説明

コーティング組成物、硬化膜、光学積層体及びその製造方法

【課題】ポリエステルフィルム基材表面に前処理を必要とせずに高い密着性を有し、かつ優れた帯電防止性能、硬度及び光学特性を有する硬化膜を形成するためのコーティング組成物を提供する。
【解決手段】ポリエステル樹脂、熱架橋剤、光重合反応性モノマー、光重合開始剤、及び、金属又は金属酸化物の分散粒子を含有し、上記ポリエステル樹脂は水酸基価が5〜20KOHmg/gであるコーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング組成物、硬化膜、光学積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等の画像表示装置においては、一般に最表面には反射防止性、ハード性や透明性等の種々の機能を有する光学積層体が設けられている(特許文献1)。
【0003】
このような光学積層体の基材として、透明性、平滑性、耐熱性を備え、機械的強度に優れる点から、ポリエステル、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等が従来より使用されている。なかでも、透明性が高い点や、比較的安価である点から、ポリエチレンテレフタラート(PET)に代表されるポリエステルフィルムが、よく使用されている。
【0004】
しかしながら、ポリエステルフィルム表面にコーティングを施す場合、ポリエステルフィルムは表面の凹凸が小さく、密度が高いため、上記ポリエステルフィルム上に形成される皮膜との密着性が低いといった問題があった。このため、フィルム表面にコロナ処理を施して表面を荒したり、プライマー層を設ける等の前処理を行うことが必要であり、そのため光学積層体の製造工程が煩雑となり、高いコストを必要としていた。
【特許文献1】特開2006−126808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みて、ポリエステルフィルム基材表面に前処理を必要とせずに高い密着性を有し、かつ優れた帯電防止性能、硬度及び光学特性を有する硬化膜を形成するためのコーティング組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリエステル樹脂、熱架橋剤、光重合反応性モノマー、光重合開始剤、及び、金属又は金属酸化物の分散粒子を含有し、上記ポリエステル樹脂は水酸基価が5〜20KOHmg/gであることを特徴とするコーティング組成物である。
上記ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度60℃以上であることが好ましい。
上記熱架橋剤は、ブロックイソシアネートであることが好ましい。
上記光重合反応性モノマーと上記ポリエステル樹脂との混合比は、固形分質量比で3/5〜7/5であるであることが好ましい。
上記金属又は金属酸化物の分散粒子は、スズ酸化物のナノ粒子であることが好ましい。
上記コーティング組成物は、ハードコート層形成用組成物であることであることが好ましい。
【0007】
本発明はまた、上述のコーティング組成物により形成されることを特徴とする硬化膜である。
本発明はまた、ハードコート層及び光透過性基材を有する光学積層体の製造方法であって、上述のコーティング組成物を使用して光透過性基材上にハードコート層を形成する工程を包含することを特徴とする光学積層体の製造方法でもある。
上記光透過性基材は、未処理のポリエステルフィルムであることが好ましい。
本発明はまた、上述の光学積層体の製造方法により製造されることを特徴とする光学積層体でもある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明は、特定の水酸基価を有するポリエステル樹脂、熱架橋剤、光重合反応性モノマー、光重合開始剤、及び、金属又は金属酸化物の分散粒子を含有することを特徴とするコーティング組成物である。このため、未処理のポリエステル基材上に、密着性が高く、かつ所望の硬度、帯電防止性能及び光学特性等に優れる硬化膜を形成することができるものである。
本発明のコーティング組成物には、ポリエステル基材表面と同種の化学種であるポリエステル樹脂を使用する。このため、熱架橋剤を使用することによって、基材表面の末端水酸基とも反応することで、形成される硬化膜の基材に対する密着性を高めることができると推測される。更に、上記コーティング組成物は、紫外線硬化樹脂及び光重合開始剤、金属又は金属酸化物の分散粒子を含有することにより、上記密着性のみならず、硬度、帯電防止性、光学特性に優れた硬化膜を形成することができるものである。
【0009】
このように、本発明のコーティング組成物は、ポリエステルフィルムに煩雑な前処理を施す必要がなく、表面が未処理であるポリエステルフィルム上に、密着性に優れた硬化膜を形成することができるものであるため、例えば、この硬化膜を有する光学積層体の製造工程を簡略化することができて、コスト低減を図ることができる。
【0010】
上記コーティング組成物は、ポリエステル樹脂を含む。上記ポリエステル樹脂を含むと、透過性基材と同種の化学種であることから、密着性に優れる硬化膜を形成することできる。
上記ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸を主成分とした酸成分と、多価アルコールを主成分としたアルコール成分とを原料として通常の方法により縮重合することにより得ることができる。
【0011】
上記酸成分としては、特に限定されず、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、トリメリット酸及びこれらの無水物、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類及びこれらの無水物、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸類及びこれらの無水物等を挙げることができる。その他に、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類ならびにこれらに対応するヒドロキシカルボン酸類、p−オキシエトキシ安息香酸等の芳香族オキシモノカルボン酸類等を挙げることができる。上記酸成分は2種以上であってもよい。なかでも、化合物の安定性が高いという点で、テレフタル酸であることが好ましい。
【0012】
上記アルコール成分としては、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAアルキレンオキシド付加物、ビスフェノールSアルキレンオキシド付加物、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−オクタデカンジオール等のジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール類等を挙げることができる。上記アルコール成分は2種以上であってもよい。
【0013】
上記ポリエステル樹脂は、水酸基価が5〜20KOHmg/gである。特定の水酸基価を有するポリエステル樹脂を使用することにより、効果的に密着性を付与することができる。5KOHmg/g未満であると、形成される硬化膜の、基材への密着性が低下する。20KOHmg/gを超えると、分子量が低下し、硬化膜を形成する際の、加熱工程での不具合が生じる他、形成される硬化膜の熱的安定性を損なう。上記水酸基価は、6〜16KOHmg/gであることが好ましい。
【0014】
上記ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が60℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度は、使用するモノマーの配合割合によって設計することができるため、上述したモノマー成分から選択して組み合わせることで、60℃以上とすることができる。上記ガラス転移温度が60℃未満であると、硬化膜を形成する際の、加熱工程での不具合が生じる他、形成される硬化膜の熱的安定性を損なうおそれがある。上記ガラス転移温度は、65〜100℃であることがより好ましい。なお、上記ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)による測定により得られる値である。
【0015】
上記ポリエステル樹脂は、数平均分子量が10000〜30000であることが好ましい。10000未満であると、硬化膜を形成する内の、加熱工程での不具合が生じる他、形成される硬化膜の熱的安定性を損なうおそれがある。30000を超えると、溶剤溶解性が低下し、インキ化が困難になる、あるいは成膜性が低下するおそれがある。上記数平均分子量は、15000〜20000であることがより好ましい。
なお、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるスチレン換算にて得られた数値である。
【0016】
上記コーティング組成物は、熱架橋剤を含む。
上記熱架橋剤は、ポリエステル樹脂が有する官能基と架橋反応を生じる化合物であり、例えば、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、キレート化合物、メラミン樹脂などを挙げることができる。なかでも、室温でのインキ安定性(ポットライフ)や加熱乾燥時の反応性が良好である点で、イソシアネート化合物であることが好ましい。
【0017】
上記イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,5−若しくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートNBDI)等の脂肪族若しくは脂環族ジイソシアネート化合物;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタクリル酸2−(0−〔1’メチルプロピリデンアミノ〕カルボキシアミノ)エチル、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート等の不飽和基含有イソシアネート;これらジイソシアネート化合物の二量体,三量体及びトリメチロールプロパン付加物等のポリイソシアネート化合物を挙げることができる。これらは反応性を制御するため、一部又は全部が活性水素化合物でブロックされたものであってもよい。
また、上記不飽和基含有イソシアネートは、ポリエステル樹脂の水酸基との反応のみならず、光重合反応性モノマーとも反応し得るため、架橋密度の高い、硬度及び密着性により優れる皮膜を形成することができる
なかでも、混合時に他成分と反応しにくい点から、ブロックイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0018】
上記熱架橋剤の市販品としては、例えば、デュラネートMF(商品名、HMDI系イソシアネート、旭化成ケミカルズ社製)、カレンズMOI−BM(商品名、不飽和基含有イソシアネート、ブロック体、昭和電工社製)等を挙げることができる。
【0019】
上記熱架橋剤の配合量は、ポリエステル樹脂固形分100質量部に対して、10〜40質量部であることが好ましい。10質量部未満であると、架橋反応が進行しても架橋密度が上がらず、所望の膜硬度が得られないおそれがある。40質量部を超えると、未反応の架橋剤の残留により、膜の密着性が低下するおそれがある。上記配合量は、20〜35質量部であることがより好ましい。
【0020】
上記熱架橋剤として、イソシアネート化合物を使用する場合、未反応の架橋剤の残留により、膜の密着性低下を抑制するため、上記イソシアネート化合物のNCO基当量は、上記ポリエステル樹脂の水酸基当量と同じか、又は上回る配合比であることが好ましい。
【0021】
上記コーティング組成物は、光重合反応性モノマーを含有する。
上記光重合反応性モノマーを含有することにより、上記ポリエステル樹脂及び熱架橋剤による熱硬化性成分だけでなく、紫外線硬化性成分も含む硬化膜を形成することで、より密着性が高く、かつ硬度や光学特性に優れる硬化膜を得ることができる。
上記光重合反応性モノマーは、例えば、アクリレート系の官能基を有する化合物等の1又は2以上の不飽和結合を有する化合物を挙げることができる。
1の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。2以上の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能化合物と(メタ)アルリレート等の反応生成物(例えば多価アルコールのポリ(メタ)アクリレートエステル)、等を挙げることができる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを指すものである。これらは、2種以上を併用してもよい。なかでも、硬化時に高い架橋密度を形成することができる点で、多官能化合物であることが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)であることがより好ましい。
【0022】
また、上記光重合反応性モノマーは、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコンアクリレート等のオリゴマーを含んでいてもよい。これらは、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記光重合反応性モノマーと上記ポリエステル樹脂との混合比は、固形分質量比で3/5〜7/5であることが好ましい。上記質量比が3/5未満であると、充分な膜硬度を確保できないおそれがある。7/5を超えると、ポリエステル成分の効果が薄れ、膜の密着性が低下するおそれがある。上記混合比は、4/5〜6/5であることがより好ましい。
【0024】
上記コーティング組成物は、光重合開始剤を含む。
上記光重合開始剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができ、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類を挙げることができる。上記光重合開始剤の市販品としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンである、Irgacure 184(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を挙げることができる。
また、光増感剤を混合して用いてもよく、その具体例としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホソフィン等が挙げられる。
【0025】
上記光重合開始剤の配合量は、上記コーティング組成物中の光重合反応性モノマー全固形分100質量部に対して、2〜20質量部であることが好ましい。2質量部未満であると、充分な光重合反応性が得られないおそれがある。20質量部を超えると、未反応の開始剤の残留による耐久性低下等の悪影響が生じるおそれがある。上記配合量は、5〜10質量部であることがより好ましい。
【0026】
上記コーティング組成物は、金属又は金属酸化物の分散粒子を含む。上記金属又は金属酸化物の分散粒子を含むことにより、硬度、光学特性の調整が容易で、かつ形成される硬化膜に帯電防止性能を付与することができる。
上記金属又は金属酸化物の分散粒子としては、スズ、亜鉛又はこれらの酸化物の微粉末を挙げることができる。なかでも、硬度と帯電防止性能を両立できる点で、スズ酸化物のナノ粒子が好ましい。
【0027】
また上記分散粒子は、溶媒に分散させて使用してもよく、無溶媒で使用するものであってもよい。上記分散粒子を分散することのできる溶媒としては、水、メチルエチルケトン、プロプレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。
【0028】
上記金属又は金属酸化物の分散粒子の平均粒径は、10〜100nmであることが好ましい。10nm未満であると、膜硬度の低下や、凝集による膜質の低下が生じるおそれがある。100nmを超えると、光透過率が低下し、光学積層体とした際の光学特性低下を生じるおそれがある。上記平均粒径は、20〜50nmであることがより好ましい。なお、上記平均粒径は、5質量%のメチルエチルケトン分散液として、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を使用して測定して得られた値である。
【0029】
上記金属又は金属酸化物の分散粒子の市販品としては、例えば、酸化スズナノ分散液(粒径20〜50nm、シーアイ化成社製)、酸化亜鉛分散液(粒径20〜40nm、理化学社製)等を挙げることができる。
【0030】
上記金属又は金属酸化物の分散粒子の配合量は、コーティング組成物樹脂固形分100質量部に対して、35〜65質量部(固形分)であることが好ましい。35質量部未満であると、充分な硬度、帯電防止性を確保できないおそれがある。65質量部を超えると、膜質が脆化するおそれがある。上記配合量は、45〜55質量部であることがより好ましい。
【0031】
上記コーティング組成物は、上述した成分の他に、フッ素系又はシリコーン系などのレベリング剤を添加することが好ましい。レベリング剤を添加すると、塗布または乾燥時に塗膜表面に対して酸素による硬化阻害を有効に防止し、かつ、耐擦傷性の効果とを付与することを可能とする。レベリング剤としては、例えば、大日本インキ化学工業社製メガファックシリーズ等を挙げることができる。
また、上記コーティング組成物は、必要に応じて、防眩剤、帯電防止剤等のその他の任意成分が含まれていてもよい。これらは公知のものを使用することができる。
【0032】
上記コーティング組成物は、上記ポリエステル樹脂、熱架橋剤、光重合反応性モノマー、光重合開始剤、金属又は金属酸化物の分散粒子、及び、必要に応じてその他の成分と溶媒とを混合して分散処理することにより得ることができる。
上記溶媒としては、水;イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ハロゲン化炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;またはこれらの混合物が挙げられ、好ましくは、ケトン類、エステル類が挙げられる。なかでも、良好な成膜性が確保できる点で、ケトン類であることが好ましい。
また、溶媒は使用せず、無溶媒型のコーティング組成物であってもよい。
【0033】
上記コーティング組成物を、光透過性基材上に塗布して、これを加熱及び/又は活性エネルギー線照射により硬化させることにより、硬化膜を形成することができる。このような硬化膜も本発明の一つである。
【0034】
上記光透過性基材としては、ポリエステルフィルムであることが好ましい。本発明のコーティング組成物の樹脂成分と同種の成分を有するフィルムを使用することにより、硬化膜と基材との密着性をより高めることができる。
上記ポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂からなるフィルムを挙げることができ、なかでも2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)基材であることがより好ましい。
【0035】
上記ポリエステルフィルムは、未処理のものでよい。未処理とは、ポリエステルフィルム表面上にコーティングをする場合に、従来行われていたコロナ放電処理や酸化処理、アンカー剤もしくはプライマーによる処理等の公知の処理を行わないことである。本発明のコーティング組成物は、上述した処理を行わなくても、未処理のポリエステルフィルム上に、密着性が高く、かつ帯電防止性能、硬度及び光学特性に優れる硬化膜を形成することができるので、製造工程等を簡略化でき、製造コストを低減させることができる。
【0036】
上記光透過性基材の厚みは、10〜300μmであることが好ましく、20〜200μmであることがより好ましい。
【0037】
上記塗布の方法としては、ロールコート法、ミヤバーコート法、グラビアコート法等の塗布方法を挙げることができる。
上記加熱の方法としては、50〜90℃で0.5〜3分間加熱する方法を挙げることができる。
【0038】
上記活性エネルギー線照射としては、紫外線又は電子線による照射を挙げることができる。紫外線源の具体例としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源が挙げられる。紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
【0039】
上記コーティング組成物により形成された硬化膜の膜厚みは、0.1〜100μmであることが好ましい。0.1μm未満であると、充分な膜硬度が得られないおそれがある。100μmを超えると、透過率が低下し、光学積層体とした際の光学特性低下を生じるおそれがある。上記膜厚みは0.8〜20μmであることがより好ましい。
【0040】
上記コーティング組成物により形成された硬化膜は、表面に凹凸形状を有するものであってもよい。表面に凹凸形状を有することにより、光学積層体を画像表示装置に設置した場合に、外光による反射や像の映り込み、色むら等による視認性の低下を防ぐことができる。
上記凹凸形状は、公知の方法により形成することができる。
【0041】
上記コーティング組成物により形成された硬化膜は、JIS K5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すものであることが好ましい。上記の硬度を有する硬化膜であると、上記硬化膜は光学積層体のハードコート層として使用することができる。このように、本発明のコーティング組成物により形成される硬化膜は、基材表面に対して高い密着性を有し、かつ所望の帯電防止性能、光学特性及び硬度を有するものであるため、光学積層体の帯電防止層を兼ねたハードコート層であることが好ましい。
【0042】
このように、本発明のコーティング組成物を使用して、光透過性基材上にハードコート層を形成することにより光学積層体を製造することができる。
すなわち、本発明はまた、ハードコート層及び光透過性基材を有する光学積層体の製造方法であって、上述のコーティング組成物を使用して光透過性基材上にハードコート層を形成する工程を包含することを特徴とする光学積層体の製造方法である。上記光透過性基材は、上述したように、未処理のポリエステルフィルムを使用することで、製造工程を簡略化でき、製造コストを低減することができる。
また、そのような製造方法により得られる光学積層体もまた本発明の一つである。
【0043】
上記光学積層体は、上記ハードコート層及び光透過性基材の他に、必要に応じて防眩層、帯電防止層、低屈折率層等を有していてもよい。これらは、公知の防眩剤、帯電防止剤、低屈折率剤等の成分や樹脂、溶媒等を含む組成物を調製して、公知の方法により形成することができる。
【0044】
上記光学積層体は、表面抵抗率が1010Ω/□以下であることが好ましい。上記範囲内の値でないと、充分な帯電防止性能を発揮することができないおそれがある。上記表面抵抗率は、10Ω/□以下であることがより好ましい。
【0045】
上記光学積層体は、光透過率が90%以上であることが好ましい。90%未満であると、ディスプレイ表面に貼り付けた場合に輝度低下を起こすおそれがある。上記光透過率は、95%以上であることがより好ましい。
上記光学積層体は、ヘイズ値が10%以下であることが好ましい。10%を超えると、ディスプレイ表面に貼り付けた場合に、視認性に悪影響を及ぼすおそれがある。上記ヘイズ値は、5%以下であることがより好ましい。
【0046】
なお、光学積層体が最表面に凹凸形状を有する場合には、表面ヘイズ値が10%以下であることが好ましく、さらに、5%以下であることがより好ましい。表面ヘイズ値とは、光学積層体最表面の散乱起因によるヘイズ値を意味しており、以下のように求めることができる。
まず、最表面の凹凸上に、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の樹脂をトルエン等で希釈し、固形分60%としたもの(リコート剤)をワイヤーバーで乾燥膜厚が8μmとなるように塗布する。これによって、最表面上の表面凹凸がつぶれ、平坦な層となる。ただし、この最表面の層を形成する組成物中にレベリング剤等が入っていることで、上記リコート剤がはじきやすく濡れにくいような場合は、あらかじめ光学積層体をケン化処理(2mol/lのNaOH(KOH)溶液(55℃)に3分浸したのち、水洗し、水滴を拭き取る等して完全に除去した後、50℃オーブンで1分乾燥する)により、親水処理を施すとよい。
上述のようにして得られた、表面を平坦にした光学積層体は、表面凹凸による光散乱起因のヘイズをもたない、内部ヘイズだけを持つ状態となっている。従って、上記表面を平坦にした光学積層体のヘイズ値を測定することにより、内部ヘイズ値を得ることができる。そして、上記内部ヘイズ値を、元の光学積層体フィルムのヘイズ値(全体ヘイズ値)から、差し引いた値が、表面凹凸だけに起因するヘイズ値(表面ヘイズ値)として求められる。
【0047】
本発明の光学積層体の一態様について、図を用いて説明する。図1は、上から順に、低屈折率層1、ハードコート層2、光透過性基材3を備えてなる光学積層体を示す。本発明の光学積層体は、目的に応じて任意の層からなるものであってもよく、上述した態様に限定されないものである。
【0048】
偏光素子の表面に、本発明による光学積層体を、上記光学積層体におけるハードコート層が存在する面と反対の面に設けることによって、偏光板とすることができる。このような偏光板も、本発明の一つである。
【0049】
上記偏光素子としては特に限定されず、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等を使用することができる。上記偏光素子と本発明の光学積層体とのラミネート処理においては、光透過性基材(ポリエステルフィルム)にケン化処理を行うことが好ましい。ケン化処理によって、接着性が良好になり帯電防止効果も得ることができる。
【0050】
本発明は、最表面に上記光学積層体又は上記偏光板を備えてなる画像表示装置でもある。上記画像表示装置は、LCD等の非自発光型画像表示装置であっても、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT等の自発光型画像表示装置であってもよい。
【0051】
上記非自発発光型の代表的な例であるLCDは、透過性表示体と、上記透過性表示体を背面から照射する光源装置とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がLCDである場合、この透過性表示体の表面に、本発明の光学積層体又は本発明の偏光板が形成されてなるものである。
【0052】
本発明が上記光学積層体を有する液晶表示装置の場合、光源装置の光源は光学積層体の下側から照射される。なお、STN型の液晶表示装置には、液晶表示素子と偏光板との間に、位相差板が挿入されてよい。この液晶表示装置の各層間には必要に応じて接着剤層が設けられてよい。
【0053】
上記自発発光型画像表示装置であるPDPは、表面ガラス基板と当該表面ガラス基板に対向して間に放電ガスが封入されて配置された背面ガラス基板とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がPDPである場合、上記表面ガラス基板の表面、又はその前面板(ガラス基板又はフィルム基板)に上述した光学積層体を備えるものでもある。
【0054】
上記自発発光型画像表示装置は、電圧をかけると発光する硫化亜鉛、ジアミン類物質:発光体をガラス基板に蒸着し、基板にかける電圧を制御して表示を行うELD装置、又は、電気信号を光に変換し、人間の目に見える像を発生させるCRTなどの画像表示装置であってもよい。この場合、上記のような各表示装置の最表面又はその前面板の表面に上述した光学積層体を備えるものである。
【0055】
本発明の画像表示装置は、いずれの場合も、テレビジョン、コンピュータ、ワードプロセッサなどのディスプレイ表示に使用することができる。特に、CRT、液晶パネル、PDP、ELD、FED等の高精細画像用ディスプレイの表面に好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0056】
本発明のコーティング組成物は、上述した構成からなるものであるため、良好な硬度、帯電防止性及び光学特性に加え、基材への密着性に優れたハードコート層を有する光学積層体を形成することができる。本発明より得られた光学積層体は、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等に好適に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明の内容はこれらの実施態様に限定して解釈されるものではない。特別に断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0058】
(製造例1)
ハードコート層形成用インキAの調製
下記組成の成分を混合し、ハードコート層形成用インキAを調製した。
・「VYLON200」(商品名、ポリエステル樹脂、ガラス転移温度67℃、水酸基価6KOHmg/g、東洋紡績社製)14.22質量部
・「デュラネートMF」(商品名、架橋剤、ブロックイソシアネート、旭化成ケミカルズ社製)4.16質量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(アクリル系紫外線硬化材料、6官能モノマー、日本化薬社製)15.78質量部
・「Irgacure 184」(商品名、光重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)1.50質量部
・酸化スズナノ分散液(シーアイ化成社製)20.00質量部
・メチルエチルケトン 93.48質量部
【0059】
(製造例2)
ハードコート層形成用インキBの調製
下記組成の成分を混合し、ハードコート層形成用インキBを調製した。
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(アクリル系紫外線硬化材料、6官能モノマー、日本化薬社製、)32.10質量部
・「Irgacure 184」(商品名、光重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)1.50質量部
・酸化スズナノ分散液(シーアイ化成社製)25.00質量部
・メチルエチルケトン 98.82質量部
【0060】
(実施例1)
光学積層体の作製
ポリエステルフィルム基材(「A−4100」、商品名、東洋紡績社製)100μmの未処理面に対し、調製した上記ハードコート層形成用インキAを塗布し、50℃で1分間加熱した後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて、照射線量100mJ/cmで紫外線照射を行い、ハードコート層を硬化させて、塗膜3μmのハードコート層を形成することにより、ハードコート層/ポリエステルフィルム基材からなる実施例1の光学積層体を得た。
【0061】
(実施例2)
上記「デュラネートMF」を「カレンズMOI−BM」(架橋剤、メタクリル酸2−(0−〔1’メチルプロピリデンアミノ〕カルボキシアミノ)エチル、昭和電工社製)に変えた他は、製造例1と同様にしてハードコート層形成用インキを調製し、実施例1と同様にして、ハードコート層/ポリエステルフィルム基材からなる実施例2の光学積層体を得た。
【0062】
(実施例3)
上記「VYLON200」を「VYLON885」(ポリエステル樹脂、ガラス転移温度79℃、水酸基価16KOHmg/g、東洋紡績社製)に変えた以外は、製造例1と同様にしてハードコート層形成用インキを調製し、実施例1と同様にして、ハードコート層/ポリエステルフィルム基材からなる実施例3の光学積層体を得た。
【0063】
(比較例1)
上記ハードコート層形成用インキAの代わりに、上記ハードコート層形成用インキBを用いた以外は、実施例1と同様にして光学積層体を得た。
【0064】
(比較例2)
上記「VYLON200」を「VYLON220」(ポリエステル樹脂、ガラス転移温度53℃、水酸基価50KOHmg/g、東洋紡績社製)に変えた以外は、製造例1と同様にしてハードコート層形成用インキを調製し、実施例1と同様にして、ハードコート層/ポリエステルフィルム基材からなる比較例2の光学積層体を得た。
【0065】
(比較例3)
上記「VYLON200」を「VYLON UR−1400」(ポリエステル樹脂、ガラス転移温度83℃、水酸基価3KOHmg/g、東洋紡績社製)に変えた以外は、製造例1と同様にしてハードコート層形成用インキを調製し、実施例1と同様にして、ハードコート層/ポリエステルフィルム基材からなる比較例3の光学積層体を得た。
【0066】
上記で得られた各光学積層体について、表面抵抗率、及び、硬化膜とポリエステル基材との密着性、鉛筆硬度、全光線透過率について下記の方法にて評価した。
上記表面抵抗率は、抵抗率計(ハイレスタ・UP、三菱化学社製)により測定した。
上記密着性は、クロスカット碁盤目試験により行い、元のカット部数に対するテープを剥がした後に基材上に残存したカット部数の比で示した。
上記鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4に準じて測定した。上記全光線透過率は、分光光度計(UV−3100PC、島津製作所社製)を用いて測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
表1より、比較例の光学積層体は、所望の表面抵抗率、硬度及び光透過率は得られているが、硬化膜と基材との密着性が悪いのに対し、実施例の光学積層体は、すべての項目において良好なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のコーティング組成物を用いて形成した光学積層体は、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の光学積層体の概要図の一例である。
【符号の説明】
【0071】
1 低屈折率層
2 ハードコート層
3 光透過性基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂、熱架橋剤、光重合反応性モノマー、光重合開始剤、及び、金属又は金属酸化物の分散粒子を含有し、
前記ポリエステル樹脂は水酸基価が5〜20KOHmg/gである
ことを特徴とするコーティング組成物。
【請求項2】
ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度60℃以上である請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項3】
熱架橋剤は、ブロックイソシアネートである請求項1又は2記載のコーティング組成物。
【請求項4】
光重合反応性モノマーとポリエステル樹脂との混合比は、固形分質量比で3/5〜7/5である請求項1、2又は3記載のコーティング組成物。
【請求項5】
金属又は金属酸化物の分散粒子は、スズ酸化物のナノ粒子である請求項1、2、3又は4記載のコーティング組成物。
【請求項6】
ハードコート層形成用組成物である請求項1、2、3、4又は5記載のコーティング組成物。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載のコーティング組成物により形成されることを特徴とする硬化膜。
【請求項8】
ハードコート層及び光透過性基材を有する光学積層体の製造方法であって、
請求項1、2、3、4、5又は6記載のコーティング組成物を使用して光透過性基材上にハードコート層を形成する工程を包含する
ことを特徴とする光学積層体の製造方法。
【請求項9】
光透過性基材は、未処理のポリエステルフィルムである請求項8記載の光学積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9記載の光学積層体の製造方法により製造されることを特徴とする光学積層体。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−184515(P2008−184515A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18111(P2007−18111)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】