説明

ゴム−スチール複合体

【課題】ゴム組成物の加工性と耐熱劣化性を改良すると共に、レゾルシンやRF樹脂を配合する時に見られるブルームを極力抑制し、初期接着性と湿熱接着性とがより高度に両立するゴム−スチール複合体を提供する。
【解決手段】ゴム組成物と、スチールワイヤ又は該スチールワイヤを複数本撚り合わせてなるスチールコードと、からなるゴム−スチール複合体であって、該ゴム組成物が(A)ゴム成分と(B)硫黄と(C)特定のチアゾール化合物とを含むものであり、該スチールワイヤがその周面にブラスめっき層を有し、且つ該ブラスめっき層の表面における、亜鉛及び銅を除く遷移金属の濃度が0.01質量%以上であることを特徴とするゴム−スチール複合体及びそのゴム−スチール複合体を具備するタイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定のチアゾール化合物を含むゴム組成物と、特定のスチールワイヤ又はスチールコードと、からなるゴム−スチール複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用タイヤ、コンベアベルト、ホースなど、特に強度が要求されるゴム物品においては、ゴムを補強して、強度や耐久性を向上させる目的で、金属補強材としてブラスめっきをゴム組成物で被覆してなる複合材料が用いられている。
このゴム−ブラスめっきスチールコード複合材料が高い補強効果を発揮し、信頼性を得るには、ゴム−ブラスめっきスチールコード間に経時変化の少ない安定した接着が必要となり、特に、直接加硫接着におけるゴム組成物−ブラスめっきスチールコード間の接着性、特に耐湿熱接着性向上のため様々な検討が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、重量平均分子量が3000〜45000のレゾルシン骨格を有する混合ポリエステルからなる接着剤が報告されている。しかし、分子量が大きい混合ポリエステルはレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂(以下、「RF樹脂」と略記する。)と比較してゴムとの相溶性は改善されるものの満足できるものではなく、高分子量の混合ポリエステルをゴムに配合すると、ゴム組成物の粘度が上昇し、加工性が低下する問題があり、耐湿熱接着性も満足できるものではなかった。
【0004】
これに対し、特許文献2には、レゾルシン、又はレゾルシンとホルマリンとを縮合して得られるRF樹脂を耐湿熱接着性向上の目的で配合したゴム組成物が報告されている。RF樹脂を配合することによりゴム組成物とスチールコードとの耐湿熱接着性は向上する。
しかしながら、レゾルシンやRF樹脂は極性が非常に高いためゴムとの相溶性に乏しく、ゴム組成物の混合、ゴム組成物加工時の熱入れなどの加工条件、ゴム組成物保管時の条件などによって、レゾルシンやRF樹脂が析出する所謂ブルームが発生するため、ゴム組成物の経時変化が大きく、安定して接着性を発現させることが困難であった。
【0005】
ところで、ゴム組成物とブラスめっきスチールコードとの接着において要求される性能としては、上述の湿熱接着性だけではなく、初期接着性、例えば短時間加硫後の接着性、をも要求されている。
この初期接着性と耐熱接着性と改良すべく、特許文献3では、マレイミド樹脂0.1〜5重量部及びtert−ブチル基を2個有するビスフェノール化合物0.5〜8重量部を含有し、且つ少なくとも一種の高級脂肪酸が配合されてなるゴム組成物と特定のブラスめっき層を有するスチールコードとからなるゴム−スチール複合体が提案されている。
また、特許文献4では、スチールワイヤのブラスめっきを改良することによりゴム組成物−ブラスめっきスチールワイヤ間の接着性を向上させることが提案されている。
しかしながら、初期接着性と耐湿熱接着性との両立は困難であり、ゴム組成物とブラスめっきスチールコードとの両面からの更なる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−118621号公報
【特許文献2】特開2001−234140号公報
【特許文献3】特開2004−82878号公報
【特許文献4】特開2009−91691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下になされたもので、ゴム組成物の加工性と耐熱劣化性を改良すると共に、レゾルシンやRF樹脂を配合する時に見られるブルームを極力抑制し、初期接着性と湿熱接着性とがより高度に両立するゴム−スチール複合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ゴム成分と特定の構造を有するチアゾール化合物とを含むゴム組成物と、特定のブラスめっき層を有するスチールワイヤ又はこのスチールワイヤを複数本撚り合わせてなるスチールコードと、からなるゴム−スチール複合体により、その課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、ゴム組成物と、スチールワイヤ又は該スチールワイヤを複数本撚り合わせてなるスチールコードと、からなるゴム−スチール複合体であって、該ゴム組成物が(A)ゴム成分と(B)硫黄と(C)下記一般式(1)で表されるチアゾール化合物とを含むものであり、該スチールワイヤがその周面にブラスめっき層を有し、且つ該ブラスめっき層の表面における、亜鉛及び銅を除く遷移金属の濃度が0.01質量%以上であることを特徴とするゴム−スチール複合体及びそのゴム−スチール複合体を具備するタイヤである。
【化1】

(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の直鎖アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基、炭素数1〜10の直鎖アルコキシ基及び炭素数3〜12の分岐アルコキシ基から選ばれる基である。R5は、炭素数1〜10の直鎖アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選ばれる基である。nは、2〜4の整数である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゴム組成物の加工性と耐熱劣化性を改良すると共に、レゾルシンやRF樹脂を配合する時に見られるブルームを極力抑制し、初期接着性と湿熱接着性とがより高度に両立するゴム−スチール複合体を提供することができる。特に、上記一般式(1)で表されるチアゾール化合物をゴム組成物に配合することにより、ゴム組成物の加硫開始時間が遅くなり、接着反応が優先的に進行するようになるので、スチールワイヤの上記のブラスめっきと強固な接着層が生成し、短時間加硫後から湿熱劣化後まで安定したゴム組成物とスチールコードとの接着性が発現することとなる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のゴム−スチール複合体は、ゴム組成物と、スチールワイヤ又は該スチールワイヤを複数本撚り合わせてなるスチールコードと、からなるゴム−スチール複合体であって、該ゴム組成物が(A)ゴム成分と(B)硫黄と(C)下記一般式(1)で表されるチアゾール化合物とを含むものであり、該スチールワイヤがその周面にブラスめっき層を有し、且つ該ブラスめっき層の表面における、亜鉛及び銅を除く遷移金属の濃度が0.01質量%以上であることを特徴とする。
【0011】
[チアゾール化合物]
【化2】

式中、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の直鎖アルキル基、炭素数1〜10の直鎖アルコキシ基、炭素数3〜12の分岐アルキル基及び炭素数3〜12の分岐アルコキシ基から選ばれる基である。R5は、炭素数1〜10の直鎖アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選ばれる基である。nは、2〜4の整数である。
【0012】
前記一般式(1)において、R1〜R4のいずれかの位置に置換基を有する場合は、薬品の合成及び製造上、R1の位置に置換基を有することが好ましい。なかでも、R1とR3がアルキル基又はアルコキシ基の場合は、炭素数1〜4の直鎖アルキル基又は直鎖アルコキシ基であることが好ましい。
また、R1〜R4のいずれかがアルキル基又はアルコキシ基の場合は、炭素数は1であることが好ましい。更に、R1〜R4がいずれも水素原子であることが、接着性向上の点で特に好ましい。好ましいいずれの場合も、(C)成分のチアゾール化合物の合成のし易さ及びゴム組成物とスチールコードとの接着性が向上するからである。
【0013】
前記一般式(1)におけるR1〜R4の炭素数1〜10の直鎖アルキル基及び炭素数3〜12の分岐アルキル基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基などの各種アルキル基;炭素数1〜10の直鎖アルコキシ基及び炭素数3〜12の分岐アルコキシ基の具体例としては、例えばメトキシ基、エトキシ基,n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基,sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などの各種アルコキシ基を挙げることができる。なお、各種アルキル基とは、同一炭素数における異性体全てを含むアルキル基を指し、各種アルコキシ基も同様である。以下、他の同類語も同様である。
【0014】
本発明に係る(C)成分として用いられるチアゾール化合物は、前記一般式(1)において、R5が、炭素数1〜10の直鎖アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選ばれる基である。
前記炭素数1〜10の直鎖アルキル基及び炭素数3〜12の分岐アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基などの各種アルキル基が好適に挙げられる。
また、脂環式炭化水素基としてはシクロアルキル基が好ましく、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、デカリニル基、アダマンチル基などが好適に挙げられる。なお、これらのシクロアルキル基は、炭素数が3〜18までの範囲が好ましく、シクロ環上に一つ以上のアルキル基を有していても良い。
芳香族炭化水素基としては、アリール基又はアラルキル基が好適に挙げられる。アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基などが挙げられ、アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、各種ナフチルメチル基、各種ナフチルエチル基、各種ナフチルプロピル基などが好適に挙げられる。なお、前記のアリール基は、炭素数6〜18の範囲が好ましく、前記のアラルキル基は、炭素数7〜18の範囲が好ましく、芳香環上に一つ以上のアルキル基を有していても良い。
5は、上述の基の内、シクロアルキル基及びアラルキル基から選ばれる基であることが好ましく、より好ましくはシクロヘキシル基又はベンジル基であり、特に好ましくは、シクロヘキシル基である。
【0015】
前記一般式(1)におけるnが2〜4の整数であることを要するのは、この範囲外であると接着性向上の効果が低下するからである。この観点から、nが2又は3の整数であることが好ましく、nが2の整数であることが特に好ましい。
【0016】
(C)成分のチアゾール化合物の具体例としては、2−(シクロペンチルジチオ)ベンゾチアゾール、2−(シクロヘキシルジチオ)ベンゾチアゾール、2−(シクロオクチルジチオ)ベンゾチアゾール、2−(シクロドデシルジチオ)ベンゾチアゾール、2−(ベンジルジチオ)ベンゾチアゾール、2−(フェネチルジチオ)ベンゾチアゾール、2−(tert−ブチルジチオ)ベンゾチアゾール、2−(2−エチルヘキシルジチオ)ベンゾチアゾールなどを挙げることができる。
これらの中で、性能及び製造性の観点から、下記化学式(2)で表わされる2−(シクロヘキシルジチオ)ベンゾチアゾール及び下記化学式(3)で表わされる2−(ベンジルジチオ)ベンゾチアゾールが、特に好適である。(C)成分のチアゾール化合物は一種を単独で用いても良く、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0017】
【化3】

【0018】
【化4】

【0019】
前記一般式(1)で表される構造を有する(C)成分のチアゾール化合物は、加硫ゴムの物性低下を起こさず、ブルーミングも起こしにくいので、本発明に係るゴム組成物はスチールコードとの接着性に優れる。
前記一般式(1)で表される構造を有する(C)成分のチアゾール化合物は、例えば、米国登録特許第3,859,297号に記載された方法で合成することができる。
【0020】
本発明に係るゴム組成物は、(A)ゴム成分100質量部に対し、(C)前記一般式(1)で表されるチアゾール化合物0.1〜5質量部を含むことが好ましい。この含有量が0.1質量部以上であれば、ゴム組成物とスチールコードとの接着が好ましく向上し、一方5質量部以下であればブルーミングを好ましく抑制することができる。これらの観点から、より好ましい含有量は0.4〜5質量部の範囲である。
【0021】
[ゴム成分]
本発明に係るゴム組成物において、(A)成分として用いられるゴム成分としては、硫黄架橋可能なもの、すなわち主鎖に二重結合を有するものであれば良く、特に制限はないが、上述の(C)成分のチアゾール化合物の機能が充分に発揮され、金属に対して安定した高い接着力を発現し得る組成物が得られるようにする観点から、天然ゴム及び合成ポリイソプレンゴムの少なくとも一方を含むものが好ましく、より好ましくは50質量%以上の天然ゴム及び50質量%以下の合成ゴムからなるゴム成分、さらに好ましくは70質量%以上の天然ゴム及び30質量%以下の合成ゴムからなるゴム成分、特に好ましくは天然ゴムのみからなるゴム成分である。
前記合成ゴムとしては、例えば合成ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、クロロプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどが挙げられる。これらの合成ゴムは、一種を単独で用いても良く、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0022】
[硫黄]
本発明に係るゴム組成物において、前述した(A)ゴム成分の加硫に用いられる(B)成分の硫黄としては特に制限はなく、従来、主鎖に二重結合を有するゴムの硫黄架橋に使用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。該硫黄としては、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などを挙げることができる。
本発明に係るゴム組成物においては、当該硫黄の含有量は、前記(A)ゴム成分100質量部に対して、0.3〜10質量部の範囲が好ましい。この含有量が0.3質量部以上であれば加硫が好ましく進行し、金属と加硫ゴムとの接着強度が好ましく確保される。一方、10質量部以下であれば加硫ゴムの耐老化性能が低下しにくく、スチールコード、特にブラスめっきが施されているスチールコードとの接着強度が確保される。より好ましい硫黄の含有量は0.3〜8質量部の範囲であり、特に好ましくは0.5〜8質量部の範囲である。
【0023】
[コバルト化合物]
本発明に係るゴム組成物には、ゴム組成物の耐熱劣化性及び耐亀裂成長性を改良させる観点から、コバルト化合物を含まないことが好ましい。
このコバルト化合物としては、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ロジン酸コバルト、バーサチック酸コバルト、トール油酸コバルト、オレイン酸コバルト、リノール酸コバルト、リノレン酸コバルトなどの有機酸のコバルト塩、これらの有機酸のコバルト塩の有機酸の一部をホウ酸で置き換えた複合塩、コバルトアセチルアセトナートなどのコバルト金属錯体などが挙げられる。
【0024】
[その他の配合剤]
本発明に係るゴム組成物においては、前記(A)〜(C)成分と共に、ゴム業界で通常使用される配合剤、例えばカーボンブラックやシリカなどの充填材、前記(C)成分以外の加硫促進剤、加硫遅延剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤などを、本発明の効果が損なわれない範囲で含有させることができる。
これらのうち、カーボンブラックやシリカなどの充填材は加硫ゴムの引張り強さ、破断強度、モジュラス、硬さなどの増加、及び耐摩耗性、引張り抵抗性の向上などの補強材として知られており、亜鉛華は脂肪酸と錯化合物を形成し、加硫促進効果を高める加硫促進助剤として知られている。
老化防止剤としては、例えば3C(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、6C[N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン]、AW(6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)、ジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物などを挙げることができる。
【0025】
[ゴム組成物の調製]
本発明に係るゴム組成物は、前述した(A)成分、(B)成分及び(C)成分と共に、所望により前記配合剤の少なくとも一種を加えて、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練り機を用いて混練りすることによって、調製することができる。
【0026】
[スチールワイヤ]
本発明に係るスチールワイヤは、スチールワイヤの単線として、又は該スチールワイヤを複数本撚り合わせてなるスチールコードとして、ゴム−スチール複合体に用いられる。
スチールコードの撚り構造については特に制限はなく、単撚り、複撚り、層撚り、複撚りと層撚りの複合撚りなどの撚り構造が挙げられる。
【0027】
本発明に係るスチールワイヤは、その周面にブラスめっき層を有し、且つ該ブラスめっき層の表面における、亜鉛及び銅を除く遷移金属の濃度が0.01質量%以上であることを特徴とする。亜鉛及び銅を除く遷移金属の濃度が0.01質量%以上であれば、コバルト化合物などの接着プロモーターを除去したゴム組成物に対しても初期接着性を十分にはかることができるため、ゴム組成物から接着プロモーターを除去することによる、熱劣化後のタフネス及び耐亀裂成長性の向上を享受することが可能となる。
ここで、ブラスは黄銅又は真ちゅうとも称せられ、銅(Cu)と亜鉛(Zn)とからなる合金である。そして、ブラスめっき層の表面とは、ワイヤ半径方向内側に10nmの深さまでのブラスめっき層の表層領域を指す。
また、遷移金属とは、周期律表の第4周期のスカンジウム(Sc)から亜鉛(Zn)まで、第5周期のイットリウム(Y)からカドミウム(Cd)まで、第6周期のルテチウム(Lu)から水銀(Hg)までの金属元素を指す。この遷移金属としては接着性向上の観点からコバルト(Co)が好ましい。
【0028】
本発明に係るスチールワイヤは、更に、上記ブラスめっき層の表面における、リン濃度が2.5質量%以下であり、且つ亜鉛濃度が15質量%以下であることが好ましい。めっき層の表面におけるリン濃度が2.5質量%以下であれば、リンに起因する接着阻害効果が抑えられるからである。同様に、亜鉛濃度が15質量%以下であれば、めっき層の表面のZnO層の生成を抑えられ、ZnO層に起因する接着阻害効果が抑えられるからである。これらのリン濃度及び亜鉛濃度の低減により、ゴム組成物中からコバルト化合物を除去しても好適な接着性能を得ることができる。
【0029】
[遷移金属含有量及びリン含有量の定量方法]
ブラスめっき層の表層領域におけるリンの定量は、X線光電子分光法を用いて、ワイヤの曲率の影響を受けないよう20〜30μmφの分析面積にて、めっき層のワイヤ表層領域に存在する原子を計測することにより含有量を求めた。各原子の原子数は、C:C1S、O:O1S、P:P2P、Cu:Cu2p3/2、Zn:Zn2p3/2、N:N1S及び遷移金属(例えば、Co:Co2p3/2)の光電子のカウント数を夫々用いて、夫々の感度係数で補正することにより求めた。
また、周面からワイヤ半径方向内方への深さ方向の元素の分布についても、アルゴンエッチングなどを行えば詳細に測定することが可能である。
なお、上記分析前のワイヤの表面がオイルなどで覆われていたり有機物で汚染されていた場合には、正確な分析を行うために、ワイヤ表面を適切な溶媒で洗浄し、さらに、必要に応じて表面を改質しない程度の軽度の乾式クリーニングを施すことが必要である。
【0030】
本発明に係るスチールワイヤのブラスめっき層全体における銅及び亜鉛の総量に対する銅の比率が60〜70質量%であることが好ましい。めっき層全体における銅及び亜鉛の総量に対する銅の比率が60重量%以上であれば、伸線性が向上して断線による生産性の阻害を好適に防止でき、スチールコードの量産性が向上する。
【0031】
本発明に係るスチールワイヤのブラスめっき層の平均厚みが0.13〜0.30μmであることが好ましい。ブラスめっき層の平均厚みが0.13μm以上であれば、鉄地が露出する部分が増加して初期接着性が阻害されることを好適に防止できる。一方、0.30μm以下であれば、ゴム物品使用中の熱によって過剰に接着反応が進行して、脆弱な接着となることを好適に防止できる。
【0032】
本発明に係るスチールワイヤの直径は、0.40mm以下であることが有利である。直径が0.40mm以下であれば、使用したゴム物品が曲げ変形下で繰り返し歪みを受けたときに表面歪が大きくなることを抑制し、座屈の発生を好適に防止することができる。また、スチールワイヤの直径が0.10mm未満であると、スチールコードを構成する場合のスチールワイヤ本数が過大となり経済的でないので、スチールワイヤの直径が0.10〜0.40mmであることが更に好ましい。
【0033】
[スチールワイヤの製造方法]
本発明に係るスチールワイヤは、例えば径が5mm程度のブラスめっきを施した線材に伸線加工を施して製造されるのが、一般的である。この製造プロセスにおいては、当然潤滑剤を使用することになるが、中でも最終伸線工程は、液体潤滑剤中に配置した20パス程度のダイスを用いて細線化を行っている。この最終伸線工程ではコードとダイスとの間に極圧が発生し、温度も非常に高くなることから、極圧かつ高温状態での潤滑性を確保するために、リン酸をベースとする潤滑剤を用いることが通例である。
【0034】
この潤滑剤は、伸線加工中にワイヤ表面と反応して潤滑皮膜層、すなわちリン酸化合物層を生成し、極圧高温条件の下での入力を緩和し、ワイヤの量産を実現している。従って、製造プロセス上、ワイヤのめっき中にリン酸が取り込まれることは避けられないものである。このリン酸化合物層がめっき表面にあると、ブラスめっき中の銅がゴム側に拡散し、CuxSを形成して接着が行われる接着反応を阻害する。
また、銅(Cu)と亜鉛(Zn)との合金であるブラスめっきを施すと、経時的に表面が酸化されてZnOが生成し、このZnO層もまたリン酸化合物層と同様に、前記接着反応を阻害することになる。
【0035】
従って、ゴムとの接着を行う前に、めっきの表面からリン酸化合物層やZnO層を除去することが、ゴムとの接着性を改善するのに有効になる。そのためには、伸線後のスチールワイヤの表面に対してリン酸化合物層やZnO層を除去する、洗浄処理を施すことが重要になるが、酸性あるいはアルカリ性水溶液での洗浄は環境上好ましくない上、製造プロセスを考えた場合に安全性が問題になる場合がある。
【0036】
本発明のゴム−スチール複合体に好適に用いられるスチールワイヤの製造方法は、スチールワイヤの周面にブラスめっき層を形成するブラスめっき工程と、ブラスめっき層を形成したスチールワイヤを伸線加工する伸線工程と、伸線加工したスチールワイヤの表面を、遷移金属化合物を含有する水溶液で洗浄する洗浄工程とを含むことを特徴とする。すなわち、上述の酸性あるいはアルカリ性水溶液での洗浄工程の替わりに、遷移金属化合物を含有する水溶液で洗浄する洗浄工程を設けたことに特徴がある。ブラスめっき工程及び伸線工程は通常の公知の方法により行われる。
伸線加工したスチールワイヤの表面を、遷移金属化合物を含有する水溶液で洗浄することにより、上述したゴムとの接着反応を阻害するリン酸化合物層やZnO層を溶解することができる。
【0037】
ここで、遷移金属とは、上述の通りであり、コバルトが接着性向上の観点から好ましい。上記洗浄工程用の水溶液に含まれるコバルト化合物としては、塩化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト、クエン酸コバルト、グルコン酸コバルト及びコバルトアセチルアセトナートから選ばれる化合物であることが好ましい。その他、上記水溶液に含まれる遷移金属化合物としては、Fe及びAgを含む硝酸、硫酸又は酢酸塩を用いることもできる。
【0038】
本発明に係る洗浄工程において、当該水溶液のpHは5〜8程度とすることが好ましい。水溶液のpHがこの範囲であれば、めっきに悪影響を及ぼすことなく、ゴム組成物との接着性を向上し得るからである。また、pHを5〜8程度の中性領域にすれば、環境に与える負荷が少なくなる上、製造時における使用者への暴露に対する安全性及び試薬安全性を確保することもできる。
なお、本発明に係る洗浄工程における洗浄条件は、水溶液の濃度に応じて洗浄時間を適宜設定すれば良く、例えば酢酸コバルト含有水溶液の場合は、10g/Lの濃度で洗浄時間は30〜60秒が好ましい条件となる。
【0039】
上記した遷移金属を塩として含む水溶液による洗浄工程を経たスチールワイヤは、そのブラスめっきの表面にZnO層やリン酸化合物層などの酸化物層がなく、さらには、亜鉛及び銅を除く遷移金属化合物、好ましくはコバルト化合物を含有する水溶液を用いた場合は、めっき表面に0.01質量%以上の亜鉛及び銅を除く遷移金属、好ましくは0.01質量%以上のコバルトが存在する状態となる。すなわち、上記した洗浄工程を経ることによって、ゴム組成物との接着反応阻害物がないことに加え、接着プロモーターとして機能する、亜鉛及び銅を除く遷移金属、好ましくはコバルトを有するめっき表面が得られる結果、ワイヤのゴムに対する接着性は大幅に改善されるのである。従って、ゴム組成物側の接着プロモーターを省略したとしても、ワイヤとゴム組成物との接着を確実にはかることができる。一方で、ゴム組成物側の接着プロモーターを省略できるから、ゴムの耐劣化性及び耐亀裂成長性を向上することも可能である。
一方、ブラスめっき表面に20質量%を超える亜鉛及び銅を除く遷移金属(例えば、コバルト)が存在すると、接着プロモーターとして機能するよりも、むしろゴムとの接着阻害要因として働いてしまうことがあるので、亜鉛及び銅を除く遷移金属(好ましくはコバルト)の濃度は20質量%以下であることが好ましい。
【0040】
[ゴム−スチール複合体]
上記のようにして得られた本発明に係るゴム組成物、及びスチールワイヤ又はスチールコードは、ゴム−スチール複合体として用いられるが、本発明に係るゴム組成物がスチールコードを被覆してなるゴム−スチール複合体として用いられることが特に好ましい。
【0041】
スチールワイヤ又はスチールコードのコーティング法としては、例えば以下に示す方法を用いることができる。
好ましくはブラスめっきされた所定の本数のスチールワイヤ又はスチールコードを所定の間隔で平行に並べ、このスチールワイヤ又はスチールコードを上下両側から、当該組成物からなる厚さ0.5mm程度の未架橋ゴムシートでコーティングして、これを160℃程度の温度で、20分間程度加硫処理する。このようにして得られたゴム−スチール複合体は、優れた耐熱接着性を有している。
【0042】
[ゴム−スチール複合体の用途]
本発明のゴム−スチール複合体は、各種自動車用タイヤ、コンベアベルト、ホースなど、特に強度が要求されるゴム物品に用いられる補強材として好適に用いられる。特に、各種自動車用ラジアルタイヤのベルト、カーカスプライ、ワイヤーチェーファーなどの補強部材として好適に用いられる。
【実施例】
【0043】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって、なんら限定されるものではない。
なお、各例で得られたゴム組成物について、下記の方法により諸特性を求めた。
<耐ブルーム性>
未加硫ゴム組成物を40℃で7日間保管した後、配合剤がゴム表面に析出したか否かを目視で確認し、以下の基準で評価した。
○: 表面に配合剤が析出していない。
△: 表面の一部に配合剤の析出が見られる。
×: 全面に配合剤が析出している。
【0044】
<ムーニー粘度、ムーニースコーチタイム>
JIS K 6300−1:2001に準拠して、ムーニー粘度[ML1+4](130℃にて測定)及びムーニースコーチタイム(130℃にて測定)を測定した。評価は比較例3の値を100として以下の式により指数表示した。ムーニー粘度は、値が小さい程良好であり、ムーニースコーチタイムは、値が大きい程良好である。
ムーニー粘度指数={(供試試料のムーニー粘度)/(比較例3のムーニー粘度)}×100
ムーニースコーチタイム指数={(供試試料のムーニースコーチタイム)/(比較例3のムーニースコーチタイム)}×100
【0045】
<熱劣化後のタフネス(TF)>
160℃で20分間加硫して得られた加硫ゴム組成物を100℃で2日間熱劣化させた後、JISダンベル状3号形試料を用いて、JIS K 6251:2004に準拠して25℃で引張試験を行い、熱劣化後切断時伸び(Aged Eb)及び熱劣化後切断時引張応力(Aged TSb)を測定し、以下の式により指数表示した。視数値が大きい程作業性が良好であることを示す。
熱劣化後のタフネス(TF)=熱劣化後切断時伸び(Aged Eb)×熱劣化後切断時引張応力(Aged TSb
熱劣化後のタフネス(TF)指数={(供試試料の熱劣化後のタフネス)/(比較例3の熱劣化後のタフネス)}×100
【0046】
<耐亀裂成長性>
上島製疲労試験機を用い、定応力疲労試験を行い、破断するまでの回数を測定し、以下の式により指数で評価した。
耐亀裂成長性指数={(供試試料の回数)/(比較例3の回数)}×100
【0047】
<初期接着性及び耐湿熱接着性>
ブラスめっきしたスチールコードを12.5mm間隔で平行に並べ、このスチールコードを上下両側から、未加硫ゴム組成物でコーティングし、これを直ちに160℃で20分間加硫して、幅12.5mmのサンプルを作製した。次に、加硫後の各サンプルを、ASTM−D 2229に準拠して、各サンプルのスチールコードを引き抜き、引き抜き後のゴムの被覆状態を目視で観察し、被覆率を0〜100%で表示して初期接着性及び耐湿熱接着性の指標とした。数値が大きい程、初期接着性及び耐湿熱接着性が高く良好であることを示す。なお、初期接着性は加硫後の初期状態で評価し、耐湿熱接着性は温度70℃、湿度100%RHで4日間放置する湿熱条件下で老化させた後評価した。
【0048】
合成例1 [2−(シクロヘキシルジチオ)ベンゾチアゾールの合成]
2−メルカプトベンゾチアゾール0.85g(0.005モル)をベンゼン65mL中のN−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド1.3g(0.005モル)に40〜45℃で加えた。この反応混合物を0.5乃至1時間撹拌した後、ろ過によりフタルイミドを除去した。ベンゼンの一部を窒素雰囲気下で蒸発させた後、反応混合物を再度ろ過してより多くのフタルイミドを除去した。
次に、ベンゼン溶液を水酸化ナトリウムの希薄水溶液で抽出し、その抽出物を水で洗浄した。乾燥剤(硫酸ナトリウム)で乾燥した後、残存するベンゼンを蒸発により除去した。残渣は実質的に純粋な2−(シクロヘキシルジチオ)ベンゾチアゾールであった。生成物の元素分析では窒素4.9%であり、2−(シクロヘキシルジチオ)ベンゾチアゾールC1315NS3から算出される窒素4.98%とほぼ同一であった。
【0049】
スチールコードAの製造方法
ブラスめっき層全体における銅及び亜鉛の含有量(Cu:63質量%、Zn:37質量%)でブラスめっき(厚さ:0.25μm)された5本のスチールワイヤからなるスチールコード(撚り構造:1×5構造、スチールワイヤ素線径:0.25mm)を作製し、濃度10g/Lの酢酸コバルト水溶液(pH:6.0)で30秒間洗浄処理した後、50℃で1分間乾燥し、スチールコードAを得た。
得られたスチールコードAのスチールワイヤのブラスめっき層の表面におけるコバルト濃度は0.5質量%であり、リン濃度は1.0質量%であり、且つ亜鉛濃度は5.0質量%であった。
【0050】
スチールコードBの製造方法
洗浄処理しなかった以外は、スチールコードAと同じであるスチールコードBを得た。 得られたスチールコードAのスチールワイヤのブラスめっき層の表面におけるコバルト濃度は0.00質量%であり、リン濃度は3.0質量%であり、且つ亜鉛濃度は20.0質量%であった。
【0051】
実施例1及び比較例1〜4
内容積2200mLのバンバリーミキサーを使用して、第1表に示す各成分を第1表に示す配合組成で混練りして未加硫ゴム組成物を調製し、また、上述のブラスめっきしたスチールコードA又はBとの複合体を調製し、上述の諸特性を求めた。その結果を第1表に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
[注]
スチールコードA及びスチールコードBは、上述の製造方法で得られたものを用いた。
1)HAFカーボンブラック: 旭カーボン株式会社製、商品名「旭#70」
2)コバルト脂肪酸塩: OMG社製、商品名「マノボンドC22.5」、コバルト含有量22.5質量%
3)老化防止剤: N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラー6C」
4)チアゾール化合物: 合成例1で得られた2−(シクロヘキシルジチオ)ベンゾチアゾール
5)加硫促進剤: N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーDZ」
【0054】
第1表に示す結果から分かるように、本発明に係るゴム組成物(実施例1)は、比較例1〜4のゴム組成物と比較して、ムーニースコーチタイムが長いので未加硫時の作業性(加工性)に優れていた。また、本発明に係るゴム組成物(実施例1)は、比較例1のゴム組成物に比べて、耐ブルーム性が良好であり、ゴム−スチール複合体を製造し易く、未加硫時の作業性に優れていた。また、本発明に係るゴム組成物(実施例1)は、比較例1〜4のゴム組成物に比べて、熱劣化後のタフネス(TF)及び耐亀裂成長性のいずれにおいても良好であった。さらに、本発明のゴム−スチール複合体(実施例1)は、比較例1〜4の複合体と比較して、初期接着性と耐湿熱接着性との双方が良好であり、優れた接着性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のゴム−スチール複合体は、ゴム組成物と、スチールワイヤ又はスチールコードと、の接着性、すなわち、初期接着性と耐湿熱接着性とのいずれにおいても優れており、自動車用タイヤ、コンベアベルト、ホースなど、特に強度が要求されるゴム物品の補強に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物と、スチールワイヤ又は該スチールワイヤを複数本撚り合わせてなるスチールコードと、からなるゴム−スチール複合体であって、該ゴム組成物が(A)ゴム成分と(B)硫黄と(C)下記一般式(1)で表されるチアゾール化合物とを含むものであり、該スチールワイヤがその周面にブラスめっき層を有し、且つ該ブラスめっき層の表面における、亜鉛及び銅を除く遷移金属の濃度が0.01質量%以上であることを特徴とするゴム−スチール複合体。
【化1】

(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の直鎖アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基、炭素数1〜10の直鎖アルコキシ基及び炭素数3〜12の分岐アルコキシ基から選ばれる基である。R5は、炭素数1〜10の直鎖アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選ばれる基である。nは、2〜4の整数である。)
【請求項2】
前記一般式(1)におけるR1〜R4が、いずれも水素原子である請求項1に記載のゴム−スチール複合体。
【請求項3】
前記一般式(1)におけるR5が、シクロアルキル基及びアラルキル基から選ばれる基である請求項1又は2に記載のゴム−スチール複合体。
【請求項4】
前記ゴム組成物が、前記(A)ゴム成分100質量部に対し、前記(C)一般式(1)で表されるチアゾール化合物0.1〜5質量部を含む請求項1〜3のいずれかに記載のゴム−スチール複合体。
【請求項5】
前記ゴム組成物が、前記(A)ゴム成分100質量部に対し、(B)硫黄0.3〜10質量部を含む請求項1〜4のいずれかに記載のゴム−スチール複合体。
【請求項6】
前記ブラスめっき層の表面における、リン濃度が2.5質量%以下であり、且つ亜鉛濃度が15質量%以下である請求項1〜5のいずれかに記載のゴム−スチール複合体。
【請求項7】
前記遷移金属が、コバルトである請求項1〜6のいずれかに記載のゴム−スチール複合体。
【請求項8】
前記(A)ゴム成分が、天然ゴム及び合成ポリイソプレンゴムの少なくとも一方を含む請求項1〜7のいずれかに記載のゴム−スチール複合体。
【請求項9】
前記(A)ゴム成分が、50質量%以上の天然ゴム及び50質量%以下の合成ゴムからなる請求項8に記載のゴム−スチール複合体。
【請求項10】
前記ゴム組成物が、コバルト化合物を含まない請求項1〜9のいずれかに記載のゴム−スチール複合体。
【請求項11】
前記ブラスめっき層の平均厚みが、0.13〜0.30μmである請求項1〜11のいずれかに記載のゴム−スチール複合体。
【請求項12】
前記スチールワイヤの直径が、0.40mm以下である請求項1〜11のいずれかに記載のゴム−スチール複合体。
【請求項13】
前記ゴム組成物が、前記スチールワイヤ又は該スチールワイヤを複数本撚り合わせてなる前記スチールコードを被覆してなる請求項1〜12のいずれかに記載のゴム−スチール複合体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のゴム−スチール複合体を具備するタイヤ。
【請求項15】
スチールワイヤの周面にブラスめっき層を形成するブラスめっき工程と、ブラスめっき層を形成したスチールワイヤを伸線加工する伸線工程と、伸線加工したスチールワイヤの表面を、遷移金属化合物を含有する水溶液で洗浄する洗浄工程とを含むことを特徴とするゴム−スチール複合体用スチールワイヤの製造方法。
【請求項16】
前記遷移金属化合物が、コバルト化合物である請求項15に記載のゴム−スチール複合体用スチールワイヤの製造方法。
【請求項17】
前記コバルト化合物が、塩化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト、クエン酸コバルト、グルコン酸コバルト及びコバルトアセチルアセトナートから選ばれる化合物である請求項16に記載のゴム−スチール複合体用スチールワイヤの製造方法。

【公開番号】特開2011−168713(P2011−168713A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34970(P2010−34970)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】