説明

サイトダイバーシティ方法

【課題】サイトの切り換えの際、素早く再同期ができるサイトダイバーシティ方法を提供する。
【解決手段】デジタル衛星放送におけるサイトダイバーシティ方法であって、サイト切り換え実行指示信号を受けたとき実行指示信号を受けた時点にて定まるスーパーフレーム中において最終スロットがダミーデータであるフレームを検出し、検出されたフレームの最終スロットにてサイトの切り換えを行うと共に、検出したフレームの情報をTMCC情報内に含める。この結果、サイトの切り換えが行われるスーパーフレーム中のフレームが特定され、かつ該フレーム中の最終スロットにおいてサイトが切り換えられるために、引き続きフレーム同期パターンW1が存在することになって、該引き続くフレーム同期パターンW1に基づいて同期が取られる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はデジタル衛星放送に使用されるサイトダイバーシティ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】デジタル衛星放送において、運用中の一方のアップリンク放送局周辺が降雨等により回線確保が不可能になることが予想される場合、他のアップリンク放送局による運用に切り換えるサイトダイバーシティが採用される。このサイトダイバーシティにおいて、アップリンク放送局の切り換えによる映像、音声にとぎれが生ずる等の影響を可能な限り最小にすることが望ましい。
【0003】本明細書において、運用中の一方のアップリンク放送局から他のアップリンク放送局による運用に切り換えることをサイトの切り換えと記す。
【0004】そこで、デジタル衛星放送において提案されているサイトダイバーシティ方法は、可能な限り切り換えによる映像、音声にとぎれが生じないようにするべくサイトの切り換えのときにデジタル衛星放送受信機で生ずるフリーズおよびミュートを可能な限り目立たないようにするために、サイトの切り換えをスーパーフレーム内で行うことが提案されている。
【0005】具体的にはTMCC情報中の送受信制御情報中における図3(a)に示す拡張領域(1〜4ビット)を利用して、そのビット4にサイトダイバーシティ実施スーパーフレーム指示のビットを立て(ビット4=1)、ビットが立ってから図3(b)に示すように、N(N=16)スーパーフレーム後のスーパーフレーム内でサイトダイバーシティを実施し、サイトダイバーシティを実施後、M(M=0)スーパーフレームでビット4のビットを下ろす(ビット4=0)ようにされる。
【0006】上記のサイトダイバーシティに対応するべく、デジタル衛星放送受信機の復調部では、図4に示すように、変調方式識別信号(A1、A0)に基づく変調方式に対応してキャリア再生用位相誤差テーブル6から選択されたキャリア再生用位相誤差テーブルによって、検波されたベースバンド信号に対する受信位相誤差に基づく位相誤差電圧を求め、位相誤差電圧をデジタルフィルタからなるキャリアフィルタ7に供給し、キャリアフィルタ7からの出力をAFC回路8に供給して累積加算し、累積加算値により数値制御発振器9の発振周波数を制御し、数値制御発振器9からの出力を再生キャリアとして演算回路1に供給して再生キャリアと演算回路1に入力される準同期検波された信号であるベースバンド信号I、Qと乗算することにより準同期検波出力の復調が行われる。
【0007】演算回路1から出力される検波出力をロールオフフィルタ2で帯域制限し、帯域制限された検波出力からフレーム同期回路3においてフレーム同期パターンW1を検出してTMCC情報を抽出し、抽出したTMCC情報をTMCCデコーダ4に供給してデコードし、抽出されたTMCC情報をサイトダイバーシティ制御回路5に供給して、サイトダイバーシティ制御回路5において前記拡張領域におけるビット4に基づいてサイトダイバーシティの実行指示がなされているか否かを検出する。
【0008】サイトダイバーシティの実行指示がなされていると検出したらサイトダイバーシティ制御回路5において、スーパーフレームを検出する毎にN値のカウントダウンを行い、N値が0、すなわちN=0になるスーパーフレームに達したとき実行指示信号をフレーム同期回路3に供給し、この実行指示信号を受けたフレーム同期回路3では、実行指示信号にしたがいフレーム同期パターンW1が検出されるまで検出を行い、検出されたらフレーム同期パターンW1により再同期を行う。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、提案されている上記したサイトダイバーシティ方法によるときは、スーパーフレーム内のどこかでサイトの切り換えが行われることになって、スーパーフレーム内のどこでサイトの切り換えが行われるかが不明であるという問題点がある。
【0010】また、サイトが切り替わる時点で主局と副局との間における互いのキャリア周波数のずれやクロック位相のずれなどが想定され、さらにフレーム周期のずれ、例えば切り換え前後において5msec程度のずれなどが想定され、このずれにより映像が乱れたり、音声が途絶えたりするという問題点が生ずる。
【0011】またこの方法によるときは、サイトの切り換えはスーパーフレーム内の何処かで切り替わり、この切り替わりの瞬間に、キャリア周波数、クロック位相、フレーム周期等がずれることにより、デジタル衛星放送受信機では一旦システムロックが外れ、再同期を行わなければならない。スーパーフレーム中の何処で切り替わるかは1スーパーフレーム内では不定のため、再同期は少なくとも次のスーパーフレームでシステムロックを行うことになり、これが最短の期間となる。
【0012】したがって、サイトが切り替わる瞬間のスーパーフレーム内のデータは再生をすることはできなくなり、デジタル衛星放送受信機において例えば映像データにエラーが発生し、映像が乱れ、音声が途絶えたりするという問題点が生ずる。
【0013】本発明は、サイトの切り換えの際、素早く再同期ができるサイトダイバーシティ方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明にかかるサイトダイバーシティ方法は、デジタル衛星放送におけるサイトダイバーシティ方法であって、サイト切り換え実行指示信号を受けたとき実行指示信号を受けた時点にて定まるスーパーフレーム中において最終スロットがダミーデータであるフレームを検出し、検出されたフレームの最終スロットにてサイトの切り換えを行うと共に、検出したフレームの情報をTMCC情報内に含めることを特徴とする。
【0015】本発明にかかるサイトダイバーシティ方法によれば、サイト切り換え実行指示信号を受けたとき実行指示信号を受けた時点にて定まるスーパーフレーム中において最終スロットがダミーデータであるフレームが検出され、検出されたフレームの最終スロットにてサイトの切り換えが行われる。
【0016】この結果、サイトの切り換えが行われるスーパーフレーム中のフレームが特定され、かつ該フレーム中の最終スロットにおいてサイトが切り換えられるために、引き続きフレーム同期パターンW1が存在することになって、引き続くフレーム同期パターンW1に基づいて同期が取られる。
【0017】したがって、デジタル衛星放送受信機では、TMCC情報からサイトの切り換えが行われるスーパーフレームの情報と、サイトが切り換えられるフレーム情報とが得られ、得られたフレームの最終スロットの次にフレーム同期パターンW1が存在するので再同期をすることができる。このため、サイトの切り換えが行われるフレームの最終スロットのみが正常に受信できないだけとなって、受信されないスロットはダミーデータであるために、画像の乱れや音声の途切れはない。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明にかかるサイトダイバーシティ方法を実施の形態によって説明する。
【0019】図1は、本発明にかかるサイトダイバーシティ方法が適用されるデジタル衛星放送における1スーパーフレームの構成を示す模式図である。
【0020】1スーパーフレームは図1(a)に示すように8フレームから構成され、各フレームは図1(b)に例示するようにフレーム同期パターンW1、TMCC(伝送多重構成制御)情報、スーパーフレーム中の先頭フレームか否かを識別するためのフレーム識別用同期パターンW2またはW3、主信号、基準バースト信号、主信号、バースト信号、…、主信号、バースト信号から構成されている。
【0021】スーパーフレーム中の先頭フレームにはフレーム識別用同期パターンW2が、2〜8フレームにはフレーム識別用同期パターンW3が使用されている。なお、図1(b)では第2番目のフレームを示している。
【0022】主信号は変調方式トレリスコード(TC)8PSK、QPSKまたはBPSKであり、フレーム同期パターンW1、フレーム識別用同期パターンW2、W3、TMCC情報および基準バースト信号はBPSK変調信号であり、フレーム同期パターンW1、フレーム識別用同期パターンW2、W3は各32シンボル(固定ビットの20シンボルを含む)、TMCC情報は128シンボル、主信号は203シンボル、バーストは4シンボルである。また、1フレームは39936シンボルで構成されている。
【0023】本発明の実施の一形態では、アップリンク放送局を切り換えたい場合、TMCC情報中の送受信制御情報中における図3に示す拡張領域のビット4にビットを立て、拡張領域のビット4にビットが立ったときから、すなわちサイト切り換え実行指示信号を受けたときからスーパーフレームを、例えばN=16の場合16回計数したときのスーパーフレーム中においてサイトの切り換えが行われる。
【0024】このスーパーフレーム中におけるサイトの切り換えは、TS8PSK変調の場合の最終スロットである第48スロット目のスロット、すなわち最終スロットがダミーデータであるフレームをサイトの切り換えが行われるスーパーフレーム中から検出し、最終スロットがダミーデータであると検出されたフレームの最終スロットにおいてサイトの切り換えを行うと共に、TMCC情報中の送受信制御情報中における図3(a)の(xxx)で示す拡張領域のビット3からビット1の3ビットを利用してサイトの切り換えを行ったフレームを指示することによって、TMCC情報中にサイトの切り換えが行われたフレーム情報を含める。
【0025】この場合に、サイトの切り換えを行ったフレームの情報を、TMCC情報中の送受信制御情報中における図3に示す拡張領域のビット3からビット1に代わって、TMCC情報中の拡張情報中の拡張領域における3ビットを用いてTMCC情報中に含めるようにしてもよい。
【0026】一方、階層化伝送における、伝送方式(符号化率)と有効スロット数/伝送スロット数とは図2(a)に示す如くである。ここで、伝送スロットは伝送するための最小スロット数であり、有効スロットは伝送スロットの内情報伝送可能なスロット数を示す。
【0027】図2(a)から明らかなように、例えば、スロット番号1からスロット番号46までがTC8PSK変調信号の伝送に対するものであり、スロット番号47がQPSK(1/2)変調信号の伝送に対するものであるときは図2(b)に示す如くであり、スロット番号1からスロット番号44までがTC8PSK変調信号の伝送に対するものであり、スロット番号45からスロット番号48がBPSK(1/2)変調信号の伝送に対するものであるときは図2(c)に示す如くであり、スロット番号1からスロット番号44までがTC8PSK変調信号の伝送に対するものであり、スロット番号45からスロット番号46およびスロット番号47からスロット番号48がQPSK(1/2)変調信号の伝送に対するものであるときは図2(d)に示す如くである。
【0028】スロット番号1からスロット番号48までがTC8PSK変調信号の場合は最終スロットはスロット番号48であり、図2(b)、図2(c)、図2(d)において、それぞれ最後スロットは図2(b)の場合はスロット番号47であり、図2(c)の場合はスロット番号45であり、図2(d)の場合はスロット番号47である。この最終スロットがダミーデータの場合、すなわち、全てがTC8PSK変調信号の場合はダミーデータであるスロット番号48を含むフレームが検出され、該フレームの最終スロットでサイトの切り換えが行われ、図2(b)の場合はこのスロット番号47を含むフレームが検出され、該フレームの最終スロットでサイトの切り換えが行われ、図2(c)の場合はこのスロット番号45を含むフレームが検出され、該フレームの最終スロットでサイトの切り換えが行われ、図2(d)の場合はこのスロット番号47を含むフレームが検出され、該フレームの最終スロットでサイトの切り換えが行われる。
【0029】このように、最終スロットであるダミースロットにおいてサイトの切り換えが行われるために、次に必ずフレーム同期パターンW1が存在することになる。この結果、サイトの切り換えが行われた最終スロットに続くフレーム同期パターンW1において再同期をすることができる。
【0030】このようにすることで、デジタル衛星放送受信機では、TMCC情報からサイトの切り換えが行われるスーパーフレームの情報と、TMCC情報中の送受信制御情報中の拡張領域におけるフレーム情報、または拡張情報中の拡張領域におけるフレーム情報からサイトが切り換えられるフレームの番号(0〜7)とが取得される。
【0031】このサイトの切り換えが行われるフレーム情報を受けてそのフレームの最終スロットの次に必ずフレーム同期パターンW1が存在するので再同期をすることができる。したがって、サイトの切り換えが行われるフレームの最終スロットのみが正常に受信できないだけとなって、画像の乱れや音声の途切れは最小限に抑えられる。
【0032】なお、ダミーデータは受信機側で正しく復号されなくても、放送内容の復号には影響を与えることはない。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように本発明にかかるサイトダイバーシティ方法によれば、アップリング局の降雨減衰によるサイドダイバーシティ運用を行う場合に、最終スロットがダミーデータであるフレームを検出し、そのフレームの最終スロットでサイトの切り換えを行うようにしたため、デジタル衛星放送受信機において、受信復号データが切換を行うスロットのデータで正常に受信できなくても映像データにエラーが発生することはなく映像が乱れることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態にかかるサイトダイバーシティ方法の説明に供するスーパフレームおよびフレーム構成を示す説明図である。
【図2】デジタル衛星放送における伝送方式とスロットの割付を示す説明図である。
【図3】TMCC情報中の送受信制御信号の説明図である。
【図4】従来のデジタル衛星放送受信機における復調部の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 演算回路
2 ロールオフフィルタ
3 フレーム同期検出回路
4 TMCCデコーダ
5 サイトダイバーシティ制御回路
6 キャリア再生用位相誤差テーブル
7 デジタルフィルタ
8 AFC回路
9 数値制御発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】デジタル衛星放送におけるサイトダイバーシティ方法であって、サイト切り換え実行指示信号を受けたとき実行指示信号を受けた時点にて定まるスーパーフレーム中において最終スロットがダミーデータであるフレームを検出し、検出されたフレームの最終スロットにてサイトの切り換えを行うと共に、検出したフレームの情報をTMCC情報内に含めることを特徴とするサイトダイバーシティ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2001−203613(P2001−203613A)
【公開日】平成13年7月27日(2001.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−9627(P2000−9627)
【出願日】平成12年1月19日(2000.1.19)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】