説明

ゴム用薬品及びその製造方法、並びにそれを用いたマスターバッチ、ゴム組成物及びタイヤ

【課題】ゴム中での優れた薬品分散性を有するゴム用薬品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】融点、軟化点又は滴点がマスターバッチ又はゴム組成物混練時の最高温度より高く、全体の体積平均粒子径(mv)が80μm以下で且つ体積粒子径(mv)が80μm以下の微粒子状成分を80質量%以上含むことを特徴とするゴム用薬品である。また、ゴム用薬品に対する良溶媒にゴム用薬品を溶解させてなるゴム用薬品溶液と、該ゴム用薬品に対する貧溶媒とを混合することにより、上記ゴム用薬品を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム用薬品及びその製造方法、並びに該ゴム用薬品を用いたマスターバッチ、該ゴム用薬品を配合したゴム組成物及び該ゴム組成物を用いたタイヤに関し、特に優れた薬品分散性を有するゴム用薬品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、マスターバッチの保管中の劣化を防ぐため、老化防止剤を添加することが知られている(例えば、特公昭54−10576号公報及び特公昭51−43851号公報参照)。マスターバッチ中に老化防止剤を添加するには、合成ゴム工業界で通常行われているとおり、ゴムラテックスに老化防止剤を混合する手法が採られている。かかる手法においては、ゴムラテックスに通常の老化防止剤をそのまま混合すると、ゴムラテックス中に沈殿が生じたり、部分的に凝固を起こすため、さらに界面活性剤を加えエマルジョンにして用いるのが一般的である。また、特表2001−518401号公報には、具体的な分散方法について記載はないが、マスターバッチに用いるカーボンブラックスラリーにゴム添加剤(薬品)を混合する手法が開示されている。
【0003】
しかしながら、老化防止剤をエマルジョンにして用いるゴムラテックスに、充填材のスラリー溶液を混合すると、ゴムラテックス中の界面活性剤が充填材の表面に吸着し、充填材の表面活性を低減し、このような現象により、充填材とゴムとの相互作用が損なわれ、ゴムの補強性、耐摩耗性等の低下を招く問題があった。また、老化防止剤の分散性が不十分であり、ゴムの耐熱老化性の向上は困難であった。
【0004】
一方、特開2006−213842号公報には、カーボンブラックスラリーの作製時に高せん断力をかけることにより、界面活性剤を使用することなくカーボンブラックスラリー中に老化防止剤を分散させ、その後、該カーボンブラックスラリーとゴムラテックスを混合し、凝固するマスターバッチの製造方法が記載されている。しかしながら、この方法においては、マスターバッチ中に老化防止剤を十分に取り込み難く、その結果、同一生産ロット内における老化防止剤の含有量はバラツキが大きくなり、また、得られるマスターバッチを放置しておくと、ムーニー粘度が低下するおそれがあり、必ずしも充分に満足し得る方法とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭54−10576号公報
【特許文献2】特公昭51−43851号公報
【特許文献3】特表2001−518401号公報
【特許文献4】特開2006−213842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、マスターバッチに関する従来技術において、老化防止剤等のゴム用薬品をマスターバッチ中に高度に分散させる手法について開示はなされていない。また、本発明者らが、老化防止剤等のゴム用薬品について検討したところ、該ゴム薬用品の融点等が高いと、ゴム混練中の高温下でも固形状態で存在するため、ゴム中での分散が十分に進行せず、所望の性能が得られていないことが分かった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、優れた分散性を有するゴム用薬品及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、該ゴム用薬品を用いたウェットマスターバッチ、該ゴム用薬品又はゴム用薬品含有ウェットマスターバッチを配合してなるゴム組成物及び該ゴム組成物を用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ゴム用薬品の融点、軟化点又は滴点、並びに微粒子状成分の含有量及び体積平均粒子径(mv)を特定することにより、ゴム用薬品のゴム中での分散性を改善し、かかるゴム用薬品をゴム組成物に適用することで、ゴム用薬品の特性を高度に発揮できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明のゴム用薬品は、融点、軟化点又は滴点がマスターバッチ又はゴム組成物混練時の最高温度より高く、全体の体積平均粒子径(mv)が80μm以下で且つ体積粒子径が80μm以下の微粒子状成分を80質量%以上含むことを特徴とする。
【0010】
なお、マスターバッチ又はゴム組成物混練時の最高温度とは、ゴム用薬品をゴム成分と混練してマスターバッチ又はゴム組成物を調製する際に、該マスターバッチ又はゴム組成物が到達する最高温度である。
【0011】
本発明のゴム用薬品は、前記融点、軟化点又は滴点が50〜250℃であることが好ましく、また、前記全体の体積平均粒子径(mv)が0.4〜20μmであることが好ましい。
【0012】
本発明のゴム用薬品としては、老化防止剤、ワックス、脂肪酸及びその誘導体、並びに樹脂が好適である。
【0013】
また、本発明のゴム用薬品の製造方法は、ゴム用薬品に対する良溶媒にゴム用薬品を溶解させてなるゴム用薬品溶液と、ゴム用薬品に対する貧溶媒とを混合することを特徴とする。
【0014】
なお、本発明のゴム用薬品の製造方法に用いる溶媒は、対象とするゴム用薬品5gに、溶解性を測定しようとする溶媒を全量が100gになるように加え、温度25℃にて攪拌した場合に、均一で透明性を有する溶液が得られたものを「ゴム用薬品に対する良溶媒」とし、一方で、懸濁や分離が認められたものを「ゴム用薬品に対する貧溶媒」として定義される。
【0015】
更に、本発明のゴム用薬品含有ウェットマスターバッチは、ゴム成分が分散又は溶解したゴム液、充填材を溶媒に分散させてなるスラリー及びそれらを混合してなるゴム分散液からなる群から選択される少なくとも一つの液に、上記ゴム用薬品を分散させてなるゴム用薬品分散液を添加して得たことを特徴とする。
【0016】
本発明のゴム用薬品含有ウェットマスターバッチは、更に、脱水及び乾燥して得られるのが好ましい。
【0017】
また更に、本発明のゴム組成物は、上記ゴム用薬品又は上記ゴム用薬品含有ウェットマスターバッチを配合してなり、本発明のタイヤは、該ゴム組成物を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ゴム用薬品の融点、軟化点又は滴点、並びに微粒子状成分の含有量及び体積平均粒子径(mv)を特定することにより、ゴム中での薬品分散性に優れるゴム用薬品を提供することができる。また、ゴム用薬品に対する良溶媒にゴム用薬品を溶解させてなるゴム用薬品溶液と、該ゴム用薬品に対する貧溶媒とを混合することにより、ゴム中での薬品分散性に優れるゴム用薬品を製造することができる。更に、該ゴム用薬品を適用した、ゴム用薬品の特性が高度に発揮されるマスターバッチ、ゴム組成物及びタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のゴム用薬品は、融点、軟化点又は滴点がマスターバッチ又はゴム組成物混練時の最高温度より高く、全体の体積平均粒子径(mv)が80μm以下で且つ体積粒子径が80μm以下の微粒子状成分を80質量%以上含むことを特徴とする。融点、軟化点又は滴点がマスターバッチ又はゴム組成物混練時の最高温度より高いゴム用薬品は、一般に体積平均粒子径(mv)が大きいため、混練り工程において溶解することなく粒のままで存在し、分散不良を起こし得る。この場合、ゴム用薬品が凝集体を形成して破壊核となったり、マスターバッチ等の生産ロット内でゴム用薬品が不足するものが製造されるおそれがある。しかしながら、本発明のゴム用薬品は、全体の体積平均粒子径(mv)が80μm以下で且つ体積粒子径が80μm以下の微粒子状成分を80質量%以上含んでなり、大部分が微細な形状を形成していることから、混練り工程の初期段階から分散性に優れる。
【0020】
本発明のゴム用薬品の融点、軟化点又は滴点は、マスターバッチ又はゴム組成物混練時の最高温度より高いことを要し、50〜250℃であることが好ましい。ゴム用薬品の融点等がマスターバッチ又はゴム組成物混練時の最高温度以下では、ゴム中での優れた薬品分散性が得られない。なお、融点は、固相が液相に緩慢に変化する時の温度であり、JIS K6220−1に準拠して測定できる。軟化点は、ゴム用薬品を一定速度で加熱した時に著しく変形し易くなる温度であり、JIS K6220−1に準拠して測定できる。滴点は、底に小孔をあけた容器に油状の物質(グリース)を入れ、規定された条件で加熱した時、グリースが溶融し、小孔から滴下し始める温度であり、JIS K2220に準拠して測定できる。
【0021】
本発明のゴム用薬品は、全体の体積平均粒子径(mv)が80μm以下で且つ体積粒子径が80μm以下の微粒子状成分を80質量%以上含むことを要する。ここで、全体の体積平均粒子径(mv)とは、ゴム用薬品を構成する成分全体の体積平均粒子径を指し、微粒子状成分とは、ゴム用薬品を構成する成分のうち体積粒子径が80μm以下の成分を指す。また、ゴム用薬品を構成する成分全体の体積平均粒子径(mv)は、0.4〜20μmの範囲が好ましく、0.7〜7μmの範囲が更に好ましい。ゴム用薬品全体の体積平均粒子径(mv)が80μm以下で且つゴム用薬品中の微粒子状成分の含有量が80質量%以上であれば、その融点、軟化点又は滴点がマスターバッチ又はゴム組成物混練時の最高温度より高くても、マスターバッチ又はゴム組成物中での優れた分散性を確保できる。
【0022】
ゴム用薬品は、ゴム製品を作る際にゴムに混合して使用される材料である限り特に限定されるものではないが、本発明においては、例えば、老化防止剤、ワックス、脂肪酸及びその誘導体、樹脂等が好適に挙げられる。なお、これらのゴム用薬品は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明のゴム用薬品として用いることができる老化防止剤としては、アミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、有機ホスファイト系老化防止剤、チオエーテル系老化防止剤等が挙げられる。なお、これらの老化防止剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
上記アミン系老化防止剤としては、例えば、N-(1,3-ジメチル-ブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N'-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、アルキル化ジフェニルアミン、4,4'-(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N-フェニル-N'-(3-メタクリロイロキシ-2-ヒドロキシプロピル-p-フェニレンジアミン、N-(1-メチルヘプチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン及びその誘導体、N,N'-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N'-ジアリル-p-フェニレンジアミン、N,N'-ジ-β-ナフチル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0025】
上記キノリン系老化防止剤としては、例えば、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、6-ドデシル-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等が挙げられる。
【0026】
上記フェノール系老化防止剤としては、例えば、スチレン化フェノール、ミックスドブチルオクチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジフェニル-4-オクトキシフェノール、ステアリル-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシベンジル)チオグリコレート、ステアリル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、ジステアリル-3,5-ジ-t-4-ヒドロキシベンジルホスホネート、トリエチレングリコールビス[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,2-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2'-エチリデンビス(4-sec-ブチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス[3,5-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)ブチリックアシド]グリコールエステル、4,4'-ブチリデンビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、4,4'-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、ビス[2-t-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、2-t-ブチル-4-メチル-5-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルベンジル)フェニルアクリレート、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-t-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,6-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス[β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。また、上記フェノール系老化防止剤には、ハイドロキノン系老化防止剤も含まれ、具体的には、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン(DAHQ)、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン(DBHQ)等が挙げられる。
【0027】
上記有機ホスファイト系老化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ,ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、テトラ(C12-15混合アルキル)ビスフェノールAジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルブタントリホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル・ビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0028】
上記チオエーテル系老化防止剤としては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のジアルキルチオジプロピオネート類、ペンタエリスリトールテトラ(ドデシルチオプロピオネート)又は4,4'-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)ビス(C12-15アルキルチオプロピオネート)等のアルキル(C=8〜18)チオプロピオン酸と1〜6価のアルコール又はフェノール類とのエステル等が挙げられる。
【0029】
本発明のゴム用薬品として用いることができるワックスとして、具体的には、精工化学(株)製サンタイトS、大内新興化学工業(株)製サンノック等が挙げられる。
【0030】
本発明のゴム用薬品として用いることができる脂肪酸及びその誘導体としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸亜鉛、その他の脂肪酸亜鉛(ラインケミー社製アクチプラストT、アクチプラストPP、アクチプラストF、アクチプラストM等)等が挙げられる。
【0031】
本発明のゴム用薬品として用いることができる樹脂としては、ゴムの高弾性化や粘弾性改良の観点から、フェノール樹脂、脂環式炭化水素樹脂等が挙げられる。なお、これらの樹脂は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
上記フェノール樹脂として、具体的には、ノボラック型、レゾール型が挙げられるが、一般にノボラック型のフェノール樹脂が好ましい。これらフェノール樹脂としては、アルキル置換型のフェノール樹脂を用いてもよいし、トールオイル、カシューオイル等で変性されたフェノール樹脂を用いてもよい。なお、必要に応じて、メチレン供与体であるヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン等の硬化剤と組み合わせて用いることができる。
【0033】
一方、上記脂環式炭化水素樹脂は、シクロペンタジエン又はジシクロペンタジエンを主体とする石油樹脂であって、シクロペンタジエン又はジシクロペンタジエンの重合体、シクロペンタジエン又はジシクロペンタジエンと共重合可能なオレフィン炭化水素との共重合体等が挙げられ、これら(共)重合体は、水酸基、エステル、マレイン酸、エチリデン−ノルボルネン等が付加されていてもよい。
【0034】
また、本発明のゴム用薬品の製造方法は、ゴム用薬品に対する良溶媒にゴム用薬品を溶解させてなるゴム用薬品溶液と、該ゴム用薬品に対する貧溶媒とを混合する工程を含むことを要する。本発明のゴム用薬品の製造方法は、かかる工程を含むことにより、上記ゴム用薬品が微細な粒子として析出し、該ゴム用薬品の体積平均粒子径を上記特定した体積平均粒子径に制御することができる。ここで、ゴム用薬品溶液とゴム用薬品に対する貧溶媒との混合方法としては、特に制限されないが、ゴム用薬品溶液を攪拌しながら、ゴム用薬品に対する貧溶媒を滴下する手法等が挙げられる。また、本発明の製造方法により得られるゴム用薬品は、上記ゴム用薬品に対する貧溶媒を混合し、ゴム用薬品の粒子が析出・分散した分散液の状態で使用されることが好ましい。一般に、ゴム用薬品の体積平均粒子径が低過ぎると、嵩密度が低い粒子となるために扱い難く、作業性の低下や飛散の問題が起こり得るが、ゴム用薬品をゴム用薬品分散液として使用することでかかる問題は解消されることになる。
【0035】
上記ゴム用薬品に対する良溶媒中のゴム用薬品の濃度は、1〜40質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることが更に好ましい。ゴム用薬品の濃度が1質量%未満では、溶媒量が多くなりすぎて現実的ではなく、一方、40質量%を超えると、所望の体積平均粒子径が得られないおそれがある。また、ゴム用薬品に対する良溶媒としては、例えば、アセトン、クロロホルム、エタノール、トルエン、キシレン等が挙げられる。更に、上記ゴム用薬品に対する良溶媒には、ゴム用薬品の他に、例えば、界面活性剤、乳化剤、pH調整剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。
【0036】
一方、ゴム用薬品に対する貧溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール等が挙げられる。また、本発明のゴム用薬品の製造方法において、ゴム用薬品に対する貧溶媒の使用量は、上記ゴム用薬品溶液100質量部に対し5〜400質量部が好ましく、20〜200質量部が更に好ましい。該ゴム用薬品に対する貧溶媒の使用量が5質量部未満では、ゴム薬品の回収率が低下し、一方、400質量部を超えると、溶媒量が多くなりすぎで現実的ではない。
【0037】
更に、本発明のゴム用薬品含有ウェットマスターバッチは、例えば、ゴム成分が分散又は溶解したゴム液、充填材を溶媒に分散させてなるスラリー及びそれらを混合してなるゴム分散液からなる群から選択される少なくとも一つの液に、上記ゴム用薬品を分散させてなるゴム用薬品分散液を添加して得られる。本発明のゴム用薬品含有ウェットマスターバッチは、分散性に優れるゴム用薬品を適用することで、該ゴム用薬品の特性が高度に発揮されている。加えて、ゴム用薬品を分散液として用いることにより、製造工程におけるゴム用薬品の飛散が抑制され、ゴム用薬品を確実に分散させることができる。
【0038】
なお、本発明のゴム用薬品含有ウェットマスターバッチは、上記ゴム用薬品が含まれていればよく、ゴム成分及び充填材は必須の成分ではない。従って、本発明のゴム用薬品含有ウェットマスターバッチとしては、(1)ゴム用薬品及びゴム成分を含有してなるマスターバッチ、(2)ゴム用薬品及び充填材を含有してなるマスターバッチ、(3)ゴム用薬品、ゴム成分及び充填材を含有してなるマスターバッチ等が挙げられる。
【0039】
上記ゴム用薬品分散液中のゴム用薬品の濃度は、1質量%以上であることが好ましく、1〜40質量%であることが好ましい。ゴム用薬品の濃度が1質量%未満では、溶媒量が多くなりすぎて現実的ではない。なお、上記ゴム用薬品分散液としては、特に制限されるものではないが、上記ゴム用薬品の製造方法において記載したように、ゴム用薬品に対する良溶媒にゴム用薬品を溶解させてなるゴム用薬品溶液と、該ゴム用薬品に対する貧溶媒とを混合することにより得られる分散液を使用することが好ましい。また、上記ゴム用薬品を溶媒に直接加えて形成される分散液を使用してもよい。
【0040】
上記ゴム成分が分散又は溶解したゴム液としては、ゴム成分の微粒子を水に分散させたゴムラテックス、ゴム成分を有機溶媒に溶解させた液が挙げられる。上記ゴム成分を溶解させる有機溶媒としては、芳香族、脂肪族、脂環式、ハロゲン化炭化水素溶媒が挙げられ、これらの中でも、トルエン、シクロヘキサンが特に好ましい。ここで、上記ゴム成分としては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル−ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。なお、上記ゴム成分は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせてもよい。また、上記ゴム液中のゴム成分の濃度は、5〜70質量%が好ましく、15〜40質量%が更に好ましい。更に、上記ゴム液には、上記ゴム成分、水、有機溶媒の他に、品質の向上や安定化の観点から、例えば、界面活性剤、乳化剤、pH調整剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。
【0041】
上記スラリーの充填材としては、カーボンブラック、シリカ及び無機充填剤等が挙げられる。カーボンブラックとしては、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFグレードのものが好ましく、HAF、ISAF、SAFグレードのものが更に好ましい。シリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ及びコロイダルシリカ等が好ましく、湿式シリカが更に好ましい。無機充填剤としては、アルミナ(Al23)、アルミナ一水和物(Al23・H2O)、水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO3)3]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、結晶性アルミノケイ酸塩等が挙げられる。なお、これら充填材は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
上記充填材を分散させてなるスラリーに用いる溶媒としては、水の他、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、芳香族、脂肪族、脂環式、ハロゲン化炭化水素溶媒等の有機溶媒が挙げられ、これらの溶媒は、一種単独で用いてもよいし、複数種の混合物として用いてもよい。ここで、該溶媒としては、水が好ましい。また、上記スラリー中の充填材の濃度は、1〜15質量%が好ましく、2〜10質量%が更に好ましい。更に、上記スラリーには、上記充填材、水、有機溶媒の他に、品質の向上や安定化の観点から、例えば、界面活性剤、乳化剤、pH調整剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。
【0043】
本発明のゴム用薬品含有ウェットマスターバッチが、上記ゴム成分を含有する場合、上記ゴム用薬品の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.2〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部が更に好ましい。一方、本発明のゴム用薬品含有マスターバッチが、上記充填材を含有する場合、上記ゴム用薬品の含有量は、充填材100質量部に対して20〜100質量部が好ましい。
【0044】
本発明のゴム用薬品含有ウェットマスターバッチには、上記ゴム用薬品、ゴム成分、充填材、水、有機溶媒の他に、ゴムマスターバッチやこれを用いたゴム組成物の性能を改良する観点から、必要に応じて界面活性剤、加硫剤、着色剤、分散剤等を、適宜選択して添加することができる。
【0045】
本発明のゴム用薬品含有ウェットマスターバッチの製造方法は、例えば、ゴム成分が分散又は溶解したゴム液と、充填材を溶媒に分散させてなるスラリーとを混合する工程を含み、ゴム成分が分散又は溶解したゴム液、充填材を溶媒に分散させてなるスラリー及びそれらを混合してなるゴム分散液からなる群から選択される少なくとも一つの液に、上記ゴム用薬品を分散させてなるゴム用薬品分散液を添加させる。ここで、ゴム液とスラリーとの混合方法としては、ホモミキサー中にスラリーを入れ、撹拌しながら、ゴム液を滴下する方法等が挙げられる。
【0046】
また、本発明のゴム用薬品含有ウェットマスターバッチの製造方法は、ゴム用薬品分散液とゴム液及び/又はスラリーとの混合操作を終了した後、得られた混合物を凝固させることが好ましい。ここで、該混合物の凝固方法としては、凝固剤を加えて固形物を得る方法等が挙げられる。凝固剤としては、特に限定されるものではないが、ギ酸、硫酸等の酸や、塩化ナトリウム等の塩が挙げられる。ゴム液の溶媒が水である場合には、アルコール類等の有機溶媒等、ゴム液を不安定化させる成分を添加してもよい。
【0047】
更に、本発明のゴム用薬品含有ウェットマスターバッチの製造方法は、ゴム用薬品分散液とゴム液及び/又はスラリーとの混合物を凝固させた後、更に、脱水及び乾燥することが好ましい。また、脱水及び乾燥工程においては、いかなる手段を用いてもよいが、例えば、金属製メッシュ、遠心脱水装置、真空脱水装置、フィルタープレス等の圧搾型脱水機、金属ロール、ゴム混練機、スクリュー型押出機、熱風乾燥機、減圧乾燥機、凍結乾燥機等を用いることができ、これらの中でも、熱風乾燥機、減圧乾燥機及び凍結乾燥機が好適である。更に、ゴム混練機としては、一般的な混練機を用いることができるが、工業的生産性の観点から、連続混練装置を用いることが好ましい。ここで、連続混練装置としては、同方向回転、或いは異方向回転の二軸混練押出機等の多軸押出機が好ましい。
【0048】
本発明のゴム組成物は、上記ゴム用薬品又は上記ゴム用薬品含有ウェットマスターバッチを含む。なお、上記ゴム用薬品は、該ゴム用薬品と、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを混練り、熱入れ、押出等することにより得られるゴム用薬品含有ドライマスターバッチとして使用してもよい。また、該ゴム組成物には、上記ゴム用薬品、ゴム成分、充填材の他、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、軟化剤、シランカップリング剤、亜鉛華、加硫促進剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。本発明のゴム組成物は、ゴム成分及びゴム用薬品又はゴム用薬品含有ウェットマスターバッチに、必要に応じて適宜選択した各種配合剤を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0049】
本発明のタイヤは、上記ゴム組成物を用いたことを特徴とする。上記ゴム組成物は、トレッド、ベース、サイド、プライ、ベルト等に好適に用いられる。なお、本発明のタイヤは、上述のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。また、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。また、ゴム用薬品の体積平均粒径(mv)及びゴム用薬品中の微粒子状成分の含有量は、下記の方法で測定した。
【0051】
(1)体積平均粒子径(mv)
レーザー回折型粒度分布計(MICROTRAC FRA型)を用い、水の屈折率1.33、ゴム用薬品の屈折率1.57として測定した値である。
【0052】
(2)ゴム用薬品中の微粒子状成分の含有量
目開き63μmのふるいを用いて、分けられた粉体質量から算出する。
【0053】
<実施例1>
(ゴム用薬品の調製)
良溶媒としてのエタノール中に、アミン系老化防止剤DNPD(大内新興化学工業(株)製,「ノクラックWhite」,融点215℃,全体の体積平均粒子径50.8μm,微粒子状成分含有量65質量%)を溶解させて、ゴム用薬品濃度10質量%のゴム用薬品溶液を調製した。次に、該ゴム用薬品溶液を攪拌しながら、使用したエタノールと同じ質量の水を貧溶媒として添加し、さらに25℃で10分間攪拌し、ゴム用薬品の粒子により懸濁したゴム用薬品分散液を得た。その後、該ゴム用薬品分散液をろ過し、得られたろ過物を減圧下、60℃で乾燥させ、ゴム用薬品Aを得た。得られたゴム用薬品Aは、全体の体積平均粒子径(mv)が10.8μmであり、微粒子状成分の含有量が99.5質量%であった。
【0054】
(マスターバッチの調製)
ミキサー中に、天然ゴム(TSR20)100質量部及びゴム用薬品A1質量部を加えて、80℃、回転数70rpmで2分間混練し、マスターバッチAを得た。混練時のマスターバッチの最高温度は、130℃であった。
【0055】
<比較例1>
(マスターバッチの調製)
ミキサー中に、天然ゴム(TSR20)100質量部及びアミン系老化防止剤DNPD(大内新興化学工業(株)製,「ノクラックWhite」,融点215℃,全体の体積平均粒子径50.8μm,微粒子状成分含有量65質量%)1質量部を加えて、80℃、回転数70rpmで2分間混練し、マスターバッチBを得た。混練時のマスターバッチの最高温度は、130℃であった。
【0056】
<実施例2>
(ゴム用薬品の調製)
良溶媒としてのエタノール中に、ハイドロキノン系老化防止剤DAHQ(大内新興化学工業(株)製,「ノクラックNS7」,融点204℃,全体の体積平均粒子径42.3μm,微粒子状成分含有量68質量%)を溶解させて、ゴム用薬品濃度5質量%のゴム用薬品溶液を調製した。次に、該ゴム用薬品溶液を攪拌しながら、使用したエタノールと同じ質量の水を貧溶媒として添加し、さらに25℃で10分間攪拌することで、ゴム用薬品の粒子により懸濁したゴム用薬品分散液を得た。その後、該ゴム用薬品分散液をろ過し、得られたろ過物を減圧下、60℃で乾燥させ、ゴム用薬品Bを得た。得られたゴム用薬品Bは、全体の体積平均粒子径(mv)が8.6μmであり、微粒子状成分の含有量が99.7質量%であった。
【0057】
(マスターバッチの調製)
ミキサー中に、天然ゴム(TSR20)100質量部及びゴム用薬品B5質量部を加えて、80℃、回転数70rpmで2分間混練し、マスターバッチCを得た。混練時のマスターバッチの最高温度は、140℃であった。
【0058】
<比較例2>
(マスターバッチの調製)
ミキサー中に、天然ゴム(TSR20)100質量部及びハイドロキノン系老化防止剤DAHQ(大内新興化学工業(株)製,「ノクラックNS7」,融点204℃,全体の体積平均粒子径42.3μm,微粒子状成分含有量68質量%)5質量部を加えて、80℃、回転数70rpmで2分間混練し、マスターバッチDを得た。混練時のマスターバッチの最高温度は、140℃であった。
【0059】
<実施例3>
(ゴム用薬品の調製)
良溶媒としてのエタノール中に、フェノール系老化防止剤MBMTB(三新化学工業(株)製,「サンダスト2246」,融点125℃,全体の体積平均粒子径125.2μm,微粒子状成分含有量13質量%)を溶解させて、ゴム用薬品濃度5質量%のゴム用薬品溶液を調製した。次に、該ゴム用薬品溶液を攪拌しながら、使用したエタノールと同じ質量の水を貧溶媒として添加し、さらに25℃で10分間攪拌することで、ゴム用薬品の粒子により懸濁したゴム用薬品分散液を得た。その後、該ゴム用薬品分散液をろ過し、得られたろ過物を減圧下、60℃で乾燥させ、ゴム用薬品Cを得た。得られたゴム用薬品Cは、全体の体積平均粒子径(mv)が12.3μmであり、微粒子状成分の含有量が99.8質量%であった。
【0060】
(マスターバッチの調製)
ミキサー中に、天然ゴム(TSR20)100質量部及びゴム用薬品C1質量部を加えて、80℃、回転数50rpmで1分間混練し、マスターバッチEを得た。混練時のマスターバッチの最高温度は、100℃であった。
【0061】
<比較例3>
(マスターバッチの調製)
ミキサー中に、天然ゴム(TSR20)100質量部及びフェノール系老化防止剤MBMTB(三新化学工業(株)製,「サンダスト2246」,融点125℃,全体の体積平均粒子径125.2μm,微粒子状成分含有量13質量%)1質量部を加えて、80℃、回転数50rpmで1分間混練し、マスターバッチFを得た。混練時のマスターバッチの最高温度は、100℃であった。
【0062】
次に、得られたマスターバッチA〜Fについて、老化防止剤の含有量を下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0063】
(2)老化防止剤の含有量
各マスターバッチを5回作製し、得られたマスターバッチから各5箇所、試験片を切り出した。JIS K6229−2007に準拠して、ゴム成分100質量部に対する老化防止剤の含有量を測定し、その平均質量部数と標準偏差を求めた。
【0064】
【表1】

【0065】
表1から、実施例1〜3のマスターバッチは、比較例1〜3のマスターバッチに比較して、ゴム成分に対する老化防止剤の含有量が高度に制御されており、老化防止剤の分散性が改善されていることが分かる。
【0066】
<実施例4>
(天然ゴムラテックスの調製)
パラゴムの樹液99質量部に20%アンモニア1質量部を添加した後、乾燥ゴム濃度20%の濃縮ラテックスを得た。
(ウェットマスターバッチの調製)
上記濃縮ラテックスに上記実施例3において調製したゴム用薬品Cを、濃縮ラテックス中の天然ゴム100質量部に対してゴム用薬品Cの添加量が1.0質量部となるように添加した。その後、撹拌しながら、5%に希釈したギ酸をpH4.7になるまで加えて、凝固させた。凝固物をシート状にして、110℃のオーブン中で2時間乾燥させ、ゴムウェットマスターバッチGを得た。
【0067】
<実施例5>
カーボンブラック(N220)を分散させてなるスラリー(カーボンブラック濃度=5%)に上記実施例3において調製したゴム用薬品Cを、スラリー中のカーボンブラック100質量部に対してゴム用薬品Cの添加量が1.0質量部となるように添加した。その後、定性分析ろ紙(東洋濾紙社製No.1)を用いて、スラリーから固形分を取り出し、110℃のオーブン中で2時間乾燥させ、ゴムウェットマスターバッチHを得た。
【0068】
次に、得られたゴムウェットマスターバッチG〜Hについて、老化防止剤の含有量を下記の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0069】
(3)老化防止剤の含有量
各マスターバッチを5回作製し、得られたマスターバッチから各5箇所、試験片を切り出した。ゴムウェットマスターバッチGについては、JIS K6229−2007に準拠して、ゴム成分100質量部に対する老化防止剤の含有量を測定し、その平均質量部数と標準偏差を求めた。一方、ゴムウェットマスターバッチHについては、JIS K6218−5に準拠して、カーボンブラック100質量部に対する老化防止剤の含有量を測定し、その平均質量部数と標準偏差を求めた。
【0070】
【表2】

【0071】
表2から、実施例4〜5のマスターバッチは、ゴム成分又はカーボンブラックに対する老化防止剤の含有量が高度に制御されており、老化防止剤の分散性が改善されていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点、軟化点又は滴点がマスターバッチ又はゴム組成物混練時の最高温度より高く、全体の体積平均粒子径(mv)が80μm以下で且つ体積粒子径が80μm以下の微粒子状成分を80質量%以上含むことを特徴とするゴム用薬品。
【請求項2】
前記融点、軟化点又は滴点が50〜250℃であることを特徴とする請求項1に記載のゴム用薬品。
【請求項3】
前記全体の体積平均粒子径(mv)が0.4〜20μmであることを特徴とする請求項1に記載のゴム用薬品。
【請求項4】
老化防止剤、ワックス、脂肪酸及びその誘導体、並びに樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のゴム用薬品。
【請求項5】
ゴム用薬品に対する良溶媒にゴム用薬品を溶解させてなるゴム用薬品溶液と、該ゴム用薬品に対する貧溶媒とを混合することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゴム用薬品の製造方法。
【請求項6】
ゴム成分が分散又は溶解したゴム液、充填材を溶媒に分散させてなるスラリー及びそれらを混合してなるゴム分散液からなる群から選択される少なくとも一つの液に、請求項1〜4のいずれかに記載のゴム用薬品を分散させてなるゴム用薬品分散液を添加して得たことを特徴とするゴム用薬品含有ウェットマスターバッチ。
【請求項7】
更に、脱水及び乾燥して得たことを特徴とする請求項6に記載のゴム用薬品含有ウェットマスターバッチ。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載のゴム用薬品を配合してなるゴム組成物。
【請求項9】
請求項6又は7に記載のゴム用薬品含有ウェットマスターバッチを配合してなるゴム組成物。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のゴム組成物を用いたタイヤ。

【公開番号】特開2010−254926(P2010−254926A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109896(P2009−109896)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】