説明

ゴルフシャフトおよびゴルフクラブ

【課題】高い強度と高い靭性を備え、軽量なゴルフシャフトを提供する。
【解決手段】中空パイプ形状のスチール製ゴルフシャフトにおいて、その厚み方向における残留オーステナイトの含有量分布を外側表面に向かって増大する傾斜構造とする。また、長手方向の残留オーステナイトの分布および/または結晶粒度を調整し、曲げた際に最も大きな応力が加わるゴルフシャフト部位における強度と靱性を確保する。こうすることで、肉薄で軽量化を追及したスチール製ゴルフシャフトを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製ゴルフシャフトおよびゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
金属製ゴルフシャフトには、飛距離アップのため、軽量化が要求されている。この軽量化の要求には、中空パイプ形状であるゴルフシャフトの薄肉化で対応している。しかしながら、ゴルフシャフトの安全性を確保するための規格であるSG規格を満たす必要があるので、金属製ゴルフシャフトの薄肉化を行うには、材質の強化が必要となる。
【0003】
金属製ゴルフシャフトの材質を強化する技術として、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されたものが知られている。特許文献1には、高強度化、高靭性化した合金設計の鋼材をサブゼロ処理で金属製ゴルフシャフトの材質をマルテンサイト組織とし、次いで焼き戻し処理により靱性を回復させることで、強度と耐久性を有する金属製ゴルフシャフトを得る技術が記載されている。特許文献2には、高強度化、高靭性化した合金設計の鋼材を残留オーステナイトの量を調整することで、強度、靱性、弾性、反発力等の特性が優れた軽量の金属性ゴルフシャフトを得る技術が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−34517号(要約書)
【特許文献2】特許2005−13535号(要約書)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では、シャフトの板厚方向や長手方向に均一な材質となることを大前提とし、強度と靭性バランスに優れた材料組成、金属組織、結晶粒度、硬さなどを得るように調整していた。従来の製法では、作用する応力の大小にかかわらず板厚方向や長手方向はほぼ均一な材質を得ることを目的としていたが、ゴルフシャフトは、曲げ応力下で使用されシャフト表面で最大応力になることや、グリップ側で大きな応力がかかることを考慮すると、応力の高い部分に合わせて材質を調整することは、応力の低い部分にとっては過剰品質であった。また、残留オーステナイトは柔らかい組織でるために、強度、耐力が低下し、マイナスの効果を示す場合もあった。また、残留オーステナイトを増やすと、靱性は上がるが、強度は低下する。このため、均質な材質では、両特性値を同時に向上させることは困難であった。
【0006】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、板厚方向と長手方向の残留オーステナイト量と結晶粒度を調整することにより、高い強度と高い靭性を備え、軽量なゴルフシャフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、中空パイプ構造を有し、前記中空パイプ構造の厚み方向における略中心から表面に向かって残留オーステナイトの含有量が増大する傾斜構造を有すことを特徴とするゴルフシャフトである。請求項1に記載の発明によれば、残留オーステナイトの含有量が、パイプ構造を有するシャフトの厚み中央部分から外側表面に向かって増加するので、表層部においてより大きな変形量(靱性)が得られると共に、応力が作用した時にTRIP効果によって強化される。また、表面から内側の部分(深い部分)では、作用する応力が低くTRIP効果が期待できないため、残留オーステナイトを少なくしておかないと強度低下が問題となるが、上記の構成によれば、厚み中央部分での残留オーステナイトの含有量は相対的に少ないので、強度を確保することができる。
【0008】
ところで、残留オーステナイトを含有している金属材料に応力が働くと、柔らかいオーステナイト組織が硬いマルテンサイト組織に改質されながら、ひずみが分散・伝播することによって高靭性を示す加工誘起変態(TRIP効果)が発生するが、本発明では、外側表面に向かって、残留オーステナイト含有量が増大する分布とされているので、折り曲げようとする力が働いた際に、より大きな応力が働く外側表面において、優先的に上記の加工誘起変態が生じ、オーステナイト組織がマルテンサイト組織に変態しながら変形が起こる。つまり、内部から外側表面に向かって残留オーステナイトの含有量が増大する傾斜構造とすることで、曲げ変形時により大きな応力が働く外側表面程、加工誘起変態が生じる能力が高くなり、曲げ変形を行った際に強度と靭性を高くすることができる。
【0009】
また、曲げ変形時に加わる応力が相対的に小さい深部は、加工誘起変態が期待できないため、残留オーステナイトの含有量を少なくして強度を維持する必要がある。このャフトの板厚方向の作用が相乗的に作用することで、高強度でありながら、変形可能な能力の高い材質、すなわち高強度と高靱性を両立した性質を得ることができる。
【0010】
また、この優位性は、曲がり矯正処理時にも有効に働く。すなわち、曲がり矯正処理は、曲がったゴルフシャフトを強制的に真っ直ぐになるように力を加える処理であるから、その際に働く応力も上述のように、外側表面において最大となる。このため、上述したのと同様な理由により、曲がり矯正処理時における変形能(破損せずに変形可能な能力)を高く確保しながら強化することができ、曲がり矯正時におけるゴルフシャフトの破損発生の頻度を抑えることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記中空パイプ構造の外側表面およびその近傍における前記残留オーステナイトの含有量が5〜30体積%であることを特徴とする。ここで、表面およびその近傍というのは、表面から3μmの深さまでの範囲のことをいう。
【0012】
請求項2における数値範囲には、以下の意味がある。まず、外側表面およびその近傍における残留オーステナイトの含有量を30体積%以下にすることで、従来技術の水準より大きな破断荷重(つまり強度)を得ることができる。すなわち、外側表面およびその近傍における残留オーステナイトの含有量が30体積%を超えると、従来技術を超える強度を得ることができない。また、外側表面およびその近傍における残留オーステナイトの含有量を5体積%以上とすることで、従来技術の水準より大きな破断変位(つまり靱性)を得ることができる。すなわち、外側表面およびその近傍における残留オーステナイトの含有量が5体積%を下回ると、従来技術を超える靱性を得ることができない。つまり、中空パイプ構造の外側表面およびその近傍における残留オーステナイトの含有量を5〜30体積%とすることで、従来技術を超える強度と靱性をバランス良く実現させることができる。
【0013】
なお、残留オーステナイトの測定には顕微鏡による方法などもあるが、本願では、定量的な評価が行えるX線回折による方法を用いた測定値が記載されている。具体的には、Coターゲットを用いて、40kV、200mAの管電圧、管電流、スキャンスピード1°/minの条件下で、オーステナイトの(200)、(220)面とαの(200)、(211)面のX線回折強度(回折波形の積分値)を求めて4組のαとγの組合せから平均値を算出する方法を用いた値が記載されている。また、表面およびその近傍というのが、表面から3μmの深さまでの範囲として定義されるのは、上記測定条件におけるX線の浸透深さが表面から3μm程度であることに起因する。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、ゴルフシャフトは、その長手方向において、残留オーステナイトの含有量および/またはオーステナイト結晶粒度番号が異なることを特徴とする。オーステナイト結晶粒度番号というのは、オーステナイトの結晶粒の大きさを示す指標であり、粒度が小さくなる程、オーステナイト結晶粒度番号は大きくなる。
【0015】
ゴルフシャフトの先端に力を加えた場合に、その長手方向において発生する応力の分布は、長手方向において一様ではない。したがって、残留オーステナイトの含有量をゴルフシャフトの長手方向で変化させた分布とすることで、ゴルフシャフトの長手方向における強度と靱性のバランスを、応力の分布に応じた分布に調整することができる。
【0016】
ところで、ホール・ペッチの式で表されるように、金属の強度はオーステナイト結晶粒の大きさの−1/2乗に比例し、結晶粒が微細化するほど強度が増加する。すなわち、オーステナイト結晶粒度番号が大きくなるほど強度は増加する。したがって、ゴルフシャフトの長手方向におけるオーステナイト結晶粒度を変化させる(分布を持たせること)ことで、当該長手方向における強度を場所により異なるものとすることができ、長手方向における適切な強度分布を有したゴルフシャフトを得ることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、残留オーステナイトの含有量は、グリップ側における値が、ヘッド側における値に比較して大きいことを特徴とする。この態様によれば、使用時により大きな応力が加わるグリップ側の強度と靱性を強化することができる。
【0018】
また、ゴルフシャフトは、グリップ側が相対的に太く、ヘッド側が相対的に細く成形されている。さらに、ゴルフシャフトには、焼入れ・焼戻し工程の後に曲がり矯正処理が施される。これは、製造過程で曲がりが生じた場合、力を加えることで矯正する処理である。この曲がり矯正処理時に相対的に太いグリップ部が破損し易い。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、曲がり矯正処理時に変形が発生し易いグリップ側の残留オーステナイトの含有量を、相対的に大きくすることで、曲がり変形能をグリップ側において大きくし、上述した曲がり矯正処理時におけるグリップ部の破損の発生を抑えることができる。そして、曲がり矯正処理時における不良品の発生を抑えることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明において、オーステナイトのオーステナイト結晶粒度番号が12.5以上であることを特徴とする。上述のように、金属の強度はオーステナイト結晶粒度の−1/2乗に比例し、結晶粒が微細化するほど強度が増加する。また、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明によれば、強度と靱性の両方を向上させることができる。したがって、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明に加えて、さらにオーステナイト結晶粒度番号を12.5以上とすることで、靱性を確保しつつさらに強度を高めることができる。なお、オーステナイト結晶粒度番号が12.5より小さいと、ゴルフシャフトに要求される破断荷重および破断変位を満たすことができないので、オーステナイト結晶粒度番号は、12.5以上であることが好ましい。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴルフシャフトを利用したゴルフクラブであることを特徴とする。請求項6に記載の発明によれば、肉薄化できるので軽量化が可能であり、さらに強度と靱性が高いゴルフシャフトを備えたゴルフクラブを得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、中空パイプ構造のゴルフシャフトの肉厚方向における残留オーステナイトの分布状態を、外側表面でその含有量が大きくなる構造とすることで、高い強度と高い靭性を備え、軽量なゴルフシャフトを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(ゴルフクラブの構成)
図1は、本発明を利用したゴルフクラブの一例を示す正面図である。図1には、ゴルフクラブの一例としてアイアン10が示されている。アイアン10は、ゴルフシャフト11、握り部となるグリップ12、およびゴルフボールを打つ部分となるヘッド13を備えている。ここで、ゴルフシャフト11は、本発明を利用したものである。
【0024】
本発明を利用したゴルフシャフトは、肉薄で高強度なものとすることができるので、軽量化することができる。このため、例えば、軽くて扱いやすいアイアン10を得ることができる。
【0025】
(ゴルフシャフトの構成)
図1に示すゴルフシャフト11の一例について図を参照して説明する。図3は、図1のAの部分における残留オーステナイトの含有量(体積%)を示すグラフである。
【0026】
残留オーステナイトは柔らかい組織であり、一般的には多く残留すると強度低下を招くため、極力少なくするような努力がなされている。一方、ある適正な量の残留オーステナイトは、加工誘起変態(TRIP:Transformation Induced Plasticity)により、加工応力によってオーステナイトがマルテンサイト組織に変態するために、材料の強靭性が著しく向上する現象が起こる。これはマルテンサイト組織が硬いために変形域が集中せずに次々に拡大・進行することに因る。本願はこの残留オーステナイト分布を有効に利用し、ゴルフシャフトの強靭化を図ろうとするものである。
【0027】
図3に示すように、ゴルフシャフト11の断面構造において、従来材は、残留オーステナイトが板厚方向に均一な分布を示しているのに対して、本願では、残留オーステナイトが外表面で最も多く、内部に向かって減少する傾斜分布を示している。なお、厚み方向の中央部分で残留オーステナイトの含有量が最小となる。
【0028】
図4は、折り曲げようとする力が働いた際に、ゴルフシャフトの断面に働く応力を説明する概念図である。図4(A)には、ゴルフシャフト11の概念図が示されている。図4(B)は、ゴルフシャフト11をその軸方向(長手方向)に折り曲げようとする力が働いた際に、その長手方向の断面部分(図4(A)の符号11aの部分の断面部分)に加わる応力の状態が示されている。ゴルフシャフト11をその長手方向に折り曲げようとする力がゴルフシャフト11加わると、図4(B)に示されるように、ゴルフシャフト11の長手方向における断面では、その外側表面部分に最も大きな応力が作用する。ゴルフシャフト11がこの応力に耐えられないと、ゴルフシャフト11が破損する。
【0029】
本発明を利用したゴルフシャフト11では、図3に示すように、厚み中央部分から外側表面に向かって残留オーステナイトの分布量が多くなる傾斜構造とされている。これは、図4に示すような応力が加わった際に、加工誘起変態によってマルテンサイト組織に変態する量が外表面で多くなり、強靭化にとって都合の良い分布である。
【0030】
図5は、ゴルフシャフト11の表面から深さ3μmの範囲における残留オーステナイトの含有量(体積%)と破断荷重(Kgf)との関係を示すデータの一例である。図5において、実線が本願発明を利用したゴルフシャフトのデータであり、点線が従来技術(電気炉での焼き入れ処理)を行ったゴルフシャフトのデータである。なお、横軸の残留オーステナイトの量は、焼き入れ条件を変えることで調整している。また、焼き入れ処理の違い以外は、原材料、寸法等を両者で同じとしている。
【0031】
強度と靱性のバランスを考えた場合、図5の点線で示される従来技術を利用したゴルフシャフトでは、実用的な特性が得られる残留オーステナイト量は、3〜8重量%である。なお、従来の技術においては、本発明のように残留オーステナイトの厚み方向における分布はなく、オーステナイトは厚み方向で一様に分布している。図5に示されるように、本発明を利用したゴルフシャフトにおいて、その表面から深さ3μmの範囲における残留オーステナイトの含有量(体積%)が、30体積%を超えると、破断荷重が従来技術におけるゴルフシャフトが示す破断荷重の最小値を下回る。このことから、従来技術水準以上の破断荷重特性を得るには、表面から深さ3μmの範囲における残留オーステナイトの含有量を30体積%以下とすることが好ましいことが結論される。
【0032】
図6は、ゴルフシャフト11の表面から深さ3μmの範囲における残留オーステナイトの含有量(体積%)と破断変位(mm)との関係を示すデータの一例である。図6において、実線が本願発明を利用したゴルフシャフトのデータであり、点線が従来技術(電気炉での焼き入れ処理)を行ったゴルフシャフトのデータである。なお、横軸の残留オーステナイトの含有量は、焼き入れ条件を変えることで調整している。また、焼き入れ処理の違い以外は、原材料、寸法等を両者で同じとしている。
【0033】
図6を見ると、本発明を利用したゴルフシャフトの表面から深さ3μmの範囲における残留オーステナイトの含有量(体積%)が、5体積%を下回ると、破断変位が従来技術におけるゴルフシャフトが示す破断変位の最小値を下回る。このことから、従来技術水準以上の破断変位特性を得るには、表面から深さ3μmの範囲における残留オーステナイトの含有量を5体積%以上とすることが好ましいことが結論される。
【0034】
図5および図6に示すデータを総合的に見ると、破断荷重または破断変位を従来技術品と同程度の水準とした場合、本発明利用品の破断変位または破断荷重は、従来技術品よりも遙かに優れたものとなることが分かる。破断荷重は、強度の優劣を示す値であり、その値が大きいほど、高強度であることを示す。また、破断変位は、靱性の優劣を示す値であり、その値が大きい程、高靱性であることを示す。したがって、強度と靱性のバランスという観点から見ると、上述した数値範囲を満たす本発明を利用したゴルフシャフトは、従来技術を用いたゴルフシャフトに比較して遙かに優れた特性を有していることになる。つまり、表面から深さ3μmの範囲における残留オーステナイトの含有量(体積%)を5体積%〜30体積%の範囲とすることで、従来材よりも高強度且つ高靱性なゴルフシャフトを得ることができる。
【0035】
図7は、本発明を利用したゴルフシャフトと、従来材との扁平試験の結果を比較したものである。ここで、従来材は、残留オーステナイトを厚み方向で均一に含むもので、最も高い圧縮荷重に耐えるサンプルを用いている。図7には、本願発明を利用したゴルフシャフトが、より大きな圧縮荷重に耐え、また、より大きな圧縮変位を示す特性が示されている。これにより、本願発明を利用したゴルフシャフトは、従来材に比べて、高強度・高靭性化が図られていることが分かる。
【0036】
このような優位性が得られるのは、以下のような理由による。すなわち、残留オーステナイトの含有量が、厚み方向で一様である場合、外側表面における加工誘起変態の発生マージンが小さいので、変形能が小さく、曲げ応力による破損が発生し易くなる。また、表面から深い部分では、加工誘起変態に寄与しない残留オーステナイトが過剰に存在するので、強度が低下する。このため、図7に示すように、降伏(破損)直前の圧縮変位および圧縮荷重は、本願発明を利用した場合に比較して、小さな値となる。
【0037】
これに対して、外側表面に向かって残留オーステナイトの含有量が増大する傾斜構造とした場合、外側表面における加工誘起変態の発生マージンが大きいので、変形能が大きく、曲げ応力による破損が発生し難くなる。また、表面から深い部分では、加工誘起変態に寄与しない残留オーステナイトが少ないので、高い強度を確保することができる。このため、図7に示すように、降伏(破損)直前の圧縮変位および圧縮荷重は、従来技術を利用した場合に比較して、大きな値となる。
【0038】
図8は、ゴルフシャフトWにおけるオーステナイト結晶粒度番号と破断荷重との関係を示すグラフである。図9は、ゴルフシャフトWにおけるオーステナイト結晶粒度番号と破断変位との関係を示すグラフである。図8および9から、オーステナイト結晶粒度番号で12.5以上(平均結晶粒径5μm以下)の微細粒となった場合に、破断荷重や破断変位が向上しゴルフシャフトの要求値を満足することが分かる。すなわち、強度と靭性を満足するためにはオーステナイト結晶粒度番号で12.5以上の微細化が必要である。
【0039】
(長手方向でγ量を変化させた例)
一般にゴルフシャフトを振った際、グリップ側に大きな応力が加わる。図10は、ゴルフシャフトを振った際に加わる応力σのクラブ長手方向における分布状態を示すグラフである。ゴルフシャフトに作用する曲げ応力(剛性)は、この例に示すように一般的にはグリップ側で最大応力が作用する。従って、グリップ側の強度と靱性を意図的に大きくすることで、全体として肉薄で軽量でありながら破損し難いゴルフクラブを得ることができる。この技術思想を具体化した一例を以下に示す。
【0040】
図11は、ゴルフシャフトの長手方向における残留オーステナイト分布を示すグラフである。図11に示す例では、残留オーステナイトをグリップ側で大きくなるように調整している。こうすることで、グリップ側における強度と靱性を強化することができる。このように、加わる応力分布に応じた強度と靱性のバランスに設定することができる。
【0041】
また、ゴルフシャフトの長手方向における残留オーステナイト分布を図11に示す状態とすることで、以下に述べるような優位性を得ることもできる。すなわち、ゴルフシャフトは、グリップ側が相対的に大径であり、ヘッド側に向かって、漸次あるいは段階的に小径となる構造とされている。一般に、曲がり矯正処理の際、より大径であるグリップ側が潰れ変形し易い。図11に示すような残留オーステナイトの分布とした場合、グリップ側における変形能を高めることができるので、曲がり矯正処理の際の潰れ変形の発生を抑えることができる。言い換えると、曲げ応力の作用による加工誘起変態を、グリップ側においてより発生し易くすることで、曲がり矯正処理における不良発生率を下げることができる。また、残留オーステナイトがマルテンサイト組織に変態する加工誘起変態が、グリップ側に近付くほど顕著に発生するので、このような残留オーステナイト分布は、スチールシャフトの強靭性化にとって好都合となる。
【0042】
残留オーステナイト量は、後述する焼き入れ装置における焼き入れ条件を制御することで調整することができる。具体的には、焼き入れ温度が高くなるように周波数および投入電力を調整することで、残留オーステナイトを増やすことができ、逆に焼き入れ温度が低くなるように周波数および投入電力を調整することで、残留オーステナイトを減らすことができる。
【0043】
ゴルフクラブには、ウッド、アイアン、サンドウェッジ、パター等の多用な種類がある。これら種類によって、要求される強度の特性は異なる。上述した残留オーステナイトの含有量をゴルフシャフトの長手方向において変化させることで、所定のゴルフクラブの種類において要求される強度分布に調整したゴルフシャフトを製造することができる。
【0044】
また、ゴルフシャフトの中には、強度の高い部分を長手方向の先端側(細径側)や中間位置に持ってくる場合もある。この場合にも、残留オーステナイトの含有量をゴルフシャフトの長手方向において変化させることで、要求される強度と靱性のバランス分布を得ることができる。
【0045】
(長手方向でオーステナイト結晶粒度番号を変化させた例)
ゴルフシャフトの長手方向におけるオーステナイト結晶粒度番号を制御し、その長手方向における強度に分布を持たせることもできる。このことを利用することで、所定のゴルフクラブの種類において要求される強度分布を得ることできる。例えば、グリップ側程、オーステナイト結晶粒度番号を大きく(つまり粒度を細かく)し、それによりグリップ側にゆく程、シャフトの強度を高めた構成とすることができる。オーステナイト結晶粒度番号を長手方向で任意に調整することによってこのような特性を得ることができる。
【0046】
オーステナイト結晶粒度番号の調整は、後述する高周波焼き入れ装置における加熱条件により調整することができる。具体的には、後述する高周波焼き入れ装置における加熱コイルに供給する高周波電力の値を小さくし、またゴルフシャフトの移送速度を速くすると、オーステナイトの結晶粒は小さく(オーステナイト結晶粒度番号が大きく)なる傾向があり、その逆の条件とすると、オーステナイトの結晶粒が大きく(オーステナイト結晶粒度番号が小さく)なる傾向がある。具体的な結晶粒の大きさと焼き入れ条件との関係は、予備的に実験を行うことで得ることができる。
【0047】
(焼き入れ装置の構成)
以下、ゴルフシャフトに焼き入れを行うための焼き入れ装置について説明する。ここでは、ゴルフシャフト内に不活性ガスを導入し、その圧力を周囲の圧力よりも高くすることで、ゴルフシャフト内の油面の位置を制御する構成を備えた焼入れ装置について説明する。
【0048】
図12は、焼き入れ装置の概要を示す概念図である。図12には、焼き入れ装置1が示されている。この焼き入れ装置1は、搬送装置100、制御装置110、高周波電源200、油槽300、シャフト用気体供給装置400、チャンバー500およびチャンバー用気体供給装置600を備えている。
【0049】
図12に示す装置を用いた焼き入れでは、中空パイプ構造のゴルフシャフトWの内部への焼入油310の侵入が制限されるので、ゴルフシャフトW内部における焼入油310の沸騰が発生しない。そのため、焼入油310の沸騰に起因するゴルフシャフト内部における吹き上がり現象を防止することができる。この吹き上がり現象が発生すると、ゴルフシャフトWの加熱部分の急冷が阻害され、また冷却が不均一なものとなる。その結果、焼き入れ後の組成や金属組織が場所によりムラがある状態となり、強度が大きく低下する。
【0050】
搬送装置100は、ゴルフシャフトWを上下に移動させる機能を有している。搬送装置100は、制御装置110によって制御される。制御装置110は、搬送装置100の動作を制御する他に、高周波電源200の動作を制御する。
【0051】
搬送装置100は、焼き入れ装置1が固定された床に対して垂直に固定された取り付け板2に固定されている。また、搬送装置100は、昇降用アクチュエータ111を備えている。昇降用アクチュエータ111は、図示省略した駆動モータと、この駆動モータによって駆動されるボールネジドライブ機構を備えている。昇降用アクチュエータ111には、昇降用シリンダー112が設けられている。昇降用シリンダー112の側面(図の右側側面)には、上下に延びるスリットが設けられており、このスリットを介して可動台座113が、前述のボールネジドライブ機構に接続されている。ボールネジドライブ機構が駆動されると、昇降用シリンダー112に対して、可動台座113が上下に移動する。可動台座113には、ガイドノズル120を固定するガイドノズル固定部113が固定されている。この機構によれば、制御装置110からの制御信号に基づいて、昇降用アクチュエータ111内のボールドライブ機構が制御され、ガイドノズル120を上下に移動させることができる。
【0052】
ガイドノズル120は、非導電性で非磁性の部材(例えばセラミックス)で形成されており、ガイドノズル120の先端がゴルフシャフトWの後端に圧入されて、ゴルフシャフトWがガイドノズル120に固定されている。ガイドノズル120に対するゴルフシャフトWの固定構造は、締め付け部材を用いるなどの他の構造であってもよい。ガイドノズル120は非導電性で非磁性の部材で形成されているため、ガイドノズル120が加熱コイル210内に移動しても、ガイドノズル120は誘導加熱されない。
【0053】
また、ガイドノズル120は、気体供給用の中空構造130を備えている。ガイドノズル120は、ゴルフシャフトWの上端と接続することによりゴルフシャフトWを上下に移動させるとともに、中空構造130を利用して、シャフト用気体供給装置400から供給される不活性ガス(この例では窒素ガス)をゴルフシャフトWの内部に供給する。
【0054】
符号210は、加熱コイルである。加熱コイル210には、高周波電源200から高周波電力が供給される。加熱コイル210は、ソレノイドコイル構造を有し、この加熱コイル210の略軸中心の軸線上をゴルフシャフトWが上下に移動する。高周波電源200は、制御装置110により制御される。高周波電源200から、加熱コイル210に高周波電流を供給することで、加熱コイル210内に移動してきたゴルフシャフトWに対して誘導加熱が行われる。
【0055】
高周波電源200から加熱コイル210に供給される高周波電圧を制御することで、ゴルフシャフトWの加熱状態の調整が行われる。これにより、ゴルフシャフトW中に含まれるオーステナイトの結晶粒の微細化が実現される。また、残留オーステナイトの分布や割合を適切なものに調整することができる。このため、強度と靱性のバランスの優れたシャフト材を得ることができる。なお、高周波電源200から加熱コイル210に供給される高周波電力は、周波数が30〜200kHz程度、投入電力が10〜120kW程度の範囲のものが利用される。加熱条件は、予め実験的に求めておき、それに基づいてコンピュータ制御により制御されるようにする。
【0056】
制御装置110の制御内容の一例としては、ゴルフシャフトWの外径が小さい部分では、高周波電源200が供給する高周波電圧を大きくし、ゴルフシャフトWの外径が大きい部分では、高周波電源200が供給する高周波電圧を小さくし、焼入れ効果の均一性を確保する例を挙げることができる。
【0057】
油槽300は、焼入油310を保持しており、ゴルフシャフトWを略垂直にした状態で、焼入油310にゴルフシャフトWの全体を浸せる深さに成型されている。高周波加熱されたゴルフシャフトWは、ゴルフシャフトWの先端から焼入油310に浸され、誘導加熱により加熱された部分が順次焼入油310によって冷却される。焼入油は、沸点が500℃程度の市販の冷却用油を利用する。冷却液として、油を利用するのは、水に比べて冷却速度が遅くまた沸点温度が高いため、ゴルフシャフトWにおける冷却速度のムラが発生し難いためである。
【0058】
シャフト用気体供給装置400は、ガイドノズル120を介して、ゴルフシャフトWの内部に不活性ガス(この例では窒素ガス)を供給する。これにより、ゴルフシャフトWの先端から焼入油310がゴルフシャフトWの内部に侵入するのを制限する。この例において、シャフト用気体供給装置400は、ゴルフシャフトWの先端が焼入油310に浸された時点で、ゴルフシャフトWの内部の圧力を外部の圧力(大気圧=常圧)に対して大きな値に変化させ、ゴルフシャフトWの内部における焼入油310の油面の位置をゴルフシャフトWの外部における焼入油310の油面の位置よりも低い位置になるように調整する。
【0059】
チャンバー500は、加熱コイル210とゴルフシャフトWの加熱された部分を覆い、焼入油310の油面にチャンバー500の下端が接触する位置に配置されている。チャンバー500には、チャンバー用気体供給装置600から配管601を介して、不活性ガス(この例では窒素ガス)が供給され、内部の圧力が調整される。
【0060】
チャンバー500は、開口部510を備えている。この開口部510に、耐熱性のゴムで構成され、中央に開口を有したシール材520が配置されている。このシール材520の開口部分にゴルフシャフトWが挿入され、この開口中をゴルフシャフトWが移動可能とされている。このシール材520は、開口部510を通過するゴルフシャフトWとチャンバー500との隙間を塞いでいる。この開口は、ゴルフシャフトWの最小外径部分よりも径が小さいため、この開口の径より大きいゴルフシャフトWは、ゴムの変形でシール材520と常に接触する。したがって、長手方向で外径が変化するゴルフシャフトWを上下に移動させても、チャンバー500の上部でゴルフシャフトWとチャンバー500との間に隙間が発生することが防止される。そのため、チャンバー500内に供給された不活性ガスの圧力を大気圧に比較して高く調整することが容易となる。また、チャンバー500内に供給された不活性ガスの消費を抑えることができる。
【0061】
チャンバー用気体供給装置600は、図12に示すように、チャンバー500の左方向および右方向からチャンバー500内に不活性ガスを供給する。図12には、チャンバー用気体供給装置600からチャンバー500に不活性ガスを供給する右側の配管601が示されている。
【0062】
チャンバー500内を大気圧に対して高い圧力にすることで、チャンバー500内を不活性ガスで満たし、油煙の発生を抑えることができる。また、加熱されたゴルフシャフトWが酸化するのを防止することができる。チャンバー500内への不活性ガスの供給は、チャンバー500内の圧力が、ゴルフシャフトWの内部の圧力よりも低くなるように調整する。
【0063】
(ゴルフシャフトWの製造例)
次に、ゴルフシャフトWに対する焼き入れ処理、焼き戻し処理、および曲がり矯正処理の一例について説明する。まず、図12に示すように、ゴルフシャフトWの後端に搬送装置100のガイドノズル120の先端を接続する。そして、高周波電源200から加熱コイル210に高周波電流を供給する。また、チャンバー用気体供給装置600からチャンバー500内に不活性ガスを供給し、さらにシャフト用気体供給装置400からガイドノズル120を介してゴルフシャフトWの内部に不活性ガスを供給する。この際、チャンバー500内およびゴルフシャフトW内の圧力を例えば1.5気圧とする。なお、ここで1気圧は、焼き入れ装置1が置かれた環境の圧力を基準とした圧力(大気圧)として定義される。
【0064】
そして、制御装置110によりガイドノズル120を下方に移動させ、ゴルフシャフトWを加熱コイル210内の上方から下方に向けて移動させる。この際、加熱コイル210の中心軸上をゴルフシャフトWが移動するようにする。加熱コイル210内をゴルフシャフトWが移動する際、ゴルフシャフトWに誘導電流が流れ、ゴルフシャフトWが誘導加熱される。また、ゴルフシャフトWを移動させる際、ゴルフシャフトWの外径および厚みの変化に応じて加熱コイル210に供給する電圧の値を制御し、加熱の状態を調整する。この調整は、予め実験的に採取しておいたデータを利用して行われる。
【0065】
ゴルフシャフトWがある程度下降すると、ゴルフシャフトWは、その先端から油槽300の焼入油310に浸される。この際、加熱された部分が冷却され、焼き入れが行われる。また、ゴルフシャフトWの先端が焼入油310に浸されたタイミングでシャフト用気体供給装置400から供給される不活性ガスの圧力を増大させ、ゴルフシャフトWの先端から焼入油310がゴルフシャフトWの内側に入り込まないようにする。ここでは、パイプ形状のゴルフシャフトWの内部における油面の位置が、ゴルフシャフトWの先端部分に概略位置するようにシャフト用気体供給装置400から供給される不活性ガスの圧力が調整される。この圧力の調整は、予め実験的に取得しておいたデータに基づいて行われる。なお、ゴルフシャフトWの先端が、焼入油310に浸かった後の状態において、大気圧<チャンバー500内の圧力<ゴルフシャフトW内の圧力の関係が保たれる。
【0066】
ゴルフシャフトWを下降させてゆくことで、加熱コイル210から誘導される誘導電流による加熱が先端部分から上に向かって徐々に行われ、また加熱された部分が焼入油310に浸かることで、その部分の冷却が行われる。そして、ゴルフシャフトWの上端(あるいは所定部分)が焼入油310に浸かった段階で加熱コイル210に供給する高周波電流をゼロにし、その後ゴルフシャフトWを引き上げる。こうしてゴルフシャフトWに対する焼き入れ処理が終了する。
【0067】
焼き入れが行なわれたゴルフシャフトWは、図示省略した焼き戻し装置により焼き戻しが行なわれる。この焼き戻しは、通常の焼き戻しと基本的に同じである。
【0068】
そして、焼き戻されたゴルフシャフトWを図示省略した扁平検査装置で検査し、曲がりがある個体が選別される。矯正が必要なゴルフシャフトWは、その曲がりを矯正するために、図示省略した曲がり矯正装置により曲がり矯正処理が施される。曲がり矯正処理は、僅かな反り等を矯正して所定形状(通常は直線状の形状)に強制的に変形させる処理である。なお、矯正の必要のないゴルフシャフトWは、試験装置で選別され、曲がり矯正処理は行われない。このように焼き入れ処理、焼き戻し処理および必要であれば曲がり矯正処理が行われ、ゴルフシャフトWは製造される。
【0069】
上述した方法による焼き入れでは、ゴルフシャフトWの内部における焼入油310の吹き上がりが防止されるので、ゴルフシャフトWの外側から均一な急冷を行うことができ、強度の低下を防止することができる。また、この方法によれば、表皮効果に起因して、前述したような残留オーステナイトの分布状態が表面に向かって含有量が多くなる傾斜構造を得ることができる。
【0070】
また、図12に示す装置を用いての焼き入れでは、供給する高周波電力の値やゴルフシャフトを送りだす速さ(移送速度)を調整することで、オーステナイトのオーステナイト結晶粒度番号(粒径)を制御することができる。例えば、加熱コイルに供給する高周波電力の値を小さくし、またゴルフシャフトの移送速度を速くすると、オーステナイトの結晶粒は小さく(オーステナイト結晶粒度番号が大きく)なる傾向があり、その逆の条件とすると、オーステナイトの結晶粒が大きく(オーステナイト結晶粒度番号が小さく)なる傾向がある。具体的な結晶粒の大きさと焼き入れ条件との関係は、予備的に実験を行うことで得ることができる。
【0071】
(変形例)
図12に示すような高周波焼き入れ装置を用いて焼き入れを行う際に、ゴルフシャフト内側表面(パイプ内側の表面)の加熱温度が外側表面程上昇しないようにすることで、内側表面における残留オーステナイト含有量の増加傾向を抑えることもできる。具体的には、ゴルフシャフトWの内側表面に磁性体を配置させ、ゴルフシャフト内側表面における表皮効果を抑えるようにして、誘導加熱を行うことで、ゴルフシャフト内側表面における残留オーステナイト含有量の増加傾向を抑えることができる。この技術を利用することで、図4の応力分布により近づけた残留オーステナイトの含有量分布を実現し、より効果的に強度と靱性のバランスを追究したゴルフシャフトを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、ゴルフシャフトおよびこのゴルフシャフトを利用したゴルフクラブに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】ゴルフクラブの一例を示す正面図である。
【図2】ゴルフシャフトの切断断面図である。
【図3】外側表面における残留オーステナイトの含有量を示すグラフである。
【図4】ゴルフシャフトの断面に働く応力を説明する概念図である。
【図5】残留オーステナイトの量と破断荷重との関係を示すグラフである。
【図6】残留オーステナイトの量と破断変位との関係を示すグラフである。
【図7】扁平試験結果を示すグラフである。
【図8】ゴルフシャフトにおけるオーステナイト結晶粒度番号と破断荷重との関係を示すグラフである。
【図9】ゴルフシャフトにおけるオーステナイト結晶粒度番号と破断変位との関係を示すグラフである。
【図10】ゴルフシャフトの長手方向における曲げ応力の分布を示すグラフである。
【図11】ゴルフシャフトの長手方向における残留オーステナイト分布を示すグラフである。
【図12】焼き入れ装置の概要の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0074】
10…アイアン(ゴルフクラブ)、11…ゴルフシャフト、12…グリップ、13…ヘッド、W…ゴルフシャフト、100…搬送装置、120…ガイドノズル、200…高周波電源、210…加熱コイル、300…油槽、310…焼入油、400…シャフト用気体供給装置、500…チャンバー、510…開口部、520…シール材、600…チャンバー用気体供給装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空パイプ構造を有し、
前記中空パイプ構造の厚み方向における略中心から表面に向かって残留オーステナイトの含有量が増大する傾斜構造を有することを特徴とするゴルフシャフト。
【請求項2】
前記中空パイプ構造の外側表面およびその近傍における前記残留オーステナイトの含有量が5〜30体積%であることを特徴とする請求項1に記載のゴルフシャフト。
【請求項3】
前記ゴルフシャフトは、その長手方向において、前記残留オーステナイトの含有量および/または前記オーステナイトのオーステナイト結晶粒度番号が異なることを特徴とする請求項1または2に記載のゴルフシャフト。
【請求項4】
前記残留オーステナイトの含有量は、グリップ側における値がヘッド側における値に比較して大きいことを特徴とする請求項3に記載のゴルフシャフト。
【請求項5】
前記オーステナイトのオーステナイト結晶粒度番号が12.5以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴルフシャフト。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴルフシャフトを有するゴルフクラブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−245709(P2008−245709A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87674(P2007−87674)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【出願人】(591242520)日本シャフト株式会社 (3)
【Fターム(参考)】