説明

ゴム組成物、加硫ゴム及びタイヤ

【課題】タイヤの氷上性能及び耐摩耗性を向上させつつ、転がり抵抗を低減することが可能なゴム組成物を提供する。
【解決手段】ゴム成分(A)に対して、微粒子含有繊維(B)、発泡剤(C)、有機ケイ素化合物(D)、及び無機充填剤(E)を配合してなり、前記微粒子含有繊維(B)が、金属酸化物、金属炭酸塩、及び金属を含有する粘土鉱物からなる群から選択される少なくとも一種の微粒子と、親水性樹脂とからなり、前記有機ケイ素化合物(D)が特定の構造式で表わされる化合物から選択されることを特徴とするゴム組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、該ゴム組成物を加硫して得た加硫ゴム、及び該加硫ゴムを具えるタイヤに関し、特にタイヤの氷上性能及び耐摩耗性を向上させつつ、転がり抵抗を低減することが可能なゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スパイクタイヤが規制されて以来、氷雪路面上でのタイヤの制動性や駆動性(氷上性能)を向上させるために、特にタイヤのトレッド部について種々の検討がなされている。例えば、タイヤのトレッドゴム中に中空繊維を配合することにより、氷雪路面上の水を該中空繊維の中空部分で排除し、タイヤの氷上性能を向上させることが行われている。しかしながら、この場合、トレッドゴム成形時における圧力、ゴム流れ、温度等により、中空繊維が中空形状を保つことができず、タイヤの氷上性能を充分に改善できないという問題があった。
【0003】
この問題に対して、特開平11−60770号公報(特許文献1)及び特開2001−2832号公報(特許文献2)では、発泡剤含有繊維を含むゴム組成物をタイヤのトレッド部に用いて、トレッド部にミクロな排水溝を形成することで、タイヤの排水性を向上させ、タイヤの氷上性能を向上させる技術が提案されている。また、特開2001−233993号公報(特許文献3)では、微粒子含有有機繊維を含むゴム組成物をトレッド部に用いたタイヤにおいて、有機繊維中に含まれる微粒子の含有量を増加させることにより、トレッドの水膜除去能に加えて、引っ掻き効果が向上し、タイヤの氷上性能が更に向上することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−60770号公報
【特許文献2】特開2001−2832号公報
【特許文献3】特開2001−233993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、昨今、タイヤの氷上性能に関して、上記特許文献1〜3に記載の技術より更に優れた技術が求められている。また、上記特許文献3に記載のように、氷上性能を向上させるために、有機繊維に微粒子を含有させる場合、微粒子の量を多くすると、氷上性能は高くなるものの、微粒子の含有量には限界があり、例えば、繊維の製造工程において、樹脂を高温で引き伸ばす紡糸・延伸の段階で、樹脂中に混入した微粒子が繊維の切断を誘発することがあるため、該微粒子の含有量を増加させ過ぎると、繊維の製造が著しく困難になるという問題があった。
【0006】
一方、発泡剤含有繊維を含むゴム組成物をタイヤのトレッド部に用いて、トレッド部にミクロな排水溝を形成することで、タイヤの排水性を向上させて、氷上性能を向上させることができるが、この場合、トレッド部に形成されたミクロな排水溝が路面を引っ掻くため、晴天時に乾燥路面上を走行する際のタイヤの耐摩耗性が低下したり、タイヤの転がり抵抗が大きくなるといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、タイヤの氷上性能及び耐摩耗性を向上させつつ、転がり抵抗を低減することが可能なゴム組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかるゴム組成物を加硫して得た加硫ゴム、及び該加硫ゴムをトレッド部に備えるタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ゴム成分に対して、特定の微粒子と親水性樹脂とからなる微粒子含有繊維、発泡剤、特定の有機ケイ素化合物、及び無機充填剤を配合したゴム組成物をタイヤのトレッド部に適用することにより、タイヤの氷上性能及び耐摩耗性を向上させつつ、転がり抵抗を低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明のゴム組成物は、
・ゴム成分(A)に対して、
・微粒子含有繊維(B)、
・発泡剤(C)、
・有機ケイ素化合物(D)及び
・無機充填剤(E)を配合してなり、
・前記微粒子含有繊維(B)が、金属酸化物、金属炭酸塩、及び金属を含有する粘土鉱物からなる群から選択される少なくとも一種の微粒子と、親水性樹脂とからなり、
・前記有機ケイ素化合物(D)が、下記一般式(I):
【化1】

[式中、A1は、下記一般式(II)又は式(III):
【化2】


で表わされ、
式(I)及び式(II)中のR1、R2及びR3は、少なくとも一つが下記一般式(IV)又は(V):
【化3】


(式中、Mは−O−又は−CH2−で、X及びYはそれぞれ独立して−O−、−NR8−又は−CH2−で、R6は−OR8、−NR89又は−R8で、R7は−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8で、但し、R8は−Cn2n+1であり、R9は−Cq2q+1であり、l、m、n及びqはそれぞれ独立して0〜10である)で表され、且つ少なくとも一つが−(O−Cl2lys2s+1(ここで、lは上記と同義であり、y及びsはそれぞれ独立して1〜20である)で表され、その他が−M−Cr2r+1(ここで、Mは上記と同義であり、rは0〜20である)、但し、R1、R2及びR3の一つ以上はMが−O−であり、
4は下記一般式(VI)又は式(VII):
【化4】


(式中、M、X、Y、R6、l及びmは上記と同義であり、R10は−NR8−、−NR8−NR8−又は−N=N−で、但し、R8は上記と同義である)或いは−Z−Cl2l−(ここでZは−O−、−NR8−又は−CH2−で、但し、R8は上記と同義であり、lは上記と同義である)で表され、
式(III)中のR5は上記一般式(IV)又は式(V)或いは−Cl2l−R11(ここで、R11は−NR89、−NR8−NR89、−N=NR8又は−Z−Cm2m+1であり、但し、R8、R9、Z、l及びmは上記と同義である)で表わされ、
xは1〜10である]で表わされる化合物、及び下記一般式(VIII):
【化5】

[式中、A2は、下記一般式(IX)又は式(III):
【化6】


で表わされ、
式(VIII)及び式(IX)中のWは−NR8−又は−CR78−(ここで、R7は−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8であり、R8は−Cn2n+1で、R9は−Cq2q+1で、n及びqはそれぞれ独立して0〜10である)で表わされ、
12及びR13はそれぞれ独立して−M−Cl2l−(ここで、Mは−O−又は−CH2−で、lは0〜10である)で表わされ、
14は−(O−Cl2lys2s+1(ここで、lは上記と同義であり、y及びsはそれぞれ独立して1〜20である)で表わされ、但し、R12、R13及びR14の一つ以上はMが−O−であり、
4は下記一般式(VI)又は式(VII):
【化7】


(式中、M及びlは上記と同義であり、mは0〜10であり、X及びYはそれぞれ独立して−O−、−NR8−又は−CH2−で、R6は−OR8、−NR89又は−R8で、R10は−NR8−、−NR8−NR8−又は−N=N−であり、但し、R8及びR9は上記と同義である)或いは−Z−Cl2l−(ここで、Zは−O−、−NR8−又は−CH2−で、但し、R8は上記と同義であり、lは上記と同義である)で表され、
式(III)中のR5は下記一般式(IV)又は式(V):
【化8】


(式中、M、X、Y、R6、R7、l及びmは上記と同義である)或いは−Cl2l−R11(ここで、R11は−NR89、−NR8−NR89、−N=NR8又は−Z−Cm2m+1であり、但し、R8、R9、Z、l及びmは上記と同義である)で表わされ、
xは1〜10である]で表わされる化合物からなる群から選択される少なくとも一種である
ことを特徴とする。ここで、親水性樹脂は、水を溶媒としたときの接触角が90°以下の樹脂である。
【0010】
本発明のゴム組成物の好適例においては、前記親水性樹脂が、カルボキシル基、水酸基、エステル基、エーテル基及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも一種の官能基を含む樹脂である。この場合、長尺状気泡の集水効果が高い。
【0011】
本発明のゴム組成物において、前記金属酸化物としては、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、該金属酸化物がセラミックス及びゼオライト(アルミノケイ酸塩)の内の少なくとも一方であることが更に好ましい。また、本発明のゴム組成物において、前記金属炭酸塩としては、炭酸カルシウムが好ましく、前記金属を含有する粘土鉱物としては、モンモリロナイトが好ましい。これらの場合、親水性樹脂との接着性を向上できる。
【0012】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記微粒子含有繊維(B)が、前記親水性樹脂100質量部に対して、前記微粒子を0.5〜200質量部含有する。この場合、長尺状気泡の引っ掻き効果が高い。
【0013】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記微粒子含有繊維(B)の含有量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対し0.5〜30質量部である。この場合、長尺状気泡への集水を確実に向上させることができる。
【0014】
本発明のゴム組成物において、前記微粒子は、粒径が0.1〜500μmであることが好ましい。この場合、微粒子含有繊維の製造容易性が高い。
【0015】
本発明のゴム組成物において、前記微粒子含有繊維(B)は、平均径が1〜100μmであり、平均長さが0.1〜20mmであることが好ましい。この場合、長尺状気泡がミクロな排水溝として確実に機能することができる。
【0016】
本発明のゴム組成物において、前記親水性樹脂は、融点又は軟化点が加硫最高温度未満であることが好ましい。
【0017】
本発明のゴム組成物に配合する有機ケイ素化合物(D)において、前記Mは−O−であり、前記Zは−CH2−であることが好ましい。
【0018】
本発明のゴム組成物に配合する有機ケイ素化合物(D)が上記一般式(I)で表わされる場合、
前記R1、R2及びR3は、少なくとも一つが−O−Cl2l−R7(ここで、R7及びlは上記と同義である)で表され、且つ少なくとも一つが−(O−Cl2lys2s+1(ここで、l、y及びsは上記と同義である)で表わされ、その他が−O−Cl2l+1(ここで、lは上記と同義である)で表わされ、
前記R4が−Cl2l−(ここで、lは上記と同義である)で表わされ、
前記R5が−Cl2l−R11(ここで、R11及びlは上記と同義である)で表わされることが好ましい。
【0019】
本発明のゴム組成物に配合する有機ケイ素化合物(D)が上記一般式(I)で表わされる場合、
前記R1、R2及びR3は、少なくとも一つが−O−Cl2l−NR89(ここで、R8、R9及びlは上記と同義である)で表され、且つ少なくとも一つが−(O−Cl2lys2s+1(ここで、l、y及びsは上記と同義である)で表わされ、
前記R5が−Cl2l+1(ここで、lは上記と同義である)で表わされることが更に好ましい。
【0020】
本発明のゴム組成物に配合する有機ケイ素化合物(D)が上記一般式(VIII)で表わされる場合、
前記Wが−NR8−(ここで、R8は上記と同義である)で表わされ、
前記R12及びR13がそれぞれ独立して−O−Cl2l−(ここで、lは上記と同義である)で表わされ、
前記R14が−(O−Cl2lys2s+1(ここで、l、y及びsは上記と同義である)で表わされ、
前記R4が−Cl2l−(ここで、lは上記と同義である)で表わされ、
前記R5が−Cl2l+1(ここで、lは上記と同義である)で表わされることが好ましい。
【0021】
本発明のゴム組成物に配合する有機ケイ素化合物(D)が上記一般式(VIII)で表わされる場合、
前記Wが−CR89−(ここで、R8及びR9は上記と同義である)で表わされ、
前記R12及びR13がそれぞれ独立して−O−Cl2l−(ここで、lは上記と同義である)で表わされ、
前記R14が−(O−Cl2lys2s+1(ここで、l、y及びsは上記と同義である)で表わされ、
前記R4が−Cl2l−(ここで、lは上記と同義である)で表わされ、
前記R5が−Cl2l+1(ここで、lは上記と同義である)で表わされることも好ましい。
【0022】
本発明のゴム組成物は、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、前記無機充填剤(E)5〜140質量部を配合してなり、
前記有機ケイ素化合物(D)を、前記無機充填剤(E)の配合量の1〜20質量%含むことが好ましい。
【0023】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記無機充填剤(E)がシリカ又は水酸化アルミニウムである。ここで、該シリカは、BET表面積が40〜350m2/gであることが好ましい。
【0024】
また、本発明の加硫ゴムは、上記のゴム組成物を加硫して得られ、長尺状気泡を有することを特徴とする。ここで、本発明の加硫ゴムは、発泡率が3〜50%であることが好ましい。
【0025】
更に、本発明のタイヤは、上記の加硫ゴムをトレッド部に用いたことを特徴とする。ここで、本発明のタイヤにおいては、前記長尺状気泡がタイヤ周方向に配向していることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、特定の微粒子と親水性樹脂とからなる微粒子含有繊維、発泡剤、特定の有機ケイ素化合物、及び無機充填剤が配合されており、タイヤの氷上性能及び耐摩耗性を向上させつつ、転がり抵抗を低減することが可能なゴム組成物を提供することができる。また、かかるゴム組成物を加硫して得た、長尺状気泡を有する加硫ゴムと、該加硫ゴムをトレッド部に具え、氷上性能、耐摩耗性、及び低燃費性に優れるタイヤとを提供することができる。なお、本発明のゴム組成物に配合した微粒子含有繊維は親水性樹脂を含むため、ミクロな排水溝として作用する長尺状気泡の集水効果が高く、タイヤの氷上性能を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の加硫ゴムの一例の断面図である。
【図2】本発明のタイヤの一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<ゴム組成物>
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のゴム組成物は、ゴム成分(A)に対して、微粒子含有繊維(B)、発泡剤(C)、有機ケイ素化合物(D)、及び無機充填剤(E)を配合してなり、前記微粒子含有繊維(B)が、金属酸化物、金属炭酸塩、及び金属を含有する粘土鉱物からなる群から選択される少なくとも一種の微粒子と、親水性樹脂とからなり、前記有機ケイ素化合物(D)が上記一般式(I)で表わされる化合物及び上記一般式(VIII)で表わされる化合物からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする。
【0029】
上記した通り、微粒子含有繊維を配合したゴム組成物を用いることでタイヤの氷上性能が向上することが知られるが、該微粒子は製造時に繊維を切断するおそれがあった。ここで、本発明者は、微粒子含有繊維について詳細に検討したところ、親水性の樹脂に金属を含む微粒子を配合すると、樹脂と微粒子との接着作用により、繊維の製造が容易になることを見出した。従って、製造容易性が高い微粒子含有繊維(B)と、発泡剤(C)とが配合された本発明のゴム組成物は、加硫後に形成される長尺状気泡に引っ掻き効果を確実に付与することができ、タイヤの氷上性能を向上させることができる。更に、かかるゴム組成物を加硫して得た加硫ゴムは、一般に疎水性を示すゴム成分(A)と、親水性の樹脂で被覆された長尺状気泡とから構成されるため、氷雪路面上の水を親水性の樹脂で覆われた長尺状気泡に効率的に集め、ミクロな排水溝により確実に排水することができる。従って、本発明のゴム組成物をトレッド部に適用することで、タイヤの氷上性能を大幅に向上させることができる。
【0030】
また、上記した通り、発泡剤含有繊維を含むゴム組成物をタイヤのトレッド部に用いて、トレッド部にミクロな排水溝を形成すると、該ミクロな排水溝が路面を引っ掻くため、乾燥路面上における耐摩耗性が低下したり、転がり抵抗が大きくなるが、上記特定の有機ケイ素化合物(D)をゴム組成物に配合することで、タイヤの転がり抵抗を低減しつつ、耐摩耗性を向上させることができる。上記有機ケイ素化合物(D)は、シリカ等の無機充填剤(E)の表面との親和性が高いアミノ基、イミノ基、置換アミノ基、置換イミノ基等の含窒素官能基を含むため、窒素原子の非共有電子対が、有機ケイ素化合物(D)と無機充填剤(E)の反応に関与でき、カップリング反応の速度が速い。そのため、上記有機ケイ素化合物(D)を無機充填剤配合ゴム組成物に添加することで、カップリング効率が向上し、その結果として、ゴム組成物のヒステリシスロスを大幅に低下させつつ、耐摩耗性を大幅に向上させることが可能となる。また、上記有機ケイ素化合物(D)は、添加効率が高いため、少量でも高い効果が得られ、配合コストの低減にも寄与する。
【0031】
<<ゴム成分(A)>>
本発明のゴム組成物のゴム成分(A)としては、特に制限はなく、天然ゴム(NR)の他、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル−ブタジエンゴム(NBR)等の合成ゴムを使用することができ、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムからなることが好ましい。これらゴム成分(A)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0032】
<<微粒子含有繊維(B)>>
本発明のゴム組成物に用いる微粒子含有繊維(B)は、金属酸化物、金属炭酸塩及び金属を含有する粘土鉱物からなる群から選択される少なくとも一種の微粒子と、親水性樹脂とからなることを要する。本発明のゴム組成物に微粒子含有繊維(B)を配合することにより、長尺状気泡を親水性の樹脂で被覆することができる。なお、ゴム組成物中に繊維を配合することにより、ミクロな排水溝として機能する長尺状気泡が形成されるのであり、樹脂を直接配合するだけでは、長尺状気泡は形成されない。
【0033】
本発明のゴム組成物において、上記微粒子含有繊維(B)を構成する親水性樹脂としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エステル基、エーテル基、カルボニル基等の官能基を含む樹脂が挙げられる。上記親水性樹脂としては、水酸基又はカルボキシル基を含む樹脂が特に好ましい。また、上記親水性樹脂としては、アイオノマーが好ましい。
【0034】
本発明のゴム組成物において、上記微粒子含有繊維(B)を構成する親水性樹脂は、融点又は軟化点が、ゴム組成物の加硫時において該ゴム組成物が達する最高温度、即ち加硫最高温度未満であることが好ましい。発泡剤(C)を含有するゴム組成物中に微粒子含有繊維(B)が配合されている場合、該微粒子含有繊維(B)を構成する親水性樹脂は加硫中に溶融又は軟化し、一方、ゴムマトリクス中で加硫中に発泡剤(C)から発生したガスは、加硫反応が進行したゴムマトリクスに比べ、繊維を構成していた溶融又は軟化した親水性樹脂の内部に留まる傾向がある。ここで、上記親水性樹脂の融点又は軟化点が加硫最高温度未満であれば、ゴム組成物の加硫時に該樹脂が速やかに溶融又は軟化し、長尺状気泡を効率的に形成することができる。一方、上記親水性樹脂の融点又は軟化点が加硫最高温度に近くなり過ぎると、加硫初期に速やかに親水性樹脂が溶融(軟化を含む)せず、加硫終期に親水性樹脂が溶融する。加硫終期では、発泡剤(C)から発生したガスが加硫したゴムマトリクス中に分散乃至取り込まれてしまっており、溶融した樹脂内には十分な量のガスが保持されない。
【0035】
上記親水性樹脂の融点又は軟化点の上限は、以上の点を考慮して選択するのが好ましく、一般的には、ゴム組成物の加硫最高温度よりも、10℃以上低いことが好ましく、20℃以上低いことが更に好ましい。ゴム組成物の工業的な加硫温度は、一般的には最高で約190℃程度であるが、例えば、加硫最高温度が190℃に設定されている場合には、親水性樹脂の融点又は軟化点としては、通常190℃以下の範囲で選択され、180℃以下が好ましく、170℃以下が更に好ましい。
【0036】
本発明のゴム組成物において、上記微粒子含有繊維(B)を構成する微粒子は、親水性樹脂と接着作用を示す。上記微粒子としては、例えば、酸化チタン(チタニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)等の金属酸化物の微粒子、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩の微粒子、モンモリロナイト等の粘土鉱物の微粒子等が挙げられ、これらの中でも、金属イオンが存在する理由から粘土鉱物の微粒子が特に好ましい。これら微粒子は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。なお、上記金属酸化物をセラミックス又はゼオライト(アルミノケイ酸塩)として用いてもよい。
【0037】
本発明のゴム組成物において、上記微粒子含有繊維(B)を構成する微粒子は、製造容易性の観点から、その粒径が0.1〜500μmであることが好ましい。該粒径が0.1μm未満では、氷雪路面上での引っ掻き効果が十分に得られず、一方、500μmを超えると、繊維製造時(溶融紡糸時)に糸が切断するため、細径化が困難となる。
【0038】
本発明のゴム組成物において、上記微粒子含有繊維(B)は、親水性樹脂100質量部に対して微粒子を0.5〜200質量部含有することが好ましく、1〜100質量部含有することが更に好ましい。該微粒子の含有量が0.5質量部未満では、氷雪路面上での引っ掻き効果が十分に得られず、一方、200質量部を超えると、紡糸操業性に劣り、糸切れが生じるおそれがある。
【0039】
本発明のゴム組成物において、上記微粒子含有繊維(B)の含有量は、上記ゴム成分(A)100質量部に対し0.5〜30質量部であることが好ましい。該微粒子含有繊維(B)の含有量が0.5質量部未満では、加硫ゴムに占める長尺状の空隙の体積比率が小さいため、十分な氷上性能が得られないおそれがあり、一方、30質量部を超えると、ゴム組成物中での微粒子含有繊維(B)の分散性が低下し、ゴム組成物の加工性が低下するおそれがある。
【0040】
本発明のゴム組成物に用いる微粒子含有繊維(B)は、平均径が1〜100μmであることが好ましく、10〜100μmであることが更に好ましい。この場合、繊維を構成していた親水性樹脂で覆われる長尺状気泡がミクロな排水溝として効率的に機能できる。また、微粒子含有繊維(B)の平均径が1μm未満では、親水性樹脂と微粒子から紡糸することができないおそれがあり、一方、100μmを超えると、微粒子含有繊維(B)の重量が増加し、ゴム組成物中の配合部数が高くなり過ぎるおそれがある。
【0041】
本発明のゴム組成物に用いる微粒子含有繊維(B)は、平均長さが0.1〜20mmであることが好ましく、0.5〜20mmであることが更に好ましく、1〜10mmであることがより一層好ましい。この場合、繊維を構成していた親水性樹脂で覆われる長尺状気泡がミクロな排水溝として効率的に機能できる。また、微粒子含有繊維(B)の平均長さが0.1mm未満では、長尺状気泡が形成され難い。一方、微粒子含有繊維(B)の平均長さが20mmを超えると、繊維の硬度が高くなり過ぎ、十分に混練りすることができず、また、トレッドのサイプが通常20mm程度であり、繊維の平均長さが20mmを超えても、氷上性能の向上効果が得難い。
【0042】
本発明のゴム組成物に用いる微粒子含有繊維(B)は、常法により製造することができ、該繊維の製造方法としては、溶融紡糸法、ゲル紡糸法、溶液紡糸法等が挙げられる。例えば、溶融紡糸法では、押出機中で原料樹脂を加熱・溶融した後、微粒子を分散させ、次いで紡糸ノズルより押し出された繊維の束を紡糸筒内で引き伸ばしつつ空気流により冷却して固化させ、その後、油剤を付与して1本にまとめ、巻き取ることにより、微粒子含有繊維(B)を製造することができる。一方、溶液紡糸法では、原料樹脂を溶解したポリマー溶液に微粒子を分散させ、これを紡糸ノズルより押し出し、脱溶媒等を行うことにより繊維化し、繊維を製造することができる。
【0043】
<<発泡剤(C)>>
本発明のゴム組成物に用いる発泡剤(C)としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼンスルホニルヒドラジド誘導体、p,p'-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、二酸化炭素を発生する重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、p,p'-オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。これら発泡剤(C)の中でも、製造加工性の観点から、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)が好ましく、特にアゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましい。これら発泡剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。また、該発泡剤(C)の配合量は、特に限定されるものではないが、上記ゴム成分(A)100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲が好ましい。
【0044】
また、上記発泡剤(C)には、発泡助剤として尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛や亜鉛華等を併用することが好ましい。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。発泡助剤を併用することにより、発泡反応を促進して反応の完結度を高め、経時的に不要な劣化を抑制することができる。
【0045】
<<有機ケイ素化合物(D)>>
本発明のゴム組成物に用いる有機ケイ素化合物(D)は、上記一般式(I)で表わされる化合物及び上記一般式(VIII)で表わされる化合物からなる群から選択される。該有機ケイ素化合物(D)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、該有機ケイ素化合物(D)は、ケイ素−酸素結合(Si−O)を1〜6個有することが好ましい。有機ケイ素化合物(D)がケイ素−酸素結合(Si−O)を1〜6個有する場合、シリカ等の無機充填剤(E)との反応性が高く、カップリング効率が更に向上する。
【0046】
<<<式(I)の化合物>>>
上記一般式(I)において、A1は、上記一般式(II)又は式(III)で表わされ、xは1〜10である。ここで、xは2〜4の範囲が好ましい。
【0047】
上記式(I)及び(II)において、R1、R2及びR3は、少なくとも一つが上記一般式(IV)又は式(V)で表わされ、且つ少なくとも一つが−(O−Cl2lys2s+1(ここで、lは0〜10であり、y及びsはそれぞれ独立して1〜20である)で表され、その他が−M−Cr2r+1(ここで、Mは−O−又は−CH2−であり、rは0〜20である)で表わされる。但し、R1、R2及びR3の一つ以上は、Mが−O−である。なお、−Cr2r+1は、rが0〜20であるため、水素又は炭素数1〜20のアルキル基である。ここで、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられ、該アルキル基は、直鎖状でも、分岐状でもよい。また、−Cl2l−は、lが0〜10であるため、単結合又は炭素数1〜10のアルキレン基である。ここで、炭素数1〜10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等が挙げられ、該アルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよい。また、−Cs2s+1は、sが1〜20であるため、炭素数1〜20のアルキル基である。ここで、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられ、該アルキル基は、直鎖状でも、分岐状でもよい。また、yは、(O−Cl2l)単位の繰り返し数であり、1〜20である。
【0048】
上記式(IV)及び(V)において、Mは−O−又は−CH2−であり、lは0〜10である。また、上記式(IV)において、mは0〜10である。
【0049】
上記式(IV)において、X及びYは、それぞれ独立して−O−、−NR8−又は−CH2−である。ここで、R8は−Cn2n+1であり、nは0〜10である。なお、−Cn2n+1は、nが0〜10であるため、水素又は炭素数1〜10のアルキル基である。ここで、炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられ、該アルキル基は、直鎖状でも、分岐状でもよい。
【0050】
上記式(IV)において、R6は、−OR8、−NR89又は−R8である。ここで、R8は−Cn2n+1であり、R9は−Cq2q+1であり、n及びqはそれぞれ独立して0〜10である。なお、−Cn2n+1については、上述の通りであり、−Cq2q+1は、qが0〜10であるため、水素又は炭素数1〜10のアルキル基である。ここで、炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられ、該アルキル基は、直鎖状でも、分岐状でもよい。
【0051】
上記式(V)において、R7は、−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8である。ここで、R8は−Cn2n+1であり、R9は−Cq2q+1であり、n及びqはそれぞれ独立して0〜10である。なお、−Cn2n+1及び−Cq2q+1については、上述の通りである。
【0052】
また、上記式(I)及び(II)において、R4は、上記一般式(VI)又は式(VII)、或いは−Z−Cl2l−で表わされ、特には−Cl2l−で表わされることが好ましく、ここで、Zは−O−、−NR8−又は−CH2−であり、lは0〜10である。なお、−Cl2l−は、lが0〜10であるため、単結合又は炭素数1〜10のアルキレン基である。ここで、炭素数1〜10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等が挙げられ、該アルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよい。また、R8は−Cn2n+1であり、nは0〜10である。なお、−Cn2n+1については、上述の通りである。
【0053】
上記式(VI)及び(VII)において、Mは−O−又は−CH2−であり、l及びmは0〜10である。式(VI)及び(VII)中の−Cl2l−については、上述の通りである。また、式(VI)及び(VII)中の−Cm2m−は、mが0〜10であるため、単結合又は炭素数1〜10のアルキレン基である。ここで、炭素数1〜10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等が挙げられ、該アルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよい。また、上記式(VI)において、X及びYはそれぞれ独立して−O−、−NR8−又は−CH2−であり、R6は−OR8、−NR89又は−R8である。なお、R8及びR9については、上述の通りである。更に、上記式(VII)において、R10は、−NR8−、−NR8−NR8−又は−N=N−であり、ここで、R8は−Cn2n+1であり、−Cn2n+1については、上述の通りである。
【0054】
また、上記式(III)中のR5は、上記一般式(IV)又は式(V)、或いは−Cl2l−R11で表わされ、特には−Cl2l+1で表わされることが好ましく、ここで、R11は、−NR89、−NR8−NR89、−N=NR8又は−Z−Cm2m+1であり、但し、R8、R9、Z、l及びmは上記と同義である。なお、−Cl2l−及び−Cl2l+1については上述の通りであり。また、−Cm2m+1は、mが0〜10であるため、水素又は炭素数1〜10のアルキル基であり、ここで、炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられ、該アルキル基は、直鎖状でも、分岐状でもよい。
【0055】
上記式(I)の化合物において、Mは−O−(酸素)であることが好ましい。この場合、Mが−CH2−である化合物と比べてシリカ等の無機充填剤との反応性が高い。
【0056】
また、上記式(I)の化合物において、上記R1、R2及びR3は、少なくとも一つが−O−Cl2l−R7で表わされ、且つ少なくとも一つが−(O−Cl2lys2s+1で表わされ、その他が−O−Cl2l+1で表わされることが好ましく、上記R4は−Cl2l−で表わされることが好ましく、上記R5は−Cl2l−R11で表わされることが好ましい。
【0057】
更に、上記式(I)の化合物において、上記R1、R2及びR3は、少なくとも一つが−O−Cl2l−NR89で表わされ、且つ少なくとも一つが−(O−Cl2lys2s+1で表わされることが更に好ましく、上記R4は−Cl2l−で表わされることが好ましく、上記R5は−Cl2l+1で表わされることが更に好ましい。
【0058】
<<<式(VIII)の化合物>>>
上記一般式(VIII)において、A2は、上記一般式(IX)又は式(III)で表わされ、xは1〜10である。ここで、xは2〜4の範囲が好ましい。
【0059】
上記式(VIII)及び(IX)において、Wは、−NR8−又は−CR78−で表わされ、ここで、R7は−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8であり、R8は−Cn2n+1で、R9は−Cq2q+1で、n及びqはそれぞれ独立して0〜10である。なお、−Cn2n+1及び−Cq2q+1は、n及びqが0〜10であるため、水素又は炭素数1〜10のアルキル基である。ここで、炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられ、該アルキル基は、直鎖状でも、分岐状でもよい。
【0060】
上記式(VIII)及び(IX)において、R12及びR13はそれぞれ独立して−M−Cl2l−で表わされ、R14は−(O−Cl2lys2s+1で表わされ、ここで、Mは−O−又は−CH2−であり、lは0〜10であり、y及びsはそれぞれ独立して1〜20である。但し、R12、R13及びR14の一つ以上は、Mが−O−である。なお、−Cl2l−は、lが0〜10であるため、単結合又は炭素数1〜10のアルキレン基である。ここで、炭素数1〜10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等が挙げられ、該アルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよい。また、−Cs2s+1は、sが1〜20であるため、炭素数1〜20のアルキル基である。ここで、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられ、該アルキル基は、直鎖状でも、分岐状でもよい。また、yは、(O−Cl2l)単位の繰り返し数であり、1〜20である。
【0061】
また、上記式(VIII)及び(IX)において、R4は上記一般式(VI)又は式(VII)、或いは−Z−Cl2l−で表わされ、特には−Cl2l−で表わされることが好ましく、ここで、Zは−O−、−NR8−又は−CH2−であり、ここで、R8は−Cn2n+1であり、l及びnは0〜10である。なお、−Cl2l−及び−Cn2n+1については、上述の通りである。
【0062】
上記式(VI)及び(VII)において、Mは−O−又は−CH2−であり、l及びmは0〜10である。また、上記式(VI)において、X及びYはそれぞれ独立して−O−、−NR8−又は−CH2−であり、R6は−OR8、−NR89又は−R8であり、ここで、R8は−Cn2n+1で、R9は−Cq2q+1である。更に、上記式(VII)において、R10は、−NR8−、−NR8−NR8−又は−N=N−であり、ここで、R8は−Cn2n+1である。なお、−Cn2n+1及び−Cq2q+1については、上述の通りである。また、−Cm2m−は、mが0〜10であるため、単結合又は炭素数1〜10のアルキレン基である。ここで、炭素数1〜10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等が挙げられ、該アルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよい。また、−Cl2l−については、上述の通りである。
【0063】
また、上記式(III)中のR5は、上記一般式(IV)又は式(V)、或いは−Cl2l−R11で表わされ、特には−Cl2l+1で表わされることが好ましく、ここで、R11は、−NR89、−NR8−NR89、−N=NR8又は−Z−Cm2m+1であり、但し、R8、R9、Z、l及びmは上記と同義である。なお、−Cl2l−については、上述の通りであり、また、−Cm2m+1は、mが0〜10であるため、水素又は炭素数1〜10のアルキル基であり、ここで、炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられ、該アルキル基は、直鎖状でも、分岐状でもよい。
【0064】
上記式(VIII)の化合物において、Mは−O−(酸素)であることが好ましい。この場合、Mが−CH2−である化合物と比べてシリカ等の無機充填剤との反応性が高い。
【0065】
また、上記Wが−NR8−で表わされる場合、上記R12及びR13はそれぞれ独立して−O−Cl2l−で表わされることが好ましく、上記R14は−(O−Cl2lys2s+1で表わされることが好ましく、上記R4は−Cl2l−で表わされることが好ましく、上記R5は−Cl2l+1で表わされることが好ましい。
【0066】
一方、上記Wが−CR89−で表わされる場合、上記R12及びR13はそれぞれ独立して−O−Cl2l−で表わされることが好ましく、上記R14は−(O−Cl2lys2s+1で表わされることが好ましく、上記R4は−Cl2l−で表わされることが好ましく、上記R5は−Cl2l+1で表わされることが好ましい。
【0067】
<<<有機ケイ素化合物(D)の合成方法>>>
上記有機ケイ素化合物(D)は、例えば、上記一般式(I)で表わされ、R1、R2及びR3が−M−Cl2l+1で表わされ、R1、R2及びR3中のMの一つ以上が−O−である化合物に対し、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジエチルアミノ)エタノール、2-(ジメチルアミノ)プロパノール、2-(ジエチルアミノ)プロパノール、N-メチルジエタノールアミン等のアミン化合物を加え、更に触媒としてp-トルエンスルホン酸、塩酸等の酸や、チタンテトラn-ブトキシド等チタンアルコキシドを添加し、加熱して、R1、R2及びR3の一つ以上を式(IV)又は式(V)で表わされる一価の窒素含有基で置換、或いはR1及びR2を−R12−W−R13−で表わされる二価の窒素含有基で置換し、更に、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール等のアルコール化合物を添加し、加熱して、R1、R2及びR3の一つ以上を−(M−Cl2lys2s+1で表される一価の基で置換することで合成できる。
【0068】
<<<有機ケイ素化合物(D)の具体例>>>
上記有機ケイ素化合物(D)として具体的には、3-オクタノイルチオ-プロピル(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-オクタノイルチオ-プロピル(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-オクタノイルチオ-プロピル(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-オクタノイルチオ-プロピル(2-(ヘキシロキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-オクタノイルチオ-プロピル(3-(ヘキシロキシプロポキシ)プロポキシ)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-オクタノイルチオ-プロピル(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-オクチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ラウロイルチオ-プロピル(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ラウロイルチオ-プロピル(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ラウロイルチオ-プロピル(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ラウロイルチオ-プロピル(2-(ヘキシロキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ラウロイルチオ-プロピル(3-(ヘキシロキシプロポキシ)プロポキシ)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ラウロイルチオ-プロピル(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-オクチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-エタノイルチオ-プロピル(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-エタノイルチオ-プロピル(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-エタノイルチオ-プロピル(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-エタノイルチオ-プロピル(2-(ヘキシロキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-エタノイルチオ-プロピル(3-(ヘキシロキシプロポキシ)プロポキシ)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-エタノイルチオ-プロピル(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-オクチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-オクタノイルチオ-プロピル(ジジメチルアミノエトキシ)モノ(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)シラン、3-エタノイルチオ-プロピル(ジエチルアミノエトキシ)モノ(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)シラン、3-オクタノイルチオ-プロピル(ジエチルアミノエトキシ)モノ(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)シラン、3-ラウロイルチオ-プロピル(ジエチルアミノエトキシ)モノ(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)シラン、3-オクタノイルチオ-プロピル(ジエチルアミノエトキシ)モノ(2-(ヘキシロキシエトキシ)エトキシ)シラン、3-オクタノイルチオ-プロピル(ジエチルアミノエトキシ)モノ(3-(ヘキシロキシプロポキシ)プロポキシ)シラン、3-オクタノイルチオ-プロピル(ジブメチルアミノエトキシ)モノ(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)シラン、3-オクタノイルチオ-プロピル(ジメチルアミノエトキシ)ジ(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)シラン、3-エタノイルチオ-プロピル(エチルアミノエトキシ)ジ(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)シラン、3-オクタノイルチオ-プロピル(エチルアミノエトキシ)ジ(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)シラン、3-ラウロイルチオ-プロピル(エチルアミノエトキシ)ジ(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)シラン、3-オクタノイルチオ-プロピル(エチルアミノエトキシ)ジ(2-(ヘキシロキシエトキシ)エトキシ)シラン、3-オクタノイルチオ-プロピル(エチルアミノエトキシ)ジ(3-(ヘキシロキシプロポキシ)プロポキシ)シラン、3-オクタノイルチオ-プロピル(ブメチルアミノエトキシ)ジ(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)シラン、
ビス(3-(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-シラシクロオクチル-プロピル)テトラスルフィド、ビス(3-(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-シラシクロオクチル-プロピル)テトラスルフィド、ビス(3-(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクチル-プロピル)テトラスルフィド、ビス(2-(ヘキシロキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクチル-プロピル)テトラスルフィド、ビス(3-(ヘキシロキシプロポキシ)プロポキシ)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクチル-プロピル)テトラスルフィド、ビス(3-(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-オクチルアザ-2-シラシクロオクチル-プロピル)テトラスルフィド、ビス(3-(2-(ブトキシエトキシ)(ジジメチルアミノエトキシ)シリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-(2-(ブトキシエトキシ)(ジジエチルアミノエトキシ)シリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-(2-(ヘキシロキシエトキシ)エトキシ(ジジエチルアミノエトキシ)シリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-(3-(ヘキシロキシプロポキシ)プロポキシ(ジジエチルアミノエトキシ)シリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-(2-(ブトキシエトキシ)(ジジブチルアミノエトキシ)シリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-(2-(ブトキシエトキシ)(ジジオクチルアミノエトキシ)シリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-シラシクロオクチル-プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-シラシクロオクチル-プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクチル-プロピル)ジスルフィド、ビス(2-(ヘキシロキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクチル-プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(ヘキシロキシプロポキシ)プロポキシ)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクチル-プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(2-(ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-オクチルアザ-2-シラシクロオクチル-プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(2-(ブトキシエトキシ)(ジジメチルアミノエトキシ)シリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-(2-(ブトキシエトキシ)(ジジエチルアミノエトキシ)シリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-(2-(ヘキシロキシエトキシ)エトキシ(ジジエチルアミノエトキシ)シリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-(3-(ヘキシロキシプロポキシ)プロポキシ(ジジエチルアミノエトキシ)シリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-(2-(ブトキシエトキシ)(ジジブチルアミノエトキシ)シリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-(2-(ブトキシエトキシ)(ジジオクチルアミノエトキシ)シリルプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
【0069】
上述の有機ケイ素化合物(D)の配合量は、後述する無機充填剤(E)の配合量の1〜20質量%の範囲が好ましい。有機ケイ素化合物(D)の含有量が無機充填剤(E)の配合量の1質量%未満では、ゴム組成物のヒステリシスロスを低下させる効果、並びに耐摩耗性を向上させる効果が不十分であり、一方、20質量%を超えると、効果が飽和してしまう。
【0070】
<<無機充填剤(E)>>
本発明のゴム組成物に用いる無機充填剤(E)としては、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、クレー、炭酸カルシウム等が挙げられ、これらの中でも、補強性の観点から、シリカ及び水酸化アルミニウムが好ましく、シリカが特に好ましい。無機充填剤(E)がシリカの場合は、有機ケイ素化合物(D)は、シリカ表面のシラノール基との親和力の高い官能基及び/又はケイ素原子(Si)との親和性が高い官能基を有するため、カップリング効率が大幅に向上して、ゴム組成物のヒステリシスロスを低下させ、耐摩耗性を向上させる効果が一層顕著になる。なお、シリカとしては、特に制限はなく、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)等を使用することができ、一方、水酸化アルミニウムとしては、ハイジライト(登録商標、昭和電工製)を用いることが好ましい。
【0071】
上記シリカは、BET表面積が40〜350m2/gであることが好ましい。シリカのBET表面積が40m2/g以下の場合、該シリカの粒子径が大きすぎるために耐摩耗性が大きく低下してしまい、また、シリカのBET表面積が350m2/g以上の場合、該シリカの粒子径が小さすぎるためにヒステリシスロスが大きく増加してしまう。
【0072】
上記無機充填剤(E)の配合量は、上記ゴム成分(A)100質量部に対して5〜140質量部の範囲が好ましい。無機充填剤(E)の配合量が上記ゴム成分(A)100質量部に対して5質量部未満では、ヒステリシスを低下させる効果が不十分であり、一方、140質量部を超えると、作業性が著しく悪化するためである。
【0073】
<<ゴム組成物の製造方法>>
本発明のゴム組成物は、上記ゴム成分(A)に、微粒子含有繊維(B)、発泡剤(C)、有機ケイ素化合物(D)、無機充填剤(E)、発泡助剤と共に、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、カーボンブラック等の他の充填剤、軟化剤、ステアリン酸、老化防止剤、亜鉛華、加硫促進剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0074】
<加硫ゴム>
次に、図を参照しながら本発明の加硫ゴムを詳細に説明する。図1は、本発明の加硫ゴムの一例の断面図である。本発明の加硫ゴムは、上記のゴム組成物を加硫することにより得られるが、図1に示す通り、本発明の加硫ゴム1は、長尺状気泡2を有し、該長尺状気泡2が被膜3で囲まれており、該長尺状気泡2を囲む被膜3が上記微粒子含有繊維を構成していた親水性樹脂3aと微粒子3bからなる。ここで、被膜3を構成する微粒子3bにより氷雪路面上での引っ掻き効果を高めつつ、親水性樹脂3aにより氷雪路面上の水を効率的に集め、ミクロな排水溝として作用する長尺状気泡2により排水することにより、タイヤの氷上性能を大幅に向上させることができる。
【0075】
図1に示す長尺状気泡2は、一定方向に配向しているが、この長尺状気泡の配向を揃える手法としては、未加硫ゴム組成物中に分散している微粒子含有繊維を一定方向に配列させればよく、例えば、流路断面積が出口に向かって低減する押出機を用いて、微粒子含有繊維を含むゴム組成物を押し出す方法が挙げられる。
【0076】
本発明の加硫ゴムの発泡率(Vs)は、3〜50%が好ましく、3〜40%が更に好ましく、5〜35%がより一層好ましい。発泡率が3%未満では、氷雪路面上の水を除去することができる長尺状気泡の体積が小さ過ぎ、排水性能が低下するおそれがあり、一方、50%を超えると、長尺状気泡の数が多過ぎ、タイヤの耐久性が低下する。なお、上記発泡率(Vs)は、長尺状気泡と、微粒子含有繊維を構成していた親水性樹脂の内部に留まらずに形成された気泡との合計の発泡率である。
【0077】
上記発泡率(Vs)(%)は、下記式(X):
Vs =(ρ0/ρ1−1)×100 ・・・ (X)
[式中、ρ1は加硫ゴムの密度(g/cm3)、ρ0は加硫ゴムにおける固相部の密度(g/cm3)である]により算出できる。
【0078】
<タイヤ>
次に、図を参照しながら本発明のタイヤを詳細に説明する。図2は、本発明のタイヤの一例の断面図である。図2に示すタイヤは、左右一対のビード部4及び一対のサイドウォール部5と、両サイドウォール部5に連なるトレッド部6とを有し、前記一対のビード部4間にトロイド状に延在して、これら各部4,5,6を補強するカーカス7と、該カーカス7のクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置されたベルト8とを具える。ここで、本発明のタイヤは、トレッド部6に上述した加硫ゴムを適用することを特徴とする。本発明のタイヤは、上記加硫ゴムをトレッド部6に具えることで、少なくとも接地部分に長尺状気泡が形成されており、優れた氷上性能を発揮することができる。また、上記加硫ゴムに用いるゴム組成物は、ヒステリシスロスが小さいため、トレッド部6が低発熱性になり、タイヤの転がり抵抗を低減することができる。更に、上記ゴム組成物から作製した加硫ゴムは耐摩耗性が高いため、トレッド部6の耐摩耗性も大幅に向上させることができる。
【0079】
図2に示すタイヤのカーカス7は、一枚のカーカスプライから構成されており、また、上記ビード部4内に夫々埋設した一対のビードコア9間にトロイド状に延在する本体部と、各ビードコア9の周りでタイヤ幅方向の内側から外側に向けて半径方向外方に巻上げた折り返し部とからなるが、本発明のタイヤにおいて、カーカス7のプライ数及び構造は、これに限られるものではない。
【0080】
また、図2に示すタイヤのベルト8は、二枚のベルト層から構成されており、各ベルト層は、通常、タイヤ赤道面に対して傾斜して延びるコードのゴム引き層、好ましくは、スチールコードのゴム引き層からなり、更に、二枚のベルト層が、該ベルト層を構成するコードが互いにタイヤ赤道面を挟んで交差するように積層されてベルト8を構成している。なお、図中のベルト8は、二枚のベルト層からなるが、本発明のタイヤにおいて、ベルト8を構成するベルト層の枚数は、これに限られるものではない。
【0081】
また、本発明のタイヤにおいては、上記ゴム組成物を用いて未加硫トレッドゴムを形成し、常法に従って、該未加硫トレッドゴムをトレッド部に備える生タイヤを形成し、該生タイヤを加硫することで、微粒子含有繊維を構成していた親水性樹脂で覆われた長尺状気泡をトレッド部に形成させることができる。
【0082】
更に、本発明のタイヤは、排水性を向上させる観点から、上記長尺状気泡がタイヤ周方向に配向されていることが好ましい。この場合、上述の方法により得た、繊維が一定方向に配列しているゴム組成物を用いて未加硫トレッドゴムを形成し、該未加硫トレッドゴム中の繊維の配向方向がタイヤ周方向と一致するように未加硫トレッドゴムを配置して、生タイヤを形成すればよい。なお、本発明の空気入りタイヤにおいて、タイヤ内に充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0083】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0084】
<微粒子含有繊維の製造例>
表1に示す配合処方の親水性樹脂及び微粒子を用い、通常の溶融紡糸法に従って微粒子含有繊維を製造した。なお、該繊維の平均径及び平均長さを下記の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0085】
(1)平均径及び平均長さ
得られた微粒子含有繊維を無作為に20箇所選択し、光学顕微鏡を用いて直径(μm)及び長さ(mm)を測定し、その平均値を求めた。
【0086】
【表1】

【0087】
*1 ポリエチレン,日本ポリエチレン(株)製,「HDPE」,水との接触角=120°
*2 三井デュポンポリケミカル(株)製,「ハイミラン 1557」,官能基としてメタクリル酸由来のカルボキシル基を含む樹脂,水との接触角=73°
*3 繊維化することができなかった
*4 樹脂100質量部に対する微粒子の配合量 (質量部)
【0088】
表1から、樹脂としてポリエチレンを用いた場合(繊維A〜B)、微粒子の含有量が増加すると、繊維化できないことが分かる。一方、親水性樹脂であるアイオノマー樹脂を用いた場合(繊維C〜G)、微粒子の含有量が増加しても、微粒子含有繊維を製造できることが分かる。
【0089】
<有機ケイ素化合物の製造例1>
500mLの四つ口ナスフラスコに、窒素雰囲気下3-メルカプト-プロピルトリエトキシシラン 23.8g、N-メチルジエタノールアミン 11.9g、チタンテトラn-ブトキシド 0.05gをキシレン 200mL中に溶解した。150℃まで昇温し、6時間攪拌した。続いて2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール16.2gを滴下し、2時間攪拌した。その後、20 hPa/40℃にてロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、続いて、ロータリーポンプ(10 Pa)とコールドトラップ(ドライアイス+エタノール)にて残存する揮発分を除去し、有機ケイ素化合物30.5gを得た。
【0090】
1Lの四つ口ナスフラスコに、窒素雰囲気下得られた有機ケイ素化合物 30.5g、トリエチルアミン 8.9gをトルエン300mL中に溶かした。この溶液にオクタン酸クロリド 13.0gを30分かけて滴下し、2時間攪拌した。その後、沈殿物を濾別しかつ20 hPa/40℃にてロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、3-オクタノイルチオ-プロピル (2-(2-ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-シラシクロオクタン[有機ケイ素化合物(D−1)]38.5gを得た。生成物の1H−NMRでの分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3, 700MHz, δ;ppm) = 3.8(m;6H), 3.5(m;8H), 2.8(t;2H), 2.5(m;6H), 2.4(m;3H), 1.6(m;4H), 1.5(m;2H), 1.3(m;10H), 0.9(t;3H), 0.8(t;3H), 0.7(t;2H)
【0091】
<有機ケイ素化合物の製造例2>
500mLの四つ口ナスフラスコに、窒素雰囲気下3-メルカプト-プロピルトリエトキシシラン 23.8g、ジメチルアミノエタノール 17.8g、チタンテトラn-ブトキシド 0.05gをキシレン 200mL中に溶解した。150℃まで昇温し、6時間攪拌した。続いて2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール 16.2gを滴下し、2時間攪拌した。その後、20 hPa/40℃にてロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、続いて、ロータリーポンプ(10 Pa)とコールドトラップ(ドライアイス+エタノール)にて残存する揮発分を除去し、有機ケイ素化合物35.3gを得た。
【0092】
1Lの四つ口ナスフラスコに、窒素雰囲気下得られた有機ケイ素化合物 35.3g、トリエチルアミン 8.9gをトルエン 300mL中に溶かした。この溶液にオクタン酸クロリド 13.0gを30分かけて滴下し、2時間攪拌した。その後、沈殿物を濾別しかつ20 hPa/40℃にてロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、3-オクタノイルチオ-プロピル(ジジメチルアミノエトキシ)モノ(2-(2-ブトキシエトキシ)エトキシ)シラン[有機ケイ素化合物(D−2)]43.1gを得た。生成物の1H−NMRでの分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3, 700MHz, δ;ppm) = 3.8(m;6H), 3.5(m;8H), 2.8(t;2H), 2.5(m;6H), 2.4(m;12H), 1.6(m;4H), 1.5(m;2H), 1.3(m;10H), 0.9(t;3H), 0.8(t;3H), 0.7(t;2H)
【0093】
<有機ケイ素化合物の製造例3>
200mLの四つ口ナスフラスコに、窒素雰囲気下二酸化マンガン 36.0gを3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン 47.6g中に加えた。110℃まで昇温し、4時間攪拌した。その後、沈殿物を濾別しかつ、ロータリーポンプとコールドトラップ(ドライアイス+エタノール)を用いて10 Pa/150℃にて残存する低沸分を除去し、ビス(3-トリエトキシシリル-プロピル)ジスルフィド 40.0gを得た。
【0094】
500mLの四つ口ナスフラスコに、窒素雰囲気下ビス(3-トリエトキシシリル-プロピル)ジスルフィド 23.7g、N-メチルジエタノールアミン 11.9g、チタンテトラn-ブトキシド 0.05gをキシレン200mL中に溶解した。150℃まで昇温し、6時間攪拌した。続いて2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール 16.2gを滴下し、2時間攪拌した。その後、20 hPa/40℃にてロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、続いて、ロータリーポンプ(10 Pa)とコールドトラップ(ドライアイス+エタノール)にて残存する揮発分を除去し、ビス(3-(2-(2-ブトキシエトキシ)エトキシ)1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-シラシクロオクチル−プロピル)ジスルフィド[有機ケイ素化合物(D−3)]29.1gを得た。生成物の1H−NMRでの分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3, 700MHz, δ;ppm) = 3.8(m;12H), 3.5(m;16H), 2.7(t;4H), 2.5(m;8H), 2.4(m;6H), 1.8(m;4H), 1.5(m;4H), 1.3(m;4H), 0.9(t;6H), 0.7(t;4H)
【0095】
<有機ケイ素化合物の製造例4>
500mLの四つ口ナスフラスコに、窒素雰囲気下ビス(3-トリエトキシシリル-プロピル)ジスルフィド 23.7g、ジメチルアミノエタノール 17.8g、チタンテトラn-ブトキシド 0.05gをキシレン 200mL中に溶解した。150℃まで昇温し、6時間攪拌した。続いて2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール 16.2gを滴下し、2時間攪拌した。その後、20 hPa/40℃にてロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、続いて、ロータリーポンプ(10 Pa)とコールドトラップ(ドライアイス+エタノール)にて残存する揮発分を除去し、ビス(3-(2-(2-ブトキシエトキシ)(ジジメチルアミノエトキシ)シリルプロピル)ジスルフィド[有機ケイ素化合物(D−4)]35.2gを得た。生成物の1H−NMRでの分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3, 700MHz, δ;ppm) = 3.8(m;12H), 3.5(m;16H), 2.7(t;4H), 2.5(m;8H), 2.4(m;24H), 1.8(m;4H), 1.5(m;4H), 1.3(m;4H), 0.9(t;6H), 0.7(t;4H)
【0096】
<ゴム組成物の調製及び評価>
表2〜5に従う配合処方のゴム組成物を、バンバリーミキサーにて混練して調製した。次に、得られたゴム組成物の加硫物性を下記の方法で測定した。結果を表2〜5に示す。
【0097】
(2)低発熱性
上島製作所製スペクトロメーター(動的粘弾性測定試験機)を用い、周波数52Hz、初期歪10%、測定温度60℃、動歪1%で、加硫ゴムのtanδを測定し、比較例1のtanδの値を100として指数表示した。指数値が小さい程、tanδが低く、ゴム組成物が低発熱性であることを示す。
【0098】
(3)耐摩耗性
JIS K 6264−2:2005に準拠し、ランボーン型摩耗試験機を用いて、室温、スリップ率25%の条件で試験を行い、比較例1の摩耗量の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れることを示す。
【0099】
<タイヤの作製及び評価>
表2〜5に示す配合処方に従い、配合した微粒子含有繊維が一定方向に配列しているゴム組成物を調製した。該ゴム組成物を用いてトレッドゴムを作製し、ゴム組成物中の微粒子含有繊維がタイヤ周方向に配向するように、該トレッドゴムを配設して生タイヤを作製した。次に、得られた生タイヤを加硫し、サイズ185/70R13の乗用車用ラジアルタイヤを作製した。なお、各ゴム組成物の加硫中の加硫最高温度は、いずれも200℃であった。得られたタイヤについて、トレッド部を形成する加硫ゴムの発泡率を上記式(X)により算出し、氷上性能及びウェット性能を下記の方法で評価し、発泡形態を下記の方法で確認した。結果を表2〜3に示す。
【0100】
(4)氷上性能
トレッド部の摩耗率が20%のタイヤを装着した乗用車にて、氷上平坦路を走行させ、時速20km/hの時点でブレーキをかけてタイヤをロックさせ、停止状態になるまでの制動距離を測定した。比較例1のタイヤの制動距離の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、氷上での制動性に優れることを示す。なお、トレッド部の摩耗率は、下記式により算出した。
摩耗率(%)=(1−摩耗後の溝深さ/新品時の溝深さ)×100
【0101】
(5)ウェット性能
トレッド部の摩耗率が20%のタイヤを装着した乗用車にて、湿潤路面を走行させ、時速20km/hの時点でブレーキをかけてタイヤをロックさせ、停止状態になるまでの制動距離を測定した。比較例1のタイヤの制動距離の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、湿潤路面での制動性に優れることを示す。
【0102】
(6)発泡形態
得られたタイヤのトレッドセンター部から加硫ゴム片を切り取り、このサンプルを走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。いずれのタイヤについても、繊維を構成していた樹脂で覆われた長尺状気泡を確認できた。
【0103】
【表2】

【0104】
【表3】

【0105】
【表4】

【0106】
【表5】

【0107】
*5 JSR(株)製,「BR01」,シス−1,4−ポリブタジエン
*6 JSR(株)製, 「#1500」,乳化重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム
*7 アスファルト/オイル混合物(A/O MIX),JX日鉱日石エネルギー(株)製
*8 旭カーボン製,#80
*9 東ソーシリカ工業(株)製,ニップシールAQ,BET表面積=220m2/g
*10 精工化学製
*11 大内新興化学工業製,ノクラック6C
*12 ジフェニルグアニジン
*13 N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
*14 ジベンゾチアジルジスルフィド.
*15 アゾジカルボンアミド
*16 大塚化学(株)製,ベンゼンスルフィン酸亜鉛
*17 尿素:ステアリン酸=85:15(質量比)の混合物
*18 信越化学工業製
*19 General Electric社製、商品名「NXTシラン」、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、(C25O)3Si−C36−S−CO−C715
【0108】
表2〜5から明らかなように、従来のシランカップリング剤(*18、*19)に代えて、式(I)又は式(VIII)で表わされる有機ケイ素化合物(D)を配合しつつ、親水性樹脂と微粒子の組合せからなる微粒子含有繊維(B)を配合することで、ゴム組成物のtanδを大幅に低減、即ち、ヒステリシスロスを大幅に低減して、低発熱性にしつつ、耐摩耗性を大幅に改善でき、また、該ゴム組成物をタイヤのトレッドに適用することで、タイヤの氷上性能を大幅に向上させることができる。
【符号の説明】
【0109】
1 加硫ゴム
2 長尺状気泡
3 被膜
3a 親水性樹脂
3b 微粒子
4 ビード部
5 サイドウォール部
6 トレッド部
7 カーカス
8 ベルト
9 ビードコア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分(A)に対して、微粒子含有繊維(B)、発泡剤(C)、有機ケイ素化合物(D)及び無機充填剤(E)を配合してなり、
前記微粒子含有繊維(B)が、金属酸化物、金属炭酸塩、及び金属を含有する粘土鉱物からなる群から選択される少なくとも一種の微粒子と、親水性樹脂とからなり、
前記有機ケイ素化合物(D)が、下記一般式(I):
【化1】

[式中、A1は、下記一般式(II)又は式(III):
【化2】


で表わされ、
式(I)及び式(II)中のR1、R2及びR3は、少なくとも一つが下記一般式(IV)又は(V):
【化3】


(式中、Mは−O−又は−CH2−で、X及びYはそれぞれ独立して−O−、−NR8−又は−CH2−で、R6は−OR8、−NR89又は−R8で、R7は−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8で、但し、R8は−Cn2n+1であり、R9は−Cq2q+1であり、l、m、n及びqはそれぞれ独立して0〜10である)で表され、且つ少なくとも一つが−(O−Cl2lys2s+1(ここで、lは上記と同義であり、y及びsはそれぞれ独立して1〜20である)で表され、その他が−M−Cr2r+1(ここで、Mは上記と同義であり、rは0〜20である)、但し、R1、R2及びR3の一つ以上はMが−O−であり、
4は下記一般式(VI)又は式(VII):
【化4】


(式中、M、X、Y、R6、l及びmは上記と同義であり、R10は−NR8−、−NR8−NR8−又は−N=N−で、但し、R8は上記と同義である)或いは−Z−Cl2l−(ここでZは−O−、−NR8−又は−CH2−で、但し、R8は上記と同義であり、lは上記と同義である)で表され、
式(III)中のR5は上記一般式(IV)又は式(V)或いは−Cl2l−R11(ここで、R11は−NR89、−NR8−NR89、−N=NR8又は−Z−Cm2m+1であり、但し、R8、R9、Z、l及びmは上記と同義である)で表わされ、
xは1〜10である]で表わされる化合物、及び下記一般式(VIII):
【化5】

[式中、A2は、下記一般式(IX)又は式(III):
【化6】


で表わされ、
式(VIII)及び式(IX)中のWは−NR8−又は−CR78−(ここで、R7は−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8であり、R8は−Cn2n+1で、R9は−Cq2q+1で、n及びqはそれぞれ独立して0〜10である)で表わされ、
12及びR13はそれぞれ独立して−M−Cl2l−(ここで、Mは−O−又は−CH2−で、lは0〜10である)で表わされ、
14は−(O−Cl2lys2s+1(ここで、lは上記と同義であり、y及びsはそれぞれ独立して1〜20である)で表わされ、但し、R12、R13及びR14の一つ以上はMが−O−であり、
4は下記一般式(VI)又は式(VII):
【化7】


(式中、M及びlは上記と同義であり、mは0〜10であり、X及びYはそれぞれ独立して−O−、−NR8−又は−CH2−で、R6は−OR8、−NR89又は−R8で、R10は−NR8−、−NR8−NR8−又は−N=N−であり、但し、R8及びR9は上記と同義である)或いは−Z−Cl2l−(ここで、Zは−O−、−NR8−又は−CH2−で、但し、R8は上記と同義であり、lは上記と同義である)で表され、
式(III)中のR5は下記一般式(IV)又は式(V):
【化8】


(式中、M、X、Y、R6、R7、l及びmは上記と同義である)或いは−Cl2l−R11(ここで、R11は−NR89、−NR8−NR89、−N=NR8又は−Z−Cm2m+1であり、但し、R8、R9、Z、l及びmは上記と同義である)で表わされ、
xは1〜10である]で表わされる化合物からなる群から選択される少なくとも一種である
ことを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記親水性樹脂が、カルボキシル基、水酸基、エステル基、エーテル基及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも一種の官能基を含む樹脂であること特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記金属酸化物が、酸化チタン及び酸化アルミニウムの内の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記金属酸化物が、セラミックス及びゼオライトの内の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1又は3に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記金属炭酸塩が炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記金属を含有する粘土鉱物がモンモリロナイトであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記微粒子含有繊維(B)が、前記親水性樹脂100質量部に対して、前記微粒子を0.5〜200質量部含有することを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記微粒子含有繊維(B)の含有量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対し0.5〜30質量部であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記微粒子は、粒径が0.1〜500μmであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記微粒子含有繊維(B)は、平均径が1〜100μmであり、平均長さが0.1〜20mmであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項11】
前記親水性樹脂は、融点又は軟化点が加硫最高温度未満であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項12】
前記有機ケイ素化合物(D)において、前記Mが−O−であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項13】
前記有機ケイ素化合物(D)が上記一般式(I)で表わされ、
前記R1、R2及びR3は、少なくとも一つが−O−Cl2l−R7(ここで、R7及びlは上記と同義である)で表され、且つ少なくとも一つが−(O−Cl2lys2s+1(ここで、l、y及びsは上記と同義である)で表わされ、その他が−O−Cl2l+1(ここで、lは上記と同義である)で表わされ、
前記R4が−Cl2l−(ここで、lは上記と同義である)で表わされ、
前記R5が−Cl2l−R11(ここで、R11及びlは上記と同義である)で表わされることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項14】
前記有機ケイ素化合物(D)が上記一般式(I)で表わされ、
前記R1、R2及びR3は、少なくとも一つが−O−Cl2l−NR89(ここで、R8、R9及びlは上記と同義である)で表され、且つ少なくとも一つが−(O−Cl2lys2s+1(ここで、l、y及びsは上記と同義である)で表わされ、
前記R5が−Cl2l+1(ここで、lは上記と同義である)で表わされることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項15】
前記有機ケイ素化合物(D)が上記一般式(VIII)で表わされ、
前記Wが−NR8−(ここで、R8は上記と同義である)で表わされ、
前記R12及びR13がそれぞれ独立して−O−Cl2l−(ここで、lは上記と同義である)で表わされ、
前記R14が(O−Cl2lys2s+1(ここで、l、y及びsは上記と同義である)で表わされ、
前記R4が−Cl2l−(ここで、lは上記と同義である)で表わされ、
前記R5が−Cl2l+1(ここで、lは上記と同義である)で表わされることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項16】
前記有機ケイ素化合物(D)が上記一般式(VIII)で表わされ、
前記Wが−CR89−(ここで、R8及びR9は上記と同義である)で表わされ、
前記R12及びR13がそれぞれ独立して−O−Cl2l−(ここで、lは上記と同義である)で表わされ、
前記R14が−(O−Cl2lys2s+1(ここで、l、y及びsは上記と同義である)で表わされ、
前記R4が−Cl2l−(ここで、lは上記と同義である)で表わされ、
前記R5が−Cl2l+1(ここで、lは上記と同義である)で表わされることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項17】
前記ゴム成分(A)100質量部に対して、前記無機充填剤(E)5〜140質量部を配合してなり、
前記有機ケイ素化合物(D)を、前記無機充填剤(E)の配合量の1〜20質量%含むことを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項18】
前記無機充填剤(E)がシリカ又は水酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項19】
前記シリカのBET表面積が40〜350m2/gであることを特徴とする請求項18に記載のゴム組成物。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載のゴム組成物を加硫して得た、長尺状気泡を有することを特徴とする加硫ゴム。
【請求項21】
発泡率が3〜50%であることを特徴とする請求項20に記載の加硫ゴム。
【請求項22】
請求項20又は21に記載の加硫ゴムをトレッド部に用いたタイヤ。
【請求項23】
前記長尺状気泡がタイヤ周方向に配向していることを特徴とする請求項22に記載のタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−82322(P2012−82322A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229872(P2010−229872)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】