説明

コンベヤベルトの製造方法及びコンベヤベルト

【課題】ベルト幅方向に対して高い曲げ剛性を確保することが可能なコンベヤベルトの製造方法及びコンベヤベルトを提供する。
【解決手段】非交錯の状態で並列したタテ糸11と有機繊維モノフィラメントからなるヨコ糸12とをカラミ糸13で拘束して構成した補強帆布4,5をゴム層に埋設したコンベヤベルトの製造方法である。補強帆布4,5をヒートセット処理する際に、補強帆布4,5の幅方向両端部を保持して補強帆布4,5の幅方向に張力を付与しながらヒートセット処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルトの製造方法及びコンベヤベルトに関し、更に詳しくは、ベルト幅方向に対して高い曲げ剛性を確保することができるコンベヤベルトの製造方法及び該方法により製造されたコンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンベヤベルトは、繊維織物からなる補強帆布をゴム層に埋設してベルト剛性を確保するようにしている。このようなコンベヤベルトにおいて、例えば、急傾斜コンベヤベルトやバケットコンベヤベルトなどでは、運搬物をベルト上に乗せて安定した運搬を行うため、ベルト幅方向の変形を小さくする必要があり、ベルト幅方向に対して高い曲げ剛性が求められている。
【0003】
従来、ベルト幅方向の剛性を高めるため、平織の補強帆布のヨコ糸に高剛性の有機繊維モノフィラメントを使用することが周知である(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、その有機繊維モノフィラメントがもつ高い剛性が補強帆布に十分に生かしきれておらず、改善の余地が大いに残されていた。
【0004】
他方、交錯させることなく並列したタテ糸とヨコ糸とをカラミ糸で拘束して構成した、所謂ストレートワープ織構造の補強帆布を用いたコンベヤベルトが知られている(例えば、特許文献1,2,3参照)。このストレートワープ織構造の補強帆布を使用することにより、ベルト幅方向の剛性を高めることができる。しかしながら、その改善効果が不十分であり、改善の余地が残されている。
【特許文献1】特開平8−324735号公報
【特許文献2】特開平9−183505号公報
【特許文献3】特開2001−19134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ベルト幅方向に対して高い曲げ剛性を確保することが可能なコンベヤベルトの製造方法及びコンベヤベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明のコンベヤベルトの製造方法は、非交錯の状態で並列したタテ糸と有機繊維モノフィラメントからなるヨコ糸とをカラミ糸で拘束して構成した補強帆布をゴム層に埋設したコンベヤベルトの製造方法において、補強帆布をディップ液に浸漬した後ヒートセット処理する際に、幅方向両端部を保持して補強帆布の幅方向に張力を付与しながらヒートセット処理を行うことを特徴とする。
【0007】
本発明のコンベヤベルトは、上記コンベヤベルトの製造方法により製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上述した本発明によれば、補強帆布の幅方向に張力を付与しながらヒートセット処理を行うことにより、ヨコ糸に張力が付与されて伸ばされ、その状態で補強帆布をヒートセットすることができる。そのため、ベルト幅方向に対する曲げ剛性に大きく影響するヨコ糸の湾曲を抑制し、ベルト幅方向に対して高い曲げ剛性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明のコンベヤベルトの製造方法により製造されるコンベヤベルトの一例を示し、このコンベヤベルト1は、上下のカバーゴム層2,3の内側にそれぞれ補強帆布4,5が配置されている。補強帆布4,5の内側にはそれぞれ中間カバーゴム層6,7が配設され、その内側に複数のコア帆布8が中間ゴム層9を介して配置されている。
【0011】
このようにゴム層に埋設された補強帆布4,5は、図2に示すように、ベルト長手方向に実質的に直線状に延在する有機繊維のマルチフィラメントからなる複数のタテ糸11、ベルト幅方向に実質的に直線状に延在する有機繊維のモノフィラメントからなる複数のヨコ糸12を有している。ベルト幅方向に所定の間隔で配置したタテ糸11の上下両側に、それぞれヨコ糸12がベルト長手方向に所定の間隔で配置され、非交錯の状態で並列したタテ糸11とヨコ糸12とが、ベルト長手方向に延在する有機繊維のモノフィラメントからなるカラミ糸13で拘束された、所謂ストレートワープ織構造になっている。図2では、一対のヨコ糸12a,12bを所定の間隔でタテ糸11の上下両側に配置した、所謂ユンコン織構造にしている。
【0012】
有機繊維モノフィラメントからなるヨコ糸12は、タテ糸11より太く(径が大きく)構成され、高い剛性を有している。ヨコ糸12のモノフィラメントに使用する有機繊維としては、従来公知のものが使用でき、例えば、ポリエステルなどを好ましく挙げることができる。タテ糸11のマルチフィラメントに使用する有機繊維も従来公知のものが使用でき、例えば、ナイロン66などを好ましく用いることができる。カラミ糸13に使用する有機繊維も、従来と同様のものが使用でき、ナイロン66などを好ましく例示することができる。
【0013】
コア帆布8は、図3に示すように、有機繊維のマルチフィラメントからなるタテ糸14とヨコ糸15から構成された平織となっている。タテ糸14及びヨコ糸15のマルチフィラメントに使用する有機繊維も従来公知のものが使用され、例えば、タテ糸14にはナイロン66など、ヨコ糸15にはポリエステルなどを好ましく用いることができる。
【0014】
以下、上述したコンベヤベルト1を例にとって、本発明のコンベヤベルトの製造方法を説明する。
【0015】
先ず、各カバーゴム層2,3、補強帆布4,5、中間カバーゴム層6,7、コア帆布8、中間ゴム層9をそれぞれ成形するが、各ゴム層は押出機により長尺の未加硫ゴム層原反として押し出され、巻取りドラムに巻き取られる。
【0016】
補強帆布4,5は、図4に示すように、巻出し装置21から巻き出されて搬送される長尺の補強帆布原反aをアキュムレータ22を介して、ディップ容器23内のディップ液(例えば、RFL液)bに順次浸漬し、浸漬処理する。ディップ液に浸漬した補強帆布原反aは、次いでドライゾーン24で乾燥された後、ヒートセットゾーン25に搬送される。このヒートセットゾーン25では、幅方向の収縮を抑制するために、補強帆布原反aの幅方向両端部を保持して幅方向に張力を付与しながらヒートセット処理を行う。
【0017】
即ち、ディップ液に浸漬した補強帆布原反aは、ドライゾーン24で加熱されるため、ドライゾーン24を通過する際に、幅方向に収縮する。そこで、このヒートセットゾーン25では、その収縮を抑制する制御が行われる。
【0018】
このようなヒートセット処理を行うには、図5に示すように、テンター・マシーン26により行う。このテンター・マシーン26は、搬送方向両側に左右対称に配置された搬送方向前後のプーリ27,28と、このプーリ27,28間に掛け回されたチェーン29、及びチェーン29に所定の間隔で取り付けられた、補強帆布原反aの幅方向端部を保持するクリップ部30を有している。
【0019】
矢印で示すようにプーリ27,28を回転させることで、チェーン29が周回移動し、補強帆布原反aの幅方向端部を保持したクリップ部30を移動できるようにしている。このようにクリップ部30で把持しながら補強帆布原反aを搬送させることで、ベルト長手方向に張力が殆ど掛からず、ベルト幅方向にのみ張力を付与しながらヒートセット処理できるようになっている。
【0020】
ドライゾーン24からヒートセットゾーン25に搬入された、幅収縮した補強帆布原反aは、その幅方向両端部がクリップ部30により保持されながらその幅を所定幅の範囲に伸展するようにしてヒートセットゾーン25を搬送される。このように幅を広げた状態でヒートセット処理することにより、幅収縮した補強帆布原反aを収縮前の状態に近づけ、幅方向の収縮を抑制する。
【0021】
この時、補強帆布原反aを幅方向に広げる量としては、ディップ液に浸漬する前の補強帆布原反に対するヒートセット処理後の補強帆布原反の幅収縮率が1.5%以下となるような量にするのが好ましい。幅収縮率が1.5%を超えると、ベルト幅方向に対して高い曲げ剛性を得ることが難しくなる。好ましくは、幅収縮率を0%以下にするのがよい。
【0022】
ヒートセットゾーン25で適度な熱と張力が付与された補強帆布原反aは、次いでアキュムレータ31を介して巻取り装置32に巻き取られる。巻取り装置32に巻き取られた補強帆布原反aは、不図示のカレンダリング工程でゴムをトッピングした後、再び巻取り装置に巻き取られて収容される。
【0023】
コア帆布8は、従来と同様にして、ディップ液への浸漬〜ヒートセット処理が行われる。即ち、図6に示すように、巻出し装置33から巻き出されて搬送される長尺のコア帆布原反xをアキュムレータ34を介して、ディップ容器35内のディップ液bに順次浸漬する。ディップ液に浸漬したコア帆布原反xは、次いでドライゾーン36で乾燥された後、ヒートセットゾーン37で通常のヒートセット処理(熱とタテ糸に張力を付与)され、続いてアキュムレータ38を介して巻取り装置39に巻き取られる。巻取り装置39に巻き取られたコア帆布原反xは、不図示のカレンダリング工程でゴムをトッピングした後、再び巻取り装置に巻き取られて収容される。
【0024】
以下、従来と同様にして、上記のように成形された各原反を巻取り装置からそれぞれ巻出して積層した後、加硫することにより図1に示す構成を有する無端状に接合する前の状態のコンベヤベルト1を得ることができる。
【0025】
本発明者によれば、従来の問題点について鋭意検討した結果、以下のことを知見した。即ち、ヨコ糸に高剛性の有機繊維モノフィラメントを使用した平織の補強帆布は、ドライゾーンでの乾燥時及びヒートセット処理時に補強帆布原反の搬送によりタテ糸に掛かる張力がヨコ糸を湾曲させるためヨコ糸が波状になり、それが高剛性の有機繊維モノフィラメントのもつ高い剛性を生かしきれない原因になっていた。
【0026】
他方、ストレートワープ織構造の補強帆布においても、ドライゾーンでの乾燥時及びヒートセット処理時にカラミ糸に掛かる張力がヨコ糸を湾曲させるため、ヨコ糸が波状になっていた。
【0027】
そこで、本発明では、補強帆布4,5の原反aの幅方向両端部を保持して幅方向に張力を付与しながらヒートセット処理を行うようにしたものである。これにより、ドライゾーン24での乾燥時に湾曲したヨコ糸12に張力が付与されて伸ばされ、その状態でヒートセットされるため、ヨコ糸12の湾曲を抑制することができ、ベルト幅方向に対して高い曲げ剛性を得ることが可能になる。
【0028】
また、ヨコ糸12にタテ糸11より太い高剛性の有機繊維モノフィラメントを使用することにより、ベルト幅方向に対する曲げ剛性を一層高めることができる。
【0029】
上記実施形態では、補強帆布4,5に加えてコア帆布8を有するコンベヤベルト1について説明したが、本発明のコンベヤベルトの製造方法は、ゴム層に少なくとも1層の上述したストレートワープ織構造の補強帆布を埋設したコンベヤベルトであれば、いずれのコンベヤベルトを製造する場合にも用いることができる。
【0030】
本発明は、特に急傾斜コンベヤベルトやバケットコンベヤベルトとして使用されるコンベヤベルトの製造方法に好ましく用いることができるが、それに限定されない。
【実施例】
【0031】
表1に示す条件で成形した補強帆布を備えた、ベルト幅を800mm、ベルト長手方向の長さを150mmにした図1の構造を有するベルト試験片(実施例1,2、比較例1〜3)をそれぞれ作製した。これら各ベルト試験片を以下に示す試験方法によりトラフ性の評価試験を行ったところ、表1に示す結果を得た。
トラフ性
各ベルト試験片の幅方向両端縁に沿ってストレート状の支持バーをそれぞれ固定し、各ベルト試験片を水平に張った状態で各支持バー端を懸架し、24時間放置した後各ベルト試験片の撓み量を測定し、その結果を○、△、×の3段階で評価した。○は良好(撓み量:45mm以下)、△はやや問題あり(撓み量:45mm超55mm以下)、×は問題あり(撓み量:55mm超)を意味する。
【0032】
【表1】

表1から、本発明の方法で製造したベルト試験片(実施例1,2)は、撓み量が小さく、ベルト幅方向に対する高い曲げ剛性を確保できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のコンベヤベルトの製造方法により製造されたコンベヤベルトの一例を示す要部断面図である。
【図2】図1の補強帆布の部分拡大断面図である。
【図3】図1のコア帆布の部分拡大平面図である。
【図4】本発明のコンベヤベルトの製造方法において、補強帆布のディップ液への浸漬処理〜ヒートセット処理を行う工程を説明する側面図である。
【図5】図4のヒートセット処理を行う工程を説明する平面図である。
【図6】図1のコア帆布のディップ液への浸漬処理〜ヒートセット処理を行う工程を説明する側面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 コンベヤベルト
2,3 カバーゴム層
4,5 補強帆布
6,7 中間カバーゴム層
8 コア帆布
9 中間ゴム層
11 タテ糸
12 ヨコ糸
13 カラミ糸
25 ヒートセットゾーン
26 テンター・マシーン
30 クリップ部
a 補強帆布原反

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非交錯の状態で並列したタテ糸と有機繊維モノフィラメントからなるヨコ糸とをカラミ糸で拘束して構成した補強帆布をゴム層に埋設したコンベヤベルトの製造方法において、補強帆布をディップ液に浸漬した後ヒートセット処理する際に、幅方向両端部を保持して補強帆布の幅方向に張力を付与しながらヒートセット処理を行うコンベヤベルトの製造方法。
【請求項2】
補強帆布を幅方向に伸展するように張力を付与する請求項1に記載のコンベヤベルトの製造方法。
【請求項3】
ディップ液に浸漬する前の補強帆布に対するヒートセット処理後の補強帆布の幅収縮率が1.5%以下となるように補強帆布の幅方向に張力を付与する請求項1または2に記載のコンベヤベルトの製造方法。
【請求項4】
ヨコ糸がタテ糸より太い請求項1,2または3に記載のコンベヤベルトの製造方法。
【請求項5】
タテ糸が有機繊維マルチフィラメントからなる請求項1,2,3または4に記載のコンベヤベルトの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5に記載のコンベヤベルトの製造方法により製造されたコンベヤベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−62844(P2006−62844A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248908(P2004−248908)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】