説明

コーティング組成および保護コーティング堆積方法

【課題】 全ての適用可能な産業における複雑な形状の部品の寿命を延ばすことのできる、安価な保護コーティング堆積方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、任意のボンドコート層12および中間層14を具備しあるいは具備しないケイ素含有基体を、スラリ内に浸漬させる。ベースコートが形成された後、この基体は、乾燥してから、保護コーティングが形成されるように熱処理してから、冷却する。上記スラリは、水溶液と、希土類元素の酸化物の供給源と、1つまたは複数の一過性の流体状の添加物と、を含み、上記水溶液は、ハフニウム酸化物の供給源や一過性の流体状の添加物や基体およびその堆積層に対して親和性のある流体を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護用のコーティングに関し、より詳しくは、有害な環境の影響の制限ならびに熱からの保護に効果的な適切な密度の保護用のコーティングの調整および適用を、低コストかつ効率的に行う処理に関し、これによって、全ての適用可能な産業における複雑な形状の部品の使用寿命を延ばすようにしたものである。
【0002】
米国政府は、エネルギー省による契約DE−FC−26−00CH11060に従い、本発明の所定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
公知な科学的な資料においては、環境バリアコーティング(EBC)は、ケイ素含有基体からケイ素の化学種(Si−species)の気化を防ぐために用いられている(例えば、Eatonらに付与された米国特許第6,387,456号など)。サーマルバリアコーティング(TBC)は、種々の用途において、金属基体、例えば、ニッケル基超合金など、を熱から保護するために使用され、D.R.Clarke および C.G.Levi らの論文、Annual Review of Materials Research, 2003, vol. 33, pp. 383-417 などに掲載されている。さらに、環境バリアコーティング(EBC)が、サーマルバリアコーティング(TBC)として作用することが多々あり、その逆もある。さらに、TBCまたはEBCは、酸化物/酸化物のセラミック複合材からなる保護材に使用され、これについては、 Campbell および Lane らに付与された米国特許第7,001,679号に記載されている。多数の特許公報および公開公報には、環境バリアコーティングおよびサーマルバリアコーティングが記載されているが、直線的な(line of sight)コーティング方法によってコーティングすることが難しいような複雑な形状の部品に保護用のコーティングを適用する方法は、極めて少数しかない。ガスタービンエンジンのコンポーネントや、熱交換器等は、複雑な形状であり、溶射や電子ビーム物理蒸着など当分野で公知なコーティング方法によって被覆するのが困難である。
【0004】
このような複雑な形状の部品などに対する適宜なコーティングは、低コストかつ迅速な製造速度で、1〜100milの厚みがありかつ高密度なコーティングを施す必要がある。プラズマ溶射および物理蒸着法のいずれも、直線的な(line of sight)コーティングであり、迅速に複雑な形状をコーティングするのには実用的ではない。高密度なコーティングを施す非直線的な(non−line of sight)コーティング法は、化学蒸着法(CVD)である。この技術は、厚みのある、高密度のコーティングを提供するが、CVD法は、費用が高く、速度が遅く、この方法の開発および作業者の技術を多く必要とする。環境に悪い化学前駆物質を使用し、広範囲の洗浄を必要とする廃棄物が多くの場合に生じる点から、CVD法に代替する技術が強く望まれている。
【0005】
近年では、非直線的な(non‐line of sight)コーティング方法として、電気泳動蒸着(electrophoretic deposition,「EPD」)を含むコーティング技術が、2006年2月9日に公開された米国特許出願公開第2006/0029733A1に開示されており、この出願は、譲受人であるユナイテッドテクノロジーズ社に譲渡されている。この電気泳動蒸着(EPD)法は、簡単に適用することができなく、電気的に伝導性のある基体であることと、基体の上に均一なコーティング層を堆積するための複雑な電極の設計と、が必要である。
【0006】
他のコーティング方法は、ゾル‐ゲル法を含む。このゾル−ゲル法は、複雑な形状の基体をコーティングするためによく使用される。ゾル−ゲル法は、迅速かつ安価な、高密度のコーティングを施す。しかしながら、ゾル−ゲル法によるコーティングの厚さには限界があり、過酷な環境条件に晒されても耐えることが出来るほど十分にコーティングが厚く、高密度でなければならないような所には、不適当な方法である。
【0007】
しかし、別のコーティング法には、浸漬被膜(dip coating)がある。浸漬被膜は、複雑な形状の基体の上に保護用のコーティングを堆積させるための、適宜で経済的な方法として認識されており、ネバダ州リノで2005年6月に発表された American Society of Mechanical Engineers, Paper GT 2005-68491 に掲載されている、Armstrong, Bethらによる「陰極高分子電解質を用いたムライトおよびBSAS懸濁液の流動性能 (Tailored Rheological Behavior of Mullite and BSAS Suspensions using a Cationic Polyelectrolyte)」に開示されている。一般的に、浸漬被膜法は、非直線的な(non−line−of−sight)コーティング方法であり、高い費用や複雑な設備を必要としない。しかしながら、現在の浸漬被膜法によるコーティングでは、接着性が脆弱で、厚さに均一性がない。
【0008】
従来のスラリベースのセラミック処理においては、セラミックの焼結温度は、通常、0.7〜0.8Tmであり、ここで、Tmは、セラミックの溶融温度と同一のものである。セラミックの焼結は、密度を高めることによって、セラミックに十分な結合力(cohesive strength)を与える。しかしながら、金属またはセラミックのコンポーネントの上のEBCやTBCなどのセラミックコーティングの場合、例えば、ボンディングコートや金属コンポーネントが溶解状態になるなどの種々の材料面の制約から、セラミックコーティング材料の密度を許容範囲まで高める高温まで物品を加熱することができない。さらに、焼結温度が低いと、コーティングの接着性が制限される。現在のところ、高温での処理が、弱い接着性を改善するために必要であると認識されている。しかしながら、使用する基体の物理特性によっては、高温での処理という必要条件を適用することができない。
【特許文献1】米国特許第6,387,456号
【特許文献2】米国特許第7,001,679号
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0029733A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、腐食が生じる環境に対するバリアとして作用するコーティングを調整かつ適用して、サーマルバリア機能を提供し、全ての適用可能な産業における複雑な形状の部品の寿命を延ばすことのできる、安価なプロセスが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、基体の上に保護用コーティングを堆積する方法が、基体をスラリ内に浸漬するステップと、この基体を熱処理するステップと、保護用のコーティングを基体の上に形成するように基体を冷却するステップと、を含む。上記スラリは、水溶液と、少なくとも1つの耐熱性金属酸化物と、スラリの重量の約0.1〜10%の少なくとも1つの一過性の液体状の添加物(transient fluid additive)と、を含む。
【0011】
本発明の他の側面は、スラリ内に物品を浸漬するステップと、この物品の熱処理ステップと、保護コーティングを形成するように物品を冷却するステップと、を備える方法によってコーティングされた物品を含み、上記スラリが、水溶液と、少なくとも1つの耐火性金属酸化物と、スラリの重量の約0.1〜10%の少なくとも1つの一過性の流体状の添加物と、を含む。
【0012】
本発明のさらなる側面は、コーティング組成は、少なくとも1つの耐火性金属酸化物と一過性の流体状の添加物との反応生成物と、を含み、この反応生成物が、約0.5〜6W/mkの範囲の熱伝導率を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、ケイ素含有物品、およびコーティングされたケイ素含有物品に対して保護用のコーティングを適用する方法に関する。この保護用のコーティングは、物品が、高温の燃焼環境に晒される場合に、ガス状のケイ素の化学種の形成を阻害する。この保護用のコーティングは、環境バリア層、サーマルバリア層、または化学的バリア層として機能する。
【0014】
図1〜図3に示されるように、複雑な形状の部品の一部が、基体10として示されている。ここで用いられている「複雑な形状の部品」という用語は、当業者に公知の従来の直線的な(line of sight)コーティング方法によってコーティングされるような導電性のない形状およびジオメトリの部分をさす。様々な産業分野では、複雑な形状の部品を使用しており、これらの複雑な形状の部品の全てを、本発明の方法を用いてコーティングすることができる。例えば、航空機のエンジンの製造では、ベーン、ロータブレード、燃焼ライナ、シュラウド、トランジションダクト、エアフォイルおよび実質的な管状のガスタービンのコンポーネントなどの、複雑な形状の部品をコーティングするために本発明の方法が使用され得る。多くの他の複雑なタービンエンジンおよびターボ機械のコンポーネントも、本発明の方法を用いてコーティングされ得る。例えば、外周側のプラットフォームと内周側のプラットフォームとの間に固定された複数のエアフォイルを有する、8〜20個のベーンのセットからなる一体型ベーンアッセンブリや、一体型タービンブレードアッセンブリは、本発明の方法を用いてコーティングすることができる。
【0015】
通常、基体10は、セラミック材料と、金属ベースの材料と、これらの少なくとも1つを含む組み合わせ、などを含む。例えば、基体10は、限定する趣旨ではないが、高温用の鉄合金ならびにスチール、ニッケル基超合金、ケイ素含有セラミックス、ケイ素含有金属合金、および酸化物/酸化物(oxide/oxide)を含む材料、などを含む。好ましいケイ素含有セラミックスは、限定する趣旨ではないが、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭化ケイ素複合材料、窒化ケイ素複合材料、酸窒化ケイ素、酸窒化ケイ素アルミニウム(silicon aluminum oxynitrides)、窒化ケイ素セラミックのマトリックス複合材料、および、これらの少なくとも1つを含む化合物、などを含む。好ましいケイ素含有金属合金は、限定する趣旨ではないが、モリブデン‐ケイ素合金、ニオブ‐ケイ素合金、鉄‐ケイ素合金、コバルト‐ケイ素合金、ニッケル‐ケイ素合金、タンタル‐ケイ素合金、耐火性金属ケイ化物、これらの少なくとも1つを含む組み合わせ、などを含む。好ましい酸化物/酸化物材料は、限定する趣旨ではないが、繊維強化酸化物マトリックス複合材料を含み、ここで、繊維強化材は、限定する趣旨ではないが、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、ムライト、および、これらの少なくとも1つの酸化物/酸化物材料を含む組み合わせ、などを含み、酸化物マトリックスは、限定する趣旨ではないが、アルミナ、ジルコニア、ムライト、耐火性の酸化物等、および、少なくともこれらの1つを含む組み合わせ、などを含む。
【0016】
図1〜図3に示されるように、ボンドコート層12は、任意選択的に、基体10の表面の上に堆積することができる。ボンドコート層12は、ケイ素含有基体材料と共に使用することに適している、少なくとも1つの金属ベースの複合体を含む。好ましいボンドコート層の材料は、限定する趣旨ではないが、ケイ素、ハフニウム酸化物、ハフニウム‐ケイ素酸化物(hafnium silicon oxide)、これらの少なくとも1つを含む組み合わせを含む。中間層14は、任意選択的に、ボンドコート層12の上に堆積することができる。中間層14は、ケイ素含有基体の材料と共に使用することに適している、少なくとも1つの金属基複合材料を含む。好ましい中間層の材料は、限定する趣旨ではないが、HfSiO4、BaSiO2、SrSiO2、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸イットリウム、希土類ケイ酸塩、ムライト、アルカリ土類アルミノケイ酸バリウムおよびアルカリ土類アルミノケイ酸ストロンチウムを含む。
【0017】
保護層16は、基体10の上に堆積でき、ボンドコート層12あるいは中間層14が存在していれば、これらの上に堆積することができる。保護層16は、50〜100モル%の少なくとも1つの耐火性金属酸化物を含む。例えば、ハフニウム酸化物やモノリシックなハフニウム酸化物などの耐火性金属酸化物が使用される。さらに、保護層16は、Zr、Ti、Nb、Ta、Ceおよびこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つの金属を有する、約50モル%未満の少なくとも1つの他の耐火性金属酸化物を、さらに含む。他の実施例においては、保護層16は、希土類元素、Y、Sc、Al、Siおよびこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つの金属を有する、約50モル%未満の他の耐火性金属酸化物を含む。さらに他の実施例においては、保護層16は、Ba、Sr、Si、Alおよびこれらの混合物からなる群から選択された金属を有する、約50モル%未満の他の耐火性金属酸化物を含む。別の実施例においては、保護層は、希土類元素、Y、Sr、La、Gd、Sm、Lu、Yb、Er、Pr、Pm、Dy、Ho、Euおよびこれらの混合物からなる群から選択された金属を有する、約50モル%未満の少なくとも1つのケイ酸塩を含む。
【0018】
図4に示されるように、ここに記載されている保護用のコーティングを適用する方法は、基体上の保護コーティングの全体の接着性および均一性を改善する。例示の目的のためであって限定する趣旨ではないが、この方法は、一連のステップに記載されており、この中の幾つかのステップは任意であり、限定する趣旨ではないが、対象とする用途、処理条件、などの項目に基づいて変更可能である。この方法は、通常、図4のステップ1で記載されているように、基体を提供する。この基体は、基体10と後述の任意の中間層14との間に堆積される、任意のボンドコート層12を含み得る(図4のステップ2)。任意の中間層14は、任意のボンドコート層12と後述の保護層16との間に堆積するか、もしくは基体10と後述のボンドコート層12との間に堆積することができる(図4のステップ3)。
【0019】
任意のボンドコート層12は、限定する趣旨ではないが、溶射、スラリコーティング、蒸着(物理蒸着および化学蒸着)およびこれらの方法の少なくとも1つを含む組み合わせ、などの当分野における適宜な方法によって、ケイ素含有基体10に適用することができる。さらに、任意の中間層14は、基体10または任意のボンドコート層12に対して、当分野で公知の同様の方法およびこれらの組み合わせによって、適用することができる。
【0020】
保護層16は、好ましくは、スラリディップコーティング(slurry dip coating)技術を用いて適用することができる。このスラリディップコーティング技術では、通常、任意のボンドコート層12および中間層14を具備しあるいは具備しないケイ素含有基体をスラリ内に浸漬させる。このスラリは、水溶液と、希土類元素の酸化物の供給源と、1つまたは複数の一過性の流体状の添加物と、を含む。この水溶液は、上記ハフニウム酸化物の供給源や一過性の流体状の添加物や基体およびその堆積層に対し親和性のある流体からなり、例えば、限定する趣旨ではないが、La、Gd、Sm、Lu、Yb、Er、Pr、Pm、Dy、Ho、Euおよびこれらの混合物などの、希土類元素およびその酸化物など、を含む溶液からなる。好ましくは、ハフニウム酸化物やハフニアを含む溶液が使用される。さらに、この水溶液は、1つまたは複数の金属イオンを含有する可溶な塩を含むことで、希土類元素の酸化物の供給源として役割を果たす場合もある。代替としては、上述の希土類元素の1つを、水溶液に加え、希土類金属の酸化物の供給源を形成するように反応させる。好ましくは、硝酸ハフニウム、酢酸ハフニウムが、水溶液に加えられ、ハフニウム酸化物が形成される。
【0021】
一過性の流体状の添加物は、結晶粒の成長を促進し、結晶粒間に孔が形成されないように使用される。後述する添加物を添加することで、孔が形成されずに、かつ結晶粒が成長することで接着性が改善されることが判明した。一過性の流体状の添加物は、通常、シリカまたはチタニアの供給源を含む。このようなシリカまたはチタニアの供給源は、限定する趣旨ではないが、前駆溶液、コロイド、懸濁液、粉末、などを含む。代表的なシリカの供給源は、限定する趣旨ではないが、ケイ素酸化物、ケイ酸リチウム、フュームドシリカの粉末、コロイド状のシリカ、これらの少なくとも1つを含む組み合わせ、などを含む。シリカ、あるいはチタニアを使用した場合でも、粒子の寸法は、層と層との間、例えば、保護用のコーティング層と任意の中間層との間、もしくは保護用コーティング層と任意のボンドコート層との間、あるいは保護用コーティング層とケイ素含有基体との間などの、層と層との間の接着性に良い影響を与える。一過性の流体状の添加物は、重量%で、スラリの約0.1〜10%、好ましくは、約0.5%〜8%、最も好ましくは、約1〜5%である。一過性の流体状の添加物としてケイ酸リチウムを用い、希土類元素の酸化物の供給源としてハフニウム酸化物を用いた場合、例えば、ケイ酸リチウムは分解しケイ素酸化物を形成し、このケイ素酸化物は、ハフニウム酸化物と反応し、ハフニウム酸化物の結晶粒間、ならびにハフニウム酸化物とケイ素酸化物との間、に、ケイ酸ハフニウムの層を形成する。このように、一過性の流体状の添加物と保護層の耐火性金属酸化物との反応物によって、結晶粒間の孔の形成が効率的に解消され、結晶粒が成長し、接着性が改善される。
【0022】
ケイ素含有基体10、任意のボンドコート層12および任意の中間層14は、所望の保護層16のベースコートを形成するようにスラリ内に浸漬される(図4のステップ4)。ベースコートが形成されると、被覆された基体は、12〜36時間、好ましくは、18〜30時間、最も好ましくは約24時間の間、周囲の温度、例えば室温で乾燥することができる(図4のステップ5)。乾燥後、被覆されたケイ素含有基体は、2°C/分〜5°C/分の速度で、好ましくは、3°C/分の速度で、約300〜500°C、好ましくは、400°Cの温度範囲になるまで熱処理され、この温度は、約2〜4時間、好ましくは約3時間維持される(図4のステップ6)。その後、2°C/分〜5°C/分の速度で、好ましくは、3°C/分の速度で、約1250〜1450°C、好ましくは、約1350°Cまで、温度を上昇させ、この温度は、約2〜7時間、好ましくは約5時間、維持される。その後、ケイ素含有基体は、5°C/分〜15°C/分の速さ、好ましくは約10°C/分の速さで、周囲温度、例えば室温に達するまで冷却される(図4のステップ7)。
【0023】
本発明に引用されるほとんどの実施例においては、ケイ素含有セラミック基体に適用される環境バリアコーティング(EBC)を扱っているが、基体は、いかなるセラミックコンポーネントあるいは耐火性金属およびニッケル基超合金からなっていてもよい。本発明の方法は、複雑な形状部品の上の保護層の堆積方法に関する。これらの複雑な形状の部品は、通常、高温で、水分を含む(aqueous)化学的に過酷な環境に晒される。通常、このような複雑な形状の部品を、従来技術の直線的な(line of sight)コーティング方法によって効率的にコーティングすることは、場合によっては不可能ではなくとも困難であった。複雑な形状部品のジオメトリは、従来の物理的な堆積法のプラズマガンもしくはガス状の前駆物質の化学種(precursor species)でコーティングすることが困難である。従来の溶射/物理蒸着法によって、簡単にあるいは効果的に被覆することができない複雑な形状部品に着目すると、本発明で概略を述べた非直線的なコーティング法は、例えば、(i)従来は、空気溶射/電子ビーム‐物理蒸着によって行われていた処理や修復コーティングのための低コストの方法として、および(ii)複雑な形状の部品の上に必要とされる寸法公差(dimentional tolerance)の薄いコーティングを適用する方法として、機能する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】任意のボンドコート層、任意の中間層および保護用のトップコート層でコーティングされた基体の一部を示す図。
【図2】任意のボンドコート層および保護用のトップコート層でコーティングされた基体の一部を示す図。
【図3】保護用のトップコート層でコーティングされた基体の一部を示す図。
【図4】複雑な形状の基体の上に保護用のコーティングを配置する方法を示したフローチャート。
【符号の説明】
【0025】
10…基体
12…ボンドコート
14…中間層
16…保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体をスラリ内に浸漬する浸漬ステップであって、上記スラリが、水溶液と、少なくとも1つの耐火性金属酸化物と、上記スラリに対して重量%で約0.1〜10%の少なくとも1つの一過性の流体状の添加物と、を含むステップと、
上記基体を熱処理する熱処理ステップと、
保護コーティングを上記基体の上に形成するように、上記基体を冷却する冷却ステップと、
を備えることを特徴とする基体の保護コーティング堆積方法。
【請求項2】
上記浸漬ステップの前に、ボンドコートを上記基体に適用するステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の基体の保護コーティング堆積方法。
【請求項3】
上記浸漬ステップの前に、中間層を上記ボンドコートの上に適用することをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の基体の保護コーティング堆積方法。
【請求項4】
上記熱処理ステップの前に、上記基体を乾燥させる乾燥ステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の基体の保護コーティング堆積方法。
【請求項5】
上記乾燥ステップが、上記基体を約24時間に亘り大気に晒すことを含む請求項4に記載の基体の保護コーティング堆積方法。
【請求項6】
上記熱処理ステップが、
約3°C/分の速度で約400°Cの第1の温度まで上記基体を熱処理し、
上記第1の温度を約3時間保持し、
約3°C/分の速度で第1の温度から約1350°Cの第2の温度まで上記基体を熱処理し、
上記第2の温度を約7時間保持する
ことを特徴とする請求項1に記載の基体の保護コーティング堆積方法。
【請求項7】
上記冷却ステップが、周囲温度に達するまで、約10°C/分の速度で温度を低下させることを特徴とする請求項1に記載の基体の保護コーティング堆積方法。
【請求項8】
上記少なくとも1つの耐火性金属酸化物が、約50〜100モル%の第1の耐火性金属酸化物および、約50%未満の少なく1つの第2の耐火性金属酸化物を含み、この第2の耐火性金属酸化物が、ハフニウム、ジルコニウム、チタニウム、ニオブ、タンタル、セリウム、イットリウム、スカンジウム、アルミニウム、シリコン、バリウム、ストロンチウム、ランタン、ガドリニウム、サマリウム、ルテチウム、イッテルビウム、ユーロピウム、プラセオジミウム、ジスプロシウム、エルビウム、プロメチウムおよびホルミウムからなる群から選択された金属を含むことを特徴とする請求項1に記載の基体の保護コーティング堆積方法。
【請求項9】
上記少なくとも1つの一過性の流体状の添加物が、ケイ素酸化物、ケイ酸リチウム、フュームドシリカの粉末、コロイド状のシリカからなる群から選択されたシリカベースの材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の基体の保護コーティング堆積方法。
【請求項10】
上記一過性の流体状の添加物が、チタニアベースの材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の基体の保護コーティング堆積方法。
【請求項11】
スラリ内に物品を浸漬し、上記スラリが、水溶液と、少なくとも1つの耐火性金属酸化物と、重量%で、上記スラリの約0.1〜10%の少なくとも1つの一過性の流体状の添加物と、を含み、
上記物品を熱処理し、
保護コーティングが形成されるように上記物品を冷却する、
プロセスによってコーティングされたことを特徴とする物品。
【請求項12】
上記物品が、ガスタービンエンジンのコンポーネントであることを特徴とする請求項11に記載の物品。
【請求項13】
上記コンポーネントが、ベーン、ブレード、燃焼室ライナ、シュラウド、トランジションダクトおよびエアフォイルの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項12に記載の物品。
【請求項14】
上記コンポーネントが複雑な形状を有することを特徴とする請求項12に記載の物品。
【請求項15】
上記複雑な形状が、実質的に管状であることを特徴とする請求項12に記載の物品。
【請求項16】
上記コンポーネントが表面を備え、その上に保護コーティングを有することを特徴とする請求項12に記載の物品。
【請求項17】
上記保護コーティングが、少なくとも1つの耐火性金属酸化物と、一過性の流体状の添加物と、の反応生成物を含み、かつ反応生成物が、約0.5〜6W/mkの範囲の熱伝導率を有することを特徴とする請求項16に記載の物品。
【請求項18】
上記少なくとも1つの耐火性金属酸化物が、約50〜100モル%の第1の耐火性金属酸化物、および約50モル%未満の少なくとも第2の耐火性金属酸化物を含み、この第2の耐火性金属酸化物は、ハフニウム、ジルコニウム、チタニウム、ニオブ、タンタル、セリウム、イットリウム、スカンジウム、アルミニウム、シリコン、バリウム、ストロンチウム、ランタン、ガドリニウム、サマリウム、ルテチウム、イッテルビウム、ユーロピウム、プラセオジミウム、ジスプロシウム、エルビウム、プロメチウム、ホルミウムおよびこれらの混合物からなる群から選択された金属を含むことを特徴とする請求項17に記載の物品。
【請求項19】
上記表面と上記保護コーティングとの間に堆積されたボンドコートを含むことを特徴とする請求項16に記載の物品。
【請求項20】
上記ボンドコートが、ケイ素、ハフニウム酸化物およびハフニウム‐ケイ素酸化物の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項16に記載の物品。
【請求項21】
上記ボンドコートと上記保護コーティングとの間に堆積された中間層をさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の物品。
【請求項22】
上記中間層が、HfSiO4、BaSiO2、SrSiO2、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸イットリウム、希土類ケイ酸塩、ムライト、アルカリ土類アルミノケイ酸バリウム、アルカリ土類アルミノケイ酸ストロンチウムおよびこれらの混合物からなる群から選択された材料を含むことを特徴とする請求項21に記載の物品。
【請求項23】
上記中間層が、シリコン、ハフニウム酸化物およびハフニウム‐ケイ素酸化物の少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項21に記載の物品。
【請求項24】
少なくとも1つの耐火性金属酸化物と、少なくとも1つの一過性の流体状の添加物と、の反応生成物を含むとともに、この反応生成物が、約0.5〜6W/mkの範囲の熱伝導率を備えることを特徴とするコーティング組成。
【請求項25】
上記少なくとも1つの耐火性金属酸化物が、約50〜100モル%の第1の耐火性金属酸化物と、約50%未満の少なくとも1つの第2の耐火性金属酸化物と、を含み、この第2の耐火性金属酸化物は、ハフニウム、ジルコニウム、チタニウム、ニオブ、タンタル、セリウム、イットリウム、スカンジウム、アルミニウム、シリコン、バリウム、ストロンチウム、ランタン、ガドリニウム、サマリウム、ルテチウム、イッテルビウム、ユーロピウム、プラセオジミウム、ジスプロシウム、エルビウム、プロメチウム、ホルミウムおよびこれらの混合物からなる群から選択された金属を含むことを特徴とする請求項24に記載のコーティング組成。
【請求項26】
上記少なくとも1つの一過性の流体状の添加物が、ケイ素酸化物、ケイ酸リチウム、フュームドシリカの粉末およびコロイド状のシリカからなる群から選択された少なくとも1つのシリカベースの材料を含むことを特徴とする請求項24に記載のコーティング組成。
【請求項27】
上記少なくとも1つの一過性の流体状の添加物が、チタニアベースの材料であることを特徴とする請求項24に記載のコーティング組成。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−230856(P2007−230856A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340701(P2006−340701)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】