説明

コンベヤベルトのモニタリングシステム

【課題】摩耗が進行した状態でもコンベヤベルトの物理的状態の変化を精度よく検出することができるとともに、摩耗限界まで物理的状態の変化を正確に検出できるコンベヤベルトのモニタリングシステムを提供する。
【解決手段】スチールコード1Bを埋設したコンベヤベルト1内に、その進行方向と厚さ方向との両方に対して傾斜する摩耗検知用磁石11と、中心が傾斜ゴム磁石11の基端に対向する位置に配設された平板磁石12とを埋設するとともに、摩耗検知用磁石11から所定距離離隔して基準磁石14をスチールコード1Bに近接して配置し、コンベヤベルト1の裏面1b側に配置された磁気センサ13と、表面1a側に配置された磁気センサ15にて、基準磁石14からの磁界変化のピークと摩耗検知用磁石11からの磁界変化のピークとを検出し、2つのピークの時間間隔から、コンベヤベルト1の摩耗状態を検出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルトの摩耗状態を非接触にて検出するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
大型のコンベヤベルトは、天然資源の採掘現場等、人が近づけるように整備されていない現場で用いられることが多く、保守点検整備が十分行われていない状況にある。このような現場においては、例えば、コンベヤベルトの表面が搬送物により摩耗し、突然、コンベヤベルトが切断してしまい、作業の中断を余儀なくされることがあり、この場合、その復旧に多大の時間と費用とを要するという問題があった。
【0003】
そのため、前もって事故の予兆を検出する方法として、図9に示すように、表面層50aと裏面層50bとの間に、帆布等からなる補強層51を挟んで、多層状に形成したコンベヤベルト50の表面層50a側に、表面を露出させて埋設されたゴム磁石52からの磁界を、磁気センサ53で検出し、コンベヤベルト50の摩耗の進行に伴うゴム磁石52の体積減少により磁力が変化することを利用して、検出された磁力の大きさからコンベヤベルトの摩耗状態を検出する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−284150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている方法では、コンベヤベルトにゴム磁石を埋設するという簡単な構成で、コンベヤベルトの物理状態の変化を検出することができるものの、輸送物の搬送によりコンベヤベルトの摩耗が進行すると、埋設したゴム磁石も削れて体積が小さくなるため、ゴム磁石の発生する磁界が小さくなる。そのため、ゴム磁石の磁力を測定する磁気センサからの信号も小さくなって正確な解析ができなくなり、コンベヤベルトの物理状態の検出精度が低下してしまうとともに、摩耗限界まで物理的状態の変化を正確に検出できないという欠点がある。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、摩耗が進行した状態でもコンベヤベルトの物理的状態の変化を精度よく検出できるとともに、摩耗限界まで物理的状態の変化を正確に検出できるコンベヤベルトのモニタリングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の請求項1に記載の発明は、ゴム磁石をコンベヤベルト内部に埋設し、前記ゴム磁石が通過する位置に配設された磁気センサにより前記ゴム磁石の磁力を測定して、検出手段により前記コンベヤベルトの物理状態の変化を検出するコンベヤベルトのモニタリングシステムにおいて、前記コンベヤベルトは、内部に、補強材としてのスチールコードが埋設され、前記ゴム磁石は、前記スチールコードに近接して配置されていることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステムであって、前記ゴム磁石と前記スチールコードとの間隔が0〜5mmであることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステムであって、前記ゴム磁石は、前記コンベヤベルトの走行方向の位置を特定するための基準磁石であり、前記コンベヤベルトの厚さ方向と垂直な面内に延長しかつ厚さ方向に磁化されて配置されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステムであって、前記基準磁石は、前記コンベヤベルトの摩耗状態を検知するための摩耗検知用磁石から所定距離離隔して配置されていることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステムであって、前記摩耗検知用磁石は、前記コンベヤベルトの表面側にコンベヤベルトの進行方向と厚さ方向との両方に傾斜して埋設される、厚さ方向に磁化されたゴム磁石から成り、ゴム磁石の一端をコンベヤベルトの表面側に露呈させ、他端を前記スチールコードに近接させて配置され、前記摩耗検知用磁石が通過する位置には表面側磁気センサが配設されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステムであって、前記基準磁石は、前記コンベヤベルトの裏面側に配置され、前記基準磁石が通過する位置には裏面側磁気センサが配設されていることを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステムであって、前記検出手段は、前記裏面側磁気センサで検出された前記基準磁石からの磁界のピークと、前記表面側磁気センサで検出された前記摩耗検知用磁石からの磁界のピークとの時間間隔を算出するピーク間隔算出部と、この算出されたピーク間隔から、前記コンベヤベルトの摩耗状態を検出する摩耗状態検出部とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステムであって、前記摩耗検知用磁石の裏面側で、かつ、前記摩耗検知用磁石の他端に対向する位置に、前記コンベヤベルトの厚さ方向と垂直な面内に延長しかつ厚さ方向に磁化された平板磁石を前記スチールコードに近接して配置するとともに、前記検出手段は、前記裏面側磁気センサで検出された前記基準磁石からの磁界のピークと、前記表面側磁気センサで検出された前記摩耗検知用磁石からの磁界と前記裏面側磁気センサで検出された前記平板磁石からの磁界との合成された磁界のピークとの時間間隔から、前記コンベヤベルトの摩耗状態を検出することを特徴とするものである。
【0010】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステムであって、コンベヤベルトの摩耗量が0のときの前記基準磁石からの磁界のピークと前記摩耗検知用磁石からの磁界のピークとの時間間隔をL0、前記コンベヤベルトが摩耗限界値まで摩耗したときの摩耗量をT、前記基準磁石からの磁界のピークと前記平板磁石からの磁界のピークとの時間間隔をLs、前記ピーク間隔算出部で算出されたピーク間隔をLとするとき、当該コンベヤベルトの摩耗量ΔTを、ΔT=T×(L0−L)/(L0−Ls)により算出することを特徴とするものである。
【0011】
請求項10に記載の発明は、請求項4または5に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステムであって、前記基準磁石は、前記コンベヤベルトの表面側に配置されていることを特徴とするものである。
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステムであって、前記検出手段は、前記表面側磁気センサで検出された前記基準磁石からの磁界のピークと前記摩耗検知用磁石からの磁界のピークとの時間間隔を算出するピーク間隔算出部と、この算出されたピーク間隔から、前記コンベヤベルトの摩耗状態を検出する摩耗状態検出部とを備えることを特徴とするものである。
請求項12に記載の発明は、請求項4〜請求項11のいずれかに記載のコンベヤベルトのモニタリングシステムであって、前記摩耗検知用磁石を、磁性粉をマトリックス内に混入して磁化させたボンド磁石としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コンベヤベルトの内部に補強材として埋設されたスチールコードに、ゴム磁石を近接して配置し、ゴム磁石が通過する位置に配設された磁気センサによりゴム磁石の磁力を測定して、コンベヤベルトの物理状態の変化を検出するようにしたので、スチールコードが継鉄を兼ねることで磁力の発散を防ぐため、ゴム磁石の磁力が増加する。そのため、コンベヤベルトの物理的状態の変化を精度よく検出できる。また、ゴム磁石がスチールコードに近接して配置されるので、摩耗による影響を受けず、摩耗が進行した状態でもコンベヤベルトの物理的状態の変化を精度よく検出できる。さらに、磁力が従来と同等の大きさでも問題がなければ、ゴム磁石を小型化することができる。
【0013】
また、ゴム磁石を、コンベヤベルトの摩耗を検知するための摩耗検知用磁石から所定距離離隔して配置される基準磁石とすれば、基準磁石の磁力が増加することで、基準点を確実に検知することが可能となり、物理的状態の検知精度を向上させることができる。
また、基準磁石を、コンベヤベルトの裏面側に配置すれば、基準磁石が摩耗せず、摩耗限界まで基準点を確実に検知することが可能となる。
また、基準磁石を、摩耗検知用磁石と同じ側のコンベヤベルトの表面側に配置すれば、磁気センサを表面側だけに配設すればよいので、簡単な構成でコンベヤベルトの摩耗量を正確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。本発明は、コンベヤベルトの内部に補強材としてスチールコードを埋設し、埋設されたスチールコードにゴム磁石を近接して配置し、ゴム磁石が通過する位置に配設された磁気センサによりゴム磁石の磁力を測定して、コンベヤベルトの物理状態の変化を検出するコンベヤベルトのモニタリングシステムである。
【0015】
図1は、コンベヤベルトの摩耗状態を検出する本発明のコンベヤベルトのモニタリングシステムの第1の実施形態を示す概略構成図であり、図2は、第1の実施形態によるコンベヤベルトのゴム磁石の埋設部を示す横断側面図であり、図3は、コンベヤベルトの表面側(搬送面側)から見たコンベヤベルト1の平面図である。
コンベヤベルト1は、ゴム部材1Aと、コンベヤベルト1の裏面1b側に介挿された、補強材としてのスチールコード1Bとを備えている。
モニタリングシステム10は、プーリ2に巻掛けられたコンベヤベルト1の表面1aとスチールコード1Bとの間に埋設された摩耗検知用磁石11と、スチールコード1Bの裏面側に埋設された平板磁石12と、摩耗検知用磁石11からコンベヤベルト1の進行方向に所定距離離隔してスチールコード1Bの裏面側に埋設された基準磁石14と、コンベヤベルト1の表面1aから所定距離離隔して配設された磁気センサ15と、コンベヤベルト1を間に介して磁気センサ15と対向する位置に、コンベヤベルト1の裏面1bから所定距離離隔して配設された磁気センサ13と、磁気センサ13および磁気センサ15で検出した磁界変化に基づいて、コンベヤベルト1の摩耗状態を検出する摩耗状態検出手段16とを備えている。
【0016】
平板磁石12と基準磁石14は、スチールコード1Bの裏面側に、スチールコード1Bに近接して配置されており、また、摩耗検知用磁石11の先端11aは、コンベヤベルト1の表面1a側に露呈しており、基端11bは、スチールコード1Bに近接して配置されている。平板磁石12、基準磁石14および摩耗検知用磁石11(基端11b)と、スチールコード1Bとの間隔は、0〜5mmであることが好ましい。
このように、磁石11、12、14をスチールコード1Bに近接して配置すると、スチールコード1Bが継鉄を兼ねることで磁力の発散を防ぐため、磁力が増加する。
【0017】
摩耗状態検出手段16は、詳細には、磁気センサ13で検出した基準磁石14からの磁界のピークと、磁気センサ15で検出した摩耗検知用磁石11からの磁界のピークとの時間間隔を算出するピーク間隔算出部16aと、ピーク間隔算出部16aで算出されたピーク間隔からコンベヤベルト1の摩耗量を検出する摩耗量検出部16bとを有している。
【0018】
摩耗検知用磁石11は、磁性粉をマトリックス内に分散混入して成形したボンド磁石をその厚さ方向に磁化したシート状の磁石で、コンベヤベルト1内に、コンベヤベルト1の進行方向と厚さ方向との両方に対して傾斜して埋設されている。
一方、平板磁石12はコンベヤベルト1の厚さ方向と垂直な面内に延長するシート状の磁石で、摩耗検知用磁石11と同様に、厚さ方向に磁化されている。本例では、平板磁石12の中心が、摩耗検知用磁石11の基端11bに対向する位置に位置するように平板磁石12を配置している。
基準磁石14も、平板磁石12と同様に、コンベヤベルト1の厚さ方向と垂直な面内に延長するシート状の磁石で、厚さ方向に磁化されており、これらの磁石11、12、14は、図3に示すように、コンベヤベルト1の幅方向全域にわたって埋設されている。
摩耗検知用磁石11に用いられる磁性粉としては、フェライトが一般的であるが、ネオジウム鉄ボロンやサマリウム鉄窒素などの希土類磁石やアルニコ磁石などを用いることにより、強い磁界を発生させることができる。なお、平板磁石12および基準磁石14としても、摩耗検知用磁石11と同様のゴム磁石を用いることが好ましい。
【0019】
磁気センサ13、15としては、ガウスメータまたはループコイル等の公知の磁気検出手段を用いることができる。そして、検出感度を上げるためには、磁気センサ13、15をコンベヤベルト1にできるだけ近い位置に配置することが好ましい。
磁気センサ13、15の取付位置としては、図1に示すように、コンベヤベルト1のリターン側に配置することが好ましい。これにより、コンベヤベルト1で搬送される搬送物の影響を受けずに各磁石11、12、14からの磁界を検出することができる。また、磁気センサ13、15の近くに、コンベヤベルト1の幅方向の位置を規制する幅方向ガイド4を設けるとともに、コンベヤベルト1と磁気センサ15の位置関係を一定に保つための厚さ方向ガイド5を設けるようにすれば、各磁石11、12、14からの磁界を精度よく検出することができる。
【0020】
図4は、ゴム磁石シート単体のときと、コンベヤベルトの下面側にスチールコード(STコード)に近接してゴム磁石シートを配置したときと、コンベヤベルトの上面側にスチールコード(STコード)に近接してゴム磁石シートを配置したときのゴム磁石シートの磁力を、コンベヤベルトの上面側からガウスメータで測定したとき実験結果を示す図である。なお、ゴム磁石シートのサイズを50×50×1.5mmとし、コンベヤベルトの厚さを26.3mmとした。また、ゴム磁石シートとガウスメータとの距離を81.3mmとした。この図から、ゴム磁石シート単体のときと比較して、コンベヤベルトの下面側にゴム磁石シートを配置したときに磁力が減少し、コンベヤベルトの上面側にゴム磁石シートを配置したときに磁力が増加することが分かる。これは、ゴム磁石シートをスチールコードに近接して配置すると、スチールコードが継鉄を兼ねることで磁力の発散を防ぐため、ゴム磁石シートの磁力が、スチールコードの一方の面側で減少し、他方の面側で増加するためである。
【0021】
次に、本発明のモニタリングシステム10を用いてコンベヤベルト1の摩耗状態を検出する方法について説明する。
図5は、磁気センサ13の検出出力と磁気センサ15の検出出力の時間変化を示す図で、コンベヤベルト1が図2の矢印の方向へ移動すると、はじめに、磁気センサ13に基準磁石14からの磁界が検出される。この検出磁界は、基準磁石14と平板磁石12が磁気センサ13に近づくと、磁気センサ13の検出磁界は増加し、基準磁石14と平板磁石12の中心が磁気センサ13に対向する位置にきた時にそれぞれピークとなり、その後減少する。その後、摩耗検知用磁石11の先端11aが磁気センサ15に近づくにつれて増加し、先端11aが磁気センサ15に対向する位置を通過した直後にピークとなり、先端11aが磁気センサ15から離れるにつれて減少する。このように、コンベヤベルト1の移動に伴って、磁気センサ13および磁気センサ15は、各磁石11、12、14からの磁界のピークを検出する。
【0022】
コンベヤベルト1の摩耗は、搬送に使用される表面1a側から進行するため、摩耗検知用磁石11はその先端11a側から削られていく。
図5の一点鎖線で示す波形は、コンベヤベルト1の摩耗量が0である初期状態における磁気センサ15の検出出力の時間変化を示すカーブである。その後、摩耗が進行して、コンベヤベルト1の表面が、図2の一点鎖線で示す位置まで後退したとすると、摩耗検知用磁石11の体積が減少するとともに、摩耗検知用磁石11の先端11aがコンベヤベルト1の進行方向側に前進する。したがって、摩耗が進行した状態の磁気センサ15の検出出力は、同図の実線で示すように、減少するとともに、そのピーク位置が基準磁石14からの磁界のピーク側にずれていく。
【0023】
図5の破線で示す波形は、磁気センサ13の検出出力の時間変化を示すカーブである。摩耗が更に進展してコンベヤベルト1が摩耗限界値まで摩耗したとき、すなわち、摩耗検知用磁石11がコンベヤベルト1の厚さ方向に所定値だけ削り取られると、平板磁石12からの磁界の方が大きくなるので、平板磁石12と基準磁石14からの2つの磁界のピークだけが検出されるようになる。
したがって、基準磁石14からの磁界のピークと摩耗検知用磁石11からの磁界のピークとの時間間隔と、基準磁石14からの磁界のピークと平板磁石12からの磁界のピークとの時間間隔を算出することにより、コンベヤベルト1の摩耗量を検出することができる。
【0024】
具体的には、コンベヤベルト1の摩耗量が0のときの基準磁石14からの磁界のピークと摩耗検知用磁石11からの磁界のピークとの時間間隔をL0、コンベヤベルト1が摩耗限界値まで摩耗したときの摩耗量をT、基準磁石14からの磁界のピークと平板磁石12からの磁界のピークとの時間間隔をLs、ピーク間隔算出部16aにおいて算出されたピーク間隔をL、コンベヤベルト1の摩耗量をΔTとすると、摩耗量ΔTは、以下の式(1)を用いて算出することができる。
ΔT=T×(L0−L)/(L0−Ls)‥‥(1)
このように、コンベヤベルト1に埋設された磁石11、12、14からの磁界を、磁気センサ13および磁気センサ15より測定することにより、コンベヤベルト1の摩耗量ΔTを自動的に検出することができる。
【0025】
なお、モニタリングシステム10で検出したコンベヤベルト1の摩耗量ΔTのデータは、図1に示すように、コンベヤベルト1の制駆動を制御するベルトコンベヤ制御装置20に送られる。ベルトコンベヤ制御装置20では、摩耗量ΔTが所定の閾値を超えた場合に警報を発したり、ベルトコンベヤを停止させるなどの処理を行う。
【0026】
上述したように、第1の実施形態では、コンベヤベルトの内部に補強材としてスチールコードを埋設し、埋設されたスチールコードに、ゴム磁石を近接して配置して、コンベヤベルトの物理状態の変化を検出するようにしたので、スチールコードが継鉄を兼ねることで磁力の発散を防ぐことから、ゴム磁石の磁力が増加するため、コンベヤベルトの物理的状態の変化を精度よく検出できる。また、ゴム磁石がスチールコードに近接して配置されるので、摩耗による影響を受けず、摩耗が進行した状態でもコンベヤベルトの物理的状態の変化を精度よく検出できる。さらに、磁力が従来と同等の大きさでも問題がなければ、ゴム磁石を小型化することができる。
また、ゴム磁石を、コンベヤベルトの摩耗を検知するための摩耗検知用磁石から所定距離離隔して配置される基準磁石とすれば、基準磁石の磁力が増加することで、基準点を確実に検知することが可能となり、物理的状態の検知精度を向上させることができる。
また、基準磁石を、コンベヤベルトの裏面側に配置すれば、基準磁石が摩耗せず、摩耗限界まで基準点を確実に検知することが可能となる。
【0027】
また、コンベヤベルト1内に、その進行方向と厚さ方向との両方に対して傾斜する摩耗検知用磁石11と、コンベヤベルト1の厚さ方向と垂直な面内に延長し、その中心が摩耗検知用磁石11の基端11bに対向する位置に配設された平板磁石12を埋設するとともに、摩耗検知用磁石11から所定距離離隔してコンベヤベルト1の厚さ方向と垂直な面内に延長する基準磁石14を埋設し、コンベヤベルト1の裏面側に配設された磁気センサ13にて、平板磁石12および基準磁石14からの磁界変化のピークを検出し、コンベヤベルト1の表面側に配置された磁気センサ15にて、摩耗検知用磁石11からの磁界変化のピークを検出し、2つのピークの時間間隔から、コンベヤベルト1の摩耗状態を検出するようにしたので、簡単な構成で、コンベヤベルト1の摩耗量を正確に検出することができる。また、平板磁石12および基準磁石14からの磁界は変化しないので、摩耗が進行した状態でもコンベヤベルト1の摩耗状態を確実に検出することができる。
また、上述した実施形態では、ピーク値そのものではなく、ピークの時間間隔を用いてコンベヤベルト1の摩耗状態を検出しているので、コンベヤベルト1の振動等によりピーク値が変動してもコンベヤベルト1の摩耗状態を精度よく検出することができる。
【0028】
なお、上述した第1の実施形態では、スチールコード1Bの裏面側に平板磁石12を埋設した構成としたが、平板磁石12を省略しても、コンベヤベルト1の摩耗状態を検出することは可能である。この場合には、コンベヤベルトの摩耗量ΔTは、後述する式(2)を用いて算出することができる。
【0029】
次に、本発明のコンベヤベルトのモニタリングシステムの第2の実施形態について説明する。図6は、本発明のコンベヤベルトのモニタリングシステムの第2の実施形態を示す概略構成図であり、図7は、第2の実施形態によるコンベヤベルトのゴム磁石の埋設部を示す横断側面図である。
コンベヤベルト1は、ゴム部材1Aと、コンベヤベルト1の裏面1b側に介挿された、補強材としてのスチールコード1Bとを備えている。
モニタリングシステム30は、プーリ2に巻掛けられたコンベヤベルト1の表面1aとスチールコード1Bとの間に埋設された摩耗検知用磁石11と、摩耗検知用磁石11からコンベヤベルト1の進行方向に所定距離離隔してスチールコード1Bの表面側に埋設された基準磁石14と、コンベヤベルト1の表面1aから所定距離離隔して配設された磁気センサ15と、磁気センサ15で検出した磁界変化に基づいて、コンベヤベルト1の摩耗状態を検出する摩耗状態検出手段16とを備えている。
【0030】
基準磁石14は、スチールコード1Bの表面側に、スチールコード1Bに近接して配置されており、また、摩耗検知用磁石11の先端11aは、コンベヤベルト1の表面1a側に露呈しており、基端11bは、スチールコード1Bに近接して配置されている。基準磁石14および摩耗検知用磁石11(基端11b)と、スチールコード1Bとの間隔は、0〜5mmであることが好ましい。
このように、磁石11、14をスチールコード1Bに近接して配置すると、スチールコード1Bが継鉄を兼ねることで磁力の発散を防ぐため、磁力が増加する。
【0031】
摩耗状態検出手段16は、詳細には、磁気センサ15で検出した基準磁石14からの磁界のピークと摩耗検知用磁石11からの磁界のピークとの時間間隔を算出するピーク間隔算出部16aと、ピーク間隔算出部16aで算出されたピーク間隔からコンベヤベルト1の摩耗量を検出する摩耗量検出部16bとを有している。
【0032】
摩耗検知用磁石11は、磁性粉をマトリックス内に分散混入して成形したボンド磁石をその厚さ方向に磁化したシート状の磁石で、コンベヤベルト1内に、コンベヤベルト1の進行方向と厚さ方向との両方に対して傾斜して埋設されている。
一方、基準磁石14は、コンベヤベルト1の厚さ方向と垂直な面内に延長するシート状の磁石で、摩耗検知用磁石11と同様に、厚さ方向に磁化されている。これらの磁石11、14は、コンベヤベルト1の幅方向全域にわたって埋設されている。
摩耗検知用磁石11に用いられる磁性粉としては、フェライトが一般的であるが、ネオジウム鉄ボロンやサマリウム鉄窒素などの希土類磁石やアルニコ磁石などを用いることにより、強い磁界を発生させることができる。なお、基準磁石14としても、摩耗検知用磁石11と同様のゴム磁石を用いることが好ましい。
【0033】
磁気センサ15としては、ガウスメータまたはループコイル等の公知の磁気検出手段を用いることができる。そして、検出感度を上げるためには、磁気センサ15をコンベヤベルト1にできるだけ近い位置に配置することが好ましい。
磁気センサ15の取付位置としては、図6に示すように、コンベヤベルト1のリターン側に配置することが好ましい。これにより、コンベヤベルト1で搬送される搬送物の影響を受けずに各磁石11、14からの磁界を検出することができる。また、磁気センサ15の近くに、コンベヤベルト1の幅方向の位置を規制する幅方向ガイド4を設けるとともに、コンベヤベルト1と磁気センサ15の位置関係を一定に保つための厚さ方向ガイド5を設けるようにすれば、各磁石11、14からの磁界を精度よく検出することができる。
【0034】
次に、本発明のモニタリングシステム30を用いてコンベヤベルト1の摩耗状態を検出する方法について説明する。
図8は、磁気センサ15の検出出力の時間変化を示す図で、コンベヤベルト1が図7の矢印の方向へ移動すると、磁気センサ15には、はじめに、基準磁石14からの磁界が検出される。この検出磁界は、基準磁石14が磁気センサ15に近づくと、磁気センサ15の検出磁界は増加し、基準磁石14の中心が磁気センサ15に対向する位置にきた時にピークとなり、その後減少する。その後、基準磁石14から所定距離離隔して配置された摩耗検知用磁石11の先端11aが磁気センサ15に近づくにつれて増加し、先端11aが磁気センサ15に対向する位置を通過した直後にピークとなり、先端11aが磁気センサ15から離れるにつれて減少する。このように、コンベヤベルト1の移動に伴って、磁気センサ15は、2つのピークを検出する。
【0035】
コンベヤベルト1の摩耗は、搬送に使用される表面1a側から進行するため、摩耗検知用磁石11はその先端11a側から削られていく。
図8の一点鎖線で示す波形は、コンベヤベルト1の摩耗量が0である初期状態における磁気センサ15の検出出力の時間変化を示すカーブである。その後、摩耗が進行して、コンベヤベルト1の表面が、図7の一点鎖線で示す位置まで後退したとすると、摩耗検知用磁石11の体積が減少するとともに、摩耗検知用磁石11の先端11aがコンベヤベルト1の進行方向側に前進する。したがって、摩耗が進行した状態の磁気センサ15の検出出力は、同図の実線で示すように、減少するとともに、そのピーク位置が基準磁石14からの磁界のピーク側にずれていく。
したがって、磁気センサ15の検出する波形の2つのピーク間の時間間隔を算出することにより、コンベヤベルト1の摩耗量を検出することができる。
【0036】
具体的には、コンベヤベルト1の摩耗量が0のときの基準磁石14からの磁界のピークと摩耗検知用磁石11からの磁界のピークとの時間間隔をL0、コンベヤベルト1の摩耗量が0のときの、スチールコード1Bからベルト表面1aまでの厚さをT、ピーク間隔算出部16aにおいて算出されたピーク間隔をL、コンベヤベルト1の摩耗量をΔTとすると、摩耗量ΔTは、以下の式(2)を用いて算出することができる。
ΔT=T×(L0−L)/L0‥‥(2)
このように、コンベヤベルト1に埋設された磁石11、14からの磁界を、磁気センサ15より測定することにより、コンベヤベルト1の摩耗量ΔTを自動的に検出することができる。
【0037】
なお、モニタリングシステム30で検出したコンベヤベルト1の摩耗量ΔTのデータは、図6に示すように、コンベヤベルト1の制駆動を制御するベルトコンベヤ制御装置20に送られる。ベルトコンベヤ制御装置20では、摩耗量ΔTが所定の閾値を超えた場合に警報を発したり、ベルトコンベヤを停止させるなどの処理を行う。
【0038】
上述したように、第2の実施形態では、基準磁石を、摩耗検知用磁石と同じ側に配置しているので、磁気センサを一方の表面側だけに配設すればよいので、第1の実施形態よりも簡単な構成でコンベヤベルトの摩耗量を正確に検出することができる。
【0039】
なお、上述した第1および第2の実施形態では、基準磁石14からの磁界変化のピークと摩耗検知用磁石11からの磁界変化のピークとの時間間隔から、コンベヤベルト1の摩耗状態を検出するようにしたが、基準磁石14からの磁界のピーク値と摩耗検知用磁石11からの磁界のピーク値との比からコンベヤベルト1の摩耗状態を検出することも可能である。ピーク値はコンベヤベルト1の振動等により同じ摩耗状態でもその値が上下するが、摩耗検知用磁石11と基準磁石14とは近接して埋設されているので、上述した実施形態と同様に、コンベヤベルト1の摩耗状態を精度よく検出することができる。
また、基準磁石14の位置を摩耗検知用磁石11のベルト進行方向後側に配置してもよい。この場合には、摩耗が進行するとピーク間隔が開くが、摩耗量ΔTの計算式については上記式(1)および式(2)をそのまま用いることができる。
【0040】
以上、本発明を、コンベヤベルトの摩耗状態を検出するためのコンベヤベルトのモニタリングシステムに適用した実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、ゴム磁石をコンベヤベルトに埋設し、このゴム磁石が通過する位置に配設された磁気センサにより、ゴム磁石の磁力の変化を測定することにより、コンベヤベルトの物理状態の変化を検出するようにしたあらゆるコンベヤベルトのモニタリングシステムに適用することができる。
例えば、コンベヤベルトの伸びを検出するためのコンベヤベルトのモニタリングシステムに適用することができる。すなわち、複数のゴム磁石をコンベヤベルトの走行方向に沿って配設し、前後のゴム磁石の距離を検出することにより、コンベヤべルトの伸びを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態によるコンベヤベルトのモニタリングシステムの概要を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態によるコンベヤベルトのゴム磁石の埋設部を示す横断側面図である。
【図3】コンベヤベルトの表面側から見たコンベヤベルトの平面図である。
【図4】ゴム磁石シートの磁力をコンベヤベルトの上面側からガウスメータで測定したとき実験結果を示す図である。
【図5】磁気センサの検出出力の一例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態によるコンベヤベルトのモニタリングシステムの概要を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態によるコンベヤベルトのゴム磁石の埋設部を示す横断側面図である。
【図8】磁気センサの検出出力の一例を示す図である。
【図9】従来のコンベヤベルトの摩耗検出方法を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 コンベヤベルト
1a ベルト表面
1b ベルト裏面
1A ゴム部材
1B スチールコード
2 プーリ
4 幅方向ガイド
5 厚さ方向ガイド
10,30 モニタリングシステム
11 摩耗検知用磁石
11a 摩耗検知用磁石の先端
11b 摩耗検知用磁石の基端
12 平板磁石
13,15 磁気センサ
14 基準磁石
16 摩耗状態検出手段
16a ピーク間隔算出部
16b 摩耗状態検出部
20 ベルトコンベヤ制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム磁石をコンベヤベルト内部に埋設し、前記ゴム磁石が通過する位置に配設された磁気センサにより前記ゴム磁石の磁力を測定して、検出手段により前記コンベヤベルトの物理状態の変化を検出するコンベヤベルトのモニタリングシステムにおいて、
前記コンベヤベルトは、内部に、補強材としてのスチールコードが埋設され、
前記ゴム磁石は、前記スチールコードに近接して配置されていることを特徴とするコンベヤベルトのモニタリングシステム。
【請求項2】
前記ゴム磁石と前記スチールコードとの間隔が0〜5mmであることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステム。
【請求項3】
前記ゴム磁石は、前記コンベヤベルトの走行方向の位置を特定するための基準磁石であり、前記コンベヤベルトの厚さ方向と垂直な面内に延長しかつ厚さ方向に磁化されて配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステム。
【請求項4】
前記基準磁石は、前記コンベヤベルトの摩耗状態を検知するための摩耗検知用磁石から所定距離離隔して配置されていることを特徴とする請求項3に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステム。
【請求項5】
前記摩耗検知用磁石は、前記コンベヤベルトの表面側にコンベヤベルトの進行方向と厚さ方向との両方に傾斜して埋設される、厚さ方向に磁化されたゴム磁石から成り、ゴム磁石の一端をコンベヤベルトの表面側に露呈させ、他端を前記スチールコードに近接させて配置され、前記摩耗検知用磁石が通過する位置には表面側磁気センサが配設されていることを特徴とする請求項4に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステム。
【請求項6】
前記基準磁石は、前記コンベヤベルトの裏面側に配置され、前記基準磁石が通過する位置には裏面側磁気センサが配設されていることを特徴とする請求項4または5に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステム。
【請求項7】
前記検出手段は、前記裏面側磁気センサで検出された前記基準磁石からの磁界のピークと、前記表面側磁気センサで検出された前記摩耗検知用磁石からの磁界のピークとの時間間隔を算出するピーク間隔算出部と、この算出されたピーク間隔から、前記コンベヤベルトの摩耗状態を検出する摩耗状態検出部とを備えることを特徴とする請求項6に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステム。
【請求項8】
前記摩耗検知用磁石の裏面側で、かつ、前記摩耗検知用磁石の他端に対向する位置に、前記コンベヤベルトの厚さ方向と垂直な面内に延長しかつ厚さ方向に磁化された平板磁石を前記スチールコードに近接して配置するとともに、前記検出手段は、前記裏面側磁気センサで検出された前記基準磁石からの磁界のピークと、前記表面側磁気センサで検出された前記摩耗検知用磁石からの磁界と前記裏面側磁気センサで検出された前記平板磁石からの磁界との合成された磁界のピークとの時間間隔から、前記コンベヤベルトの摩耗状態を検出することを特徴とする請求項6に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステム。
【請求項9】
コンベヤベルトの摩耗量が0のときの前記基準磁石からの磁界のピークと前記摩耗検知用磁石からの磁界のピークとの時間間隔をL0、前記コンベヤベルトが摩耗限界値まで摩耗したときの摩耗量をT、前記基準磁石からの磁界のピークと前記平板磁石からの磁界のピークとの時間間隔をLs、前記ピーク間隔算出部で算出されたピーク間隔をLとするとき、当該コンベヤベルトの摩耗量ΔTを、ΔT=T×(L0−L)/(L0−Ls)により算出することを特徴とする請求項8に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステム。
【請求項10】
前記基準磁石は、前記コンベヤベルトの表面側に配置されていることを特徴とする請求項4または5に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステム。
【請求項11】
前記検出手段は、前記表面側磁気センサで検出された前記基準磁石からの磁界のピークと前記摩耗検知用磁石からの磁界のピークとの時間間隔を算出するピーク間隔算出部と、この算出されたピーク間隔から、前記コンベヤベルトの摩耗状態を検出する摩耗状態検出部とを備えることを特徴とする請求項10に記載のコンベヤベルトのモニタリングシステム。
【請求項12】
前記摩耗検知用磁石を、磁性粉をマトリックス内に混入して磁化させたボンド磁石としたことを特徴とする請求項4〜請求項11のいずれかに記載のコンベヤベルトのモニタリングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−52927(P2010−52927A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221840(P2008−221840)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】