サンプルを操作するための電極を備えたマイクロ電子デバイス
本発明は、個別にアドレス可能であって電界電極(11)の配列(10)を有するマイクロ電子デバイスに関する。電極電界(11)は、配列(10)上で粒子(2)に対する誘電泳動力を発生させることができる。好ましい実施例で、電界電極(11)は、選択的に、2つの位相反転されている電位(+、−)のうち1つ、又は浮遊電位へ置かれ得る。様々なスペースを取らない回路が記載され、これら回路は最小の部品点数を有して電界電極(11)の動作を実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的に電圧供給へ接続され得る電界電極の配列を有する、サンプルを操作するためのマイクロ電子デバイスに関する。更に、本発明は、このようなマイクロ電子デバイスの使用と、電界電極の上でのサンプルチェンバにおける粒子の操作のための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6942776(B2)号明細書(特許文献1)は、マイクロ流体チェンバの底面側で電極の配列を及び上部側で単一の平面カウンタ電極を備えるマイクロ電子デバイスを開示する。選択的に電極を2つの位相反転されている電極へ接続することによって、電位ケージがサンプルチェンバにおいて生成され得る。このケージ内で、粒子は捕捉され得る。しかし、当該特許文献1は、電界電極を駆動するための如何なる回路についても記載していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6942776(B2)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況に加えて、本発明は、電界電極の配列を有してサンプルを操作する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、請求項1記載のマイクロ電子デバイス、請求項18記載の方法、及び請求項19記載の使用によって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項で開示される。
【0006】
その第1の観点に従って、本発明は、サンプルを操作するマイクロ電子デバイスに関する。ここで、語“操作(manipulation)”は、例えば、サンプルの特徴量の測定、サンプル特性の調査、サンプルの機械的又は化学的な処理等のように、前記サンプルとの如何なる相互作用も表す。通常、サンプルは、例えば、空のキャビティ、又はサンプル物質を吸収することができるジェル等の何らかの物質で満たされたキャビティのような、サンプルチェンバにおいて提供される。ここで、キャビティは、開けられていても、閉じられていても、あるいは、流体接続チャネルによって他のキャビティへ接続されていても良い。マイクロ電子デバイスは、下記の構成要素を有する:
a)第1の電圧供給。この電圧供給は、一般的に、必要とされる電圧、特に正弦波を発生させる発生器と、この電圧を、これを必要とする場所へ分配するラインとを有する。ここ及び以下で、形容詞“第1の(first)”は、好ましい実施例で任意に存在する他の構成要素(“第2(second)”)と1の構成要素を区別するために使用される。従って、形容詞“第1の”は、他の構成要素が存在すべきことを暗示しているわけではない。更に、“第1”及び“第2”の構成要素は、幾つかの場合においては単に論理的に異なっているにすぎず、ハードウェアの同じ要素によって実現され得る。
b)制御回路及びアドレッシング回路を有するコントローラ。このコントローラは、部分的に又は全体的に、マイクロ電子デバイスの他の構成要素により1つの基板上で実現され得、例えば、集積回路及び/又はマイクロコントローラを有することができる。制御回路及びアドレッシング回路は、一般的に、関連する場所(具体的には、以下に記載される電界電極。)にアクセスするために必要とされるラインを有する。
c)電界電極の配列。語“電界(field)”は、如何なる限定も伴わずに、電極が一般的に電界を発生させることを目的とすることのみを示す。留意すべきは、装置は、任意に、前記配列に属する電極に加えて、更なる(電界)電極を有することができる点である。前記配列に属する電極の夫々は:
c1)選択的に前記電界電極を前記第1の電圧供給へ接続する第1の制御可能スイッチ;及び
c2)当該アドレッシングユニットが前記アドレッシング回路によって選択される場合に、前記制御回路が前記第1のスイッチを制御することを可能にする第1のアドレッシングユニット;
に付随する。この点に関して、“スイッチの制御”は、当該スイッチの状態(“閉”又は“開”)が設定され、当該スイッチが別なふうに制御されるまで設定されたままであることを意味する。
【0007】
上記のマイクロ電子デバイスにより、電極動作の如何なる所望の状態(すなわち、前記第1の電圧供給への前記電界電極の接続又は分離。)も、望まれるように前記アドレッシングユニットをアドレッシングして関連する電界電極を制御することによって、前記配列にプログラミングされ得る。この機能を達成するために、当該装置は、制御後に前記第1の電圧供給への所望の接続(切断)を確立し維持する局部的な制御可能スイッチしか有さない。
【0008】
当該マイクロ電子デバイスの好ましい実施例に従って、その電界電極のうち少なくとも1つは、選択的に如何なる電圧供給からも接続を絶たれ得る。従って、浮遊状態で意図的にこの電界電極を動作させることが可能である。このことは、電極が2つの(位相反転されている)電圧供給のうち1つへ必然的に結合されている既知の電極配列(例えば、上記特許文献1に記載される配列。)と比較して、新たなチャンスを提供する。
【0009】
上記実施例の更なる開発において、接続を絶たれている電界電極の領域は、何らかの電圧供給へ(例えば、前記第1の電圧供給へ。)接続されている電界電極によって囲まれて確立され得る。結果として得られる1又はそれ以上の浮遊電極の“島”は、例えば、対向するカウンタ電極を必要とせずに粒子を捕捉することができる電位ケージを生成するために使用され得る。
【0010】
望ましくは、当該マイクロ電子デバイスは第2の電圧供給を有する。各電界電極は、選択的に当該電界電極を前記第2の電圧供給へ接続する第2の制御可能スイッチに付随する。この場合に、2つの電圧のパターンを用いて前記電界電極の配列をプログラミングすることが可能である。更に、前記第1の電圧供給及び前記第2の電圧供給は、特に、位相反転されている交流電圧を供給する。このことは、前記電界電極の配列の上で粒子に対する誘電泳動力を発生させることを可能にする。
【0011】
前記第2の制御可能スイッチは、任意に、第2のアドレッシングユニットへ結合される。この第2のアドレッシングユニットは、対応する電界電極に関連付けられ、当該第2のアドレッシングユニットが前記アドレッシング回路によって選択される場合に、前記制御回路が前記第2の制御可能スイッチを制御することを可能にする。前記第2のスイッチにそれ自身のアドレッシングユニットを設けることは、前記第2のスイッチを前記第1のスイッチから独立して制御することを可能にする。従って、両方のスイッチが同時に開かれ得る。これは、通常、関連する電界電極の浮遊状態を提供する。
【0012】
代替の実施例で、前記第2の制御可能スイッチは、対応する電界電極の前記第1のアドレッシングユニットへ結合される。前記第1のアドレッシングユニットは、当該第1のアドレッシングユニットが前記アドレッシング回路によって選択される場合に、前記制御回路が前記第2の制御可能スイッチを制御することを可能にする。この実施例は、1つのアドレッシングユニットが2つの制御可能スイッチによって共有されるという利点を有する。このことは、ハードウェア部品、ひいてはマイクロチップのスペースを節約する。マイクロチップのスペースは、有利に、より小さい電界電極を形成するために使用され得る。
【0013】
本発明の更なる変形例で、前記第1の制御可能スイッチは第1のコンデンサを有し、及び/又は(存在する場合に)前記第2の制御可能スイッチは第2のコンデンサを有する。これらのコンデンサは、前記制御回路によって提供されるスイッチング状態情報を記憶することができる。これらのコンデンサは、例えば、関連するスイッチの必要とされる状態(“閉”又は“開”)を示す電圧を蓄える、比較的簡単且つ信頼できる手段を提供する。
【0014】
本発明の更なる開発において、前記第1の制御可能スイッチは、前記第1のコンデンサへ自身のゲート接続される第1のトランジスタを有し、及び/又は前記第2の制御可能スイッチは、前記第2のコンデンサへ自身のゲートにより接続される第2のトランジスタを有する。これらのコンデンサに蓄えられている電圧は、関連するトランジスタのゲートへこのようにして印加され、従って、そのトランジスタが導通又は非導通であるかどうかを決定する。
【0015】
上記の実施例で、前記第2のトランジスタのゲートは、任意に、前記第1のトランジスタのゲートに対して反転され得る。その場合に、所与の電位(正又は負)は、夫々、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタの導通状態に対して反対の効果を有しうる。このことは、これらのトランジスタを反対の周期で制御するために1つの単一電位を使用することを可能にする。
【0016】
前記第1及び第2のコンデンサは、任意に、同一である。すなわち、これらのコンデンサは、同じハードウェアによって実現され得る。その場合に、このコンデンサに記憶されている情報は、前記第1及び第2の関連するスイッチの両方のスイッチング状態を決定するために使用される。単一のコンデンサによって提供される電圧が前記第1及び第2のトランジスタの常態及び反転ゲートに対して夫々反対の効果を有するので、このような構成は、有利に、前出の実施例と組み合わされ得る。これは、それらのトランジスタが電界電極を前記第1の電圧供給又は前記第2の電圧供給のいずれか一方へ接続するよう常に反対のスイッチング状態にあることを補償する。
【0017】
前記第1のコンデンサ及び/又は前記第2のコンデンサは、それらの2つの端子のうち1つにより基準電圧へ結合され得る。次いで、他方の端子を前記制御回路へ接続することは、前記制御回路によって供給される電圧と前記基準電圧との間の差により当該コンデンサを充電することを可能にする。
【0018】
代替的に、前記第1のコンデンサは、1つの端子により前記第2の電圧供給へ結合され得、前記第2のコンデンサは、1つの端子により前記第1の電圧供給へ結合され得る。前出の実施例とは対照的に、この場合には基準電圧は必要とされず、ハードウェア部品(ライン等。)及びスペースにおいて対応する節約がもたらされ得る。
【0019】
前記第1及び第2のコンデンサは、任意に、自身の第2の端子により互いへ結合され得る。図面を参照してより詳細に説明されるように、このアプローチは、定義される電位がその場合に、例えば一意的にトランジスタスイッチを駆動することができるコンデンサの第2の端子で提供され得るので、前出の実施例との組み合わせにおいて特に適する。
【0020】
本発明の更なる開発において、当該マイクロ電子デバイスは、少なくとも1つの電界電極に関連するアドレッシングユニットが前記アドレッシング回路によって選択される場合にその電界電極を如何なる電圧供給からも切断することができる少なくとも1つの付加的なスイッチを有する。如何なる電圧供給からも電界電極を切断することは、プログラミング工程の間に寄生電流フローを回避することに寄与する。
【0021】
望ましくは、当該マイクロ電子デバイスの前記コントローラは、粒子が前記電界電極の配列の上でサンプルチェンバにおいて操作され、捕捉され及び/又は動かされ得るように、前記電界電極の配列を駆動するよう構成される。前記コントローラは、例えば、粒子が捕捉され得るところの、前記電界電極の配列上の(移動する)電位ケージを確立することができる。
【0022】
望ましくは、当該マイクロ電子デバイスはCMOSテクノロジ又は大規模エレクトロニクス(LAE)において実現される。特に、LAEは低温ポリシリコン(LTPS)を使用する。前記電界電極及び/又は他の構成要素と接触するためのLAEマトリクスアプローチ、より一層望ましくは、アクティブマトリクスアプローチの使用は、外界への必要とされる入出力接触の数を減らす点で有利である。大規模エレクトロニクス、及び具体的に、例えば薄膜トランジスタ(TFT)を用いるアクティブマトリクス技術は、例えば、LCD、OLED及び電気泳動のような、多数の表示効果の駆動のために、フラットパネルディスプレイの分野で一般的に使用されている。(金属)電界電極は、更に、アクティブマトリクス型電子機器に含まれるバックプレーンの上に堆積され得る。他の実施例で、アクティブマトリクス部品(例えば、TFT、ダイオード。)を形成するために使用される金属層は、また、電界電極層を作るためにも使用される。
【0023】
本発明は、更に、電界電極の配列の上でのサンプルチェンバにおける粒子の操作のための方法に関する。前記電界電極は、正又は負の電位にある電極及び浮遊電位にある電極を有するパターンにおいて駆動される。
【0024】
マイクロ電子デバイスに関連して上述されたように、浮遊電極の設置は、有利に、前記配列へカウンタ電極を用いずとも粒子の捕捉を可能にする新規の電位分布を生成するために使用され得る。
【0025】
本発明は、更に、分子診断学、生体サンプル分析、若しくは化学サンプル分析、食品分析、及び/又は法医学的分析のための、上記のマイクロ電子デバイスの使用に関する。分子診断学は、例えば、直接に又は間接に対象の分子に付着される電磁ビーズ又は蛍光粒子を用いて達成され得る。
【0026】
本発明のこれらの及び他の観点は、以下で記載される実施形態から明らかとなり、それらを参照して説明される。これらの実施形態は、一例として添付の図面を用いて記載される。
【発明の効果】
【0027】
望ましくは、電界電極の簡単で、費用効果が高く且つスペースを取らない駆動が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】底面に電界電極及び上部にカウンタ電極を有するサンプルチェンバの断面図を、電極が誘電泳動力によって粒子を動かすよう正及び負の電位により動作させられる3つの連続した段階について図式的に示す。
【図2】電界電極の2次元配列の上面図を、電極が誘電泳動力によって配列にわたって対角に粒子を動かすよう正及び負の電位により動作させられる3つの連続した段階について図式的に示す。
【図3】粒子が配列にわたって水平に動かされる場合について、図2と同じ状況を示す。
【図4】底面に電界電極の配列を有するサンプルチェンバの断面図を、電極が誘電泳動力によって粒子を動かすよう正、負及び浮遊電位により動作させられる3つの連続した段階について図式的に示す。
【図5】電界電極の2次元配列の上面図を、電極が誘電泳動力によって配列にわたって対角に粒子を動かすよう正、負及び浮遊電位により動作させられる3つの連続した段階について図式的に示す。
【図6】粒子が配列にわたって水平に動かされる場合について、図5と同じ状況を示す。
【図7】本発明に従う電界電極に関連する一般的駆動回路を図示的に示す。
【図8】基準電圧へ接続されているコンデンサを有する駆動回路の第1の具体的な実施形態を示す。
【図9】別々の行アドレスライン及び列アドレスラインが使用される図8の変形例を示す。
【図10】2つのコンデンサが使用され、基準電圧に代えて供給電圧へ結合される図8の変形例を示す。
【図11】付加低なスイッチが制御処理の間に電界電極との接続を切るために使用される図10の変形例を示す。
【図12】2つのコンデンサが関連するトランジスタの独立制御を可能にするために使用される図8の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図中の同じ参照番号は、同一の又は類似する構成要素を表す。
【0030】
ミクロの流体工学は、生体粒子が1つの場所から他の場所への移動を必要とする場合に、ほとんどの生体工学的応用にとって極めて重要である。生体粒子の操作は、例えば、多くのバイオチップ(Lab-On-A-Chip)応用で必要とされる。比較的大きい範囲にわたって多数のセルを個別に制御することができるならば、高速化及び費用削減のための大規模並列動作が可能となる。これは、創薬、プロテオミクス、臨床分析及びポイント・オブ・ケア(POC)応用のような分野において重大な利点を有しうる。
【0031】
多数の生体粒子(例えば、セル及びウィルス及びある生体分子。)が荷電されていない場合に、特定の操作のための標準的な電気泳動技術の使用は、電荷が粒子へ加えられることを必要とする。しかし、これは、しばしば好ましくない。誘電泳動(DEP(dielectrophoretic))力は、一様でないAC電界により、荷電されていない粒子で生じることができ、粒子及びこれを囲む液体の誘電特性に依存して正又は負でありうる。従って、DEP力は、理想的には、検出、分析及び診断のために粒子を移動させ、捕捉し又は回転させる等の生体粒子の操作を必要とするマイクロ流体に適する。更に、DEPで使用されるAC電界は、電気泳動のために印加されるDC電界の副次的な悪影響である電界による望ましくない効果を阻止する傾向がある。従って、荷電した粒子(例えば、DNA。)の場合でさえ、DEPは流体中での特定の移動に関して有利である。
【0032】
図1は、この点に関して、(生体)粒子2を有するサンプルが提供されるマイクロ流体サンプルチェンバ又はチャネル1の断面を、時間tにおける上から下までの3つの連続した時点について示す。個々にアドレス可能な電界電極11の1又は2次元配列10は、サンプルチェンバ1の底部にある基板上に配置されており、一方、サンプルチェンバ1の上部ガラス基板は、導通平面カウンタ電極12により表面を覆われている。
【0033】
電界電極11への様々なAC電位(その位相は+及び−の符号によって示される。)の印加は、サンプルチェンバ1内に電位ケージを作り出すことを可能にする。この電位ケージ内で、粒子2は捕捉され得る。図1に示される3つの連続する段階で表されるように電界電極の駆動パターンを動かすことによって、粒子2は所望の方向で動かされ得る。この移動トラップ方法は、CCDと同様の方法で動作する。粒子2は、電極配列10と、マイナス(−)相により駆動されるカウンタ電極12との間の流体中に保持されている。一番上の絵で、トラップは、基板上の2つの正の相(+)とカウンタ電極12上の負の相との間に形成され、粒子2は負の相の上に捕捉されている。真ん中の絵で、左から3番目の電極は、プラス(+)相からマイナス(−)相へ変更される。次いで、トラップの中心は、2つのマイナス(−)相電極の中間へ移動し、これにより、粒子2はマイナス(−)電極の中間点上へ動かされる。次いで、一番下の絵で、2番目の電極はプラス(+)相となり、粒子2は3番目の電極上の位置へ動かされる。
【0034】
図2及び図3は、対角(図2)及び水平(図3)方向における粒子2の移動がどのように達成され得るかを、連続する時点における電界電極11の2次元配列10に関する上面図で同じように表す。示されるマイクロ電子デバイスの典型的な応用には、バイオチップ、分子診断学、迅速な疾患検出、及び抗生物質に対する菌耐性の迅速評価がある。
【0035】
図1乃至3に示される実施形態は上部のカウンタ電極12を必要とするが、このような上部電極を用いずにトラップ移動を実施することも可能である(しかし、ガラス製のカバー板が尚望ましい。)。この実施形態は、電極配列10の同様の断面図(図4)及び上面図(図5、図6)で図4乃至6において示されている。この方法では、3通りの電界電極11の状態がある。すなわち、プラス(+)相、マイナス(−)相、及び高インピーダンス又は浮遊状態(Z)である。移動トラップ方式は、例えば、図4の一番上の絵で始まる。この状態で、粒子2は、両側のプラス(+)及びマイナス(−)相によってZ電極上で捕捉されている。真ん中の絵で、3番目の電極はZ状態となり、粒子2は2つのZ電極の中間点へ移動する。一番下の絵で、2番目の電極はプラス(+)状態となり、粒子2は3番目の電極上へ動かされる。
【0036】
図5及び図6は、電極11の2次元配列10、及び粒子の移動を対角線上に又は水平線上に可能にする相を同じように示す。
【0037】
以下では、上記実施形態で使用される電界電極を動作させる適切な駆動回路が、誘電泳動(DEP)力の原理により近い視点から続けて、より詳細に検討される。
【0038】
DEP力は、電極がDEP力を発生させる非線形な電界を引き起こす電極間隔に対する粒子寸法の三乗の比(cubed ration)として定まる。従って、一電圧で、粒子は、例えば、ブラウン運動による力よりも大きい支配的な力を提供するよう駆動電極間隔と同様のサイズを有するべきである。より高い電圧では、間隔はより大きくなり得るが、電極間隔を可能な最小値に減らすためのあらゆる努力が依然として払われるべきである(L.Zheng、S.Ki、P.J.Burke、J.P.Brody:“Towards single molecule manipulation with dielectrophoresis using nanoelectrodes”,Proceedings of the 3rd IEEE conference on Nanotechnology,1,437頁(2003年)参照)。分析及び診断のために粒子の大規模並列移動及び捕捉を提供するためには、密な配列は最も有効な解決法である。
【0039】
4つの電極は、それらが四極子として駆動される場合に、すなわち、対向する電極は同じAC相を有し且つ隣り合う電極は異なるAC相を有する場合に、粒子を捕捉することができる。図7は、4つの電極11に関して一例としてこのことを示す。図中、+及び−の符号は、電極へ印加されるAC電界の位相を示す。配列10全体は、通常、そのような電極11の多数から成り、トラップは、正確な位相が適用される場合に、いずれかの4つの電極の交点で発生することができる。いずれかの所望の場所でトラップを生成するよう、配列10の各電極11を個別にアドレッシングすることが可能でなければならない。これにより、どのAC相が電極へ適用されるかを選択することが可能である。
【0040】
上述されるように、トラップされるよう望まれる粒子のサイズは、電極間隔と深く関係している。従って、電極11を駆動するために必要とされる電子機器を適合させるために、電極11の下で利用可能な領域は最も有効に使用されるべきである。すなわち、電極11の下の電子機器は、電極電界の最小サイズ、ひいては、捕捉され得る粒子の最小サイズを制限する。大きい粒子に関しては、配列は大きくなり、更に、利用可能な最も安価な技術を使用し、各電極の下にある電子機器の量をその最小値まで小さくすることによって、これを行って、この技術をその限界に至らせることが可能である。これにより、より細かい分解能及びより高価な技術を取り入れる必要性が生ずる前に、可能な最も小さい粒子が捕捉され得る。例えば、低温ポリシリコン(LTPS)のような大規模エレクトロニクス(LAE(Large Area Electronics))技術は、液晶シリコンCMOSと比較される場合に、低コストで大きいガラス領域上でかかる方法を実施するために使用され得る。
【0041】
以下では、簡単な回路解決法が、DEPトラップ配列の電極を駆動するために提案される。これは、密な配列で最も小さい可能なサイズへの電極の縮小を実現し、シリコンに基づく全ての技術を通して費用効果の高い解決法を可能にする。
【0042】
図7は、本発明に従う駆動回路の基本レイアウトを図式的に示す。関連するマイクロ電子デバイスは電極電界の配列10を有する。電極電界のうち先に記載された(四極子として駆動される)4つの電極11が図中には表されている。駆動回路は、より詳細に、これらの電極11のうち1つについて示されている。駆動回路は、電界電極11を第1の電圧供給VAへ接続し又はこれとの接続を切ることができる第1の制御可能スイッチCSW1を有する。この第1のスイッチCSW1のスイッチング状態は、コントローラCONに含まれ且つ配列10の外側に配置されている制御回路COCによって制御される。制御可能スイッチCSW1へのこの制御回路COCのアクセスは、外部のアドレッシング回路ADCによってアドレッシング(選択)され得る局部アドレッシングユニットADU1によって制御される。外部アドレッシング回路ADCは、コントローラCONの第2のモジュールである。ここまで記載された駆動回路により、電界電極11の2つの状態が実現され得る。すなわち、電界電極は供給電圧VA又は浮遊状態を有する。
【0043】
破線によって示されるように、望ましくは、駆動回路は、電界電極11を第2の電圧供給VBへ接続することを可能にする第2の制御可能スイッチCSW2を更に有する。第2のスイッチCSW2は、アドレッシング回路ADCによって選択され得る第2のアドレッシングユニットADU2の制御下で制御回路COCによって制御され得る。以下で明らかになるように、第1及び第2のアドレッシングユニットADU1、ADU2は、任意に同一であっても良い。スイッチCSW1、CSW2及びアドレッシングユニットADU1、ADU2は、通常、電極11の下に配置される。
【0044】
ここで、図7の一般的なレイアウトの幾つかの具体的な実施例について、図8乃至12を参照して、より詳細に記載する。
【0045】
図8は、例えば、誘電泳動配列において電界電極11を駆動するための回路の第1の実施例を示す。電界電極11は、第1の薄膜トランジスタ(TFT)T1を介して第1の電圧供給VAへ及び第2のTFTT2を介して第2の電圧供給VBへ接続されている。電位VA及びVBは、例えば、所与の周波数のAC正弦波であり、位相反転されている。すなわち、それらは、それらの間にπの位相差を有する。電極11は、更に、負荷Lへ接続されるよう示されている。この負荷Lは、電極11とそれに最も近い隣接電極との間の流体及び粒子のインピーダンスであり、負荷Lの第2の接続は、最も近い隣接電極を表している。
【0046】
VDATAラインは、アドレッシング電圧VADDRによって制御されるアドレッシングトランジスタT3を介して、記憶のためにコンデンサCへデジタルデータを伝える。ハイ(High)値は、N型TFTT2を選択し、AC電圧VBを電極11及び負荷Lへ供給する。一方、ロー(Low)値は、P型TFTT1をオンし、AC電圧VAを電極11及び負荷Lへ供給する。従って、電極11の配列は、0(+)相又はπ(−)相のAC電圧を電極11及び負荷Lへ供給するよう個別にプログラミングされ得る。すなわち、DEPトラップは、電極の配列内の如何なる所望の場所でも発生するようプログラミングされ得る。
【0047】
電極11の配列は、行アドレス電圧VADDRを使用することによってライン毎にアドレッシングされ得る。アドレッシング相は短時間である(例えば、全ての行は1ミリ秒未満でアドレッシングされる。)。この時間期間にわたって、粒子はアドレッシング相の乱れにほとんど気がつかない。次いで、より長い期間の駆動相が存在する。
【0048】
若干より複雑な場合が図9に表されている。図9は、ランダムアクセスアドレッシングを示す。電圧VADDR ROW及びVADDR COLは、この場合に、個々の電極11を新しいデータによりアドレッシングされるよう選択する。
【0049】
最小の粒子のDEP捕捉を可能にするためのより一層簡単な回路を提供するために、図10に示される回路は、前出の実施例でコンデンサCが結合されていた基準電圧VREFを削除する。回路は、AC電界が停止され、例えば、VAが5Vになり且つVBが−5Vになるアドレス相を有して動作する。次いで、デジタルデータはノードnへ適用される。例えば、V=±5Vである。全てのトラップをアドレッシングした後、AC電界が開始される。C1=C2である場合に、電圧Vは保持され、次いで、選択されるAC相が負荷Lへ伝わる。
【0050】
電圧Vは、コンデンサC1、C2での電荷再分配が2つの逆位相の正弦波により相殺するので、前出の場合において保持される。C1=C2である場合に、ノードnでの電荷保持は、下記に従って初期電圧Vを新しい電圧V´にする。
【0051】
電圧VAはDCであり、VA´は付随するAC電圧である。VB及びVB´についても同様である。
【0052】
ここで、電圧VMは中点電圧、例えば0ボルトであり、VRは振幅である。これより、C1=C2である場合は、従って、電圧Vはノードで保持される。
【0053】
C1及びC2についてN及びP駆動TFTT1、T2のTFT寄生容量を使用することが可能であるから、C1及びC2のサイズは原理上はゼロでありうる。しかし、アドレッシングTFTT3の寄生容量は非対称性を引き起こし、故に、実際には、C1及びC2は完全にこの容量よりもわずかに大きいことが必要である。たとえそうであったとしても、これらのコンデンサは、AC相を供給するために使用される電極の下に隠され、従って、面積消費に関して無視され得る。このことは、図10の回路を図9の回路よりもコンパクトなものとする。
【0054】
考慮され得る更なる事項は、配列において負荷が全て連結され、これにより、アドレッシングされているラインとアドレッシングされないラインとの間に電流フローが生ずることである。良い参照を提供するよう、電力供給ラインは過度に電圧を下げるべきではない。従って、回路への簡単な追加は、図11に示されるアドレッシング時点で電流フローをオフする余分のスイッチT5である。
【0055】
図4乃至6に示される浮遊電極を用いる実施例を実現するために、3つの状態を有する電極が必要とされる。関連する駆動回路の可能な実施が図12に示されている。3つの状態を発生させるよう、2つの記憶コンデンサC1及びC2が設けられ、AC相を選択するTFTT1及びT2が個別に駆動されることを可能にする。従って、VAが選択され得、あるいはVBが選択され得、あるいはZ状態を与えるよういずれも選択されない(また、選択されるVA及びVBの両方について望まれていない状態が存在する。)。回路は、データが単一のデータラインから入来し、故に、VADDR1及びVADDR2パルスは夫々、TFTT3及びT6で次々に発生する必要があることを示す。また、両方のコンデンサが同時にアドレッシングされ得るように2つのデータライン及び単一のアドレスラインを有することも可能である。更に、図9に示される回路と同様に追加のアドレッシングTFTによってこれをランダムアクセスに更に拡張することが可能である。
【0056】
最後に、本願において、語“有する(comprising)”は他の構成要素又は肯定を排除するものではなく、要素の前に付された“1(又は1つ)の”という語は複数個を排除するものではなく、更に、単一のプロセッサ又は他のユニットは幾つかの手段の機能を満足することができる点に注意されたし。本発明は、ありとあらゆる新規の特徴的な事項及びこれらのありとあらゆる組み合わせにある。更に、特許請求の範囲における参照符号は、その適用範囲を限定するよう解釈されるべきではない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的に電圧供給へ接続され得る電界電極の配列を有する、サンプルを操作するためのマイクロ電子デバイスに関する。更に、本発明は、このようなマイクロ電子デバイスの使用と、電界電極の上でのサンプルチェンバにおける粒子の操作のための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6942776(B2)号明細書(特許文献1)は、マイクロ流体チェンバの底面側で電極の配列を及び上部側で単一の平面カウンタ電極を備えるマイクロ電子デバイスを開示する。選択的に電極を2つの位相反転されている電極へ接続することによって、電位ケージがサンプルチェンバにおいて生成され得る。このケージ内で、粒子は捕捉され得る。しかし、当該特許文献1は、電界電極を駆動するための如何なる回路についても記載していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6942776(B2)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況に加えて、本発明は、電界電極の配列を有してサンプルを操作する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、請求項1記載のマイクロ電子デバイス、請求項18記載の方法、及び請求項19記載の使用によって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項で開示される。
【0006】
その第1の観点に従って、本発明は、サンプルを操作するマイクロ電子デバイスに関する。ここで、語“操作(manipulation)”は、例えば、サンプルの特徴量の測定、サンプル特性の調査、サンプルの機械的又は化学的な処理等のように、前記サンプルとの如何なる相互作用も表す。通常、サンプルは、例えば、空のキャビティ、又はサンプル物質を吸収することができるジェル等の何らかの物質で満たされたキャビティのような、サンプルチェンバにおいて提供される。ここで、キャビティは、開けられていても、閉じられていても、あるいは、流体接続チャネルによって他のキャビティへ接続されていても良い。マイクロ電子デバイスは、下記の構成要素を有する:
a)第1の電圧供給。この電圧供給は、一般的に、必要とされる電圧、特に正弦波を発生させる発生器と、この電圧を、これを必要とする場所へ分配するラインとを有する。ここ及び以下で、形容詞“第1の(first)”は、好ましい実施例で任意に存在する他の構成要素(“第2(second)”)と1の構成要素を区別するために使用される。従って、形容詞“第1の”は、他の構成要素が存在すべきことを暗示しているわけではない。更に、“第1”及び“第2”の構成要素は、幾つかの場合においては単に論理的に異なっているにすぎず、ハードウェアの同じ要素によって実現され得る。
b)制御回路及びアドレッシング回路を有するコントローラ。このコントローラは、部分的に又は全体的に、マイクロ電子デバイスの他の構成要素により1つの基板上で実現され得、例えば、集積回路及び/又はマイクロコントローラを有することができる。制御回路及びアドレッシング回路は、一般的に、関連する場所(具体的には、以下に記載される電界電極。)にアクセスするために必要とされるラインを有する。
c)電界電極の配列。語“電界(field)”は、如何なる限定も伴わずに、電極が一般的に電界を発生させることを目的とすることのみを示す。留意すべきは、装置は、任意に、前記配列に属する電極に加えて、更なる(電界)電極を有することができる点である。前記配列に属する電極の夫々は:
c1)選択的に前記電界電極を前記第1の電圧供給へ接続する第1の制御可能スイッチ;及び
c2)当該アドレッシングユニットが前記アドレッシング回路によって選択される場合に、前記制御回路が前記第1のスイッチを制御することを可能にする第1のアドレッシングユニット;
に付随する。この点に関して、“スイッチの制御”は、当該スイッチの状態(“閉”又は“開”)が設定され、当該スイッチが別なふうに制御されるまで設定されたままであることを意味する。
【0007】
上記のマイクロ電子デバイスにより、電極動作の如何なる所望の状態(すなわち、前記第1の電圧供給への前記電界電極の接続又は分離。)も、望まれるように前記アドレッシングユニットをアドレッシングして関連する電界電極を制御することによって、前記配列にプログラミングされ得る。この機能を達成するために、当該装置は、制御後に前記第1の電圧供給への所望の接続(切断)を確立し維持する局部的な制御可能スイッチしか有さない。
【0008】
当該マイクロ電子デバイスの好ましい実施例に従って、その電界電極のうち少なくとも1つは、選択的に如何なる電圧供給からも接続を絶たれ得る。従って、浮遊状態で意図的にこの電界電極を動作させることが可能である。このことは、電極が2つの(位相反転されている)電圧供給のうち1つへ必然的に結合されている既知の電極配列(例えば、上記特許文献1に記載される配列。)と比較して、新たなチャンスを提供する。
【0009】
上記実施例の更なる開発において、接続を絶たれている電界電極の領域は、何らかの電圧供給へ(例えば、前記第1の電圧供給へ。)接続されている電界電極によって囲まれて確立され得る。結果として得られる1又はそれ以上の浮遊電極の“島”は、例えば、対向するカウンタ電極を必要とせずに粒子を捕捉することができる電位ケージを生成するために使用され得る。
【0010】
望ましくは、当該マイクロ電子デバイスは第2の電圧供給を有する。各電界電極は、選択的に当該電界電極を前記第2の電圧供給へ接続する第2の制御可能スイッチに付随する。この場合に、2つの電圧のパターンを用いて前記電界電極の配列をプログラミングすることが可能である。更に、前記第1の電圧供給及び前記第2の電圧供給は、特に、位相反転されている交流電圧を供給する。このことは、前記電界電極の配列の上で粒子に対する誘電泳動力を発生させることを可能にする。
【0011】
前記第2の制御可能スイッチは、任意に、第2のアドレッシングユニットへ結合される。この第2のアドレッシングユニットは、対応する電界電極に関連付けられ、当該第2のアドレッシングユニットが前記アドレッシング回路によって選択される場合に、前記制御回路が前記第2の制御可能スイッチを制御することを可能にする。前記第2のスイッチにそれ自身のアドレッシングユニットを設けることは、前記第2のスイッチを前記第1のスイッチから独立して制御することを可能にする。従って、両方のスイッチが同時に開かれ得る。これは、通常、関連する電界電極の浮遊状態を提供する。
【0012】
代替の実施例で、前記第2の制御可能スイッチは、対応する電界電極の前記第1のアドレッシングユニットへ結合される。前記第1のアドレッシングユニットは、当該第1のアドレッシングユニットが前記アドレッシング回路によって選択される場合に、前記制御回路が前記第2の制御可能スイッチを制御することを可能にする。この実施例は、1つのアドレッシングユニットが2つの制御可能スイッチによって共有されるという利点を有する。このことは、ハードウェア部品、ひいてはマイクロチップのスペースを節約する。マイクロチップのスペースは、有利に、より小さい電界電極を形成するために使用され得る。
【0013】
本発明の更なる変形例で、前記第1の制御可能スイッチは第1のコンデンサを有し、及び/又は(存在する場合に)前記第2の制御可能スイッチは第2のコンデンサを有する。これらのコンデンサは、前記制御回路によって提供されるスイッチング状態情報を記憶することができる。これらのコンデンサは、例えば、関連するスイッチの必要とされる状態(“閉”又は“開”)を示す電圧を蓄える、比較的簡単且つ信頼できる手段を提供する。
【0014】
本発明の更なる開発において、前記第1の制御可能スイッチは、前記第1のコンデンサへ自身のゲート接続される第1のトランジスタを有し、及び/又は前記第2の制御可能スイッチは、前記第2のコンデンサへ自身のゲートにより接続される第2のトランジスタを有する。これらのコンデンサに蓄えられている電圧は、関連するトランジスタのゲートへこのようにして印加され、従って、そのトランジスタが導通又は非導通であるかどうかを決定する。
【0015】
上記の実施例で、前記第2のトランジスタのゲートは、任意に、前記第1のトランジスタのゲートに対して反転され得る。その場合に、所与の電位(正又は負)は、夫々、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタの導通状態に対して反対の効果を有しうる。このことは、これらのトランジスタを反対の周期で制御するために1つの単一電位を使用することを可能にする。
【0016】
前記第1及び第2のコンデンサは、任意に、同一である。すなわち、これらのコンデンサは、同じハードウェアによって実現され得る。その場合に、このコンデンサに記憶されている情報は、前記第1及び第2の関連するスイッチの両方のスイッチング状態を決定するために使用される。単一のコンデンサによって提供される電圧が前記第1及び第2のトランジスタの常態及び反転ゲートに対して夫々反対の効果を有するので、このような構成は、有利に、前出の実施例と組み合わされ得る。これは、それらのトランジスタが電界電極を前記第1の電圧供給又は前記第2の電圧供給のいずれか一方へ接続するよう常に反対のスイッチング状態にあることを補償する。
【0017】
前記第1のコンデンサ及び/又は前記第2のコンデンサは、それらの2つの端子のうち1つにより基準電圧へ結合され得る。次いで、他方の端子を前記制御回路へ接続することは、前記制御回路によって供給される電圧と前記基準電圧との間の差により当該コンデンサを充電することを可能にする。
【0018】
代替的に、前記第1のコンデンサは、1つの端子により前記第2の電圧供給へ結合され得、前記第2のコンデンサは、1つの端子により前記第1の電圧供給へ結合され得る。前出の実施例とは対照的に、この場合には基準電圧は必要とされず、ハードウェア部品(ライン等。)及びスペースにおいて対応する節約がもたらされ得る。
【0019】
前記第1及び第2のコンデンサは、任意に、自身の第2の端子により互いへ結合され得る。図面を参照してより詳細に説明されるように、このアプローチは、定義される電位がその場合に、例えば一意的にトランジスタスイッチを駆動することができるコンデンサの第2の端子で提供され得るので、前出の実施例との組み合わせにおいて特に適する。
【0020】
本発明の更なる開発において、当該マイクロ電子デバイスは、少なくとも1つの電界電極に関連するアドレッシングユニットが前記アドレッシング回路によって選択される場合にその電界電極を如何なる電圧供給からも切断することができる少なくとも1つの付加的なスイッチを有する。如何なる電圧供給からも電界電極を切断することは、プログラミング工程の間に寄生電流フローを回避することに寄与する。
【0021】
望ましくは、当該マイクロ電子デバイスの前記コントローラは、粒子が前記電界電極の配列の上でサンプルチェンバにおいて操作され、捕捉され及び/又は動かされ得るように、前記電界電極の配列を駆動するよう構成される。前記コントローラは、例えば、粒子が捕捉され得るところの、前記電界電極の配列上の(移動する)電位ケージを確立することができる。
【0022】
望ましくは、当該マイクロ電子デバイスはCMOSテクノロジ又は大規模エレクトロニクス(LAE)において実現される。特に、LAEは低温ポリシリコン(LTPS)を使用する。前記電界電極及び/又は他の構成要素と接触するためのLAEマトリクスアプローチ、より一層望ましくは、アクティブマトリクスアプローチの使用は、外界への必要とされる入出力接触の数を減らす点で有利である。大規模エレクトロニクス、及び具体的に、例えば薄膜トランジスタ(TFT)を用いるアクティブマトリクス技術は、例えば、LCD、OLED及び電気泳動のような、多数の表示効果の駆動のために、フラットパネルディスプレイの分野で一般的に使用されている。(金属)電界電極は、更に、アクティブマトリクス型電子機器に含まれるバックプレーンの上に堆積され得る。他の実施例で、アクティブマトリクス部品(例えば、TFT、ダイオード。)を形成するために使用される金属層は、また、電界電極層を作るためにも使用される。
【0023】
本発明は、更に、電界電極の配列の上でのサンプルチェンバにおける粒子の操作のための方法に関する。前記電界電極は、正又は負の電位にある電極及び浮遊電位にある電極を有するパターンにおいて駆動される。
【0024】
マイクロ電子デバイスに関連して上述されたように、浮遊電極の設置は、有利に、前記配列へカウンタ電極を用いずとも粒子の捕捉を可能にする新規の電位分布を生成するために使用され得る。
【0025】
本発明は、更に、分子診断学、生体サンプル分析、若しくは化学サンプル分析、食品分析、及び/又は法医学的分析のための、上記のマイクロ電子デバイスの使用に関する。分子診断学は、例えば、直接に又は間接に対象の分子に付着される電磁ビーズ又は蛍光粒子を用いて達成され得る。
【0026】
本発明のこれらの及び他の観点は、以下で記載される実施形態から明らかとなり、それらを参照して説明される。これらの実施形態は、一例として添付の図面を用いて記載される。
【発明の効果】
【0027】
望ましくは、電界電極の簡単で、費用効果が高く且つスペースを取らない駆動が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】底面に電界電極及び上部にカウンタ電極を有するサンプルチェンバの断面図を、電極が誘電泳動力によって粒子を動かすよう正及び負の電位により動作させられる3つの連続した段階について図式的に示す。
【図2】電界電極の2次元配列の上面図を、電極が誘電泳動力によって配列にわたって対角に粒子を動かすよう正及び負の電位により動作させられる3つの連続した段階について図式的に示す。
【図3】粒子が配列にわたって水平に動かされる場合について、図2と同じ状況を示す。
【図4】底面に電界電極の配列を有するサンプルチェンバの断面図を、電極が誘電泳動力によって粒子を動かすよう正、負及び浮遊電位により動作させられる3つの連続した段階について図式的に示す。
【図5】電界電極の2次元配列の上面図を、電極が誘電泳動力によって配列にわたって対角に粒子を動かすよう正、負及び浮遊電位により動作させられる3つの連続した段階について図式的に示す。
【図6】粒子が配列にわたって水平に動かされる場合について、図5と同じ状況を示す。
【図7】本発明に従う電界電極に関連する一般的駆動回路を図示的に示す。
【図8】基準電圧へ接続されているコンデンサを有する駆動回路の第1の具体的な実施形態を示す。
【図9】別々の行アドレスライン及び列アドレスラインが使用される図8の変形例を示す。
【図10】2つのコンデンサが使用され、基準電圧に代えて供給電圧へ結合される図8の変形例を示す。
【図11】付加低なスイッチが制御処理の間に電界電極との接続を切るために使用される図10の変形例を示す。
【図12】2つのコンデンサが関連するトランジスタの独立制御を可能にするために使用される図8の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図中の同じ参照番号は、同一の又は類似する構成要素を表す。
【0030】
ミクロの流体工学は、生体粒子が1つの場所から他の場所への移動を必要とする場合に、ほとんどの生体工学的応用にとって極めて重要である。生体粒子の操作は、例えば、多くのバイオチップ(Lab-On-A-Chip)応用で必要とされる。比較的大きい範囲にわたって多数のセルを個別に制御することができるならば、高速化及び費用削減のための大規模並列動作が可能となる。これは、創薬、プロテオミクス、臨床分析及びポイント・オブ・ケア(POC)応用のような分野において重大な利点を有しうる。
【0031】
多数の生体粒子(例えば、セル及びウィルス及びある生体分子。)が荷電されていない場合に、特定の操作のための標準的な電気泳動技術の使用は、電荷が粒子へ加えられることを必要とする。しかし、これは、しばしば好ましくない。誘電泳動(DEP(dielectrophoretic))力は、一様でないAC電界により、荷電されていない粒子で生じることができ、粒子及びこれを囲む液体の誘電特性に依存して正又は負でありうる。従って、DEP力は、理想的には、検出、分析及び診断のために粒子を移動させ、捕捉し又は回転させる等の生体粒子の操作を必要とするマイクロ流体に適する。更に、DEPで使用されるAC電界は、電気泳動のために印加されるDC電界の副次的な悪影響である電界による望ましくない効果を阻止する傾向がある。従って、荷電した粒子(例えば、DNA。)の場合でさえ、DEPは流体中での特定の移動に関して有利である。
【0032】
図1は、この点に関して、(生体)粒子2を有するサンプルが提供されるマイクロ流体サンプルチェンバ又はチャネル1の断面を、時間tにおける上から下までの3つの連続した時点について示す。個々にアドレス可能な電界電極11の1又は2次元配列10は、サンプルチェンバ1の底部にある基板上に配置されており、一方、サンプルチェンバ1の上部ガラス基板は、導通平面カウンタ電極12により表面を覆われている。
【0033】
電界電極11への様々なAC電位(その位相は+及び−の符号によって示される。)の印加は、サンプルチェンバ1内に電位ケージを作り出すことを可能にする。この電位ケージ内で、粒子2は捕捉され得る。図1に示される3つの連続する段階で表されるように電界電極の駆動パターンを動かすことによって、粒子2は所望の方向で動かされ得る。この移動トラップ方法は、CCDと同様の方法で動作する。粒子2は、電極配列10と、マイナス(−)相により駆動されるカウンタ電極12との間の流体中に保持されている。一番上の絵で、トラップは、基板上の2つの正の相(+)とカウンタ電極12上の負の相との間に形成され、粒子2は負の相の上に捕捉されている。真ん中の絵で、左から3番目の電極は、プラス(+)相からマイナス(−)相へ変更される。次いで、トラップの中心は、2つのマイナス(−)相電極の中間へ移動し、これにより、粒子2はマイナス(−)電極の中間点上へ動かされる。次いで、一番下の絵で、2番目の電極はプラス(+)相となり、粒子2は3番目の電極上の位置へ動かされる。
【0034】
図2及び図3は、対角(図2)及び水平(図3)方向における粒子2の移動がどのように達成され得るかを、連続する時点における電界電極11の2次元配列10に関する上面図で同じように表す。示されるマイクロ電子デバイスの典型的な応用には、バイオチップ、分子診断学、迅速な疾患検出、及び抗生物質に対する菌耐性の迅速評価がある。
【0035】
図1乃至3に示される実施形態は上部のカウンタ電極12を必要とするが、このような上部電極を用いずにトラップ移動を実施することも可能である(しかし、ガラス製のカバー板が尚望ましい。)。この実施形態は、電極配列10の同様の断面図(図4)及び上面図(図5、図6)で図4乃至6において示されている。この方法では、3通りの電界電極11の状態がある。すなわち、プラス(+)相、マイナス(−)相、及び高インピーダンス又は浮遊状態(Z)である。移動トラップ方式は、例えば、図4の一番上の絵で始まる。この状態で、粒子2は、両側のプラス(+)及びマイナス(−)相によってZ電極上で捕捉されている。真ん中の絵で、3番目の電極はZ状態となり、粒子2は2つのZ電極の中間点へ移動する。一番下の絵で、2番目の電極はプラス(+)状態となり、粒子2は3番目の電極上へ動かされる。
【0036】
図5及び図6は、電極11の2次元配列10、及び粒子の移動を対角線上に又は水平線上に可能にする相を同じように示す。
【0037】
以下では、上記実施形態で使用される電界電極を動作させる適切な駆動回路が、誘電泳動(DEP)力の原理により近い視点から続けて、より詳細に検討される。
【0038】
DEP力は、電極がDEP力を発生させる非線形な電界を引き起こす電極間隔に対する粒子寸法の三乗の比(cubed ration)として定まる。従って、一電圧で、粒子は、例えば、ブラウン運動による力よりも大きい支配的な力を提供するよう駆動電極間隔と同様のサイズを有するべきである。より高い電圧では、間隔はより大きくなり得るが、電極間隔を可能な最小値に減らすためのあらゆる努力が依然として払われるべきである(L.Zheng、S.Ki、P.J.Burke、J.P.Brody:“Towards single molecule manipulation with dielectrophoresis using nanoelectrodes”,Proceedings of the 3rd IEEE conference on Nanotechnology,1,437頁(2003年)参照)。分析及び診断のために粒子の大規模並列移動及び捕捉を提供するためには、密な配列は最も有効な解決法である。
【0039】
4つの電極は、それらが四極子として駆動される場合に、すなわち、対向する電極は同じAC相を有し且つ隣り合う電極は異なるAC相を有する場合に、粒子を捕捉することができる。図7は、4つの電極11に関して一例としてこのことを示す。図中、+及び−の符号は、電極へ印加されるAC電界の位相を示す。配列10全体は、通常、そのような電極11の多数から成り、トラップは、正確な位相が適用される場合に、いずれかの4つの電極の交点で発生することができる。いずれかの所望の場所でトラップを生成するよう、配列10の各電極11を個別にアドレッシングすることが可能でなければならない。これにより、どのAC相が電極へ適用されるかを選択することが可能である。
【0040】
上述されるように、トラップされるよう望まれる粒子のサイズは、電極間隔と深く関係している。従って、電極11を駆動するために必要とされる電子機器を適合させるために、電極11の下で利用可能な領域は最も有効に使用されるべきである。すなわち、電極11の下の電子機器は、電極電界の最小サイズ、ひいては、捕捉され得る粒子の最小サイズを制限する。大きい粒子に関しては、配列は大きくなり、更に、利用可能な最も安価な技術を使用し、各電極の下にある電子機器の量をその最小値まで小さくすることによって、これを行って、この技術をその限界に至らせることが可能である。これにより、より細かい分解能及びより高価な技術を取り入れる必要性が生ずる前に、可能な最も小さい粒子が捕捉され得る。例えば、低温ポリシリコン(LTPS)のような大規模エレクトロニクス(LAE(Large Area Electronics))技術は、液晶シリコンCMOSと比較される場合に、低コストで大きいガラス領域上でかかる方法を実施するために使用され得る。
【0041】
以下では、簡単な回路解決法が、DEPトラップ配列の電極を駆動するために提案される。これは、密な配列で最も小さい可能なサイズへの電極の縮小を実現し、シリコンに基づく全ての技術を通して費用効果の高い解決法を可能にする。
【0042】
図7は、本発明に従う駆動回路の基本レイアウトを図式的に示す。関連するマイクロ電子デバイスは電極電界の配列10を有する。電極電界のうち先に記載された(四極子として駆動される)4つの電極11が図中には表されている。駆動回路は、より詳細に、これらの電極11のうち1つについて示されている。駆動回路は、電界電極11を第1の電圧供給VAへ接続し又はこれとの接続を切ることができる第1の制御可能スイッチCSW1を有する。この第1のスイッチCSW1のスイッチング状態は、コントローラCONに含まれ且つ配列10の外側に配置されている制御回路COCによって制御される。制御可能スイッチCSW1へのこの制御回路COCのアクセスは、外部のアドレッシング回路ADCによってアドレッシング(選択)され得る局部アドレッシングユニットADU1によって制御される。外部アドレッシング回路ADCは、コントローラCONの第2のモジュールである。ここまで記載された駆動回路により、電界電極11の2つの状態が実現され得る。すなわち、電界電極は供給電圧VA又は浮遊状態を有する。
【0043】
破線によって示されるように、望ましくは、駆動回路は、電界電極11を第2の電圧供給VBへ接続することを可能にする第2の制御可能スイッチCSW2を更に有する。第2のスイッチCSW2は、アドレッシング回路ADCによって選択され得る第2のアドレッシングユニットADU2の制御下で制御回路COCによって制御され得る。以下で明らかになるように、第1及び第2のアドレッシングユニットADU1、ADU2は、任意に同一であっても良い。スイッチCSW1、CSW2及びアドレッシングユニットADU1、ADU2は、通常、電極11の下に配置される。
【0044】
ここで、図7の一般的なレイアウトの幾つかの具体的な実施例について、図8乃至12を参照して、より詳細に記載する。
【0045】
図8は、例えば、誘電泳動配列において電界電極11を駆動するための回路の第1の実施例を示す。電界電極11は、第1の薄膜トランジスタ(TFT)T1を介して第1の電圧供給VAへ及び第2のTFTT2を介して第2の電圧供給VBへ接続されている。電位VA及びVBは、例えば、所与の周波数のAC正弦波であり、位相反転されている。すなわち、それらは、それらの間にπの位相差を有する。電極11は、更に、負荷Lへ接続されるよう示されている。この負荷Lは、電極11とそれに最も近い隣接電極との間の流体及び粒子のインピーダンスであり、負荷Lの第2の接続は、最も近い隣接電極を表している。
【0046】
VDATAラインは、アドレッシング電圧VADDRによって制御されるアドレッシングトランジスタT3を介して、記憶のためにコンデンサCへデジタルデータを伝える。ハイ(High)値は、N型TFTT2を選択し、AC電圧VBを電極11及び負荷Lへ供給する。一方、ロー(Low)値は、P型TFTT1をオンし、AC電圧VAを電極11及び負荷Lへ供給する。従って、電極11の配列は、0(+)相又はπ(−)相のAC電圧を電極11及び負荷Lへ供給するよう個別にプログラミングされ得る。すなわち、DEPトラップは、電極の配列内の如何なる所望の場所でも発生するようプログラミングされ得る。
【0047】
電極11の配列は、行アドレス電圧VADDRを使用することによってライン毎にアドレッシングされ得る。アドレッシング相は短時間である(例えば、全ての行は1ミリ秒未満でアドレッシングされる。)。この時間期間にわたって、粒子はアドレッシング相の乱れにほとんど気がつかない。次いで、より長い期間の駆動相が存在する。
【0048】
若干より複雑な場合が図9に表されている。図9は、ランダムアクセスアドレッシングを示す。電圧VADDR ROW及びVADDR COLは、この場合に、個々の電極11を新しいデータによりアドレッシングされるよう選択する。
【0049】
最小の粒子のDEP捕捉を可能にするためのより一層簡単な回路を提供するために、図10に示される回路は、前出の実施例でコンデンサCが結合されていた基準電圧VREFを削除する。回路は、AC電界が停止され、例えば、VAが5Vになり且つVBが−5Vになるアドレス相を有して動作する。次いで、デジタルデータはノードnへ適用される。例えば、V=±5Vである。全てのトラップをアドレッシングした後、AC電界が開始される。C1=C2である場合に、電圧Vは保持され、次いで、選択されるAC相が負荷Lへ伝わる。
【0050】
電圧Vは、コンデンサC1、C2での電荷再分配が2つの逆位相の正弦波により相殺するので、前出の場合において保持される。C1=C2である場合に、ノードnでの電荷保持は、下記に従って初期電圧Vを新しい電圧V´にする。
【0051】
電圧VAはDCであり、VA´は付随するAC電圧である。VB及びVB´についても同様である。
【0052】
ここで、電圧VMは中点電圧、例えば0ボルトであり、VRは振幅である。これより、C1=C2である場合は、従って、電圧Vはノードで保持される。
【0053】
C1及びC2についてN及びP駆動TFTT1、T2のTFT寄生容量を使用することが可能であるから、C1及びC2のサイズは原理上はゼロでありうる。しかし、アドレッシングTFTT3の寄生容量は非対称性を引き起こし、故に、実際には、C1及びC2は完全にこの容量よりもわずかに大きいことが必要である。たとえそうであったとしても、これらのコンデンサは、AC相を供給するために使用される電極の下に隠され、従って、面積消費に関して無視され得る。このことは、図10の回路を図9の回路よりもコンパクトなものとする。
【0054】
考慮され得る更なる事項は、配列において負荷が全て連結され、これにより、アドレッシングされているラインとアドレッシングされないラインとの間に電流フローが生ずることである。良い参照を提供するよう、電力供給ラインは過度に電圧を下げるべきではない。従って、回路への簡単な追加は、図11に示されるアドレッシング時点で電流フローをオフする余分のスイッチT5である。
【0055】
図4乃至6に示される浮遊電極を用いる実施例を実現するために、3つの状態を有する電極が必要とされる。関連する駆動回路の可能な実施が図12に示されている。3つの状態を発生させるよう、2つの記憶コンデンサC1及びC2が設けられ、AC相を選択するTFTT1及びT2が個別に駆動されることを可能にする。従って、VAが選択され得、あるいはVBが選択され得、あるいはZ状態を与えるよういずれも選択されない(また、選択されるVA及びVBの両方について望まれていない状態が存在する。)。回路は、データが単一のデータラインから入来し、故に、VADDR1及びVADDR2パルスは夫々、TFTT3及びT6で次々に発生する必要があることを示す。また、両方のコンデンサが同時にアドレッシングされ得るように2つのデータライン及び単一のアドレスラインを有することも可能である。更に、図9に示される回路と同様に追加のアドレッシングTFTによってこれをランダムアクセスに更に拡張することが可能である。
【0056】
最後に、本願において、語“有する(comprising)”は他の構成要素又は肯定を排除するものではなく、要素の前に付された“1(又は1つ)の”という語は複数個を排除するものではなく、更に、単一のプロセッサ又は他のユニットは幾つかの手段の機能を満足することができる点に注意されたし。本発明は、ありとあらゆる新規の特徴的な事項及びこれらのありとあらゆる組み合わせにある。更に、特許請求の範囲における参照符号は、その適用範囲を限定するよう解釈されるべきではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを操作するマイクロ電子デバイスであって,
a)第1の電圧供給;
b)制御回路及びアドレッシング回路を備えるコントローラ;
c)電界電極の配列;
を有し、
各電界電極は:
c1)選択的に前記電界電極を前記第1の電圧供給へ接続する第1の制御可能スイッチ;及び
c2)当該アドレッシングユニットが前記アドレッシング回路によって選択される場合に、前記制御回路が前記第1のスイッチを制御することを可能にする第1のアドレッシングユニット;
に付随する、マイクロ電子デバイス。
【請求項2】
前記電界電極のうち少なくとも1つは、選択的に如何なる電圧供給からも接続を絶たれる、ことを特徴とする請求項1記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項3】
接続を絶たれている電界電極の領域は、接続されている電界電極によって囲まれて確立される、ことを特徴とする請求項2記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項4】
第2の電圧供給を有し、
各電界電極は、選択的に当該電界電極を前記第2の電圧供給へ接続する第2の制御可能スイッチに付随する、ことを特徴とする請求項1記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項5】
前記第2の制御可能スイッチは第2のアドレッシングユニットへ結合され、
前記第2のアドレッシングユニットは、当該第2のアドレッシングユニットが前記アドレッシング回路によって選択される場合に、前記制御回路が前記第2のスイッチを制御することを可能にする、ことを特徴とする請求項4記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項6】
前記第2の制御可能スイッチは前記第1のアドレッシングユニットへ結合され、
前記第1のアドレッシングユニットは、当該第1のアドレッシングユニットが前記アドレッシング回路によって選択される場合に、前記制御回路が前記第2のスイッチを制御することを可能にする、ことを特徴とする請求項4記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項7】
前記第1の制御可能スイッチ及び/又は前記第2の制御可能スイッチは、夫々、前記制御回路によって提供されるスイッチング状態情報を記憶する第1又は第2のコンデンサを有する、請求項1乃至4のうちいずれか一項記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項8】
前記第1の制御可能スイッチ及び/又は前記第2の制御可能スイッチは、第1又は第2のトランジスタを夫々有し、
前記第1又は第2のスイッチは、夫々、自身のゲートを前記第1又は第2のコンデンサと接続する、ことを特徴とする請求項7記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項9】
前記第2のトランジスタのゲートは、前記第1のトランジスタのゲートに対して反転している、ことを特徴とする請求項8記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項10】
前記第1及び第2のコンデンサは同じ部品によって実現される、ことを特徴とする請求項7記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項11】
前記第1のコンデンサ及び/又は前記第2のコンデンサは、1つの端子により基準電圧へ結合される、ことを特徴とする請求項7記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項12】
前記第1のコンデンサは、1つの端子により前記第2の電圧供給へ結合され、
前記第2のコンデンサは、1つの端子により前記第1の電圧供給へ結合される、
ことを特徴とする請求項4又は7記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項13】
前記第1及び第2のコンデンサは、自身の第2の端子により互いへ結合される、ことを特徴とする請求項12記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項14】
関連するアドレッシングユニットが選択される場合に少なくとも1つの電界電極を如何なる電圧供給からも切断する少なくとも1つの付加的なスイッチを有する、請求項1記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項15】
前記コントローラは、粒子が前記電界電極の配列の上でサンプルチェンバにおいて操作され、捕捉され及び/又は動かされ得るように、前記電界電極の配列を駆動するよう構成される、ことを特徴とする請求項1記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項16】
前記第1の電圧供給及び前記第2の電圧供給は、位相反転されている交流電圧を供給する、ことを特徴とする請求項1記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項17】
望ましくは低温ポリシリコンを有する大規模エレクトロニクス又はCMOSテクノロジにおいて実現される、ことを特徴とする請求項1記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項18】
電界電極の配列の上でのサンプルチェンバにおける粒子の操作のための方法であって、
前記電界電極は、正又は負の電位にある電極及び浮遊電位にある電極を有するパターンにおいて駆動される、方法。
【請求項19】
分子診断学、生体サンプル分析、又は化学サンプル分析のための、請求項1乃至17のうちいずれか一項記載のマイクロ電子デバイスの使用。
【請求項1】
サンプルを操作するマイクロ電子デバイスであって,
a)第1の電圧供給;
b)制御回路及びアドレッシング回路を備えるコントローラ;
c)電界電極の配列;
を有し、
各電界電極は:
c1)選択的に前記電界電極を前記第1の電圧供給へ接続する第1の制御可能スイッチ;及び
c2)当該アドレッシングユニットが前記アドレッシング回路によって選択される場合に、前記制御回路が前記第1のスイッチを制御することを可能にする第1のアドレッシングユニット;
に付随する、マイクロ電子デバイス。
【請求項2】
前記電界電極のうち少なくとも1つは、選択的に如何なる電圧供給からも接続を絶たれる、ことを特徴とする請求項1記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項3】
接続を絶たれている電界電極の領域は、接続されている電界電極によって囲まれて確立される、ことを特徴とする請求項2記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項4】
第2の電圧供給を有し、
各電界電極は、選択的に当該電界電極を前記第2の電圧供給へ接続する第2の制御可能スイッチに付随する、ことを特徴とする請求項1記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項5】
前記第2の制御可能スイッチは第2のアドレッシングユニットへ結合され、
前記第2のアドレッシングユニットは、当該第2のアドレッシングユニットが前記アドレッシング回路によって選択される場合に、前記制御回路が前記第2のスイッチを制御することを可能にする、ことを特徴とする請求項4記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項6】
前記第2の制御可能スイッチは前記第1のアドレッシングユニットへ結合され、
前記第1のアドレッシングユニットは、当該第1のアドレッシングユニットが前記アドレッシング回路によって選択される場合に、前記制御回路が前記第2のスイッチを制御することを可能にする、ことを特徴とする請求項4記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項7】
前記第1の制御可能スイッチ及び/又は前記第2の制御可能スイッチは、夫々、前記制御回路によって提供されるスイッチング状態情報を記憶する第1又は第2のコンデンサを有する、請求項1乃至4のうちいずれか一項記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項8】
前記第1の制御可能スイッチ及び/又は前記第2の制御可能スイッチは、第1又は第2のトランジスタを夫々有し、
前記第1又は第2のスイッチは、夫々、自身のゲートを前記第1又は第2のコンデンサと接続する、ことを特徴とする請求項7記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項9】
前記第2のトランジスタのゲートは、前記第1のトランジスタのゲートに対して反転している、ことを特徴とする請求項8記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項10】
前記第1及び第2のコンデンサは同じ部品によって実現される、ことを特徴とする請求項7記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項11】
前記第1のコンデンサ及び/又は前記第2のコンデンサは、1つの端子により基準電圧へ結合される、ことを特徴とする請求項7記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項12】
前記第1のコンデンサは、1つの端子により前記第2の電圧供給へ結合され、
前記第2のコンデンサは、1つの端子により前記第1の電圧供給へ結合される、
ことを特徴とする請求項4又は7記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項13】
前記第1及び第2のコンデンサは、自身の第2の端子により互いへ結合される、ことを特徴とする請求項12記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項14】
関連するアドレッシングユニットが選択される場合に少なくとも1つの電界電極を如何なる電圧供給からも切断する少なくとも1つの付加的なスイッチを有する、請求項1記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項15】
前記コントローラは、粒子が前記電界電極の配列の上でサンプルチェンバにおいて操作され、捕捉され及び/又は動かされ得るように、前記電界電極の配列を駆動するよう構成される、ことを特徴とする請求項1記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項16】
前記第1の電圧供給及び前記第2の電圧供給は、位相反転されている交流電圧を供給する、ことを特徴とする請求項1記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項17】
望ましくは低温ポリシリコンを有する大規模エレクトロニクス又はCMOSテクノロジにおいて実現される、ことを特徴とする請求項1記載のマイクロ電子デバイス。
【請求項18】
電界電極の配列の上でのサンプルチェンバにおける粒子の操作のための方法であって、
前記電界電極は、正又は負の電位にある電極及び浮遊電位にある電極を有するパターンにおいて駆動される、方法。
【請求項19】
分子診断学、生体サンプル分析、又は化学サンプル分析のための、請求項1乃至17のうちいずれか一項記載のマイクロ電子デバイスの使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2010−500181(P2010−500181A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523376(P2009−523376)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【国際出願番号】PCT/IB2007/052739
【国際公開番号】WO2008/017969
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【国際出願番号】PCT/IB2007/052739
【国際公開番号】WO2008/017969
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]