説明

サイクロン装置

【課題】噴霧乾燥装置で製造される微粉末を歩留良く回収することができる粉体補集目的のサイクロン装置を提供すること。
【解決手段】サイクロン本体と、分散粉体を含んだ気体流をサイクロン本体に吹き込むために設けられた粉体導入管と、サイクロン本体内のガスを排気するために設けられ排気管と、吸引口を有するサイクロン本体下部に設けられた粉体回収容器と、圧縮ガスを用いて吸引力を発揮するエジェクターを具備し、エジェクターにより粉体回収容器の吸引口からガスを吸引することによるブローダウン機構を有し、エジェクターにより吸引したブローダウンガスと圧縮ガスの混合ガスを粉体導入管もしくは、サイクロン本体に吹き込むことを特徴とする粉体回収装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体回収用サイクロン装置および粉体回収用サイクロン装置を備えた噴霧乾燥装置に関し、さらに高い回収率で粉体を回収することができる粉体回収用サイクロン装置および噴霧乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、気流を用いて粉体を回収する装置としては、一般的にはバグフィルター又はサイクロン装置が用いられる。噴霧乾燥装置においても、粉体の回収装置としてはバグフィルターまたはサイクロン装置が用いられることが一般的である。
ところで、直接粉体を回収する際、バグフィルターに比べてサイクロン装置は、バグフィルターから発生する繊維等の異物混入の恐れがなく、かつ、当然のごとくバグフィルターで発生する目詰まりが発生し得ないので、メンテナンスが容易で長時間の連続運転が可能である。したがって、サイクロン装置は粉体回収装置あるいは集塵機として多くの分野で、当然噴霧乾燥装置においても重要視され使用されてきた。
【0003】
サイクロン装置の回収効率を向上させる方法として、回収容器から吸引を行うブローダウン方式が知られているが、特許文献1のような方法で実施した場合、ブローダウンで吸引したガスのためにバグフィルターが必要であり、バグフィルターを使用する以上は前述のバグフィルターの抱える問題が発生し、回収率が向上してもサイクロン装置であることの長所がなくなってしまう。 また、特許文献2のようにサイクロン装置のガス導入部分にディフューザーを設けて、ブローダウンを行う方法も提案されているが、この方法だと導入ガスに大きな圧力損失が発生するため、サイクロン装置にガス導入する送風機に大きな負荷がかかることが考えられ、高い送風圧が要求される。したがって、粉体回収および集塵を行う条件によっては使用できない場合もあり、送風機が高価になり、サイクロン装置入口側の配管も耐圧が必要である。
また、ブローダウンされるガスの流量は導入ガスの流速により決定されるので制御することが困難である。
【0004】
一般的に従来の循環式噴霧乾燥装置は、図7に示すように原料溶液をポンプより加圧し、ノズルより噴霧し乾燥させる噴霧乾燥塔と、噴霧乾燥塔で乾燥された粉体を循環ガスから分離し回収するためのサイクロン装置と、粉体回収装置で粉体が分離された循環ガスを冷却ユニットから供給される冷媒で冷却し、原料溶液の溶媒を液化し回収する凝縮器と、凝縮された循環ガスを再度噴霧乾燥塔に循環させるブロワーなどの気体循環装置と、噴霧乾燥塔に送風される循環ガスを過熱するヒーターと、循環ガスの圧力を調整する循環ガス圧調整ユニット等により構成される。
【0005】
このような循環式噴霧乾燥装置は、アルコールなどの有機溶剤を溶媒とした原液を噴霧乾燥させるために使用される。アルコール溶媒を噴霧乾燥させ気化すると、爆発などの危険性があるために、一般的な空気ではなく酸素を含まない窒素などの不活性ガスを循環させて行う。
このような循環式噴霧乾燥装置は凝縮器が必要であり、循環ガスが外部に漏れないよう、また空気の流入がないように気密構造が求められるので装置が高価であり、また、原料も水ではなく有機溶媒を用いるので溶媒も比較的高価である。
したがって、製造される粉体も付加価値が高く、高価なものが主流である。特に、医療分野での利用度が高い。医療用途の場合、前記したようにバグフィルターでの粉体回収では異物混入の恐れがあるので、特殊なケースでない限りバグフィルターで回収した粉体は製品として使用することができない。
以上のように循環式噴霧乾燥装置で得られる粉体は非常に高価であるので、粉体の回収率を向上させることが悲願であり、また回収率の高いサイクロン装置を用いて実現することは高付加価値の粉体の製造工程においては最重要項目のひとつである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−266938
【特許文献2】特開平6−55102
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の問題点を鑑みて、サブミクロン、またはミクロンオーダーサイズの粉体粒子からなる粉体の回収率を改善することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ほぼ直立円筒形のサイクロン胴体部と、この胴体部下端に一体結合されたサイクロン円錐部と、分散粉体を含んだ含粉ガスを前記サイクロン胴体部の内壁面に沿って水平方向に吹き込むために、サイクロン胴体部の一部を外周接線方向に延ばして設けられた粉体導入管と、前記サイクロン胴体部内の空気を上方向に排気するために設けられ、そのサイクロン胴体部の上部を覆う天板を貫通する排気管と、吸引口を有する前記サイクロン円錐部下部に設けられた粉体回収容器と、外部からの圧縮ガスにより吸引力を発生するエジェクター(吸引器) を備え、前記エジェクター(吸引器)により粉体回収容器の吸引口から粉体混じりのガスを吸引し、吸引された粉体混じりのガスと外部からの圧縮ガスを、前記粉体導入管もしくは前記粉体導入管上部のサイクロン胴体部に還流する還流管を備えることを特徴とするサイクロン装置により実現される。
【0009】
外部の圧縮ガスにより吸引力を発揮するエジェクターにより粉体回収容器の吸引口からガスを吸引し、ブローダウン効果によりサイクロン装置の回収能力を向上させる。また、吸引したガスをサイクロン本体に再度還流するため、ブローダウンガス用の余分なバグフィルターなどの設備を必要としないし、ブローダウン吸引口から吸引された粉体も再度サイクロン本体に戻されるので、粉体の外部排出がなく効率よく粉体を回収することができる。
また、エジェクター(吸引器)が外部からの圧縮ガスにより吸引力を発生するものなので、複雑な機械要素を必要とせず簡単に実現することが可能であり、メンテナンスも容易である。
外部からの圧縮ガスにより吸引力を発生させるので、加える圧縮ガスの流量により吸引力を調整することが可能であり、サイクロン本体の導入ガスに大きな圧力損失が発生する恐れもない。
また、エジェクターに加えられた圧縮ガスと粉体回収容器の吸引口から吸引された粉体混じりのガスを再度サイクロン本体に還流するが、この還流ガスはサイクロン本体の導入ガスよりも流速が早いので、この還流ガスをサイクロン装置の粉体導入管もしくは胴体部上部よりサイクロン本体内部の気流の回転方向に還流することによりさらにサイクロン本体内部の気体の回転速度を加速することが可能となる。当然サイクロン装置はサイクロン本体内部の気体の回転速度により発生する遠心力を利用し粉体を回収するものであるから、サイクロン本体内部の気体の回転速度が上がることにより、さらに粉体の回収効率を向上させることが可能である。
【0010】
本発明は以上のように余分なバグフィルターなどの回収手段を必要とすることなく、制御可能なブローダウンを実現すること、さらにブローダウンの吸引のために生じた高圧ガスを再度サイクロン本体へ還流し、サイクロン本体内部気体の回転速度を加速することにより2段階的に回収効率を改善するものである。また、粉体回収容器に吸引口を取り付け、サイクロン本体に還流口をもうけ、エジェクターを取り付け、工場内に用意されている圧縮空気を使用すれば、比較的簡単でしかも安価に従来のサイクロンを改造し回収効率を向上させることが可能である。
噴霧乾燥装置の場合、前述したように特に医療用途では異物の混入の恐れがあるのでバグフィルター回収の粉体は製品としては使用できないこともあり、サイクロン装置での回収率を上げることが重要である。このサイクロン装置を搭載した噴霧乾燥装置は粉体の回収率が格段に向上するので、製品歩留まりの高い製造工程を実現可能である。
【0011】
また、循環式の噴霧乾燥装置の場合、アルコールなどの有機溶剤を溶媒とした原液を噴霧乾燥させるので爆発などの危険性があり、一般の空気ではなく酸素を含まない窒素などの不活性ガスを循環させて行う。不活性ガスは高価であるので垂れ流しすると製造コストが高くなってしまうので、上記サイクロン装置に用いる圧縮ガスも循環させることが望ましい。圧縮ガスを供給するためのコンプレッサとして、ピストンをシリンダ内で往復運動させてガスを加圧するコンプレッサで、前記ピストンの往復運動方向に伸びてピストンの往復運動方向に直線運動する直動ロッドと、この直動ロッドを往復運動させる往復直線運動機構とを備えてなり、さらに前記シリンダの往復直線運動機構側の開口部は、前記直動ロッドが摺動自在に貫通してなる貫通孔を有する閉塞プレートで閉塞しており、この閉塞プレートは摺動自在に貫通してなる直動ロッドの表面を貫通孔にて密閉するシールを有しているコンプレッサを使用する。このコンプレッサはクランクなどの往復運動を一度直線運動に変換してピストンを駆動する特徴を持っており、ピストンに連結された直動ロッドが直線運動するので、ピストンに連結された直動ロッドで気密シールを実施することが可能である、このため気密シールを実施する領域を狭くすることができ高い気密性が実現可能である。
このコンプレッサを併用することにより、循環式噴霧乾燥装置でもほとんどガス漏れがない状態でサイクロン装置用の圧縮ガスを作り出すことが可能であり、ランニングコストも低く、かつ製品歩留まりが高く、製造コストの低い噴霧乾燥工程が実現可能である。
とくに医療分野において有機溶剤を溶媒とした原液を噴霧乾燥させるニーズが多い、さらに医療分野においては前記したようにバグフィルターではなくサイクロン装置での粉体回収が重要であり、粉体自体の価格も高いので、本発明は特に有用である。

【発明の効果】
【0012】
本発明は以上のように余分なバグフィルターなどの回収手段を必要とすることなく、制御可能なブローダウンを実現すること、さらにブローダウンの吸引のために生じた高圧ガスを再度サイクロン本体へ還流し、サイクロン本体内部気体の回転速度を加速することにより2段階的に回収効率を改善するものである。
噴霧乾燥装置の場合、前述したように特に医療用途では異物の混入の恐れがあるのでバグフィルター回収の粉体は製品としては使用できないこともあり、サイクロン装置での回収率を上げることが重要である。このサイクロン装置を搭載した噴霧乾燥装置は粉体の回収率が格段に向上するので、製品歩留まりの高い製造工程を実現可能である。


【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の粉体補集用サイクロン装置を示す
【図2】本発明の粉体回収用サイクロン本体の平面図を示す
【図3】本発明の他の粉体補集用サイクロン装置を示す
【図4】従来のサイクロン装置を示す
【図5】本発明の循環式噴霧乾燥装置を示す
【図6】コンプレッサの断面図を示す
【図7】従来の循環式噴霧乾燥装置を示す
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明に係わる形態に関して実施例を説明する。なお下記装置の部材、および寸法ならびに装置の各部材の配置方法や部材間の比率、導入ガスの流量などの各設定値は以下に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で当業者により随時変更が可能であるということは言うまでもない。
図1に示すように粉体回収用サイクロン装置100は、粉体混じりの含粉ガスを導入するための導入管20と、この導入管20に気密接続された円筒部10および円錐部15からなるサイクロン本体101と、このサイクロン本体101の円錐部15の下端に気密接続された粉体回収用の粉体回収容器30と、サイクロン本体101の天板11の中心を貫通するように開けられた孔部に気密かつ鉛直に挿入された排気管40と、粉体回収容器30の上部に設けられた吸引口31と、外部からの圧縮ガスにより吸引力を発生するエジェクター50と、粉体回収容器30の上部に設けられた吸引口31とエジェクターの吸引口52を気密接続するブローダウン管37と、エジェクター50の圧縮ガス導入口51に気密接続され圧縮ガスを導入する導入管55と、サイクロン本体101の導入管20の上部位置で円筒部10とエジェクター50の排気口53に気密接続された還流管60を有している。
粉体回収容器30がほぼ円筒形状で、粉体回収容器30の上部に設けられた吸引口31が粉体回収容器30の接線方向に、さらにはサイクロン本体101内部の気流の流れを加速する方向に設置されることは、粉体の回収率向上に有効である。
サイクロン本体101の円筒部10に気密接続される導入管20と還流管60の水平断面での位置関係を図2に示す。図2で示すように導入管20と還流管60はサイクロン本体内部の気流が同じ方向に回転するようにサイクロン本体101の円筒部10の接線方向に気密接続される。この図2ではサイクロン本体内部の気流が時計方向に回転するように導入管20と還流管60はサイクロン本体101の円筒部10に気密接続されている。
また、ブローダウン管37の途中にサイクロン本体を追加し、このサイクロン本体によりブローダウンガスから粉体を回収し、粉体が回収されたブローダウンガスをエジェクター50に送ることも可能である。同様に還流管60の途中にサイクロン本体を追加し、粉体を回収したガスをサイクロン本体に還流することも可能である。
【0015】
実施例で用いられたサイクロン本体101は、天板11の直径が76mmの標準的な形状の小型サイクロン装置を用いた。サイクロン本体101を構成する材料はSUS304である。粉体がサイクロン本体101との摩擦により発生する静電気により、粉体がサイクロン本体101の内面に付着するのを防ぐため、サイクロン本体101をアース(接地) することが望ましい。
粉体回収容器30は、粉体回収容器30上部にあり吸引口31よりは下の位置で止め具35により気密接続されているが、止め具35をはずすことにより本体より粉体回収容器下部36が分離可能である。粉体を回収するときは上記のように粉体回収容器下部36を分離して行う。
また、粉体回収容器30の底にバルブとバルブに気密接続される導管を設け、下流工程で粉体を直接吸いだすことも可能であり、ここに記述した粉体回収方法は一例であり粉体の回収方法について上記手法に特定される分けではなく、これ以外にも多様な方法があることは言うまでもない。
【0016】
次に他の発明の実施例を図3により説明する。
図3に示すように粉体回収用サイクロン装置100のブローダウン管37を、サイクロン本体101の円錐部15の吸引口16に気密接続し、実施することも可能である。このときサイクロン本体101の円錐部15の吸引口16は、サイクロン本体101の円錐部15の接線方向、さらにはサイクロン本体101内部の気流が加速される方向に吸引するように取り付けられている。
図3では吸引口16が、サイクロン本体101の円錐部15の接線方向に取り付けられているが、吸引口16がサイクロン本体101の円筒部10に取り付けられていても本発明を実施する上では何ら問題はない。
また、サイクロン装置の場合、比較的径の大きな粒子がサイクロン本体101の円錐部15または円筒部10の外周に集まり、比較的径の小さい粒子が中心付近に集まるので、ブローダウン管37をサイクロン本体101内に伸ばし、吸引口16がサイクロン本体101の円錐部15または円筒部10の中心もしくは中心付近に設置されると、さらに粒子の回収効率が向上する可能性がある。
サイクロン本体101に気密接合された導入管20に含粉ガスを送り込む手段としては、ブロワーなどの送風手段が考えられる。本特許においては、一定の送風量において送風できるのであれば、導入管20の上流に設置された送風手段により含粉ガスを送り込む方法でも、排気管40の下流に設置された送風手段により吸い出す方法でも実施可能であるので、特に送風手段については明記せず、送風手段によりサイクロン本体101に一定の送風量の含粉ガスが導入されるという前提であるとする。
エジェクター50の圧縮ガス導入口51に気密接続される圧縮ガス導入管55のもう片方はコンプレッサ70に気密接続されている。圧縮ガスを供給する手段としては一般的にコンプレッサ70が考えられるが、窒素ガスなどのガスボンベから供給されるガスをレギュレーターなどの手段で一定圧力にして用いることも可能である。
【0017】
図4に示す従来のサイクロン装置110と本発明の図1に示すサイクロン装置100を用いて回収率の比較実験を行った。図4のサイクロン装置110は図1で示すようなブローダウン管37、エジェクター50および還流管60がないが、それ以外は図1で示すサイクロン装置と同条件のサイクロン装置である。送風量は500L/minで、粒度分布が0.1μから1.0μの間で分布するアルミナ粒子を一般大気とともに含粉ガスとして粉体導入管20からサイクロン本体101に導入し、粉体回収容器30で回収された粉体の重量と、排気ガスとして排気用管40から排気されたガスに含まれる粉体を、バグフィルターを通して回収した重量と比較して回収率の評価を行った。
回収率 = (粉体回収容器で回収された重量) /(粉体回収容器で回収された重量+排気された重量)
その結果、図4のサイクロン装置110の回収率は70%であった。
つぎに、図1で示すサイクロン装置100で実験を行った。送風量は500L/min、粒度分布が0.1μから1.0μの間で分布するアルミナ粒子を一般大気とともに含粉ガスとして気体導入管20からサイクロン本体101に導入した。それ以外に圧縮ガスとして0.6MPaの圧縮空気を100L/minでエジェクター50に供給することにより、粉体回収容器30の吸引口31から70L/minの吸引を行い、この結果生じる圧縮ガスと吸気ガスの混合ガスをサイクロン本体101の還流管から再度サイクロン本体101に還流することを行った。その結果、回収率は85%であった。
ちなみに、この図1の実験条件ではサイクロン本体101に導入されるガスの総量が圧縮ガスと吸引ガス量を合わせた量だけ図4の条件よりも余分にサイクロン本体101にガスが導入されることになる。したがって、図4に示すサイクロン装置110で送風ガス量を500L/minから600L/min、670L/minと増やして再度実験を行ったが、送風量を増やしても図4の条件では回収量は同じであった。
ブローダウンと還流を行うことにより回収率を大幅に改善することができた。とくに医療分野のように粉の単価が高い場合においては、その経済効果が絶大である。
【0018】
次に図5により他の発明である粉体回収率改善型の噴霧乾燥装置200について説明する。図5に示す粉体回収率改善型の循環式噴霧乾燥装置200は、原料溶液93をポンプ92により加圧しノズル91より噴霧し乾燥させる噴霧乾燥塔90と、噴霧乾燥塔90で乾燥された粉体を循環ガスから分離し回収するためのサイクロン装置100とサイクロン装置100で粉体が分離された循環ガスを冷却ユニト95から供給される冷媒で冷却し、原料溶液の溶媒を液化し回収する凝縮器94と、凝縮された循環ガスを再度噴霧乾燥塔90に循環させるブロワーなどの気体循環装置96と、噴霧乾燥塔90に送られる循環ガスを過熱するヒーター97、循環ガスの圧力を調整するガス圧調整ユニット98等により構成される。この循環式噴霧乾燥装置200には図1で示すサイクロン装置100が組み込まれている。
【0019】
循環ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、炭酸ガスなどの不活性ガスが用いられるが、この実施例では窒素を用いている。
噴霧乾燥塔90は、チャンバー90Aとチャンバー90A上部に設置されたノズル91により構成される。チャンバー90Aは上部が円筒形で下部が円錐形になっており、円錐形下部には、乾燥された粉体と揮発した溶媒を含む循環ガスを排出する排出口90Bが設けられていて、排出口90Bとサイクロン装置100の導入管20が気密接続される。チャンバー90Aの上部には気流分散板90Cが設置され、気流分散板90Cはノズル91より霧状に噴霧された原液が効率よく乾燥するように、熱風導入口90Dから入ってくる加熱された循環ガスの流れを調整する。当然のことながら、チャンバー90Aは、熱風導入口90Dと、ノズル91の噴出孔と、排出口90B以外は気密構造になっている。
【0020】
サイクロン装置100は、前述の図1で示されるサイクロン装置100が用いられる。サイクロン装置100のエジェクター50には、コンプレッサ70により圧縮ガスが供給されるが、エジェクター50に供給される圧縮ガスの温度が低いと噴霧乾燥塔90で揮発させた原料溶液に含まれていた溶媒が、エジェクター50もしくはサイクロン本体101で再度凝縮し液化することがある。このような問題が生じる場合は、コンプレッサ70から排出される圧縮ガスを、ヒーターなどの加熱手段で加熱してエジェクター50に供給することにより解決される。
【0021】
凝縮器94は、サイクロン装置100の排気口40と気密接続されており、サイクロン装置100から排気された溶媒が揮発している循環ガスを冷却し、循環ガスから溶媒を分離回収する。凝縮器94は循環ガスを冷却するための熱交換器を内蔵しており、この熱交換器には冷却ユニットで冷やされた冷媒が供給される。用いられる熱交換器は、一般的にシェルアンドチューブと呼ばれているもので、循環ガスが流れるシェルの中に冷媒が流れるチューブが配置されていて循環ガスと冷媒の間で熱交換が実施される。当然ながら凝縮器94で用いる熱交換は、循環ガスを冷却して溶媒を凝縮できるものであれば、特にこの形式の熱交換器に限定されるものではない。
【0022】
ヒーター97は小型で制御がしやすい電気ヒーターを用いた。電気ヒーター97には、加熱した循環ガスの温度を計測する温度センサーと、温度センサーの計測値に応じてヒーターに加える電力を制御する制御回路が内蔵されており、常に噴霧乾燥塔90に送る循環ガスの温度を一定の設定値に保つことが可能である。ヒーター97は、他の高圧蒸気を用いるスチームヒーターなど、他の制御可能なヒーターで代用することも可能である。
【0023】
ガス圧調整ユニット98は、循環ガスのガス圧を計測する圧力センサーと、循環ガスを外部排出し循環ガスのガス圧を減圧する排気弁と、片側が窒素ボンベなどの高圧窒素ガス供給手段に気密接続され、高圧窒素ガスを系内に導入する導入弁と、前記圧力センサーの値に応じて前記排気弁と前記導入弁の開閉を制御するシーケンサーまたはマイコンなどによる制御装置により構成される。一般的にこのような循環式噴霧乾燥装置の場合、空気を吸引し、空気に含まれる酸素が循環ガスに混じりこむと、噴霧乾燥塔90で蒸発した原液に含まれる溶媒が爆発する恐れが出てくるので、空気を吸い込まないように、最も循環ガスの圧力が下がる気体循環装置96の吸引側の圧力が、空気圧よりも低くならないように循環ガス圧が調整される。
【0024】
次に図5のサイクロン装置100のエジェクター50に圧縮ガスを供給するコンプレサ70について説明する。コンプレッサ70は、図6で示すような構造を持つ。一般的なレシプロ方式のコンプレッサは、モーター等の回転機の回転運動をクランクとコンロッドにより、ピストン運動に変換しピストンを上下運動させる。しかし、このコンプレッサ70ではコンロッド76Bとピストン72との間に直動ロッド73と直線運動機構77が設けられており、モーターにより回転軸75とクランク76Aが回転し、コンロッド76Bからスライドシャフト78およびスライドベアリング79で構成される直線運動機構77を経て動力が直動ロッド73へ伝えられ、ピストン72を上下運動させる。したがって、従来のレシプロコンプレッサとは異なり、ピストン72に連結された直動ロッド73が直線運動する。直動ロッド73が直線運動するので従来型のレシプロコンプレッサと異なり、図5で示すように直動ロッド73にもシールが実現可能である。シールは、閉塞プレート74に設置されたピストン側の気密シール86と回転軸側のオイルシール87で構成される。ここで直線運動機構77は、当然ではあるがスライドベアリング79、スライドシャフト78以外の機械要素で構成することも可能である。
【0025】
この改良型のコンプレッサ70はピストンリング85と直動ロッド73の2箇所に気密シールが必要である。特に直動ロッド73はピストン72と比較するとその直径を大幅に小さくすることができるので、直動ロッド73に用いるシールは非常に狭い領域でシールを実現することができる。当然狭い領域でシールが実現されるので高いシール効果が得られるので、結果として非常に高い気密性が実現可能である。
ピストン72が上昇する時に逆止弁82を通過しピストン下部に吸引されたガスは、ピストン72が下降するときにピストン72に開けられたピストン内部の通気孔76と逆止弁80を通過し、ピストン上部に送られる。再度ピストン72が上昇する時にピストン上部に送られたガスが圧縮され逆止弁81を通過し、圧縮ガスとして排気される。
1台のコンプレッサでは圧縮ガスの量が不足する場合は、2台以上のコンプレッサを連結して圧縮ガス流量を増やすことも可能である。
【0026】
このようなコンプレッサ70を組み込むことで、粉体回収率改善型の循環式噴霧乾燥装置が実現される。一般的には循環ガスとして窒素ガスが用いられるが、この粉体回収率改善型の循環式噴霧乾燥装置200では、上記コンプレッサ70を用いることにより窒素の外部流出をほぼなくすことが可能であるのでランニングコストの低減が実現され、さらにこのコンプレッサで作られた圧縮循環ガスを用いてブローダウン方式のサイクロン装置でブローダウン、およびサイクロン本体への還流を実施することによりサイクロン装置での粉体回収率を大幅改善することができる。
【0027】
気体循環装置96には、タービンもしくはプロペラをモーターで回転させるブロワーが用いられる。ただし、一般的なブロワーでは循環ガスの漏れが発生するので、本実施例では図5で示すコンプレッサ70と同構造をもつ気体循環機を使用した。送風量が必要な場合は、2台以上を連結して使用することも可能である。当然ながら本発明を実施するに当たり、気体循環装置96として、タービンもしくはプロペラをモーターで回転させるブロワーや、他の構造の気体循環装置を用いることも当然可能である。
また、循環ガスを循環させる気体循環装置96は循環ガスを循環させることが可能であれば、設置する箇所が特定されるわけではないが、凝縮器94の前後に配置されることが一般的である。本実施例では凝縮器94下流側である凝縮器94とヒーター97の間に配置した。
噴霧乾燥塔90での噴霧手段が加圧ガスを用いるノズル方式で、その噴霧ノズルに圧縮ガスを供するにコンプレッサが上記気密コンプレッサ70を用いて粉体回収率改善型の循環式噴霧乾燥装置を実施することも当然可能である。
この粉体回収率改善型の循環式噴霧乾燥装置は、有機溶媒を原液として製造され付加価値が高い粉体の噴霧乾燥工程、特に医療用のようにバグフィルターで回収した粉体が製品として使用できない粉体を噴霧乾燥により製造する分野では、絶大な効力を発揮する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のサイクロン装置はバグフィルターなどの回収手段を必要とすることなく、制御可能なブローダウンを実現すること、さらにブローダウンの吸引のために生じた高圧ガスを再度サイクロン本体へ還流し、サイクロン本体内部気体の回転速度を加速することにより回収効率を大きく改善するものである。
また、循環式噴霧乾燥装置は、有機溶媒を原液として製造される付加価値が高い粉体の噴霧乾燥工程、特に医療用のようにバグフィルターで回収した粉体が製品として使用できない粉体を噴霧乾燥により製造する分野では、絶大な効力を発揮する。
【符号の説明】
【0029】
10 胴体部
11 サイクロンの天板
15 円錐部
16 吸引口
20 粉体導入管
30 粉体回収容器
31 吸引口
35 止め具
36 下部粉体回収容器
37 ブローダウン管
40 排気管
50 エジェクター
51 圧縮ガス導入口
52 エジェクターの吸引口
53 エジェクターの排気口
55 導入管
60 還流管
70 コンプレッサ
71 シリンダー
72 ピストン
73 直動ロッド
74 閉塞プレート
75 回転軸
76A クランク
76B コンロッド
77 直線運動機構
78 スライドシャフト
79 スライドベアリング
80 逆止弁
81 逆止弁
82 逆止弁
85 ピストンリング
86 ピストン側の気密シール
87 回転軸側のオイルシール
90 噴霧乾燥塔
90A チャンバー
90B 排出口
90C 気体分散板
90D 熱風導入口
91 ノズル
92 ポンプ
93 原料溶液
94 凝縮器
95 冷却ユニット
96 気体循環装置
97 ヒーター
98 循環ガス圧調整ユニット

100 粉体回収用サイクロン装置
100 粉体回収装置
101 サイクロン本体
110 サイクロン装置
200 循環式噴霧乾燥装置
210 従来の循環式噴霧乾燥装置






































【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイクロン本体と、分散粉体を含んだ含粉ガスを前記サイクロン本体に吹き込むために、設けられた粉体導入管と、前記サイクロン本体内のガスを排気するために設けられた排気管と、前記サイクロン本体の下部に設けられた吸引口を有する粉体回収容器と、圧縮ガスにより吸引力を発生するエジェクター(吸引器) を備え、前記エジェクター(吸引器)により前記粉体回収容器の吸引口から粉体混じりのガスを吸引し、吸引された粉体混じりのガスと圧縮ガスを、前記粉体導入管もしくは前記粉体導入管上部のサイクロン本体に還流することを特徴とするサイクロン装置。
【請求項2】

サイクロン本体と、分散粉体を含んだ含粉ガスを前記サイクロン本体に吹き込むために、設けられた粉体導入管と、前記サイクロン本体内のガスを排気するために設けられた排気管と、前記サイクロン本体の下部に設けられた粉体回収容器と、前記粉体導入管より下でかつ前記粉体回収容器よりも上のサイクロン本体に設けられた吸引口と、圧縮ガスにより吸引力を発生するエジェクター(吸引器) を備え、前記エジェクター(吸引器)によりサイクロン本体に設けられた前記吸引口から粉体混じりのガスを吸引し、吸引された粉体混じりのガスと圧縮ガスを、前記粉体導入管もしくは前記粉体導入管上部のサイクロン本体に還流することを特徴とするサイクロン装置。
【請求項3】
前記サイクロン本体に設けられた吸引口が、サイクロン本体の接線方向であることを特徴とする請求項2のサイクロン装置。
【請求項4】
請求項1または2のエジェクターに供給する圧縮ガスが、ピストンをシリンダ内で往復運動させてガスを加圧するコンプレッサで、このコンプレッサは前記ピストンの往復運動方向に伸びてピストンの往復運動方向に直線運動する直動ロッドと、この直動ロッドを往復運動させる往復直線運動機構とを備えてなり、さらに前記シリンダの往復直線運動機構側の開口部は、前記直動ロッドが摺動自在に貫通してなる貫通孔を有する閉塞プレートで閉塞しており、この閉塞プレートは摺動自在に貫通してなる直動ロッドの表面を貫通孔にて密閉するシールを備えていることを特徴とするコンプレッサにより供給されることを特徴とする請求項1、2および3のいずれかのサイクロン装置。
【請求項5】
噴霧乾燥部、粉体回収部を備えてなり、噴霧乾燥部は液体原料を噴霧装置により微粒化し乾燥させる噴霧乾燥装置であって、該粉体回収部が請求項1、2もしくは3のいずれかのサイクロン装置であることを特徴とする噴霧乾燥装置。
【請求項6】
噴霧乾燥部、粉体回収部、凝縮器、およびコンプレッサを備えてなり、液体原料を噴霧装置により微粒化し、乾燥させる循環式噴霧乾燥装置であって、該粉体回収部が請求項1、もしくは2いずれかのサイクロン装置であり、エジェクターに供給する圧縮ガスが該コンプレッサにより供給されることを特徴とする循環式噴霧乾燥装置
【請求項7】
コンプレッサが、ピストンをシリンダ内で往復運動させてガスを加圧するコンプレッサで、このコンプレッサは前記ピストンの往復運動方向に伸びてピストンの往復運動方向に直線運動する直動ロッドと、この直動ロッドを往復運動させる往復直線運動機構とを備えてなり、さらに前記シリンダの往復直線運動機構側の開口部は、前記直動ロッドが摺動自在に貫通してなる貫通孔を有する閉塞プレートで閉塞しており、この閉塞プレートは摺動自在に貫通してなる直動ロッドの表面を貫通孔にて密閉するパッキンを備えていることを特徴とする
請求項6の循環式噴霧乾燥装置。
【請求項8】
請求項5、6および7のいずれかの噴霧乾燥装置もしくは循環式噴霧乾燥装置により噴霧乾燥された粉体を製造することを特徴とする粉体製造方法



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−11290(P2012−11290A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148840(P2010−148840)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(591104295)藤崎電機株式会社 (13)
【Fターム(参考)】