説明

コーティング用樹脂組成物及び塗装品

【課題】ツヤ消し外観を有しながら、優れた防汚性と補修性を有する塗膜を形成することができるコーティング用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)フッ素含有オレフィン成分単位、ジメチルシロキサン成分単位を含む側鎖、および反応性水酸基を含有するフッ素含有樹脂、(B)反応性水酸基を含有するアクリルポリオール樹脂、(C)硬化剤、(D)ツヤ消し用粒子の、(A)〜(D)成分を含有する。そして(A)フッ素含有樹脂の(B)アクリルポリオール樹脂に対する固形分質量比率が2/98以上50/50以下であり、且つ(B)アクリルポリオール樹脂の固形分水酸基価が100mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、且つ(C)硬化剤が多価イソシアネート類であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツヤ消し塗装用のコーティング用樹脂組成物及び、このコーティング用樹脂組成物が塗装された塗装品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗装品の表面に、人間の手の接触に伴う手垢や指紋、あるいは調理油や煤煙などといった油性成分の汚染物が付着すると、塗装品の美観が損なわれるおそれがある。特に、油性成分汚染物が付着した後に長時間を経過すると、油性成分汚染物が変性することによって着色を伴う場合があり、また汚染物を除去することが極めて困難になり、塗装品の美観を著しく損なうことになる。
【0003】
そのため、油性成分汚染物が塗装品の表面に付着することを防止したり、あるいは付着した油性成分汚染物を除去し易くしたりする、いわゆる防汚性を付与するために、例えば撥油性のフッ素やシリコーンを含有する塗膜を塗装品の表面に形成することが行なわれている。
【0004】
このとき、塗装品の外観としてツヤ消し外観が求められる場合、一般的にはツヤ消し用粒子を塗膜に含有することにより実現されている(例えば特許文献1等参照)。しかし、ツヤ消し用粒子は塗膜の表面に露出して凹凸を形成することでツヤ消し外観を発現するため、撥油性のフッ素やシリコーンを含有する塗膜にツヤ消し用粒子を含有させて用いた場合は、ツヤ消し用粒子によって防汚性が著しく損なわれることになる。
【0005】
また、防汚性を付与するためにフッ素やシリコーンを含有する塗膜を形成した場合、フッ素やシリコーンの撥油性によって、塗膜の表面へのコーティング組成物の付着性も阻害することになるため、傷つきなどの原因で塗膜の補修が必要になった際に、補修用コーティング材を塗装してもハジキにより塗装することが難しくなったり、あるいは塗装することはできても塗膜密着性が著しく低くなったりするなど、いわゆる補修性に問題が生じるものであった。
【特許文献1】特開平05−105825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ツヤ消し外観を有しながら、優れた防汚性と補修性を有する塗膜を形成することができるコーティング用樹脂組成物を提供することを目的とするものであり、またこのような塗膜を有する塗装品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコーティング用樹脂組成物は、(A)フッ素含有オレフィン成分単位、ジメチルシロキサン成分単位を含む側鎖、および反応性水酸基を含有するフッ素含有樹脂、(B)反応性水酸基を含有するアクリルポリオール樹脂、(C)硬化剤、(D)ツヤ消し用粒子を含有するコーティング用樹脂組成物であって、(A)フッ素含有樹脂の(B)アクリルポリオール樹脂に対する固形分質量比率が2/98以上50/50以下であり、且つ(B)アクリルポリオール樹脂の固形分水酸基価が100mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、且つ(C)硬化剤が多価イソシアネート類であることを特徴とするものである。
【0008】
フッ素含有樹脂の表面自由エネルギーはアクリルポリオール樹脂の表面自由エネルギーよりも低いため、フッ素含有樹脂の濃度が表面近傍で高くなり、表面近傍以外でアクリルポリオール樹脂の濃度が高くなる、傾斜配向をした塗膜を得ることができるものであり、ツヤ消し用粒子の含有によってツヤ消し外観を得ながら、表面で濃度が高いフッ素含有樹脂による撥油性で優れた防汚性を得ることができるものである。また補修にあたっては、塗膜の表面を研磨することによって、表面のフッ素含有樹脂を除去してその下のアクリルポリオール樹脂を露出させることができ、アクリルポリオール樹脂の高い塗膜密着性で優れた補修性を得ることができるものである。
【0009】
また本発明は、(A)フッ素含有樹脂の固形分水酸基価が、(B)アクリルポリオール樹脂の固形分水酸基価に対して0.5倍以上2倍以下であることを特徴とするものである。
【0010】
この発明によれば、フッ素含有樹脂とアクリルポリオール樹脂の相溶性が高くなり、フッ素含有樹脂とアクリルポリオール樹脂の濃度の上記のような傾斜配向を良好に得ることができるものである。
【0011】
また本発明は、(A)フッ素含有樹脂のジメチルシロキサン成分単位を含む側鎖のケイ素数が20以上150以下であることを特徴とするものである。
【0012】
この発明によれば、塗膜性能を保持しつつ高い防汚性を得ることができるものである。
【0013】
また本発明は、(D)ツヤ消し用粒子が、平均粒径が3μm以上10μm以下のシリカ粒子とポリエチレン粒子の少なくとも一方であり、(D)ツヤ消し用粒子の固形分質量比率がコーティング用樹脂組成物の全固形分に対して5%以上15%以下であることを特徴とするものである。
【0014】
この発明によれば、良好な防汚性とツヤ消し外観を高いレベルで両立させることができるものである。
【0015】
本発明に係る塗装品は、上記のコーティング用樹脂組成物を、基材の表面に塗布して100℃以下の温度で硬化することによって、塗膜が形成されたものであることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、ツヤ消し外観を有しながら、優れた防汚性と補修性を有する上記のような塗膜を形成した塗装品を得ることができるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フッ素含有樹脂の濃度が表面近傍で高くなり、表面近傍以外でアクリルポリオール樹脂の濃度が高くなる、傾斜配向をした塗膜を得ることができ、ツヤ消し用粒子の含有によってツヤ消し外観を得ながら、表面で濃度が高いフッ素含有樹脂による撥油性で優れた防汚性を得ることができるものであり、また塗膜の表面を研磨することによって、表面のフッ素含有樹脂を除去してその下のアクリルポリオール樹脂を露出させることができ、アクリルポリオール樹脂の高い塗膜密着性で優れた補修性を得ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0019】
本発明のコーティング用樹脂組成物は、(A)フッ素含有樹脂、(B)反応性水酸基を含有するアクリルポリオール樹脂、(C)硬化剤、(D)ツヤ消し用粒子、の(A)〜(D)を必須成分として含有するものである。
【0020】
このように塗膜のマトリクスを形成する樹脂成分として、フッ素含有樹脂とアクリルポリオール樹脂を含有するものであり、フッ素含有樹脂の表面自由エネルギーはアクリルポリオール樹脂の表面自由エネルギーよりも低い。このため、コーティング用樹脂組成物を塗装して塗膜を形成するにあたって、塗膜の全体の表面自由エネルギーを下げて安定な状態にするためにフッ素含有樹脂が塗膜の表面近傍に移動し易いものであり、表面近傍のフッ素含有樹脂濃度が表面近傍以外に比較して高くなるいわゆる傾斜配向した塗膜を得ることができる。従って、アクリルポリオール樹脂の含有濃度は、塗膜の表面近傍の濃度よりも表面近傍以外の濃度が高くなるように傾斜配向することになる。
【0021】
上記のように本発明のコーティング用樹脂組成物を基材に塗装して得られる塗膜は、フッ素含有樹脂の濃度が表面近傍で高いため、フッ素含有樹脂による高い撥水性を塗膜の表面に付与することができ、ツヤ消し用粒子の含有によってツヤ消し外観を得ながら、塗膜の表面に優れた防汚性を発現させることができるものである。しかも、塗膜の基材と接触する部分では、アクリルポリオール樹脂の濃度が高くなっているため、密着性の高いアクリルポリオール樹脂によって、基材との塗膜密着性が向上するものである。
【0022】
そしてこのように形成された塗膜を補修するために、塗膜の表面に補修用コーティング材を塗装するにあたっては、塗膜の表面をわずかに研磨するだけで、表面近傍に集中しているフッ素含有樹脂を除去して、その下のアクリルポリオール樹脂を露出させることができるものであり、フッ素含有樹脂によって密着性を阻害されることなく、アクリルポリオール樹脂によって高い密着性を確保した状態で、補修用コーティング材による補修塗膜を形成することができるものである。このように、塗膜の表面を研磨するという簡易な作業を行なうだけで、補修後の密着性を確保することができるものであり、高い補修性を得ることができるものである。
【0023】
上記のようなフッ素含有樹脂とアクリルポリオール樹脂の濃度の傾斜配向を得るために、フッ素含有樹脂とアクリルポリオール樹脂の配合比率、相溶性、塗膜硬化時の温度および硬化時間などを適切に制御することが重要である。
【0024】
すなわち、フッ素含有樹脂のアクリルポリオール樹脂に対する配合比率は、固形分質量比率で2/98以上50/50以下、つまりフッ素含有樹脂とアクリルポリオール樹脂の合計量に対してフッ素含有樹脂が2質量%以上50質量%以下であることが必要である。フッ素含有樹脂が2質量%未満であると、塗膜の表面近傍のフッ素含有樹脂の濃度が不十分になって防汚性を高く得ることができないものであり、逆にフッ素含有樹脂が50質量%を超えると、フッ素含有樹脂の濃度が塗膜の表面近傍以外でも高くなって、塗膜の表面を研磨しても、フッ素含有樹脂を除去してアクリルポリオール樹脂を露出させることが難しくなり、高い補修性を得ることができないものである。
【0025】
また、フッ素含有樹脂とアクリルポリオール樹脂の相溶性の観点から、アクリルポリオール樹脂の固形分水酸基価が100mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが必要であり、またフッ素含有樹脂の固形分水酸基価が、アクリルポリオール樹脂の固形分水酸基価に対して0.5倍以上2倍以下であることが望ましい。さらに、硬化剤として多価イソシアネートを用い、100℃以下の温度で長時間をかけて硬化させることで、フッ素含有樹脂が傾斜配向する時間を充分にとることができる。
【0026】
ここで、上記の(A)フッ素含有樹脂は、フッ素含有オレフィン成分単位、ジメチルシロキサン成分単位を含む側鎖、および反応性水酸基を含有するものであり、フッ素含有オレフィン成分単位は、
−[CF−C(X)(Y)]−
(XはHまたはFを示し、YはH、F、Cl、CFのいずれかを示す)
で表される。またジメチルシロキサン成分単位を含む側鎖は、
−[Si(CH−O]−
で表される。
【0027】
また、ジメチルシロキサン成分単位を含む側鎖のケイ素数は、20以上150以下であることが望ましい。ケイ素数が20に満たない場合、フッ素含有樹脂の撥水性が不十分になって、防汚性が充分に発現しない場合がある。逆にケイ素数が150を超える場合、立体障害による硬化阻害を引き起こす可能性があり、十分な塗膜性能が得られないことがある。
【0028】
また上記のように(A)フッ素含有樹脂の固形分水酸基価は、(B)アクリルポリオール樹脂の固形分水酸基価の0.5倍以上2倍以下の範囲内の数値であることが望ましい。フッ素含有樹脂の固形分水酸基価がこの範囲から逸脱すると、アクリルポリオール樹脂との相溶性が低下し、フッ素系樹脂とアクリルポリオール樹脂の表面自由エネルギーの差によるフッ素含有樹脂の移動が阻害され、上記のようなフッ素含有樹脂の傾斜配向を形成することが不十分になり、塗膜の防汚性が不十分になると共に補修性も不十分になり、また塗膜形成時に白濁を生じる場合がある。
【0029】
上記(B)反応性水酸基を含有するアクリルポリオール樹脂は、固形分水酸基価が100mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である必要がある。アクリルポリオール樹脂の固形分水酸基価がこの範囲から逸脱すると、フッ素含有樹脂との相溶性が低下し、上記と同様にフッ素含有樹脂の傾斜配向が阻害されて、防汚性が不十分になると共に補修性が不十分になり、また塗膜形成時に白濁を生じる場合がある。特に、アクリルポリオール樹脂の固形分水酸基価が100mgKOH/gに満たない場合に、塗膜形成時に白濁を生じる可能性が高くなる。
【0030】
上記の(C)硬化剤としては、多価イソシアネートが用いられる。多価イソシアネートであれば特に限定されるものではなく、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)やその付加物、イソシアヌレート類から導かれる基を有する多価イソシアネート類などが挙げられる。このように硬化剤として多価イソシアネートを用いることにより、コーティング用樹脂組成物を常温を含む低温で、長時間をかけて硬化させることが可能になるものであり、フッ素系樹脂とアクリルポリオール樹脂の表面自由エネルギーの差によるフッ素含有樹脂の移動時間を十分にとることができ、フッ素含有樹脂を有効に傾斜配向させた塗膜を得ることが可能になるものである。
【0031】
(C)硬化剤として配合する多価イソシアネートの配合量は、コーティング用組成物における水酸基モル数、すなわちコーティング用組成物に含有される(A)フッ素含有樹脂の固形分水酸基価と(B)アクリルポリオール樹脂の水酸基モル数に対して、イソシアネート基モル数が0.5倍以上2.0倍以下、好ましくは0.8倍以上1.2倍以下となるように設定するのが望ましい。多価イソシアネートの配合量がこの範囲より少ないと、硬化後も水酸基が塗膜中に残存することになると共に、またこの範囲を超えて多くなると、硬化後もイソシアネート基が塗膜中に残存することになり、塗膜の耐久性などが低下するおそれがある。
【0032】
上記(D)ツヤ消し用粒子としては、シリカ粒子や樹脂粒子などを使用することができる。特に、平均粒径が3μm以上10μm以下のシリカ粒子やポリエチレン粒子が好ましい。ツヤ消し用粒子の平均粒径が3μm未満であると、ツヤ消しの効果を十分に得ることができないものであり、また平均粒径が10μmを超えると、防汚性が低下するおそれがある。尚、平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって測定した値である。シリカ粒子とポリエチレン粒子はそれぞれ単独で使用することできる他、両者を任意の割合で併用することもできる。
【0033】
また(D)ツヤ消し用粒子の配合量は、その固形分質量比率がコーティング用樹脂組成物の全固形分に対して5%以上15%以下の範囲になるように設定するのが好ましい。5質量%未満であると十分なツヤ消し効果を得ることができず、15質量%を超えると防汚性が阻害されるものであり、ツヤ消し用粒子の配合量がこの範囲内であることによって、良好な防汚性とツヤ消し外観を高いレベルで両立させた塗膜を得ることができるものである。
【0034】
本発明のコーティング用樹脂組成物は、上記の(A)〜(D)の成分以外に、希釈溶媒を含むことができる。希釈溶媒としては特に限定されるものではなく、キシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素類、n−ブタノールなどのアルコール類、酢酸ブチル、酢酸エチルなどのエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロンなどのケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエステルなどが使用可能である。
【0035】
さらに、塗装適性付与や塗料の安定化などの目的で、可塑剤、安定剤、沈降防止剤、粘度調節剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、防腐剤などの各種成分を自由に含むことができる。これら各種成分は特に限定されるものではなく、要求される特性に応じて一般的に用いられている添加剤類などを使用することが可能である。
【0036】
そして本発明のコーティング用樹脂組成物を、基材の表面に塗布して、硬化させることによって、ツヤ消し外観を有しながら防汚性と補修性を兼ね備えた塗装品を得ることができるものである。
【0037】
基材としては特に限定されるものではなく、例えば合板、MDF、PBなどの木質系基材やそれらを用いた木質化粧板、ステンレス、アルミなどの金属板、珪酸カルシウムなどの無機質板、ポリエステル、ポリエチレンなどの樹脂、あるいはそれらを用いた建材、建具、家具、住宅設備などが挙げられる。また、これら基材の表面に、必要により下塗り層としてプライマー層や化粧層などを適宜形成し、その表面に本発明のコーティング用樹脂組成物を塗布することができる。
【0038】
本発明のコーティング用樹脂組成物を塗布するにあたって、塗装方法は特に限定されるものではなく、例えばスプレー、ロールコーター、フローコーター、ディップコーター、バーコーター、刷毛塗り、静電塗装などが挙げられる。
【0039】
塗布したコーティング材組成物を硬化させる際の温度については、100℃以下であることが望ましい。100℃以下の温度で長時間をかけて硬化させることによって、フッ素含有樹脂が傾斜配向する時間を充分にとることができ、ツヤ消し外観を有しながら防汚性と補修性を兼ね備えた塗膜を得ることができるものである。硬化の際の温度の下限は特に設定されるものではなく、常温(室温)であってもよい。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0041】
(実施例1)
(A)フッ素含有オレフィン成分単位、ジメチルシロキサン成分単位を含む側鎖、および反応性水酸基を含有するフッ素含有樹脂として、富士化成工業株式会社製「ZX−022」(固形分水酸基価120mgKOH/g、不揮発分45質量%、)を2.5質量部、(B)反応性水酸基を含有するアクリルポリオール樹脂として、三菱レイヨン株式会社製「LR−2634」(固形分水酸基価130mgKOH/g、不揮発分70質量%)を22.5質量部、(D)ツヤ消し用粒子として、富士シリシア化学株式会社製「サイリシア250」(平均粒子径5.7μm)を3質量部、溶剤として酢酸ブチルを72質量部、混合することによって、主剤a(不揮発分19.9質量%)100質量部を得た。
【0042】
また(C)硬化剤として、三井化学ポリウレタン株式会社製「タケネートD−204」(TDIアダクト、NCO%=7.5質量%、不揮発分50質量%)を24質量部、溶剤として酢酸ブチルを76質量部、混合することによって、硬化剤b(不揮発分12質量%)100質量部を得た。
【0043】
次に、主剤a100質量部と硬化剤b100質量部を混合することによって、コーティング用樹脂組成物c(不揮発分15.9質量%)を得た。このコーティング用樹脂組成物cにおける(D)ツヤ消し用粒子の固形分質量比率は、全樹脂組成物固形分に対して10.4質量%となった。また、コーティング用樹脂組成物cにおける水酸基モル数に対するイソシアネート基モル数は、1.1となった。
【0044】
そして、厚さ2mmのガラス板に上記のコーティング用樹脂組成物cをスプレーにて50g/mの塗布量で塗布した後、常温で7日間放置して硬化させることにより塗膜を形成し、評価用サンプルとなる塗装品dを得た。
【0045】
(実施例2)
(A)フッ素含有オレフィン成分単位、ジメチルシロキサン成分単位を含む側鎖、および反応性水酸基を含有するフッ素含有樹脂として、富士化成工業株式会社製「ZX−007−C」(固形分水酸基価58mgKOH/g、不揮発分35質量%、)を2.5質量部、実施例1と同じ(B)アクリルポリオール樹脂を22.5質量部、実施例1と同じ(D)ツヤ消し用粒子を3質量部、溶剤として酢酸ブチルを72質量部、混合することによって、主剤a(不揮発分19.6質量%)100質量部を得た。
【0046】
また、実施例1と同じ(C)硬化剤を23質量部、溶剤として酢酸ブチルを77質量部、混合することによって、硬化剤b(不揮発分11.5質量%)100質量部を得た。
【0047】
次に、主剤a100質量部と硬化剤b100質量部を混合することによって、コーティング用樹脂組成物c(不揮発分15.6質量%)を得た。このコーティング用樹脂組成物cにおける(D)ツヤ消し用粒子の固形分質量比率は、全樹脂組成物固形分に対して10.7質量%となった。また、コーティング用樹脂組成物cにおける水酸基モル数に対するイソシアネート基モル数は、1.1となった。
【0048】
そして、実施例1と同様にして、ガラス板に上記のコーティング用樹脂組成物cを塗布・硬化させることによって、評価用サンプルとなる塗装品dを得た。
【0049】
(実施例3)
実施例1と同じ(A)フッ素含有樹脂を2.5質量部、実施例1と同じ(B)アクリルポリオール樹脂を22.5質量部、実施例1と同じ(D)ツヤ消し用粒子を1質量部、溶剤として酢酸ブチルを74質量部、混合することによって、主剤a(不揮発分17.9質量%)100質量部を得た。
【0050】
また、実施例1と同じ(C)硬化剤を24質量部、溶剤として酢酸ブチルを76質量部、混合することによって、硬化剤b(不揮発分12質量%)100質量部を得た。
【0051】
次に、主剤a100質量部と硬化剤b100質量部を混合することによって、コーティング用樹脂組成物c(不揮発分14.9質量%)を得た。このコーティング用樹脂組成物cにおける(D)ツヤ消し用粒子の固形分質量比率は、全樹脂組成物固形分に対して3.5質量%となった。また、コーティング用樹脂組成物cにおける水酸基モル数に対するイソシアネート基モル数は、1.1となった。
【0052】
そして、実施例1と同様にして、ガラス板に上記のコーティング用樹脂組成物cを塗布・硬化させることによって、評価用サンプルとなる塗装品dを得た。
【0053】
(実施例4)
実施例1と同じ(A)フッ素含有樹脂を2.5質量部、実施例1と同じ(B)アクリルポリオール樹脂を22.5質量部、(D)ツヤ消し用粒子として富士シリシア化学株式会社製「サイリシア530」(平均粒子径2.7μm)を3質量部、溶剤として酢酸ブチルを72質量部、混合することによって、主剤a(不揮発分19.9質量%)100質量部を得た。
【0054】
また、実施例1と同じ(C)硬化剤を24質量部、溶剤として酢酸ブチルを76質量部、混合することによって、硬化剤b(不揮発分12質量%)100質量部を得た。
【0055】
次に、主剤a100質量部と硬化剤b100質量部を混合することによって、コーティング用樹脂組成物c(不揮発分15.9質量%)を得た。このコーティング用樹脂組成物cにおける(D)ツヤ消し用粒子の固形分質量比率は、全樹脂組成物固形分に対して10.4質量%となった。また、コーティング用樹脂組成物cにおける水酸基モル数に対するイソシアネート基モル数は、1.1となった。
【0056】
そして、実施例1と同様にして、ガラス板に上記のコーティング用樹脂組成物cを塗布・硬化させることによって、評価用サンプルとなる塗装品dを得た。
【0057】
(比較例1)
実施例1と同じ(A)フッ素含有樹脂を0.25質量部、実施例1と同じ(B)アクリルポリオール樹脂を24.75質量部、実施例1と同じ(D)ツヤ消し用粒子を3質量部、溶剤として酢酸ブチルを72質量部、混合することによって、主剤a(不揮発分20.4質量%)100質量部を得た。
【0058】
また、実施例1と同じ(C)硬化剤を24.8質量部、溶剤として酢酸ブチルを75.2質量部、混合することによって、硬化剤b(不揮発分12.4質量%)100質量部を得た。
【0059】
次に、主剤a100質量部と硬化剤b100質量部を混合することによって、コーティング用樹脂組成物c(不揮発分16.4質量%)を得た。このコーティング用樹脂組成物cにおける(D)ツヤ消し用粒子の固形分質量比率は、全樹脂組成物固形分に対して10.1質量%となった。また、コーティング用樹脂組成物cにおける水酸基モル数に対するイソシアネート基モル数は、1.1となった。
【0060】
そして、実施例1と同様にして、ガラス板に上記のコーティング用樹脂組成物cを塗布・硬化させることによって、評価用サンプルとなる塗装品dを得た。
【0061】
(比較例2)
実施例1と同じ(A)フッ素含有樹脂を15質量部、実施例1と同じ(B)アクリルポリオール樹脂を10質量部、実施例1と同じ(D)ツヤ消し用粒子を2質量部、溶剤として酢酸ブチルを73質量部、混合することによって、主剤a(不揮発分15.8質量%)100質量部を得た。
【0062】
また、実施例1と同じ(C)硬化剤を13.4質量部、溶剤として酢酸ブチルを86.6質量部、混合することによって、硬化剤b(不揮発分6.7質量%)100質量部を得た。
【0063】
次に、主剤a100質量部と硬化剤b100質量部を混合することによって、コーティング用樹脂組成物c(不揮発分16.4質量%)を得た。このコーティング用樹脂組成物cにおける(D)ツヤ消し用粒子の固形分質量比率は、全樹脂組成物固形分に対して9.8質量%となった。また、コーティング用樹脂組成物cにおける水酸基モル数に対するイソシアネート基モル数は、1.1となった。
【0064】
そして、実施例1と同様にして、ガラス板に上記のコーティング用樹脂組成物cを塗布・硬化させることによって、評価用サンプルとなる塗装品dを得た。
【0065】
(比較例3)
実施例1と同じ(A)フッ素含有樹脂を2.5質量部、(B)反応性水酸基を含有するアクリルポリオール樹脂として三菱レイヨン株式会社製「LR−199」(固形分水酸基価46mgKOH/g、不揮発分55質量%)を22.5質量部、実施例1と同じ(D)ツヤ消し用粒子を2質量部、溶剤として酢酸ブチルを73質量部、混合することによって、主剤a(不揮発分15.5質量%)100質量部を得た。
【0066】
また、実施例1と同じ(C)硬化剤を7.8質量部、溶剤として酢酸ブチルを92.2質量部、混合することによって、硬化剤b(不揮発分3.9質量%)100質量部を得た。
【0067】
次に、主剤a100質量部と硬化剤b100質量部を混合することによって、コーティング用樹脂組成物c(不揮発分9.7質量%)を得た。このコーティング用樹脂組成物cにおける(D)ツヤ消し用粒子の固形分質量比率は、全樹脂組成物固形分に対して11.5質量%となった。また、コーティング用樹脂組成物cにおける水酸基モル数に対するイソシアネート基モル数は、1.1となった。
【0068】
そして、実施例1と同様にして、ガラス板に上記のコーティング用樹脂組成物cを塗布・硬化させることによって、評価用サンプルとなる塗装品dを得た。
【0069】
(比較例4)
実施例1で得たコーティング用樹脂組成物cを厚さ2mmのガラス板にスプレーにて50g/mの塗布量で塗布した後、150℃で30分加熱することによって硬化させて塗膜を形成し、評価用サンプルとなる塗装品dを得た。
【0070】
上記のようにして実施例1〜4及び比較例1〜4で得た塗装品について、次の試験方法で、表面の防汚性、光沢度、補修性について評価を行ない、結果を表1に示す。
【0071】
(防汚性1)
塗装品の表面に市販の黒マジックペンで黒インクを付着させた後、市販のティッシュペーパーによる拭き取りを行ない、拭き取り後の黒インクの残存の有無によって評価した。評価基準は、完全に拭き取れる=「○」、わずかに痕跡が残る=「△」、はっきりと痕跡が残る=「×」とした。
【0072】
(防汚性2)
塗装品の表面にオレイン酸(ナカライテスク株式会社製)を付着させた後、40℃においてブラックライトの照射を2週間行ない、塗装品の表面に変性油汚れを付着させた。その後、市販のティッシュペーパーによる拭き取りを行ない、拭き取り後の変性油汚れの残存の有無によって評価した。評価基準は、完全に拭き取れる=「○」、わずかに痕跡が残る=「△」、はっきりと痕跡が残る=「×」とした。
【0073】
(光沢度)
JIS Z 8741に準拠し、光沢度計(株式会社堀場製作所製「IG−320」)によって60度鏡面光沢度を測定した。
【0074】
(補修性)
塗装品の表面に、次の(1)〜(3)のいずれかの前処理を行ない、前処理の程度による補修性の評価を行なった。
・前処理(1):表面をイソプロピルアルコールと清浄な布で拭き取った。
・前処理(2):コンパウンド剤(住友スリーエム株式会社製「ハンドグレーズ05990」)による磨き処理を行った。
・前処理(3):メッシュ400のサンドペーパーによる研磨処理を行った。
【0075】
そして各実施例、比較例において調製したコーティング用樹脂組成物を前処理後の塗装品の表面に、スプレーにて50g/mの塗布量で塗布した後、常温で7日間放置して硬化させることによって、補修をした評価用サンプルを得た。この評価用サンプルについて、JIS K 5400に準拠した碁盤目剥離試験を行ない、密着性の評価を行なうことで補修性を評価した。
【0076】
【表1】

【0077】
表1にみられるように、実施例1〜4、特に実施例1〜2のものは、各比較例のものよりも、良好な防汚性、ツヤ消し外観、補修性を有するものであった。特に(A)フッ素含有樹脂の固形分水酸基価が、(B)アクリルポリオール樹脂の固形分水酸基価に対して0.5倍以上2倍以下の範囲である実施例1は、優れた性能を示すものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フッ素含有オレフィン成分単位、ジメチルシロキサン成分単位を含む側鎖、および反応性水酸基を含有するフッ素含有樹脂、
(B)反応性水酸基を含有するアクリルポリオール樹脂、
(C)硬化剤、
(D)ツヤ消し用粒子、
の(A)〜(D)を含有するコーティング用樹脂組成物であって、
(A)フッ素含有樹脂の(B)アクリルポリオール樹脂に対する固形分質量比率が2/98以上50/50以下であり、
(B)アクリルポリオール樹脂の固形分水酸基価が100mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、
(C)硬化剤が多価イソシアネート類である
ことを特徴とするコーティング用樹脂組成物。
【請求項2】
(A)フッ素含有樹脂の固形分水酸基価が、(B)アクリルポリオール樹脂の固形分水酸基価に対して0.5倍以上2倍以下であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング用樹脂組成物。
【請求項3】
(A)フッ素含有樹脂のジメチルシロキサン成分単位を含む側鎖のケイ素数が20以上150以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコーティング用樹脂組成物。
【請求項4】
(D)ツヤ消し用粒子が、平均粒径が3μm以上10μm以下のシリカ粒子とポリエチレン粒子の少なくとも一方であり、(D)ツヤ消し用粒子の固形分質量比率がコーティング用樹脂組成物の全固形分に対して5%以上15%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコーティング用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティング用樹脂組成物を、基材の表面に塗布して100℃以下の温度で硬化することによって、塗膜が形成されたものであることを特徴とする塗装品。

【公開番号】特開2009−149824(P2009−149824A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330915(P2007−330915)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】