説明

サイドピンコンタクト

【課題】サイドピンコンタクトにおいて、接触ピンと筐体との接触が十分であるか否かの確認を容易にし、また組み付け時の変形を防止すること。
【解決手段】サイドピンコンタクト1は、底面5をプリント基板のアースパターンに半田付けして表面実装される。プリント基板を筐体に組み付け後に、サイドピンコンタクト1の上に筐体の蓋や他のプリント基板等を組み付けると可動部13(天井面9)が押圧されるので、可動部13がピン突出位置になって棒状部15がコイルスプリング4の付勢力で開口12から突出する。突出した棒状部15が筐体の内面に当たれば接触音が発生する。この接触音の有無に基づけば、接触ピン3と筐体との接触が十分であるか否かの確認を容易に、しかも確実に行える。プリント基板を筐体に組み付けるときには、接触ピン3が収容されているのでこの作業時に接触ピン3が他者との接触で変形するのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドピンコンタクトの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板と、これに垂直な方向に配された導電性材(例えば筐体の内面)とを電気的に導通させるために、導電性材からなるケースと、自身の軸方向に沿って前進、後退可能に前記ケースに収容され、前進端では前記ケースに設けられた開口から先端部を突出させる接触ピンと、前記ケース内に収容されて前記接触ピンを前記前進方向に付勢するスプリングとを備えたサイドピンコンタクトが使用されることがある。
【0003】
このサイドピンコンタクトは、ケースの一部をプリント基板に半田付けされて表面実装され、ケースに設けられた開口から先端部を突出させる接触ピンの先端を、スプリングの付勢力によって筐体の内面に圧接させることで、プリント基板と筐体の内面とを電気的に導通させる。
【特許文献1】特開2004−55243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のサイドピンコンタクトは、接触ピンの先端をスプリングの付勢力によって筐体に圧接させる構成であるため、組み付け時に接触ピンの先端を筐体に当接させたときの手応えが無くて(又はきわめて小さくて)、接触ピンと筐体との接触が十分であるか否かの確認が難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載のサイドピンコンタクトは、
導電性材からなるケースと、
自身の軸方向に沿って前進、後退可能に前記ケースに収容され、前進端では前記ケースに設けられた開口から先端部を突出させる接触ピンと、
前記ケース内に収容されて前記接触ピンを前記前進方向に付勢するスプリングと
を備えたサイドピンコンタクトにおいて、
前記ケースは、
略長方形の底面と、
下端を前記底面に連接されて互いに対面して配置される一対の側壁と、
前記底面の前記側壁が連接された辺とは別の1辺に下端を連接された後壁と、
一端を前記後壁に連接され他端は自由端とされて前記底面に対面して配される天井面と、
前記開口が設けられており、一端を前記天井面の前記他端に連接されるが前記底面及び前記側壁とは連接されず、前記後壁に対面して配される前壁と
からなる箱状で、
前記接触ピンは、
前記開口に挿通可能な外周寸法の棒状部と、
前記開口を通過できない寸法で前記棒状部の後端に連接されたフランジ部とを備えており、
前記後壁、前記天井面及び前記前壁からなるコの字状の可動部は、
前記棒状部を前記開口に挿通させるピン突出位置と、前記天井面の自由端と前記底面との距離を前記ピン突出位置よりも大きくして前記棒状部の先端を前記開口から外れさせて前記前壁の内面に当接させるピン収容位置とに弾性的に変位可能である
ことを特徴とする。
【0006】
請求項1記載のサイドピンコンタクトは、導電性材からなるケースを備えているが、このケースは、底面、一対の側壁、後壁、天井面及び前壁からなる6面構造の箱状である。
底面は略長方形(正確な長方形でもよい)であり、その外面の全部又は一部が、プリント基板への実装時に半田付けされる。
【0007】
一対の側壁は互いに対面して配置され、それぞれの下端を底面に連接される。
後壁は、底面の側壁が連接された辺とは別の1辺に下端を連接されるが、側壁とは連接されない。
【0008】
底面に対面して配される天井面は、一端を後壁に連接され他端は自由端とされる。また、天井面も側壁とは連接されない。
接触ピンを突出させるための開口が設けられて後壁に対面して配される前壁は、一端を天井面の他端(自由端)に連接されるが底面及び側壁とは連接されない。
すなわち、後壁、天井面及び前壁は一連とされており、後壁の下端が底面に連接されるだけであるから、これら三者からなるコの字状の可動部は、後壁の下端を支点として弾性的に変位できる。
【0009】
接触ピンは、開口に挿通可能な外周寸法の棒状部と、開口を通過できない寸法で棒状部の後端に連接されたフランジ部とを備えている。
棒状部は、接触ピンが前進端になれば開口から突出して、接点となる。
【0010】
フランジ部は、底面に接触することで、棒状部と底面との距離(間隔)を規定する。また、棒状部と側壁との距離(間隔)は、フランジ部が一方の側壁に接触する位置とフランジ部が他方の側壁に接触する位置との範囲に規定される。つまり、フランジ部は、自身の軸方向に沿って前進、後退する接触ピン(棒状部)の軌道の軸方向と直交する方向へのずれを規制する。
【0011】
後壁、天井面及び前壁からなる可動部は、後壁の下端を支点として弾性的に変位できる。詳しくは、棒状部を開口に挿通させるピン突出位置と、天井面の自由端と底面との距離をピン突出位置よりも大きくして棒状部の先端を開口から外れさせて前壁の内面に当接させるピン収容位置とに弾性的に変位可能である。
【0012】
可動部をピン収容位置にすれば、棒状部の先端が開口から外れて前壁の内面に当接するので、棒状部は開口から突出できない。つまり、接触ピンは、その全体がケースの中に収まっている。出荷時からプリント基板に半田付けされ、そのプリント基板が筐体に組み付けられるまでは、可動部をピン収容位置にしておく。
【0013】
そして、筐体に組み付けられたプリント基板のサイドピンコンタクトの上に筐体の蓋や他のプリント基板等を組み付けることで可動部(主に天井面)を押圧すると、又は作業者が可動部(主に天井面)を押圧すると、可動部がピン突出位置になって、棒状部がスプリングの付勢力で開口から突出する。このときに棒状部の先端が筐体の内面に当たれば、つまり棒状部が筐体の内面に接触すれば、接触音が発生する。この接触音の有無に基づけば、目視が困難な場合であっても、接触ピンと筐体との接触が十分であるか否かの確認を容易に、しかも確実に行える。
【0014】
なお、請求項2記載のように、前記フランジ部の前記底面からの離脱量を規定する規制片が、前記天井面の一部を切り起こして設けられている構成にすれば、接触ピンがケースの中で過剰にがたつくのを防止できる。
【0015】
また、接触ピンを付勢するためのスプリングの形状、種類に限定はないが、請求項3記載のようにコイルスプリングにして、後壁とフランジ部との間に圧縮状態で配するのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施例等により発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は下記の実施例等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまに実施できることは言うまでもない。
[実施例]
本実施例のサイドピンコンタクト1は、図3に示すケース2、図4に示す接触ピン3及び図5に示すコイルスプリング4にて構成されている。
【0017】
ケース2は、板金をプレス加工して箱状としたもので、全体が導電性である。
図3に示すように、ケース2の底面5は略長方形をなしている。
底面5の長辺には、それぞれ側壁6の下端が連接されている。各側壁6は底面5に対して垂直に立設されており、これら一対の側壁6は互いに対面して平行配置されている。
【0018】
底面5の短辺の一方には後壁7の下端が連接されており、この後壁7も底面5に対して垂直に立設されている。後壁7は上端部7aが相対的に幅広のT字状をなしているが、上端部7aの幅は側壁6同士の間隔よりも小さい。いうまでもないが、後壁7の基部の幅(底面5との連接長さ)は、これが連接された短辺よりも短い。
【0019】
一方、ほぼ長方形状の側壁6それぞれの後上隅からは、ガイド腕部8が延出されている。各ガイド腕部8は、一旦側壁6の延長面に沿って延出されてから、側壁6に対して垂直方向に曲げられている。但し、両ガイド腕部8の曲がり方向は対称であり、互いに先端を相手方に向けている。そのガイド腕部8の先端部8aは、後壁7の背面を抱えるようにして(但し、接触してはいない。)、後壁7に沿って配されている。このため、後壁7が先端部8a側に倒れるように変位した場合、その変位は先端部8aと接触することで規制される。
【0020】
後壁7の上端部7aには、天井面9の一端が連接されている。天井面9は、後壁7との角度が鈍角になっており、後壁7から離れた端側で底面5との間隔が大きくなるように傾斜している。
【0021】
天井面9の中央部を長方形状に切り起こして規制片10が設けられている。この長方形状の規制片10は、一辺が天井面9に連接されているものの、他の3辺は天井面9から切り離されているので、天井面9との連接部を支点として板バネ状に弾性変形できる。
【0022】
天井面9の後壁7から離れた端は自由端であるが、ここには前壁11が連接されている。前壁11は長方形状であり、前壁11の略中央部には円形の開口12が設けられている。前壁11は後壁7に対面して配されているが、天井面9との角度がほぼ直角になっているので、底面5側で後壁7との間隔が大きくなっている。
【0023】
上記のように、後壁7、天井面9及び前壁11は一連となって、コの字状の可動部13を形成しているが、後壁7の基部が底面5に連接されているのみで、これ以外の部分はどこにも連接又は連結されていないので、後壁7の基部を支点として、天井面9及び前壁11の先端を底面5に近づける方向及びこれとは逆方向に弾性的に変位可能である。
【0024】
接触ピン3は金属製で導電性である。図4に示すように、接触ピン3は、円柱状の棒状部15と、棒状部15の後端に連接された円盤状のフランジ部16と、フランジ部16に連接された円柱状の後突起17とを備えている。棒状部15、フランジ部16及び後突起17は同軸である。棒状部15の外周寸法(直径)は前壁11の開口12に挿通可能な寸法である。フランジ部16の直径は開口12よりも十分に大きく、開口12に進入することはできない。後突起17の直径は、フランジ部16よりも小さいが棒状部15よりは大きい。
【0025】
接触ピン3の全長(棒状部15〜後突起17)はケース2の後壁7と前壁11との間隔よりも小さく、フランジ部16の直径は側壁6同士の間隔並びに底面5と規制片10との間隔よりも小さい。従って、接触ピン3をケース2に収容することができる(図1参照)。
【0026】
コイルスプリング4は、図5に示す通り周知の弦巻ばねであるが、本実施例では圧縮状態で使用される。なお、コイルスプリング4は金属製で導電性である。
これらケース2、接触ピン3及びコイルスプリング4にて構成されるサイドピンコンタクト1は、図1に示す通りの構造である。
【0027】
即ち、コイルスプリング4の内側に接触ピン3の後突起17を進入させ、コイルスプリング4をケース2の後壁7とフランジ部16との間に圧縮状態で介装し、棒状部15の先端を開口12から外れさせてコイルスプリング4の付勢力にて前壁11の内面に当接させた状態で、接触ピン3及びコイルスプリング4をケース2に収容してある。この図1に示す可動部13の位置がピン収容位置である。
【0028】
そして、図1に示す状態から、例えば天井面9を底面5に向けて押圧すると、前壁11が底面5側へと下降変位して、図2に示すように可動部13がピン突出位置となる。この変位に伴って開口12が棒状部15の先端に対応した位置になると、コイルスプリング4によって付勢されている接触ピン3の棒状部15が開口12に挿通し、棒状部15の先端側を開口12から突出させる。
【0029】
なお、この接触ピン3の前進はフランジ部16が前壁11の内面に当接する位置を前進限とする。また、接触ピン3が前進して棒状部15を開口12から突出させた後も、棒状部15の先端を押せばコイルスプリング4の付勢力に抗して接触ピン3を後退させることができる。
【0030】
このサイドピンコンタクト1は、可動部13がピン収容位置(図1参照)にあって接触ピン3全体をケース2に収容した状態で、底面5の外面全部又は外面の一部をプリント基板のアースパターンに半田付けすることで、プリント基板に表面実装される。
【0031】
そして、このプリント基板が筐体に組み付けられた後に、プリント基板に実装されているサイドピンコンタクト1の上に筐体の蓋や他のプリント基板等を組み付けることで可動部13(天井面9)を押圧すると、又は作業者が可動部13(天井面9)を押圧すると、可動部13がピン突出位置になって、棒状部15がコイルスプリング4の付勢力で開口12から突出する(図2参照)。
【0032】
この突出した棒状部15の先端が筐体の内面に当たれば、つまり棒状部15が筐体の内面に接触すれば、接触音が発生する。この接触音の有無に基づけば、目視が困難な場合であっても、接触ピン3と筐体との接触が十分であるか否かの確認を容易に、しかも確実に行える。
【0033】
いずれも金属製の接触ピン3、コイルスプリング4及びケース2が相互に接触しているので、棒状部15の先端が筐体の内面に接触すれば、サイドピンコンタクト1を介して筐体とプリント基板(アースパターン)とが電気的に導通する。
【0034】
接触ピン3の前進時には、フランジ部16は、底面5に接触することで、棒状部15と底面5との距離(間隔)を規定する。また、棒状部15と側壁6との距離(間隔)は、フランジ部16が一方の側壁6に接触する位置とフランジ部16が他方の側壁6に接触する位置との範囲に規定される。つまり、フランジ部16は、自身の軸方向に沿って前進、後退する接触ピン3(棒状部15)の軌道の軸方向と直交する方向へのずれを規制する。
【0035】
また、天井面9の一部を切り起こして設けられた規制片10は、これとフランジ部16との接触によって、接触ピン3がケース2の中で過剰にがたつくのを防止する。
図1に示すとおり、可動部をピン収容位置にした状態では、サイドピンコンタクト1は略箱状であり、接触ピン3は外部に突出していないから、この状態で出荷、輸送すれば、輸送中に接触ピン3が他者との接触で変形するのを防止できる。つまり、接触ピン3を収容した状態で輸送するのが好ましい。
【0036】
また、規制片10は底面5に対面して配されており、図1に示す状態では両者は平行(設計上)になっているので、自動実装機の吸着ノズルで規制片10を吸着して自動実装できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例のサイドピンコンタクトで可動部をピン収容位置にした状態の背面図(a)、平面図(b)、左側面図(c)、正面図(d)、右側面図(e)、底面図(f)、A−A断面図(g)、斜視図(h)。
【図2】実施例のサイドピンコンタクトで可動部をピン突出位置にした状態の背面図(a)、平面図(b)、左側面図(c)、正面図(d)、右側面図(e)、底面図(f)、A−A断面図(g)、斜視図(h)。
【図3】実施例のサイドピンコンタクトのケースの背面図(a)、平面図(b)、左側面図(c)、正面図(d)、右側面図(e)、底面図(f)、斜視図(g)。
【図4】実施例のサイドピンコンタクトの接触ピンの平面図(a)、正面図(b)、底面図(c)、斜視図(d)。
【図5】実施例のサイドピンコンタクトのコイルスプリングの平面図(a)、正面図(b)、斜視図(c)。
【符号の説明】
【0038】
1・・・サイドピンコンタクト、
2・・・ケース、
3・・・接触ピン、
4・・・コイルスプリング、
5・・・底面、
6・・・側壁、
7・・・後壁、
9・・・天井面、
10・・・規制片、
11・・・前壁、
12・・・開口、
13・・・可動部、
15・・・棒状部、
16・・・フランジ部、
17・・・後突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材からなるケースと、
自身の軸方向に沿って前進、後退可能に前記ケースに収容され、前進端では前記ケースに設けられた開口から先端部を突出させる接触ピンと、
前記ケース内に収容されて前記接触ピンを前記前進方向に付勢するスプリングと
を備えたサイドピンコンタクトにおいて、
前記ケースは、
略長方形の底面と、
下端を前記底面に連接されて互いに対面して配置される一対の側壁と、
前記底面の前記側壁が連接された辺とは別の1辺に下端を連接された後壁と、
一端を前記後壁に連接され他端は自由端とされて前記底面に対面して配される天井面と、
前記開口が設けられており、一端を前記天井面の前記他端に連接されるが前記底面及び前記側壁とは連接されず、前記後壁に対面して配される前壁と
からなる箱状で、
前記接触ピンは、
前記開口に挿通可能な外周寸法の棒状部と、
前記開口を通過できない寸法で前記棒状部の後端に連接されたフランジ部とを備えており、
前記後壁、前記天井面及び前記前壁からなるコの字状の可動部は、
前記棒状部を前記開口に挿通させるピン突出位置と、前記天井面の自由端と前記底面との距離を前記ピン突出位置よりも大きくして前記棒状部の先端を前記開口から外れさせて前記前壁の内面に当接させるピン収容位置とに弾性的に変位可能である
ことを特徴とするサイドピンコンタクト。
【請求項2】
請求項1記載のサイドピンコンタクトにおいて、
前記フランジ部の前記底面からの離脱量を規定する規制片が、前記天井面の一部を切り起こして設けられている
ことを特徴とするサイドピンコンタクト。
【請求項3】
請求項1又は2記載のサイドピンコンタクトにおいて、
前記スプリングは、前記後壁と前記フランジ部との間に圧縮状態で配されるコイルスプリングである
ことを特徴とするサイドピンコンタクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−110854(P2009−110854A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283305(P2007−283305)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】