説明

サスペンション制御装置

【課題】積分誤差のない速度に基づいて緩衝器の制御を行うことができるようにしたサスペンション制御装置を提供する。
【解決手段】GPSセンサ9は、GPS受信機8からのGPS信号を用いて垂直方向速度情報を演算する。コントローラ10の乗り心地制御部12は、GPSセンサ9からの垂直方向速度情報をばね上速度V1として用いることによって、乗り心地制御に基づく制御指令値を出力する。一方、コントローラ10のうねり抑制制御部14は、他のコントローラ16から出力される車両状態信号に基づいて、ピッチを抑制する制御指令値を出力する。指令値切換部15は、GPS受信機8の受信状態に応じて、乗り心地制御部12による制御指令値とうねり抑制制御部14による制御指令値とのうちいずれか一方を選択して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の振動を緩衝するのに好適に用いられるサスペンション制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両には、車体と各車軸との間に減衰力調整式緩衝器が設けられ、制御指令に応じて該緩衝器による減衰力特性を可変に制御する構成としたサスペンション制御装置が搭載されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
この種の従来技術によるサスペンション制御装置では、例えば加速度センサを用いて車体の上,下方向の振動を検出し、この検出した振動等に応じた減衰力を発生させるように緩衝器に対して制御指令を出力するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−83614号公報
【特許文献2】特開2009−83641号公報
【特許文献3】特開2009−262926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来技術によるサスペンション制御装置では、例えば加速度センサから得られる加速度を積分することによって速度を演算し、この速度を用いて緩衝器を制御していた。しかし、この方法で得られた速度は積分が行われるため、累積されたセンサ誤差が積分誤差として加わってしまうという問題がある。また、路面が傾斜している場合には、この傾斜によって加速度自体にオフセット誤差が生じてしまうため、このオフセット誤差をハイパスフィルタによって除去している。しかし、ハイパスフィルタでも全ての誤差を除去することはできないため、積分時に累積誤差になってしまう。さらに、ハイパスフィルタを用いることによって、信号に位相ずれが生じるという問題もある。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、積分誤差のない速度に基づいて緩衝器の制御を行うことができるようにしたサスペンション制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、請求項1に係る発明は、車体に設けられGPS衛星からの信号を受信するGPS受信機と、該GPS受信機からの信号を用いて前記車体の上,下方向の運動状態を算出する車体上下運動算出手段と、該車体上下運動算出手段の運動状態に基づいて減衰力調整式緩衝器を制御する制御手段とを備える構成としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、GPS受信機からの信号を用いて車体の上,下方向の運動状態を算出することができ、積分誤差のない速度に基づいて緩衝器の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるサスペンション制御装置を模式的に示す図である。
【図2】図1中のコントローラを示すブロック図である。
【図3】図1中のコントローラによる制御内容を示す流れ図である。
【図4】図3中の制御演算実行の内容を示す流れ図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態による制御演算実行の内容を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態によるサスペンション装置を、例えば4輪自動車に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0011】
まず、図1ないし図4は本発明の第1の実施の形態を示している。車体1は、車両のボディを構成する。車体1の下側には、例えば左,右の前輪と左,右の後輪(以下、総称して車輪2という)が設けられ、該車輪2はタイヤ3を含んで構成されている。このとき、タイヤ3は、路面の細かい凹凸を吸収するばねとして作用する。
【0012】
サスペンション装置4は、車体1と車輪2との間に介装して設けられる。このサスペンション装置4は、懸架ばね5(以下、ばね5という)と、ばね5と並列になって車体1と車輪2との間に設けられた減衰力調整式緩衝器(以下、緩衝器6という)とにより構成されている。なお、図1中では1組のサスペンション装置4を、車体1と車輪2との間に設けた場合を例示している。しかし、サスペンション装置4は、例えば4輪の車輪2と車体1との間に個別に独立して合計4組設けられるもので、このうちの1組のみを図1では模式的に図示している。
【0013】
ここで、サスペンション装置4の緩衝器6は、減衰力調整式の油圧緩衝器を用いて構成される。そして、この緩衝器6には、発生減衰力の特性(減衰力特性)をハードな特性(硬特性)からソフトな特性(軟特性)に連続的に調整するため、減衰力調整バルブ等からなるアクチュエータ7が付設されている。なお、減衰力調整バルブは、減衰力特性を連続的でなくとも、2段階又は複数段階に調整可能なものであってもよい。
【0014】
GPS受信機8は、車体1に設けられ、GPS(Global Positioning System)衛星からの信号(以下、GPS信号という)を受信する。このGPS受信機8には、車体上下運動算出手段としてのGPSセンサ9が併設されている。このGPSセンサ9は、車体1の上,下方向の運動状態として、GPS受信機8の受信信号に基づいて垂直方向速度情報や高度情報を算出する。このとき、垂直方向速度情報は、GPS受信機8(車体1)の垂直方向の移動速度を示し、例えばGPS信号のドップラー効果を利用して求めることができる。また、高度情報は、車体1の標高を示し、例えば複数のGPS衛星からの信号に基づいてGPS受信機8の3次元位置を決定することによって求めることができる。そして、GPSセンサ9は、垂直方向速度情報や高度情報をサスペンション装置4用のコントローラ10に出力する。さらに、GPSセンサ9は、GPS受信機8がGPS信号を受信可能か否かを判別し、この判別結果に応じた信号もコントローラ10に出力する。
【0015】
コントローラ10は、例えばマイクロコンピュータ等からなり、GPSセンサ9からの垂直方向速度情報に基づいて緩衝器6を制御する制御手段を構成している。このコントローラ10は、その入力側がGPSセンサ9や後述する他のコントローラ16に接続され、出力側が緩衝器6のアクチュエータ7等に接続されている。また、コントローラ10は、ROM、RAM等からなる記憶部10Aを有しており、この記憶部10Aには、図3および図4に示す後述の処理プログラム等が格納されている。
【0016】
ここで、コントローラ10は、図2に示すように、相対速度推定部11、乗り心地制御部12、ピッチレート推定部13、うねり抑制制御部14、指令値切換部15等を備えている。
【0017】
相対速度推定部11は、例えば現代制御理論を適用したカルマンフィルタ(オブザーバ)を含んで構成され、GPSセンサ9から出力される垂直方向速度情報をばね上速度V1として取得し、このばね上速度V1等に基づいて車体1と車輪2との間の上,下方向の相対速度V2を演算する。なお、相対速度V2は、相対速度推定部11にフィードバックされる。
【0018】
乗り心地制御部12は、GPSセンサ9から出力されるばね上速度V1(垂直方向速度情報)と相対速度推定部11から出力される相対速度V2とを用いて、予め定められたスカイフック制御理論に基づいて制御指令としての制御指令値を出力する。
【0019】
具体的には、乗り心地制御部12は、例えばばね上速度V1と目標減衰力Fとの関係を示すスカイフック制御理論によるゲインマップと、目標減衰力F、相対速度V2と制御指令値との関係を示す減衰力マップとを備えている。
【0020】
このため、乗り心地制御部12は、GPSセンサ9から出力される垂直方向速度情報をばね上速度V1として取得し、ゲインマップを用いて、ばね上速度V1から緩衝器6に発生させる目標減衰力Fを算出する。このとき、目標減衰力Fがばね上速度V1に比例して増加または減少するように、ばね上速度V1にゲインを乗算した値を目標減衰力Fとして出力する。
【0021】
目標減衰力Fを算出すると、乗り心地制御部12は、減衰力マップを用いて、目標減衰力Fと相対速度V2とに基づいて、緩衝器6の減衰力特性を可変に制御する例えば電流指令値のような制御指令値を出力する。これにより、緩衝器6の発生減衰力は、アクチュエータ7に供給された制御指令値に従ってハードとソフトとの間で連続的、または複数段で可変に制御(調整)される。
【0022】
ピッチレート推定部13は、後述するコントローラ16から出力される車両状態信号として、例えば車輪速、車速、エンジントルク、ギア位置、ブレーキマスタシリンダ液圧等に基づいて、車両のピッチ運動を推定し、ピッチレートを算出する。
【0023】
うねり抑制制御部14は、ピッチレート推定部13から出力されるピッチレートに基づいて、ピッチを抑えるための制御指令値を演算し、出力する。具体的には、例えば特開2010−83329号公報に記載された加速度センサを用いないシステムを前提とし、このシステムにおいて、車両状態信号から推定したピッチレートに基づいて、ピッチを抑える制御指令値を出力する。
【0024】
指令値切換部15は、例えばGPS受信機8の受信状態に応じて、乗り心地制御部12から出力される制御指令値とうねり抑制制御部14から出力される制御指令値のうち、いずれか一方を選択して、アクチュエータ7に向けて出力する。具体的には、GPS受信機8がGPS信号を受信できるときには、指令値切換部15は、乗り心地制御部12から出力される制御指令値を選択する。一方、GPS受信機8がGPS信号を受信できないときには、指令値切換部15は、うねり抑制制御部14から出力される制御指令値を選択する。
【0025】
他のコントローラ16は、例えば車両の振動制御以外の用途に用いられる各種のセンサに接続され、エンジン、ブレーキ等のサスペンション装置4以外の制御に使用される他の制御手段を構成している。このコントローラ16は、車両状態信号として、例えば車輪速、車速、エンジントルク、ギア位置、ブレーキマスタシリンダ液圧等を出力する。そして、コントローラ16は、CAN(Controller Area Network)等を通じてコントローラ10に接続される。このため、コントローラ10は、CANを通じて車両状態信号を取得する。
【0026】
なお、上述の実施の形態では4輪とも同じ減衰力指令の制御になるが、ピッチレート推定部13のピッチレートと、コントローラ16からロールレートを推定、または検出して求めて乗り心地制御部12に入力することにより、4輪を個々に制御することができる。つまり、GPS受信機8のGPS信号を、例えば特開2009−262926号公報に記載された1個の加速度センサで4輪それぞれの加速度を推定するシステムを前提とし、4輪それぞれの制御指令値を求めることができる。
【0027】
本実施の形態による車両用サスペンション制御装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、コントローラ10を用いて緩衝器6の減衰力特性を可変に制御する処理について説明する。
【0028】
まず、図3に示す制御処理が車両のエンジン始動に伴う電力供給を受けて開始されると、ステップ1でコントローラ10の初期設定を行う。そして、ステップ2では、例えば5〜10ms程度の制御周期に達したか否かを判定し、「NO」と判定する間は制御周期に達するまで待機する。一方、ステップ2で「YES」と判定し、制御周期に達したときには、次なるステップ3に移って前回の制御周期で演算された制御指令値をアクチュエータ7に出力し、緩衝器6のアクチュエータ7を駆動する。その後、ステップ4では、ランプ等のその他のポート出力を行う。
【0029】
次に、ステップ5では、GPSセンサ9からばね上速度V1として垂直方向速度情報を読込むと共に、他のコントローラ16から通信によって入力される車両状態信号としての車速、車輪速等の情報を読込む。そして、次のステップ6では、得られた情報から乗り心地制御の制御演算と、うねり抑制制御の制御演算とを行い、それぞれの制御での制御指令値(電流指令値)を求めると共に、GPS受信機8の受信状態に応じていずれか一方の制御指令値を選択する。
【0030】
そして、ステップ6で選択された制御指令値は、前記ステップ2で「YES」と判定される制御周期に達する度毎に、次なるステップ3の処理で、緩衝器6のアクチュエータ7を駆動制御するために用いられる。これにより、緩衝器6の減衰力特性は、ハードな特性(硬特性)とソフトな特性(軟特性)との間で可変となって連続的に制御されるものである。
【0031】
次に、図4に示す制御演算実行の処理について説明する。この制御演算実行の処理では、ステップ11で、GPS受信機8がGPS信号を受信可能か否かを判定する。そして、ステップ11で「YES」と判定したときには、GPS受信機8がGPS信号を受信できるから、ステップ12に移行して、乗り心地制御部12から出力される制御指令値を選択し、リターンする。
【0032】
一方、ステップ11で「NO」と判定したときには、GPS受信機8がGPS信号を受信できないから、ステップ13に移行して、うねり抑制制御部14から出力される制御指令値を選択し、リターンする。
【0033】
以上のように、本実施の形態によれば、GPSセンサ9はGPS信号を用いて車体1の上,下方向の運動状態として垂直方向速度情報を算出するから、コントローラ10は、この垂直方向速度情報をばね上速度V1として用いることによって、車両の乗り心地を向上させる乗り心地制御を行う。このため、乗り心地制御に用いるばね上速度V1は、従来技術のように加速度の積分によって生成することがなく、GPS信号から直接的に生成することができ、積分誤差がなくなる。
【0034】
さらに、コントローラ10は、GPS受信機8がGPS信号を受信できないときには、他のコントローラ16からの車輪速情報に基づいて緩衝器6を制御する構成とした。このため、例えばトンネル内に車両が進入したときのように、GPS受信機8がGPS信号を受信できず、垂直方向速度情報が得られないときでも、車輪速情報等に基づいてピッチレートを推定し、ピッチを抑制するうねり抑制制御を行うことができる。
【0035】
次に、図5は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、コントローラは、GPS受信機がGPS信号を受信できる場合であっても、他のコントローラによる車速情報とGPS信号に基づいて演算した車速情報との誤差が予め決められた閾値よりも大きいときには、他のコントローラによる車輪速情報に基づいて緩衝器を制御する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0036】
ここで、第2の実施の形態では、GPSセンサ9は、垂直方向速度情報に加えて、GPS信号に基づいて車速情報Vgpsとしての水平方向速度情報も算出する。このとき、水平方向速度情報は、GPS受信機8(車体1)の水平方向の移動速度を示し、例えばGPS信号のドップラー効果を利用して求めることができる。なお、水平方向速度情報は、GPS信号によって求めた水平位置情報を時間微分することによって求めることもできる。
【0037】
次に、図5に示す制御演算実行の処理について説明する。この制御演算実行の処理では、ステップ21で、GPS受信機8がGPS信号を受信可能か否かを判定する。そして、ステップ21で「YES」と判定したときには、GPS受信機8がGPS信号を受信できるから、ステップ22に移行して、コントローラ16による車速情報VconとGPS信号に基づく車速情報Vgpsとの誤差ΔV(ΔV=Vcon−Vgps)を演算し、この誤差ΔVが予め決められた閾値C0よりも小さい(ΔV<C0)か否かを判定する。
【0038】
そして、ステップ22で「YES」と判定したときには、誤差ΔVが閾値C0よりも小さく、車速情報Vgpsが高精度の状態に保持されているから、ステップ23に移行して、乗り心地制御部12から出力される制御指令値を選択し、リターンする。
【0039】
一方、ステップ22で「NO」と判定したときには、誤差ΔVが閾値C0以上となって、車速情報Vgpsの精度が低下しているから、ステップ24に移行して、うねり抑制制御部14から出力される制御指令値を選択し、リターンする。
【0040】
また、ステップ21で「NO」と判定したときには、GPS受信機8がGPS信号を受信できないから、ステップ24に移行して、うねり抑制制御部14から出力される制御指令値を選択し、リターンする。
【0041】
以上のように、本実施の形態によれば、コントローラ16による車速情報VconとGPS信号に基づく車速情報Vgpsとの誤差ΔVが予め決められた閾値C0よりも大きくなるときには、コントローラ16による車輪速情報に基づいて緩衝器6を制御する構成とした。このため、GPS受信機8がGPS信号を受信可能な場合でも、例えばGPS信号の受信状態が劣化して、車速情報Vgpsの精度が低下するときには、コントローラ16による車輪速情報に基づいて緩衝器6を制御することができる。この結果、精度が低下した車速情報Vgpsを用いて緩衝器6を制御することがなく、適切な振動制御を行うことができる。
【0042】
なお、前記各実施の形態では、サスペンション装置4は、所謂セミアクティブダンパと呼ばれる減衰力調整式の油圧緩衝器からなる緩衝器6を備える構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば空圧や油圧のアクティブサスペンションのように、流体を供給または排出して内部の圧力を増減させることによって輪荷重を調整可能な圧力シリンダを用いる構成としてもよい。また、流体を利用するサスペンション装置に限らず、ボールネジ式や電磁式のアクティブサスペンション等にも適用することができる。
【0043】
また、前記各実施の形態では、GPSセンサ9はGPS信号のドップラー効果を利用して垂直方向速度情報を算出するものとしたが、例えば高度情報を時間微分することによって、垂直方向速度情報を算出してもよい。
【0044】
また、前記各実施の形態では、スカイフック制御理論に基づく乗り心地制御部12はGPSセンサ9からのばね上速度V1と相対速度推定部11からの相対速度V2とを用いて制御指令値を算出し、非反転式のサスペンション装置4に適用するものとした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば減衰力反転型(伸び側と縮み側の減衰力の変化の大小が反転している)のショックアブソーバを用いた場合には、相対速度V2のデータは不要である。
【0045】
さらに、前記各実施の形態では、スカイフック理論に基づいてサスペンション装置4の緩衝器6を制御するコントローラ10に適用した場合を例に挙げて説明したが、例えばH∞制御や現代制御理論を用いた制御を行うコントローラに適用する構成としてもよい。
【0046】
次に、前記各実施の形態に含まれる発明について記載する。即ち、本発明によれば、車体に設けられGPS衛星からの信号を受信するGPS受信機と、該GPS受信機からの信号を用いて前記車体の上,下方向の運動状態を算出する車体上下運動算出手段と、該車体上下運動算出手段の運動状態に基づいて減衰力調整式緩衝器を制御する制御手段とを備える構成とした。これにより、車体上下運動算出手段はGPS信号を用いて車体の上,下方向の運動状態として垂直方向速度情報を算出するから、制御手段は、この垂直方向速度情報を用いることによって、減衰力調整式緩衝器を制御することができる。このため、垂直方向速度情報は、従来技術のように加速度の積分によって生成することがなく、GPS信号から直接的に生成することができ、積分誤差がなくなる。
【0047】
また、本発明によれば、車輪の回転速度に応じた車輪速情報を出力する他の制御手段を備え、前記制御手段は、前記GPS受信機がGPS衛星からの信号を受信できないときには、前記他の制御手段からの車輪速情報に基づいて前記減衰力調整式緩衝器を制御する構成とした。このため、GPS受信機がGPS信号を受信できず、垂直方向速度情報が得られないときでも、例えば車輪速情報等に基づいてピッチレートを推定し、ピッチを抑制するうねり抑制制御を行うことができる。
【0048】
また、本発明によれば、前記他の制御手段は、前記車輪速情報に加えて、車両の速度に応じた車速情報を出力し、前記制御手段は、前記GPS受信機がGPS衛星からの信号を受信できる場合であって、前記他の制御手段による車速情報と前記GPS受信機からの信号に基づいて演算した車速情報との誤差が予め決められた閾値よりも大きくなるときには、前記他の制御手段による車輪速情報に基づいて前記減衰力調整式緩衝器を制御する構成とした。このため、GPS受信機がGPS信号を受信可能な場合でも、例えばGPS信号の受信状態が劣化して、GPS信号に基づく車速情報の精度が低下するときには、他の制御手段による車輪速情報に基づいて減衰力調整式緩衝器を制御することができる。この結果、精度が低下したGPS信号に基づく車速情報を用いて減衰力調整式緩衝器を制御することがなく、適切な振動制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0049】
1 車体
2 車輪
4 サスペンション装置
6 減衰力調整式緩衝器
7 アクチュエータ
8 GPS受信機
9 GPSセンサ(車体上下運動算出手段)
10 コントローラ(制御手段)
16 コントローラ(他の制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体と車輪との間に介装され、制御指令に応じて減衰力特性が可変に制御される減衰力調整式緩衝器を備えたサスペンション制御装置において、
前記車体に設けられGPS衛星からの信号を受信するGPS受信機と、該GPS受信機からの信号を用いて前記車体の上,下方向の運動状態を算出する車体上下運動算出手段と、該車体上下運動算出手段の運動状態に基づいて前記減衰力調整式緩衝器を制御する制御手段とを備える構成としたことを特徴とするサスペンション制御装置。
【請求項2】
前記車輪の回転速度に応じた車輪速情報を出力する他の制御手段を備え、
前記制御手段は、前記GPS受信機がGPS衛星からの信号を受信できないときには、前記他の制御手段からの車輪速情報に基づいて前記減衰力調整式緩衝器を制御する構成としてなる請求項1に記載のサスペンション制御装置。
【請求項3】
前記他の制御手段は、前記車輪速情報に加えて、車両の速度に応じた車速情報を出力し、
前記制御手段は、前記GPS受信機がGPS衛星からの信号を受信できる場合であって、前記他の制御手段による車速情報と前記GPS受信機からの信号に基づいて演算した車速情報との誤差が予め決められた閾値よりも大きくなるときには、前記他の制御手段による車輪速情報に基づいて前記減衰力調整式緩衝器を制御する構成としてなる請求項2に記載のサスペンション制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−49394(P2013−49394A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189638(P2011−189638)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】