説明

サイドミラー固定手段を備えた建設機械

【課題】掘削機の後方視野を確保するサイドミラーを建設機械の構造物に回動可能に固定するボールジョイントの部品をサイドミラーの外側に位置するように装着し、締結ボルトの弛緩又ギャップを確認してメンテナンスするサイドミラー固定手段を備えた建設機械の提供。
【解決手段】サイドミラー固定手段を備えた建設機械は、下部走行体と、旋回可能に搭載される上部フレームと、その前方及び後方に装着される運転室及びエンジン室と、上部フレームに回動可能に連結され、油圧シリンダにより駆動されるブーム、アーム及びバケットからなる作業装置と、上部フレームの後方に装着されるカウンタウェイトと、後方視野を確保するために用いられるサイドミラー14と、それを前方構造物に回動可能に固定するボールジョイント13がサイドミラーの外側に位置するようにサイドミラーをボールジョイントのボール外側面に回動可能に固定する固定手段23,25とを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が掘削機などの後方視野を確保し得るように建設機械の側面に回動可能に取り付けられて用いられるサイドミラーの固定手段を備えた建設機械に関する。
【0002】
詳述すれば、サイドミラーを建設機械の構造物に回動可能に固定支持するボールジョイントのボール及びそれを支持する部品をサイドミラーの外側に位置するようにして装着し、締結ボルトの弛緩又ギャップの発生を目で確認してメンテナンスを容易に行えるようにしたサイドミラー固定手段を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0003】
図1に示したように、従来技術によるサイドミラー固定手段を備えた建設機械は、
下部走行体1と、
下部走行体1の上に旋回可能に搭載される上部フレーム2と、
上部フレーム2の前方及び後方にそれぞれ装着される運転室3及びエンジン室4と、
前記上部フレーム2に回動可能に連結され、それぞれの油圧シリンダ8、9、10により駆動されるブーム5、アーム6及びバケット7からなる作業装置11と、
上部フレーム2の後方に装着され、作業時、機械の均衡を保持するカウンタウェイト12と、
運転者が機械の後方視野を確保し得るように建設機械の前方の構造物(一例で、ミラーステー26をいう)に固定されているボールジョイント13により回動可能に装着されるサイドミラー14とを包含する。
【0004】
従来技術によるサイドミラー固定手段は、流線型のミラー15及びこれを支持するフレーム16と、
ミラー15及びフレーム16の周縁を取り囲んで包み込むリング状のパッキング17と、
サイドミラー14を建設機械構造物に回動可能に固定支持するボールジョイント13と、
フレーム16の内側にボールジョイント13のボール外側面を回動可能に取り囲んで支持する一対のホルダー19と、
ホルダー19をフレーム16に固定する締結ボルト20とを含める。
【0005】
従来技術のサイドミラー固定手段は、前述したサイドミラー14の内側にボールジョイント13のボールが回動可能に組み合わせられているので、締結ボルト20の弛緩又はギャップの発生を目で直接確認することができなかった。つまり、締結ボルト20の締結力(torque、トルク)が弱い場合(締結ボルト20が完全に締め付けられていない状態をいう)、締結ボルト20の頭部とフレーム16の外側面との間に隙間が生じることになる。
【0006】
このため、走行中又は作業中に伝わる衝撃、振動又は応力、サイドミラー14そのものの揺れなどに起因して、サイドミラー14を固定する締結ボルト20が弛緩されて離脱したり、或いはボールジョイント13に対するサイドミラー14の固定部位が容易に破損してしまう虞があった。
【0007】
また、ボールジョイント13のボールを回動可能に支持し得るようにホルダー19を締結ボルト20によりフレーム16に固定する場合、締結ボルト20を締め付けるトルクを増大させると、強度の弱い薄板のフレーム15が壊されて陥没されたり、破損されたりする危険性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施例は、サイドミラーを建設機械構造物に回動可能に固定するためのボールジョイントのボール及びこれを支持する部品をサイドミラーの外側に位置するようにして装着することによって、締結ボルトの弛緩又はギャップの発生を目で確認することができるようにしたサイドミラー固定手段を備えた建設機械に係る。
【0009】
また、本発明の実施例は、サイドミラーを固定する締結部材のトルクを増大させることによって、作業中に伝わる衝撃、振動、応力などによる締結部材の弛緩時にサイドミラーの固定部位が破損することを防止できるようにしたサイドミラー固定手段を備えた建設機械に係る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施例によるサイドミラー固定手段を備えた建設機械は、
下部走行体と、
下部走行体の上に旋回可能に搭載される上部フレームと、
上部フレームの前方及び後方にそれぞれ装着される運転室及びエンジン室と、
上部フレームに回動可能に連結され、それぞれの油圧シリンダにより駆動されるブーム、アーム及びバケットからなる作業装置と、
上部フレームの後方に装着され、作業時、機械の均衡を保持するカウンタウェイトと、
運転者が機械の後方視野を確保し得るように用いられるサイドミラーと、
サイドミラーを機械の前方構造物に回動可能に固定するボールジョイントと、
ボールジョイントのボールがサイドミラーの外側に位置するようにサイドミラーをボールジョイントのボール外側面に回動可能に固定する固定手段とを包含する。
【0011】
望ましい実施例によれば、前述したボールジョイントは、上部フレームに装着のミラーステーに固定されることができる。
【0012】
前述した固定手段は、流線型のミラーを支持するフレームの内側面に装着され、ボールジョイントのボールを支持するように凹溝が形成されている第1プレートと、
第1プレートの内側面に固定される締結ナットと、
第1プレートに対してボールジョイントのボールを加圧支持する第2プレートと、
第1、2プレートによりボールジョイントのボールを回動可能に支持し得るように第1、2プレートを貫通して締結ナットに螺合される締結ボルトとを包含する。
【0013】
前述した固定手段は、締結ボルトの締結力を増大させることができるように、第1、2プレート間に介在して固定されるスペーサをさらに包含することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
前述したように、本発明の実施例によるサイドミラー固定手段を備えた建設機械は、次のよう効果を奏し得る。
サイドミラーを回動可能に固定するボルトジョイントのボール及びこれを支持する部品をサイドミラーの外側に位置するようにして装着し、締結ボルトが弛緩したり、ギャップの発生が生じた場合、目で確認しながらメンテナンスを施すことにより、作業中に伝わる衝撃、振動、応力などによりサイドミラーの固定部位が破損することを防止できる。
【0015】
また、サイドミラーを固定する締結ボルトのトルクを増大するにつれて、建設機械から伝わる衝撃、振動又はサイドミラーそのものの揺れなどにより締結ボルトの弛緩又はギャップが発生することを防止できる。
【0016】
さらに、締結ボルトのトルクを増大させる場合にも、構造的に弱い薄板のフレームが壊されることにより陥没されたり、破損されたりすることが防止できるので、サイドミラー固定手段の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来技術によるサイドミラー固定手段を備えた建設機械の概略図である。
【図2】図1に図示のサイドミラー固定手段の断面図である。
【図3】図1に図示のサイドミラー固定手段の要部抜粋図である。
【図4】本発明の実施例によるサイドミラー固定手段の断面図である。
【図5】図4に示したサイドミラー固定手段の要部抜粋斜視図である。
【図6】図4に示したサイドミラー固定手段の使用状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の望ましい実施例を添付図面に基づいて説明するが、これは、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施し得る程度に詳細に説明するためのものであって、これら実施例に本発明の技術的思想及び範疇が限られることを意味するのではない。
【0019】
図4ないし図6に示したように、本発明の実施例によるサイドミラー固定手段を備えた建設機械は、
下部走行体1と、
下部走行体1の上に旋回可能に搭載される上部フレーム2と、
上部フレーム2の前方及び後方に装着される運転室3及びエンジン室4と、
上部フレーム2に回動可能に連結され、それぞれの油圧シリンダ8、9、10により駆動されるブーム5、アーム6及びバケット7からなる作業装置11と、
上部フレーム2の後方に装着され、作業時、機械の均衡を保持するカウンタウェイト12と、
運転室3内部の運転者が機械の後方視野を確保し得るように用いられるサイドミラー14と、
サイドミラー14を機械の前方構造物に回動可能に固定するボールジョイント13と、
ボールジョイント13のボール(球面体をいう)がサイドミラー14の外側に位置するようにサイドミラー14をボールジョイント13のボール外側面に回動可能に固定する固定手段とを包含する。
【0020】
前述した固定手段は、流線型のミラー15を支持するフレーム16の内側面に装着され、ボールジョイント13のボールを支持するように凹溝21が形成されている第1プレート22と、
第1プレート22の内側面に固定される締結ナット23と、
第1プレート22に対してボールジョイント13のボールを加圧支持する第2プレート24と、
第1、2プレート22、24によりボールジョイント13のボールを回動可能に支持し得るように第1、2プレート22、24を貫通して締結ナット23に螺合されるための締結ボルト25とを含める。
【0021】
図面には示されていないが、前述したボールジョイント13は、上部フレーム2に装着のミラーステー26に固定されることができる。
【0022】
前述した固定手段は、締結ボルト25の締結力を増大させることができるように第1、2プレート22、24間に介在して固定されるスペーサ20をさらに包含することができる。
【0023】
この際、前述したボールジョイント13のボールが、サイドミラー14の外側に位置するようにボールジョイント13のボール外側面にサイドミラー14を回動可能に固定する固定手段の構成を除いては、図1ないし図3に示した構成と実質的に同一に適用されるので、これらに対する詳しい説明は省略し、同じ構成要素には同じ図面符号を付する。
【0024】
以下、本発明の実施例によるサイドミラー固定手段を備えた建設機械の使用例を添付図面に基づいて説明する。
図4及び図5に示したように、掘削機などの上部フレーム2の上に装着されるミラーステー26のブラケット26aにボールジョイント13のボディーが固定される。流線型のサイドミラー14を形成するフレーム16の内側面に第1プレート22が取り付けられる(第1プレート22の直径は、フレーム16に形成の貫通孔の直径より大きく形成される)。この際、第1プレート22の内側面に締結ナット23が予め溶接により固定されている。
【0025】
前述したボールジョイント13のボールを第1プレート22に形成の凹溝21により支持した状態で、第2プレート24によりボールジョイント13のボールを加圧支持する。第1、2プレート22、24を貫通する締結ボルト25を締結ナット23に螺着することによって、ボールジョイント13のボールに対してサイドミラー14を回動可能に支持することができる。
【0026】
この際、第1プレート22の外側面に重なるように設けられているプレート27によりボールジョイント13のボールの回動が円滑になるように支持することができる。
【0027】
したがって、前述した第1、2プレート22、24間に所定長さ(ボールジョイント13のボールの直径によって長さが決定される)を有するスペーサ20を介在して固定することによって、締結ボルト25の締結力(torque)をさらに増大することができる。
【0028】
これにより、作業中又は走行中、建設機械から伝わる衝撃、振動又はサイドミラー14そのものの揺れなどにより締結ボルト25が弛緩することを防止できる。
【0029】
前述した締結ナット23に螺合される締結ボルト25の締結力を増大させる場合にも、構造的に脆弱な薄板のフレーム16に締結ボルト25のトルクが直接的に伝達されにくいので、薄板のフレーム16が壊されて陥没されることを防止できる。
【0030】
前述したボールジョイント13のボールがサイドミラー14のフレーム16の外側面に回動可能に支持されることにより、締結ボルト25の弛緩を使用者が目で確認することが可能である。即ち、振動などにより締結ボルト25が弛緩されたり、又はギャップが生じられたりする場合、目で確認してメンテナンス(締結ボルト25の弛緩有無を確認して再固定する)を施すことによって、作業中に伝わる衝撃、振動、応力などによりサイドミラー14の固定部位が破損することを防止できる。
【符号の説明】
【0031】
13 ボールジョイント(ball joint)
14 サイドミラー(side mirror)
15 ミラー
16 フレーム
17 パッキング
20 スペーサ
21 凹溝
22 第1プレート
23 締結ナット
24 第2プレート
25 締結ボルト
26 ミラーステー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
下部走行体の上に旋回可能に搭載される上部フレームと、
前記上部フレームの前方及び後方に装着される運転室及びエンジン室と、
前記上部フレームに回動可能に連結され、それぞれの油圧シリンダにより駆動されるブーム、アーム及びバケットからなる作業装置と、
前記上部フレームの後方に装着され、作業時、機械の均衡を保持するカウンタウェイトと、
運転者が機械の後方視野を確保し得るように用いられるサイドミラーと、
前記サイドミラーを機械の前方構造物に回動可能に固定するボールジョイントと、
前記ボールジョイントのボールがサイドミラーの外側に位置するようにサイドミラーをボールジョイントのボール外側面に回動可能に固定する固定手段とを包含することを特徴とするサイドミラー固定手段を備えた建設機械。
【請求項2】
前記固定手段は、
流線型のミラーを支持するフレームの内側面に装着され、ボールジョイントのボールを支持するように凹溝が形成されている第1プレートと、
前記第1プレートの内側面に固定されている締結ナットと、
前記第1プレートに対してボールジョイントのボールを加圧支持する第2プレートと、
前記第1、2プレートによりボールジョイントのボールを回動可能に支持し得るように第1、2プレートを貫通して締結ナットに固定される締結ボルトとを含めることを特徴とする請求項1に記載のサイドミラー固定手段を備えた建設機械。
【請求項3】
前記固定手段は、前記締結ボルトの締結力を増大させることができるように前記第1、2プレート間に介在して固定されるスペーサをさらに包含することを特徴とする請求項2に記載のサイドミラー固定手段を備えた建設機械。
【請求項4】
前記ボールジョイントは、前記上部フレームに装着されるミラーステーに固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載のサイドミラー固定手段を備えた建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−166834(P2009−166834A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−979(P2009−979)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(502032378)ボルボ コンストラクション イクイップメント アーベー (156)
【Fターム(参考)】