特異的に増強する物質である。アジュバントはその作用を3つの様式で媒介すると考えられる。第一に、アジュバントは抗原を吸着または沈殿させ、注射部位でそれを保持し得る。これは抗原が身体によって除去および分解されることを防ぎ、そして長期間にわたって抗原刺激を継続させる。この作用機序によって作動するアジュバントは貯蔵抗原(depot antigens)として知られており、その代表例はフロイント完全アジュバント、リン酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムである。貯蔵アジュバントを皮下または筋肉内に注射した場合、深刻な持続性局所反応、例えば、肉芽腫、膿瘍および瘢痕を誘発することがよくある。
【0014】
第二に、アジュバントは抗原を脾臓および/またはリンパ節に送達するように作用し得る。脾臓および/またはリンパ節では、形質細胞(抗体分泌細胞)の発生を導く細胞の相互作用が生じる。アジュバントは、抗原提示細胞(例えば、マクロファージ、樹状細胞、Bリンパ球)による抗原のエンドサイトーシスを刺激することによってこれを達成し得る。抗原が「ロードされた(loaded)」抗原提示細胞はリンパ系を介してリンパ節に遊走する。
【0015】
第三に、アジュバントは免疫応答に関与する諸細胞を直接または間接的に活性化し得る。
【0016】
微粒子アジュバントは当分野において既知である。このような粒子は複数コピーの選択抗原を免疫系に提示し、抗原提示細胞による抗原のエンドサイトーシスを促進する。これにより液性および細胞性免疫の両者が刺激される。
【0017】
米国特許第6458370号は先行技術である生分解性ポリマー微粒子の製造方法をまとめている。包括または吸着抗原を伴う微粒子をサブミクロンの水中油型エマルジョンとともに含むワクチン組成物が開示されている。
【0018】
米国特許第6565777号は、概して直径10mm未満の粒子を生じる生分解性ポリマー微粒子の製造方法を報告している。この方法では、工業規模で微粒子を製造することが可能である。
【0019】
米国特許第5753234号は、生分解性ポリマーでコーティングされたタンパク質抗原のコアを含む微粒子を開示している。このポリマーはインビボで緩徐に分解し、一定期間にわたって抗原が放出される。
【0020】
米国特許第6534064号は、化学沈殿により、化学架橋剤の使用により、あるいは熱安定化によって形成される安定なタンパク質粒子の製造、およびワクチン中でのこのようなタンパク質粒子の使用を開示している。このタンパク質粒子中に含有されるタンパク質は変性しており、有効なB細胞応答を誘発しないかもしれない。
【0021】
米国特許第6355271号は、約300nm〜約4000nmの範囲のリン酸カルシウム粒子、およびこれらの粒子の製造方法を開示している。これらの粒子の表面に吸着された抗原を含むワクチンが報告されている。
【0022】
米国特許第5942242号はワクチン中でのイオン交換樹脂または吸着性樹脂粉末の使用を開示している。
【0023】
米国特許第6585973号は抗原および炭水化物と組み合わせた固相アジュバントの使用を開示している。報告されている固相アジュバントには、アルミニウムおよびカルシウム塩が含まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
好ましくは、ワクチンは中和抗体応答を生じさせる。中和抗体は、侵入微生物からなる製剤の感染力価を減少させる抗体である。通常、血清の中和能は感染動物における防護の程度を反映する。
【0025】
ウイルス抗原に対して産生された中和抗体は、宿主細胞内へのウイルスゲノムの導入を導く工程を妨害するようである。例えば、b12抗体はHIV1の表面エンベロープ糖タンパク質であるgp120を認識する。このタンパク質は宿主細胞表面上のCD4分子と結合するものである。b12抗体の結合により、ウイルスの結合および宿主細胞内へのその核酸の導入が妨害されると考えられる。
【0026】
現在利用可能なワクチンの大部分は、中和抗体を選択的または優先的に誘発するわけではない。中和抗体を選択的に誘発しないワクチンは、感染に対して種々のレベルの免疫性を与える。しかし、今日まで、中和抗体を選択的に誘発し、一貫して高レベルに防護するワクチンの製造方法は存在しない。
【0027】
したがって、強力な中和応答を確実に誘発するワクチンの製造方法が必要とされている。
【0028】
当分野において周知であるように、組換えタンパク質ワクチンは他のワクチンタイプ、例えば、弱毒化生ウイルスまたは結合型ワクチン(conjugated vaccines)と比べて低い効力を有する傾向がある。これは、部分的には、組換えタンパク質が強力な細胞性応答および中和液性応答を併せて生じさせることができないことに起因するかもしれない。したがって、組換えタンパク質ワクチンは両タイプの宿主免疫応答を誘発するように設計するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0029】
発明の要旨
一実施態様では、本発明は、タンパク質抗原を含む組成物の製造方法に関し、タンパク質を含む複数のサンプルを準備し、そのサンプルはタンパク質のコンフォメーション状態について異なるサンプルであり、この複数のサンプルから、当該タンパク質が由来した病原体に対する中和抗体の産生を刺激することが可能なこのタンパク質のコンフォメーションに関する変種を含むサンプルを同定する工程を含む。
【0030】
別の実施態様では、当該コンフォメーションに関する変種は同一の一次アミノ酸配列を有するが、その二次または三次構造について異なる。
【0031】
別の実施態様では、当該方法は選択された基準のプロファイルに基づいてサンプルをクラスタリングする工程を含む。
【0032】
別の実施態様では、当該基準は当該タンパク質に特異的な抗体または複数の抗体に対する結合能又は親和性を含む。
【0033】
別の実施態様では、当該抗体は:非中和抗体;中和抗体;ポリクローナル抗体;またはモノクローナル抗体である。
【0034】
別の実施態様では、当該抗体を生体液の存在下で当該タンパク質と接触させる。
【0035】
別の実施態様では、当該コンフォメーションに関する変種の取得は:当該タンパク質を種々の条件下で処理する;天然タンパク質のサンプルを種々の条件下で処理する;変性または部分変性タンパク質のサンプルを種々の条件下で処理することによって;あるいは当該コンフォメーションに関する変種の二次または三次構造を安定化することによって行う。
【0036】
別の実施態様では、当該同定は、中和抗体と結合する;中和抗体が天然コンフォメーションと結合するよりも高い親和性でこの中和抗体と結合する;1種またはそれ以上の非中和抗体よりも高い相対結合親和性で1種またはそれ以上の中和抗体と結合する;インビトロにおける血清中の中和活性を少なくとも部分的に排除する;天然コンフォメーションの同一タンパク質よりも高い程度にまでインビトロにおける血清中の中和活性を排除する;あるいは、天然コンフォメーションの同一タンパク質よりも高い程度にまで、あるいはより強力に、インビボにおける中和抗体の生産を刺激する、タンパク質のコンフォメーションに関する変種を含むサンプルを同定することを含む。
【0037】
別の実施態様では、円偏光二色性分光偏光測定、蛍光分光法およびその変法(内在または外来性の蛍光プローブを使用)、質量分析、UV−VIS分光法、NMR、X線小角散乱、酵素活性、プロテアーゼ消化地図作成、水素−重水素交換法(質量分析またはNMRを利用)、イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、ゲルろ過クロマトグラフィおよびアフィニティークロマトグラフィからなる群から選択される方法を用いて当該タンパク質を構造的に特徴付ける。
【0038】
別の実施態様では、共有結合性のリンカーを用いて当該コンフォメーションに関する変種を安定化する。
【0039】
別の実施態様では、当該共有結合性のリンカーは、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、グアニジン基(guanidinyl group)、スルフヒドリル基または炭水化物を標的とする。
【0040】
別の実施態様では、アミノ酸配列または当該タンパク質をエンコードしている核酸配列のインビトロ突然変異誘発によって当該リンカーの標的を創出する。
【0041】
別の実施態様では、2−イミノチオラン、N−スクシンイミジルS−アセチルチオアセテートまたはN−スクシンイミジル3−[2−ピリジルジチオ]プロピオナートを用いて一級アミンをインビトロ修飾することによって当該リンカーの標的を創出する。
【0042】
別の実施態様では、精製工程により、コンフォメーションに関する変種についてサンプルを濃縮する。
【0043】
別の実施態様では、イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、ゲルろ過クロマトグラフィまたはアフィニティークロマトグラフィを用いて、コンフォメーションに関する変種について当該サンプルを濃縮する。
【0044】
別の実施態様では、1種またはそれ以上の中和抗体を用いて当該サンプルを濃縮する。
【0045】
別の実施態様では、ELISA、表面プラズマ共鳴、ゲル移動度シフトアッセイ、等温滴定熱量測定、遠心分離および蛍光共鳴エネルギー移動からなる群から選択される方法を用いて当該親和性を測定する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】モノクローナル抗体パネルを用いて多数のコンフォメーションに関する変種をプロファイリングした結果を図示する。各サンプルボックス中のラインの角度はサンプルに対する抗体の相対結合親和性を表す。
【図2】酸化条件下での指定のリフォールディングインターバル後に架橋およびクエンチされたウシ膵臓トリプシン阻害剤(BPTI)のHPLCクロマトグラムである。バッファー系は20mMリン酸塩、pH6.2、25℃であった。
【図3】ジチオスレイトール(DTT)およびトリフルオロエタノール(TFE)の単一および二成分混合物の存在下における天然状態のBPTIの相対分子数である。バッファー系は10mMリン酸塩、0.2mM EDTA、pH7.6、25℃であった。
【0047】
発明の詳細な説明
したがって第一の側面では、本発明は、医薬組成物の製造方法であって、単離した複数のタンパク質のコンフォメーションに関する変種を準備し、および、サンプル群のうち、インビボにおける中和抗体の生産を刺激することが可能なコンフォメーションに関する変種または変種のサブセットを含むサンプルを同定する工程を含む方法を提供する。この方法は、コンフォメーションに関する変種を製造する工程または当該コンフォメーションに関する変種を安定化する工程を含んでよい。この方法はさらに、抗体間または抗体群中でサンプルをプロファイリングする工程を含んでよい。このプロファイリングは、例えば、中和性と非中和性の間の相対結合親和性のような一連の基準に基づく。この方法はさらに、選択された基準についての類似のプロファイルを有する、サンプル、またはサンプル内のコンフォメーションに関する変種もしくはコンフォメーションに関する変種のサブセットをクラスタリングする工程を含んでよい。この方法はさらに、コンフォメーションに関する変種を微粒子、好ましくは150μmまでの直径を有する微粒子と結合させる工程を含んでよい。さらに本発明の方法によって製造される組成物が含まれる。この方法はさらに、サンプルをコンフォメーションに関する変種について濃縮する工程を含んでよい。この方法はさらに、中和抗体を結合するか、あるいはインビボにおける中和活性を排除するコンフォメーションに関する変種を含有するサンプルを同定する工程を含んでよい。
【0048】
本発明の組成物は、タンパク質のコンフォメーションに関する変種に対する免疫応答を刺激することが可能な組成物であってよい。好ましくは、免疫応答はタンパク質またはペプチドに対する抗体の生成を含む。好ましくは、この抗体は中和抗体である。有益には、本方法にしたがって製造されるワクチンは中和応答を確実に誘発する。好ましくは、この組成物は医薬組成物である。好ましくは、このコンフォメーションに関する変種は、免疫応答の刺激、中和抗体の産生もしくは生成(raising or generating)、または本明細書中で開示される別の活性に関して、天然コンフォメーションの同一タンパク質より強力またはより有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明の方法の各工程についてより詳細に考察する。
コンフォメーションに関する変種の準備:本発明の組成物を製造する方法の第一工程は、単離した複数の、標的タンパク質のコンフォメーションに関する変種を準備することである。コンフォメーションに関する変種とは、同一の一次アミノ酸配列のすべてまたは部分を有するが、異なる三次もしくは二次構造またはコンフォメーションを有するタンパク質である。本明細書中で使用される用語「タンパク質」は、完全長ポリペプチドおよびその部分の両者を含む。このタンパク質は、野生型、変異型または別の様式で修飾されたものであってよい。制限は、このタンパク質が環境条件に応じて複数のコンフォメーションをとることができることである。好ましくは、このタンパク質は少なくとも2種の異なる二次構造、例えば、アルファヘリックスまたはベータシートを生じさせることが可能な一次配列を含む。本明細書中で使用される用語「抗原」とは、好ましくはインビボで、抗体の産生を引き起こすことが可能な基質である。
【0050】
標的タンパク質として任意のタンパク質を使用してよい。しかし好ましくは、コンフォメーションに関する変種を作成するのに使用される標的タンパク質は、中和抗体と結合可能な抗原、例えば、HIV gp120、炭疽菌感染防御抗原、ボツリヌス毒素、エンテロトキシンB、SARSスパイクタンパク質、インフルエンザ血球凝集素、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)付着および融合タンパク質 エルシニア外部タンパク質、麻疹ウイルス、(赤)血球凝集素、天然痘表面および結合(attachment)タンパク質、ジフテリア毒素、破傷風毒素、百日咳毒素、ならびにエボラ表面および結合タンパク質である。一実施態様では、大部分の抗原は、通常(75%未満の期間)中和抗体を結合するのに必要な一定コンフォメーションをとらないか、あるいは通常(75%未満の期間)中和抗体を結合するのに必要なコンフォメーションをとらない。
【0051】
標的タンパク質のコンフォメーションに関する変種は、野生型標的タンパク質の一次アミノ酸配列、またはこのタンパク質の(天然または人工の)変異型、またはその誘導体のアミノ酸配列を共有してよい。好ましくは、このタンパク質は有毒な病原体(例えばウイルス、細菌または真菌)由来である。一実施態様では、このタンパク質は病原体の毒性または疾患の原因であるか、あるいは部分的にその原因を担う。
【0052】
このコンフォメーションに関する変種のアミノ酸配列が変異型タンパク質の配列である場合、このアミノ酸配列は野生型タンパク質の配列と実質的に同一であるのが好ましい。好ましくは、その天然タンパク質との同一性の程度は85%またはそれ以上である。より好ましくは、同一性の程度は90%もしくはそれ以上、95%もしくはそれ以上、または99%もしくはそれ以上である。アミノ酸配列中に存在する変異は天然に存在する変異であってよい。一実施態様では、この変異は病原体の毒性の原因であるか、あるいはその毒性を増大させる。あるいは、組換え法によって製造されるタンパク質において、このタンパク質をエンコードしている核酸を対象とするインビトロ突然変異誘発技術を用いて変異を生じさせてよい。典型的には、アミノ酸残基をシステインまたはリジン残基で置換するか、あるいはシステインまたはリジン残基を付加するインビトロ技術を用いてタンパク質を変異させてよい。インビトロ突然変異誘発は、StratageneのQuikchange(登録商標)部位特異的突然変異誘発キットを製造元の使用説明書にしたがって用いて実施するのが好都合である。一実施態様では、このアミノ酸配列は目的の生物の病原型についての配列である。
【0053】
複数の、標的タンパク質のコンフォメーションに関する変種(コンフォメーションに関する変種のライブラリとしても知られる)は、標的タンパク質の複数の単離サンプルを種々の条件下で処理して、複数の、この標的タンパク質のコンフォメーションに関する変種を生じさせることによって取得してよい。各処理済みサンプルは単一または複数のコンフォメーションに関する変種を含有してよい。
【0054】
コンフォメーションに関する変種の製造についての一実施態様では、標的タンパク質の単離サンプルは天然タンパク質を含む。これらの天然タンパク質のサンプルを種々の条件下で処理する。変更してよい条件には、バッファーの組成、処理に関する許容時間、および温度が含まれる。例えば、天然コンフォメーションの標的タンパク質を含む少なくとも1つのサンプルを変性剤で処理するか、あるいは変性条件下で処理してよい。適切な変性剤には、有機溶媒、pH調節剤、カオトロープ、イオン性界面活性剤、酸化剤、および沈殿剤が含まれる。カオトロピック変性剤には、尿素およびグアニジウム塩、例えば、塩酸グアニジニウムまたはイソチオシアン酸グアニジニウムが含まれる。pH調節剤には、酸および塩基が含まれる。変性剤として機能するイオン性界面活性剤には、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウムおよびグリココール酸、ナトリウム塩が含まれる。酸化剤には、β-メルカプトエタノール、1,4ジチオスレイトール、ジチオエリスリトール(dithrioerythitol)、およびトリス[2−カルボキシメチル]ホスフィン塩酸塩が含まれる。特定の標的タンパク質に対して変性剤として機能する沈殿剤には、硫酸アンモニウムが含まれる。変性条件には、超音波処理、40℃もしくはそれ以上の温度、または0℃もしくはそれ以下の温度、または圧力が含まれる。
【0055】
コンフォメーションに関する変種の製造についての別の実施態様では、標的タンパク質の単離サンプルは変性または部分変性タンパク質を含む。このタンパク質は二次または三次構造をほとんど有さなくてよく、あるいは全く有さなくてよい。場合により構造決定技術を使用して、このタンパク質が変性または部分変性コンフォメーションであるかどうかを判定してよい。適切な技術には、NMR、円偏光二色性分光法、熱量測定、非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動、ゲルろ過、蛍光分光法、紫外可視分光法、ラマン分光法、X線小角散乱、または天然タンパク質の機能を測定するアッセイにおける活性の喪失が含まれる。
【0056】
標的タンパク質が変性または部分変性型で存在する場合、このタンパク質の単離サンプルを種々の条件下で処理して、コンフォメーションに関する変種を生じさせてよい。変更してよい条件には、バッファーの組成、処理に関する許容時間、温度、および圧力が含まれる。例えば、変性タンパク質のサンプルから変性剤を除去してよく、あるいは変性タンパク質のサンプルを再生剤(renaturing agent)または安定化剤、すなわち少なくとも部分的に二次または三次構造を回復させる物質で処理してよく、あるいはpHを変更してよい。
【0057】
標的タンパク質の単離サンプルの処理は、(典型的にはマルチウェルプレートにおいて)並行して実施してよい。従って、この工程は高い処理能力を有する。
【0058】
好ましい実施態様では、各単離型の、標的タンパク質のコンフォメーションに関する変種またはサブセットの構造を安定化する。適切な安定化法には、分子間または分子内共有結合の形成が含まれる。分子内結合には、単一タンパク質分子の官能基のみが関与する。分子間結合には、少なくとも1個の他のタンパク質分子が関与する。分子内結合には、第二の分子、例えば、共有結合性の架橋剤が同一タンパク質内の2官能基間の結合を架橋する場合が含まれる。他の安定化法には、分子間または分子内の水素結合またはイオン結合の形成が含まれる。
【0059】
一実施態様では、標的タンパク質のコンフォメーションに関する変種を化学架橋剤で処理することによって非天然の分子間共有結合を形成させる。本出願の文脈では、化学架橋剤とは、タンパク質分子において共有結合性の架橋形成が可能な少なくとも2つの反応基を有する分子である。化学架橋剤の少なくとも部分は、架橋としてタンパク質内に組込まれる。本発明での使用に適した化学架橋剤には、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリオキサール(glyocal)、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド(succinialdehyde)、アジポアルデヒド(adipaldehyde)、フタルアルデヒド、4−アジド安息香酸(3−スルホ−N−スクシンイミジル)エステルナトリウム塩、1,4−ビス[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ブタン(1,4-Bis[3-(2-pyridyldithio)proprionamido]butane)、ビス[2−(N−スクシンイミジル−オキソカルボニルオキシ)エチル]スルホン、ビス−マレイミドヘキサン、ビス−[2−(4−アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィド、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン、ジメチルピメリミダート(Dimethyl pimelimidate)、ジメチル3−3’−ジチオプロピオンイミダート二塩酸塩(Dimethyl 3-3'-dithioproprionimidate dihydrochloride)、エチレングリコールジスクシナートジ(N−スクシンイミジル)エステル、N−ヒドロキシスクシンイミジル−4−アジドサリチル酸、およびセバシン酸ビス(N−スクシンイミジル)エステルが含まれるが、これらに限定されない。これらの化学架橋剤は、例えばSigma AldrichおよびPierce Biotechnology, Inc.から入手可能である。
【0060】
分子内共有結合は、例えば、共有結合性の架橋形成を誘発する条件に曝露することによって形成してもよい。共有結合性の架橋形成を誘発する条件には、酸化条件、UV照射およびpHが含まれる。
【0061】
タンパク質が2個またはそれ以上のシステイン残基を有する場合、酸化条件によって分子内ジスルフィド結合の形成を誘発してよい(この結合は2個のシステイン残基のチオール基間で形成される)。
【0062】
一実施態様では、平衡条件下で架橋反応を実施する。この場合は、天然タンパク質を還元条件下で部分変性させ、そして平衡化させる。その後、透析、脱塩または他の適切な方法によって、架橋反応を妨害する可能性があるバッファー成分または添加物を除去する。適切な条件を用いて、共有結合性の架橋剤または架橋剤の組み合わせをこのタンパク質と架橋する。最適化することができる変更点には、タンパク質対架橋剤比、架橋剤スペーサーアーム長、温度、pH、イオン強度、反応時間、およびクエンチング方式が含まれる。
【0063】
平衡状態での別の実施態様では、アンフォールディング型のタンパク質を還元条件下で部分再生させ、そして平衡化させる。その後、透析または脱塩法によって、架橋反応を妨害する可能性があるバッファー成分または添加物を除去する。適切な条件を用いて、共有結合性の架橋剤または架橋剤の組み合わせをこのタンパク質と架橋する。最適化対象の変更点には、タンパク質対架橋剤比、架橋剤スペーサーアーム長、温度、pH、イオン強度、反応時間、およびクエンチング方式が含まれる。
【0064】
別の実施態様では、タンパク質を還元条件下で変性させ、平衡化させる。その後、酸化剤の存在下で変性剤を除去または希釈することによって、酸化的リフォールディングを開始させる。適切な酸化剤には、酸化型ジチオβ−メルカプトエタノール、酸化型1,4ジチオスレイトール、酸化型ジチオエリスリトール(oxidized dithrioerythitol)、酸化型トリス[2−カルボキシメチル]ホスフィン塩酸塩(oxidized Tris[2-caroxymethyl]phosphine hydrochloride)、オゾン、酸素、過酸化水素、ペルオキシ酸、酸化型グルタチオン、およびハロゲンが含まれる。特定インターバルの時点で、適切な条件を用いて、共有結合性の架橋剤または架橋剤の組み合わせをこのタンパク質と架橋させる。
【0065】
別の実施態様では、アンフォールディング型のタンパク質を還元条件下で平衡化する。その後、酸化剤の存在下で変性剤を除去または希釈することによって、酸化的リフォールディングを開始させる。適切な酸化剤には、酸化型ジチオβ-メルカプトエタノール、酸化型1,4ジチオスレイトール、酸化型ジチオエリスリトール、酸化型トリス[2−カルボキシメチル]ホスフィン塩酸塩、オゾン、酸素、過酸化水素、ペルオキシ酸、酸化型グルタチオン、およびハロゲンが含まれる。そして特定インターバルの時点で、適切な条件を用いて、共有結合性の架橋剤または架橋剤の組み合わせをこのタンパク質と架橋させる。
【0066】
単一または複数のクロマトグラフィ工程により、サンプル(群)に関して、コンフォメーションに関するサブセットまたは種をさらに単離することができる(図2を参照のこと)。適切な技術には、イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、ゲルろ過クロマトグラフィ、等電点電気泳動、およびゲル電気泳動が含まれる。選択された基準によってコンフォメーションに関する変種をさらに特徴付けてよい。この基準には:円偏光二色性分光偏光測定、蛍光分光法およびその変法(内在または外来性の蛍光プローブを使用)、質量分析、UV−VIS分光法、NMR、X線小角散乱、酵素活性、プロテアーゼ消化地図作成、および水素−重水素交換法(質量分析またはNMRを利用)が含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
中和抗体と結合するか、あるいは中和抗体を生じさせるタンパク質抗原の同定:この方法は、各コンフォメーションに関する変種のサンプルを中和抗体と接触させる工程、インビトロで中和活性を排除する能力に関してサンプルをアッセイする工程またはインビボで中和抗体を生じさせる能力に関してサンプルをアッセイする工程を含んでよい。周知のように、各サンプルは1種より多くのコンフォメーションに関する変種またはその亜群(サブセット)を含有してよい。亜群を有するサンプルに関しては、コンフォーマー群の同定に至るこの亜群を生じさせる条件に類似の条件および特定のコンフォーマーを生じさせる条件を用いて反復実験を実施するのが望ましいかもしれない。本明細書中で考察されるように、サンプルを1種またはそれ以上のコンフォメーションに関する変種について濃縮してよい。中和エピトープはコンフォメーショナルエピトープであることが多い。その原因は、これらが宿主タンパク質との相互作用に必要とされる抗原の部位であることが多いことにある。
【0068】
サンプルをアッセイして、1種またはそれ以上の中和抗体に対して増加した見かけの親和性(または会合定数、Ka)を有するサンプルを決定する。重要なのは、Kaが1)抗体に対する抗原の固有の結合活性および2)特定抗体の認識対象であるコンフォメーションをとっている抗原の相対的割合を反映することに留意することである。この関連性は文献に記載されている(Berzofsky and Berkower in Immunogenicity and Antigen Structure in Fundamental Immunology, Fourth Edition, Ed. William Paul, 1999を参照のこと)。望ましくは、天然状態との比較において、増加した見かけの会合定数を有するコンフォメーション群を生産する条件を発見する。本明細書中で開示されている技術を用いれば、中和抗体の認識対象であるコンフォメーションのタンパク質をより高い割合で有する群が同定されると見込まれる。(天然または変性状態と比べて)増加した会合定数を有するコンフォメーション群は、1)増加した、抗原と中和抗体間の固有の親和性、または2)増加した割合の、中和抗体の認識対象であるコンフォメーションのタンパク質、のいずれか、または両者を有する。いずれにせよ、中和抗体に対する抗原の見かけの親和性を増加させることが望ましく、その結果、この抗原の中和能が向上するであろう。
【0069】
コンフォメーション群の見かけの親和性の増加は、中和活性を含有するポリクローナル抗体製剤(すなわち血清)と抗原の相互作用に起因するかもしれない。この場合、コンフォメーション状態の変化は、増加した結合親和性を有する1種またはそれ以上の特定抗体を選択的に結合するかもしれない。あるいは、抗体群中の1種またはそれ以上の抗体によって特異的に認識されるコンフォメーションをとっている抗原の相対的割合。
【0070】
サンプルをアッセイし、どのコンフォメーションに関する変種がタンパク質抗原として中和抗体と結合するかを判定してよい。典型的に、各コンフォメーションに関する変種のサンプルを実質的に同一の条件下で中和抗体と接触させる。この文脈での実質的に同一の条件というフレーズは、概して、プロファイリング用タンパク質に関して、各コンフォメーションに関する変種の親和性を測定する反応に使用されるバッファーの組成、インキュベーション時間、圧力、および温度が類似であるか、あるいは結合親和性に有意に影響しないことを意味する。親和性を測定する反応間で必要とされるこの類似性の程度は、使用者の必要性または要望に応じて変化するであろう。
【0071】
各コンフォメーションに関する変種を中和抗体と接触させる工程は、生体液(例えば血液、精液、血漿、タンパク質等)および/またはアジュバントの存在下において好都合に測定してよい。これらを使用する理由は、コンフォメーションに関する変種の構造に影響する可能性があるからである。
【0072】
本出願において、抗体という単語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、断片であって、完全抗体のタンパク質分解の結果、ならびに/あるいはジスルフィド結合の還元によって得られる断片、または発現ライブラリ、例えば、ファージディスプレイを利用して作成される抗体を包含する。本明細書中で使用される用語「中和抗体」は、免疫学分野におけるその通常の使途と同意義であり、具体的には、感染物質または病理学的物質をその病理過程のいずれかのポイントで阻害またはブロックする抗体と定義する。例えば、ある中和抗体はウイルスの細胞結合および侵入をブロックするであろう。中和抗体は標準的アッセイにおいて中和活性を示す抗体である。一実施態様では、中和抗体は抗原を含有する水溶液から抗原を沈殿させることが可能である。
【0073】
コンフォメーションに関する変種の中和抗体に対する「親和性」すなわち「結合の程度」は標準的方法によって測定してよい。適切な方法には、表面プラズモン共鳴(例えば、BIAcore(登録商標)S51装置を製造元の使用説明書にしたがって使用)、ELISAアッセイ(この場合、プロファイリング用タンパク質は抗体である)、プラズモン導波管共鳴(plasmon waveguide resonance)(例えば、Proterion PWR分光光度計を製造元の使用説明書にしたがって使用)、等温滴定熱量測定、分析用超遠心、免疫沈降、またはアフィニティークロマトグラフィ(可能であれば、アフィニティーマトリクス中でファージディスプレイクローンを利用)が含まれる。
【0074】
本明細書中で使用される用語「親和性」には、真の、すなわち微視的な親和性および見かけの親和性の両者が含まれるが、この用語を一方または他方として特定してよい。真の、すなわち微視的な親和性(Kmicro)は、結合および解離(unbinding)に関する速度定数(それぞれkonおよびkoff)に依存する:Kmicro=koff/kon。一方、見かけの親和性(Kapp)は微視的な親和性およびサンプル中に存在する部位数(N)の両者の関数である:Kapp=Kmicro/(21/N−1)。本発明の場合、単一コンフォメーションが単一の抗体結合部位を有するならば、真の親和性と見かけの親和性は同一である。見かけの親和性は、異なる微視的な親和性を有する他のコンフォメーションが存在する場合に評価する。例えば、2種のコンフォメーションが存在し、ある抗体がその一方と結合できるのみである場合、実験で測定される見かけの親和性は、そのコンフォメーションに対するこの抗体の微視的な親和性およびそのコンフォメーションの量を支配している平衡定数(Keq)の両者に依存する(すなわちKapp=Kmicro*Keq)。
【0075】
中和抗体と結合するコンフォメーションに関する変種をタンパク質抗原として同定する。好ましくは、このコンフォメーションに関する変種は中和抗体に対して高い見かけの親和性を有する。あるいは、またはそれに加えて、このサンプルを試験し、インビボで中和抗体を産生させることができるかどうかを判定する。
【0076】
この方法によって同定されたタンパク質抗原は中和抗体と結合するのであるから、この抗原は中和抗体によって(ある程度まで)認識されるエピトープを有する。したがって、このタンパク質抗原は同一エピトープを認識する抗体の生産を誘発するであろう。このような抗体は中和活性を有することが見込まれよう。
【0077】
好ましくは、標的タンパク質のコンフォメーションに関する変種のサンプルをさらに、非中和抗体および中和抗体であって標的タンパク質を認識する抗体と接触させて、この非中和抗体とより高い親和性でこの中和抗体と結合するタンパク質抗原を同定する。中和抗体と天然コンフォメーション抗体間の親和性より高い親和性でこの中和抗体と結合するコンフォメーションに関する変種は、この中和抗体が容易に到達でき、かつ認識する様式でエピトープを提示する。これらの変種はこのエピトープをたやすく提示するため、より良好に中和応答を誘発することができる。好ましくは、コンフォメーションに関する変種のサンプルは、中和抗体に対する親和性に関しての、対天然コンフォメーションの増加が、このコンフォメーションに関する変種対天然コンフォメーションについての非中和抗体の親和性の任意の増加と比べて大きい。天然コンフォメーションとの比較において、コンフォメーションに関する変種に対する中和抗体の親和性が増加し、非中和抗体の親和性が減少するのが好ましい。さらに、タンパク質抗原であるこれらのコンフォメーションに関する変種は、中和抗体に対するタンパク質抗原としての機能に必須でない他の(非中和抗体の認識対象である)エピトープを提示または保有しないかもしれず、そして非中和抗体の生産を誘発しない。
【0078】
例えば、b12抗体と結合するgp120のコンフォメーションに関する変種はこの抗体の認識対象であるエピトープを有する。この変種は、b12抗体の中和特性を共有する抗体の生産を誘発するかもしれないが、非中和抗体の生産は誘発しないであろう。コンフォメーションに関する変種のサンプルをクラスタリングする前またはその後に、コンフォメーションに関する変種のサンプルが中和抗体を結合するかどうか、中和抗体を生じさせるかどうか、あるいは中和抗体に選択的に結合するかどうかを判定するアッセイを実施することができる。
【0079】
一実施態様では、同一エピトープを結合する抗体を用いて抗体間の相対結合親和性を測定する。
【0080】
標的タンパク質のコンフォメーションに関する変種のサンプルに関するプロファイリングおよびコンフォメーションに関する変種のサンプルに関するクラスタリング:選択された基準に基づいてコンフォメーションに関する変種をプロファイリングしてよい。この基準には、化学、物理および機能特性が含まれる。一実施態様では、コンフォメーションに関する変種を1種またはそれ以上の抗体に対するその(絶対または相対的な)結合親和性に基づいてプロファイリングする。この実施態様では、コンフォメーションに関する変種のサンプルを抗体と接触させ、そして当分野において標準的な方法によってこの抗体に対するこのコンフォメーションに関する変種の結合親和性を測定する。このサンプルを精製または部分精製して、プロファイリング前または後に1種またはそれ以上の特定コンフォメーションについてサンプルを濃縮してよい。抗体に対する各コンフォメーションに関する変種の親和性は、実質的に同一の条件下で測定するのが好ましい。コンフォメーションに関する変種をプロファイリングした後、そのプロファイルの類似性に基づいてこれらをクラスタリングすることができる。考察されるように、2種またはそれ以上のコンフォメーションに関する変種が同一のクラスターに属するのに必要とされる類似性の程度は、使用される具体的方法に関する分野の当業者には明らかであろう。ただし、類似性を評価するのに適切な指針を挙げれば、各反応に共通のインキュベーション時間、反応の温度、気圧、およびバッファーの各成分の濃度が10%を超えて変化しないであろうことを確保することであろう。より好ましくは、変化の程度は5%またはそれ未満であるか、あるいは使用されるアッセイの正常範囲内であろう。また、バッファーにおいて化学的に類似する化合物を相互に置き換えてよいことが許容される。
【0081】
本明細書中で考察されるように、各抗体と類似の親和性で結合するコンフォメーションに関する変種は同一クラスターに分類する。各抗体に対して実質的に異なる親和性を有するコンフォメーションに関する変種は異なるクラスターに割り当てる。2種のコンフォメーションに関する変種を同一クラスターの帰属物として分類するのに必要とされる結合親和性の類似性は使用者の具体的基準に依存するが、同一基準を使用する場合には再現性がある。
【0082】
典型的には、各抗体に対する各コンフォメーションに関する変種またはサブセットの親和性について、2回またはそれ以上の測定を行う。各抗体に対する各コンフォメーションに関する変種の平均結合親和性を決定してよい。さらに、式:σ/√Nを使用してこの平均の標準誤差を算出してよい。式中、σは標準偏差であり、Nは記録値の数である。抗体に対する2種のコンフォメーションに関する変種の親和性が類似であるとみなされる場合、算出された平均の親和性はこのコンフォメーションに関する変種のいずれかの3標準誤差範囲内であろう。より好ましくは、この平均結合親和性は2標準誤差範囲内であろう。より好ましくは、この平均結合親和性は1標準誤差範囲内であろう。また、他の基準を用いて2種のコンフォメーションに関する変種が同一クラスターに属するかどうかを判定してもよい。
【0083】
理想的には、プロファイリングまたはクラスタリング過程により、複数のプロファイルに分類されたコンフォメーションに関する変種が得られるであろう。理想的な状況では、このプロファイル数はコンフォメーションに関する変種の数よりずっと少ないが、1より大きい。コンフォメーションに関する変種またはサブセットを、確実に、このコンフォメーションに関する変種またはサブセットの特性に関する類似性を反映する有用な様式で群にまとめるために、このプロファイリング過程を適切に修飾してよい。例えば、当業者は最初に、他のコンフォメーションに関する変種またはサブセットの平均親和性の3標準誤差範囲内である平均親和性を有するすべてのコンフォメーションに関する変種またはサブセットを単一プロファイルに割り当ててよい。多数のプロファイルが同定されれば、このプロファイルを再分割する試みをそれ以上施さない。多数のプロファイルが存在するとみなされるのは、同定されたプロファイル数が、試験対象であるコンフォメーションに関する変種の数の50%またはそれ以上であった場合である。
【0084】
同定されたクラスター数がコンフォメーションに関する変種の数の50%未満であれば、このクラスターを再分割してよい。したがって、この抗体に対する平均親和性が他のコンフォメーションに関する変種の平均親和性の2標準誤差範囲内であるコンフォメーションに関する変種が同定されるであろう。この範囲内の平均親和性を有するコンフォメーションに関する変種を同一クラスターに割り当てる。この仕組みによって多数のプロファイルが同定されれば、このコンフォメーションに関する変種をそれ以上分類する試みを施さない。そうでない場合は、互いの1標準誤差範囲内の親和性を有するコンフォメーションに関する変種を含むプロファイルを決定してよい。
【0085】
2種またはそれ以上の抗体を使用する場合、同一の方法を用いて各コンフォメーションに関する変種のサンプルを群に割り当てるが、この割り当ては、第一の抗体に対するこの変種の親和性および第二の(および以降の)抗体に対するこの変種の親和性に基づいて行う。そしてこの変種またはサブセットをクラスターに割り当てる。各クラスターは、使用されるすべての抗体に関して同一群に分類された変種またはサブセットを含む。
【0086】
このプロファイリング過程は図1において(模式的に)説明される。図1は複数のELISAアッセイの結果を示す。ELISAアッセイは、5種の異なるモノクローナル抗体およびあるタンパク質の5種の異なるコンフォメーションに関する変種のサンプルを使用して実施する。全5種の抗体との結合に関して類似のパターンを有し、ゆえにそれぞれ類似のプロファイルを有するコンフォメーションに関する変種を同一クラスターに分類する。この事例では、3プロファイルを同定する。プロファイルAには、モノクローナル抗体1、2、4および5を認識するコンフォメーションに関する変種またはサブセットが含まれる。プロファイルBには、プロファイリング用抗体を有意には全く認識しない変種またはサブセット2が含まれる。プロファイルCには、モノクローナル抗体1および2を強く認識し、モノクローナル抗体3、4および5を弱く認識する変種またはサブセット5が含まれる。
【0087】
上記のように、類似または同一のプロファイルを有するコンフォメーションに関する変種は、好ましくは類似の三次および二次構造を有する。これを検査するために、各プロファイル中のコンフォメーションに関する変種の構造をさらに調査してよい。任意の適切な技術を使用してよいが、高処理能に適した技術が好ましい。適切な技術には、非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動、熱量測定、円偏光二色性分光法、蛍光分光法、ラマン分光法、赤外分光法、X線結晶構造解析、プロテアーゼ消化、活性アッセイ、NMRおよびゲルろ過が含まれる。選択された化学、物理および機能特性に基づいて各サンプルに関するプロファイルを決定した後、このプロファイルを用いて、類似のプロファイルを有するサンプルをクラスタリングする。プロファイルデータを別の様式で利用してこのサンプルをクラスタリングしてよい。好ましくは、このクラスタリングは、複数の抗体に対する相対結合親和性、二次構造または三次構造のうちの1つまたはそれ以上に基づく。
【0088】
考察されるように、選択された基準について類似のプロファイルを有するコンフォメーションに関する変種のサンプルをクラスタリングする。このクラスターのうちの1つまたは代表を以後の研究に使用してよい。クラスタリングにより、以後の分析を受けるサンプル数が減少する。その理由は、以後の試験には、各クラスターから選択された代表のみを使用すればよいからである。またクラスタリングによって、類似の特性、例えば天然コンフォメーションより増加した親和性で中和抗体を拘束する能力を有する種々の抗原を分離することが可能になる。
【0089】
別の工程では、抗体パネルを用いて、類似の抗体結合プロファイルを有するコンフォメーションに関する変種のサンプルをクラスタリングする。典型的には、同一の一次アミノ酸配列を有するタンパク質を認識する抗体のパネルを使用する。このタンパク質の(サブ)ドメインを認識する抗体のパネルもまた利用することができる。一実施態様では、この抗体群は同一エピトープを認識する。別の実施態様では、この抗体群は異なるエピトープを認識する。このパネルは少なくとも1種の中和抗体を含むのが好ましい。そして各サンプルに対する各抗体の相対親和性を測定する。各コンフォメーションに関する変種のサンプルが各抗体と結合する相対親和性の測定にしたがって、コンフォメーションに関する変種のプロファイルを同定することができる。この場合、このプロファイルの各要素は類似の結合パターンを有する。2種のコンフォメーションに関する変種を同一プロファイルの帰属物として分類するのに必要とされる、結合親和性に関する類似性は、当分野において既知の諸クラスタリング法を用いて決定することができる。周知のように、諸使用者が諸クラスタリング法を使用してよく、ゆえにクラスターには種々のサンプルを含有するものがあってよい。これは本発明の範囲内である。その理由は、本発明の目的が種々のサンプルまたはサンプルの群をクラスタリングまたは分離することであり、一様にクラスタリングすることではないからである。
【0090】
本発明の特定の実施態様では、選択された基準、例えば相対結合親和性の測定から得られたデータを、本明細書中で「クラスタリング」と称される方法を用いて処理する。「クラスタリング」は、例えば、ファミリーまたは類似度のマップを作成することによって、類似サンプルの高速な分析および同定を可能にする。クラスタリングシステムの好ましい実施態様は、ハードウェアベースの機器プラットフォームおよびソフトウェアベースのアルゴリズム一式を含む。このコンピュータソフトウェアを使用し、選択された基準の測定から得られたデータに基づいて類似の特性を有するサンプルの群を分析、同定および分類する。これにより、後に技術者、すなわち科学者が以後の分析(例えば、血清から中和活性を排除する能力の分析)用にサンプルを選択することができる選択元の群が同定される。この選択は、この科学者が独力で、あるいは自動的手段、例えば、目的のサンプルを自動的に選択するように設計されたソフトウェアを用いて実施することができる。
【0091】
本発明では、概してクラスタリングを使用し、複数のサンプルのビンニング挙動(binning behavior)を観察することによってその特性に関する類似度を検出する。ゆえに収集データをビンニングすることによって、目的とするタンパク質抗原のコンフォメーションに関する変種の数を見積もることができる。例えば、複数のサンプルの相対結合親和性を取得し、それを使用してバイナリフィンガープリントを得る。有益にはこの親和性(または他のデータ)を、類似度スコアを生成するためのメトリックにしたがって2サンプル間で対にして比較する。2種を超えるサンプル由来のデータを同時に使用する他の比較もまた許容できるが、おそらく複雑であろう。
【0092】
1種またはそれ以上のクラスタリング技術を用いて、好ましくは境界が明瞭なビンを作成することができる。しかし、これは絶対条件ではない。その理由は、このコンフォメーションに関する変種の不均一性(heterogeneity)の概算として、既定のタンパク質抗原に関する候補サンプルの換算リストを作成してもよいからである。有益には、ビンの作成により、サンプル間のコンフォメーションに関する不均一性を即座に評価しやすくなる。
【0093】
本発明はまた、類似のサンプルがともに近接してリストされている類似度マトリクス形式でこのデータを表す階層的クラスタリングの使用を包含する。このような類似度マトリクスをソートし、対角線に沿って類似度領域を作成してよい。得られたソート済み類似度マトリクスは、k−meansクラスタリングまたは指定数のクラスターに基づく他のクラスタリング技術、例えば、ガウス混合モデリング用のクラスター数を設定するための基礎として使用してよい。このクラスターは実際には高次元空間内であるが、これらを都合よく二または三次元空間に投影して視覚化することができる。
【0094】
分析対象であるすべてのサンプル由来のデータを収集した後、これらを一連のアルゴリズムによって処理する。これらのアルゴリズムにより、1種またはそれ以上のデータ特性に応じたサンプルデータ(例えば、相対結合親和性)のビンニングが容易になる。このデータクラスタリングシステムの具体的実施態様によって適用されるコンピュータ処理は、データ収集、類似度マトリクス計算、サンプルのクラスタリング、および視覚化工程に分けることができる。
【0095】
選択された基準が抗体パネルに対する結合親和性を含む場合、取得プロファイルはこのパネル中の各抗体に対する類似の結合親和性を有するコンフォメーションに関する変種から構成される。サンプルのプロファイリングに使用される選択された基準には、任意の適切な化学、物理または機能特性を含んでよい。好ましい実施態様では、この基準には複数の抗体に対する相対結合親和性が含まれる。いくつかのクラスターはクラスタリング法に応じて唯一のサンプルしか含有しなくてよい。プロファイル内のコンフォメーションに関する変種は類似の三次および二次構造を有すると仮定する。したがって、同一のプロファイルに分類されるコンフォメーションに関する変種は他の特性、例えば、抗原特性および他の特性を共有してよい。
【0096】
コンフォメーションに関する変種をクラスターまたはプロファイルにソートする工程は、考察されるような適切なアルゴリズムを用いて手動または自動的に実施してよい。
【0097】
上記のように、コンフォメーションに関する変種を抗体と接触させる工程は生体液および/またはアジュバントの存在下で実施するのが好ましい。その理由は、これにより、これらの化合物の存在下で中和抗体と結合可能な構造を有するタンパク質抗原を容易に同定することが可能になるからである。
【0098】
一実施態様では、コンフォメーションに関する変種の接触工程は、微粒子または固形支持体と結合しているタンパク質抗原を用いて実施する。
【0099】
別の実施態様では、このコンフォメーションに関する変種のタンパク質抗原を、インビトロにおいて血清中の中和活性を排除または部分的に排除するその能力に関してさらに試験してよい。中和活性の測定に適した方法は当分野において既知である。一方法では、ビーズと連結された抗原を用いて中和抗体を沈殿させ、その後、沈殿した中和抗体の量を測定する。この測定は、場合によりこの中和抗体のアイソタイプに特異的な二次抗体を用いるか、あるいは別法として、この中和抗体に対してこのタンパク質抗原より高い親和性を有する第二の抗原、例えば、プロテインAまたはプロテインGを用いて行う。中和活性を排除または部分的に排除可能なタンパク質抗原は医薬組成物中での使用に適する。好ましくは、コンフォメーションに関する変種のタンパク質抗原はその天然コンフォメーションより高度にまで中和活性を排除することができる。さらにこのタンパク質抗原を、インビボにおいて中和抗体を産生させるその能力に関して試験してよい。
【0100】
好ましい抗原は、非中和抗体と比べて、中和抗体に対して高い相対結合親和性を有するコンフォメーションに関する変種である。好ましい抗原は中和抗体パネルまたは複数の中和抗体に対して最も高い平均または中央値の親和性を有する抗原である。また好ましい抗原は、中和抗体または、中和抗体パネルに対する平均または中央値の結合親和性と非中和抗体または非中和抗体パネル間で最も大きな差異を有する抗原である。この抗体パネルは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20または25種の中和抗体および1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20または25種の非中和抗体を含んでよい。好ましい抗原は、非中和抗体に対する結合親和性よりも中和抗体に対する結合親和性に関して、対天然コンフォメーションの増加がより大きいコンフォメーションに関する変種である。
【0101】
タンパク質抗原の製造:医薬組成物の製造方法はタンパク質抗原を製造する工程をさらに含む。このタンパク質抗原は標的タンパク質のコンフォメーションに関する変種またはサブセットであるから、標的タンパク質のサンプルを特定セットの条件で処理することによってこれをあらかじめ製造しておく。他の条件を使用して同コンフォメーションに関する変種(群)を作成してもよい。したがって、この標的タンパク質の別サンプルを同一セットの条件下で処理することによってさらに多くのタンパク質抗原を製造するのは容易なことである。また、さらに大規模なバッチのタンパク質抗原であれば、この過程の規模を拡大することによって製造することができるであろう。考察されるように、このタンパク質抗原は複数のコンフォメーションに関する変種から構成されていてよい。またサンプルを1種またはそれ以上のコンフォメーションに関する変種について濃縮してよいし、方法を最適化して、初めに1種またはそれ以上のコンフォメーションに関する変種について濃縮されたバッチを製造することができる。
【0102】
好ましくは、このタンパク質抗原は詳細な構造解析、例えば、X線結晶構造解析またはNMR分光法によって決定されるまさに天然標的抗原のコンフォメーションを有さない。
【0103】
タンパク質抗原と微粒子の結合:本発明の組成物を製造する方法は、場合によりタンパク質抗原(コンフォメーションに関する変種)を微粒子と結合させる工程を含む。好ましくは、組成物は医薬組成物である。
【0104】
微粒子は、直径150μmまで、より好ましくは直径約100nm〜約30μm、最も好ましくは直径約500nm〜約10μmの固形またはゲル粒子である。好ましくは、この微粒子は、針およびキャピラリーを閉塞させずに非経口投与することを許容するサイズの直径を有する。また、この微粒子は抗原提示細胞によるエンドサイトーシスを許容するサイズの直径を有するのが好ましい。
【0105】
微粒子のサイズは、当分野において周知の技術、例えば、光子相関分光法、レーザ回折測定(ヘリウムネオンレーザを使用)および走査型電子顕微鏡観察によって容易に決定される。
【0106】
本発明の一側面では、この微粒子は製薬的に許容される材料から形成されるのが好ましい。これらの材料には、無機材料、例えば、金属塩が含まれる。リン酸カルシウムまたは水酸化アルミニウムから形成された微粒子が特に好ましい。
【0107】
このような微粒子の製造方法は当分野において既知である。例えば米国特許第6355271号は、300nm〜4000nmの範囲の直径を有するリン酸カルシウムコア粒子の製造方法を開示している。概説すれば、リン酸カルシウムコア粒子の調製は、5mM〜100mMの範囲の濃度を有する塩化カルシウムの水溶液を、5mM〜100mMの範囲の濃度を有するクエン酸ナトリウムの水溶液と混合し、次いで5mM〜100mMの範囲の濃度を有する第二リン酸ナトリウムの水溶液を加えて、48時間、あるいは適切な粒子サイズが得られるまで混合することによって行う。
【0108】
本発明の別の側面では、微粒子はポリマー材料から形成される。適切なポリマー粒子は既知であり、これには米国特許第5942242号に開示されているカチオン交換樹脂粉末が含まれる。その多数が市販されている。
【0109】
好ましい実施態様では、ポリマー材料は生分解性である。この関連での生分解性とは、このポリマーがインビボで分解して、より小さい化学種を形成することを意味する。適切な生分解性ポリマーには、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル(polyothoester)、ポリ無水物、ポリエステルアミド、ポリアミノ酸、ポリシアノアクリラート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテルエステル、ポリジオキサノン、ポリアルケン アルキラートおよび生分解性ポリウレタンが含まれる。特に好ましい実施態様では、生分解性ポリマーはポリ(α−ヒドロキシ酸)である。ポリ(α−ヒドロキシ酸)は、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−ポリエチレングリコール)またはポリ(スルホブチル−ポリビニルアルコール)−g−(ラクチド−コ−グリコリド)であってよい。これらのポリマーを合成する手法は当分野において周知である。また、これらのポリマーの多数はBoehringer Ingelheimから市販されている。
【0110】
生分解性ポリマー微粒子は当分野において標準的な方法によって調製してよい。適切な方法の1つはダブルエマルジョン溶媒蒸発技術である。この技術はO'Haganら(Vaccine (1993) 11:965-969)およびJeffreyら(Pharm. Res. (1993) 10:362)に記載されている。この方法では、ポリマーを有機溶媒、例えば、酢酸エチル、塩化ジメチル、アセトニトリル、アセトンまたはクロロホルムと混合する。このポリマーの濃度は2〜15%の範囲であり、より好ましくは約4〜10%であり、最も好ましくは6%である。ほぼ等量の水溶液を加え、混合物を、例えば、ホモジナイザを用いて乳化する。次いでこのエマルジョンを、大量の乳化安定剤、例えば、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロロドンの水溶液と混合する。この乳化安定剤は典型的に約2〜15%溶液、より典型的には約4〜10%溶液中で供給する。次いでこの混合物をホモジナイズし、安定なダブルエマルジョンを得る。その後、有機溶媒を蒸発させる。
【0111】
また微粒子は、スプレー乾燥およびコアセルベーション技術を用いて形成させることができる。これらはThomasinら(J. Controlled Release (1996) 41:131)、米国特許第2,800,457号およびMasters, K.((1976) Spray drying 2nd Ed. Wiley New York)に記載されている。
【0112】
当業者には明らかであるように、この製法のパラメータを操作して、小さい(<5μm)微粒子および大きい(>30μm)微粒子を調製することができる。例えば、撹拌の速度および期間を減少させるほど大きい微粒子が得られる。水相の容量を増加させても同様である。米国特許第6565777号は、直径10μmまでのサイズのポリマー粒子を製造する方法を開示している。この方法は工業規模での適用が可能である。
【0113】
このタンパク質抗原は微粒子の表面に結合している。この文脈で、結合という単語は、このタンパク質抗原と粒子表面間の密接な結び付きを表すものとする。これは、このタンパク質抗原がこの微粒子と共有結合している状態ならびにこの抗原がこの抗原の表面と非共有結合性の相互作用、例えば、水素結合、イオン結合または疎水性相互作用によって相互作用している状態を包含する。タンパク質抗原が非共有結合性の相互作用によって相互作用している場合、この抗原は微粒子の表面に吸着しているとする。
【0114】
好ましい実施態様では、タンパク質抗原を微粒子の表面に吸着させる。吸着は、単に微粒子とタンパク質抗原を混合することによって達成してよい。吸着後、ろ過または遠心分離によって未結合タンパク質抗原を除去してよい。
【0115】
微粒子がポリマーから形成される場合、タンパク質抗原と微粒子を、吸着後に、共有結合させてよい。共有結合は、標的タンパク質のコンフォメーションに関する変種を2つの反応基を有する化学架橋剤で処理することによって形成させてもよい。この場合、一方の反応基はタンパク質抗原上の官能基を認識し、他方の反応基はポリマー上の官能基を認識する。適切な架橋剤は、切断可能なものおよび切断できないものがともに市販されている。あるいは、標準的な化学的技術を用いて、吸着前にタンパク質または抗原上の官能基を修飾してよい。吸着後、この修飾型の官能基を活性化して共有結合性の架橋を形成させてよい。
【0116】
ポリマー微粒子はさらに、タンパク質抗原と同一の一次アミノ酸配列を有する少なくとも1タンパク質分子からなるタンパク質コアを含んでよい。このタンパク質分子は、微粒子の表面に結合したタンパク質抗原と同一のコンフォメーションを有してよいし、有さなくてもよい。
【0117】
ポリマー微粒子中にタンパク質分子を包括(してタンパク質「コア」を作成)する方法は既知である。ポリマー微粒子がダブルエマルジョン溶媒蒸発技術によって形成される場合、有機溶媒中に溶解したポリマーに等容量のタンパク質水溶液を加えてよい。このタンパク質分子には有機溶媒が接触するため、すべての二次または三次構造が失われるであろう。したがって、包括タンパク質が中和エピトープを有するのが望ましい場合は、共有結合性の分子内架橋によってこのタンパク質のコンフォメーションを安定化する必要がある。
【0118】
別の実施態様では、微粒子の形成中にタンパク質分子を包括させない。それに代わり、米国特許第6534064号に記載されるように、150nm〜150μmのタンパク質コアを作成する。概説すれば、化学沈殿、架橋剤の使用、または熱安定化によって精製タンパク質からタンパク質粒子を形成させる。このようなタンパク質コア中に存在するタンパク質は二次または三次構造を全く保持しないであろう。したがって、包括タンパク質が中和エピトープを有するのが望ましい場合は、共有結合性の分子内架橋によってこのタンパク質のコンフォメーションを安定化する必要がある。
【0119】
本発明のタンパク質抗原は単にタンパク質コアの表面に吸着させてよい。あるいはこのタンパク質抗原は、微粒子に対して、吸着後に共有結合させてよい。共有結合性の架橋は化学架橋剤によって形成させてよい。架橋剤は特に制限されない。タンパク質中で架橋形成が可能な任意の物質を使用してよい。適切な化学架橋剤には、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリオキサール、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、アジポアルデヒド、フタルアルデヒド、4−アジド安息香酸(3−スルホ−N−スクシンイミジル)エステルナトリウム塩、1,4−ビス[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ブタン、ビス[2−(N−スクシンイミジル−オキソカルボニルオキシ)エチル]スルホン、ビス−マレイミドヘキサン、ビス−[2−(4−アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィド、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン、ジメチルピメリミダート、ジメチル3−3’−ジチオプロピオンイミダート二塩酸塩、エチレングリコールジスクシナートジ(N−スクシンイミジル)エステル、N−ヒドロキシスクシンイミジル−4−アジドサリチル酸、およびセバシン酸ビス(N−スクシンイミジル)エステルが含まれる。これらの化学架橋剤はSigma AldrichおよびPierce Biotechnology, Inc.から入手可能である。
【0120】
共有結合性の架橋は、共有結合性の架橋形成を誘発する条件に曝露することによって形成させてもよい。共有結合性の架橋形成を誘発する条件には、酸化条件、UV照射、およびpHが含まれる。
【0121】
タンパク質コアは、インビボにおいて放出可能に、製薬的に許容されるコーティング剤によって包んでもよい。すなわち、このコーティング剤は体内で除去される必要があり、これによりタンパク質コアが放出されねばならない。したがって、このコーティング剤は水溶性であるか、あるいはインビボでより小さい分子種に分解される必要がある。コーティング剤の選択により、タンパク質抗原と微粒子の吸着を増強してよい。
【0122】
好ましい実施態様では、コーティング剤はリン酸カルシウム、セロビオースおよびポリエチレングリコールである。特に好ましい実施態様では、コーティング剤は生分解性ポリマーである。適切な生分解性ポリマーは上に列挙されている。タンパク質抗原はコーティング剤と吸着または共有結合させてよい。
【0123】
本発明において使用される任意の微粒子は免疫刺激分子を含んでもよい。この免疫刺激分子は細胞性応答を増強する分子であってよい。あるいは、免疫刺激分子は液性応答を増強してよい。免疫刺激分子には、サイトカイン(例えばインターロイキン)およびインターフェロンが含まれる。
【0124】
細胞性応答を増強する免疫刺激分子には、IL−2、IL−12、IL−18、インターフェロン−α、インターフェロン−βおよびインターフェロン−γが含まれる。
【0125】
液性応答を増強する免疫刺激分子には、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10およびIL−13が含まれる。
【0126】
免疫刺激分子は、微粒子の表面に吸着させるか、あるいは微粒子中に包括させてよい。これはタンパク質抗原に関する説明と同様である。
【0127】
微粒子が生分解性ポリマーから構成されている場合、当業者はその分解速度を制御することができる。この分解速度は、微粒子を形成するポリマーの組み合わせ、およびこれらのポリマーの分子量に応じて決まる。またコポリマーが使用される場合には、そのモノマー比が分解速度に影響することが知られている。例えば、ラクチド:グリコリド比が50:50であるポリ(ラクチド−コ−グリコリド)ポリマーは、ラクチド:グリコリド比が75:25であるポリマーより高速に分解する。ラクチド:グリコリド比が90:10であるポリマーはさらに緩徐に分解する。
【0128】
当業者は各適用に適した微粒子を選択することができる。包括型のタンパク質抗原を含有し、緩徐に分解する微粒子を選択することによって、徐放性の医薬組成物が得られる。このような医薬組成物から生じる抗原の持続放出により、以後のブースター注射を必要としない程度に、十分に高度な免疫応答が生じるであろう。
【0129】
本発明の(微粒子に吸着したタンパク質抗原を含む)医薬組成物は強力な液性免疫応答を生じさせる。理論にとらわれることなく、その理由は、この医薬組成物によってT細胞依存型およびT細胞非依存型の両経路の液性応答が刺激されるからであると仮定される。まず、T細胞非依存型の経路が刺激される。その理由は、この微粒子は複数コピーの同一抗原でコーティングされており、ゆえにT細胞非依存型の抗原と類似しているからである。これによりT細胞非依存型の機構によってB細胞の活性化および抗体生産が生じる。
【0130】
次に、この微粒子は異質性処女B細胞によるエンドサイトーシスに適する。このB細胞はそのタンパク質抗原を認識する抗体を発現する。これはT細胞依存型の経路によるB細胞の活性化に寄与する。活性化されたB細胞は増殖し、そして抗体分泌型形質細胞に分化する。
【0131】
さらにまた、この微粒子は抗原提示細胞によるエンドサイトーシスを受ける。この抗原提示細胞はヘルパーT細胞を活性化し、このヘルパーT細胞がB細胞の活性化を支援して、液性応答の増強が生じる。またこのヘルパーT細胞は細胞障害性T細胞を活性化し、これにより細胞性応答の増強が生じる。
【0132】
組成物:また本発明は、組成物、例えば医薬組成物であって、本明細書中に記載される方法にしたがって調製される組成物を提供する。したがって本発明は、標的タンパク質の複数の単離サンプルを種々の条件下で処理し、複数の単離されたコンフォメーションに関する変種を製造することによって得られるタンパク質抗原を含む組成物を提供する。このコンフォメーションに関する変種のサンプルは、抗体パネルに対するその結合プロファイルまたは他の選択された基準に基づいてクラスタリングしてよい。このサンプルを、クラスタリング前またはクラスタリング後に、あるいは1つまたはそれ以上のクラスター由来の1つまたはそれ以上の代表サンプルを、1種またはそれ以上の中和抗体を結合するその能力、中和活性を排除するその能力、中和抗体を産生させるその能力または、このサンプルがインビボにおいて中和抗体を産生させることができるかどうかを予測するのに使用される別の方式に関して試験する。このサンプルをさらにアッセイに付して、中和抗体とのその選択的結合親和性を非中和抗体と対比して比較してよい。通常、非中和抗体よりも中和抗体を選択的に結合するサンプルまたは中和抗体を天然コンフォメーションよりも選択的に結合するサンプルが好ましい。
【0133】
別の側面では、本発明は、非中和抗体より高い親和性で中和抗体を結合可能なタンパク質抗原を含む組成物(これらの抗体はともに同一タンパク質に特異的であるか、あるいはタンパク質の同一エピトープに特異的でさえある)であって、そのタンパク質抗原が完全な天然コンフォメーションでは存在しない組成物を提供する。このコンフォメーションに基づいて捕捉されるタンパク質抗原はさらに、150μmまでの直径を有する微粒子を含むか、あるいはこの微粒子と結合していてよい。
【0134】
この組成物は、この抗原が由来する生物に対して免疫応答を生じさせることが可能な組成物であってよい。好ましくは、この免疫応答は中和抗体の生産を含む。より具体的には、この組成物はワクチンであってよい。すなわち、選択された標的タンパク質が、侵入微生物上に存在する抗原または侵入微生物が生産する抗原(例えば、毒素または病原体(virulence))である場合、この組成物は被検者をその微生物に対して免疫化または部分免疫化するのに適するであろう。
【0135】
また本発明は、複数のタンパク質抗原を含む組成物、例えば、ワクチンを提供する。好ましい実施態様では、含ませる各タンパク質抗原は、ある中和抗体と結合するコンフォメーションに関する変種である。このタンパク質抗原は、同一または異なるコンフォメーションに関する変種のサンプルまたはコンフォメーションに関する変種のサンプルのクラスター由来であってよい。さらに、このタンパク質抗原は種々のエピトープであってよく、あるタンパク質、種々のタンパク質または種々の生物由来のタンパク質の種々の部分由来であってよい。一実施態様では、このタンパク質抗原は種々の中和抗体と結合する。このような組成物は被検者を単一または複数の感染症に対して免疫化するのに適するであろう。
【0136】
有益には、この発明は、特定地域または期間において発症しがちな複数の感染症に対し、一生涯にわたって動物を免疫化または部分免疫化する医薬組成物、例えば、ワクチンを提供する。このような抗原は、そのような地域の現地の人々またはこの地域への旅行者を免疫化するのに適する。さらに本発明は、生物テロリストによる使用が予見される多数の感染症に対して免疫化する組成物を提供する。このような組成物、例えば、ワクチンは、軍および民間人を免疫化するのに有用である。さらに本発明は、抗原または生物体に対して免疫応答を生じさせるのに有用な組成物、例えば、ワクチンの製造を向上させる。
【0137】
組成物がワクチンである場合、この組成物はさらにアジュバントを含んでよい。抗原に対する免疫応答を増強可能な任意のアジュバントを使用してよい。適切なアジュバントには、水中油型エマルジョン、リポソーム、スクアレン混合物、ムラミルペプチド調製物、サポニン誘導体、マイコバクテリウム細胞壁調製物、モノホスホリルリピドA、ミコール酸誘導体、非イオン性遮断用界面活性剤、Quil Aおよびコレラ毒素Bサブユニットが含まれる。好ましくは、アジュバントはヒトに対して医薬的に許容される。ヒトに対して医薬的に許容されるアジュバントの例には、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、QS−21(ソープバークツリー、Quillaja saponaria由来のサポニン製品)およびCAP(BioSante Pharmaceuticals Inc.)が含まれる。
【0138】
本発明の組成物はさらに免疫刺激剤、例えば、本明細書中で開示されているものを含んでよい。
【0139】
好ましくは、この組成物は医薬組成物である。
【0140】
医薬組成物の開発:医薬組成物の開発に適した標的タンパク質には、病原微生物由来のタンパク質が含まれる。
【0141】
このような標的タンパク質から作成されたコンフォメーションに関する変種を、この生物由来のタンパク質と結合可能な抗体のパネルまたは他の選択された基準を用いてクラスタリングまたはプロファイリングする。これにより、同一または類似のプロファイルを有するコンフォメーションに関する変種のいくつかのクラスターが得られる。中和抗体と結合するか、中和活性を排除するか、あるいは中和抗体を産生させるコンフォメーションに関する変種を含むプロファイルをさらにスクリーニングして、医薬組成物中での使用に適したタンパク質抗原を同定してよい。あるいは、クラスタリング前に1種またはそれ以上の中和抗体を用いてサンプルをスクリーニングし、抗体パネルまたは選択された基準を測定する他の方法で試験されるサンプル数を制限してよい。
【0142】
選択されたクラスター由来のコンフォメーションに関する変種のサンプルを、問題の病原体でのワクチン接種、曝露または感染に付された個体の血清から中和活性を排除するその能力に関して試験してよい。典型的には、血清を既知量のコンフォメーションに関する変種とインキュベートした後に、この血清を中和活性の残存に関してアッセイする。中和活性を測定するいくつかの方法が知られており、例えば、ビーズに付着している抗原で中和抗体を沈降させ、そして沈降した中和抗体の量を測定する方法がある。
【0143】
このコンフォメーションに関する変種は、諸生体液中、諸アジュバントの存在下、諸用量で、その安定性に関して試験してよい。
【0144】
中和抗体と結合し、中和活性を排除することができ、ならびに生体液、アジュバントの存在下でかつ必要とされる用量において安定なコンフォメーションに関する変種は、医薬組成物中に含めるのに適したタンパク質抗原である。例えば、これらを組成物、例えば、ワクチン中で使用して、免疫応答を刺激するか、あるいは標的タンパク質が由来した病原体に対して被検者を免疫化または部分免疫化してよい。
【0145】
中和抗体が既知でない場合、この発明は、病原体のタンパク質に対して中和抗体を生じさせる組成物(例えばワクチン)に関するスクリーニング方法を提供する。まず、標的タンパク質を認識する非中和抗体を用いるか、あるいは他の選択された基準を用いて、この病原体由来のタンパク質のコンフォメーションに関する変種をプロファイリングする。そしてこのコンフォメーションに関する変種のクラスターの構造を記載されるように解析してよい。この解析によってクラスターが別個の二次または三次構造を有するコンフォメーションに関する変種群からなることが示されれば、適宜このクラスターを再分割する。
【0146】
各クラスターの代表的要素を宿主動物(典型的にはマウス、ラットまたはウサギ)に注射して、このコンフォメーションに関する変種に対する抗体を産生させてよい。この作業は当分野において標準的な方法にしたがって行う。そして産生された抗体を中和活性に関して試験する。これには標準的方法を使用する。中和活性を有する抗体を生じさせるコンフォメーションに関する変種は、医薬組成物の開発および他の用途に適する。上記のように、生体液中、製薬的に許容されるアジュバントの存在下でかつ必要とされる用量においてこれらをその安定性に関して試験し、医薬組成物または他の組成物中での使用に適したコンフォメーションに関する変種を同定してよい。
【0147】
あるいは、サンプルを、中和抗体を産生させるその能力に関して試験してよい。この試験は、そのタンパク質抗原が由来した病原体で処置された動物に投与して、この病原体または病原体の毒性への抵抗性を測定することによって行う。
【0148】
好ましくは、このタンパク質抗原が微粒子アジュバントと結合している場合に、この抗原が中和抗体と結合する能力に関して試験する。このようなアジュバントの使用は特に好ましく、この微粒子の組成を選択することにより、特定の特性を持たせてよい。例えば、タンパク質抗原を長期間(1ヶ月まで)にわたって徐放させるのが所望であれば、この時間枠にわたってインビボで分解する生分解性ポリマー粒子が選択されるであろう。この医薬組成物がワクチン、または免疫応答を刺激するのに有用な他の組成物である場合、このような製剤化により、ブースター注射が必要とされないワクチンが得られるであろう。
【0149】
本発明の組成物を脊椎動物患者(例えばヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ等)に投与して、免疫応答を誘発してよい。好ましくは、患者は哺乳類であり、特に好ましくは、患者はヒト患者である。この組成物は当分野において既知の方法を用いて投与してよい。例えば、この組成物は、皮下、腹腔内、皮内、静脈内または筋肉内に注射してよい。投与方式は、少なくとも部分的には、患者の必要性によって左右される。また、適切な処置方式は医師または他の当業者には自明である。例えば、患者の血清中の抗体力価をモニターし、この力価の減少にしたがって追加量を投与してよい。典型的には、1〜10分割した用量を1〜4ヶ月間隔で投与する。
【0150】
本発明の方法の典型例について、以下にその概略を(フローチャート形式で)挙げる。
【0151】
目的のタンパク質を取得する

標的タンパク質を変性させるか、あるいは天然状態の標的タンパク質で開始する

種々の条件/時間において還元条件下で標的タンパク質をリフォールディングまたはアンフォールディングさせ、複数のコンフォメーションを誘発する(各サンプルは異なるリフォールディングまたはアンフォールディング条件を有する)

例えば、共有結合性の架橋を誘発するように条件を調節する(還元条件→酸化、変性条件→リフォールディング)ことによって、タンパク質のコンフォメーションを安定化する

安定化された種をクロマトグラフィまたは他の方法によって単離する

モノクローナル抗体パネル、ファージディスプレイクローン、または他の選択された基準を用いて、単離された各安定種をプロファイリングする

類似のタンパク質を含むサンプルをクラスタリングする

各クラスター由来の代表的変種を試験して、中和活性に関してより高い親和性を有する条件を同定する

高親和性のコンフォメーションまたはサブセットをさらに試験して、これらが血清から中和活性を排除することができるかどうかを判定する

高親和性を有し、かつ中和活性を排除することができる変種またはコンフォメーションに関するサブセットが抗原の候補である
アジュバントの存在下、投与用製剤中、および生体液中での構造を安定化する条件をアッセイする。
【0152】
実施例1:コンフォメーションに関する変種の調製
本実施例中で採用された主な生物物理学的技術は、円偏光二色性および蛍光であり、これらの技術によって構造変化についての詳細な特徴付けが可能であった。研究対象のタンパク質はウシ膵臓トリプシン阻害剤であった。例示を目的として、限定されたテストベッドとなる条件を調査した。これには28種の特異な製剤および350を超えるサンプルが含まれる。溶液空間は(不)安定化剤の単一および二成分混合物を含んだ。検出された中間体は、溶液条件を慎重に制御して、ならびに化学架橋剤を用いて安定化してよい。この具体的事例では、スルフヒドリルを標的とする架橋剤の導入を経てフォールディング反応をモニターした。HPLCクロマトグラフィを用いて個別の種を単離し、以後の特徴付けに付した。この特徴付けには、円偏光二色性分光法、蛍光分光法、質量分析、およびペプチドマッピングが含まれる。
【0153】
一実施態様では、本発明は、平衡中間体(群)を安定化し、アンフォールディング反応転移領域(the unfolding reaction transition region)を拡大させ、あるいはアンフォールディング反応の協同性(cooperativity)を脱共役(uncouple)させる条件を発見する工程を含む。同定後、これらの条件を架橋反応に使用して、コンフォメーションに関する変種を安定化する。
【0154】
ウシ膵臓トリプシン阻害剤、BPTI(Swiss−Protプライマリアクセッション番号P00974;EMBLアクセッション番号X03365)の濃縮保存溶液(25倍)を調製した。この調製は凍結乾燥タンパク質をバッファー(10mMリン酸塩、0.2mM EDTA、pH7.6)に溶解することによる。BPTIはアプロチニンとしても知られる。このタンパク質保存溶液をサンプルのアレイ内へ均一に分注した。1アレイは典型的に15サンプルであり、アレイ中の各サンプルは、変化量の変性剤を除き、3.5μM BPTI、10mMリン酸塩、0.2mM EDTA、pH7.6を含有した。変性剤として塩酸グアニジンを使用した。その濃度は0〜5Mの範囲であった。等量の添加物をアレイの各サンプル内へ分注した。適切な添加物には、還元剤、酸化剤、アルコール、有機溶媒、無機溶媒、界面活性剤、オスモライト、酸、および塩基が含まれる。還元剤、ジチオスレイトール(dithiotheitol)を使用した。例えば、あるサンプルアレイは1mMジチオスレイトール(dithriothreitol)を含有し、別のサンプルアレイは5mMジチオスレイトールを含有するであろう。また第二の添加物をサンプルのアレイに加えた。例えば、サンプルのアレイは1mMジチオスレイトールおよび5%トリフルオロエタノールを含有するであろう。
【0155】
すべてのサンプルを25℃で一晩平衡化した。各サンプルの遠紫外CDスペクトルデータを収集した。この作業は熱電式セルホルダー、高処理能オートサンプラーアクセサリーを装備した分光偏光計で行った。またトリプトファンおよび/またはチロシン蛍光データを収集する。この作業には、熱電式セルホルダーおよび高処理能オートサンプラーを装備した分光蛍光光度計を使用する。
【0156】
当分野において標準的な方程式にしたがって、各アレイに関するスペクトルをクラスタリングおよび分析した。この処理は、非線形最小二乗法により2、3、または4状態モデルに近似(fitting)し、特定の溶媒条件下におけるBPTIの熱力学(すなわち安定性)を決定することによる。そしてこの熱力学を用いて、データを変性剤に対する分子数分布に再計算した(図3)。3状態近似由来の熱力学的パラメータを各転移に関する平衡定数に変換することにより、塩酸グアニジンに応じた各種別の相対分子数を算出した。すべてのデータ分析は当分野の標準であった。
【0157】
例えば、3状態平衡アンフォールディングモデルは以下の式によって説明される:
N⇔I⇔U
(式中、N、I、およびUはそれぞれ天然、中間体、および変性状態である。)各種別間の平衡定数はKNI=[I]/[N]およびKIU=[U]/[I]である。この変性プロファイルは、以下の式により、アンフォールディング型タンパク質の見かけの割合、Fappに換算することができる:
app=(YN−Yobs)/(YN−YU
(式中、Yobsは既定の変性剤濃度で観察されるシグナルであり、YNおよびYUはそれぞれ、天然およびアンフォールディング型のタンパク質のシグナルである。)YNおよびYUは、それぞれプレおよびポスト転移領域のデータを直線外挿することによって推定した。
【0158】
この熱力学的パラメータを、アンフォールディング型タンパク質の見かけの割合に関する以下の修正式に含める:
app=(ZINI+KNU)/(1+KNI+KNU
(式中
I=(YI−YN)/(YU−YN
ならびに
NU=KNIIU
である。)
パラメータZIは中間体が示すアンフォールディング型特性の割合を表す近似値である。値0または1は、中間体がそれぞれ天然またはアンフォールディング型状態に類似していることを示す。
【0159】
平衡定数を自由エネルギー変化と相関させる際には、見かけの自由エネルギー差が変性剤濃度に線形従属することを仮定する。
ΔG°=ΔG°(H2O)+m[尿素]
=−RTlnK
(式中、ΔG°およびΔG°(H2O)は、それぞれ既定の尿素濃度の存在または不存在下におけるギブズの自由エネルギー変化である。mは変性剤濃度に対する見かけの自由エネルギー変化の感度(sensitivity)を表す。)
【0160】
架橋:濃縮タンパク質保存溶液(10〜25倍)を、先の平衡実験から同定された最適化溶液条件において凍結乾燥タンパク質を溶解することにより調製した。例えば、2.44M塩酸グアニジン、5mMジチオスレイトール、10mMリン酸塩、0.2mM EDTA、pH7.5。このタンパク質保存溶液を25℃で一晩平衡化させた。
【0161】
アンフォールディング型タンパク質の保存溶液を、酸化剤(10mM酸化型ジチオスレイトール最終濃度)含有バッファー(10mMリン酸塩、0.2mM EDTA、pH7.5)で10〜25倍希釈した。リフォールディングしたタンパク質に諸時間増分(この事例では:0.1、1、2、3、4、6、8、10、12、14、16、20、30、60分)で共有結合性の架橋剤または架橋剤の混合物を加え、最終の架橋剤対タンパク質比を10〜25:1にした。
【0162】
アミン、スルフヒドリル、炭水化物、カルボキシル、およびヒドロキシルを標的とするホモおよびヘテロ二官能性架橋剤を用いて、このタンパク質を架橋することができる。また非特異的架橋剤を使用することもできる。我々は2種のホモ二官能性および2種のヘテロ二官能性架橋剤を重点的に取り扱うことを選択した。使用されるホモ二官能性架橋剤はBMOEおよびBM[PEO]3であった。これらはスルフヒドリル(sulhydryls)に特異的である。使用されるヘテロ二官能性架橋剤はスルホ−EMCSおよびスルホ−SMCCであった。これらはアミンおよびスルフヒドリルを標的とする。この架橋剤の濃縮保存液(〜10mM)を製造元の使用説明書にしたがって調製した。
【0163】
架橋反応を25℃で15分間実施した後、ヨード酢酸(最終濃度0.1M)でクエンチした。別法では、クエンチング剤としてヨードアセトアミドを使用することができる。クエンチされたサンプルをバッファー(10mMリン酸塩、0.2mM EDTA、pH7.5)100mLに対して30分間×2回透析し、過剰の架橋剤、変性剤、および塩を除去した。PIERCE MICRODIALYZER SYSTEM 100を使用してサンプルを透析した。この透析済みサンプルを25℃で保存した。
【0164】
リフォールディング時点のサンプルを、カチオン交換カラムを用いるHPLCによって分析した。このHPLCは、20mMリン酸バッファー系(pH6.2)および0〜0.5M NaClの塩濃度勾配において、流速1.0mL/分で実施した(図2)。毎分フラクションを回収した。類似の保持時間を示すピークをプールし、Centricon YM−3スピンコンセントレータ(MWCO 3000)を用いて濃縮し、最終容量を1mLにした。この濃縮サンプルを標準およびペプチドマッピング質量分析技術によって分析し、共有結合性の架橋の程度を決定し、その部位を同定した。
【0165】
親和性測定:標準的なELISAおよび表面プラズモン共鳴技術を使用して、抗体のテストベッドに対する単離された種の相対親和性を測定する。データ分析は当業者に一般的な方法によって実施した。
【0166】
本発明を好ましい実施態様に関して説明してきたが、本発明の思想から逸脱することなく、種々の修飾、代用、省略および変更を施して構わないことを当業者は理解する。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。特許請求の範囲にはその等価な発明が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)タンパク質を含む複数のサンプルを準備し、該サンプルは、タンパク質のコンフォメーション状態について異なるサンプルであり、
b)複数のサンプルから、タンパク質が由来した病原体に対して、中和抗体の産生を刺激することが可能なタンパク質のコンフォメーションに関する変種を含むサンプルを同定する工程を含むタンパク質抗原を含む組成物の製造方法。
【請求項2】
コンフォメーションに関する変種が、その二次または三次構造について異なるが同一の一次アミノ酸配列を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法が、選択された基準のプロファイルに基づいてサンプルをクラスタリングする工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
基準が、該タンパク質に特異的な抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または複数の抗体に対する結合能または親和性を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
抗体が、
a)非中和抗体;
b)中和抗体;
c)ポリクローナル抗体;
d)モノクローナル抗体;
e)生体液の存在下でタンパク質と接触しているものである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
a)天然コンフォメーションのタンパク質を種々の条件下で処理することによってコンフォメーションに関する変種を取得する;
b)天然コンフォメーションを有するタンパク質のサンプルを種々の条件下で処理することによってコンフォメーションに関する変種を取得する;
c)変性または部分変性タンパク質のサンプルを種々の条件下で処理することによってコンフォメーションに関する変種を取得する;あるいは
d)コンフォメーションに関する変種の二次または三次構造を安定化する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
同定工程が、
a)中和抗体と結合する;
b)1種またはそれ以上の非中和抗体よりも高い相対結合親和性で1種またはそれ以上の中和抗体と結合する;
c)インビトロにおける血清中の中和活性を部分的に排除または排除する;
d)インビボにおける中和抗体の生産を刺激する;
e)中和抗体が天然コンフォメーションを結合するよりも高度に、この中和抗体を結合する;
f)コンフォメーションに関する変種に対する中和抗体の親和性は、その天然コンフォメーションに対するこの中和抗体の親和性より大きい;
g)上記f)の親和性の増加は、コンフォメーションに関する変種対その天然コンフォメーションについての非中和抗体の親和性の増加より大きい;
h)コンフォメーションに関する変種に対する中和抗体の親和性は天然コンフォメーションに対するこの中和抗体の親和性より大きいが、このコンフォメーションに関する変種対天然コンフォメーションについての非中和抗体の親和性には差異がないか、あるいは減少が認められる、タンパク質のコンフォメーションに関する変種を含むサンプルを同定することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
円偏光二色性分光偏光測定、蛍光分光法(内在または外来性の蛍光プローブを使用)、質量分析、UV−VIS分光法、NMR、X線小角散乱、酵素活性、イオン交換、疎水性相互作用、逆相クロマトグラフィ、ゲルろ過およびアフィニティーからなる群から選択される方法を用いてタンパク質を構造的に特徴付ける請求項1に記載の方法。
【請求項9】
共有結合性のリンカーを用いてコンフォメーションに関する変種を安定化する請求項6に記載の方法。
【請求項10】
共有結合性のリンカーが、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、炭水化物またはグルタルアルデヒドを標的とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アミノ酸配列またはこのタンパク質をエンコードしている核酸配列のインビトロ突然変異誘発によってリンカーの標的を創出する請求項9に記載の方法。
【請求項12】
精製工程によりサンプルをコンフォメーションに関する変種について濃縮する請求項1に記載の方法。
【請求項13】
イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、ゲルろ過クロマトグラフィまたはアフィニティークロマトグラフィを用いて、サンプルをコンフォメーションに関する変種について濃縮する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1種またはそれ以上の中和抗体を用いてサンプルを濃縮する請求項12に記載の方法。
【請求項15】
ELISA、表面プラズマ共鳴、ゲル移動度シフトアッセイ、等温滴定熱量測定 平衡透析、遠心分離および蛍光共鳴エネルギー移動からなる群から選択される方法を用いて親和性を測定する請求項4に記載の方法。
【請求項16】
各コンフォメーションに関する変種のサンプルを非中和抗体および中和抗体と接触させ、ならびにこの非中和抗体よりも高い親和性でこの中和抗体と結合するコンフォメーションに関する変種またはサブセットを含むサンプルを同定することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
コンフォメーションに関する変種が、150μmまでの直径を有する微粒子と結合している請求項1に記載の方法。
【請求項18】
微粒子が、生分解性ポリマーまたは他の生分解性微粒子材料を含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(a)微粒子は、その外面に結合しているコンフォメーションに関する変種を含む;
(b)微粒子コアは、インビボにおいて放出可能に、製薬的に許容されるコーティング剤によって包まれている;
(c)上記(b)のコーティング剤は、生分解性ポリマー、リン酸カルシウム、セロビオースおよびポリエチレングリコールからなる群から選択される;
(d)上記(c)の生分解性ポリマーは、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−ポリエチレングリコール)、ポリ(スルホブチル−ポリビニルアルコール)−g−(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリエステルアミド、ポリアミノ酸、ポリシアノアクリラート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテルエステル、ポリジオキサノン、ポリアルケン アルキラートおよび生分解性ポリウレタンからなる群から選択される;
(e)微粒子は製薬的に許容される生分解性ポリマーを含む;
(f)上記(e)の生分解性ポリマーは、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−ポリエチレングリコール)、ポリ(スルホブチル−ポリビニルアルコール)−g−(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリエステルアミド、ポリアミノ酸、ポリシアノアクリラート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテルエステル、ポリジオキサノン、ポリアルケン アルキラートおよび生分解性ポリウレタンからなる群から選択される;
(g)微粒子は金属塩を含む;
(h)上記(g)の金属塩は水酸化カルシウムまたは水酸化アルミニウムである;
(i)方法はタンパク質抗原を微粒子の表面に共有結合させる工程をさらに含む;
(j)微粒子は免疫刺激分子をさらに含む;
(k)上記(j)の免疫刺激分子は液性応答の増強を生じさせる分子である;
(l)上記(k)の免疫刺激分子は、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10およびIL−13である請求項17に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法によって取得されるコンフォメーションに関する変種を含む医薬組成物。
【請求項21】
コンフォメーションに関する変種が、非中和抗体よりも高い親和性で中和抗体と結合するタンパク質抗原である請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
コンフォメーションに関する変種の構造が安定化されている請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項23】
コンフォメーションに関する変種のタンパク質抗原がインビトロにおける血清中の中和活性を部分的に排除または排除することが可能である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項24】
さらに微粒子を含む請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項25】
(a)微粒子は、タンパク質抗原と同一の一次アミノ酸配列を含む少なくとも1タンパク質分子を含むコアを含む;
(b)微粒子は、95%より高い、タンパク質抗原とのアミノ酸配列同一性を有する少なくとも1タンパク質分子からなるタンパク質コアを含む;
(c)上記(a)のタンパク質コアは、インビボにおいて放出可能に、製薬的に許容されるコーティング剤によって包まれている;
(d)上記(c)のコーティング剤は、生分解性ポリマー、リン酸カルシウム、セロビオースおよびポリエチレングリコールからなる群から選択される;
(e)上記(d)の生分解性ポリマーは、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−ポリエチレングリコール)、ポリ(スルホブチル−ポリビニルアルコール)−g−(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリエステルアミド、ポリアミノ酸、ポリシアノアクリラート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテルエステル、ポリジオキサノン、ポリアルケン アルキラートおよび生分解性ポリウレタンからなる群から選択される;
(f)微粒子は製薬的に許容される生分解性ポリマーを含む;
(g)上記(f)の生分解性ポリマーは、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−ポリエチレングリコール)、ポリ(スルホブチル−ポリビニルアルコール)−g−(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリエステルアミド、ポリアミノ酸、ポリシアノアクリラート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテルエステル、ポリジオキサノン、ポリアルケン アルキラートおよび生分解性ポリウレタンからなる群から選択される;
(h)微粒子は金属塩を含む;
(i)上記(h)の金属塩は水酸化カルシウムまたは水酸化アルミニウムである;
(j)タンパク質抗原は微粒子の表面に共有結合している請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
組成物が、さらに免疫刺激分子を含む請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項27】
免疫刺激分子が、液性応答の増強を生じさせる分子である請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
免疫刺激分子が、IL−4、IL−5、IL−10およびIL−13である請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
a)病原体に対する被検者の免疫化において免疫応答を生じさせるのに適する;
b)さらに第二のタンパク質抗原を含む;
c)さらにアジュバントを含む;あるいは
d)コンフォメーションに関する変種が由来した病原体に対して被検者を部分的に、あるいは完全に免疫化するのに適する請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項30】
病原体が、
a)ウイルス;
b)細菌;または
c)真菌である請求項29に記載の医薬組成物。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−524609(P2007−524609A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509846(P2006−509846)
【出願日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/010943
【国際公開番号】WO2004/091491
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(505036065)トランスフォーム・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】TRANSFORM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】