説明

ゴルフ用カート

【課題】1人乃至4人を1組にして乗用するカートの車輪にかかる荷重を削減して芝に与える損傷を少なくし、フェアウエーの走行を可能にすることである。
【解決手段】通常4輪のカートの車輪数に少なくとも2輪を更に装備しこれを連結するように構成して2車輌編成とする。先頭車輌は2人乗用でシートの位置と駆動源の位置を操舵輪と駆動輪の中央位置に設置させることで荷重を4輪でほぼ均等に支えることになり、車輪1輪当たりの芝に与える荷重が通常の4人乗用カートに比較して少ない。連結を解除した場合には先頭車輌と後続車輌は2人乗用カートとして走行することができる。1輪当たりの荷重を小さくして芝の損傷を少なくしフェアウエーの走行を可能にする。連結器には自在軸継手とスプリングを併用してを用いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ場で使用されるプレーヤーが乗用するカートに関し、更に詳しくは、フェアウエーを走行しても芝に損傷を与えないカートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年ゴルフが大衆化し、共にプレーする人達のニーズが多様化しており、2人乗用カートも利用されている。2人乗用カートは車輌自体の重量をより軽量化しており、フェアウエーを走行しても芝に損傷を与えることがない。一般的にゴルフは4人一組で行うのが慣習であり、ゴルフ場を経営する側から云えばより多数の利用者の入場を可能にしている。しかしながら4人乗用カートは4人の体重と車両重量を合わせると可成りの重量になり、フェアウエーの外側に沿って専用道路を設けて該路上を走行させるようにしている。
【0003】
プレーヤーはカートに積載されたゴルフバッグから適切なクラブを選択してボールの位置に向かうわけであるが、芝の状態によっては番手の異なるクラブが必要となり再度カート位置へ戻らなければならない。このような時間はプレー時間を長くする要因でありプレーヤーの体力も消耗する。カートがフェアウエーを自在に走行できれば次のショット位置へカートで移動できるからゲームの進行を促進できることは明白である。近年キャディが随行しないセルフプレーが多くなっており、プレーを進行する速さはプレーヤーのマナーに委ねられるから所要時間はかなり長くなる傾向にある。
【0004】
各ホールにおいて最初のショットを終えたのち次のショットを行う間をできるだけ速めるにはカートで移動するのが所要時間を短縮する最善の方法であり、そのためにはカートがフェアウエーを走行可能にすることである。一般的に4人乗用カートの場合の車重は概ね250kg〜390kgであり、人の体重を65kg見当とすれば4人で260kgである。これらを合わせた重量を4輪で分担するが後輪の駆動輪にはモータあるいはエンジンなどの駆動部機構とバッグ等の積載物の重量を勘案すると荷重は前輪に比較して大きい。駆動輪への荷重を削減するためには更に車輪数を増加させる必要がある。
【0005】
フェアウエーを走行するための提案として、1乃至2人乗用のゴルフカートがある。このようなカートは車輌自重を削減するためにシャーシ部分を簡素化して軽量化し1人乗用では100kg未満に抑えている。一方車輪数を多くした例としてはキャディーの役割を果たす機能を備えたキャディーロボットの提案があり、電子制御機構のスペースと重量を支えるために6輪を一体に装備して車輪にかかる荷重を削減している。車輪のタイヤ幅をより広くするための提案もある。
【特許文献1】特開平3−286788号公報
【特許文献2】特開平7−51418号公報
【特許文献3】特開2002−219202号公報
【特許文献4】特開2004−276702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、1人乃至4人を1組にして乗用するカートの車輪にかかる荷重を削減して芝に与える損傷を少なくし、フェアウエーの走行を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、車輪数を少なくとも2輪を更に装備するがこれを連結するように構成して2車輌編成とし、連結を解除した場合には先頭車輌と後続車輌が単独で走行可能とした2乃至4人乗用のゴルフ用カートを提供する。
【0008】
本願発明は、ゴルフコース内外においてプレーヤーの用に供するカートであって、フェアウエー及びラフ域を自在に走行するために芝及びその土層にかかる荷重を軽減することを主眼とし、車輪数を4輪以上に構成すると共に先頭車輌と後続車輌の2車輌編成としてこれを連結した状態で走行可能にしている。先頭車輌の前輪は操舵輪2輪と後輪は駆動輪2輪を一体に構成した先頭の2人乗用車輌と少なくとも2輪を装備した後続の2人乗用車輌を備えこれらの車輌を連結して走行する。前輪は操舵輪であるが駆動輪を兼ねることができる。この場合は駆動源を車輌の前部に設置して自在軸継手を用いた駆動軸を備え前輪駆動方式を構成する。先頭車輌は4人乗用カートの後部シートが前部シート位置へ移動した状態でホイールベースも短くなり、シートの下方にエンジン又はモータ及びバッテリーなど駆動源をホイールベースの中央位置に設置することで2人の体重と駆動源の重量を4輪でほぼ均等に支えることになり、車輪の芝に与える荷重が4人乗用カートに比較して同等以下になり牽引される後続車輌では更に荷重が減少する。前輪駆動の場合は荷重の均等化を更に改善する。連結を解除した場合には先頭車輌のみで走行することができる。また僅かな部品を取着することで後続車輌も単独走行が可能となる。これらの場合は2人乗用カートとして運用される。また車輪にかかる荷重が減少するためにタイヤの接地面積をことさら大きくする必要もなくタイヤ幅を4人乗用カートの場合の車輪のタイヤ幅と同等以下にすることができる。
【0009】
前記後続車輌は主として補助的な駆動モータを用いて車輪を駆動するが、車輪は少なくとも2輪を備え更に1乃至2輪を装備することができる。2車輌が連結される場合に後続車輌を3乃至4輪構成にするとき、駆動輪以外の車輪はキャスター付き自在輪が好ましく連結器にかかる負担を軽減できる。このような構成は後続車輌自体が自立可能であるため更に補助的な装備を施すことにより1人乃至2人乗用のカートとして単独走行させることができる。キャスター付き自在輪は連結走行のとき牽引される方向に対して自在輪の車輪は平行になるように作動する。しかし地面の起伏により方向を修正する性質がありあくまでも従属的な動作を示す。従って予めキャスターが負の位置になるように車輪を軸支する部材をロッドで連結し、該ロッドを簡易なハンドルを用いて移動させることで操舵輪とみなすことができる。しかし牽引する方向が前進であれば問題ないが、後退する場合は前記ロッドが邪魔になるから着脱自在なロッドに構成し2車輌連結の場合はロッドを省く必要がある。また後続車輌の駆動源となるモータの電源は先頭車輌に積載したバッテリーから供給されるが、予め後続車輌にも分割して積載するか別途用意されたバッテリーを積載して電源とすればよい。走行距離は少なくとも競技の半分を走行できればよく、ハーフ終了後に電池を交換すればこと足りる。自在輪は1個乃至2個装備し、単独走行する場合3輪車輌もしくは4輪車輌として用いる。自在輪は構造が簡単であり原理的な構造は自動2輪車にも利用されている。本発明では自在輪に限定することなくキングピンを用いた乗用車に利用される懸架方式も採用できる。
【0010】
前記2車輌の連結部には自在軸継手(ユニバーサルジョイント)とスプリングを併用し、直交する2軸と更に追加する1軸を摺動軸とし、摺動と回動可能な軸受を設けて該軸受を後続車輌のシャーシ部に固定する。また摺動可能な軸受の前後にスプリングを配置してカートが前進又は停止する場合に車間距離を可変にし衝撃を緩衝できる。摺動軸の軸受を後続車輌に固定して後続車輌が駆動輪2輪のみの場合は摺動軸受は曲げ応力を受けるが該軸受の長さを配慮すれば影響を削減できる。しかし後続車輌の前部に1輪乃至2輪を設けた構成では段差のある地面を通過するとき摺動軸を剪断する方向の応力が作用するので摺動軸受に弾性部材を介在させて後続車輌に固定するか、後続車輌側にも自在軸継手を設けて応力発生を防止する。また前記2車輌の車間距離が急激に接近するとき、摺動軸の先端部の移動量をロッドを介在させて、後続車輌の車軸に固定したブレーキのブレーキパッドに伝達し後続車輌にブレーキが自動的に作用する構成とした。ロッドを用いる代わりに摺動軸の端部位置を検出して電気量に変換し電磁ブレーキにより車軸に制動力を付与してもよい。
【0011】
前記後続車輌の駆動輪は駆動モータを備えた構成となし、急斜面を登る際に補助的な駆動力を付与する。この場合も前記摺動軸の先端部の移動量を利用するか角度センサーを用いて車輪を駆動する。先頭車両の車輪駆動源はエンジンでもよいがバッテリーを用いてモータにより駆動する方が電源を共有できるので好ましい。
【0012】
上述したように乗用人数を4人として駆動源を含めた総重量を少なくとも6輪で分担するからカートの個々の車輪が芝に与える荷重が少なくなり芝を損傷することがなく轍が生じ難いのでフェアウエーを自在に走行させることができる。また先頭車輌の操舵輪と駆動輪及び牽引される後続車輌の駆動輪又は先頭車輌の駆動輪と後続車輌の駆動輪等の各左右車輪の中心間距離(以下、トレッドと記載)を異なった寸法にして走行時の車輪軌跡の重なりを軽減させることで芝により優しいゴルフ用カートを提供できる。
【発明の効果】
【0013】
近年ゴルフ場では同伴者を必ずしも4人に限定しない場合が多く、2人乗用カートの需要も増加している。従って2人乃至4人用に分離又は連結できるカートは同伴者の利便性を考えるとより適切な同伴者の編成が可能となる。更に連結型にすることで1車輪当たりの荷重が軽減できるからフェアウエーの自在走行が可能になりプレーの所要時間も短縮できる。フェアウエーにカートが確認できれば後続プレーヤーからのボールの打ち込みもなく安心してプレーを楽しむことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ゴルフ用カートを2車輌連結型とし各車輌は2人乗用とする。先頭車両は操舵輪と駆動輪を有しアクセルとブレーキを備え、牽引される後続車輌は主として補助的な駆動輪とブレーキ装置を備え登坂力を付勢する一方僅かな部品を取着することで単独走行を可能にする。車間距離が急速に接近する場合には後続車輌のブレーキ装置を自動的に作動させる。連結部には自在軸継手とスプリングを用いて衝撃を緩和し、直交する2軸と更に追加する1軸に摺動及び回転可能な軸受を設け摺動軸の端部の位置を検出することで後続車輌のブレーキあるいは駆動モータを作動させる。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の2車輌連結型ゴルフ用カート1のルーフ部分を除くほぼ全容を示す斜視図である。2は先頭車輌であり、3は牽引される後続車輌である。先頭車輌2は2人乗用車輌であり、操舵輪4を操作するハンドル5とアクセルペダル6及びブレーキペダル7を備えている。8はシートで2人が着座できる幅を有し、8aは背もたれであり車体のシャーシ部9に固定された枠体10の上方に取着されている。11は床でありシャーシ部を覆うように設置される。12は風防で透明な樹脂板で構成されその両端は支柱13に固定される。支柱13と枠体10の上部には図示しないルーフが固定される。14は駆動輪で後述するモータで駆動される。15は駆動輪を覆うフェンダーでありゴルフバッグ16を載置する台を併設している。17は連結器であり詳細は後述するが後続車輌3を自在に牽引するようになっている。牽引される後続車輌3はシャーシ部に軸支された補助駆動輪18とそのフェンダー19、シャーシ部を覆う床20、枠体21及びシート22から成り、該シートは2人が着座できる幅を有している。図示しないルーフは枠体21に固定され、シャーシに固定されたブラケット28に補助支柱29を差込み雨風をしのぐカーテンを懸架するようになっている。連結器の水平軸25bをはずすと後続車輌3は分離され、先頭車輌2は単独で2人乗用カートとして走行できる。また後続車輌は後述するように1乃至2輪を装備した構成とし僅かな部品を取着して単独走行が可能である。
【0016】
図2は先頭車輌2のシャーシ部9と椅子やルーフなどを固定する枠体10及び後続車輌3のシャーシ部23と枠体21を示す斜視図である。シャーシ部と枠体はアルミ合金製のパイプと板を溶接した一体構造を構成している。先頭車輌の操舵輪4の制御関連機構及びブレーキとアクセルの作動系統は通常の手法で得られるものであり特に図示していない。先頭車輌2の駆動輪14の駆動軸14aはシャーシ9にベアリングを介して軸支されるが、バッテリー(図示せず)を電源とする減速機付き駆動モータ30をベルト等の駆動伝達機構を内装したケーシング31に固定し該ケーシングはベアリングを介して駆動軸14aに軸支されるとともに一端をシャーシ9に固定しており、ケーシングはモータの取着座を兼ねている。駆動モータ30はアクセルペダル6により回転力が制御される。一方後続車輌3の駆動輪18の駆動軸18aは駆動モータ32と駆動伝達機構を内装したケーシング33により駆動される。17は連結器でありこれに連動するブレーキ機構及び後続車輌3の詳細は後述する。
【0017】
図3は連結器17と後続車輌3のブレーキ機構24を示す拡大斜視図である。連結器17は2軸の自在軸継手25と該2軸に直交する摺動軸25dと摺動軸受26から成る。該自在軸継手はシャーシ9に回動自在に軸支される垂直軸25aとこれに水平軸25bを着脱可能に嵌合し、該水平軸に摺動軸固定部材25cを回動可能に軸支する。摺動軸25dには後続車輌のシャーシ23に固定された摺動軸受26が摺動及び回転可能に嵌合されるがその両側にスプリング27が挿入されており、後続車輌と先頭車輌の車間距離が変化したとき前記スプリングが伸縮して衝撃を緩衝する。
【0018】
摺動軸25dの開放端部は車間距離が縮まるとブレーキ機構24のレバー24aの一端を押す。該レバーの中央部はシャーシ23に固定されたレバー支持部材24bに軸支され、他の端部は継手24cを軸支しこれにロッド24dと継手24eが連結される。レバー24fの中央部はシャーシ23に固定されたレバー支持部材24gに軸支されレバー24fの一端は継手24eを軸支し、他の端部はブレーキシュー24hの一端に固定されこれを移動させる。24iはブレーキドラムであり後続車輌の補助駆動軸18aに固定される。該ブレーキドラムに接触する前記ブレーキシュー24hの他の端部はシャーシ23に固定されたブレーキシュー固定部材24jに固定される。これら一連の構成要素は特に限定されるものではないが、車間距離が縮まると摺動軸25dの開放端部の移動量をブレーキシューに伝達してブレーキを作動させ後続車輌を停止させることができる。
【0019】
後続車輌3の駆動輪18の駆動力を制御するセンサーは前記摺動軸25dの開放端部位置を検出することで可能となる。カートが前進もしくは登坂するときには摺動軸受26と前記摺動軸の開放端部の距離が縮小するのでその移動量を検出することで電気抵抗器を制御し駆動モータ32の回転力を制御する。摺動軸25dの端部にアーム35を設けシャーシ部に取着した可変抵抗器を用いた車間検知器34に摺動子34aを差込んで電気抵抗値の変化を検出し駆動モータの回転力を調整する。アーム35の端部は後続車輌が傾いたとき摺動子が撓まないように円弧状の長穴を設けている。可変抵抗器の代わりに摺動子にローラを接触させローラの回転数をディジタル値として取出し駆動モータの制御に用いることもできる。その他超音波車間距離センサーなどの電子制御システムも利用できる。
【0020】
図2において操舵輪4のトレッドをT1、駆動輪14のトレッドをT2、後続車輌の駆動輪18のトレッドをT3としてこれらの寸法をそれぞれ異にして各車輪の軌跡ができるだけ重ならないようにすることで更に芝に与える損傷を少なくすることができる。カートがカーブ走行をする場合は多少なりとも軌跡が重なるとしても長い距離に亘って重なることが少ないから芝の回復も速い。通常の4人乗用カートがエンジン駆動の場合車重は約400kgであるが、4人の体重260kgを加算すると660kgになり均等に4輪が分担したとしても165kg/輪となる。実際には後輪側に60%の負担がかかるから396kgを2輪で支えることになり、フェアウエーの走行は轍が生じて不可能である。近年4人乗用カートの車重も軽量化されているが実際にフェアウエーを走行できるゴルフ場は少ない。
【0021】
本実施例では先頭車輌の自重を200kg程度に抑え2人の体重を平均130kgとすれば330kgを4輪で分担すると1輪当たり82.5kgとなる。これは83kgの人がフェアウエーを歩いても靴跡が残らないことと同じである。実際には駆動輪側にはモータ等の駆動機構やバッテリー及びバッグなどの荷重がかかるから均等に4輪が分担せず2人乗用した場合で操舵輪側に40%、駆動輪側には60%の荷重がかかる。従って駆動輪側には198kgの荷重がかかる計算になるから1輪当たり100kg見当になる。100kg見当の体重のプレーヤーも見かけるがフェアウエーの芝を損傷する程のことはない。急発進や急停車を避ければ芝の損傷は避けることができる。後続車輌の駆動輪では車輌が小さく荷重は更に小さくなり芝に与える損傷は殆ど無い。車輪のタイヤ幅を広くすることでフェアウエーの走行を可能にする例は先行技術の中にも見いだせるが、本願発明では上述したように車輪1輪当たりの荷重が小さいのでタイヤ幅はことさら大きくせずとも単位面積当たりの荷重は通常の4人乗用カートの荷重より少なくなる。しかも駆動輪18の駆動力を補助的に加えれば登坂力は十分に維持される。本実施例では後続車輌の車輪数は2個であるがこれに限定するものではなく3乃至4個の車輪を装備して先頭車輌のバッテリーの一部を設置し先頭車輌の車重を小さくすることもできる。本実施例では後続車輌は操舵輪を必要としないが単独走行はできない構成である。後続車輌を3輪又は4輪にする場合、駆動輪以外の車輪はキャスタ付き自在輪でよい。自在輪を加えることで連結器の摺動軸への負担が軽減されるほか車輌の格納も容易になる利点がある。
【0022】
上述したように、本発明の2車輌連結型カートの駆動力は主として先頭車輌がその機能を有しているが、人の体重とバッテリーやモータあるいはエンジンなどの駆動源の重量を4輪で均等に支えるには駆動モータを最前部に配置したフロントドライブ方式も好ましい。バッテリーは容積がかさむためシートの下方のスペースを利用するのが得策であり、人の体重とほぼ同じ位置に重量が集中する。そのため少しでも車輪への荷重配分を均等化するためにはシートの位置を前輪と後輪の中央位置におけばよいが、人の着座したときの足下の位置周辺には余剰のスペースが残るから荷重配分は後輪側に偏ることになる。ホイールベースを長くすれば解決できるが少しでも車輌を短く簡素化することを考えれば得策でない。エンジンはその燃料タンクなどを含めると可成りの容積を必要とするが、モータであれば減速機構や自在軸継手とドライブシャフトを構成するだけでさほど複雑な構造にならず重量を車輌の前方に移動させることができる。フロントドライブ方式は操縦性がよく、登坂力も後続車輌の駆動輪で補えば十分である。
【実施例2】
【0023】
実施例1で述べたブレーキ機構24に代えて図4に示すような電磁ブレーキ36を利用することもできる。36aはブレーキディスクで駆動軸18aに固定され、ブレーキパッド36bはシャーシ23に固定される。車間検知器34の出力はリード線38を通じて制御ボックス39へ伝達され、図示しないバッテリーからの電源を動力線40を通じて前記制御ボックスに接続する。該制御ボックス39は車間検知器の出力に応じて制御されたバッテリーからの電力量を、電磁ブレーキを作動させる動力線41と補助駆動モータ32を作動させる動力線42を通じてそれぞれに通電する。車間検知器の出力値が大きいときは摺動軸の開放端部が突出し後続車輌が先頭車輌に接近している場合であり所定量以上になれば電磁ブレーキ36を作動させ車間距離を正常に保つようにする。また摺動軸の開放端部が後退するときは車間検知器の出力が小さくなり先頭車輌の駆動輪に負担が大きくなっている場合であるから動力線42を通じて後続車輌の駆動モータ32を作動させ車間距離を正常に戻すようにする。
【0024】
上述した2車輌連結型のカートはプレイ中は前進できればこと足りるが、車輌の格納あるいはフェアウエー走行中に後退を必要とする場合がある。図3に示したブレーキ機構24を構成する場合はレバー24aの取着位置を移動させ摺動軸25dの開放端部がレバーと接触しないように構成すればよいが、少なくとも手動機構が必要になり複雑になる。図4に示す構成はバッテリーを電源とする動力線のみであり、ロッドなどの接続部材が不要であり動力線41及び/又は動力線42を通じて電気的に制御すればよいから操作を簡素化することができる。
【実施例3】
【0025】
2車輌連結してフェアウエーを走行する場合、先頭車輌と後続車輌の各車体のシャーシの水平面に対する傾きは異なる方向へ傾斜する場合があり、連結部は2軸の自在軸継手の他にシャーシの傾斜に追随する回転可能な構成が必要である。図5は最も簡素な連結器17aを示す斜視図である。2軸の自在軸継手25を先頭車輌のシャーシ9及び後続車輌のシャーシ23にそれぞれ取着し、水平軸25bに軸支された継手25eに直接楕円形状の板ばね43をボルトで固定している。ボルトで固定する部分は少なくとも一方は板ばねがボルトに対して回動可能な構成にする。楕円形状の板ばねの板厚は一定に限らず厚い部分と薄い部分を構成して衝撃をやわらげるようにしてもよい。車間検知器34とこれに差込まれる摺動子34aは継手25eに取着しているが車体が傾くと摺動子34aは撓むから樹脂製で可撓性のあるものを棒材として用いる。車間検知器は摺動子にローラを接触させローラの回転数をディジタル値として取出す方式が好ましい。
【0026】
上述した連結器は一実施例であり、本発明はこれらに限定されず、方向の異なる2又は3軸に回動可能な継手が軸支された種々の構成の連結器が利用される。
【実施例4】
【0027】
図6は実施例1で示した先頭車輌2のシャーシ9の構成を変えずに駆動モータ30をシャーシの最前部に配置した例を示す斜視図である。ケーシング31はシャーシ9に固定され左右両側に突出した出力軸にはそれぞれ自在軸継手を介して駆動軸44が接続される。該駆動軸の他の端部は自在軸継手を介して独立懸架された操舵輪4を回転駆動する。シートの下方にはエンジンまたはモータとその電源となるバッテリーが積載されるから、2人乗用の場合には後輪側に重量が偏るので駆動モータを最前部に配置し前輪駆動を行うことで荷重配分は均等化が促進される。通常の4人乗用カートに比較してホイールベースが短いから前輪駆動は操縦安定性を改善するのに好都合である。操舵輪の独立懸架構造と駆動軸の連結構造は自動車等の一般的な構造が利用できるので詳細は省略している。
【実施例5】
【0028】
実施例1では先頭車輌2が単独で走行可能であり、後続車輌3は補助的に駆動する駆動輪18を備えている。後続車輌は牽引されることを主体にその構成を述べているが次のような装置を付加することで連結を解除したとき単独で走行可能となる。図7に示す後続車輌3aは前部に車輪を設置するためのスペースを設けたシャーシ23aから成る。シャーシ前部は一部床面が高くなるが傾斜した部分はプレーヤーが脚を載せることができるので狭くはない。連結を解除した摺動軸25dと摺動軸受26は高さを調整するため取着位置が反転している。シャーシ23aの最前部は板材から成りその両端にはキャスター付き自在輪45を固定するが車輪45aを軸支するコの字型の回転部材45bの上部を延長してロッド46の片側端部46aを回動可能に軸支する。他方の自在輪も同様にロッドを軸支し左右の自在輪を平行に維持している。また板材から成るシャーシ23aの一部にブラケット47を固定しハンドル軸48を軸支し、該ハンドル軸にはレバー49の片側端部を固定し他の端部はロッドの中央に固定した軸50に嵌合して前記ハンドル軸を回動することでロッド46を左右に揺動し自在輪の車輪の方向を定めるようにしている。ハンドル51は棒状であり操舵軸51aをL字型に固定している。操舵軸はハンドル軸48に着脱自在に嵌合し、ハンドル軸を回転させ自在輪45の車輪の方向を適宜定めることができる。ハンドル51には走行ボタン52aとブレーキボタン52bが設けられ、走行ボタンを押すと駆動モータ32が始動し、ブレーキボタンを押すと電磁ブレーキ36が作動するように回路設定されている。
【0029】
駆動モータ32とケーシング33及び電磁ブレーキ36を片方へ寄せてバッテリー積載用に有底のパレット53をシートの下方に設けて簡易クレーンを用いて所定量のバッテリーを一括して積み降ろしすることができる。重量が偏るので左右に分割して積載してもよい。いずれにしても2車輌連結走行の場合はバッテリーの容量は補助駆動できればよく最小限に留めるとともにハンドル51とロッド46は取り外す必要がある。これらの作業は簡便であり後続車輌を単独で走行させたい場合はハンドルとロッドを装着すればよい。自在輪はタイヤ装着した車輪が好ましく牽引される場合はキャスターが負の位置にある方が追随性はよい。車輌最前部の中央に1輪の自在輪を設けてもよいが単独走行の場合は安定性に欠ける。
【実施例6】
【0030】
後続車輌が2輪であり牽引されるだけであれば実施例1に示した連結器17に問題はないが、後続車輌の前部に車輪を設けて後続車輌が自立できる場合は地面に段差がある部分を走行するとき摺動軸25dに剪断方向の応力が働き摺動軸受にも曲げ応力が作用して損傷を受ける可能性がある。これを解消するためには図8に示すように摺動軸の中心線に直交する軸を設ければよい。後続車輌の最前部のシャーシ23aに取着する自在軸継手55はシャーシに対して回動自在な垂直軸55aと該垂直軸に設けられた軸受部材55bとこれに回転可能に軸支される水平軸55cから成り、該水平軸は摺動軸受55dと一体に構成される。該摺動軸受を貫通する摺動軸25dは実施例1に述べた摺動軸であり該軸心と前記水平軸55cの軸心は直交する。前記軸受部材55bは分割型で前記摺動軸受を組込んだのちボルト締めされる。このような構造は先頭車輌のシャーシ9に対して後続車輌のシャーシ23aが急激に上下あるいは傾斜しても追随できる。連結を解除する場合は水平軸25bを引き抜いて行う。しかし後続車輌が2輪の場合はシャーシ23aの地面からの高さを維持する機能はなく、あくまでも後続車輌が3輪又は4輪で自立できることが必要である。図示していないが車間検知器34は摺動軸固定部材25cと摺動軸受55dの上面に設置し摺動軸が傾斜しても車間距離を検知できる。
【実施例7】
【0031】
段差のある地面を走行する際の上下動を緩和する手段としては図9に示すように摺動軸受26とシャーシ23の間に板ばね56を配置してもよい。先頭車輌のシャーシ9と後続車輌のシャーシ23の高さが急激に変化したとき摺動軸25dの傾斜角が変化し摺動軸に曲げ応力が生じ摺動軸受にも負担がかかる。急激な傾斜角の変化を板ばねが吸収するので摺動軸受の偏荷重が緩和され乗り心地もよくなる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本願発明の2車輌連結型カートは1輪当たりの荷重が小さくフェアウエーを走行しても芝に損傷を与えないからショットの位置の近傍まで歩行せずに移動できるので実質所要時間が短縮できる。またプレーヤーの同伴数により2人乃至4人乗用に対応でき、近年2人1組でプレーをする需要も多くなる傾向にあって、カートの配車効率も向上するので大きな需要が見込めるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の2車輌連結カートの斜視図である。(実施例1)
【図2】図1の2車輌連結カートのシャーシ部を示す斜視図である。(実施例1)
【図3】連結器とブレーキ機構を示す拡大斜視図である。(実施例1)
【図4】ブレーキ機構の別の実施態様を示す斜視図である。(実施例2)
【図5】連結器の別の実施態様を示す斜視図である。(実施例3)
【図6】前輪駆動の例を示す斜視図である。(実施例4)
【図7】単独走行可能な後続車輌の構成を示す斜視図である。(実施例5)
【図8】連結器の別の構成を示す斜視図である。(実施例6)
【図9】連結器の別の構成を示す斜視図である。(実施例7)
【符号の説明】
【0034】
1 2車輌連結型カート
2 先頭車輌
3 後続車輌
4 操舵輪
9 シャーシ
10 枠体
12 風防
13 支柱
14 駆動輪
17 連結器
18 駆動輪
21 枠体
23 シャーシ
24 ブレーキ機構
25 自在軸継手
26 摺動軸受
27 スプリング
30 駆動モータ
31 ケーシング
32 駆動モータ
33 ケーシング
34 車間検知器
36 電磁ブレーキ
39 制御ボックス
43 板ばね
44 駆動軸
45 自在輪
46 ロッド
48 ハンドル軸
51 ハンドル
55 自在軸継手
56 板ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフコース内外においてプレーヤーの用に供するカートであって、2車輌から成り連結走行することを特徴とするゴルフ用カート。
【請求項2】
前記2車輌のうち先頭車輌と後続車輌のそれぞれが2人乗用である請求項1に記載のゴルフ用カート。
【請求項3】
前記先頭車輌は前輪2輪と後輪2輪の4輪で構成され、前輪もしくは後輪のいずれか一方を駆動輪として単独で走行可能であり、後続車輌は少なくとも2輪で構成された請求項1または2に記載のゴルフ用カート。
【請求項4】
前記後続車輌は2輪で構成された駆動輪を有し、更に1輪乃至2輪を備え連結を解除したとき単独で走行可能な構成とした請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴルフ用カート。
【請求項5】
前記カートの各車輪のタイヤに配分される荷重が、通常の4人乗用カート使用時の各タイヤに配分される荷重に比し同等以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴルフ用カート。
【請求項6】
前記2車輌の連結部に自在軸継手とスプリングを用いて2車輌間の衝撃を緩和する請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴルフ用カート。
【請求項7】
前記2車輌の車間距離が所定の位置以上に接近するとき、後続車輌のブレーキが自動的に作動する構成とした請求項1〜6のいずれか1項に記載のゴルフ用カート。
【請求項8】
前記先頭車輌の前輪と後輪及び/又は後続車輌の車輪の各左右車輪の中心間距離を異にして走行時の車輪軌跡の重なりを軽減する請求項1〜7のいずれか1項に記載のゴルフ用カート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−100547(P2008−100547A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282732(P2006−282732)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000116231)ワシ興産株式会社 (25)
【Fターム(参考)】