説明

ゴム製発泡ホース

【課題】 ホースの屈曲時のキンクを防止しながら環状締め付け具による締め付けを容易で且つ確実に行う。
【解決手段】 ホース本体1の外周に弾性発泡体2を剥離自在で密着するように積層することにより、ホース屈曲時にはホース本体1の外周面1aと弾性発泡体2の内周面2aとが位置ズレしないため、その曲げ応力がホース本体1に集中せず、弾性発泡体2と一体的に折れ曲がって可撓性が維持され、またホース接続時にはホース本体1の外周面1aから弾性発泡体2を部分的に切り取ることで該ホース外周面1aが容易に露出され、その外側に環状締め付け具を接触させて装着可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性能に優れたゴム製発泡ホースに関する。
詳しくは、ホース本体とその外周に形成される発泡体とからなるゴム製発泡ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のゴム製発泡ホースとしては、ソリッドゴムチューブ外側に、スポンジゴム層を被覆してなる断熱性チューブを備え、これらソリッドゴムチューブと断熱性チューブとが同時押出成形により接着一体化され、それにより両者間に結露を生じることがなく永年に亘って衛生を維持できるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−40377号公報(第1−3頁、図2−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来のゴム製発泡ホースでは、ホース本体と断熱発泡体が接着一体化されるため、ホース屈曲時にはホース本体の外周面と断熱発泡体の内周面とが位置ズレしないため、可撓性に劣るという問題があった。
そこで、この問題を解決するために、ホース本体と断熱発泡体との間に隙間を作ると、ホース屈曲時にその曲げ応力がホース本体に集中して先に折れ曲がり、この折れ曲がり部分がキンクして流路内部を閉塞させるという問題がある。
さらに、一般的にホースの端部を他の管体に接続する場合には、このホース端部の内部に他の管体を差し込み、該ホース端部の外側に例えばホースバンドや継手などの環状締め付け具を巻き付け、該ホース端部の外周から締め付けて縮径させることにより、ホース端部の内周面を他の管体の外周面に密接させている。
しかし、従来のゴム製発泡ホースでは、ホース本体に断熱発泡体が接着一体化されて完全に取り除くことが困難であるため、断熱発泡体の外周から環状締め付け具で締め付けることになり、強く締め付けても断熱発泡体が圧縮変形するだけでホース本体と管体との間に十分な気密性が得られず、ホースが抜け易く、その接続部から漏れが発生し易いという問題があった。
【0005】
本発明のうち第一の発明は、ホースの屈曲時のキンクを防止しながら環状締め付け具による締め付けを容易で且つ確実に行うことを目的としたものである。
第二の発明は、第一の発明の目的に加えて、耐熱性、耐寒性、耐オゾン性、耐薬品性の高いゴム製発泡ホースが提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明のうち第一の発明は、ホース本体の外周に弾性発泡体を剥離自在で密着するように積層したことを特徴とするものである。
第二の発明は、第一の発明の構成に、前記ホース本体と弾性発泡体をシリコーンゴムで成形し、これらホース本体と弾性発泡体の間に剥離面を形成した構成を加えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち第一の発明は、ホース本体の外周に弾性発泡体を剥離自在で密着するように積層することにより、ホース屈曲時にはホース本体の外周面と弾性発泡体の内周面とが位置ズレしないため、その曲げ応力がホース本体に集中せず、弾性発泡体と一体的に折れ曲がって可撓性が維持され、またホース接続時にはホース本体の外周面から弾性発泡体を部分的に切り取ることで該ホース外周面が容易に露出され、その外側に環状締め付け具を接触させて装着可能となる。
したがって、ホースの屈曲時のキンクを防止しながら環状締め付け具による締め付けを容易で且つ確実に行うことができる。
その結果、ホース本体と断熱発泡体が接着一体化される従来のものに比べ、ホースの可撓性を高めるとともに、ホース抜けと漏れを完全防止できる。
さらに、ホース本体を透過した流体が弾性発泡体との隙間に溜まることがない。
よって、滞留した流体による腐敗・変質等の悪影響がない。
また、ホース本体の外周に弾性発泡体が密着しているため、これらの端面から流体やホコリなどが侵入することもない。
【0008】
第二の発明は、第一の発明の効果に加えて、ホース本体と弾性発泡体をシリコーンゴムで成形し、これらホース本体と弾性発泡体の間に剥離面を形成することにより、剥離面を介して同質系のホース本体と弾性発泡体が積層後に加硫しても自己融着しない。
したがって、耐熱性、耐寒性、耐オゾン性、耐薬品性の高いゴム製発泡ホースが提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のゴム製発泡ホースAの実施形態は、図1〜図3に示す如く、ホース本体1と、その外周に形成される断熱性能に優れた弾性発泡体2とから構成され、このホース本体1の外周面1aに対して該弾性発泡体2を剥離自在で密着するように積層している。
【0010】
上記ホース本体1及び弾性発泡体2は、例えば付加反応タイプのミラブル型シリコーンゴム又はそれ以外のシリコーンゴムなどの同質系ゴムからなり、その製造方法の一例としては、先ず、上記ホース本体1のゴム材料を例えば押出し成形などで管状に形成し、その後に、該ホース本体1の外側に上記弾性発泡体2のゴム材料を押出し成形などで管状に形成して直接被覆するようにしている。
その他の例としては、これらホース本体1のゴム材料と弾性発泡体2のゴム材料とを共押出し成形などして同時に形成することも可能である。
【0011】
上記弾性発泡体2の発泡方法の一例としては、そのゴム材料として発泡性のシリコーン系組成物を使用し、それが押出し成形などで形成された後に、所定周波数のマイクロ波などを照射することにより、このゴム材料又はそれに添加される発泡剤が自己発熱して起泡すると同時に硬化して断熱スポンジ層に転化させる。
さらに、この場合には、該弾性発泡体2の内側に配置される上記ホース本体1のゴム材料として、上記所定周波数のマイクロ波などが照射されても発泡硬化せず、その他の加熱により硬化するだけの非発泡性のシリコーン系組成物を使用することが好ましい。
また、その他の発泡方法の例としては、その中に多量の微小な気泡体が混入されたゴム材料を使用し、それが押出し成形などで形成される時、又はその後の加熱処理により、上記気泡体が夫々熱膨張して断熱スポンジ層に転化させることも可能である。
【0012】
さらに、このようにホース本体1及び弾性発泡体2が同質系ゴムで成形される場合には、それらを積層した後に加硫すると、ホース本体1の外周面1aと弾性発泡体2の内周面2aとが自己融着して一体となってしまうため、このような同質系ゴム同士が自己融着を防止する手段として後述する方法により、これらホース本体1と弾性発泡体2の間に剥離面3を形成する。
【0013】
この自己融着防止手段の具体例としては、弾性発泡体2を押出成形する前に、ホース本体1の外周面1aに例えばタルクなどの微粉末やオイルなど離型剤を塗布し、この離型剤の上に弾性発泡体2を押出成形成する。
その他の自己融着防止手段として、上記ホース本体1の材料と弾性発泡体2のゴム材料のグレードを変えるか、又は、上記ホース本体1のゴム材料と弾性発泡体2のゴム材料に添加される充填材を変えたり添加量を変えるか、若しくはゴム材料の種類を変えるなど、適宜選択することも可能である。
以下、本発明の各実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
この実施例1は、図1に示す如く、前記ホース本体1のゴム材料を先に押出し成形し、それを加熱硬化させた後に、該ホース本体1の外周面1aに対し、前記弾性発泡体2のゴム材料を押出し成形し、その外側からマイクロ波の照射を行うか又は加熱処理を行うことにより、該弾性発泡体2のゴム材料が径方向内側及び外側へ夫々膨張してスポンジ層に転化され、その後、更に必要に応じてこれら全体を加熱処理することで、これらホース本体1の外周面1aと弾性発泡体2の内周面2aとが剥離面3を介して相互に密着するように積層されるものである。
【0015】
次に、斯かるゴム製発泡ホースAの作用効果について説明する。
このゴム製発泡ホースAを円弧状又は弓形に屈曲させた時には、ホース本体1の外周面1aと弾性発泡体2の内周面2aとが密着しているものの、これらが剥離面3に沿って相互に位置ズレしないため、その曲げ応力がホース本体1に集中せず、弾性発泡体2と一体的に折れ曲がってホース全体の可撓性が優れる。
【0016】
さらに、斯かるゴム製発泡ホースAを他の管体(図示せず)に接続する場合には、その接続側の端部に位置する弾性発泡体2の不要部分Bに対し、ナイフやカッターなどの刃物を用いて切れ目Cを入れ、この不要部分Bをホース本体1の外周面1aとの間に形成される剥離面3に沿って移動するだけで、部分的に切り取ることができる。
【0017】
それにより、ホース外周面1aの端部が容易に露出され、該ホース本体1の内部に他の管体を差し込んだ後に、この露出したホース外周面1aの端部に環状締め付け具を接触させて装着し、ホース本体1の端部の外周から締め付けて縮径すれば、ホース外周面1aの端部の内周面1bを、他の管体の外周面に密接させることができる。
【実施例2】
【0018】
この実施例2は、図2に示す如く、前記ホース本体1が複数の層を積層することで形成した構成が、前記図1に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は図1に示した実施例1と同じものである。
【0019】
図示例の場合には、ホース本体1が、外層1′の内側に内層1″を一体に積層している。
その他の例として、これら外層1′と内層1″の間に中間層を形成することも可能である。
【0020】
したがって、図2に示す実施例2も、上述した図1に示す実施例1と同様な作用効果が得られ、更に加えて外層1′には、前記弾性発泡体2を積層するために最適なゴム材料を選択し、内層1″にはその中を流れる流体に最適なゴム材料又はそれ以外の材料を選択できるという利点がある。
【実施例3】
【0021】
この実施例3は、図3に示す如く、前記ホース本体1の内部に補強線材4を埋設した構成が、前記図1に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は図1に示した実施例1と同じものである。
【0022】
上記補強線材4としては、例えばポリエステルやナイロンやアラミド繊維か又は細いモノフィラメント(monofilament:単繊維)を編んだマルチフィラメントなどからなるブレードを使用して、螺旋状に巻き付けて網状にするか、或いはニット編みなどで筒状に編み込んで配置している。
【0023】
図示例の場合には、上記ホース本体1の内層1″に沿って上記ブレードを網状に巻き付けている。
その他の例として、例えばステンレスなどの金属線や太いモノフィラメント(延伸モノフィラメント)などの硬質合成樹脂製の線材か又はそれらの組み合わせを螺旋状に巻き付けることも可能である。
【0024】
したがって、図3に示す実施例3も、上述した図1に示す実施例1と同様な作用効果が得られ、更に加えて耐圧性能を向上できるという利点がある。
【0025】
なお、前示実施例では、前記ホース本体1のゴム材料を先に押出し成形し、それに続いて該ホース本体1の外周面1aに対し、前記弾性発泡体2のゴム材料を押出し成形したが、これに限定されず、これらホース本体1のゴム材料と弾性発泡体2のゴム材料とを共押出し成形などして同時に形成しても良い。
さらに、前記弾性発泡体2の発泡方法も上述した加熱による発泡方法に限定されず、その他に化学的な発泡などを採用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のゴム製発泡ホースの一実施例を示す一部切欠斜視図である。
【図2】本発明のゴム製発泡ホースの他の実施例を示す一部切欠斜視図である。
【図3】本発明のゴム製発泡ホースの他の実施例を示す一部切欠斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
A ゴム製発泡ホース B 弾性発泡体の不要部分
C 切れ目 1 ホース本体
1a 外周面 1b 内周面
1′ 外層 1″ 内層
2 弾性発泡体 2a 内周面
3 剥離面 4 補強線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホース本体(1)の外周に弾性発泡体(2)を剥離自在で密着するように積層したことを特徴とするゴム製発泡ホース。
【請求項2】
前記ホース本体(1)と前記弾性発泡体(2)をシリコーンゴムで成形し、これらホース本体(1)と弾性発泡体(2)の間に剥離面(3)を形成した請求項1記載のゴム製発泡ホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−287717(P2009−287717A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142466(P2008−142466)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000134534)株式会社トヨックス (122)
【Fターム(参考)】