説明

コンポジットパイプ及びその製造方法

【課題】寸法公差が優れたものであって、パーティクルを生じることのないコンポジットパイプを提供する。
【解決手段】複数本の繊維糸に熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、加熱金型を通過させながら硬化させて得られた中空引き抜き成形品2と、該中空引き抜き成形品2の外表面の少なくとも両端に固定された金属製パイプ3とからなる2層構造を有し、センターレス加工を施されたコンポジットパイプ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空引き抜き成形品の外表面に金属性パイプを被せたコンポジットパイプ及びその製造方法に関し、特に、携帯電話基地局のアンテナや液晶パネル等の搬送に用いられる搬送用シャフトに適したコンポジットパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
中空引き抜き成形品は、プリント基板、液晶、シャドーマスク等の電子部品の搬送用装置で用いるシャフト等に幅広く使われている。特に半導体搬送装置に使用されるシャフトは反りねじれ規格が厳しく0.3mm/m以内、また製品径の仕上がり公差がh7を目標とした規格が求められている。
【0003】
従来のシャフトは、剛性の高い金属を用いることが一般的であったが、装置の大型化により、今まで以上の軽量化が必要となり、カーボン繊維を基材としてエポキシ樹脂により成形した中空引き抜き成形品が多く使用されるようになってきている。
【0004】
これまで、ガラス繊維やカーボン繊維引抜に熱硬化性樹脂を含浸硬化した成形品は、ハンドレイアップ法、フィラメントワインディング法で行われていた。しかしながら、ハンドレイアップ法は手作業であるため、また、フィラメントワインディング法は工程が複雑なため、いずれの方法も生産性が劣り、成形コストもかかり、また、寸法精度も劣っていた。
【0005】
そして、引き抜き成形法の改良方法としては、引き出したロービングにさらにマット層を重ね合わせて成形する等の方法も提案されているが、寸法制度を改良する方法については開示されていない(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、引き抜き成形品の外径装飾による性能向上例としては、繊維強化樹脂成形体の外側面に人工大理石層を形成する等の例があるが寸法精度向上に関しては考慮されていない(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平8−34066号公報
【特許文献2】特開平7−137187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような搬送シャフトの場合、シャフトにローラー、ベアリングが取り付けられるが、取り付けの際、部品とシャフトとの間の寸法公差が厳しく、金型成形のみでは寸法公差をクリアーできない。そこで、CFRPの表面をセンターレス加工することで寸法公差をクリアーすることが出来るが、この場合、パーティクルの問題が生じてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、寸法公差が優れたものであって、パーティクルを生じることのないコンポジットパイプを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の問題点を解決するために鋭意検討を進めた結果、寸法公差をクリアーし、かつ、CFRPの表面からパーティクルが生じて搬送物を汚染することがないように、CFRPの表面を金属パイプで覆い、その後センターレス加工を行なうことにより、課題を解決できることを見出し、本発明を完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明のコンポジットパイプは、複数本の繊維糸に熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、加熱金型を通過させながら硬化させて得られた中空引き抜き成形品と、該中空引き抜き成形品の外表面の少なくとも両端に被せて固定された金属製パイプとからなる2層構造を有し、センターレス加工が施されたことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のコンポジットパイプの製造方法は、複数本の繊維糸に熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、加熱金型を通過させながら硬化させて中空引き抜き成形品を得る工程と、中空引き抜き成形品の外表面の少なくとも両端に、金属製パイプを被せて固定する工程と、金属製パイプが固定された中空引き抜き成形品をセンターレス加工する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明と類似の形状のものとしては、プリプレグをマンドレルに巻き、それをSUSパイプに挿入させ、その状態で硬化させて内部がCFRPで外側がSUSであるコンポジットパイプが存在するが、作成に時間がかかると共に、コストも高くなってしまう。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコンポジットパイプによれば、寸法公差をクリアーし、かつ、CFRPの表面からパーティクルが生じて搬送物を汚染することがなく、例えば、搬送用シャフト等のような寸法精度に優れ、かつ、高い信頼性が求められる製品を低コストで提供することができる。さらに、本発明のコンポジットパイプは、カーボン繊維が長手方向に一方向となって形成されているため、パイプ軸の垂直方向への撓みが小さいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明のコンポジットパイプは、複数本の繊維糸に熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、加熱金型を通過させながら硬化させる中空引き抜き成形品の外面の少なくとも両端に金属製パイプを被せた2層構造を有するものであり、例えば、図1に示すように、コンポジットパイプ1は、中空引き抜き成形品2の外面に金属製パイプ3を被せたものである。なお、図1は、コンポジットパイプ1の端部を拡大して示した切欠き図である。
【0016】
中空引き抜き成形品2は、複数本の繊維糸に熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、加熱金型を通過させながら硬化させる、通常の中空引き抜き成形品の製造と同様に行うことができ、以下、中空引き抜き成形品の製造について説明する。
【0017】
本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂をベース樹脂として用いることができ、ビニルエステル樹脂であることが好ましい。
【0018】
この熱硬化性樹脂組成物としては、例えば、(A)ビニルエステル樹脂と、(B)架橋剤と、(C)低収縮剤と、(D)無機充填材と、(E)離型剤と、(F)有機過酸化物とを必須成分として含有するものが好ましい。
【0019】
本発明に用いる(A)ビニルエステル樹脂は、成形材料として一般に使用されているものであれば特に限定されずに使用することができ、例えば、D−953(大日本インキ工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。このような(A)ビニルエステル樹脂は、(a)酸性分と(b)エポキシ樹脂成分を反応させて得られるものである。
【0020】
ここで(a)酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ソルビン酸等の不飽和一塩基酸が挙げられ、さらに必要に応じてフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸等の二塩基酸を2種類以上混合して使用することもできる。
【0021】
また、(b)エポキシ樹脂成分としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、分子構造、分子量等に制限されることなく広く用いることができ、具体的には、ビスフェノール型、ノボラック型、ビフェニル型の芳香族基を有するエポキシ樹脂、ポリカルボン酸がグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、シクロヘキサン誘導体にエポキシ基が縮合した脂環式の基を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独又は2種類以上を混合して使用することができる。さらに、エポキシ樹脂成分としては、これらの他に必要に応じて液状のモノエポキシ樹脂を併用成分として使用することができる。
【0022】
この(A)ビニルエステル樹脂の配合量は、熱硬化性樹脂組成物中に70〜90質量%の範囲であることが好ましい。
【0023】
本発明に用いる(B)架橋剤としては、(A)ビニルエステル樹脂と重合可能な二重結合を有するものであれば使用可能であり、例えば、スチレンモノマー、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレートモノマー、メタクリル酸メチル、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。この(B)架橋剤の配合量は、熱硬化性樹脂組成物中に1〜2質量%の範囲であることが好ましい。
【0024】
本発明に用いる(C)低収縮材としては、熱可塑性樹脂であるポリエチレン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ゴム、ポリエチレン等が使用可能であるが、耐薬品性、軽量性、低収縮性の観点からポリエチレン樹脂であることが好ましい。このうちガラス転移点が70〜120℃のポリエチレン樹脂粉末が耐薬品性及び成形収縮率の向上のために特に好ましい。この(C)低収縮材の配合量は、熱硬化性樹脂組成物中に0.5〜1.5質量%の範囲であることが好ましい。
【0025】
本発明に用いる(D)無機充填材としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ガラスバルーン等の通常用いられているものが挙げられ、特に限定されるものではない。この(D)無機充填材の配合量は、熱硬化性樹脂組成物中に10〜28質量%の範囲であることが好ましい。
【0026】
本発明に用いる(E)離型剤は、成形材料として通常使用される離型剤であればよく、例えば、市販のシリコーンオイルが挙げられ、中でもエポキシ変性シリコーンオイルが好ましい。この(E)離型剤の配合量は熱硬化性樹脂組成物中に0.01〜2質量%であることが好ましい。
【0027】
本発明に用いる(F)有機過酸化物としては、ビニルエステル樹脂の硬化剤として通常用いられる化合物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化イソブチリル等が挙げられる。この(F)有機過酸化物の配合量は、熱硬化性樹脂組成物中に0.1〜2質量%の範囲であることが好ましい。
【0028】
このビニルエステル樹脂組成物において、低収縮材としてポリエチレンを使用すると、耐薬品性、軽量性及び寸法安定性を満足し、サポート製品としての長期信頼性を満足することができ、さらに低コストな引き抜き成形品として製造することができる。これは不飽和ポリエステル樹脂をベース樹脂とした場合にも同様のことがいえる。
【0029】
次に、本発明に使用する繊維糸は、繊維を収束して得られたものであって、従来、引き抜き成形品の製造に用いられてきた繊維糸により得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、ザイロン繊維、全芳香族ポリエステル繊維、耐薬品性の有機繊維等からなる繊維糸が挙げられる。この繊維糸としては、一般に市販されているものが適用可能であり、ガラス繊維としては、例えば、E−ガラス繊維、T−ガラス繊維、D−ガラス繊維等、カーボン繊維としてはPAN型、PITCH型等、アラミド繊維としては、パラ系やメタ系の繊維等、のように一般に繊維基材用として市販されているものが適用可能である。
【0030】
また、ここで用いる繊維糸、特にガラス繊維、カーボン繊維は、表面にシランカップリング材によりサイジング処理を行い、耐薬品性を維持するようにすることが好ましく、このサイジング処理を行うサイジング剤としては、アルカリ成分との反応性が低く、マトリックス樹脂に対するぬれ性が良い薬剤が挙げられ、具体的には、メタクリルシランやウレイドシラン等のシランカップリング剤又はそれらの混合品であることが好ましい。
【0031】
繊維基材としては、上記の繊維糸を単独で又は複数種を混合してもよく、特に、ガラス繊維、カーボン繊維をそれぞれ単独で、又はガラス繊維とカーボン繊維との混合物として複合系の繊維基材として用いることが好ましい。
【0032】
この繊維糸の含有量は、成形品中の繊維基材の平均体積含有率(体積比率)で、50〜80%とすることが好ましい。50%未満であると成形品の剛性が乏しくなってしまい、80%を越えると繊維強化材に樹脂組成物が含浸していない部分ができ、引き抜き成形品の物性低下を引き起こしてしまう。
【0033】
引き抜き成形用の熱硬化性樹脂組成物と繊維糸との混合は、繊維糸に熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、樹脂組成物が繊維糸に付着した状態とすることが好ましい。繊維糸が引き抜き成形時の引き抜き力に耐え得ることが必要であるので、繊維糸の構成を、繊維糸のロービングを引き抜き方向に配向させて使用することが好ましい。
【0034】
そして、ここで用いる引き抜き成形品の製造方法においては、上記した繊維の複数本、例えば50〜500本の繊維を収束して得られた繊維糸に熱硬化性樹脂組成物ワニスに含浸させ、この繊維強化樹脂組成物を、加熱金型内を通すことによって熱硬化性樹脂組成物を硬化させ、金型形状により外形を整えて引き抜き、成形品を形成するものであり、この引き抜き成形においては、用いる樹脂組成物に応じて、加熱温度及び引き抜き速度を適宜選択して行うことができる。
【0035】
ここで、熱硬化性樹脂組成物を含浸した繊維糸は、そのまま金型内に引き込まれ、加熱された金型内を通過することで、加熱硬化して所定の形状に成形されるが、このとき用いる金型としては、引き抜き成形に用いられる金型であれば特に限定されるものではなく、従来用いられていた方法により加熱硬化すればよい。
【0036】
本発明における金型は、樹脂の硬化により引き抜き成形品を得るためにヒーター等で加熱制御されている。ここで金型の温度は、70〜170℃であることが好ましい。金型温度が70℃未満であると、繊維強化樹脂組成物が未硬化の状態で引き抜かれやすくなってしまい、170℃を超えると、硬化反応が急激に起こるため成形品にクラックや反りの不良を生じさせる可能性が高くなってしまう。
【0037】
このとき、引き抜き時間(金型中を通過する時間)は0.5〜3.0分の範囲内となるようにすることが好ましく、このような引き抜き時間とする引き抜き速度は、一般的には、10〜120cm/分の範囲であることが好ましく、20〜35cm/分であることが特に好ましい。引き抜き速度が10cm/分未満であると、成形金型中での硬化が早い時点で完了してしまい、引き抜く際の抵抗が大きくなり安定的に連続成形できなくなってしまい、一方、引き抜き速度が120cm/分を超えると、繊維強化樹脂組成物が未硬化の状態で引き抜かれ易くなってしまう。
【0038】
すなわち、引き抜き成形では、繊維強化樹脂組成物を、加熱された金型内に連続的に引き込み、金型内通過中に樹脂を所定の温度に付して硬化させると共に、金型出口から所定の時間で引き抜くのである。この引き抜き成形で用いられる装置は、通常用いられている引き抜き成形品の製造装置と同様の構成とすればよく、特に限定されずに使用することができる。また、金型部分は上記説明したものであることが好ましい。
【0039】
これによって、硬化樹脂組成物を効率的に硬化させることができ、操作性よく成形することができる。このようにして得られた成形品は、低収縮剤を混合することにより、体積収縮が小さく、外観及び物性にも優れた成形品とすることができる。
【0040】
金属製パイプ3は、ステンレス、鉄、チタン等が使用できるが、特にステンレス製のものが好ましい。これにより、均等肉厚で高真円度、反りねじれが少なく、軽量性、成形収縮率、外形寸法の優れた引き抜き成形品を得ることができる。
【0041】
この金属製パイプ3は、中空引き抜き成形品2に被せて使用することができるものであればよいため、このとき金属製パイプ3の内径は中空引き抜き成形品2の外径に対応したものである。ここで、外径に対応したとは、中空引き抜き成形品2を金属製パイプ3の内部に挿入し、接着剤により固定することができるものであればよい。また、このとき、金属製パイプ3の肉厚は、特に限定されるものではないが、薄すぎると強度が不十分となり、シャフトとしたときの寿命が短くなってしまい、厚すぎるとコストが上昇してしまうため、0.3〜1.5mmであることが好ましい。ちなみに中空引き抜き成形品の肉厚は、シャフトの主構成であり十分な強度を確保するため1.5〜3mmであることが好ましい。
【0042】
そして、これらの固定は、接着剤4を外表面に塗付した引き抜き成形品2を金属製パイプ3の内部へ挿入し、接着剤4を硬化させることで引き抜き成形品2と金属製パイプ3とを接着固定する。このとき、接着剤4は、引き抜き成形品2の外表面ではなく、金属製パイプ3の内表面に塗付しておいてもよい。
【0043】
この接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂系接着剤、ポリエステル系接着剤、酢酸ビニル系接着剤が挙げられ、特に、接着剤を硬化させてコンポジットパイプとするときの加熱、自然冷却による温度変化によって、中空引き抜き成形品2と金属製パイプ3がそれぞれ線膨張係数の違いにより、異なる反りを生じるが、それを緩和して両者の接続を安定して維持できるように硬化後に弾性を有する接着剤であることが好ましい。
【0044】
そして、この金属製パイプ3は、中空引き抜き成形品2の外表面の少なくとも両端に被せて2層構造を有するコンポジットパイプとすればよく、外表面全てを覆うようにすることが好ましい。また、両端に被せたものとした場合は、少なくとも端部から50〜100mmの部分を覆うようにすることが好ましい。
【0045】
このように金属製パイプ3を固定して得られたコンポジットパイプ1をセンターレス加工することにより、搬送用シャフト等に有用な寸法精度の高いものとすることができ、寸法公差を小さくすることができる。また、本発明のコンポジットパイプでは、中空引き抜き成形品2ではなく、金属製パイプ3がセンターレス加工により加工されるため、パーティクルによる汚染を生じさせることがない。
【0046】
また、このようにして得られるコンポジットパイプ1のサイズは、例えば、搬送用シャフトに適用するものである場合には、その外径が10〜30mm程度、シャフトの長さが1000〜2000mm程度であることが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0048】
(実施例1)
熱硬化性樹脂成分として、ビニルエステル樹脂(大日本インキ工業株式会社製、商品名:UE3505) 22質量部、スチレンモノマー(日本ユピカ株式会社製、商品名:スチレンモノマー) 0.35質量部、ポリエチレン(住友精化株式会社製、商品名:フローセンUF−1.5) 0.25質量部、硫酸バリウム(堺化学工業株式会社製、商品名:沈降性硫酸バリウム−100) 3.7質量部、有機過酸化物1(日本油脂株式会社製、商品名:パーブチルO) 0.06質量部、有機過酸化物2(日本油脂株式会社製、商品名:パーヘキサHC) 0.35質量部、離型剤(小桜商会株式会社製、商品名:INT−1850HT〔有機酸、グリセリド、合成樹脂縮合体〕) 0.35質量部を混練機(ディスパー)にいれ、約20分間混練し、熱硬化性樹脂成形材料を得た。
【0049】
次に、基材としてカーボン繊維 UT−500−24K(東邦テナックス株式会社製、商品名)60本を、得られた熱硬化性樹脂成形材料の入った樹脂槽に含浸させ、この樹脂成形材料を含浸させたカーボン繊維を、押出し成形治具に通した後、連続的に160℃に加熱し、中子付き金型(長さ:800mm、内径:15mm)に送り込み十分に硬化させ、20cm/分のスピードで引き抜いて中空引き抜き成形品を連続的に得て、これを切断装置で切断し、カーボン繊維の体積比率が70%の引き抜き成形品を得た。中子治具(長さ:500mm、外形:10mm、設定温度:140℃)は、金型の10cm手前から繊維に接触するように設置した。
【0050】
得られた中空引き抜き成形品の真円度及び反りねじれ、外形寸法を測定し、この結果を表1に示した。
【0051】
次にステンレス製のパイプ(材質:SUS304、外形寸法:φ16mm、長さ:1500mm)を接着剤を介して図1のようにして引き抜き成形品の全面に被せて接着固定し、センターレス加工を施すことによりコンポジットパイプを製造した。このときの寸法精度を表2に示した。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
(比較例1)
実施例1と同様に得られた中空引き抜き成形品に、ステンレス製のパイプを接着固定せずに、センターレス加工を施してφ14mmの外形寸法となるように形成した中空引き抜き成形品を得た。その寸法精度を表3に示した。
【0055】
【表3】

【0056】
また、実施例1のコンポジットパイプは外表面からパーティクルを生じることがなく、搬送用シャフトに適したものであり、一方、比較例1のセンターレス加工した引き抜き成形品では、その外表面からパーティクルが生じ、搬送時に搬送対象物を汚染してしまうものであった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明のコンポジットパイプの端部部分の構成を示した一部拡大図である。
【図2】本発明のコンポジットパイプの側面図である。
【符号の説明】
【0058】
1…コンポジットパイプ、2…中空引き抜き成形品、3…金属製パイプ、4…接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の繊維糸に熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、加熱金型を通過させながら硬化させて得られた中空引き抜き成形品と、該中空引き抜き成形品の外表面の少なくとも両端に被せて固定された金属製パイプと、からなる2層構造を有し、センターレス加工が施されたことを特徴とするコンポジットパイプ。
【請求項2】
前記中空引き抜き成形品の肉厚が1.5〜3.0mm、前記金属製パイプの肉厚が0.3〜1.5mmであることを特徴とする請求項1記載のコンポジットパイプ。
【請求項3】
前記金属製パイプがステンレス製であることを特徴とする請求項1又は2記載のコンポジットパイプ。
【請求項4】
前記繊維が、ガラス繊維及び/又はカーボン繊維で構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のコンポジットパイプ。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂組成物が、(A)ビニルエステル樹脂と、(B)架橋剤と、(C)低収縮剤と、(D)無機充填材と、(E)離型剤と、(F)有機過酸化物と、を必須成分とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のコンポジットパイプ。
【請求項6】
複数本の繊維糸に熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、加熱金型を通過させながら硬化させて中空引き抜き成形品を得る工程と、
前記中空引き抜き成形品の外表面の少なくとも両端に、金属性パイプを被せて固定する工程と、
前記金属製パイプが固定された中空引き抜き成形品をセンターレス加工する工程と、
を有することを特徴とするコンポジットパイプの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−39962(P2009−39962A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207862(P2007−207862)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】