説明

サイクロン式オイルセパレータ装置

【課題】 ガス流入室形成部の下壁の上面にオイルが堆積することを従来に比べて抑制できるサイクロン式オイルセパレータ装置の提供。
【解決手段】ガス流入室形成部30の下壁31の上面が、ガス排出部24側かつ下方に傾斜する傾斜面31aになっている。そのため、サイクロン20で分離しきれなかったオイル粒子がガス流入室形成部30の下壁31の上面上で液状化したとき、オイルがガス排出部24を通ってサイクロン20のオイル排出部24へと落ちていく。そのため、ガス流入室形成部の下壁の上面が水平面になっている場合(従来)に比べて、ガス流入室形成部30の下壁31の上面上にオイルが堆積することを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクロン式(遠心分離式)オイルセパレータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、例えば自動車のエンジン等においては、その稼動時において、ピストンリングとシリンダ壁との隙間から漏出するブローバイガスを大気中に排出することは大気汚染の原因になるとして、いわゆるPCV(ポジティブクランクケースベンチレーション)システムにより吸気系に戻し再燃焼させることが行われている。
ところで、ブローバイガス中にはエンジンオイル等の潤滑油が微粒化されたオイルミストが含まれている。そのため、ブローバイガス中のオイルミストを分離回収する手段として、シリンダヘッドカバーの内側やクランクケースと吸気管路とを連結する連結流路の途中等にオイルミスト捕集装置(オイルセパレータ装置)が設けられている。そのようなオイルセパレータ装置としては、いわゆるサイクロン式と呼ばれる方式の装置が普及している。
【0003】
従来のサイクロン式オイルセパレータ装置は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1開示の装置は、複数のサイクロンと、複数のサイクロンの上側に各サイクロンのガス排出部から排出されるガスが流入するガス流入室を形成するガス流入室形成部と、を有している。ガス流入室形成部の下壁の上面は、水平面になっている。
【0004】
しかし、従来のサイクロン式オイルセパレータ装置には、次の問題点がある。
ガス流入室形成部の下壁の上面が水平面になっているため、サイクロンで分離しきれなかったオイル粒子が、ガス流入室形成部内にガスとともに流入しガス流入室形成部の下壁の上面上で液状化し堆積してしまう。オイルが上面に堆積すると、オイルセパレータ装置の持ち去り性能が悪化してしまうだけでなく、デポジット発生の原因となってしまう。
【特許文献1】特表2000−540338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ガス流入室形成部の下壁の上面にオイルが堆積することを従来に比べて抑制できるサイクロン式オイルセパレータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) (a)本体部と、該本体部の側壁に設けられオイル混合ガスを前記本体部内に導入するガス導入部と、前記本体部の上壁に設けられ前記オイル混合ガスからオイルが分離されたガスを前記本体部外に排出するガス排出部と、前記本体部の下端部に設けられ前記オイル混合ガスから分離されたオイルを前記本体部外に排出するオイル排出部と、を備えるサイクロンと、
(b)前記サイクロンの上側に前記ガス排出部から排出されるガスが流入するガス流入室を形成するガス流入室形成部と、
を有し、
前記ガス流入室形成部の下壁の上面が、前記ガス排出部側かつ下方に傾斜する傾斜面になっている、サイクロン式オイルセパレータ装置。
【発明の効果】
【0007】
上記(1)のサイクロン式オイルセパレータ装置によれば、ガス流入室形成部の下壁の上面が、ガス排出部側かつ下方に傾斜する傾斜面になっているため、サイクロンで分離しきれなかったオイル粒子がガス流入室形成部の下壁の上面上で液状化したとき、オイルがガス排出部を通ってサイクロンのオイル排出部へと落ちていく。そのため、ガス流入室形成部の下壁の上面が水平面になっている場合(従来)に比べて、ガス流入室形成部の下壁の上面上にオイルが堆積することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明実施例のサイクロン式オイルセパレータ装置を、図1〜図4を参照して、説明する。
本発明実施例のサイクロン式オイルセパレータ装置(以下、単に装置ともいう)10は、たとえば、図示略の自動車エンジンのクランクケース内に発生するオイル混合ガス(オイルミスト混合ガス、ブローバイガス)からオイル(オイルミスト)を分離させて、分離させたオイルをクランクケースに戻す装置である。ただし、装置10は、自動車エンジン以外の内燃機関の内部で発生するオイル混合ガス中のオイルを分離する装置であってもよい。
【0009】
装置10は、図1に示すように、サイクロン20と、ガス流入室形成部30と、を有する。装置10は、さらに、オイル流入室形成部40と、オイル混合ガス流入室形成部50と、を有する。
【0010】
サイクロン20は、2個以上(複数)並列に設けられている。複数のサイクロン20の各サイクロン20は、互いに間隔をおいて設けられている。サイクロン20は、本体部21とガス導入部22とガス排出部23とオイル排出部24とを備え、本体部21内に導入されたオイル混合ガスを本体部21内で旋回運動させ該旋回運動による遠心力によってオイル混合ガスからオイルを分離させる。
【0011】
本体部21は、上壁21aと側壁21bとを備える容器であって、内部に空間(サイクロン室、遠心分離室)を備える。側壁21bは、円筒形状の円筒部21cと、円筒部21cの下端に連なり下方にいくにつれて径が縮小される円錐部21dと、を備える。円錐部21dの下端は、閉塞しておらず、下方に開放されている。
本体部21の下端部は、オイル流入室形成部40の後述する上壁43を挿通して後述するオイル流入室44内に入り込んでいる。
【0012】
ガス導入部22は、オイル混合ガスを本体部21内に導入する部分である。ガス導入部22は、管状であり、側壁21bの円筒部21cの上端部またはその近傍に設けられている。ガス導入部22は、側壁21bの円筒部21cに、円筒部21cの内周面の接線方向外方に向かって突出して設けられている。
【0013】
ガス排出部23は、オイル混合ガスからオイルが分離されたガスを本体部21外に排出する部分である。ガス排出部23は、管状であり、上壁21aの中央部またはその近傍から下方に延びて設けられている。ガス排出部23の下端は、本体部21内に入り込んでおり、ガス導入部22の下端またはその近傍と同じ上下方向高さにある。
【0014】
オイル排出部24は、オイル混合ガスから分離されたオイルを本体部21外に排出する部分である。オイル排出部24は、本体部21の下端部に設けられている。オイル排出部24は、側壁21bの円錐部21dの下端の開口からなる。
【0015】
ガス流入室形成部30は、下壁31と側壁32と上壁33とを備え、内部にガス流入室34を形成する。
【0016】
ガス流入室形成部30の下壁31の一部は、複数のサイクロン20の上壁21aを共有している。ガス流入室形成部30の下壁31の上面は、ガス排出部23側かつ下方に傾斜する傾斜面31aになっている。傾斜面31aは、ガス流入室形成部30の下壁31全体を傾斜させることで形成されていてもよく、ガス流入室形成部30の下壁31の上面のみを傾斜させることで形成されていてもよい。傾斜面31aは、図3に示すように4つの平面を周方向に繋げた形状であってもよく、図4に示すように円錐面形状であってもよい。
ガス流入室形成部30の上壁33には、図1に示すように、該上壁33から上方に延びる単一の管部33aが設けられている。
ガス流入室34は1つのみ設けられており、単一のガス流入室34には、複数のサイクロン20の各サイクロン20のガス排出部23から排出されるガスが流入する。
【0017】
複数のサイクロン20の各サイクロン20のガス排出部23から排出されたガスは、単一のガス流入室34に流入し、単一の管部33aから図示略の内燃機関の吸気系に吸引される。
【0018】
オイル流入室形成部40は、下壁41と側壁42と上壁43とを備え、内部にオイル流入室44を形成する。
【0019】
オイル流入室形成部40の下壁41には、該下壁41から下方に延びる単一の管部41aが設けられている。
オイル流入室44は1つのみ設けられており、単一のオイル流入室44には、複数のサイクロン20の各サイクロン20のオイル排出部24から排出されるオイルが流入する。
【0020】
複数のサイクロン20の各サイクロン20のオイル排出部24から排出されたオイルは、単一のオイル流入室44に流入し、単一の管部41aから図示略の内燃機関のクランクケース内に戻る。
【0021】
オイル混合ガス流入室形成部50は、下壁と側壁51と上壁とを備え、内部にオイル混合ガス流入室52を形成する。
オイル混合ガス流入室形成部50の上壁は、ガス流入室形成部30の下壁31で構成されている(ガス流入室形成部30の下壁31が共有している)。
オイル混合ガス流入室形成部50の下壁は、オイル流入室形成部40の上壁43で構成されている(オイル流入室形成部40の上壁43が共有している)。
オイル混合ガス流入室形成部50の側壁51の下端部には、単一の管部51aが設けられている。
オイル混合ガス流入室52は1つのみ設けられている。
【0022】
図示略のクランクケース内に発生するオイル混合ガスは、オイル混合ガス流入室形成部50の側壁51に設けられる単一の管部51aを通ってオイル混合ガス流入室52内に入り、各サイクロン20のガス導入部22から本体部21内に入る。
【0023】
ここで、本発明実施例の作用を説明する。
本発明実施例では、ガス流入室形成部30の下壁31の上面が、ガス排出部23側かつ下方に傾斜する傾斜面31aになっているため、以下の作用を得ることができる。
図2に示すように、サイクロン20で分離しきれなかったオイル粒子がガス流入室形成部30の下壁31の上面上で液状化しても、ガス排出部23を流れるガスの流量が少なくなったりゼロになったときに、該液状化したオイルはガス排出部23を通ってオイル排出部24へと落ちていく。そのため、ガス流入室形成部30の下壁31の上面上にオイルが堆積することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明実施例のサイクロン式オイルセパレータ装置の模式図である。
【図2】本発明実施例のサイクロン式オイルセパレータ装置の、サイクロンの1つとその近傍のみを示す模式図である。
【図3】本発明実施例のサイクロン式オイルセパレータ装置の、ガス流入室形成部の下壁の傾斜面が4つの平面を周方向に繋げた形状である場合の、サイクロンの1つとその近傍のみを示す斜視図である。
【図4】本発明実施例のサイクロン式オイルセパレータ装置の、ガス流入室形成部の下壁の傾斜面が円錐面形状である場合の、サイクロンの1つとその近傍のみを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
10 サイクロン式オイルセパレータ装置
20 サイクロン
21 本体部
21a 本体部の上壁
21b 本体部の側壁
22 ガス導入部
23 ガス排出部
24 オイル排出部
30 ガス流入室形成部
31 ガス流入室形成部の下壁
31a 傾斜面
32 ガス流入室形成部の側壁
33 ガス流入室形成部の上壁
34 ガス流入室
40 オイル流入室形成部
41 オイル流入室形成部の下壁
42 オイル流入室形成部の側壁
43 オイル流入室形成部の上壁
44 オイル流入室
50 オイル混合ガス流入室形成部
51 オイル混合ガス流入室形成部の側壁
52 オイル混合ガス流入室


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)本体部と、該本体部の側壁に設けられオイル混合ガスを前記本体部内に導入するガス導入部と、前記本体部の上壁に設けられ前記オイル混合ガスからオイルが分離されたガスを前記本体部外に排出するガス排出部と、前記本体部の下端部に設けられ前記オイル混合ガスから分離されたオイルを前記本体部外に排出するオイル排出部と、を備えるサイクロンと、
(b)前記サイクロンの上側に前記ガス排出部から排出されるガスが流入するガス流入室を形成するガス流入室形成部と、
を有し、
前記ガス流入室形成部の下壁の上面が、前記ガス排出部側かつ下方に傾斜する傾斜面になっている、サイクロン式オイルセパレータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−96107(P2010−96107A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268246(P2008−268246)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】